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原虫感染症の治療又は予防薬
説明

原虫感染症の治療又は予防薬

【課題】優れた抗クリプトスポリジウム作用を有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬を提供する。
【解決手段】鉄化合物、ポルフィリン化合物、ポルフィリン金属錯体、及び/又はデフェロキサミンを有効成分として含有する、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
病原性腸管寄生原虫クリプトスポリジウムは、経口摂取されたオーシストから脱嚢したスポロゾイトが小腸の絨毛上皮細胞内に寄生することによって激しい下痢症を引きおこす。旅行者下痢症の原因原虫として、また、感染源であるオーシストが通常の塩素殺菌に対して強い耐性を持っていることから、水道水汚染による集団下痢症の原因としても知られている。大規模なアウトブレイクとしては、日本国内では1996年に埼玉県越生町において発生した約9000人の感染が、また、海外では1993年の米国ミルウォーキーでの約40万人の感染が知られている。感染症法の5類届出疾患(全数把握)である本原虫症の国内での届出件数は6件(2007年)とわずかだが、英国では5561件(2005年)、米国では8269件(2005年)が報告され、先進国においても対策が必要な感染症である。クリプトスポリジウム症は、先天性免疫不全、AIDS、移植手術後、抗癌剤治療時等の免疫不全状態の宿主においては慢性化・重症化し、時に死の転帰を取りうる危険な日和見感染症であり、AIDS診断の指標疾患でもある。免疫不全状態でのクリプトスポリジウム症の特徴としては下痢症に加えて腸管外クリプトスポリジウム症があり、血行性の播種又は嘔吐物の誤嚥による呼吸器感染や、胆管を介した十二指腸からの直接の波及により胆管・胆嚢・膵臓の慢性的な炎症をみることがある。治療には病期短縮の効果が認められるとされるパロモマイシン、アジスロマイシン、ニタゾキサニドなどが用いられるが、免疫不全での効果はいずれも未確定であり(非特許文献1)、免疫不全におけるクリプトスポリジウム症を完治しうる新薬、あるいは従来の治療を強化するための方策が求められている(非特許文献2)。
【0003】
ヘム分解酵素ヘムオキシゲナーゼを中心とするヘム分解系は、過剰のヘムで誘導されてヘム分解を促進することに加え、生体防御、ストレス応答、循環・神経・免疫系の調節など種々の役割を担っている(非特許文献3)。また、ヘム代謝は、鉄代謝とも密接に関係している。
【0004】
ヘム代謝や鉄代謝に関連する物質の用途としては、鉄化合物による鉄欠乏性貧血の治療(非特許文献4)、デフェロキサミンによるヘモクロマトーシスの治療(非特許文献4及び5)、ヘム(Fe(III)プロトポルフィリンIX・Clで)による鉄の補充(非特許文献6)、Snメソポルフィリンによる黄疸の治療(非特許文献7)などが公知である。
【0005】
しかしながら、これらの化合物がクリプトスポリジウムの治療あるいは予防に有効であるとの報告はなされていない。
【0006】
【非特許文献1】Mead, J. R. (2002). "Cryptosporidiosis and the challenges of chemotherapy." Drug Resist Updat 5(1): 47-57
【非特許文献2】Striepen, B. and J. C. Kissinger (2004). "Genomics meets transgenics in search of the elusive Cryptosporidium drug target." Trends Parasitol 20(8): 355-8
【非特許文献3】小川和宏, ヘム分解系-多彩な疾患への創薬標的-.日本薬理学雑誌, 124, 360-362 (2004)
【非特許文献4】高久史磨ら監修、治療薬マニュアル2008、医学書院(2008)
【非特許文献5】Peter Nielsen et al., Effective treatment of hereditary haemochromatosis with desferrioxamine in selected cases. Brit. J. Haematol., 123, 952-953 (2003)
【非特許文献6】小川和宏, 大豆イソフラボンの有効性と安全性を考える. 金沢大学サテライトプラザ」ミニ講演記録, 7(12), 全頁 (2007)(http://hdl.handle.net/2297/6234)
【非特許文献7】Attallah Kappas et al., Sn-Mesoporphyrin interdiction of severe hyperbilirubinemia in Jehovah’s witness newborns as an alternative to exchange transfusion. Pediatrics, 108, 1374-1377 (2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた抗クリプトスポリジウム作用を有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく優れた抗クリプトスポリジウム作用を有する物質を探索した結果、鉄化合物、ポルフィリン化合物、及びデフェロキサミンが顕著な抗クリプトスポリジウム作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)鉄化合物を有効成分として含有する、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
(2)鉄化合物が、塩化鉄、硫酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、及びコンドロイチン酸鉄からなる群から選択される、(1)記載の治療又は予防薬。
(3)ポルフィリン化合物又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
(4)ポルフィリン金属錯体、そのハロゲン化物若しくは水酸化物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
(5)ポルフィリン金属錯体の金属が、鉄、スズ、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、及びカドミウムからなる群から選択される、(4)記載の治療又は予防薬。
(6)ポルフィリン金属錯体のポルフィリンが、プロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである、(4)記載の治療又は予防薬。
(7)ポルフィリン金属錯体のポルフィリンが、プロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである、(5)記載の治療又は予防薬。
(8)ポルフィリン金属錯体が、Fe(III)プロトポルフィリンIX又はSn(IV)メソポルフィリンIXである、(7)記載の治療又は予防薬。
(9)デフェロキサミン又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
(10)デフェロキサミンのメタンスルホン酸塩を有効成分として含有する、(9)記載のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、優れた抗クリプトスポリジウム作用を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
一実施形態において本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、鉄化合物を有効成分として含有する。鉄化合物としては、塩化鉄、硫酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、及びコンドロイチン酸鉄が挙げられる。鉄化合物には、これらの溶媒和物、例えば水和物も包含される。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、これら鉄化合物を単独で含んでいてもよいし、複数種を含んでいてもよい。好ましくは、Fe(III)Cl3又はその溶媒和物(例えば、Fe(III)Cl3・6H2O)を有効成分として含有する。
【0012】
一実施形態において本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、ポルフィリン化合物又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有する。ポルフィリン化合物は、好ましくはプロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである。ポルフィリン化合物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、これらを単独で含んでいてもよいし、複数種を含んでいてもよい。
【0013】
一実施形態において本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、ポルフィリン金属錯体、そのハロゲン化物若しくは水酸化物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有する。ポルフィリン金属錯体の金属は、好ましくは鉄、スズ、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛又はカドミウムであり、ポルフィリン金属錯体のポルフィリンは、好ましくはプロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである。鉄としては、Fe(III)及びFe(II)が挙げられる。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬において、ポルフィリン金属錯体は、好ましくは、Fe(II)プロトポルフィリンIX、Fe(III)プロトポルフィリンIX又はSn(IV)メソポルフィリンIXである。ポルフィリン金属錯体のハロゲン化物としては、フッ化物、二フッ化物、臭化物、二臭化物、ヨウ化物、二ヨウ化物、塩化物、二塩化物が挙げられる。Fe(III)プロトポルフィリンIXの塩化物(Fe(III)プロトポルフィリンIX・Cl)は、ヘミンとして市販されている。ポルフィリン金属錯体又はそのハロゲン化物若しくは水酸化物の薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、これらを単独で含んでいてもよいし、複数種を含んでいてもよい。
【0014】
一実施形態において本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、デフェロキサミン又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有する。デフェロキサミンの薬学的に許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、ピロ硫酸、メタリン酸等の無機酸、又はクエン酸、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸)等の有機酸との塩が挙げられる。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、これらを単独で含んでいてもよいし、複数種を含んでいてもよい。本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、好ましくはデフェロキサミンのメタンスルホン酸塩を有効成分として含有する。
【0015】
本発明において、プロドラッグは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により目的の化合物に変換する化合物、即ち酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして目的の化合物に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして目的の化合物に変化する化合物をいう。プロドラッグには、目的の化合物のエステル誘導体及びアミド誘導体が包含される。これらの化合物は公知の方法によって製造することができる。
【0016】
本発明のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬は、鉄化合物、ポルフィリン化合物若しくはその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、ポルフィリン金属錯体、そのハロゲン化物若しくは水酸化物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、又はデフェロキサミン又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを、単独で含有していてもよいし、複数種を含有していてもよい。
【0017】
本発明においてクリプトスポリジウムCryptosporidium spp.には、現在までに命名されている以下の種、および今後追加されるクリプトスポリジウム属の原虫類が包含される。Cryptosporidium hominis (従来のC. parvum genotype 1あるいはhuman genotype)、C. parvum (従来のgenotype 2、bovine genotype)。これら2種が健常人の症例では97%以上、また免疫不全症例においても80%以上を占めるが、その他、現在までに命名されているクリプトスポリジウムの種(その宿主)を以下に示すが、これらについても、ヒトおよび家畜動物への感染の危険性が存在する:C. meleagridis(トリ及びほ乳類)、C. muris(マウス)、C. canis(イヌ)、C. felis(ネコ)、C. bovis(ウシ)、C. andersoni(ウシ)、C. suis(ブタ)、C. wrairi(モルモット)、C. baileyi(ニワトリ)、C. serpentis(ヘビ)、C. saurophilum(トカゲ)、C. cichlidis(淡水魚)、C. nasorum(海産魚)、C.molnari(海産魚)、C. galli(ニワトリ、フィンチ)。
【0018】
本発明において、有効成分である鉄化合物、ポルフィリン化合物若しくはその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、ポルフィリン金属錯体、そのハロゲン化物若しくは水酸化物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグ、又はデフェロキサミン又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグは、そのまま、あるいは慣用の製剤担体と共に動物及びヒトに投与することができる。投与形態としては、特に限定がなく、必要に応じ適宜選択して使用され、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の経口剤、注射剤、坐剤等の非経口剤が挙げられる。
【0019】
経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常、鉄化合物の重量として0.01〜100mg/kg、ポルフィリン金属錯体の重量として0.1〜200mg/kg、デフェロキサミンの重量として0.1〜200mg/kgを、1日数回に分けての服用が適当である。
【0020】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を用いて常法に従って製造される。
【0021】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0022】
結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴールが挙げられる。
【0023】
崩壊剤としては、例えばデンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。
【0024】
界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80が挙げられる。
【0025】
滑沢剤としては、例えばタルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0026】
流動性促進剤としては、例えば軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0027】
また、有効成分である鉄化合物、ポルフィリン金属錯体及びデフェロキサミンは、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エリキシル剤としても投与することができ、これらの各種剤形には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0028】
非経口剤として所期の効果を発揮するためには、患者の年令、体重、疾患の程度により異なるが、通常、鉄化合物の重量として0.1〜50mg/kg、ポルフィリン金属錯体の重量として1〜100mg/kg、デフェロキサミンの重量として1〜100mg/kgの静注、点滴静注、皮下注射、筋肉注射が適当である。
【0029】
この非経口剤は常法に従って製造され、希釈剤として一般に注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、オリブ油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等を用いることができる。更に必要に応じて、殺菌剤、防腐剤、安定剤を加えてもよい。また、この非経口剤は安定性の点から、バイアル等に充填後冷凍し、通常の凍結乾燥技術により水分を除去し、使用直前に凍結乾燥物から液剤を再調製することもできる。更に、必要に応じて適宜、等張化剤、安定剤、防腐剤、無痛化剤等を加えてもよい。
【0030】
その他の非経口剤としては、外用液剤、軟膏等の塗布剤、直腸内投与のための坐剤等が挙げられ、常法に従って製造される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0032】
[実施例1]
1.原虫株
免疫学的に正常な下痢患者から分離され、重症複合免疫不全マウスで継代されているクリプトスポリジウムCryptosporidium parvum(HNJ-1株)を用いた。
【0033】
2.培地
・洗浄用medium:RPMI1640(GIBCO)
・細胞維持medium:RPMI1640培地に10%ウシ胎児血清(FBS)、 4mM L-グルタミンを添加した。
・感染medium:細胞維持mediumに0.1%ウシ胆汁沫を添加した。
【0034】
3.培養細胞及び培養条件
ヒトの回盲腺癌由来であるHCT-8(Human ileocecal adenocarcinoma cell)をC. parvumの宿主細胞として用いた。細胞はプラスチックボトル培養容器で細胞維持mediumを用いて37℃ 5%CO2培養器内で維持し、トリプシン・EDTA液で培養面より剥離させて用いた。感染実験には培養面積が1.91cm2の24穴プレート(Tissue culture test plates /TPP)を使用し、ウェル当たり 1×105個の細胞を撒き、2日間培養後の細胞を用いた。
【0035】
4.感染(オーシストの投与)
C. parvumのオーシストを、0.05N塩酸にて37℃、30分間酸処理し、10000rpmで1分間遠心により塩酸を除去後、感染mediumとともにオーシストを宿主細胞培養系に接種した。接種後氷上で30分間静置し、オーシストを細胞表面に沈降させ、その後37℃ 5%CO2培養器に移し脱嚢を開始させた。
【0036】
5.薬剤の投与方法
PBSまたは100% DMSOで溶解した薬剤を所定の濃度に希釈した。培養原虫への薬剤の投与は、オーシストを培養細胞に接種した容器を37℃ 5%CO2培養器に移して2時間培養した後に、細胞表面を洗浄mediumで2回洗浄し感染にあずからなかったオーシストを除去、薬剤を添加した維持mediumと交換し、更に24時間培養した。
【0037】
6.薬剤効果の評価
6−1
感染24時間後に培養液を取り除き、PBSにて細胞表面を2回洗浄後0.05%のトリプシン・EDTA液(GIBCO)処理により細胞を剥離し、17,800×g 5分間の遠心によりクリプトスポリジウム感染細胞を回収した。ゲノムDNAの精製では、PrepMan Ultra Reagent (Applied Biosystems) をプロトコルに従って用いた。
【0038】
6−2
C. parvum methionine adenosyltransferase (CpMAT)遺伝子近傍領域477bp 及びCyclospora cayetanensis 18S rRNA (Cc18SrRNA)遺伝子領域636bp をpBluescriptTMIISK+ プラスミド(STRATAGENE)に組み込み、大腸菌の系を用いて増幅した。プラスミドDNA量はPicoGreenTMdsDNA Quantitation Reagent and Kits(Molecular Probes)により測定し、分子量からコピー数を求め、既知濃度のスタンダードとして使用した。
【0039】
6−3
リアルタイムPCR法はSYBR Green Iを用いたインターカレータ法を使用した。20μlのPCR反応液には、10μlのSYBRTM Premix Ex TaqTM(TaKaRa)、1×ROX Reference Dye(TaKaRa)、0.2μMのプライマー及びC. parvum感染細胞DNAが含まれる。陰性コントロールとして、テンプレートに濾過滅菌水を用いた。反応プレート及びキャップはMicroAmp Optical 96-Well Reaction Plate 及びMicroAmp optical caps(Applied Biosystems)を使用した。反応条件は、初期変性95 ℃、10 min、熱変性95 ℃、15 sec、アニーリング兼伸長反応60 ℃、1 min を40サイクルとした。増幅、検出及びデータの解析はABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用し、一定の増幅産物量に達するサイクル数(Threshold Cycle:Ct)から初発のDNAコピー数を決定した。各サンプルに含まれるクリプトスポリジウムの量的推定にはCpMAT遺伝子のコピー数を内部標準であるCc18SrRNAのコピー数で除した値を使用し、増殖率は薬剤を加えないコントロールの平均値を100とした比率として算出した。
【0040】
使用した薬剤及び各試験濃度でのクリプトスポリジウムの24時間後の増殖率を以下の表1に示す。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄化合物を有効成分として含有する、クリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【請求項2】
鉄化合物が、塩化鉄、硫酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄、及びコンドロイチン酸鉄からなる群から選択される、請求項1記載の治療又は予防薬。
【請求項3】
ポルフィリン化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【請求項4】
ポルフィリン金属錯体、そのハロゲン化物若しくは水酸化物、又はそれらの薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【請求項5】
ポルフィリン金属錯体の金属が、鉄、スズ、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、鉛、及びカドミウムからなる群から選択される、請求項4記載の治療又は予防薬。
【請求項6】
ポルフィリン金属錯体のポルフィリンが、プロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである、請求項4記載の治療又は予防薬。
【請求項7】
ポルフィリン金属錯体のポルフィリンが、プロトポルフィリンIX又はメソポルフィリンIXである、請求項5記載の治療又は予防薬。
【請求項8】
ポルフィリン金属錯体が、Fe(III)プロトポルフィリンIX又はSn(IV)メソポルフィリンIXである、請求項7記載の治療又は予防薬。
【請求項9】
デフェロキサミン又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有効成分として含有するクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。
【請求項10】
デフェロキサミンのメタンスルホン酸塩を有効成分として含有する、請求項9記載のクリプトスポリジウム症の治療又は予防薬。

【公開番号】特開2010−13408(P2010−13408A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175517(P2008−175517)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【Fターム(参考)】