説明

参照データベースを更新するための経験メッセージを生成する概念

現在位置で、ある測定パケットがあるモバイル端末機によってある測定時刻において決定される。この測定パケットは、モバイル端末機のその現在位置でその測定時刻に受信可能な無線送信機の送信機IDを含む。当該モバイル端末機に提供される参照測定パケットにより、モバイル端末機自身がその現在位置を決定できる。さらに、参照測定パケットの参照送信機IDとの比較において、測定パケットの送信機IDのズレが決定される。もし参照送信機IDと現在位置で決定された送信機IDとのズレが検出された場合には、経験メッセージが生成され、その経験メッセージを基にして、例えば新たな送信機IDを参照データベースに追加し、及び/又は古い参照送信機IDを参照データベースから除外するなどの方法で参照データベースを更新するような、所定の更新処理が実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照位置(reference position)に記憶された受信信号コンディションを使用して、参照データベースを更新するための経験メッセージを生成する装置及び方法に関する。特に、実際の測位(localization)から得たインフラの変化に関する情報を、経験メッセージという形式で継続的に統合し、無線で通信している端末機をいかにして高い信頼性及び精度で測位可能とするか、という点に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここ数年以内には、モバイル機器又は端末機の自身の測位は、現代的なユーザーフレンドリ・アプリケーションの最重要基本要素の1つになるであろう。デジタル又はアナログ通信技術(例えば無線LAN,UMTS,GSM(登録商標)等)の広い有用性に関連する便利なモバイル機器(例えばPDAやスマートフォン等)の継続的な増大する普及につれて、如何なる状態においてもユーザーに対して位置関連情報を提供するアプリケーションの市場も同様に成長している。現状のアプリケーションは、主に衛星ナビゲーションシステムNEVSTAR−GPSに基づくものである。しかし、高層ビル,トンネル,橋などがある大都市圏内や、建造物(例えば空港、駅、貿易フェアセンターなど)の内部においては、衛星からの信号が減衰されるか又は非常に強い影響を受けるため、位置の提供が不能となる場合や非常にあいまいな位置しか提供できない場合が頻繁に発生する。しかし、このような場所は、特に訪問者頻度が高い場所である。このようなシナリオを考慮して、代替的で安価でかつ信頼性が高い測位技術が求められている。
【0003】
携帯機器の無線ネットワーク接続に関し、IEEE802.11(a,b,c)に従う無線LANの標準規格が確立された。データレート及びレンジの両方については、継続的な発展段階である。その確立された標準規格と、現在策定中の802.11n規格とは、高いデータレートでのブロードバンド・データ通信を可能とし、安価なハードウエアを使用可能とする高い搭載度を示している。例えば、上述した無線LANなどの無線インターフェイスは、現代のPDAやスマートフォンに最も高い頻度で搭載されている。加えて、Bluetooth(登録商標)も頻繁に使用され、将来はおそらくWIMAXも頻繁に使用されるであろう。
【0004】
無線LANの場合、高い訪問者頻度を持つ多くの場所において、商業的な公衆無線LANアクセスポイント(ホットスポット)が近年使用可能となっている。加えて、急速に増大しつつあるブロードバンド・インターネット・アクセス(例えばDSLの使用)の普及は、プライベート・セクターにおける安価なホーム・ネットワーキング技術としての無線LANの普及をも支えて来た。複数の研究により、多くの地域社会において、現代の大都市圏の領域は、無線LANによってほぼ余すところなくカバーされるか、又はオーバーカバー状態であることが分かってきた。特に、日常生活の場所や旅行者が興味を抱く場所は、この意味で十分に設備が整った状態である。
【0005】
現状では、無線LANを測位の基本的技術として使用することが実用的であるように見える。後述する本発明の概念が適用されるような他の技術も、活用される日が確実に来るであろう。無線LANネットワークにおける測位は、主として受信されたベースステーション(ホットスポット又はアクセスポイント)を評価することにより実行され、例えば端末機で受信された各信号の強度が評価される。しかし、無線LANの信号は建造物や他の障害物によって強くシールドされるものであり、特に、包括的な無線LAN設備がある領域内では、理想的な自由場状態(free-field condition)は典型的には全く存在しない。なぜなら、そのような設備は都市部に位置しているからである。その結果、測定された信号強度又は電波強度(field-strength)を使用してベースステーション又は他の通信パートナーまでの距離を直接的に推定することは不可能である。公共的な環境又はダイナミックに変化する環境(例えば倉庫など)は、主として影響力を及ぼせない変化(アクセスポイントの構築/分解/交換、アクセスポイントの時間的に制限された活動など)にさらされている。
【0006】
無線LANに基づく測位システムでは、いわゆる受信信号強度(RSS)フィンガープリンティングが基本的な方法として用いられる。この方法は、複数の無線ステーション(radio station)の無線信号から現在位置において受信され又は受信可能な信号の強度が現在位置又は現在地を明確に特徴づける、という仮定に基づいている。仮に、ある参照データベースが、複数の参照位置や参照地点に関し、時間軸上の複数の参照ポイントにおいてその場所で受信されるか又は受信可能な無線ステーションの送信機ID(送信機識別情報; transmitter identifications)を含んでおり、さらに対応する無線信号の信号強度を含むとすれば、現時点で測定中の一組の値(送信機ID及びそれに属する信号強度値)に基づいて、現時点で測定された測定値とデータベースの参照値とをマッチングすることにより、現在地を推定することができる。このマッチング作業は、全ての参照ポイントについて、以前に記録された測定値又は参照値が現在位置における現在測定中の値に対してどの程度類似しているかを評価する。その結果、(1つ又は複数の)最も類似する参照ポイントが、モバイル端末機の現時点の所在に関する推定値のための基準として使用される。
【0007】
ある参照時刻においてある参照位置で受信可能な無線送信機の信号強度が、参照測定によって参照データベースのために実験的に決定される。その結果、無線送信機(アクセスポイント)のリストを含むデータベースができ、そのリストは、それまでに参照測定が実行された全ての参照位置について、それぞれ関連する受信電波強度と品質とを含む。前記リストはまた、参照パケット(reference packet)と呼ばれても良い。無線LANの構成においては、そのような参照データベースは、例えば次のような表1に示すパラメータを含んでも良い。
【0008】
【表1】

【0009】
表1は、以下のような情報を含む。
−参照位置ID(RID)
−受信されたステーションのMACアドレス
−無線送信機の受信電波強度(RSSI(受信信号強度指数);46560は46.560dBMを意味する)
−直交座標(x,y,z;24583は245.83mを意味する)
−測定値を計測した時刻
【0010】
PGS(「見られた割合」)のコラムは、測定値を計測したときにこのステーションがどの位の頻度で見られたかをパーセンテージ基準で示す(例えばPGS=90とは、そのステーションが平均して10回の測定のうち9回測定されたという意味である)。
【0011】
上記表において、1つの参照位置ID(RID)に関連する全ての情報が、1つの参照測定パケット(reference measurement packet)に対応する。つまり、上記の例示的な表は、3つの異なる地理的参照位置に対応する3つの参照測定パケットを含む。
【0012】
測位においては、現時点で受信された無線送信機及びそれら各送信機が含む関連した受信電波強度(測定パケット)は、マッチング段階で参照データベースからの参照パケットと比較される。現測定パケット(current measurement packet)との距離がより小さい参照パケット、即ち共通する無線送信機が多数存在しかつ受信電波強度差が殆ど無いような参照パケットが、現測定パケットに良くフィットする。その良くフィットしている参照パケットに属する参照位置は非常に有望であり、位置の算出段階において考慮の対象となる。現在位置の推定値は、例えば、現測定パケットに対して最も類似する1つの参照パケットに関連した1つの参照位置から算出されるか、又は、類似する複数の参照パケットに関連した複数の参照位置の補間によって算出される。
【0013】
マッチング段階では、次に示す一般的な距離式がしばしば使用される。
【数1】

【0014】
この式は、全ての無線送信機がどこでも受信可能であることを前提としている。式(1)では、accは現測定パケットと参照パケットとの間の距離を表し、Neqは、参照位置において以前に記録された送信機IDが現在位置で提供される送信機IDと同一である無線送信機の個数を示す。また、参照位置において以前に記録された送信機IDが現在位置で提供される送信機IDと同一である無線送信機同士のRSSI値の差は、ΔRSSIn(n=1,・・・,Neq)として示される。しかし、このような従来の作動モードでは、位置推定にエラーを発生させる危険がある。即ち、例えば参照位置において以前に記録された送信機IDがその位置で提供される送信機IDと同一である無線送信機の個数が小さく、従ってRSSI値の差が小さいと決定された場合に、マッチングにおいて誤って良好と推定される結果になる恐れがある。(短時間の)シールド効果によって、例えば全ての無線送信機がどこでも受信可能という訳ではない場合も発生し得る。もし、参照パケットが無線送信機A,B,Cを含み、現測定パケットが無線送信機D,Eを含んでいる場合、距離の結果は(最高の)値0となる。たとえ参照パケット及び現測定パケットの間でマッチする無線送信機が一つも無い場合でも、参照パケットが完全にフィットするように見えてしまう。
【0015】
現在の(地理的)位置において現在提供され又は測定されている静止状態の無線送信機の(例えば送信機ID及び信号強度値などの)値又は特徴と、考慮された(地理的)参照位置で以前に記録された参照値又は特徴との間で、修正されたマッチングを行うことが可能であり、その方法は、現在位置における無線信号の現在測定されている特徴と、参照位置において以前に記録された無線信号の参照値とに対して、ある種のフィルタ処理をすることである。ここで、無線送信機は、第1の数Neq個の無線送信機と第2の数Nneq個の無線送信機とに分割される。第1の数Neqは、参照位置において以前に記録された送信機IDが現在位置で提供される送信機IDと同一である無線送信機の個数を示し、第2の数Nneq個は、参照位置において以前に記録された送信機IDと現在位置で提供される送信機IDとが異なる無線送信機の個数を示す。後者の場合は、無線送信機の送信機IDが現在位置で提供されているだけで参照位置では以前に記録されなかったか、或いは、無線送信機の送信機IDが参照位置で以前に記録されただけで現在位置では提供されていないか、のいずれかである。
【0016】
上述の位置の距離又は一致度(measure of correspondence)は、無線信号の特徴を基にして決定され、第1の数Neq個の無線送信機の特徴と第2の数Nneq個の無線送信機の特徴とが、その一致度を決定するときに考慮され、第1の数Neq個の無線送信機の特徴と第2の数Nneq個の無線送信機の特徴とは、その一致度に対して異なるように影響する。第1の数Neq個の無線送信機においては、参照位置において以前に記録された送信機IDと現在位置で提供される送信機IDとは同一である。第2の数Nneq個の無線送信機においては、送信機IDが現在位置で提供されているだけであって以前に参照位置で記録されなかったか、或いは、送信機IDが以前に参照位置で記録されただけであって現在位置では提供されていないかのいずれかである。
【0017】
参照位置において以前に記録された電磁的特徴と、第1の数Neq個の無線送信機の現在位置で提供される電磁的特徴との間の差が、対応的に形成される。それらRSSI値の差であるΔRSSI1〜ΔRSSINeqは合計され、式(1)に従って合計の値ΣΔRSSInを形成する。合計の後、この合計の値ΣΔRSSInは重み付けファクタEQWによって重み付けされる。即ち、EQW・ΣΔRSSInとなる。ここで、EQWとは0〜1の間の重みを定義し、現在位置において過剰に(in excess)受信されるか又は殆ど受信されない無線送信機と比較して、測定中の値の距離又は信号強度値ΣΔRSSInの距離をどの程度強く重み付けすべきかを示す。
【0018】
仮に一致度の計算がこの段階で停止された場合には、実際には現在位置にそれ程フィットしていない参照位置が、それより良好にフィットする参照位置の代わりに候補として選択されてしまう可能性もある。一例として、現在位置と比較されたときに第1の参照ポイントに対してNeq=1という結果が出たと仮定する。これは、参照測定パケットと現測定パケットとの間でたった1つの無線送信機IDだけがマッチするという意味になる。もし、対応する測定パケットの対応するRSSI値が例えば変則的に2.5dB離れていた場合には、ΣΔRSSI1/Neq=2.5dBという結果が生じる。さらに、現在位置と比較されたときに第2の参照ポイントに対してNeq=3という結果が出たと仮定すると、これは、参照測定パケットと現測定パケットとの間で3つの無線送信機IDがマッチするという意味になる。もし、対応するRSSI値が例えば互いに2dB,3dB及び4dB離れていた場合には、全体的な結果はΣΔRSSIN/Neq=3dBとなる。その結果、第2の参照ポイントが第1の参照ポイントよりも低い査定を受け、推定エラーという結果を招く可能性がある。このような推定エラーは、以下のような修正マッチングを使用することで、防止又は少なくとも減少させることができる。
【0019】
参照値の中には存在するが現時点の測定値には存在しない各ステーションに対し、ペナルティー値Mnh,m()(m=1,・・・,Nnh)が定義されても良い。例えば、殆ど受信できないステーションが、過去にその参照位置においてどの程度の信頼度で受信されたかに依存しても良い。例えば、現在殆ど受信されないステーションが以前に良好な受信可能性、即ち高いRSSI値を持った場合には、そのステーションには高いペナルティー値が与えられる。さらに、ペナルティー関数Mnh,m()(m=1,・・・,Nnh)は、対応する殆ど受信されない無線送信機のPGS値と結合されても良い。例えば参照データベース内の小さなPGS値は、対応するペナルティー関数Mnh,m()においてもやはり低い値しか発生させない。現在位置において殆ど受信されない無線送信機に対するNnh個のペナルティー関数Mnh,m()(m=1,・・・,Nnh)は合計され、その殆ど受信されない無線送信機のNnh個のペナルティー値の第1の合計ΣMnh,m()が決定される。
【0020】
さらに、現在位置で過剰に受信されている各無線送信機に対し、ペナルティー関数Mhtm,r()(r=1,・・・,Nhtm)又はペナルティー値が関連付けられても良い。この場合でも、ペナルティー値のための関数Mhtm,r()(r=1,・・・,Nhtm)は、無線送信機の現在のRSSI測定値と、例えば環境や測定値品質や参照データの古さに関するモデルなどとに依存しても良い。加えて、ペナルティー関数Mhtm,r()(r=1,・・・,Nhtm)は、過剰に受信された対応する無線送信機のPGS値と結合されても良い。例えば参照データベース内の小さなPGS値は、対応するペナルティー関数Mhtm,r()(r=1,・・・,Nhtm)においてもやはり低い値の結果しか生まない。
【0021】
殆ど受信されない無線送信機のペナルティー値の第1の合計ΣMnh,m()と、過剰に受信された無線送信機の第2の合計ΣMhtm,r()とが合計され、重み付けファクタ(1−EQW)によって重み付けされ、
(1−EQW)・(ΣMnh,m()+ΣMhtm,r())
が得られる。
【0022】
最後に、参照位置において以前に記録された電磁的特徴と第1の数Neq個の無線送信機の位置で提供される電磁的特徴との間の差の重み付き合計EQW・ΣΔRSSInと、ペナルティー値の重み付き合計
(1−EQW)・(ΣMnh,m()+ΣMhtm,r())
とが合計され、(Neq+Nnh+Nhtm)を用いて正規化され、その結果、現在位置と考慮された参照位置との間の距離値accが得られる。この距離値accは具体的には次の式(2)で算出される。
【0023】
【数2】

【0024】
距離値accが式(2)に従って決定される場合、その距離値accが小さければ小さい程、現在位置と考慮された参照位置との間の一致度が高まるであろう。つまり、差の合計ΣΔRSSInが小さければ小さい程、またペナルティー値の合計ΣMnh,m()+ΣMhtm,r()が小さければ小さい程、一致度が高まるであろう。この距離値accは一致度の値に対応している。
【0025】
環境的に常に変化することが特徴である都市部の環境においては、上述のような訓練された方法を使用するとき、次の問題が発生する。参照値又は参照データを含むデータベースは初期に検出され、その後に継続的又は繰り返し更新されなければならない。さもなくば、参照データの有意性が薄れてしまう。つまり、受信コンディション及び/又は環境的コンディション(記録可能な環境的情報)が時間とともに変化するため、参照データが「古く」なり、測位の品質が劣化する。
【0026】
フィンガープリンティング法そのものは有用である一方で、根本的な問題は参照データの更新である。部分的には、全てのユーザーが「ポスト・トレーニング」によってデータベース内のギャップ及びエラーを修正できるような方法が、制限されたデータベース又は参照データをセットアップ及び維持するためのコストを担うために提案された。この手法における問題点は、収集されたそのようなデータの交換と信頼性である。システムを操作可能に保つためには、エラーを含む誤った測定(例えばユーザーがポスト・トレーニング中に誤った実際位置を示したときなど)や故意の破壊工作によって、共通のデータベースが使用不可となるような事態を防止しなければならない。オープンな環境で使用されるように設計された無線LANによる測位の現存する手法(例えばPlace Labや Skyhook−Wirelessなど)は、基本的な方法として、前述したような短所を含むフィンガープリンティングの代わりに三角測量技術を使用する。そのため、これらの方法では、(例えばベースステーション又はアクセスポイントのMACアドレスを用いて)ベースステーションの場所情報からそのベースステーションIDへの関連付けがその中で実行されるようなデータベースが必要となる。複数のベースステーションへの距離が現在の測定値から推定され、その距離からある位置が算出される。このようなシステムでは、安全で信頼性の高いデータベースをセットアップすることもまた必要である。
【0027】
訓練された情報の信頼性の問題と、環境のダイナミックな変化のモデリングとは、これまで十分には解決されていない。Place Labは、例えばホットスポット・オペレータ又はウォー・ドライビング・コミュニティから受け取る、ベースステーションの場所を含む現存するデータベースを変換し、インポートする。ウォー・ドライビングとは、無線LANステーションの道筋を辿ってそれらに場所に関する参照データを提供することを目的として、街路を行ったり来たり運転することである。このときウォー・ドライバーは、無線LANが可能でGPS受信機も追加的に搭載されているラップトップを使用する。ここでの問題は、特にプライベートなステーションに関し、データの話題性を保障できない点である。これらの方法は、正確性と信頼性との両方に疑問が残る。
【0028】
Skyhook−Wirelessは、上述の問題を所謂「スキャナー」と協力することで解決しようと試みている。彼らは特別に選ばれた信頼できるユーザーであり、目的に沿うウォー・ドライビングによってデータベースを維持する人員である。このように、データベースを現時点の状態に維持することには多額の費用がかかり、アクセスポイントを変更するときには素早い適応が不可能である。現在Skyhook−Wirelessは、そのカスタマーに対して年一度の更新を提供している。しかし、データベースがあまりにも素早く古くならないように、大型プロバイダの公共ホットスポット(従って潜在的には継続的にかつ1つの場所において静止状態で作動するもの)に属さないアクセスポイントは、そのシステムから除外されている。しかし、それはエリアカバレージにおいてかなりの縮小を生む結果となる。なぜなら、インストールされた無線LANベースステーションの大部分は、既にプライベートで非公共的性格のもの(SOHO,事業所など)であり、従って大抵はコントロール及び情報設備の網から外れてしまうからである。
【0029】
上述した方法は、部分的には既に使用されているものであるが、長い時間間隔でしかデータベースを更新できない。ゆえに、それらの方法では時々活性化するステーションの実用的な処理又は実用的な処理概念を提供してはいない。
【0030】
この問題は、ステーションの中でも強い増加傾向にあるプライベートステーションに特に関わる問題である。なぜなら、そのようなプライベートステーションは、無線LANネットワークへの侵入や放射線照射の危険に対処するため、必要な時だけ作動されることが多いからである。これまでの解決法では、特に、関係する都市圏内の外部の位置決めシステムを使用せずに、高い信頼性を持って端末機の位置決めを実行することは許可していない。そのような都市圏内は、一方では受信コンディションが三角測量技術には難し過ぎており、他方では有効なベースステーション又はコミュニケーションパートナーが頻繁に変化するからである。
【0031】
特許文献1は、端末機を測位する装置と方法とを開示している。ここでは、環境的情報が端末機を使用して決定される。次に、端末機の位置がその環境的情報に基づいて決定される。次に、その端末機の位置に関連付けられた参照用の環境的情報からズレている環境的情報が確認され、その結果、そのズレが発見された場合には、最終的に更新の方策を実行できる。モバイル端末機によって使用される参照データ又は参照用の環境的情報を、現時点のかつ壊れていない状態に維持するため、参照用の環境的情報から見てその環境的情報にズレがあると決定された場合には、そのズレは、妥当性と信頼性に関して評価されなければならない。その目的のために、2つの基準に基づくある評価手段が提供されている。観測及び/又はズレには、参照データの現時点の状態と比較した変化の最低限の測定値が含まれなければならない。また、その観測は再現可能でなければならない。加えて、その観測の妥当性に影響する更なる基準が定義されても良い。観測されたズレ又は変化の最低限の測定値の例としては、見つかった(追加又は削減された)ベースステーションの個数や、個別のステーションの受信電波強度のズレが挙げられる。再現可能性の基準の例としては、同様の観測又は同様のズレが各モバイル端末機によって複数回観察された後に、初めてそれらが参照データの更新に使用可能となるということが挙げられる。代替的には、類似の観測又は類似のズレが複数の独立したソースによって報告されなければならない、ということでも良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】WO2008/113439A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0033】
そこで、本発明の目的は、端末機の改善された測位及び/又は、参照データ及び/又は参照用の環境的情報の改善された獲得について、一つの概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この目的は、請求項1に記載の参照データベースを更新する装置、請求項11に記載の参照データベースを更新する方法又は請求項12に記載のコンピュータプログラムによって達成される。
【0035】
本発明の一実施形態は、本発明の方法を実行するコンピュータプログラムを提供する。
【0036】
本発明の実施形態は、フィンガープリンティングに基づいた一般的な測位アルゴリズム(例えば無線LAN、Bluetooth、WIMAX等に基づくもの)は通常は確実な測位のために3〜4個のベースステーションだけを必要とする、という事実を利用する。そのため、インフラにおける小さな変化(例えばステーションが追加又は削除されるなど)は、精密度において殆どロスがないとして許容可能である。位置算出段階の後で、モバイル端末機の現在位置が判明し、ある変化が観測されたという事実が既知となれば、インフラ又は環境的情報内におけるその変化が、前記推定位置に結合されてさらなる処理も受けられるようになる。このように証明された変化、又は参照用の環境的情報との比較においてこのように決定された環境的情報のズレであって、前記推定位置にとって元の参照用環境的情報(参照データ)が古いと示す変化は、その観察された変化を参照データの中に統合させるために使用されても良い。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、1つの測定パケットが、1つのモバイル端末機によって現在位置でかつ測定時刻において決定される。この測定パケットは、既に上述したように、モバイル端末機がその現在位置でその測定時刻に受信可能な無線送信機の送信機IDを含む。そのモバイル端末機にとって利用可能となっている参照測定パケットにより、モバイル端末機自身がその現在位置を決定できる。さらに、参照測定パケットの参照送信機IDとの比較において、測定パケットの送信機IDとのズレが決定される。もし、参照送信機IDと現在位置で決定された送信機IDとのズレが確認された場合には、経験メッセージが生成され、その経験メッセージを基にして、例えば新たな送信機IDを参照データベースに追加したり、及び/又は古い参照送信機IDを参照データベースから除外するなどの方法で参照データベースを更新するような、ある更新処理が実行されても良い。本発明の実施形態によれば、推定された現在位置の測定パケットは、推定された現在位置の環境における参照位置の参照パケットと比較される。
【0038】
経験メッセージについて、基本的に2つの異なるシナリオが区別されてもよい。一つ目のシナリオは、モバイル端末機がその現在位置でいくつかの無線送信機を検出し、それら無線送信機の送信機IDは、それ以前には参照データベース内に記憶されていなかったか、無線送信機の位置に起因して考慮させるべき参照測定パケットの中に少なくとも無い送信機IDである場合である。これらの無線送信機は、いわば現在位置でそのモバイル端末機によって過剰に受信されているわけである。モバイル端末機の現在位置で過剰に受信されている無線送信機、即ち参照データベースに含まれていない無線送信機は、参照データを取得した時刻後に新たにインストール及び/スイッチオンされたものである。
【0039】
新しく発見された無線送信機によって参照データを更新するために、本発明の実施形態は、地理的参照位置に関連付け可能ないくつかの参照測定パケットを含む参照データベースを更新するための装置を提供する。それらの参照測定パケットは、各参照位置で各参照時刻において受信可能な無線送信機の参照送信機IDを含み、各地理的参照位置で各参照時刻において決定されたものである。更新のための装置は、現在の地理的位置で現時刻における現測定パケットを決定する手段を含み、その現測定パケットMP(i)は、現在の地理的位置で現時刻において受信可能な無線送信機の送信機IDを含む。さらに、更新のための装置は、参照データベースを更新するために、現測定パケットMP(i)が参照データベース内には含まれない送信機ID、つまり無線送信機の位置に起因して考慮させるべき参照測定パケット内には少なくとも含まれない送信機IDを含むか否かを確認する手段と、新たに追加された無線送信機に関する経験メッセージを生成する手段と、を備える。
【0040】
本発明の実施形態に従えば、上述の確認手段は、参照データベースの全ての参照パケット内でいかなる事前選択を行うことなく、現測定パケットの全ての送信機IDをサーチするよう構成されている。もし、参照データベース内において現測定パケットの少なくとも1つの送信機IDも見つからない場合には、ある対策が講じられるであろう。
【0041】
経験メッセージのための評価ユニットの目的は、本発明のある実施形態に従って新しいと認識された少なくとも1つの送信機IDと、参照データベース内に既に存在しているある参照パケットとの関連付けを行うことである。ある参照位置に関連した既に存在している参照パケットが、新しいと認識された送信機IDと、その送信機IDに関連する他の値、例えば受信パワーなどの値と、によって拡張される。しかし、まず最初に、モバイル端末機の新しい送信機IDが受信された現在位置を推定し、それを参照測定パケットの参照位置と比較することが必要である。現在位置と参照位置との良好な一致度がある場合だけ、前記少なくとも1つの新たな無線送信機IDにより、その参照位置に対する参照測定パケットが拡張されることになる。推定された現在位置に対して十分にフィットする参照位置が見つからない場合には、経験メッセージは上述したような形式では処理できない。
【0042】
ダイナミックなインフラに係る2つ目のシナリオは、ある無線送信機の完全な消滅である。参照データが取得された後である無線送信機が例えばスイッチオフされるかアンインストールされた場合には、参照データベースの対応する更新によってこの事実を反映させることが有益である。さもなくば、一致度を計算するときに、ペナルティー値がもはや受信不可能となったこれらの無線送信機に誤って関連付けられてしまう恐れがあるからである。ペナルティー値は、例えば参照値の中には存在するが現時点の測定値には存在しないステーション、或いはその逆のステーションに関連付けられても良い。これは、例えば殆ど受信されない又は過剰に受信された対応するステーションが、過去に参照位置においてどの程度の信頼度で受信できたかに依存しても良い。ペナルティー値は短時間シールド効果と共にエラーを発生させ、ここでは非生産的効果を有する性格のものである。更新の方策は、主に消滅した(スイッチオフ又はアンインストールされた)無線送信機のネガティブな結果に対処するために必要である。
【0043】
消滅した無線送信機を考慮に入れるために、本発明の実施形態は参照データベースを更新する装置を提供し、その参照データベースは地理的参照位置に関連付けられる参照測定パケットを含み、それらの参照測定パケットは、参照位置において参照時刻に受信可能である無線送信機について、各地理的参照位置において各参照時刻に決定された参照送信機IDを含んでいる。更新するための装置は、現在の地理的位置及び現時刻における、現測定パケットを決定するための手段を含む。現測定パケットMP(i)は、現在の地理的位置において現時点で受信可能な少なくとも1つの無線送信機の送信機IDを含む。さらに、この装置は、現測定パケットに対する所定の一致度を超える参照測定パケット量を選択するための手段を含み、その量の参照測定パケットは、1つ又は複数の参照測定パケットを含む。また、この装置は、その選択された参照測定パケット量には含まれるが現測定パケットには含まれない送信機IDを決定する手段と、その決定された送信機IDに関して対応する経験メッセージを生成する手段と、を備える。経験メッセージが存在するので、決定された送信機IDを参照測定パケットの全体量から除外することはできない。
【0044】
消滅した無線送信機を決定することは、一般的には新たに追加された無線送信機を決定することよりも複雑である。なぜなら、後者の場合には、対応する評価を実行するために、いずれの場合でも、最初に現在位置に関してある量の適切な参照位置が発見されるからである。最初に消滅したと検出された無線送信機は、位置推定の不安定さに起因して、後で再び修正する必要があることが多い。本発明の一実施形態に従えば、潜在的に消滅した無線送信機が記憶装置に収集され、現測定パケットと絶えず比較される。もし、潜在的に消滅した無線送信機が現測定パケット内に出現した場合には、その無線送信機は潜在的に消滅したある量の無線送信機から除外されるであろう。
【0045】
本発明の一実施形態に従えば、参照データベースの中の更新の方策は、ある種の信頼基準が満たされた場合にだけ実行される。例えば最小数の異なるモバイル端末機が同じ更新方法を示唆した場合に、更新が実行されても良い。さらに、品質の値が、例えばモバイル端末機の位置決定のための信頼基準として使用されても良い。もし、品質の値が、非常に信頼性の高い状態で位置決定が行われたことを示す場合、即ち、推定された現在位置が現実の現在位置に良くフィットすることを示す場合には、モバイル端末機からの更新の示唆に応じて方策が実行されても良い。
【0046】
本発明の概念のある実施形態では、変化した環境的コンディションについて既に生成された情報を使用して、モバイル端末機に必要な確実な測位をより安定して実行できる。つまり、この方法は、既に相当変化した環境的条件を用いて、相対的により確実な方法で作動できるという意味である。
【0047】
一実施形態においては、本発明の概念は、例えば無線LAN,GSM,Bluetooth,WIMAXを使用する他のコミュニケーションパートナーと通信できる無線端末機の中に実装されても良い。当該機器に本発明の概念を適用することは、環境的条件、即ち基礎となる無線技術における受信条件において、素早い変化にさらされるような環境の中で、確実で非常に詳細な測位が可能となるという点で有利である。無線端末機は、例えば現在の所在地周辺の環境に対応する参照データベース又は少なくともその一部を記憶しており、その無線送信機自身の経験メッセージに基づいて、その参照データベース又はその一部を操作又は更新する。
【0048】
本発明の他の実施形態によれば、異なる端末機同士が互いに通信して相互に経験メッセージを交換するための中央管理段階を必要としない、ピア・ツー・ピア・モードにおいて使用される。この場合でも、個々の無線端末機は、例えば現在の所在地周辺の環境に対応する参照データベース又は少なくともその一部を記憶している。つまり、中央管理段階を省略できるため、この構成は安価であるという意味も含む。また、遠方に配置されている可能性のある中央サーバーへの長い伝送距離を我慢する必要がないため、環境内の参照データの更新が非常に素早く実行されるという利益ももたらすであろう。さらには、ピア・ツー・ピア・モードにおいて、ズレについての情報は、この情報が関係する近隣にある更なる端末機、即ち例えば新たに追加された又は消滅した無線送信機の地理的環境の近くに位置する端末機だけが受け取る場合、データの発生を減少させるという利点も生む可能性がある。
【0049】
本発明の他の実施形態によれば、本発明の概念は中央参照データベースを含むクライアント・サーバー・システムに従って作動され、その中央参照データベースは、参照データを管理しかつ要求があればモバイル端末機によって送信された経験メッセージに基づいて参照データを更新する。本発明のある実施形態によれば、参照データベースは異なるモバイル端末機から複数の経験メッセージを受け取り、その結果、参照データを更新する前にその経験情報の信頼度が評価できるようにしても良い。よって、本発明の実施形態の一つの利点は、参照データの信頼性が高まることである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図1】端末機を測位するための先行技術の装置を示す。
【図2】端末機を測位する方法を適用した一例を示す。
【図3】本発明の一実施形態に従って、変化した環境的状況に関する経験メッセージを評価することにより参照データベースを更新するための装置の概略図である。
【図4】本発明の一実施形態に従って対応する経験メッセージを生成する方法を示すフローチャートである。
【図5】図4に従う一方法の1つのステップを詳細に示すフローチャートである。
【図6】新たに発見された無線送信機が無線送信機の全体量に追加され、新たな無線送信機の分だけ測定パケットが削減される様子を示す概略図である。
【図7】変化した環境的コンディションに関する経験メッセージを評価することで参照データベースを更新するための、本発明の他の実施形態に係る装置を示す図である。
【図8】経験メッセージを評価することで参照データベースを更新するための本発明の一実施形態に従う方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明のある実施形態に従い、対応する経験メッセージを生成するための装置を示すブロック図である。
【図10】本発明の他の実施形態に従い、対応する経験メッセージを生成するための方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明のある実施形態に従い、現在の測位において潜在的に消滅した無線送信機に関する情報をフィードバックする様子を示す概略図である。
【図12】複数のモバイル端末機からの更新情報(経験メッセージ)を含む中央参照データベースの概略図である。
【図13】経験メッセージを決定及び処理し、参照データベースの中に統合させる様子を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明においては、同一の機能的要素又は同一の効果を持つ機能的要素には、全ての異なる実施形態において同一の参照符号を付与したことに留意されたい。従って、以下に説明する異なる実施形態において、これらの機能的要素は相互に交換可能である。
【0052】
まず、図1及び図2を参照しながらフィンガープリンティング法に従う測位について以下に簡単に説明した後で、図3〜図13を参照しながら本発明の概念を詳細に説明する。
【0053】
非公衆無線LANの無線送信機がますます普及した結果、多くの都市においては著しくオーバーカバレージ状態となっているという事実は、特に注目すべきである。単一のポイントにおいて、8〜12個の無線送信機(アクセスポイント)が受信可能である場合が多く、大都市圏内においては、30個を超える受信可能な無線送信機が存在することも有り得る(繁華街又は生活人口或いは人口密度が高い地域における最高値)。一方、確実で正確な測位のためには、3〜4個の無線送信機で十分である。
【0054】
図1は、公共エリアにおける各個別のモバイル端末機自身の測位として、あるモバイル端末機の測位が、フィンガープリンティング(無線LAN,GSM,Bluetooth,WIMAX等)を用いてどのように実現され得るかを示すものである。この方法では、データ送信は必要でなく、そのためモバイル端末機と他の通信パートナーとの間の接続性は、基本的に省略できる。このことは、モバイル端末機がその環境の現在の信号特性(受信された測定パケット)を継続的に(例えば200ミリ秒毎に)測定し、かつその信号特性をローカル参照データベース(及び参照測定パケット)に対してマッチングすることによってそれ自身の位置を算出しているため、可能となっている。
【0055】
上述の概念を説明するため、図1は自身の測位が可能なモバイル端末機10の概略図を例示的に示す。受信手段12が、受信範囲内の無線送信機の個数とそれら各無線送信機の受信電波強度とを含む測定パケットを決定する。これらの測定パケットは、次に位置決定ユニット14へと送信され、このユニット14は、前回までの参照において記録され、参照データベース16内に記憶可能な参照測定パケットへのアクセスをさらに有するものである。
【0056】
このように、参照データベース16は、モバイル端末機10内にローカルに記憶されることも、外部のメモリロケーション又は装置において非ローカルに記憶されることも、いずれも可能である。後者の場合には、モバイル端末機10は当然ながら参照データへのアクセスを持たなければならず、そのため参照データベース16への少なくとも1つの通信接続が存在しなくてはならない。位置決定手段14は、現測定パケットと参照測定パケットとに基づいてモバイル端末機の現在位置を決定するために、測位アルゴリズムを使用する。そのため、まずマッチング段階において、現測定パケットに対して最もマッチする参照測定パケット、即ち類似性が最大である参照測定パケットが決定される。次に、位置算出段階において、決定された類似の参照測定パケットとそれらに関連する地理的参照位置とに基づいて、モバイル端末機10の現在の地理的位置が推定される。現在位置が推定された時、任意ではあるが、その推定位置がアプリケーションモジュール18へと送信されても良く、その目的は、例えばデジタル地図内に現在地を示すためでも良く、又は、推定された現在地に対して直接的な因果関係を持つサービス(所謂ロケーションベースのサービス)を提供するためでも良い。
【0057】
標準的な場合、モバイル端末機10は、1つの中央サーバーだけで管理されるデータベース16の抽出手段をそれぞれ有している(モバイル端末機は通常それ自身の参照データを変更しない)。モバイル端末機10とは対照的に、サーバーは常にデータベース16の最新の更新を維持する。モバイル端末機は、例えば作成された経験からのメッセージとの交換に、例えば所定の間隔で、完全に新しい現時点での更新をサーバーから取り込む。データの更新は、基礎となった経験メッセージ又は新たな校正(calibration)キャンペーンだけによって実行される。
【0058】
図2は、2つのモバイル端末機10a及び10bと、これらモバイル端末機10a及び10bの環境内にある複数の通信パートナー又は無線送信機22a〜22eとを含む、あるアプリケーション・シナリオを例示的に示す。環境的情報として、モバイル端末機10a及び10bは、例えば無線送信機の独特の識別番号と、各無線送信機に関連する受信された電波強度とを決定できる。無線送信機22eはモバイル端末機10a及び10bから離れた位置にあり、その結果、無線送信機22eはモバイル端末機10a及び10bによってある時間には受信可能であるが、他の時間には受信されない。また、ベースステーション22eをスイッチオフすることでも、受信不可能という状態が起こり得る。都会の環境においては、歩行者や車両による遮蔽も起こり得る。加えて、大気の品質、特に大気湿度は、無線送信機22eがある日には受信され、他の日では受信されないという効果をもたらす可能性がある。
【0059】
そのため、モバイル端末機10a及び10bは、たとえそれら自身が移動していない時であっても、経時的に変化する環境情報を一般的に受信することになる。データベースにおける更新の方策は、短時間の出来事に基づいて実行されなくても良い。そのような短時間の出来事と、無線送信機のアンインストール又は新しいインストールなどのようなインフラの現実的な変化とを、区別することが重要である。
【0060】
仮に、図1及び図2で説明したアプリケーションの分野において、参照データが継続的に更新されないとすれば、モバイル端末機の測位精度に対して相対的に強い逆効果を与える可能性がある。
【0061】
第1の場合として、ある位置において参照データが収集された後に、新たな無線送信機がセットアップ又はインストールされている場合が起こり得る。
【0062】
しかし、新たな無線送信機は位置の算出において全くペナルティーを発生させない。なぜなら、新たな無線送信機は予め既にフィルタアウトされている可能性があるからである。いかなる参照測定パケットとのマッチングの間にも、新たな無線送信機は、過剰に受信されるとして検出された無線送信機と混同されるべきではない。過剰であると検出された無線送信機はペナルティーという結果を生むであろう。
【0063】
新たな無線送信機を将来の測位目的で使用するため、また、それによって無線送信機の消滅を補償するため、ユーザーにより検出された新たなベースステーションを参照データベース16へと統合することが有益である。これはモバイル端末機10自身の中でローカルに実行されても良いし、或いは中央参照データベースの中で中枢的に実行されても良い。
【0064】
新たな無線送信機は、主として、モバイル端末機の中で経験メッセージをローカルに生じさせ、次に、もしその新たな無線送信機の推定された位置周辺の全般的な範囲に関する十分な情報が存在している場合には、その経験メッセージは中心的な位置にある参照データベース内へと挿入されることができる。ここで危険なことは、参照測定パケットが未だ更新されておらず、他方でその新たな無線送信機が測定可能のままであるような位置においては、過剰に受信される無線送信機に対して誤ったペナルティー値が指定されてしまう恐れがあるということである。
【0065】
図3では、新たに追加された無線送信機に関して、参照データベースを更新するための装置30の概略図を示す。
【0066】
装置30は、地理的参照位置に関連する参照測定パケットを含む参照データベース16を更新するものであり、参照測定パケットは、参照位置において参照時刻に受信可能な無線送信機の参照送信機IDを含むものであり、その参照送信機IDは、それぞれの地理的参照位置において参照時刻に決定されたものである。装置30は、現在の地理的位置での現時点iにおける現測定パケットMP(i)を決定するための手段12を備え、その現測定パケットMP(i)は、現在の地理的位置で現時点iにおいて受信可能なK個の無線送信機の送信機IDであるAPk(k=1,2,・・・,K)を含む。手段12は手段34に連結され、その手段34は、参照データベース16内に含まれていない送信機IDであるAPnewを現測定パケットMP(i)が有するか否かを確認する。従って、この確認手段34が参照データベース16へのアクセスを有することは自明であり、確認手段34と参照データベース16との間のアクセスは、有線接続又は無線接続のいずれであっても良い。手段36は送信機IDのAPnewに関して経験メッセージを生成する。この経験メッセージは、無線送信機IDであるAPnewと、タイムスタンプと、標準無線LANの測位によって得られた現在位置とを少なくとも含む。手段36は、参照データベース16を更新するための手段38へと接続されている。更新の方策は、新たな無線送信機に関して存在する経験メッセージに依存して実行される。もし、新たな無線送信機による参照測定パケットのそれぞれの拡張にとって、十分な情報が存在しない場合には、適切な位置において少なくとも新たな校正キャンペーンのリクエストが発信されても良い。
【0067】
図3に示す装置30は、図4で概略的に示す本発明の方法を実行するものであり、新たに追加された無線送信機に関して参照データベース16を更新するために、それぞれの経験メッセージを生成する。その方法について、図4及び図5に基づいて以下に詳細に説明する。
【0068】
第1のステップ42では、モバイル端末機10の現在位置において、トランシーバー12によって現測定パケットMP(i)が決定される。次のステップ44では、ステップ42で決定された現測定パケットMP(i)が、参照データベース16の中には含まれていない無線送信機IDであるAPnewを有するか否かを決定する。最後に、ステップ46では、参照データベースを更新するためのそれぞれの経験メッセージが生成される。
【0069】
本発明のある実施形態に従えば、参照データベース16内に含まれていない送信機IDであるAPnewを現測定パケットMP(i)が有するか否かを確認するステップ44では、現測定パケットMP(i)内にある送信機IDであるAPk(k=1,2,・・・,K)は、モバイル端末機の現在位置からは独立して、参照データベース16内に存在する全ての参照送信機IDと比較されても良い。しかし、参照データベース16が相当量の地理的領域を含む場合や多数の参照測定パケットを含む場合には、この比較作業は経費が過大となる。そのため、そのような場合には、参照測定パケットの事前選択を実行し、選択されたパケットの参照送信機IDが現測定パケットMP(i)の送信機IDであるAPk(k=1,2,・・・,K)と比較されるようにしても良い。このような事前選択は、例えば現在の位置推定値又は現時点 iの直前の位置推定値に基づいて実行されても良い。従って、本発明の他の実施形態においては、モバイル端末機10の現時点又は直前における位置の周辺環境内に参照位置を有する参照パケットだけが比較のために使用され、その周辺環境のサイズは、算出に係る経費によって調整可能である。位置情報を獲得するためには、既に検出された新たな無線送信機はフィルタアウトされる。なぜなら、それらは測位アルゴリズムと干渉する恐れがあるからである。このステップの後、モバイル端末機の位置は既知となり、また、変化が発生したという事実が認識される。その結果、このようなインフラ又は環境情報の変化が推定位置に対してリンク可能となり、更なる処理も可能となる。
【0070】
新たに追加された無線送信機は、実際の位置決定のためには既にフィルタアウトされているため、測位に対して少しも影響を与えない。このフィルタアウトは、新たに追加された無線送信機と参照ポイントの中に含まれる全ての無線送信機IDとのマッチングで実行される。
【0071】
この工程を図5を参照しながら再度以下に説明する。
【0072】
ステップ44において、現測定パケットMP(i)が参照データベース16の中には含まれていない無線送信機IDを有するか否かを確認するとき、まずステップ442において、現測定パケットMP(i)は、位置に関して該当する参照測定パケットに比べて過剰に受信された送信機IDの分だけ削減される。考慮される参照測定パケットは、好適にはモバイル端末機10の近傍内にある参照位置に対応し、モバイル端末機10の近傍は、一般的な位置算出段階によって決定されても良い。加えて、モバイル端末機10の近傍とは、例えばそのモバイル端末機10の直前に決定された位置から所定の半径内の位置であっても良い。
【0073】
ステップ444においては、削減された現測定パケットMP’(i)が近傍の参照測定パケットと比較される。即ち、現測定パケットと参照測定パケットとの両方の中に出現するような送信機ID及びそれぞれのRSSI値だけに基づいて、それらの測定パケットが比較される。この比較によって、前記削減された測定パケットに対して最も高い一致度又は類似性を持つ参照パケット、即ち、送信機IDに係る各RSSI値同士の差が最も小さい参照パケットが決定されても良い。この比較の計算は、上述した式(1)を用いて確認することができる。即ち、この場合の類似性とは、現測定パケットMP(i)とある参照パケットとの間で一致する測定パケットの数であるNeqと、それら一致している送信機IDに関連して受信された電波強度に関係する量の間の差(例えばΔRSSI)とに依存している。この類似性は、より多くの送信機IDが一致すればするほど高くなり、差が大きいほど低くなる。さらに、その参照パケット内に過剰に含まれる無線送信機と殆ど含まれない無線送信機に対しては、ペナルティー値が与えられる。
【0074】
本発明の実施形態によれば、適切なさらなる処理を可能にすべく、新しいと認識された送信機IDであるAPnewと一緒に、関連する追加的情報が経験メッセージとして記憶されても良い。このような追加的情報は、例えばその経験メッセージがいつ生成されたのか、又は参照データベース16がいつ更新されて来たのかを示すタイムスタンプであっても良い。さらに、追加的情報は、RSSI値、PGS値、現在の推定位置の品質の値、又は現在の推定位置そのものであっても良い。現在の推定位置の品質の値は、例えば現測定パケットと類似性が最も高い参照パケットとの間で決定された一致性の測定値accから導出されても良い。現測定パケットと参照測定パケットとの間の一致度が高いほど、現在位置の推定がより信頼できるものになる。
【0075】
図6は、現測定パケットMP(i)を、その中にリストアップされた無線送信機の有効性についてチェックする時の工程について、再度示すものである。
【0076】
現測定パケットMP(i)は、これまで有効であった無線送信機IDを含む参照データベース16の少なくとも一部と比較される。この比較によって、測定パケットMP(i)の中では存在しているが参照データベース16の部分の中では存在していない無線送信機は、新しいと認識されることができる。新しいと認識された無線送信機とそれに関連するRSSI値は、後続のマッチング及び位置決定段階のために、まずは現測定パケットMP(i)から除外され、その結果、削減された測定パケットMP’(i)ができる。この削減された測定パケットMP’(i)は、類似の参照パケットを決定し、さらにモバイル端末機10の現在位置を決定する目的で、次に適切な参照パケットと比較されても良い。
【0077】
無線通信システムにおけるベースステーションや無線送信機のダイナミックなインフラの特徴として、新たな無線送信機を追加できるという点だけではなく、例えば(一時的に)スイッチオフされるか又は完全にアンインストールされることにより、無線送信機が消滅することもある、という点が挙げられる。本発明のさらなる重要な態様は、システムから消滅したそのような無線送信機をも追跡し、かつそれらの消滅した無線送信機を参照データベース16から除外するか、又は少なくともその後はそれらを考慮しないように、参照データベース16を更新することである。新たに追加された無線送信機とは対照的に、登録された無線送信機の消滅は、測位の品質に対して直接的な影響を与える。
【0078】
このような観点から、図7では、参照データベースを更新するための消滅した無線送信機に関する経験メッセージを生成する、本発明の装置80を示す。
【0079】
装置80は、現在の地理的位置で現時点の測定時刻iにおいて、現測定パケットMP(i)を決定するためのトランシーバー又は手段12を備えている。現時点で決定された測定パケットMP(i)は手段84へと送られ、この手段84では、現測定パケットMP(i)に対して所定の一致度を超える参照測定パケット量RPが選択される。従って、選択手段84は参照データベース16へと接続されている。選択された参照測定パケット量RPn(n=1,2,・・・,N)と、現時点で決定された測定パケットMP(i)とは手段86へと送られ、この手段86では、選択された参照測定パケット量の中には含まれるが現測定パケットには含まれないような、少なくとも1つの送信機IDであるAPoldを決定する。
【0080】
さらに、装置80は、決定された送信機ID(APold)に関する経験メッセージを生成する手段88を備える。無線送信機が消滅したことが1つ又は複数のモバイル端末機によって高い信頼性を持って検出されたときにだけ、更新ユニット89により、完全なデータベース16の全ての各参照測定パケットからその無線送信機が除外される。その更新ユニット89は、モバイル端末機又は中央サーバーのいずれかに対して操作することができる。どちらの場合でも、複数のクライアントからの経験メッセージを処理することが可能である。この文脈において、更新の時刻、即ち参照データの実際の変更の時刻は重要である。なぜなら、この処理の間に情報を損失する恐れもあるからである。
【0081】
消滅した無線送信機を高い信頼性を持って決定することは、新たな無線送信機を捜すことよりも複雑である。なぜなら、それぞれの評価を実行するため、まずはある量の適切な参照位置又は参照パケットを見つける必要があるからである。さらに、位置決定の過程に存在する不確実性に起因して、以前は消滅したと検出された無線送信機を後で修正する必要が生じる可能性もあることを考慮すべきである。装置80によって実行可能な本発明の方法を、図8を参照しながら以下に概略的に説明し、その後、図9及び図10を参照しながら更に詳細に説明する。
【0082】
まず、モバイル端末機10は現在位置における現測定パケットMP(i)を決定する。この操作は、例えば200ミリ秒毎に所定の周波数帯域内の周波数をスキャニングし、現在位置の近くにおいてこの周波数帯域内で送信している無線送信機を受信できるようにすることで実行される。同様に、決定ステップ92は、モバイル端末機10からのピンポン・プロトコル・タイプのアクティブリクエストによって起動されても良い。この場合、モバイル端末機10がリクエストし、近傍にある無線送信機が応答する。このような方法で、モバイル端末機10の近傍において通常は複数(例えばK個)の無線送信機が受信可能であり、それぞれが関連する信号強度を伴っている。これら無線送信機の送信機IDであるAPk(k=1,2,・・・,K)と受信信号値RSSIk(k=1,2,・・・,K)とは、現測定パケットMP(i)を構成する。
【0083】
後続のステップ94は、位置算出段階に含まれても良いしその後であっても良いが、このステップにおいて、参照測定パケット量であって現測定パケットMP(i)への所定の一致度を持つもの、即ち距離の値accが上限値acc*よりも小さいものが選択される。つまり、ステップ94はマッチング段階を表し、ここでは、参照データベース16に記憶された参照パケットと現時点のパケットとの間の一致度が決定される。ゆえに、この段階は実際にはまず位置的に妥当性を持つ参照測定パケットを決定することであり、それらパケットの関連する参照位置は、通常はモバイル端末機10の推定された現在地の近傍にある。
【0084】
後続のステップ96では、現測定パケットMP(i)内に存在している無線送信機の送信機IDであるAPk(k=1,2, ・・・,K)と、類似する参照測定パケット内に存在している送信機IDとが比較される。もし、現時点で決定された測定パケットMP(i)内には含まれずに類似の参照パケットの中に存在する送信機IDがある場合、それは、それぞれの無線送信機が現時点ではスイッチオフされているか又は完全にアンインストールされていることを示し、それぞれの経験メッセージが出力されても良い(ステップ98)。その出力は、データベースの更新のために、モバイル端末機10自身か、中央サーバーか又は他のモバイル端末機によって使用されても良い。
【0085】
本発明の実施形態に従えば、現測定パケットMP(i)の中で殆ど受信されなかったような、決定された送信機IDであるAPoldは、潜在的に消滅した送信機ID又は無線送信機としてマークされることができる。
【0086】
図9、図10及び図11を参照しながら更なる処理について説明する。
【0087】
モバイル端末機10の現在位置において現測定パケットMP(i)が決定された後で、その測定パケットMP(i)は、データベース16からの参照パケットと一緒に選択手段84へと供給される。この選択手段84において実行されるマッチングによって、評価された量の参照パケット102が得られ、これら参照パケット102の中から、現測定パケットMP(i)と最もマッチする参照パケットが選択されることになる。ここで、最も単純な場合では、(潜在的に)消滅した無線送信機を決定するために、位置に関して現測定パケットと最もマッチしており、最良の又は最低のacc値を持つ参照パケットだけが選択されても良い。
【0088】
選択された量の参照パケット102と現測定パケットMP(i)とが手段86へと供給され、手段86における第2のマッチング段階により、選択された量の参照パケット102の中には含まれるが現測定パケットMP(i)には含まれないような無線送信機104を検出することができる。手段86によって選択されたある量の無線送信機104は、現在の測定時刻iよりも前の所定の時間間隔内に受信されたある量の無線送信機106と比較される。そのため、装置80は、現在の測定時刻i以前でかつ参照データベース16の最後の更新以後に決定された送信機IDを記憶する手段を備えている。もし、ある量の無線送信機104が、ある量の無線送信機106の中に含まれない可能性がある場合には、それらは潜在的に消滅したある量の無線送信機108に関連付けられる。従って、消滅した無線送信機に関する経験メッセージを生成する手段88は、決定された送信機IDであるAPoldが、以前に受信されたある量の無線送信機106の中に記憶されていないときには、潜在的に消滅したある量108の送信機IDの中に決定された送信機IDであるAPoldを受け入れるよう構成されている。本発明の一実施形態に従えば、潜在的に消滅した無線送信機108に加え、タイムスタンプ、RSSI値、PGS値、現在位置の品質の値、又は位置そのもののような追加的な情報も記憶することができる。さらに、現時点で測定された測定パケットMP(i)は、既に受信されたある量の無線送信機106と潜在的に消滅したある量の無線送信機108とを更新するためにも役に立つ。現測定パケットMP(i)の中にリストアップされた無線送信機であって、既に受信されたある量の無線送信機106の中にはリストアップされていないものは、既に受信されたこのある量の無線送信機106の中に収容される。従って、モバイル端末機の測定、測位又はナビゲーションの継続時間が増加するにつれて、このある量の無線送信機106も増加する。
【0089】
もし、ある参照パケットのある参照位置において、以前は潜在的に消滅したと考えられていた無線送信機が、現時点に測定された測定パケットMP(i)の中に出現した場合は、その無線送信機は潜在的に消滅したある量の無線送信機108から再度除外され、既に受信されたある量の無線送信機106の中にシフトされる。ある量の無線送信機106は、その量が過大にならぬようにかつ必要かもしれない更新がブロックされないように、所定の間隔でリフレッシュされる。所定の測定周期の長さは所望の更新間隔に依存する。その周期は数時間でも良いし、或いは数日であっても良い。
【0090】
消滅した無線送信機に関する経験メッセージがモバイル端末機10によって生成される場合には、データベース内で起こり得る後続の更新処理は、データベースの全ての参照測定パケット内のその無線送信機の各エントリーを削除又は除外することである。このようにして、経験メッセージ生成手段88は、潜在的に除外されるべきある量の送信機ID108の無線送信機に関する経験メッセージを生成し、さらに、その可能性の値が、除外されるべきある量の送信機ID108内の無線送信機は現在の地理的位置の環境内に実際にはもはや存在しないと推定すべきであることを示す程度の高い値を超えた場合に限り、更新ユニット89に対して送信するよう構成されている。
【0091】
無線送信機、特にプライベート無線LANの無線送信機は、一日のうちのある時間帯だけ活性化している可能性もある。例えば、プライベート無線LANの無線送信機は、その所有者が例えば仕事中である昼間よりも、夜にスイッチオンされることが多い。一日のうちの時間に依存するそのような影響について決定できるように、本発明のある実施形態によれば、既に受信されたある量の無線送信機106は、所定の時間間隔でリフレッシュされる。しかし、これは潜在的に消滅したある量の無線送信機108に対しては適用されない。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、図9に基づいて説明した工程は、モバイル端末機10においてローカルに実行される。つまり、図11に示すように、モバイル端末機10は、潜在的に消滅した無線送信機に関して既にセットアップされた情報を使用して、実行中の測位を向上させる。ある時間間隔で、又は、中央サーバー或いは他のモバイル端末機との接続セットアップに関する好適な任意の時間に、潜在的に消滅した無線送信機及びその関連する追加的情報から経験メッセージが生成され、送信される。この方法は、例えば異なるモバイル端末機の経験メッセージに基づいて参照データベース16が更新されるため、その更新は、単一のモバイル端末機の経験メッセージだけに基づく場合よりも信頼性が高くなるという利点をもたらす。そのため、モバイル端末機10は、空間的に離れた中央参照データベース・サーバー又は他のモバイル端末機に対して、経験メッセージを送信するためのインターフェイスを備える。
【0093】
本発明のある実施形態によれば、図11に概略的に示すように、潜在的に消滅したある量の無線送信機108は、マッチング段階のために、即ち一致度の決定又は現測定パケットMP(i)と参照測定パケットとの間の距離accの決定のために、使用することができる。
【0094】
評価ユニット120は、位置決定の正当性(品質の値)又は経験メッセージが生成された頻度のような、包含された追加的情報に依存して、潜在的に消滅したある量の無線送信機108に関して既に決定された経験メッセージを評価する。フィンガープリンティングを用いた位置決め(ユニット84)においては、比較されるべき各参照測定パケットについて、現測定パケット内に含まれていない無線送信機が決定される。参照測定パケットについてのこれらの無線送信機が示すことは、参照測定パケットが現在位置にマッチしないか、又はこの無線送信機が消滅したかのいずれかである。後者の場合を排除するため、各無線送信機は、消滅したものに分類されるべきか否かについて、評価手段120によってチェックされる。もし分類されるべき場合には、それらの無線送信機は、現測定パケットMP(i)と参照測定パケットとの間のマッチング段階において無視することができる。そのため、手段84は評価ユニット120に接続されており、現測定パケットMP(i)とデータベース16からの参照測定パケットRPとのマッチング(比較)に基づいて、さらに潜在的に除外すべきある量の無線送信機108に関する経験メッセージをその比較の中にフィードバックすることに基づいて、現在の地理的位置を推定する。現在の地理的位置は、現測定パケットMP(i)と参照測定パケットとの間の一致度accに基づいて推定され、その推定は、現測定パケットMP(i)と参照測定パケットとの間で一致する送信機IDの個数と、それらマッチングしている送信機IDに関連する受信された電波強度(RSSI値)に関する量の間の差とに依存するものであり、現在の地理的位置では受信されず、潜在的に除外すべきある量の送信機ID108にはリストアップされている無線送信機は、一致度の値accには影響を与えないような推定方法である。つまり、例えば、現在位置では受信されない無線送信機であって、潜在的に消滅したある量の無線送信機108にリストアップされている無線送信機には、マッチングを減少させるペナルティー関数が与えられない。しかし、もし現在位置では受信されない無線送信機が潜在的に消滅したある量の無線送信機108にはリストアップされていない場合には、これは各無線送信機の単なる短時間遮蔽である可能性があり、それらの無線送信機にはマッチングのためのペナルティー関数が与えられても良い。
【0095】
上述したように、データベース16の更新は各モバイル端末機自身においてローカルに実行されることも可能であり、その場合には、各モバイル端末機がどこに居るのか又はこれまでどこに居たのかに依存して、実用的にはそのモバイル端末機自身の経験の範囲は限られる。本発明の他の実施形態によれば、例えば異なるモバイル端末機と接続された中央サーバーに参照データベース16が記憶されている場合、参照データベース16の更新もまた集中的に実行することができる。このような状態は、図12で概略的に示す。
【0096】
個別のモバイル端末機10a〜10dの経験メッセージは、参照データベース16を有する中央サーバーへと(例えば生の又は前処理済の形式で)適切に送信される。サーバー(図示せず)の評価ユニットによるレンダリング及び他のモバイル端末機の他の各経験メッセージとのマッチングの後で、各参照ポイントにおける各参照測定パケットがある無線送信機により縮小又は拡大されても良い。
【0097】
本発明の参照データ更新の目標として、参照パケットを、新たな無線送信機と場合によっては各RSSI値,PGS値又は更なるデータとによって拡大することが挙げられ、又は、消滅した無線送信機とそれらのエントリーとによって縮小させることも挙げられる。従って、この経験メッセージが適用されるべき測位の位置データから、マッチングしている参照パケットを選択することが必要である。各経験メッセージに関する無線LANの位置決めがどの程度信頼できるかは、それぞれの品質の値に依存して決定することができる。さらなる挑戦として、同一の場所に関する異なるモバイル端末機からの複数の経験メッセージを処理できるという可能性がある。ここで、位置の品質に加え、決定を実行している端末機の品質もまた考慮されることが重要である。さらに、無線信号は異なるレベルで異なるモバイル端末機によって測定されることも考慮されるべきである。偏差は数dBであっても良い。そのため、含有された機器IDに基づいて経験メッセージに対して適切に反応できるようにするため、機器のタイプを事前に特定することも重要である可能性がある。
【0098】
要約すると、本発明の実施形態は、規則的な間隔で参照ポイントの校正だけを目的とする作業を必要とせず、参照パケットを持つ参照データベースを絶えず更新し続けることで、ナビゲーション又は測位の品質を獲得又は向上させるために使用できる。ここで提供された概念では、システムに参加しているモバイル端末機によって、インフラの変化に関する経験メッセージが生成される。それらの経験メッセージは、モバイル端末機の実行中の測位作業にもフィードバックされて、比較的タイムリーな方法で測位の性能向上に役立つこともでき、又は、図13に概略的に示すように、参照データベース16の更新を実行するためにサーバーに送信されても良い。
【0099】
状況に依るが、本発明の更新の概念は、ハードウエア又はソフトウエアにおいて構成可能である。この構成は、その中に格納される電子的に読出し可能な制御信号を有し、本発明の参照データベースの更新方法が実行されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働する、デジタル記憶媒体、特にディスク,CD,DVDなどを使用して実行することができる。一般的に、本発明の実施例は、機械読出し可能なキャリアに記憶されたプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品として構成することができ、このプログラムコードは当該コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で作動するときに、本発明の方法を実行するよう作動する。換言すれば、本発明の方法は、当該コンピュータプログラムがコンピュータ又はマイクロコンピュータ上で作動するときに、本発明の方法を実行するためのプログラムコードを有する、コンピュータプログラムとして実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地理的な参照位置に関連した参照測定パケット(RP)を含む参照データベース(16)を更新するための装置(80)であって、前記参照測定パケットは前記参照位置において参照時刻に受信可能な無線送信機(22)の参照送信機IDを含み、この参照送信機IDは個々の前記地理的な参照位置において前記参照時刻に決定されたものである、装置(80)において、
現在の地理的位置でかつ現時刻(i)における現測定パケット(MP(i))を決定する手段(12)であって、前記現測定パケット(MP(i))が現在の地理的位置でかつ現時刻において受信可能な無線送信機の送信機ID(APk)を含む、手段(12)と、
前記現測定パケット(MP(i))に対して所定の一致度を超えるある量の参照測定パケット(102;RPn)を選択する手段(84)であって、前記選択されたある量の参照測定パケット(102;RPn)が1つ又は複数の参照測定パケットを含む、手段(84)と、
現時刻(i)以前でかつ前記参照データベース(16)の最後の更新以後に受信された送信機ID(106)を、以前に受信されたある量の無線送信機(106)の中に記憶するよう構成された記憶手段(106,108)と、
前記選択されたある量の参照測定パケット(102;RPn)には含まれるが前記現測定パケットには含まれない送信機ID(APold)を決定する決定手段(86)と、
前記決定された送信機ID(APold)に関する経験メッセージを生成する生成手段(88)であって、前記決定された送信機ID(APold)が、前記記憶手段(106、108)によって記憶された前記以前に受信されたある量の無線送信機(106)の中に記憶されていないとき、前記決定された送信機ID(APold)を潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)の中に記憶させるよう構成された手段(88)と、を備えたことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記選択する手段(84)は、前記現測定パケット(MP(i))と前記参照測定パケット(RP)との比較によって前記現在の地理的位置を推定し、さらに前記現測定パケット(MP(i))と前記推定された現在の地理的位置に近い参照位置を有する参照測定パケットとの間の一致度を決定するよう構成され、前記一致度は、前記現測定パケット(MP(i))と前記参照測定パケットとの間で一致する送信機IDの数と、それら一致する送信機IDに関連付けられた受信電波強度に関する量の差とに依存して決定されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記一致度は、より多数の送信機IDが一致するほど、かつ前記差が小さいほど、高くなることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記経験メッセージを生成する手段(88)は、前記潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)に既に関連付けされた送信機ID(APold)が、前記現測定パケット(MP(i))に含まれており、従って前記以前に受信されたある量の無線送信機(106)の中に属する場合、前記送信機ID(APold)を潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)から再度除外するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
データベース(16)を更新する更新ユニット(89)を含み、
前記経験メッセージを生成する手段(88)は、前記潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)の無線送信機に関する経験メッセージを生成するよう構成され、さらに、その可能性の値が、前記除外されるべきある量の送信機ID(108)内の無線送信機は現在の地理的位置の環境内に実際にはもはや存在しないと推定すべきであることを示す高い値を超えた場合に、前記経験メッセージを前記更新ユニット(89)に対して送信するよう構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記選択する手段(84)は、現測定パケット(MP(i))と前記参照測定パケット(RP)との比較に基づいて、及び前記潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)に関する経験メッセージを前記比較の中にフィードバックすることに基づいて、現在の地理的位置を推定するよう構成されていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記現在の地理的位置は、前記現測定パケット(MP(i))とある参照測定パケットとの間の一致度の値(acc)に基づいて推定され、その推定は、前記現測定パケットMP(i)と前記ある参照測定パケットとの間で一致する送信機IDの個数と、それら一致している送信機IDに関連する受信電波強度に関する量の差とに依存するものであり、前記現在の地理的位置では受信されずに潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)にはリストアップされている無線送信機は、前記一致度の値には影響を与えないことを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
モバイル端末機(10)に実装された、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記モバイル端末機(10)は無線LAN可能なモバイル端末機である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置(80)によって受信可能な前記無線送信機は、MACアドレスを送信機IDとして有する無線LANベースステーションである、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
地理的な参照位置に関連した参照測定パケット(RP)を含む参照データベース(16)を更新するための方法であって、前記参照測定パケットは前記参照位置において参照時刻に受信可能な無線送信機(22)の参照送信機IDを含み、この参照送信機IDは個々の前記地理的な参照位置において前記参照時刻に決定されたものである、方法において、
現在の地理的位置でかつ現時刻(i)における現測定パケット(MP(i))を決定するステップ(92)であって、前記現測定パケット(MP(i))が現在の地理的位置でかつ現時刻において受信可能な無線送信機の送信機ID(APk)を含むステップ(92)と、
前記現測定パケット(MP(i))に対して所定の一致度を超えるある量の参照測定パケット(102;RPn)を選択するステップ(94)であって、前記選択されたある量の参照測定パケット(102;RPn)が1つ又は複数の参照測定パケットを含むステップ(94)と、
現時刻(i)以前でかつ前記参照データベース(16)の最後の更新以後に受信された送信機ID(106)を、以前に受信されたある量の無線送信機(106)の中に記憶するステップ(106)と、
前記選択されたある量の参照測定パケット(102;RPn)には含まれるが前記現測定パケットには含まれない送信機ID(APold)を決定するステップ(96)と、
前記決定された送信機ID(APold)に関する経験メッセージを生成するステップ(98)であって、前記決定された送信機ID(APold)が前記以前に受信されたある量の無線送信機(106)の中に記憶されていない時、前記決定された送信機ID(APold)を潜在的に除外されるべきある量の送信機ID(108)の中に記憶させるステップ(98)と、
を含む方法。
【請求項12】
コンピュータ又はマイクロコンピュータに請求項11に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−507872(P2013−507872A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533647(P2012−533647)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065552
【国際公開番号】WO2011/045425
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(500341779)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト・ツール・フェルデルング・デル・アンゲヴァンテン・フォルシュング・アインゲトラーゲネル・フェライン (75)
【Fターム(参考)】