説明

参照変形体固定具、参照変形体、その参照変形体を備えた超音波探触子及びその超音波探触子を備えた超音波診断装置

【課題】超音波探触子の超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気や、塗布された余分な超音波ゼリーを除去できる構成の参照変形体固定具及び参照変形体を提供する。
【解決手段】超音波探触子3の超音波送受信面3a部の外周に装着される下部枠体24と、下部枠体24に被冠して係止される上部枠体25とを備え、参照変形体16を超音波探触子の超音波送受信面に密着させて固定する参照変形体固定具において、参照変形体固定具又は参照変形体16の一方に、参照変形体16と超音波送受信面3aとの密着面に通ずる空間部として、例えば貫通孔29を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性情報を計測する際に、超音波探触子を介して被検体に付与する圧力の評価に好適な参照変形体の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子により被検体内部に超音波を送信し、被検体内部から生体組織の構造に応じた超音波の反射エコー信号(RF信号)を受信し、例えばBモード像等の断層画像を構成して診断用に表示する。
【0003】
近年、手動又は機械的な方法により超音波探触子で被検体を圧迫して反射エコー信号を受信し、計測時間が異なる2つのRF信号フレームデータに基づいて圧迫により生じた生体各部の変位を求め、その変位データに基づいて生体組織の弾性を表す弾性画像を生成することが行われている。ここで、変位データは、被検体に付与する圧迫(圧力)によって変動するものであるから、変位データに基づいて演算される生体組織の歪みなどの弾性情報は、客観的あるいは絶対的(以下、絶対的と総称する。)なものではない。また、弾性率などの弾性情報を取得するには、生体各部に作用する応力データが必要なことから、種々の応力計測法が試みられている。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1、2に記載されているように、絶対的な弾性情報を取得するために、超音波探触子の超音波送受信面と被検体の体表との間に参照変形体を挟み、被検体に付与される圧力を評価することが行われている。すなわち、参照変形体に加わる圧力と変位の関係データを取得しておき、超音波探触子により被検体を圧迫して断層画像を計測すると同時に参照変形体の断層画像を計測する。これにより、参照変形体の断層画像の変位データを基準として、被検体の断層画像の変位データを絶対的に評価可能になる。また、特許文献1には、参照変形体を超音波探触子に装着する作業を容易にする参照変形体の固定具が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、スクリーニングの場合、参照変形体によけいな歪みが生じたり、所定の位置からずれてしまうことを防止することが開示されている。すなわち、同文献に記載の参照変形体は、直方体部と、この直方体部の下面と面一に側面から張り出された鍔部とを有して形成されている。また、参照変形体固定具は、超音波探触子の超音波送受信面部の外周に装着される下部枠体と、この下部枠体に被冠して係止される上部枠体とを備えて形成されている。下部枠体は、参照変形体の鍔部の下面に接する枠状の挟持面を有して形成され、上部枠体は、参照変形体の直方体部の側面に接する支持枠と、下部枠体の挟持面とで鍔部を挟持する挟持面とを有して形成されている。そして、下部枠体の挟持面を超音波送受信面と面一に超音波探触子に装着し、参照変形体の鍔部を下部枠体の挟持面に載置し、上部枠体の支持枠を参照変形体の直方体部に嵌め込んで、上部枠体を下部枠体に係止することにより、下部枠体の挟持面と上部枠体の挟持面とで鍔部を挟持して、参照変形体を超音波探触子の超音波送受信面に密着させて固定するようにしている。これにより、上部枠体の支持枠により参照変形体の位置ずれが防止されるとともに、下部枠体の挟持面と上部枠体の挟持面とで鍔部を挟持しているから、参照変形体によけいな歪みが生ずることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−259541号公報
【特許文献2】特開2010−263963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に記載の参照変形体及びその固定具は、参照変形体と超音波送受信面の間に空気が混入する場合があることについて配慮されていないという問題がある。また、参照変形体と超音波送受信面の密着性を上げるために、それらの間に超音波ゼリー等を塗布することがあるが、特許文献1,2では、超音波ゼリーの塗布量が多すぎるなど適量でない場合について配慮されていないという問題がある。
【0008】
すなわち、参照変形体と超音波送受信面との間に空気が侵入すると、超音波の伝播が影響を受けて、断層画像や弾性像等の超音波像にアーチファクトが生じるという問題がある。また、参照変形体と超音波送受信面との間に塗布する超音波ゼリーの塗布量が多すぎると、超音波ゼリーの塗布膜の厚みが不均一になり、参照変形体の歪みに偏りが生じる。その結果、被検体に加えられる圧力を適正に評価することができないことから、生体各部の適正な絶対的弾性情報を取得できないという問題がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、超音波探触子の超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気や、塗布された余分な超音波ゼリーを除去する構成の参照変形体固定具及び参照変形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明は、参照変形体固定具又は参照変形体の一方に、参照変形体と超音波送受信面との密着面に通ずる空間部を形成することを特徴とする。これによれば、超音波探触子に装着された参照変形体の直方体部の上面を手又は指などにより押圧すると、超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気は、密着面に通ずる空間部に排出されて除去される。同様に、余分な超音波ゼリーは密着面に通ずる空間部に排出されて除去される。その結果、参照変形体と超音波送受信面との間に侵入した空気に起因するアーチファクトを防止することができ、また余分な超音波ゼリーによる参照変形体の歪みの偏りを防止できる。
【0011】
具体的に、本発明の参照変形体固定具は、超音波探触子の超音波送受信面部の外周に装着される第1の枠体と、該第1の枠体に被冠して係止される第2の枠体とを備え、前記第1の枠体は、直方体部と前記直方体部の一面側の側面から張り出された鍔部とを有する参照変形体の前記鍔部の前記一面と面一の面に接する枠状の挟持面を有し、前記第2の枠体は、前記参照変形体の少なくとも前記直方体部の側面に接する支持枠と、前記第1の枠体の前記挟持面とで前記鍔部を挟持する挟持面とを有し、前記参照変形体を前記超音波探触子の超音波送受信面に密着させて固定する参照変形体固定具において、前記第1の枠体は、前記参照変形体と前記超音波送受信面との密着面に通ずる空間部を有して形成されていることを特徴とする。
【0012】
このように、本発明の参照変形体固定具の第1の枠体に、参照変形体と超音波送受信面との密着面に通ずる空間部を形成したことから、超音波探触子に装着された参照変形体を上面から指で圧迫することにより、あるいは参照変形体を被検体の体表面などに押し付けることにより、超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気は、密着面に通ずる空間部に排出されて除去される。同様に、余分な超音波ゼリーは密着面に通ずる空間部に排出されて除去される。ここで、空間部の容積を十分確保できれば空気及び余分な超音波ゼリーを密着面から除去できる。空間部の容積を十分確保できない場合は、第1の枠体の外表面に空間部に通ずる開口を設けることが好ましい。
【0013】
また、本発明の参照変形体は、直方体部と前記直方体部の一面側の側面から張り出された鍔部とを有し、少なくとも前記直方体部の側面に接する支持枠を有する参照変形体固定具により固定して、超音波探触子の超音波送受信面に密着させて用いる参照変形体において、前記超音波送受信面との密着面に開口する空間部が形成されてなることを特徴とする。
【0014】
このように、本発明の参照変形体に、超音波送受信面との密着面に開口する空間部を形成したことから、超音波探触子に装着された参照変形体を被検体の体表面などに押し付けることにより、超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気及び余分な超音波ゼリーは、密着面に通ずる空間部に排出されて除去される。この場合も、空間部の容積を十分確保できない場合は、参照変形体の外表面に空間部に通ずる開口を設けることが好ましい。
【0015】
また、本発明の参照変形体の空間部に代えて、次の態様を適用することができる。すなわち、超音波送受信面との密着面の長軸の縁又は縁近傍から鍔部の外側面に向かう1又は複数の溝を形成してもよい。
【0016】
また、本発明の参照変形体は、上記の構成に代えて、超音波探触子の超音波送受信面に密着される直方体部と、前記直方体部の側面部から垂設された角形筒状の把持部とを備え、前記把持部を前記超音波探触子の前記超音波送受信面部の外周に被冠して用いる参照変形体において、前記把持部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の角部に対応する部位に一端が開口され、他端が前記把持部の外面に開口する孔が形成されているものとすることができる。さらに、これに代えて、前記把持部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の短辺に対応する部位に沿って溝が形成されてなるものとすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、超音波探触子の超音波送受信面と参照変形体との密着面に侵入した空気や、塗布された余分な超音波ゼリーを除去する構成の参照変形体固定具及び参照変形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の超音波診断装置のブロック構成図である。
【図2】本発明に係る参照変形体及びその固定具の基本構成を説明する図である。
【図3】本発明に係る参照変形体及びその固定具の基本構成の問題を説明する図である。
【図4】本発明の実施例1の参照変形体固定具の特徴構成を説明する図である。
【図5】本発明の実施例2の参照変形体固定具の特徴構成を説明する図である。
【図6】本発明の実施例3の参照変形体固定具の特徴構成を説明する図である。
【図7】本発明の実施例4の参照変形体固定具の特徴構成を説明する図である。
【図8】本発明の実施例5の参照変形体固定具の特徴構成を説明する図である。
【図9】本発明の実施例6の参照変形体の特徴構成を説明する図である。
【図10】本発明の実施例7の参照変形体の特徴構成を説明する図である。
【図11】本発明の実施例8の参照変形体の特徴構成を説明する図である。
【図12】本発明の実施例9の参照変形体の特徴構成を説明する図である。
【図13】本発明の実施例10の参照変形体の特徴構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の超音波診断装置の一実施形態の構成を図1を参照して説明する。本実施形態の超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位についての断層画像を取得するとともに、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を生成して画像表示するように構成されている。超音波診断装置は、図1に示すように、超音波送受信制御部1と、送信部2と、超音波探触子3と、受信部4と、整相加算部5と、信号処理部6と、白黒スキャンコンバータ7と、RF信号フレームデータ選択部8と、変位・歪み演算部9と、弾性率演算部10と、弾性データ処理部11と、カラースキャンコンバータ12と、切替加算部13と、画像表示器14と、圧力演算部15と、参照変形体16を具備して構成されている。
【0020】
超音波探触子3は、多数の短冊状の振動子を配列して形成され、一般に振動子の配列方向を長軸、これに直交する方向を短軸と称している。超音波探触子3は、超音波送受信制御部1により制御される送信部2により駆動される。すなわち、送信部2から出力される超音波信号に応じて複数の振動子から被検体に超音波ビームを送波し、被検体から戻ってくる反射エコー信号を受信するように構成されている。そして、超音波探触子3は、機械方式又は電子方式により長軸方向に超音波ビームを走査して、走査面状の各部位からの反射エコー信号を受信して受信部4に出力するようになっている。ここで、超音波送受信制御部1は、超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。送信部2は、超音波探触子3を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、内蔵された送波整相加算部によって送信される超音波の収束点を設定深さに制御する。
【0021】
受信部4は、超音波探触子3で受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅処理する。受信部4で増幅された口径に対応する複数の振動子の各反射エコー信号は、整相加算部5に入力される。整相加算部5は入力される複数の反射エコー信号の位相を合わせて加算して、RF信号フレームデータを生成する。信号処理部6は、整相加算部5から出力されるRF信号フレームデータを入力して、ゲイン補正、ログ補正、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の各種信号処理を行って、白黒スキャンコンバータ7に出力する。白黒スキャンコンバータ7は、入力されるRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、テレビジョン方式の周期で読み出して、例えばディジタル信号の断層画像データに変換するA/D変換器と、ディジタル化された断層画像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成されている。
【0022】
白黒スキャンコンバータ7で生成された断層画像データは、切替加算部13を介して画像表示器14に送出されるようになっている。画像表示器14は、白黒スキャンコンバータ7によって得られた時系列の断層画像データに基づいて断層画像を表示する。すなわち、切替加算部13を介して白黒スキャンコンバータ7から出力される断層画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器から出力されるアナログビデオ信号を入力して断層画像を表示するカラーテレビモニタを含んで構成される。
【0023】
次に、弾性画像を取得して画像表示器14に表示する系統について説明する。弾性画像を取得する系統は、RF信号フレームデータ選択部8と、変位・歪み演算部9と、弾性率演算部10と、弾性データ処理部11と、カラースキャンコンバータ12と、圧力演算部15と、超音波探触子3の超音波送受信面に装着された参照変形体16を備えて構成されている。一般に、弾性画像を取得するために、超音波探触子3で超音波送受信を行なうとともに、超音波探触子3で被検体を圧迫して診断部位に応力を与えることが行われている。本実施形態では、超音波探触子3の超音波送受信面に参照変形体16を装着し、参照変形体16を被検体の体表に接触させて超音波探触子3で被検体を圧迫するようになっている。
【0024】
RF信号フレームデータ選択部8は、整相加算部5から出力されるRF信号フレームデータ(又は、RF信号を複素復調したI,Q信号データでもよい。)を順次入力してフレームメモリ内に順次記憶する。そして、取得時間が異なる2つのRF信号フレームデータを選択して、変位・歪み演算部9と圧力演算部15に出力するようになっている。例えば、RF信号フレームデータ選択部8は、最新のRF信号フレームデータNと、図示していない制御部からの制御命令に従って時間的に過去に取得されたRF信号フレームデータN−1、N−2、N−3・・・N−Mの中から1つのRF信号フレームデータXを選択して、2つのRF信号フレームデータN、Xを変位・歪み演算部9と圧力演算部15に出力する。
【0025】
変位・歪み演算部9は、RF信号フレームデータ選択部8によって選択された2つのRF信号フレームデータN、Xに基づいて1次元又は2次元の相関処理を実行し、断層画像上の各計測点の変位又は移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を演算して、変位フレームデータと相関フレームデータを生成する。そして、変位フレームデータから各計測点の歪みを演算する。歪みの演算は、例えば、各計測点の変位を空間微分することによって求める。また、移動ベクトルの検出は、例えば、特許文献1に記載されたようなブロック・マッチング法やグラジェント法がある。ブロック・マッチング法は、RFフレームデータXを例えばk×k画素からなるブロックに分け、RFフレームデータX中の着目ブロックのRFデータにもっとも近似しているブロックをRFフレームデータNから探索する。そして、それらのブロックの座標差等から移動ベクトルを求める。
【0026】
一方、圧力演算部15は、まず、入力される2つのRF信号フレームデータN、Xを用いて、被検体と参照変形体16との境界を検出し、RF信号フレームデータN、Xにおける境界の座標を境界座標データとして検出する。そして、圧力演算部15は、境界座標データを用いて、2つのRF信号フレームデータN、Xにおける参照変形体16からのRF信号を抽出し、被検体と参照変形体16の境界に与えられた圧力を演算により求める。つまり、参照変形体16の変位と圧力の関係データを予め取得しておき、2つのRF信号フレームデータN、Xの境界座標データの差を求めて参照変形体16の変位量を求め、参照変形体16の変位Δxと圧力pの関係データに基づいて、参照変形体16の深度方向に加えられた圧力を求めることができる。なお、圧力演算部15は、これに限られるものではなく、参照変形体16の中に基準関心領域(ROI)を設定して、上述した変位・歪み演算部9と同様にして、ROIの例えば歪みεを求め、参照変形体16の歪みεと圧力p(又は、応力σ)の関係データに基づいて、参照変形体16の深度方向に加えられた圧力を求めることができる。さらに、被検体内の組織に設定した関心領域(ROI)における歪み値を、参照変形体16の歪みεを基準にして、比などの指標値で表して評価することができる。
【0027】
弾性率演算部10は、変位・歪み演算部9から出力される歪み情報と圧力演算部15から出力される圧力情報から弾性率を演算して、弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、弾性データ処理部11とカラースキャンコンバータ12に出力するものである。弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算については、以下の式(1)に示すように、各計測点における応力(圧力)を各計測点における歪みで除することにより求める。数式(1)において、i,jは、フレームデータの各計測点の座標を表す。
Ymi,j=p(又はσ)i,j/(εi,j) (i,j=1,2,3,…) (1)
【0028】
弾性データ処理部11は、算出された弾性フレームデータに座標変面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を行なう。カラースキャンコンバータ12は、白黒スキャンコンバータ7と同様に、入力される弾性フレームデータをテレビジョン方式の周期で読み出して、弾性フレームデータを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成されている。また、カラースキャンコンバータ12は、弾性フレームデータの計測点又は画素の弾性情報に応じて予め定められた色相付けを行って、カラー弾性画像データを切替加算部13に出力する。切替加算部13は、白黒スキャンコンバータ7から出力される断層画像データと、カラースキャンコンバータ12から出力されるカラー弾性画像データを、それぞれ単独に、あるいは並べて、さらには断層画像に弾性画像を重ねた合成画像を生成して、画像表示器14に表示するようになっている。
【0029】
また、被検体圧迫機構18は、モータやワイヤなどにより超音波探触子3を上下方向に移動させ、被検体を加圧するものである。なお、操作者が超音波探触子3を上下方向に手動で移動させてもよい。
【0030】
図2に、参照変形体16と、参照変形体16を超音波探触子3に装着する参照変形体固定具(以下、単に固定具と略す。)の基本構成を示す。図2(a)、(b)に示すように、固定具17は、第1の枠体である下部枠体24と第2の枠体である上部枠体25からなる。参照変形体16は、図2(e)に示すように、直方体部27と直方体部27の一面側(図において下面)の側面から張り出された鍔部28とを有して、一体に形成されている。下部枠体24は、図2(c)の斜視図に示すように、長方形に形成された超音波送受信面(以下、単に送受信面と略す。)3aの外周に嵌め込み可能な開口24aが形成された枠部24bと、開口24aの縁部から垂下された筒状の把持部24cを有して形成されている。また、枠部24bの上面は、参照変形体16の鍔部28の裏面(図において下面)が接する枠状の挟持面24dが形成されている。一方、上部枠体25は、参照変形体16の直方体部27が挿入可能な開口25aが形成された枠部25bと、枠部25bの外周縁から垂下され下部枠体24の枠部24bの外周に被冠される筒状の係合部25cと、係合部25cの下端から下部枠体24の枠部24bの下面に向かって突出された爪部25dを有して形成されている。なお、図示していないが、下部枠体24の下端の内面側に超音波探触子3のケース外面に形成された凹部に係合可能な突起ないし係止爪を設けてもよい。
【0031】
参照変形体16は、音響結合材料や音響レンズ素材などの超音波減衰が小さく、かつ、音速、音響インピーダンスが生体内のものに近いなど、生体との音響結合特性に優れ、同時に、形状復元性及び保形性にも優れた素材にて構成された材料を用いることが好ましい。例えば参照変形体16は、オイル系のゲル素材やアクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどをベースとして形成することができる。粘性の低いアクリルアミドなど素材によって構成されていれば、圧迫操作に俊敏に応答するため圧力計測に適している。
【0032】
このように形成されることから、図2に示す基本構成の固定具17は、図2(a)、(b)に示すように、下部枠体24の把持部24cを超音波探触子3に嵌め込んで装着する。このとき、下部枠体24の挟持面24dが超音波探触子3の送受信面3aに面一になるように装着する。次いで、参照変形体16の鍔部28の裏面を下部枠体24の挟持面24dに位置させて載置する。そして、上部枠体25の開口25aを参照変形体16の直方体部27に嵌め込み、さらに上部枠体25の爪部25dを下部枠体24の枠部24bの下面に係止する。これにより、下部枠体24の挟持面24dと上部枠体25の枠部25bの下面に形成された挟持面25eとで、参照変形体16の鍔部28が挟持され、参照変形体16の下面が超音波探触子3の送受信面3aに密着される。また、参照変形体16は、直方体部27の側面が上部枠体25の開口25aの縁部で位置決めされ、かつ鍔部28の側面が上部枠体25の係合部25cの内面で位置決めされる。このようにして、図2に示す固定具17によれば、参照変形体16を超音波探触子3の送受信面3aにしっかりと固定することができ、スクリーニングにおいて参照変形体16の位置ずれを防止することができる。また、下部枠体24の挟持面24dと上部枠体25の枠部25bの下面(挟持面)とで鍔部28を挟持しているから、参照変形体16によけいな歪みが生ずることを防止できる。
【0033】
しかし、図2に示した基本構成の参照変形体固定具によれば、本発明が解決しようとする課題で説明したように、上部枠体25の枠部25bの下面(挟持面)と下部枠体24の挟持面24dとによって参照変形体16の鍔部28が挟持されるから、参照変形体16の装着時に超音波探触子3の送受信面3aとの間に空気が侵入すると、その空気が抜けにくいという問題がある。また、超音波探触子3の送受信面3a又は参照変形体16のいずれか一方、あるいは双方の密着面に超音波ゼリーを塗布して参照変形体16を装着することがある。この場合、超音波ゼリーの塗布量が適切な量を越えると、超音波ゼリーの塗布膜の厚みが不均一になり、被検体に加えられる圧力を適正に評価することができないという問題がある。つまり、図3(a)の超音波画像に例示すように、送受信面3aと参照変形体16との密着部に空気19が侵入していると、超音波の伝播が影響を受けて、断層画像や弾性像等の超音波像22にアーチファクト20が生じ、空気19が存在している部分の下方の超音波像22は正常な像が表示されない。また、図3(b)の超音波画像に例示すように、参照変形体16と送受信面3aとの間に塗布する超音波ゼリーの塗布量が多すぎると、余分な超音波ゼリー21の行き場がないことから、超音波ゼリーの塗布膜の厚みが不均一になり、参照変形体16の歪みに偏りが生じ、被検体に加えられる圧力を適正に評価することができない。そのため、生体各部の適正な絶対的弾性情報を取得できないという問題がある。
【0034】
以下、図2の基本構成の固定具が有する問題を解決する本発明の固定具又は参照変形体の特徴構成を、それぞれ実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
図4に、本発明の固定具17の実施例1の模式図を示す。同図(a)は、同図(b)及び(c)に示した点線Xにおける断面図であり、同図(b)は下部枠体24の上面図、同図(c)は参照変形体16が装着された固定具17の斜視図である。本実施例が図2の基本構成と異なる点は、長方形に形成された送受信面3aの4隅の角部に対向する下部枠体24の開口24aの角部に、参照変形体16と送受信面との密着面に通ずる空間部である貫通孔29が形成されていることにある。貫通孔29は、開口24aの角部の下部枠体24をえぐることにより、探触子3の外表面との間で形成されている。また、下部枠体24の把持部24cの高さ寸法が短く形成されている。しかし、把持部24cの高さ寸法は、図2と同様に高く形成してもよい。その他の構成は図2と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
つまり、本実施例の固定具は、超音波探触子3の送受信面3a部の外周に装着される下部枠体(第1の枠体)24と、下部枠体24に被冠して係止される上部枠体(第2の枠体)25とを備え、参照変形体16を送受信面3aに密着させて固定する固定具であり、第1の枠体24には、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通ずる空間部である貫通孔29が、探触子3の外表面との間に形成されている。空間部である貫通孔29は、下部枠体(第1の枠体)24の外表面に形成された開口に通じて形成されている。空間部である貫通孔29は、長方形に形成された送受信面3aの角部に対応する部位に通じている。
【0036】
図2で説明したように、超音波ゼリーを塗布して参照変形体16を固定具17で挟んで送受信面3aに密着させると、参照変形体16と送受信面3aとの間に余分な超音波ゼリーや装着時に混入した空気が存在することがある。この点、本実施例によれば、密着面に通じる空間部である貫通孔29を形成したことから、参照変形体16を上面から指で圧迫すると、余分な超音波ゼリーは貫通孔29を通って超音波探触子3のケース側面へ流れ出るので、参照変形体16と送受信面3aの密着を確実にできる。その結果、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16の柔軟な変形を損なうことなく、かつ、参照変形体16に偏った歪みを与えることなく参照変形体16の固定が可能となる。また、空気が抜け出ることで、断層画像や弾性画像でアーチファクトが生じなくなる。
【0037】
貫通孔29の位置は、図4(b)のような四隅、つまり、送受信面3aの長軸方向の端部であって、かつ短軸方向の端部に形成することが望ましい。すなわち、超音波探触子3の長軸方向の端部に対応する部分の超音波像が貫通孔29によって影響を受けるが、その影響を無視できるほど小さくできる。また、貫通孔29の位置は、本実施例のように送受信面3aの四隅に限られるものではない。例えば、超音波探触子3の短軸方向及び/又は長軸方向の辺部に形成しても、本実施形態と同一の効果を奏することができる。要するに、貫通孔29の位置は超音波像の画質に影響が生じない位置であれば、送受信面3aの短手方向、長手方向の位置は問わない。
【0038】
また、貫通孔29の個数は4つに限られるものではない。さらに、貫通孔29の断面形状は円筒、多角柱状、円錐状、多角錐状、スリット状でもよい。要は、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる十分な容積を有する孔、窪み、空洞、空所、等の空間部を下部枠体24に形成すれば、本発明の効果を奏することができる。また、これらの空間部は、下部枠体24の外表面に開口させて形成すれば、空気や余分な超音波ゼリーを外部に排出できるので、空間部の容積を小さくすることができる。
【0039】
(実施例2)
図5に、本発明の固定具17の実施例2の模式図を示す。同図(a)は参照変形体16が装着された固定具17の斜視図であり、同図(b)は同図(a)に示した線Xにおける断面図である。本実施例が図2の基本構成及び実施例1と異なる点は、送受信面3aの長軸方向の両端又は両端近傍の密着面に通じる貫通孔30を下部枠体24及び上部枠体25にわたって形成したことにある。その他の構成は、基本構成及び実施例1と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施例によれば、下部枠体24に密着面に通じる空間部である貫通孔30を形成したことから、実施例1と同一の作用により、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16の柔軟な変形を損なうことなく、かつ、参照変形体16に偏った歪みを与えることなく、参照変形体16の固定が可能となる。また、空気が抜け出ることで、断層画像や弾性画像でアーチファクトが生じなくなる。
【0041】
(実施例3)
図6に、本発明の固定具17の実施例3の模式図を示す。同図(a)は参照変形体16が装着された固定具17の下部枠体24の上面図であり、同図(b)は同図(a)に示した線Xにおける断面図である。本実施例が図2の基本構成及び実施例1、2と異なる点は、送受信面3aの長軸方向の対向する2辺に分散して、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる窪み31を下部枠体24の挟持面24に形成したことにある。その他の構成は、基本構成及び実施例1と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施例によれば、下部枠体24に密着面に通じる空間部である窪み31を形成したことから、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーは、参照変形体16の上面を押圧することにより、密着面から窪み31に移動する。その結果、密着面に侵入した空気が窪み31に排出されるとともに、密着面に塗布された余分な超音波ゼリーが窪み31に排出される。これにより、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16の柔軟な変形を損なうことなく、かつ、参照変形体16に偏った歪みを与えることなく、参照変形体16の固定が可能となる。また、空気が抜け出ることで、断層画像や弾性画像でアーチファクトが生じなくなる。
【0043】
なお、本実施例において、窪み31は溝形状でもよいことは言うまでもない。この場合、窪み31又は溝の一端を送受信面の短軸の縁又は縁近傍に対応する部位に位置させて、密着面に通ずるように形成する。また、超音波像の撮像範囲外の位置に窪み31の加工をすることが好ましい。また、窪み31は、長手方向だけではなく、短手方向に設けてもよい。さらに、窪み31の個数や位置は超音波像の撮像範囲外であれば限定されるものではない。また、断面形状は半球、円筒、多角柱、円錐柱、直方体、波状や幾何学模様などでもよい。
【0044】
(実施例4)
図7に、本発明の固定具17の実施例4の模式図を示す。同図(a)は固定具17の下部枠体24の上面図であり、同図(b)は同図(a)に示した線Xにおける断面図である。本実施例が実施例3と異なる点は、下部枠体24の挟持面24dに形成した窪み31を、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる位置から、下部枠体24の外表面にまで形成したことにある。その他の構成は、基本構成及び実施例3と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】
本実施例によれば、実施例3の効果に加えて、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーが多くても、密着面から窪み31を通して下部下枠24の外部に排出されることになる。その結果、実施例3に比べて、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16に偏った歪みを与えることなく、参照変形体16の固定が可能となる効果を確実に実現できる。また、空気が抜け出ることで、断層画像や弾性画像でアーチファクトが生じなくなる効果を確実に実現できる。
【0046】
(実施例5)
図8に、本発明の固定具17の実施例5の模式図を示す。同図(a)は固定具17の下部枠体24の上面図であり、同図(b)は同図(a)に示した線Xにおける断面図である。本実施例が図2の基本構成及び実施例1乃至4と異なる点は、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる空間部として、下部枠体24の挟持面24dの開口24aの縁部に送受信面3aの外周縁を取り囲んで切欠き段差部32を形成したことにある。その他の構成は、図2の基本構成と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施例によれば、下部枠体24の開口24aの縁部に沿って、密着面に通じる空間部である切欠き段差部32を形成したことから、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーは、参照変形体16の上面を押圧することにより、密着面の外周を取り囲む切欠き段差部32に速やかに移動する。これにより、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16の柔軟な変形を損なうことなく、かつ、参照変形体16に偏った歪みを与えることなく、参照変形体16の固定が可能となる。また、空気が抜け出ることで、断層画像や弾性画像でアーチファクトが生じるのを防止できる。
【0048】
(実施例6)
図9に、本発明の課題を解決する参照変形体16の実施例6の模式構成図を示す。同図(a)は参照変形体16が装着された固定具17の斜視図、同図(b)は同図(a)の線Xにおける断面図、同図(c)は同図(a)の線Yにおける断面図である。実施例1乃至5は、本発明の課題を解決する固定具17について示したが、本実施例は参照変形体16によって本発明の課題を解決するものである。図9(a)〜(c)に示すように、本実施例は、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる空間部として、送受信面3aの長軸方向の両端部に対応する参照変形体16の位置に、直方体部16の上面から送受信面3aに通じる貫通孔33をそれぞれ穿設したことにある。つまり、固定具17により固定され、超音波探触子3の送受信面3aに密着させて用いる参照変形体16に、送受信面3aとの密着面に開口する空間部が形成されていることを特徴とする。その他の構成は、図2の基本構成等と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
本実施例によれば、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる空間部として、参照変形体16に貫通孔33を設けたことから、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーは、参照変形体16の上面を押圧することにより、貫通孔33を通って参照変形体16の上面から外部に排出される。これにより、実施例1〜5と同一の効果を奏することができる。また、本実施例によれば、参照変形体16の貫通孔33の中に超音波ゼリーが残るが、超音波ゼリーの音響特性を参照変形体16の音響特性に近いものを選定することにより、超音波像の画質に与える影響を無視することができる。
【0050】
(実施例7)
図10に、本発明の課題を解決する参照変形体16の実施例7の模式構成図を示す。同図(a)は参照変形体16の正面図、同図(b)は参照変形体16を送受信面3a側から見た下面図、同図(c)は同図(a)又は(b)の線Xにおける断面図である。本実施例は、図7の実施例4の変形例である。すなわち、実施例4では、下部枠体24の挟持面24dに窪み31を形成したが、本実施例は窪み31に対応する窪み34を参照変形体16の鍔部28の下面に形成したことが相違する。その他の構成は、図2の基本構成等と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本実施例によれば、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる空間部として、参照変形体16の鍔部28の下面に窪み34を形成したことから、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーは、参照変形体16の上面を押圧することにより、窪み34を通って参照変形体16の鍔具28の側面から外部に排出される。これにより、実施例4と同一の効果を奏することができる。
【0052】
(実施例8)
図11に、本発明の課題を解決する参照変形体16の実施例8の模式構成図を示す。同図(a)は参照変形体16の短軸方向の中心を通る面で、長軸方向に沿って切断した断面図である。同図(b)は参照変形体16を送受信面3a側から見た下面図、同図(c)は参照変形体16の短軸方向に沿って切断した断面図である。本実施例は、図8の実施例5の変形例である。すなわち、実施例5では、下部枠体24の開口24aの縁部に切欠き段差部32を形成した。本実施例では、切欠き段差部32に対応する溝35を、参照変形体16の鍔部28の下面の送受信面3aの外周を取り囲む位置に形成したことが相違する。その他の構成は、図2の基本構成等と同一であることから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施例によれば、参照変形体16と送受信面3aとの密着面に通じる空間部として、参照変形体16の鍔部28の下面の送受信面3aの外周を取り囲む位置に溝35を形成したことから、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーは、参照変形体16の上面を押圧することにより、溝35に移動して密着面から排除される。これにより、他の実施例と同一の効果を奏することができる。なお、溝35の容積は、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーを収容できる大きさが好ましいが、さらに溝35の適宜箇所を参照変形体16の鍔部28の側面に開口した溝を連結することができる。これによれば、密着面に侵入した空気や塗布された余分な超音波ゼリーが多くても、確実に密着面から除去できる。
【0054】
(実施例9)
図12に、本発明の課題を解決する参照変形体40の実施例9の模式構成図を示す。同図(a)は参照変形体40の正面図、同図(b)は参照変形体40を送受信面3a側から見た下面図、同図(c)は参照変形体40の短軸方向の側面図、同図(d)は参照変形体40を超音波探触子3のヘッド部に被冠した状態における長軸方向に沿った断面図である。図示のように、本実施例の参照変形体40は、実施例1〜8の参照変形体16と固定具17とを一体化した実施例であり、図8に示すように、参照変形体40を超音波探触子3の送受信面3a側のヘッド部に被冠して装着するキャップ状に形成されている。
【0055】
図12に示すように、参照変形体40は、実施例1〜8の直方体部27に対応する参照変形体部41を備えている。参照変形体部41は、一定の厚みを有する平板状に形成され、超音波探触子3の送受信面3aに対応した直方体部を有して形成されている。参照変形体部41の下面側に垂下させて筒状体の把持部42が形成されている。把持部42は参照変形体部41と例えば同一の材料で一体に形成することができる。また、把持部42を超音波探触子3のヘッド部3bに被冠して装着するとき、把持部42の口径を広げて被冠することになるから、一定の弾性を有する材料で形成することが好ましい。そこで、本実施例では、装着時に把持部42の口径を広げ易くするため、把持部42の下部側に伸縮可能な蛇腹状のゴム状部43が形成されている。したがって、本実施例の参照変形体40は、超音波探触子3のヘッド部3bが挿入される中空部を有して形成されている。なお、参照変形体40は、基本的に使い捨てするものであり、繰り返し着脱するものではないから、把持部42及びゴム状部43の弾性変形の繰り返し強度はあまり問題とならない。
【0056】
本実施例の特徴は、中空状の参照変形体40が装着される音波探触子3の送受信面3aに対応する参照変形体部41の内面41aに対応する把持部42の位置に、貫通孔44が形成されていることにある。本実施例では、貫通孔44を送受信面3aの4つの角部(隅部)に通ずる位置に形成しているが、これに限られるものではなく、参照変形体部41の内面41aと送受信面3aとの密着面に通じていれば、貫通孔44の断面形状は、円柱状、多角柱状、円錐状、多角錐状、スリット状、波状、幾何学模様の切れ込みであってもよい。また、貫通孔44の個数はいくつでもよく、送受信面3aから貫通させる位置は、参照変形体部41の何処の外表面でもよい。例えば、貫通孔44をL字型に曲折させて参照変形体40の側面に開口させてもよい。
【0057】
このように形成される本実施例によれば、参照変形体40を超音波探触子3に被冠して送受信面3aに参照変形体部41の内面41aを密着させて用いる。その装着時に、参照変形体部41の内面41aと送受信面3aとの間に余分な超音波ゼリーや装着時に混入した空気が存在しても、参照変形体40を上面から指で圧迫すると、余分な超音波ゼリー及び空気は貫通孔44を通って参照変形体40の外側面へ排出される。その結果、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体部41の柔軟な変形を損なうことなく、かつ、参照変形体部41に偏った歪みを与えることなく、参照変形体40を送受信面3aに固定することができる。
【0058】
(実施例10)
図13に、本発明の課題を解決する参照変形体40の実施例10の模式構成図を示す。同図(a)は参照変形体40の正面図、同図(b)は参照変形体40を送受信面3a側から見た下面図、同図(c)は参照変形体40を超音波探触子3のヘッド部に被冠した状態における長軸方向に沿った断面図である。図示のように、本実施例の参照変形体40が図12の実施例9の参照変形体40と異なる点は、貫通孔44に代えて、参照変形体部41の内面41aの送受信面3aの長軸方向の両端部の縁に沿って、溝45を形成したことにある。その他の点は、実施例9と同一の構成を有することから、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
本実施例によれば、参照変形体40を超音波探触子3に装着したとき、参照変形体部41の内面41aと送受信面3aとの密着面に通じる空間部である溝45が形成されているから、参照変形体40を上面から指で圧迫すると、密着面に存在する余分な超音波ゼリーや装着時に混入した空気は溝45に移動して密着面から排除される。これにより、他の実施例と同一の効果を奏することができる。なお、溝45の容積は、密着面に侵入した空気や密着面に塗布された余分な超音波ゼリーを収容できる大きさが好ましい。しかし、溝45の適宜箇所に参照変形体40の把持部42の側面に開口させた貫通孔を形成することができ、これによれば、密着面に侵入した空気や塗布された余分な超音波ゼリーが多くても、確実に密着面から除去できる。
【0060】
さらに、本実施例及び実施例9に代えて、密着面及び参照変形体40の外面に開口された貫通孔を設けることができる。この場合、貫通孔の密着面側の開口は、送受信面3aの短軸(短辺)の縁又は縁近傍に対応する位置に形成することが好ましい。また、長方形に形成された送受信面3aの対向する2辺に沿って、あるいは送受信面3aの外周縁に沿って、参照変形体部41の内面41aに溝45を形成することができる。
【符号の説明】
【0061】
3 超音波探触子
16 参照変形体
17 参照変形体固定具
24 下部枠体
24a 開口
24b 枠部
24c 把持部
24d 挟持面
25 上部枠体
25a 開口
25b 枠部
25c 係合部
25d 爪部
25e 挟持面
27 直方体部
28 鍔部
29 貫通孔
31 窪み
32 切欠き段差部
33 貫通孔
34 窪み
35 溝
40 参照変形体
41 参照変形体部
42 把持部
43 ゴム状部
44 貫通孔
45 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波探触子の超音波送受信面部の外周に装着される第1の枠体と、該第1の枠体に被冠して係止される第2の枠体とを備え、参照変形体を前記超音波探触子の超音波送受信面に密着させて固定する参照変形体固定具において、
前記第1の枠体は、前記参照変形体と前記超音波送受信面との密着面に通ずる空間部を有して形成されていることを特徴とする参照変形体固定具。
【請求項2】
前記空間部は、前記第1の枠体の外表面に形成された開口に通じて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項3】
前記空間部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の角部に対応する部位に通じていることを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項4】
前記空間部は、一端が長方形に形成された前記超音波送受信面の角部に対応する部位の前記第1の枠体に開口されている孔であることを特徴とする請求項3に記載の参照変形体固定具。
【請求項5】
前記孔は、他端が前記第1の枠体から前記第2の枠体の外表面に開口していることを特徴とする請求項4に記載の参照変形体固定具。
【請求項6】
前記空間部は、前記参照変形体の側面に形成された鍔部を前記第2の枠体とで挟持する前記第1の枠体の挟持面に形成された溝であり、前記溝の一端が前記超音波送受信面の短軸の縁又は縁近傍に対応する部位に位置することを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項7】
前記空間部は、前記参照変形体の側面に形成された鍔部を前記第2の枠体とで挟持する前記第1の枠体の挟持面に形成された溝であり、前記溝の一端が前記超音波送受信面の長軸の縁又は縁近傍に対応する部位に位置することを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項8】
前記溝は、複数設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の参照変形体固定具。
【請求項9】
前記空間部は、前記参照変形体の側面に形成された鍔部を前記第2の枠体とで挟持する前記第1の枠体の挟持面に形成され、長方形に形成された前記超音波送受信面の対向する2辺に沿って前記挟持面に形成された2つの切欠き段差部であることを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項10】
前記空間部は、前記参照変形体の側面に形成された鍔部を前記第2の枠体とで挟持する前記第1の枠体の挟持面に形成され、長方形に形成された前記超音波送受信面の外周に沿って前記挟持面に形成された切欠き段差部であることを特徴とする請求項1に記載の参照変形体固定具。
【請求項11】
参照変形体固定具により固定され超音波探触子の超音波送受信面に密着させて用いる参照変形体において、
前記超音波送受信面との密着面に開口する空間部が形成されてなることを特徴とする参照変形体。
【請求項12】
前記空間部は、前記密着面及び前記参照変形体の外面に開口された孔であり、該孔の前記密着面側の開口は、前記超音波送受信面の短軸の縁又は縁近傍に対応する位置に形成されていることを特徴とする請求項11に記載の参照変形体。
【請求項13】
直方体部と前記直方体部の一面側の側面から張り出された鍔部とを有し、前記空間部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の対向する2辺に沿って前記鍔部の面に形成された2つの溝であることを特徴とする請求項11に記載の参照変形体。
【請求項14】
直方体部と前記直方体部の一面側の側面から張り出された鍔部とを有し、前記空間部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の外周縁に沿って前記鍔部の面に形成された溝であることを特徴とする請求項11に記載の参照変形体。
【請求項15】
直方体部と前記直方体部の一面側の側面から張り出された鍔部とを有し、少なくとも前記直方体部の側面に接する支持枠を有する参照変形体固定具により固定して、超音波探触子の超音波送受信面に密着させて用いる参照変形体において、
前記超音波送受信面との密着面の長軸の縁又は縁近傍から前記鍔部の外側面に向かう1又は複数の溝が形成されてなることを特徴とする参照変形体。
【請求項16】
超音波探触子の超音波送受信面に密着される直方体部と、前記直方体部の側面部から垂設された角形筒状の把持部とを備え、前記把持部を前記超音波探触子の前記超音波送受信面部の外周に被冠して用いる参照変形体において、
前記把持部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の角部に対応する部位に一端が開口され、他端が前記把持部の外面に開口する孔が形成されていることを特徴とする参照変形体。
【請求項17】
超音波探触子の超音波送受信面に密着される直方体部と、前記直方体部の側面部から垂設された角形筒状の把持部とを備え、前記把持部を前記超音波探触子の前記超音波送受信面部の外周に被冠して用いる参照変形体において、
前記把持部は、長方形に形成された前記超音波送受信面の短辺に対応する部位に沿って溝が形成されてなることを特徴とする参照変形体。
【請求項18】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の参照変形体固定具と、該参照変形体固定具により固定される参照変形体とを備えてなる超音波探触子。
【請求項19】
請求項11乃至17のいずれか1項に記載の参照変形体が固定された超音波探触子。
【請求項20】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の参照変形体固定具と前記参照変形体固定具により固定された参照変形体とを備えてなる超音波探触子と、前記超音波探触子を介して被検体に超音波を送受信し、前記被検体の断層部位のRF信号フレームデータに基づいて断層画像を生成する断層画像構成手段と、前記RF信号フレームデータに基づいて前記断層部位における組織の歪み又は弾性率を求める弾性情報演算手段と、前記弾性情報演算手段で求めた歪み又は弾性率に基づいて弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、前記断層画像及び/又は前記弾性画像を表示する表示手段とを備えた超音波診断装置。
【請求項21】
請求項11乃至17のいずれか1項に記載の参照変形体と前記参照変形体が固定された超音波探触子と、前記超音波探触子を介して被検体に超音波を送受信し、前記被検体の断層部位のRF信号フレームデータに基づいて断層画像を生成する断層画像構成手段と、前記RF信号フレームデータに基づいて前記断層部位における組織の歪み又は弾性率を求める弾性情報演算手段と、前記弾性情報演算手段で求めた歪み又は弾性率に基づいて弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、前記断層画像及び/又は前記弾性画像を表示する表示手段とを備えた超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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