説明

双方向スイッチのゲート駆動方法およびそれを用いた電力変換装置

【課題】インバータ等に適用される半導体デバイスとして双方向デバイスを適用した場合に、意図しない過渡期における各部の過電流や過電圧の発生を未然に防止して、低損失なゲート駆動方法を提供することを目的としている。
【解決手段】第一ゲート端子2、第二ゲート端子3、ドレイン端子4、ソース端子5を備え、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を各オンオフすることで4つの動作モードを有する双方向スイッチ1に適用する駆動方法であり、双方向にオフ状態から双方向にオン状態へと移行する際に、直接移行しないように制御する制御手段を備え、双方向にダイオードを介在させない動作モードで主として動作し、過渡期においてはダイオードを介する動作が可能なため、低損失かつ各部の過電圧、過電流を防止できる効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲート信号の制御により4つの状態を有する双方向スイッチのゲート駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の普及がさらに拡大傾向にあるが、同時に電子機器の消費電力増加、引いては地球温暖化などが発生しており、社会的な問題と認識されている。このような社会的背景から、電子機器の低消費電力化の要求も高くなっており、根幹となる電源回路、あるいは電子機器の主たる機能を実現するためのアクチュエータなど待機電力、運転のための電力の何れの電力消費についても技術革新による消費削減が期待されている。
【0003】
従来、この種の低消費電力化のための技術としては、使用する電圧に応じて、適宜半導体デバイスをMOSFETあるいはIGBTの使い分ける、あるいは新しい半導体デバイスとして、双方向性スイッチを利用した電力変換回路が提案されている。以下、双方向性スイッチの駆動方法について、図12を参照しながら、特許文献1を一例として説明する。
【0004】
図12に示すのは、低電圧側に対応する主電極の電位が高電圧側に対応する主電極の電位よりも低い場合のゲート電極の駆動を示し、初期状態は素子が非導通でゲート電極の電位VG1をゲート閾値以下、ゲート電極の電位VG2はゲート閾値以上の状態を示している。ここで、VG1をゲート閾値以上にし、遅延時間τ1後、VG2をゲート閾値以下にして素子を導通させている。次に、VG2をゲート閾値以上にして、遅延時間τ2後、VG1をゲート閾値以下にし、素子を阻止状態としている。また、低電圧側に対応する主電極の電位が高電圧側に対応する主電極の電位よりも高い場合、その動作は、ゲート電極のVG1、VG2を逆の働きをさせて同様の導通、阻止を切換える制御を行っている。
【0005】
また特許文献1以外では、単方向スイッチとダイオードを組み合わせた一般的な電力変換回路(例えば、インバータ装置)が考えられる。
【特許文献1】特許第3183055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の素子構成におけるゲート駆動方法では、機器に組み込みにおいて主電極に対して順逆の電圧が印加された場合、論理を逆転させる必要があり、その素子構成、ゲート駆動方法を適用した電力変換回路では、過渡期における各部の過電流や過電圧が発生するという課題があった。
【0007】
また、インダクタンス成分のある負荷(例えばモータなど)が電力変換回路の出力側に接続された場合、還流電流を流すための閉ループの形成が困難であった。すなわち、双方向スイッチを上下アームに配置した場合、前述の意図しない電流ループの代表的な例としてのアーム短絡による短絡電流を防止するためのデッドタイムを設ける必要があるため、上下の双方向スイッチが同時オフしている期間が存在するためである。
【0008】
また特許文献1以外の一般的な電力変換回路(例えば、インバータ装置)においては、単方向スイッチを組み合わせて構成しているため、簡単なゲート駆動方法にて実現することができる一方、モータなどのインダクタンス成分のある負荷が接続された場合、還流電流がダイオードを流れて還流するため、変換回路における損失が大きくなり、そのため冷却フィン、あるいは冷却ファンなど装置が大型化するという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、制御上、意図しない過電流や過電圧の発生を未然に防止すると共に、低損失な双方向スイッチのゲート駆動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の双方向スイッチのゲート駆動方法は、上記目的を達成するために、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動方法であって、制御手段は、前記第四モードから前記第三モードあるいは前記第三モードから第四モードの少なくとも一方へ直接移行しないように制御する双方向スイッチのゲート駆動方法としたものである。
【0011】
この方法により、四つの動作モードを有した双方向スイッチへの信号回路あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへの移行の際に、意図しない電流通流モード(例えば第二モードあるいは第三モードの何れか一方)を経由することを回避し、信号搬送の遅れがあっても意図した何れか他方のモードを経由するように制御することができることとなる。
【0012】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御するものである。
【0013】
この方法により、双方向オフ状態から双方向オン状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、クランプ回路等を必要とせず、簡単な回路構成で電力変換を行うことができる。
【0014】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御するものである。
【0015】
この方法により、双方向オン状態から双方向オフ状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、電流が遮断されることなく、簡単な回路構成で電力変換を行うことができる。
【0016】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減するものである。
【0017】
この方法により、双方向にオフの状態から双方向にオンの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができる。
【0018】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減するものである。
【0019】
この方法により、双方向にオンの状態から双方向にオフの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができる。
【0020】
また、第一ゲート端子の駆動信号と第二ゲート端子の駆動信号を共用し、制御手段を介して前記第一ゲート端子及び第二ゲート端子を唯一のゲート駆動信号でオンオフ制御するものである。
【0021】
この方法により、ゲート駆動用の信号として、1素子当たり2信号をマイクロプロセッサから出力する必要がなく、簡略化が図れ、より安価な構成とすることができる。
【0022】
さらに、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、前記双方向スイッチの損失を平均化するものである。
【0023】
この方法により、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができる。
【0024】
また、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、前記双方向スイッチの損失を平均化するものである。
【0025】
この方法により、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができる。
【0026】
さらに、制御手段は、遅延生成手段を備え、第一ゲート端子と第二ゲート端子のオフからオン、あるいはオンからオフへの切換えを相異なるタイミングとするものである。
【0027】
この方法により、信号に遅延時間を持たせて切り換えるため、より簡単な構成で双方向スイッチを第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへ直接移行しないようにすることができる。
【0028】
また、遅延生成手段の遅延時間は、少なくとも1ns以上であるものである。
【0029】
この方法により、半導体の入出力あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、4つの動作モードを有する双方向スイッチの動作モードの遷移が意図しない動作モードを経由することを回避することができる。
【0030】
さらに、遅延生成手段は、論理回路の応答速度を利用して遅延時間を生成するものである。
【0031】
この方法により、遅延時間の生成を簡単かつ安価な回路で実現することができる。
【0032】
また、双方向スイッチのゲート駆動方法を使用した電力変換装置(例えばインバータ装置)を構成したものである。
【0033】
この手段により、双方向スイッチをより簡単な構成で電力変換装置へ適用することができ、低損失かつ安価な装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動方法であって、制御手段は、前記第四モードから前記第三モードあるいは前記第三モードから第四モードの少なくとも一方へ直接移行しないように制御する双方向スイッチのゲート駆動方法としたものであり、四つの動作モードを有した双方向スイッチへの信号回路あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへの移行の際に、意図しない電流通流モード(例えば第二モードあるいは第三モードの何れか一方)を経由することを回避し、信号搬送の遅れがあっても意図した何れか他方のモードを経由するように制御することができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0035】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、双方向オフ状態から双方向オン状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、クランプ回路等を必要とせず、簡単な回路構成で電力変換を行うことができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0036】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、双方向オン状態から双方向オフ状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、電流が遮断されることなく、簡単な回路構成で電力変換を行うことができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0037】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減することで、双方向にオフの状態から双方向にオンの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0038】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、双方向にオンの状態から双方向にオフの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0039】
また、第一ゲート端子の駆動信号と第二ゲート端子の駆動信号を共用し、制御手段を介して前記第一ゲート端子及び第二ゲート端子を唯一のゲート駆動信号でオンオフ制御することで、ゲート駆動用の信号として、1素子当たり2信号をマイクロプロセッサから出力する必要がなく、簡略化が図れ、より安価な構成とすることができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0040】
さらに、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、前記双方向スイッチの損失を平均化することで、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0041】
また、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、前記双方向スイッチの損失を平均化することで、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0042】
さらに、制御手段は、遅延生成手段を備え、第一ゲート端子と第二ゲート端子のオフからオン、あるいはオンからオフへの切換えを相異なるタイミングとすることで、信号に遅延時間を持たせて切換えるため、より簡単な構成で双方向スイッチを第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへ直接移行しないようにすることができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0043】
また、遅延生成手段の遅延時間は、少なくとも1ns以上とすることで、半導体の入出力あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、4つの動作モードを有する双方向スイッチの動作モードの遷移が意図しない動作モードを経由することを回避することができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0044】
さらに、遅延生成手段は、論理回路の応答速度を利用して遅延時間を生成するもので、遅延時間の生成を簡単かつ安価な回路で実現することができる双方向スイッチのゲート駆動方法を提供できる。
【0045】
また、双方向スイッチのゲート駆動方法を使用した電力変換装置(例えばインバータ装置)を構成することで、簡単な構成、低損失かつ安価な電力変換装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の請求項1記載の発明は、基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動方法であって、制御手段は、前記第四モードから前記第三モードあるいは前記第三モードから第四モードの少なくとも一方へ直接移行しないように制御する双方向スイッチのゲート駆動方法としたものであり、四つの動作モードを有した双方向スイッチへの信号回路あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへの移行の際に、意図しない電流通流モード(例えば第二モードあるいは第三モードの何れか一方)を経由することを回避し、信号搬送の遅れがあっても意図した何れか他方のモードを経由するように制御することができるという作用を有する。
【0047】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御するものであり、双方向オフ状態から双方向オン状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、クランプ回路等を必要とせず、簡単な回路構成で電力変換を行うことができるという作用を有する。
【0048】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御ものであり、双方向オン状態から双方向オフ状態へと遷移する際に、ドレイン端子とソース端子間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、出力側に誘導負荷が接続された場合であっても、電流が遮断されることなく、簡単な回路構成で電力変換を行うことができるという作用を有する。
【0049】
また、制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減するものであり、双方向にオフの状態から双方向にオンの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができるという作用を有する。
【0050】
さらに、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減するものであり、双方向にオンの状態から双方向にオフの状態とする際に、第一あるいは第二モード時に等価的に存在するダイオードを通流するモードを介在せず、回路全体を低損失に構成することができ、より小規模の回路構成で電力変換を行うことができるという作用を有する。
【0051】
また、第一ゲート端子の駆動信号と第二ゲート端子の駆動信号を共用し、制御手段を介して前記第一ゲート端子及び第二ゲート端子を唯一のゲート駆動信号でオンオフ制御するものであり、ゲート駆動用の信号として、1素子当たり2信号をマイクロプロセッサから出力する必要がなく、簡略化が図れ、より安価な構成とすることができるという作用を有する。
【0052】
さらに、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、前記双方向スイッチの損失を平均化するものであり、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができるという作用を有する。
【0053】
また、双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、前記双方向スイッチの損失を平均化するものであり、双方向スイッチを直列あるいは並列に接続した際に、それぞれの発熱量が均等化され、発熱量の多い双方向スイッチを基準にした放熱板の選定をする必要がなく、小型で軽量な電力変換装置を構成することができるという作用を有する。
【0054】
さらに、制御手段は、遅延生成手段を備え、第一ゲート端子と第二ゲート端子のオフからオン、あるいはオンからオフへの切換えを相異なるタイミングとするものであり、信号に遅延時間を持たせて切換えるため、より簡単な構成で双方向スイッチを第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへ直接移行しないようにすることができるという作用を有する。
【0055】
また、遅延生成手段の遅延時間は、少なくとも1ns以上であるものであり、半導体の入出力あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子、第二ゲート端子を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、4つの動作モードを有する双方向スイッチの動作モードの遷移が意図しない動作モードを経由することを回避することができるという作用を有する。
【0056】
さらに、遅延生成手段は、論理回路の応答速度を利用して遅延時間を生成するものであり、遅延時間の生成を簡単かつ安価な回路で実現することができるという作用を有する。
【0057】
また、双方向スイッチのゲート駆動方法を使用した電力変換装置(例えばインバータ装置)を構成したものであり、簡単な構成、低損失かつ安価な電力変換装置にすることができるという作用を有する。
【0058】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0059】
(実施の形態1)
双方向スイッチ1について、図1を参照しながら構成について説明する。図1に示すように、双方向スイッチ1は、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3とドレイン端子4とソース端子5により構成されている。双方向スイッチ1は、シリコン(Si)からなる基板6の上に厚さが10nm窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nmの窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなる厚さが1μmのバッファ層7が形成され、その上に半導体層積層体8が形成されている。半導体層積層体8は、第1の半導体層とこの第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、厚さが2μmのGaN(アンドープの窒化ガリウム)層9であり、第2の半導体層は、厚さが20nmのn型のAlGaN(窒化アルミニウムガリウム)層10である。GaN層9のAlGaN層10とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm―2以上で且つ移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成されている。半導体層積層体8の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとが形成されている。第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、チャネル領域とオーミック接合を形成している。また、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層10の一部を除去すると共にGaN層9を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11BがAlGaN層10とGaN層9との界面に接するように形成した例を示している。なお、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bは、AlGaN層10の上に形成してもよい。n型のAlGaN層10の上における第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間の領域には、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層12Aの上には第1のゲート電極13Aが形成され、第2のp型半導体層12Bの上には第2のゲート電極13Bが形成されている。第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bは、それぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bとオーミック接触している。AlGaN層10及び第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜14が形成されている。保護膜14を形成することで、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を保障し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bは、それぞれ厚さが300nmで、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bと、AlGaN層10とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、同様に、第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体素子を実現している。第1のオーミック電極11Aの電位をV1、第1のゲート電極13Aの電位をV2、第2のゲート電極13Bの電位をV3、第2のオーミック電極11Bの電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層12Aからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4より1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層12Bからチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。つまり、第1のゲート電極13Aのいわゆる閾値電圧及び第2のゲート電極13Bのいわゆる閾値電圧は共に1.5Vである。以下においては、第1のゲート電極13Aの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極13Aの閾値電圧を第1の閾値電圧とし、第2のゲート電極13Bの下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極13Bの閾値電圧を第2の閾値電圧とする。また、第1のp型半導体層12Aと第2のp型半導体層12Bとの間の距離は、第1のオーミック電極11A及び第2のオーミック電極11Bに印加される最大電圧に耐えられるように構成する。第1のオーミック電極11Aと第1のゲート電極13Aとの間にゲート駆動信号(すなわち、第一ゲート端子2への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極11Bと第2のゲート電極13Bとの間も同様にゲート駆動信号(すなわち、第二ゲート端子3への制御信号)を入力するようになっている。なお、ソース端子5は第1のオーミック電極11Aに接続され、ドレイン端子4は第2のオーミック電極11Bに接続され、第一ゲート端子2は第1のゲート電極13Aに接続され、第二ゲート端子3は第2のゲート電極13Bに接続されている。
【0060】
次に、双方向スイッチ1の動作について説明する。説明のため、第1のオーミック電極11Aの電位を0Vとし、第一ゲート端子2に印加する電圧をVg1、第二ゲート端子3に印加する電圧をVg2、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間の電圧をVs2s1、第2のオーミック電極11Bと第1のオーミック電極11Aとの間に流れる電流をIs2s1とする。
【0061】
V4がV1よりも高い場合、例えば、V4が+100Vで、V1が0Vの場合において、第一ゲート端子2と第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2をそれぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧以下の電圧、例えば0Vとする。これにより、第1のp型半導体層12Aから広がる空乏層が、チャネル領域中を第2のp型GaN層の方向へ向けて広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、V4が正の高電圧であっても、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を遮断する遮断状態を実現できる。一方、V4がV1よりも低い場合、例えばV4が−100Vで、V1が0Vの場合においても、第2のp型半導体層12Bから広がる空乏層が、チャネル領域中を第1のp型半導体層12Aの方向へ向けて広がり、チャネルに流れる電流を遮断することができる。このため、第2のオーミック電極11Bに負の高電圧が印加されている場合においても、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bへ流れる電流を遮断することができる。すなわち、双方向スイッチ1の双方向の電流を遮断することが可能となる。
【0062】
以上のような構造及び動作において、耐圧を確保するためのチャネル領域を第1のゲート電極13Aと第2のゲート電極13Bとが共有する。この素子は、1素子分のチャネル領域の面積で双方向スイッチ1が実現可能であり、双方向スイッチ1全体を考えると、2つのダイオードと2つのノーマリーオフ型のAlGaN/GaN−HFETとを用いた場合と比べてチップ面積をより少なくすることができ、双方向スイッチ1の低コスト化及び小型化が可能となる。
【0063】
次に、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3の入力電圧であるVg1及びVg2が、それぞれ第1の閾値電圧及び第2の閾値電圧よりも高い電圧、例えば5Vの場合には、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bに印加される電圧は、共に閾値電圧よりも高くなる。従って、第1のp型半導体層12A及び第2のp型半導体層12Bからチャネル領域に空乏層が広がらないため、チャネル領域は第1のゲート電極13Aの下側においても、第2のゲート電極13Bの下側においてもピンチオフされない。その結果、第1のオーミック電極11Aと第2のオーミック電極11Bとの間に双方向に電流が流れる導通状態を実現できる。
【0064】
次に、Vg1を第1の閾値電圧よりも高い電圧とし、Vg2を第2の閾値電圧以下とした場合の動作について説明する。第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を備えた双方向スイッチ1を等価回路で表すと図2(a)に示すように第1のトランジスタ15と第2のトランジスタ16とが直列に接続された回路とみなすことができる。この場合、第1のトランジスタ15のソース(S)が第1のオーミック電極11A、第1のトランジスタ15のゲート(G)が第1のゲート電極13Aに対応し、第2のトランジスタ16のソース(S)が第2のオーミック電極11B、第2のトランジスタ16のゲート(G)が第2のゲート電極13Bに対応する。このような回路において、例えば、Vg1を5V、Vg2を0Vとした場合、Vg2が0Vであるということは第2のトランジスタ16のゲートとソースが短絡されている状態と等しいため、双方向スイッチ1は図2(b)に示すような回路とみなすことができる。
【0065】
さらに、図2(b)に示す第2のトランジスタ16のソース(S)をA端子、ドレイン(D)をB端子、ゲート(G)をC端子として説明を行う。図に示すB端子の電位がA端子の電位よりも高い場合には、A端子がソースでB端子がドレインであるトランジスタとみなすことができ、このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ソース)との間の電圧は0Vであり、閾値電圧以下のため、B端子(ドレイン)からA端子(ソース)に電流は流れない。一方、A端子の電位がB端子の電位よりも高い場合には、B端子がソースでA端子がドレインのトランジスタとみなすことができる。このような場合、C端子(ゲート)とA端子(ドレイン)との電位が同じであるため、A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以下の場合にはA端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を通電しない。A端子の電位がB端子を基準として閾値電圧以上となると、ゲートにB端子(ソース)を基準として閾値電圧以上の電圧が印加され、A端子(ドレイン)からB端子(ソース)へ電流を流すことができる。つまり、トランジスタのゲートとソースとを短絡させた場合、ドレインがカソードでソースがアノードのダイオードとして機能し、その順方向立上り電圧はトランジスタの閾値電圧となる。そのため、図2(a)に示す第2のトランジスタ16の部分は、ダイオードとみなすことができ、図2(c)に示すような等価回路となる。図2(c)に示す等価回路において、双方向スイッチ1のドレイン端子4の電位がソース端子5の電位よりも高い場合、第1のトランジスタ15の第一ゲート端子2に5Vが印加されている場合には、第1のトランジスタ15はオン状態であり、S2からS1へ電流を流すことが可能となる。ただし、ダイオードの順方向立上り電圧によるオン電圧が発生する。また、双方向スイッチ1のS1の電位がS2の電位よりも高い場合、その電圧は第2のトランジスタ16からなるダイオードが担い、双方向スイッチ1のS1からS2へ流れる電流を阻止する。つまり、第一ゲート端子2に閾値電圧以上の電圧を与え、第二ゲート端子3に閾値電圧以下の電圧を与えることにより、いわゆる双方向素子をオンした状態とドレイン側にダイオードのカソード側を直列接続した動作が可能なスイッチが実現できる。
【0066】
図3は、双方向スイッチ1のVs2s1とIs2s1との関係であり、(a)は、Vg1とVg2とを同時に変化させた場合を示し、(b)はVg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を変化させた場合を示し、(c)はVg1を第1の閾値電圧以下の0VとしてVg2を変化させた場合を示している。なお、図3において横軸であるS2−S1間電圧(Vs2s1)は、第1のオーミック電極11Aを基準とした電圧であり、縦軸であるS2−S1間電流(Is2s1)は第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aへ流れる電流を正としている。図3(a)に示すように、Vg1及びVg2が0Vの場合及び1Vの場合には、Vs2s1が正の場合にも負の場合にもIs2s1は流れず、双方向スイッチ1は遮断状態となる。また、Vg1とVg2とが共に閾値電圧よりも高くなると、Vs2s1に応じてIs2s1が双方向に流れる導通状態となる。一方、図3(b)に示すように、Vg2を第2の閾値電圧以下の0Vとし、Vg1を第1の閾値電圧以下の0Vとした場合には、Is2s1は双方向に遮断される。しかし、Vg1を第1の閾値電圧以上の2V〜5Vとした場合には、Vs2s1が1.5V未満の場合にはIs2s1が流れないが、Vs2s1が1.5V以上になるとIs2s1が流れる。つまり、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aにのみに電流が流れ、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bには電流が流れない逆阻止状態となる。また、Vg1を0Vとし、Vg2を変化させた場合には図3(c)に示すように、第1のオーミック電極11Aから第2のオーミック電極11Bにのみに電流が流れ、第2のオーミック電極11Bから第1のオーミック電極11Aには電流が流れない逆阻止状態となる。
【0067】
以上より、双方向スイッチ1は、そのゲートバイアス条件により、双方向の電流を遮断・通電する機能を有すると共に、ダイオード動作も可能であり、そのダイオードの電流が通電する方向も切換えることができる。以上、説明したように双方向スイッチ1の第一ゲート端子2と第二ゲート端子3のオンあるいはオフ条件に応じて、図4示す4つの動作モードで動作することができる。すなわち、前記第一ゲート端子2のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子3のみをオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオンすると、前記ドレイン端子4から前記ソース端子5間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子2および前記第二ゲート端子3をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有するものである。本構造はJFETに類似しているが、キャリア注入を意図的に行うという点で、ゲート電界によりチャネル領域内のキャリア変調を行うJFETとは全く異なった動作原理により動作する。具体的には、ゲート電圧が3VまではJFETとして動作するが、pn接合のビルトインポテンシャルを超える3V以上のゲート電圧が印加された場合には、ゲートに正孔が注入され、前述したメカニズムにより電流が増加し、大電流且つ低オン抵抗の動作が可能となる。
【0068】
また、双方向スイッチ1は、第1のゲート電極13Aがp型の導電性を有する第1のp型半導体層12Aの上に形成され、第2のゲート電極13Bがp型の導電性を有する第2のp型半導体層12Bの上に形成されている。このため、第1の半導体層と第2の半導体層との界面領域に生成されるチャネル領域に対して、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから順方向のバイアスを印加することにより、チャネル領域内に正孔を注入することができる。窒化物半導体においては正孔の移動度は、電子の移動度よりもはるかに低いため、チャネル領域に注入された正孔は電流を流す担体としてほとんど寄与しない。このため、第1のゲート電極13A及び第2のゲート電極13Bから注入された正孔は同量の電子をチャネル領域内に発生させるので、チャネル領域内に電子を発生させる効果が高くなり、ドナーイオンのような機能を発揮する。つまり、チャネル領域内においてキャリア濃度の変調を行うことが可能となるため、動作電流が大きいノーマリーオフ型の窒化物半導体層双方向スイッチを実現することが可能となる。
【0069】
次に双方向スイッチ1のゲート駆動を行う制御手段17について、図5を参照しながら説明する。
【0070】
図に示すように、制御手段17は、ゲート駆動回路を介して、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3に配置されている。制御手段17の内部構成は、双方向オフ状態である第四モードと双方向オン状態である第三モード間を直接移行しないように、図4に示した4つの動作モードに対応させて作成した図6に示すオン・オフテーブルを参照して出力するように構成されている。以下、このオン・オフテーブルを参照して出力した場合の電力変換装置としてのインバータ装置18について、図7を参照しながら説明する。図7では、双方向スイッチ1a〜1fにて主回路を構成している。双方向スイッチ1a〜1fは、それぞれ第一ゲート端子2a〜2f、第二ゲート端子3a〜3fに対して、オン・オフテーブルを参照した駆動信号を制御手段17から出力することで、4つのモードを遷移する。すなわち、第四モードから第三モードへ移行する際に、テーブルの第四モードの双方向に遮断の状態から第三モードの双方向に通電の状態に移行するまで、あるいは逆の動作をする際に、例えば、意図した電流の通流方向がドレイン端子4からソース端子5への方向であれば、第二モードを介在するようになっている。第二モードの介在は、意図した導通方向に対して順方向にダイオードが形成されることとなり、双方向スイッチ1としては、順方向のみをオンしたダイオードを有した導通経路を形成することとなる。双方向スイッチ1a〜1fのうち、下アームのそれぞれオフの際には、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3の両端子をオフする瞬間まで、意図した方向に電流が通電できる状態を保持する。次に、制御手段17は、双方向に電流遮断する第四モードから双方向に電流を通電する第三モードに移行する際に、テーブルの第四モードの双方向に遮断の状態から第三モードの双方向に通電の状態に移行するまで、意図した導通方向に対して逆方向ダイオードが形成されるモード(例えば、意図した電流の通流方向がドレイン端子4からソース端子5への方向であれば第一モード)を介在させて、第三モードに移行するように制御する。また、逆に双方向に電流を通電する第三モードから双方向に電流遮断する第四モードに移行する際には、同様に第三モードから第一モードを経由して第四モードへ移行するように制御する。但し、この制御では、例えば、図7に示すようなインバータ装置18の負荷側に誘導負荷が接続された際に、第一アーム18aの双方向スイッチ1aをモード移行する場合、第一アーム18aの双方向スイッチ1bのモード移行を行い、直流部の負側から還流電流を流すことができ、かつ双方向スイッチ1aと双方向スイッチ1bが上下アーム短絡を発生させないように、第二モードを参照してモード移行を行うように制御する。この場合、双方向スイッチ1bがダイオードを介在した動作となり、双方向スイッチ1aはダイオードを介在した通電動作は発生しない。
【0071】
以上のように、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3、ドレイン端子4、ソース端子5を備え、第一ゲート端子2のみをオンすると、ドレイン端子4からソース端子5との間に双方向デバイスのオン状態と逆方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第二ゲート端子3のみをオンすると、ドレイン端子4からソース端子5との間に順方向ダイオードと順方向ダイオードのカソード側が直列接続された半導体として動作し、第一ゲート端子2および第二ゲート端子3をオンすると、ドレイン端子4からソース端子5との間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作し、第一ゲート端子2および第二ゲート端子3をオフすると順逆双方向に電流を遮断する特性を有した双方向スイッチ1のゲート駆動において、双方向オフの状態から双方向オンの状態への遷移、あるいは逆の遷移を直接移行しないように、意図した方向に電流を通流する順逆何れか一方向のみオンさせるようにすることで、四つの動作モードを有した双方向スイッチへの信号回路あるいは帰還容量によるチップ相互のオンオフ時間のばらつきや、第一ゲート端子2、第二ゲート端子3を駆動する相互のゲート駆動回路の応答性ばらつきにより、第三モードから第四モードあるいは第四モードから第三モードへの移行の際に、意図しない電流通流モード(例えば第二モードあるいは第三モードの何れか一方)を経由することを回避し、信号搬送の遅れがあっても意図した何れか他方のモードを経由するように制御することができる双方向スイッチ1のゲート駆動を行うことができることとなる。また、インバータ装置18の例では、双方向スイッチ1bにおいて第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して順方向ダイオードが形成される第一モードを経由するように制御しており、双方向オフ状態から双方向オン状態へと遷移する際に、ドレイン端子4とソース端子5との間の電流が意図通りの通流方向となるように制御することができ、本実施例のように出力側にモータ等の誘導負荷が接続された場合であっても、クランプ回路等を必要とせず、簡単な回路構成で電力変換を行うことができる。
【0072】
なお、インバータ装置18の変調方式に応じて、双方向スイッチ1の個数および配置は変更しても良い。
【0073】
また、オン・オフテーブルは、制御手段17の各出力端の何れか一方に対して図8に示すような論理回路等(例えば、1ns以上の信号伝搬時間を実現させるための信号伝搬時間が10nsのロジックIC)を付加し、直接移行せず、論理回路の遅延時間分遅れた信号で駆動する構成としても良い。
【0074】
また、第一ゲート端子2の駆動信号と第二ゲート端子3の駆動信号を共用し、制御手段17を介して第一ゲート端子2及び第二ゲート端子3を唯一のゲート駆動信号でオンオフ制御する図8のような構成としても良い。
【0075】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2について、図9を参照しながら双方向スイッチ1のゲート駆動方法について説明する。
【0076】
なお、実施の形態1と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
図9(a)に示すように、制御手段17は、双方向スイッチ1aを双方向に電流遮断する第四モードから双方向に電流を通電する第三モードに移行する際に、意図した導通方向に対して逆方向ダイオードが形成されるモードを介在させて、第三モードに移行するように制御する。この時のオン・オフテーブルは、テーブル(1)からテーブル(3)を経由してテーブル(4)へ移行するように制御することで対応している。また、逆に双方向に電流を通電する第三モードから双方向に電流遮断する第四モードに移行する際には、図9(b)に示すように、テーブル(4)からテーブル(3)を経由してテーブル(1)へ移行するように制御する。但し、この制御では、例えばインバータ装置18の負荷側に誘導負荷が接続された際に、第一アーム18aの双方向スイッチ1aをモード移行する場合、第一アーム18aの双方向スイッチ1bのモード移行を行い、直流部のN側から還流電流を流すことができ、かつ双方向スイッチ1aと双方向スイッチ1bが上下アーム短絡を発生させないように、双方向スイッチ1bに対してもテーブル(3)を参照してモード移行を行うように制御する。この場合、双方向スイッチ1bがダイオードを介在した動作となり、双方向スイッチ1aはダイオードを介在した通電動作は発生しないこととなる。
【0078】
以上のように、制御手段17は、双方向に電流遮断する第四モードから双方向に電流を通電する第三モードに移行する際。あるいは双方向に電流を通電する第三モードから双方向に電流遮断する第四モードに移行する際に、意図した導通方向に対して逆方向ダイオードが形成されるモードを介在させて、第三モードに移行するように制御し、双方向スイッチ1bを第一あるいは第二モードを経由した場合であっても、その際に通流電流を発生させず、ダイオードの順方向電圧による損失の発生を防止することができる。
【0079】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3について、図10を参照しながら双方向スイッチ1のゲート駆動方法について説明する。
【0080】
なお、実施の形態1あるいは2と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0081】
図10に示すように、制御手段17は、インバータ装置18において双方向スイッチ1aが第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して逆方向ダイオードが形成される第一モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向(還流電流の方向)に対して順方向ダイオードが形成される第二モードを経由するように、第一ゲート端子2aと第二ゲート端子3aを制御する。一方、第一アーム18aの双方向スイッチ1bは、意図した電流の方向に対して双方向スイッチ1aの電流遮断状態となるタイミングで電流ルートを確保するように制御する。例えば、組合せ(2)の際には、第二ゲート端子3bはオン状態とする。逆に、双方向スイッチ1bの状態遷移に対しても、同様に双方向スイッチ1aにて電流ルートを確保するように制御する。双方向スイッチ1aと双方向スイッチ1bは、互いの組合せ(2)、(4)により、ダイオードに電流が流れるモードを一度ずつ経由する。双方向スイッチ1aと双方向スイッチ1bは、図示した矢印の通り、ダイオードを通流するタイミングを一度ずつ経由するため、損失が互いに平均化される。
【0082】
以上のように、双方向スイッチ1a、1bを互いにダイオードを介して電流ルートを形成する時間比率を均等にすることができ、ブリッジ回路を形成した際の相互の双方向スイッチ1a、1bの損失を平均化することができ、損失の大きな双方向スイッチ1aあるいは1bに合わせた放熱設計を行う必要がなく、小型で軽量の電力変換装置を構成することができる。
【0083】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4について、図11を参照しながら双方向スイッチ1のゲート駆動方法について説明する。
【0084】
なお、実施の形態1〜3と同一機能を有するものは、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0085】
図11に示すように、制御手段17は、インバータ装置18において双方向スイッチ1aが第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、ブリッジ回路を形成した際の相互の双方向スイッチ1a、1bの損失を平均化する。具体的には、組合せ(5)〜組合せ(8)のように順次第一ゲート端子2a、2bと第二ゲート端子3a、3bをそれぞれオンオフ制御する。組合せ(6)の双方向スイッチ1aは、破線に示した電流方向が流れないとしているが、組合せが移行する瞬間の過渡期においては双方向スイッチ1bを通流せず、双方向スイッチ1aを流れる。但し、破線部にバツ印を付与した方向は、他方の双方向スイッチ1aあるいは双方向スイッチ1bの経路が優先されることを意味している。従って、双方向スイッチ1aと双方向スイッチ1bは、相互に順方向ダイオードを通過する経路を主として1回発生することとなる。また、双方向オン状態、双方向オフ状態についても同じ回数となるように制御する。
【0086】
以上のように、双方向スイッチ1a、1bを互いにダイオードを介して電流ルートを形成する時間比率を均等にすることができ、ブリッジ回路を形成した際の相互の双方向スイッチ1a、1bの損失を平均化することができ、損失の大きな双方向スイッチ1aあるいは1bに合わせた放熱設計を行なう必要がなく、小型で軽量の電力変換装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、DC−DCコンバータ装置、AC−DC変換装置、インバータ装置等に4つの状態を有する双方向スイッチを利用した際のゲート駆動方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1の双方向スイッチの構成図
【図2】同双方向スイッチの等価回路図((a)第1、第2のトランジスタで構成する等価回路図、(b)第2のトランジスタの等価回路図、(c)第2のトランジスタをダイオードとみなした場合の等価回路図)
【図3】同双方向スイッチの電圧・電流の相関図
【図4】同双方向スイッチの動作モードを示す図
【図5】同ゲート駆動を行う制御手段の説明図
【図6】同オン・オフテーブルを示す図
【図7】同インバータ装置の構成図
【図8】同信号遅延の生成回路を示す図
【図9】本発明の実施の形態2における双方向スイッチのモード遷移図((a)第四モードから第三モードへの遷移図、(b)第三モードから第四モードへの遷移図)
【図10】本発明の実施の形態3における双方向スイッチのモード遷移図
【図11】本発明の実施の形態4における双方向スイッチのモード遷移図
【図12】従来の特許文献1における双方向性スイッチの駆動方法の説明図
【符号の説明】
【0089】
1 双方向スイッチ
1a〜1f 双方向スイッチ
2 第一ゲート端子
2a〜2f 第一ゲート端子
3 第二ゲート端子
3a〜3f 第二ゲート端子
4 ドレイン端子
5 ソース端子
6 基板
7 バッファ層
8 半導体層積層体
9 GaN層
10 AlGaN層
11A 第1のオーミック電極
11B 第2のオーミック電極
12A 第1のp型半導体層
12B 第2のp型半導体層
13A 第1のゲート電極
13B 第2のゲート電極
14 保護膜
15 第1のトランジスタ
16 第2のトランジスタ
17 制御手段
18 インバータ装置
18a 第一アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成されたチャネルを有する半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上に互いに間隔をおいて形成された第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極と、前記半導体層積層体と第1のゲート電極との間に形成された第1のp型半導体層と、前記半導体層積層体と第2のゲート電極との間に形成された第2のp型半導体とを有し、前記第1のオーミック電極と前記第1のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第一ゲート端子と、前記第2のオーミック電極と前記第2のゲート電極との間にゲート駆動信号を入力する第二ゲート端子と、前記第1のオーミック電極に接続されたドレイン端子と、前記第2のオーミック電極に接続されたソース端子を備え、前記第一ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けてオン状態の双方向デバイスと逆方向ダイオードが直列接続された半導体として動作する第一モード、前記第二ゲート端子のみをオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間に向けて順方向ダイオードとオン状態の双方向デバイスが直列接続された半導体として動作する第二モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオンすると、前記ドレイン端子から前記ソース端子間にダイオードを介さない双方向に導通するように動作する第三モード、前記第一ゲート端子および前記第二ゲート端子をオフすると順逆双方向に電流を遮断する第四モードを有した双方向スイッチに適用するゲート駆動方法であって、制御手段は、前記第四モードから前記第三モードあるいは前記第三モードから第四モードの少なくとも一方へ直接移行しないように制御する双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項2】
制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項3】
制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項4】
制御手段は、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減する請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項5】
制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、順方向ダイオードの通流電流による損失を低減する請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項6】
第一ゲート端子の駆動信号と第二ゲート端子の駆動信号を共用し、制御手段を介して前記第一ゲート端子及び第二ゲート端子を唯一のゲート駆動信号オンオフ制御する請求項1から7何れかに記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項7】
双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで、前記双方向スイッチの損失を平均化する請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項8】
双方向スイッチを用いてブリッジ回路を構成し、制御手段は、第三モードから第四モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して導通させるように順方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御し、第四モードから第三モードへの状態遷移の際に、意図した導通方向に対して遮断するように逆方向ダイオードが形成される第一モードあるいは第二モードを経由するように制御することで順方向ダイオードの通流電流による損失を低減し、前記双方向スイッチの損失を平均化する請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項9】
制御手段は、遅延生成手段を備え、第一ゲート端子と第二ゲート端子のオフからオン、あるいはオンからオフへの切換えを相異なるタイミングとする請求項1記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項10】
遅延生成手段の遅延時間は、少なくとも1ns以上である請求項9記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項11】
遅延生成手段は、論理回路の応答速度を利用して遅延時間を生成する請求項9記載の双方向スイッチのゲート駆動方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れかに記載の双方向スイッチのゲート駆動方法を使用した電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−172298(P2011−172298A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158679(P2008−158679)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】