双方向チョッパ回路
【課題】安価且つ簡素な構成であって、例えば車両の燃費向上等を図ることができる高効率な双方向チョッパ回路を提供する。
【解決手段】双方向チョッパ回路1は、端子T11に接続される主リアクトル12と、端子T21,T22の間に直列接続されて主リアクトル12が接続点P1に接続されたスイッチ13,14と、端子T11と主リアクトル12との間に接続された補助リアクトル16と、スイッチ13,14の何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサ21とダイオード22との直列接続体と、この直列接続体をなすコンデンサ21とダイオード22との接続点P2と主リアクトル12と補助リアクトル16との接続点P3との間に接続された補助スイッチと24を有する補助回路17とを備える。
【解決手段】双方向チョッパ回路1は、端子T11に接続される主リアクトル12と、端子T21,T22の間に直列接続されて主リアクトル12が接続点P1に接続されたスイッチ13,14と、端子T11と主リアクトル12との間に接続された補助リアクトル16と、スイッチ13,14の何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサ21とダイオード22との直列接続体と、この直列接続体をなすコンデンサ21とダイオード22との接続点P2と主リアクトル12と補助リアクトル16との接続点P3との間に接続された補助スイッチと24を有する補助回路17とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向チョッパ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会を実現すべく、動力発生源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)や動力発生源としてモータのみを用いる電気自動車(EV:Electric Vehicle)の研究が盛んに行われている。このようなハイブリッド自動車や電気自動車は、モータを駆動する電力を供給する再充電が可能なリチウムイオン二次電池等のバッテリと、バッテリの電圧を変換するチョッパ回路と、チョッパ回路で変換された電圧を用いてモータを駆動するインバータ等の駆動回路とを備える。
【0003】
ここで、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両は、エネルギーを有効利用するために、モータを回生ブレーキとして用いてモータで発電された電力によってバッテリの充電を行うようにしている。このため、上記の車両では、上記のチョッパ回路としては、例えばバッテリからモータに供給される電力(順方向の電力)の電圧を昇圧するとともに、モータで発電されてバッテリに回収される電力(逆方向の電力)の電圧を降圧する双方向チョッパ回路が用いられる。
【0004】
上記の車両に設けられる双方向チョッパ回路は、小型・高効率・高出力であることが求められる。近年、ソフトスイッチング技術を用いた高効率なチョッパ回路として、SAZZ(Snubber Assisted Zero voltage and Zero current transition)チョッパ回路が提案されている。ここで、上記のソフトスイッチング技術とは、共振現象等を利用して電圧又は電流を零とした状態でスイッチング動作を行うことによって電力損失を低減させる技術であり、上記のSAZZチョッパ回路とは、スナバ回路を利用してソフトスイッチングを実現するチョッパ回路である。
【0005】
以下の特許文献1には、スイッチング動作を行うトランジスタのコレクタとエミッタとの間に共振コンデンサを並列接続し、共振コンデンサの電荷が零になった時点でトランジスタをオンさせて零電圧でソフトスイッチングを行う昇降圧チョッパ回路が開示されている。また、以下の特許文献2には、上記のSAZZチョッパ回路を応用した双方向昇降圧チョッパ回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4390256号公報
【特許文献2】特開2007−274778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1,2等に開示されたソフトスイッチング技術を用いたチョッパ回路は、高い効率が得られるという極めて優れた利点を有しており、今後ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されることが期待される。しかしながら、このようなチョッパ回路は、回路構成が複雑であり、部品点数も多くなることからコストが上昇し、その上製品として成立させる作り込みが極めて困難であるという問題がある。
【0008】
ここで、バッテリからモータに供給される電力(順方向の電力)の電圧と、モータで発電されてバッテリに回収される電力(逆方向の電力)の電圧との双方を変換可能な双方向チョッパ回路においては、順方向の電力よりも逆方向の電力の変換効率が高いことが、車両の燃費向上に大きく寄与すると考えられる。その理由は、主に熱として放出されているエネルギーをより多く電気エネルギーとして再利用できるからである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安価且つ簡素な構成であって、例えば車両の燃費向上等を図ることができる高効率な双方向チョッパ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の双方向チョッパ回路は、第1入出力端(T11、T12)に接続されるリアクトル(12)と、第2入出力端(T21,T22)の間に直列接続されて前記リアクトルが接続点(P1)に接続された第1,第2スイッチ(13、14)とを備える双方向チョッパ回路(1)において、前記第1入出力端と前記リアクトルとの間に接続された補助リアクトル(16)と、前記第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサ(21)とダイオード(22)との直列接続体と、該直列接続体をなすコンデンサとダイオードとの接続点(P2)と前記リアクトルと前記補助リアクトルとの接続点(P3)との間に接続された補助スイッチ(24)とを有する補助回路(17)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1スイッチが、前記第1入出力端側から前記第2入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであり、前記第2スイッチが、前記第2入出力端側から前記第1入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第2入出力端が、前記第1入出力端よりも高電圧側に配置されることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記補助回路が、電力を回収するバッテリ(56)が、前記第1入出力端側に接続される場合には前記第2スイッチに対応して設けられ、前記第2入出力端側に接続される場合には前記第1スイッチに対応して設けられることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1,第2スイッチが、逆並列ダイオード付き絶縁ゲートバイポーラトランジスタであることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1入出力端間に接続された第1コンデンサ(11)と、前記第2入出力端間に接続された第2コンデンサ(15)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1入出力端とリアクトルとの間に補助リアクトルを接続し、スイッチをソフトスイッチングする補助回路を第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けたため、安価且つ簡素な構成であって高効率な双方向チョッパ回路を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路の昇圧動作・降圧動作に寄与する構成をそれぞれ抜き出した回路図である。
【図3】本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路を示す回路図である。図1に示す通り、本実施形態の双方向チョッパ回路1は、端子T11,T12(第1入出力端)及び端子T21,T22(第2入出力端)を備えており、電圧を変換しつつ端子T11,T12側から端子T21,T22側へ、或いは、端子T21,T22側から端子T11,T12側へ直流電力の供給を行う。
【0014】
具体的に、図1に示す双方向チョッパ回路1は、端子T21,T22が端子T11,T12よりも高電圧側に配置され、端子T11,T12間に供給される直流電力の電圧を昇圧して端子T21,T22から出力し、或いは、端子T21,T22間に供給される直流電力の電圧を降圧して端子T11,T12から出力する。尚、本実施形態では、端子T11,T12間にバッテリが接続され、端子T21,T22間に負荷が接続されるものとする。また、図1においては、双方向チョッパ回路1の動作を制御する制御装置の図示は省略している。
【0015】
図1に示す通り、双方向チョッパ回路1は、コンデンサ11(第1コンデンサ)、主リアクトル12(リアクトル)、スイッチ13(第1スイッチ)、スイッチ14(第2スイッチ)、コンデンサ15(第2コンデンサ)、補助リアクトル16、及び補助回路17を備える。コンデンサ11は、端子T11,T12間に接続されており、端子T21,T22側から供給されて端子T11,T12から出力すべき電力を平滑化して直流電力にする。尚、コンデンサ11は、端子T11,T12側から供給される直流電力に重畳されているノイズの除去も行う。
【0016】
主リアクトル12は、端子T11とスイッチ13,14の接続点P1との間に接続されており、スイッチ13,14等のスイッチング動作に応じて電力の蓄積や放出を行う。スイッチ13は、端子T11,T12間に供給される直流電力の電圧を昇圧して端子T21,T22から出力する際に駆動されるスイッチである。これに対し、スイッチ14は、端子T21,T22間に供給される直流電力の電圧を降圧して端子T11,T12から出力する際に駆動されるスイッチである。
【0017】
これらスイッチ13,14は、端子T21,T22の間に直列接続されており、例えば逆並列ダイオード付きIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)によって実現される。尚、スイッチ13,14としては、IGBT以外にも、通常のバイポーラトランジスタを用いることも、FETトランジスタ(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。これらスイッチ13,14は、上述した不図示の制御装置によって制御され、例えば100kHz程度のスイッチング周波数で駆動される。
【0018】
コンデンサ15は、端子T21,T22間に接続されており、端子T11,T12側から供給されて端子T21,T22から出力すべき電力を平滑化して直流電力にする。尚、コンデンサ15は、端子T21,T22側から供給される直流電力に重畳されているノイズの除去も行う。補助リアクトル16は、端子T11と主リアクトル12との間に接続されており、スイッチ13,14や補助回路17に設けられる補助スイッチ24(詳細は後述する)のスイッチング動作に応じて電力の蓄積や放出を行う。
【0019】
補助回路17は、スイッチ14に対応して設けられており、主リアクトル12及び補助リアクトル16とともにスイッチ14のソフトスイッチングを実現する回路である。これら補助回路17、主リアクトル12、及び補助リアクトル16とスイッチ14とによってSAZZチョッパ回路が形成されている。ここで、スイッチ13,14のうちのスイッチ14のみに対応させて補助回路17を設けるのは、安価且つ簡素な構成を実現しつつ、端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給を効率良く行うためである。
【0020】
上述の通り、補助回路17は、対応するスイッチのソフトスイッチングを実現する回路であるため、スイッチ13,14の各々に対応させて設けることも可能である。補助回路17をスイッチ13,14の各々に対応させて設ければ、端子T11,T12側から端子T21,T22側への電力供給と端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給との双方を効率良く行うことが可能である。
【0021】
しかしながら、スイッチ13,14の各々に対応させて補助回路17を設けてしまうと、双方向チョッパ回路1の回路構成が複雑になり、部品点数も多くなることからコストが上昇してしまう。そこで、本実施形態では、端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給(端子T11,T12間に接続されるバッテリへの電力供給)の効率を高めつつ安価且つ簡素な構成にするために、補助回路17をスイッチ14のみに対応させて設けている。
【0022】
補助回路17は、コンデンサ21、ダイオード22、ダイオード23、及び補助スイッチ24を備える。コンデンサ21及びダイオード22は直列接続されており、スイッチ14に対して並列接続される。コンデンサ21とダイオード22との直列接続体は、スイッチ14のスイッチング動作によって生じる過度的な高電圧を吸収するために設けられる保護回路である。つまり、コンデンサ21はスナバコンデンサであり、ダイオード22はスナバダイオードである。
【0023】
ダイオード23及び補助スイッチ24は直列接続されており、コンデンサ21とダイオード22との接続点P2と、主リアクトル12と補助リアクトル16との接続点P3との間に接続される。ダイオード23は、アノード電極が補助スイッチ24に接続され、カソード電極がコンデンサ21とダイオード22との接続点P2に接続されている。補助スイッチ24は、例えば逆並列ダイオード付きIGBTによって実現される。この補助スイッチ24としては、スイッチ13,14と同様に、IGBT以外にも、通常のバイポーラトランジスタを用いることも、FETトランジスタ用いることも可能である。
【0024】
次に、上記構成における双方向チョッパ回路1の動作について説明する。図2は、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路の昇圧動作・降圧動作に寄与する構成をそれぞれ抜き出した回路図であって、(a)は昇圧動作に寄与する構成を示す回路図であり、(b)は降圧動作に寄与する構成を示す回路図である。以下、昇圧動作及び降圧動作について順に説明する。
【0025】
〈昇圧動作〉
昇圧動作時には、不図示の制御装置によってスイッチ13のみが駆動され、スイッチ14及び補助スイッチ24が駆動されずにオフ状態にされる。このため、双方向チョッパ回路1は、図2(a)に示す回路で表される。図2(a)に示す通り、双方向チョッパ回路1は、昇圧動作時には、端子T11と端子T21との間に、補助リアクトル16、主リアクトル12、及びダイオード(スイッチ14)が順に接続され、接続点P1と端子T12,T22との間にスイッチ13が接続された回路になる。
【0026】
ここで、本実施形態において、スイッチ14は、逆並列ダイオード付きIGBTで実現されていることから、不図示の制御装置によってオフ状態にされるとIGBTがオフ状態になってダイオードとして機能することになる。このため、図2(a)においては、スイッチ14をダイオードとして図示している。尚、端子T11,T12間にはコンデンサ11が接続され、端子T21,T22間にコンデンサ15が接続されている。
【0027】
図2(a)に示す回路は、補助リアクトル16と主リアクトル12とを1つのリアクトルとみれば、スイッチ13をスイッチング(ハードスイッチング)することによって、端子T11,T12に現れる電圧を昇圧して端子T21,T22から出力する典型的な昇圧チョッパ回路である。このため、不図示の制御装置によってスイッチ13が駆動されると、例えば端子T11,T12に接続されたバッテリから供給される直流電力が昇圧されて端子T21,T22から出力されることになる。
【0028】
〈降圧動作〉
降圧動作時には、不図示の制御装置によってスイッチ14及び補助スイッチ24が駆動され、スイッチ13は駆動されずにオフ状態にされる。このため、双方向チョッパ回路1は、図2(b)に示す回路で表される。図2(b)に示す通り、双方向チョッパ回路1は、降圧動作時には、端子T21と端子T11との間に、スイッチ14、主リアクトル12、及び補助リアクトル16が順に接続され、接続点P1と端子T12,T22との間にダイオード(スイッチ13)が接続され、更にスイッチ14に対応して補助回路17が設けられた回路になる。
【0029】
ここで、本実施形態においては、スイッチ13も、逆並列ダイオード付きIGBTで実現されていることから、不図示の制御装置によってオフ状態にされるとIGBTがオフ状態になってダイオードとして機能することになる。このため、図2(b)においては、スイッチ13をダイオードとして図示している。尚、端子T11,T12間にはコンデンサ11が接続され、端子T21,T22間にコンデンサ15が接続されている。
【0030】
図2(b)に示す回路は、補助回路17を考慮せずに主リアクトル12と補助リアクトル16とを1つのリアクトルとみれば、スイッチ14をスイッチング(ハードスイッチング)することによって、端子T21,T22に現れる電圧を降圧して端子T11,T12から出力する典型的な降圧チョッパ回路である。このため、不図示の制御装置によってスイッチ14が駆動されると、例えば端子T21,T22に供給される直流電力が降圧されて端子T11,T12から出力され、端子T11,T12に接続されたバッテリに供給されることになる。
【0031】
双方向チョッパ回路1は、以上の典型的な降圧チョッパ回路に対し、スイッチ14をソフトスイッチングさせるための補助回路17を設けた構成である。尚、図2(b)においては、説明の簡単化及び図示の簡略化のために、補助回路17に設けられるダイオード23と、補助スイッチ24をなすIGBTに逆並列接続されるダイオードとの図示を省略している。
【0032】
図2(b)に示す双方向チョッパ回路1の動作は、以下に説明する第1〜第6動作モードの6つの動作モードからなり、これら第1〜第6動作モードが繰り返される。第1動作モードは、スイッチ14がオフ状態である場合に、補助スイッチ24をオン状態にしてダイオード(スイッチ13)のキャリアを消滅させる動作モードである。補助スイッチ24がオン状態になる前は、スイッチ14がオフ状態であることから、主リアクトル12及び補助リアクトル16、端子T11,T12間に接続されたバッテリ、及びダイオード13を順に介する経路で電流が流れている。
【0033】
補助スイッチ24がオン状態になると、コンデンサ11から、補助リアクトル16、補助スイッチ24、ダイオード22、及びダイオード(スイッチ13)を順に介してコンデンサ11に至る経路に電流が流れる。これにより、ダイオード(スイッチ13)のキャリアが消滅してダイオード(スイッチ13)がオフ状態になる。尚、第1動作モードの最中は、コンデンサ21からの放電が行われず、コンデンサ21の電圧はほぼ一定に一次される。
【0034】
第2動作モードは、第1動作モードの終了後に、コンデンサ21からの放電を行わせる動作モードである。第1動作モードが終了すると、スイッチ14に加えてダイオード(スイッチ13)がオフ状態になる。すると、コンデンサ21、コンデンサ15、コンデンサ11、補助リアクトル16、及び補助スイッチ24を順に介してコンデンサ21に至る経路で電流が流れる。これにより、コンデンサ21からの放電が行われて、コンデンサ21の電圧は零へと向かう。尚、第2動作モードにおいては、主リアクトル12に流れる電流が、補助スイッチ24及びダイオード22を介して環流されることになる。
【0035】
第3動作モードは、第2動作モードの終了後に、スイッチ14をソフトスイッチングによりオン状態にする動作モードである。第2動作モードが終了すると、コンデンサ21の電圧が零になる。このタイミングでスイッチ14をオン状態にする。スイッチ14がオン状態になると、端子T11から端子T11に向かう方向の電流がスイッチに流れることになる。
【0036】
ここで、第3動作モードでは、スイッチ14及び補助スイッチ24がオン状態でダイオード(スイッチ13)がオフ状態であることから、コンデンサ11、補助リアクトル16、補助スイッチ24、ダイオード22、スイッチ14、及びコンデンサ15を順に介してコンデンサ11に至る経路で電流が流れる。この電流は、スイッチ14に本来流れる電流(端子T11から端子T11に向かう方向の電流)を打ち消す方向に流れる。これにより、スイッチ14では、電流が零の状態でスイッチング動作(ターンオン)がなされるZCS(Zero Current Switching)が実現されることとなる。
【0037】
第4動作モードは、第3動作モードの終了後に、スイッチ14、主リアクトル12、及び補助リアクトル16を流れる電流を増大させる動作モードである。上述した第3動作モードで流れる電流(スイッチ14に本来流れる電流を打ち消す方向に流れる電流)が徐々に減少して零になるとダイオード22がオフ状態になる。すると、コンデンサ15から、スイッチ14、主リアクトル12、補助リアクトル16、及びコンデンサ11を順に介してコンデンサ15に至る経路で電流が流れ初める。
【0038】
第5動作モードは、第4動作モードの終了後に、スイッチ14及び補助スイッチ24をソフトスイッチングによりオフ状態にする動作モードである。スイッチ14では、コンデンサ21の電圧が零の状態でスイッチング動作(ターンオフ)がなされるZVS(Zero Voltage Switching)が実現され、補助スイッチ14では、電流が零の状態でスイッチング動作(ターンオフ)がなされるZCSが実現される。尚、スイッチ14及び補助スイッチ24がオフ状態になると、コンデンサ11、コンデンサ15、コンデンサ21、ダイオード22、主リアクトル12、及び補助リアクトル16を順に介してコンデンサ11に至る経路で電流が流れる。
【0039】
第6動作モードは、第5動作モードの終了後に、ダイオード(スイッチ13)がオン状態になって主リアクトル12及び補助リアクトル16に蓄積された電力を端子T11,T12から出力して、端子T11,T12に接続されたバッテリに供給する動作モードである。ダイオード(スイッチ13)がオン状態になると、主リアクトル12及び補助リアクトル16、端子T11,T12間に接続されたバッテリ、及びダイオード13を順に介する経路で電流が流れる。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、端子T11に接続された主リアクトル12と、端子T21,T22間に直列接続されて主リアクトル12が接続点P1に接続されたスイッチ13,14とを備える双方向チョッパ回路において、端子T11と主リアクトル12との間に補助リアクトル16を接続するとともに、スイッチ14をソフトスイッチングさせるための補助回路17をスイッチ14に対応させて設けている。このため、安価且つ簡素な構成で、端子T21,T22間に接続されたバッテリに対して効率良く直流電力を供給することができる。
【0041】
図3,図4は、本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。尚、ここでは、ハイブリッド車に適用した例について説明する。図3,図4に示す通り、車両50は、エンジン51、モータ52、ドライブシャフト53、ディファレンシャルギア54、及びタイヤ54を備えており、エンジン51及びモータ52の回転駆動力をドライブシャフト53に伝達し、ドライブシャフト53に伝達された回転駆動力をディファレンシャルギア54で変換してタイヤ55を駆動する。
【0042】
この車両50は、モータ52を駆動するために、バッテリ56、双方向チョッパ回路1、及びインバータ57を備える。バッテリ56は、モータ52を駆動する電力を供給する再充電が可能なリチウムイオン二次電池等であり、チョッパ回路1の端子T11,T12間に接続される。双方向チョッパ回路1は、図1,図2を用いて説明した回路であり、バッテリ56からの直流電力を昇圧してインバータ57に供給するとともに、インバータ57からの直流電力を降圧してバッテリ56に供給する。
【0043】
インバータ57は、バッテリ56から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ52を駆動する回路であり、チョッパ回路1の端子T21,T22間に接続される。尚、インバータ57は、モータ52で発電される三相交流電力を直流電力に変換して双方向チョッパ回路1に供給することも可能である。このインバータ57は、不図示の制御装置によって制御される。
【0044】
上記構成において、例えば運転者によってアクセルペダルが踏み込まれると、不図示の制御装置によって双方向チョッパ回路1が制御され、図3に示す通りバッテリ56からの直流電力が双方向チョッパ回路1によって昇圧されてインバータ57に供給される。インバータ57に供給された直流電力は、不図示の制御装置の制御の下で三相交流電力に変換されてモータ52に供給される。これにより、モータ52が駆動され、その回転駆動力がドライブシャフト53及びディファレンシャルギア54を介して伝達され、タイヤ55が駆動される。
【0045】
これに対し、例えば運転者によってブレーキペダルが踏み込まれると、不図示の制御装置によってインバータ57が制御されてモータ52が回生ブレーキとして動作し、モータ52で発電された交流電力がインバータ57で直流電力に変換されて双方向チョッパ回路1に供給される。すると、不図示の制御装置によって双方向チョッパ回路1が制御され、図4に示す通り、双方向チョッパ回路1に供給された直流電力が高圧されてバッテリ56に供給され、これによりバッテリ56の充電が行われる。
【0046】
ここで、本実施形態では、回生ブレーキとして動作するモータ52から回収された電力をバッテリ56に供給する際に、双方向チョッパ回路1においてスイッチ14を補助回路17によりソフトスイッチングさせている。このため、スイッチ14をハードスイッチングさせる場合に比べてモータ52で発電された電力を効率良く回収することができるため、車両50の燃費向上等を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、スイッチ13,14のうちのスイッチ14のみに対応させて補助回路17を設ける例について説明したが、補助回路17をスイッチ13のみに対応させて設けても良い。ここで、バッテリ56へのエネルギー回収効率を考慮すると、バッテリ56が低電圧側に配置される端子T11,T12に接続される場合にはスイッチ14に対応させて補助回路17を設け、バッテリ56が高電圧側に配置される端子T21,T22に接続される場合にはスイッチ13に対応させて補助回路17を設けるのが望ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、車両がハイブリッド車である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、充電が可能なバッテリと、このバッテリから供給される電力によって動力を発生する動力発生源としてのモータを備える車両一般に適用することができる。例えば、上記のハイブリッド車以外に、電気自動車、電動式の重機等の車両にも本発明を適用可能である
【符号の説明】
【0049】
1 双方向チョッパ回路
11,15 コンデンサ
12 主リアクトル
13,14 スイッチ
16 補助リアクトル
17 補助回路
21 コンデンサ
22 ダイオード
24 補助スイッチ
56 バッテリ
P1,P2,P3 接続点
T11,T12 端子
T21,T22 端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向チョッパ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会を実現すべく、動力発生源としてエンジンとモータとを併用するハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)や動力発生源としてモータのみを用いる電気自動車(EV:Electric Vehicle)の研究が盛んに行われている。このようなハイブリッド自動車や電気自動車は、モータを駆動する電力を供給する再充電が可能なリチウムイオン二次電池等のバッテリと、バッテリの電圧を変換するチョッパ回路と、チョッパ回路で変換された電圧を用いてモータを駆動するインバータ等の駆動回路とを備える。
【0003】
ここで、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両は、エネルギーを有効利用するために、モータを回生ブレーキとして用いてモータで発電された電力によってバッテリの充電を行うようにしている。このため、上記の車両では、上記のチョッパ回路としては、例えばバッテリからモータに供給される電力(順方向の電力)の電圧を昇圧するとともに、モータで発電されてバッテリに回収される電力(逆方向の電力)の電圧を降圧する双方向チョッパ回路が用いられる。
【0004】
上記の車両に設けられる双方向チョッパ回路は、小型・高効率・高出力であることが求められる。近年、ソフトスイッチング技術を用いた高効率なチョッパ回路として、SAZZ(Snubber Assisted Zero voltage and Zero current transition)チョッパ回路が提案されている。ここで、上記のソフトスイッチング技術とは、共振現象等を利用して電圧又は電流を零とした状態でスイッチング動作を行うことによって電力損失を低減させる技術であり、上記のSAZZチョッパ回路とは、スナバ回路を利用してソフトスイッチングを実現するチョッパ回路である。
【0005】
以下の特許文献1には、スイッチング動作を行うトランジスタのコレクタとエミッタとの間に共振コンデンサを並列接続し、共振コンデンサの電荷が零になった時点でトランジスタをオンさせて零電圧でソフトスイッチングを行う昇降圧チョッパ回路が開示されている。また、以下の特許文献2には、上記のSAZZチョッパ回路を応用した双方向昇降圧チョッパ回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4390256号公報
【特許文献2】特開2007−274778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の特許文献1,2等に開示されたソフトスイッチング技術を用いたチョッパ回路は、高い効率が得られるという極めて優れた利点を有しており、今後ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されることが期待される。しかしながら、このようなチョッパ回路は、回路構成が複雑であり、部品点数も多くなることからコストが上昇し、その上製品として成立させる作り込みが極めて困難であるという問題がある。
【0008】
ここで、バッテリからモータに供給される電力(順方向の電力)の電圧と、モータで発電されてバッテリに回収される電力(逆方向の電力)の電圧との双方を変換可能な双方向チョッパ回路においては、順方向の電力よりも逆方向の電力の変換効率が高いことが、車両の燃費向上に大きく寄与すると考えられる。その理由は、主に熱として放出されているエネルギーをより多く電気エネルギーとして再利用できるからである。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、安価且つ簡素な構成であって、例えば車両の燃費向上等を図ることができる高効率な双方向チョッパ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の双方向チョッパ回路は、第1入出力端(T11、T12)に接続されるリアクトル(12)と、第2入出力端(T21,T22)の間に直列接続されて前記リアクトルが接続点(P1)に接続された第1,第2スイッチ(13、14)とを備える双方向チョッパ回路(1)において、前記第1入出力端と前記リアクトルとの間に接続された補助リアクトル(16)と、前記第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサ(21)とダイオード(22)との直列接続体と、該直列接続体をなすコンデンサとダイオードとの接続点(P2)と前記リアクトルと前記補助リアクトルとの接続点(P3)との間に接続された補助スイッチ(24)とを有する補助回路(17)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1スイッチが、前記第1入出力端側から前記第2入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであり、前記第2スイッチが、前記第2入出力端側から前記第1入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第2入出力端が、前記第1入出力端よりも高電圧側に配置されることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記補助回路が、電力を回収するバッテリ(56)が、前記第1入出力端側に接続される場合には前記第2スイッチに対応して設けられ、前記第2入出力端側に接続される場合には前記第1スイッチに対応して設けられることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1,第2スイッチが、逆並列ダイオード付き絶縁ゲートバイポーラトランジスタであることを特徴としている。
また、本発明の双方向チョッパ回路は、前記第1入出力端間に接続された第1コンデンサ(11)と、前記第2入出力端間に接続された第2コンデンサ(15)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1入出力端とリアクトルとの間に補助リアクトルを接続し、スイッチをソフトスイッチングする補助回路を第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けたため、安価且つ簡素な構成であって高効率な双方向チョッパ回路を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路の昇圧動作・降圧動作に寄与する構成をそれぞれ抜き出した回路図である。
【図3】本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路を示す回路図である。図1に示す通り、本実施形態の双方向チョッパ回路1は、端子T11,T12(第1入出力端)及び端子T21,T22(第2入出力端)を備えており、電圧を変換しつつ端子T11,T12側から端子T21,T22側へ、或いは、端子T21,T22側から端子T11,T12側へ直流電力の供給を行う。
【0014】
具体的に、図1に示す双方向チョッパ回路1は、端子T21,T22が端子T11,T12よりも高電圧側に配置され、端子T11,T12間に供給される直流電力の電圧を昇圧して端子T21,T22から出力し、或いは、端子T21,T22間に供給される直流電力の電圧を降圧して端子T11,T12から出力する。尚、本実施形態では、端子T11,T12間にバッテリが接続され、端子T21,T22間に負荷が接続されるものとする。また、図1においては、双方向チョッパ回路1の動作を制御する制御装置の図示は省略している。
【0015】
図1に示す通り、双方向チョッパ回路1は、コンデンサ11(第1コンデンサ)、主リアクトル12(リアクトル)、スイッチ13(第1スイッチ)、スイッチ14(第2スイッチ)、コンデンサ15(第2コンデンサ)、補助リアクトル16、及び補助回路17を備える。コンデンサ11は、端子T11,T12間に接続されており、端子T21,T22側から供給されて端子T11,T12から出力すべき電力を平滑化して直流電力にする。尚、コンデンサ11は、端子T11,T12側から供給される直流電力に重畳されているノイズの除去も行う。
【0016】
主リアクトル12は、端子T11とスイッチ13,14の接続点P1との間に接続されており、スイッチ13,14等のスイッチング動作に応じて電力の蓄積や放出を行う。スイッチ13は、端子T11,T12間に供給される直流電力の電圧を昇圧して端子T21,T22から出力する際に駆動されるスイッチである。これに対し、スイッチ14は、端子T21,T22間に供給される直流電力の電圧を降圧して端子T11,T12から出力する際に駆動されるスイッチである。
【0017】
これらスイッチ13,14は、端子T21,T22の間に直列接続されており、例えば逆並列ダイオード付きIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)によって実現される。尚、スイッチ13,14としては、IGBT以外にも、通常のバイポーラトランジスタを用いることも、FETトランジスタ(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を用いることも可能である。これらスイッチ13,14は、上述した不図示の制御装置によって制御され、例えば100kHz程度のスイッチング周波数で駆動される。
【0018】
コンデンサ15は、端子T21,T22間に接続されており、端子T11,T12側から供給されて端子T21,T22から出力すべき電力を平滑化して直流電力にする。尚、コンデンサ15は、端子T21,T22側から供給される直流電力に重畳されているノイズの除去も行う。補助リアクトル16は、端子T11と主リアクトル12との間に接続されており、スイッチ13,14や補助回路17に設けられる補助スイッチ24(詳細は後述する)のスイッチング動作に応じて電力の蓄積や放出を行う。
【0019】
補助回路17は、スイッチ14に対応して設けられており、主リアクトル12及び補助リアクトル16とともにスイッチ14のソフトスイッチングを実現する回路である。これら補助回路17、主リアクトル12、及び補助リアクトル16とスイッチ14とによってSAZZチョッパ回路が形成されている。ここで、スイッチ13,14のうちのスイッチ14のみに対応させて補助回路17を設けるのは、安価且つ簡素な構成を実現しつつ、端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給を効率良く行うためである。
【0020】
上述の通り、補助回路17は、対応するスイッチのソフトスイッチングを実現する回路であるため、スイッチ13,14の各々に対応させて設けることも可能である。補助回路17をスイッチ13,14の各々に対応させて設ければ、端子T11,T12側から端子T21,T22側への電力供給と端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給との双方を効率良く行うことが可能である。
【0021】
しかしながら、スイッチ13,14の各々に対応させて補助回路17を設けてしまうと、双方向チョッパ回路1の回路構成が複雑になり、部品点数も多くなることからコストが上昇してしまう。そこで、本実施形態では、端子T21,T22側から端子T11,T12側への電力供給(端子T11,T12間に接続されるバッテリへの電力供給)の効率を高めつつ安価且つ簡素な構成にするために、補助回路17をスイッチ14のみに対応させて設けている。
【0022】
補助回路17は、コンデンサ21、ダイオード22、ダイオード23、及び補助スイッチ24を備える。コンデンサ21及びダイオード22は直列接続されており、スイッチ14に対して並列接続される。コンデンサ21とダイオード22との直列接続体は、スイッチ14のスイッチング動作によって生じる過度的な高電圧を吸収するために設けられる保護回路である。つまり、コンデンサ21はスナバコンデンサであり、ダイオード22はスナバダイオードである。
【0023】
ダイオード23及び補助スイッチ24は直列接続されており、コンデンサ21とダイオード22との接続点P2と、主リアクトル12と補助リアクトル16との接続点P3との間に接続される。ダイオード23は、アノード電極が補助スイッチ24に接続され、カソード電極がコンデンサ21とダイオード22との接続点P2に接続されている。補助スイッチ24は、例えば逆並列ダイオード付きIGBTによって実現される。この補助スイッチ24としては、スイッチ13,14と同様に、IGBT以外にも、通常のバイポーラトランジスタを用いることも、FETトランジスタ用いることも可能である。
【0024】
次に、上記構成における双方向チョッパ回路1の動作について説明する。図2は、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路の昇圧動作・降圧動作に寄与する構成をそれぞれ抜き出した回路図であって、(a)は昇圧動作に寄与する構成を示す回路図であり、(b)は降圧動作に寄与する構成を示す回路図である。以下、昇圧動作及び降圧動作について順に説明する。
【0025】
〈昇圧動作〉
昇圧動作時には、不図示の制御装置によってスイッチ13のみが駆動され、スイッチ14及び補助スイッチ24が駆動されずにオフ状態にされる。このため、双方向チョッパ回路1は、図2(a)に示す回路で表される。図2(a)に示す通り、双方向チョッパ回路1は、昇圧動作時には、端子T11と端子T21との間に、補助リアクトル16、主リアクトル12、及びダイオード(スイッチ14)が順に接続され、接続点P1と端子T12,T22との間にスイッチ13が接続された回路になる。
【0026】
ここで、本実施形態において、スイッチ14は、逆並列ダイオード付きIGBTで実現されていることから、不図示の制御装置によってオフ状態にされるとIGBTがオフ状態になってダイオードとして機能することになる。このため、図2(a)においては、スイッチ14をダイオードとして図示している。尚、端子T11,T12間にはコンデンサ11が接続され、端子T21,T22間にコンデンサ15が接続されている。
【0027】
図2(a)に示す回路は、補助リアクトル16と主リアクトル12とを1つのリアクトルとみれば、スイッチ13をスイッチング(ハードスイッチング)することによって、端子T11,T12に現れる電圧を昇圧して端子T21,T22から出力する典型的な昇圧チョッパ回路である。このため、不図示の制御装置によってスイッチ13が駆動されると、例えば端子T11,T12に接続されたバッテリから供給される直流電力が昇圧されて端子T21,T22から出力されることになる。
【0028】
〈降圧動作〉
降圧動作時には、不図示の制御装置によってスイッチ14及び補助スイッチ24が駆動され、スイッチ13は駆動されずにオフ状態にされる。このため、双方向チョッパ回路1は、図2(b)に示す回路で表される。図2(b)に示す通り、双方向チョッパ回路1は、降圧動作時には、端子T21と端子T11との間に、スイッチ14、主リアクトル12、及び補助リアクトル16が順に接続され、接続点P1と端子T12,T22との間にダイオード(スイッチ13)が接続され、更にスイッチ14に対応して補助回路17が設けられた回路になる。
【0029】
ここで、本実施形態においては、スイッチ13も、逆並列ダイオード付きIGBTで実現されていることから、不図示の制御装置によってオフ状態にされるとIGBTがオフ状態になってダイオードとして機能することになる。このため、図2(b)においては、スイッチ13をダイオードとして図示している。尚、端子T11,T12間にはコンデンサ11が接続され、端子T21,T22間にコンデンサ15が接続されている。
【0030】
図2(b)に示す回路は、補助回路17を考慮せずに主リアクトル12と補助リアクトル16とを1つのリアクトルとみれば、スイッチ14をスイッチング(ハードスイッチング)することによって、端子T21,T22に現れる電圧を降圧して端子T11,T12から出力する典型的な降圧チョッパ回路である。このため、不図示の制御装置によってスイッチ14が駆動されると、例えば端子T21,T22に供給される直流電力が降圧されて端子T11,T12から出力され、端子T11,T12に接続されたバッテリに供給されることになる。
【0031】
双方向チョッパ回路1は、以上の典型的な降圧チョッパ回路に対し、スイッチ14をソフトスイッチングさせるための補助回路17を設けた構成である。尚、図2(b)においては、説明の簡単化及び図示の簡略化のために、補助回路17に設けられるダイオード23と、補助スイッチ24をなすIGBTに逆並列接続されるダイオードとの図示を省略している。
【0032】
図2(b)に示す双方向チョッパ回路1の動作は、以下に説明する第1〜第6動作モードの6つの動作モードからなり、これら第1〜第6動作モードが繰り返される。第1動作モードは、スイッチ14がオフ状態である場合に、補助スイッチ24をオン状態にしてダイオード(スイッチ13)のキャリアを消滅させる動作モードである。補助スイッチ24がオン状態になる前は、スイッチ14がオフ状態であることから、主リアクトル12及び補助リアクトル16、端子T11,T12間に接続されたバッテリ、及びダイオード13を順に介する経路で電流が流れている。
【0033】
補助スイッチ24がオン状態になると、コンデンサ11から、補助リアクトル16、補助スイッチ24、ダイオード22、及びダイオード(スイッチ13)を順に介してコンデンサ11に至る経路に電流が流れる。これにより、ダイオード(スイッチ13)のキャリアが消滅してダイオード(スイッチ13)がオフ状態になる。尚、第1動作モードの最中は、コンデンサ21からの放電が行われず、コンデンサ21の電圧はほぼ一定に一次される。
【0034】
第2動作モードは、第1動作モードの終了後に、コンデンサ21からの放電を行わせる動作モードである。第1動作モードが終了すると、スイッチ14に加えてダイオード(スイッチ13)がオフ状態になる。すると、コンデンサ21、コンデンサ15、コンデンサ11、補助リアクトル16、及び補助スイッチ24を順に介してコンデンサ21に至る経路で電流が流れる。これにより、コンデンサ21からの放電が行われて、コンデンサ21の電圧は零へと向かう。尚、第2動作モードにおいては、主リアクトル12に流れる電流が、補助スイッチ24及びダイオード22を介して環流されることになる。
【0035】
第3動作モードは、第2動作モードの終了後に、スイッチ14をソフトスイッチングによりオン状態にする動作モードである。第2動作モードが終了すると、コンデンサ21の電圧が零になる。このタイミングでスイッチ14をオン状態にする。スイッチ14がオン状態になると、端子T11から端子T11に向かう方向の電流がスイッチに流れることになる。
【0036】
ここで、第3動作モードでは、スイッチ14及び補助スイッチ24がオン状態でダイオード(スイッチ13)がオフ状態であることから、コンデンサ11、補助リアクトル16、補助スイッチ24、ダイオード22、スイッチ14、及びコンデンサ15を順に介してコンデンサ11に至る経路で電流が流れる。この電流は、スイッチ14に本来流れる電流(端子T11から端子T11に向かう方向の電流)を打ち消す方向に流れる。これにより、スイッチ14では、電流が零の状態でスイッチング動作(ターンオン)がなされるZCS(Zero Current Switching)が実現されることとなる。
【0037】
第4動作モードは、第3動作モードの終了後に、スイッチ14、主リアクトル12、及び補助リアクトル16を流れる電流を増大させる動作モードである。上述した第3動作モードで流れる電流(スイッチ14に本来流れる電流を打ち消す方向に流れる電流)が徐々に減少して零になるとダイオード22がオフ状態になる。すると、コンデンサ15から、スイッチ14、主リアクトル12、補助リアクトル16、及びコンデンサ11を順に介してコンデンサ15に至る経路で電流が流れ初める。
【0038】
第5動作モードは、第4動作モードの終了後に、スイッチ14及び補助スイッチ24をソフトスイッチングによりオフ状態にする動作モードである。スイッチ14では、コンデンサ21の電圧が零の状態でスイッチング動作(ターンオフ)がなされるZVS(Zero Voltage Switching)が実現され、補助スイッチ14では、電流が零の状態でスイッチング動作(ターンオフ)がなされるZCSが実現される。尚、スイッチ14及び補助スイッチ24がオフ状態になると、コンデンサ11、コンデンサ15、コンデンサ21、ダイオード22、主リアクトル12、及び補助リアクトル16を順に介してコンデンサ11に至る経路で電流が流れる。
【0039】
第6動作モードは、第5動作モードの終了後に、ダイオード(スイッチ13)がオン状態になって主リアクトル12及び補助リアクトル16に蓄積された電力を端子T11,T12から出力して、端子T11,T12に接続されたバッテリに供給する動作モードである。ダイオード(スイッチ13)がオン状態になると、主リアクトル12及び補助リアクトル16、端子T11,T12間に接続されたバッテリ、及びダイオード13を順に介する経路で電流が流れる。
【0040】
以上の通り、本実施形態では、端子T11に接続された主リアクトル12と、端子T21,T22間に直列接続されて主リアクトル12が接続点P1に接続されたスイッチ13,14とを備える双方向チョッパ回路において、端子T11と主リアクトル12との間に補助リアクトル16を接続するとともに、スイッチ14をソフトスイッチングさせるための補助回路17をスイッチ14に対応させて設けている。このため、安価且つ簡素な構成で、端子T21,T22間に接続されたバッテリに対して効率良く直流電力を供給することができる。
【0041】
図3,図4は、本発明の一実施形態によるチョッパ回路を車両に適用した状態を示す図である。尚、ここでは、ハイブリッド車に適用した例について説明する。図3,図4に示す通り、車両50は、エンジン51、モータ52、ドライブシャフト53、ディファレンシャルギア54、及びタイヤ54を備えており、エンジン51及びモータ52の回転駆動力をドライブシャフト53に伝達し、ドライブシャフト53に伝達された回転駆動力をディファレンシャルギア54で変換してタイヤ55を駆動する。
【0042】
この車両50は、モータ52を駆動するために、バッテリ56、双方向チョッパ回路1、及びインバータ57を備える。バッテリ56は、モータ52を駆動する電力を供給する再充電が可能なリチウムイオン二次電池等であり、チョッパ回路1の端子T11,T12間に接続される。双方向チョッパ回路1は、図1,図2を用いて説明した回路であり、バッテリ56からの直流電力を昇圧してインバータ57に供給するとともに、インバータ57からの直流電力を降圧してバッテリ56に供給する。
【0043】
インバータ57は、バッテリ56から供給される直流電力を三相交流電力に変換してモータ52を駆動する回路であり、チョッパ回路1の端子T21,T22間に接続される。尚、インバータ57は、モータ52で発電される三相交流電力を直流電力に変換して双方向チョッパ回路1に供給することも可能である。このインバータ57は、不図示の制御装置によって制御される。
【0044】
上記構成において、例えば運転者によってアクセルペダルが踏み込まれると、不図示の制御装置によって双方向チョッパ回路1が制御され、図3に示す通りバッテリ56からの直流電力が双方向チョッパ回路1によって昇圧されてインバータ57に供給される。インバータ57に供給された直流電力は、不図示の制御装置の制御の下で三相交流電力に変換されてモータ52に供給される。これにより、モータ52が駆動され、その回転駆動力がドライブシャフト53及びディファレンシャルギア54を介して伝達され、タイヤ55が駆動される。
【0045】
これに対し、例えば運転者によってブレーキペダルが踏み込まれると、不図示の制御装置によってインバータ57が制御されてモータ52が回生ブレーキとして動作し、モータ52で発電された交流電力がインバータ57で直流電力に変換されて双方向チョッパ回路1に供給される。すると、不図示の制御装置によって双方向チョッパ回路1が制御され、図4に示す通り、双方向チョッパ回路1に供給された直流電力が高圧されてバッテリ56に供給され、これによりバッテリ56の充電が行われる。
【0046】
ここで、本実施形態では、回生ブレーキとして動作するモータ52から回収された電力をバッテリ56に供給する際に、双方向チョッパ回路1においてスイッチ14を補助回路17によりソフトスイッチングさせている。このため、スイッチ14をハードスイッチングさせる場合に比べてモータ52で発電された電力を効率良く回収することができるため、車両50の燃費向上等を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の一実施形態による双方向チョッパ回路について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、スイッチ13,14のうちのスイッチ14のみに対応させて補助回路17を設ける例について説明したが、補助回路17をスイッチ13のみに対応させて設けても良い。ここで、バッテリ56へのエネルギー回収効率を考慮すると、バッテリ56が低電圧側に配置される端子T11,T12に接続される場合にはスイッチ14に対応させて補助回路17を設け、バッテリ56が高電圧側に配置される端子T21,T22に接続される場合にはスイッチ13に対応させて補助回路17を設けるのが望ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、車両がハイブリッド車である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本発明は、充電が可能なバッテリと、このバッテリから供給される電力によって動力を発生する動力発生源としてのモータを備える車両一般に適用することができる。例えば、上記のハイブリッド車以外に、電気自動車、電動式の重機等の車両にも本発明を適用可能である
【符号の説明】
【0049】
1 双方向チョッパ回路
11,15 コンデンサ
12 主リアクトル
13,14 スイッチ
16 補助リアクトル
17 補助回路
21 コンデンサ
22 ダイオード
24 補助スイッチ
56 バッテリ
P1,P2,P3 接続点
T11,T12 端子
T21,T22 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入出力端に接続されるリアクトルと、第2入出力端の間に直列接続されて前記リアクトルが接続点に接続された第1,第2スイッチとを備える双方向チョッパ回路において、
前記第1入出力端と前記リアクトルとの間に接続された補助リアクトルと、
前記第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサとダイオードとの直列接続体と、該直列接続体をなすコンデンサとダイオードとの接続点と前記リアクトルと前記補助リアクトルとの接続点との間に接続された補助スイッチとを有する補助回路と
を備えることを特徴とする双方向チョッパ回路。
【請求項2】
前記第1スイッチは、前記第1入出力端側から前記第2入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであり、
前記第2スイッチは、前記第2入出力端側から前記第1入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチである
ことを特徴とする請求項1記載の双方向チョッパ回路。
【請求項3】
前記第2入出力端は、前記第1入出力端よりも高電圧側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の双方向チョッパ回路。
【請求項4】
前記補助回路は、電力を回収するバッテリが、前記第1入出力端側に接続される場合には前記第2スイッチに対応して設けられ、前記第2入出力端側に接続される場合には前記第1スイッチに対応して設けられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【請求項5】
前記第1,第2スイッチは、逆並列ダイオード付き絶縁ゲートバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【請求項6】
前記第1入出力端間に接続された第1コンデンサと、
前記第2入出力端間に接続された第2コンデンサと
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【請求項1】
第1入出力端に接続されるリアクトルと、第2入出力端の間に直列接続されて前記リアクトルが接続点に接続された第1,第2スイッチとを備える双方向チョッパ回路において、
前記第1入出力端と前記リアクトルとの間に接続された補助リアクトルと、
前記第1,第2スイッチの何れか一方に対応して設けられ、対応するスイッチに並列接続されたコンデンサとダイオードとの直列接続体と、該直列接続体をなすコンデンサとダイオードとの接続点と前記リアクトルと前記補助リアクトルとの接続点との間に接続された補助スイッチとを有する補助回路と
を備えることを特徴とする双方向チョッパ回路。
【請求項2】
前記第1スイッチは、前記第1入出力端側から前記第2入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチであり、
前記第2スイッチは、前記第2入出力端側から前記第1入出力端側に電力供給を行う場合に駆動されるスイッチである
ことを特徴とする請求項1記載の双方向チョッパ回路。
【請求項3】
前記第2入出力端は、前記第1入出力端よりも高電圧側に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の双方向チョッパ回路。
【請求項4】
前記補助回路は、電力を回収するバッテリが、前記第1入出力端側に接続される場合には前記第2スイッチに対応して設けられ、前記第2入出力端側に接続される場合には前記第1スイッチに対応して設けられることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【請求項5】
前記第1,第2スイッチは、逆並列ダイオード付き絶縁ゲートバイポーラトランジスタであることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【請求項6】
前記第1入出力端間に接続された第1コンデンサと、
前記第2入出力端間に接続された第2コンデンサと
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載の双方向チョッパ回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−90499(P2013−90499A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230704(P2011−230704)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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