説明

双方向バスアイソレーション装置

【課題】 GP−IBバスのように多数の信号で構成されたバスを電気的に絶縁することは困難である。光信号に変換して送信することも行われているが、構成が複雑になり、かつ遅延が大きくなるという課題を解決する。
【解決手段】 コントローラになる機器を固定し、トーカコマンドから信号の方向を示すバス方向制御信号を作成し、コントローラが出力する制御信号を一方向絶縁回路で電気的に絶縁し、データバスおよびその他の制御信号を双方向絶縁回路で電気的に絶縁して、この双方向絶縁回路の信号の方向をバス方向制御信号で決定するようにした。コントローラになる機器を固定することにより、簡単な構成でGP−IBバスを電気的に絶縁することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双方向性バスを電気的に絶縁する装置に関し、特にGP−IB(General Purpose Interface Bus)バスに用いて好適な双方向バスアイソレーション装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
双方向性デジタルバスを電気的に絶縁する装置の先行技術として、特許文献1がある。以下、この特許文献1に記載された発明を図8に基づいて説明する。なお、図8は説明上必要のない部分は簡略化している。
【0003】
図8において、通信制御回路11と双方向性バス14は双方向絶縁回路12およびバストランシーバ13で接続され、この双方向性バス14には複数の相手側装置15が接続される。通信制御回路11は双方向絶縁回路12およびバストランシーバ13を介して相手側装置15にデータを送信し、また相手側装置15から送信されたデータを受信する。
【0004】
双方向絶縁回路12は互いに逆方向に接続されたフォトカプラの組を複数組内蔵しており、複数のデジタル信号を電気的に絶縁し、且つ双方向に伝達することができる。バストランシーバ13は互いに逆方向に接続されたトライステートバッファの組を複数組内蔵しており、複数のデジタル信号を双方向に伝達する。双方向絶縁回路12とバストランシーバ13共にどちらの方向に伝達するかは、信号DIRで指定する。なお、信号DIRはフォトカプラ17で絶縁されてバストランシーバ13に入力される。
【0005】
遅延回路16は入力された信号を所定の時間遅延して出力する。この遅延時間は、双方向絶縁回路12の遅延時間より大きな値に設定される。
【0006】
通信制御回路11から相手側装置15にデータを送信するときは、信号DIRによって双方向絶縁回路12およびバストランシーバ13を、双方向性バス14側が出力になるようにする。そして、線路D0、D1・・・・・DNにデータを乗せて信号SENDを有効にする。
【0007】
データは双方向絶縁回路12で絶縁され、相手側装置15に達する。また、信号SENDは遅延回路16で遅延されてSENDYとなり、さらに双方向絶縁回路12で絶縁されてSENDXになる。相手側装置15は、SENDXが有効になったときにデータを取り込む。通信制御回路11から出力されたデータは双方向絶縁回路12で遅延するが、遅延回路16の遅延時間はそれより大きな値に設定されているので、相手方装置15は安定したデータを取り込むことができる。
【0008】
相手側装置15は、データを取り込むと信号RECVXを有効にする。このRECVXは双方向絶縁回路12で絶縁されて信号RECVになり、通信制御回路11に入力される。通信制御回路11は信号RECVの有効を確認すると信号SENDを無効にする。相手方装置15は、SENDXが無効になるとRECVXを無効にする。こうして、一連のデータ送信が完了する。
【0009】
通信制御回路11がデータを受信するときは、信号DIRにより通信制御回路11側が出力になるようにして、相手側装置15からのデータを待つ。相手側装置15はデータを線路D0X、D1X、・・・・・DNXに乗せて信号SENDXを有効にする。通信制御回路11は、信号SENDが有効になるとデータを取り込み、RECVを有効にする。相手側装置15は、RECVXが有効になるとSENDXを無効にする。通信制御回路11は、SENDが無効になるとRECVを無効にする。
【0010】
GP−IB(General Purpose Interface Bus)バスでは制御信号の数が多く、また通信手順も複雑なので、図8の装置をそのまま用いることは難しい。そのため、データをシリアル信号に変換し、光を用いて伝送することが行われている。図9にこの装置の構成を示す。
【0011】
図9において、GP−IB機器31は、変換器33、光ケーブル35および変換器34を介してGP−IB機器32と接続される。変換器33と34は同じ構成である。GP−IBコネクタ21から入力されたGP−IB信号はバストランシーバ22を経てパラレル−シリアル変換器23でシリアル信号に変換される。このシリアル信号は電気−光変換器24で光信号に変換されて、光コネクタを経て光ケーブル35によって相手方変換器に伝送される。
【0012】
伝送された光信号は光−電気変換器26で電気信号に変換され、シリアル−パラレル変換器27でパラレル信号に変換される。このパラレル信号はバストランシーバ22、GP−IBコネクタ21を経て相手側のGP−IB機器に入力される。このようにすることにより、電気的に絶縁することができる。
【特許文献1】特開平7−74698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、このような信号を電気的に絶縁する手法には、次のような課題があった。図8に示した絶縁装置は一般的なパラレル信号の絶縁手法であり、GP−IBバスのように制御信号が多いインターフェイスバスにはそのままでは適用することができないという課題があった。GP−IBバスには複数のGP−IB機器が接続でき、各GP−IB機器はコントローラ、トーカ、リスナ機能を有している。従って、特殊なGP−IBコントローラICやCPU回路で構成しなければ絶縁装置を構成することができなかった。また、GP−IB機器毎に絶縁装置が必要であり、コストがかかるという課題もあった。
【0014】
図9に示した絶縁装置は構成が複雑であるためにコストアップの要因になり、またパラレル−シリアル変換、電気−光変換など複数の変換を行うために応答速度が低下するという課題があった。また、GP−IB機器毎に変換器が必要であるという課題もあった。従って、この構成は電気的な絶縁を目的とするよりも、GP−IB機器間の伝送距離を伸ばすことを目的として採用されることが多いのが現状である。
【0015】
従って本発明の目的は、簡単な構成でGP−IB機器間を電気的に絶縁することができる双方向バスアイソレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を達成するために、本発明のうち請求項1記載の発明は、
データバスおよび複数の制御信号を有する通信バスによって接続された複数の機器のそれぞれに異なるアドレスを設定し、コントローラ機器がコマンドを用いて送信機器および受信機器を指定して、前記送信機器から前記受信機器にデータを転送する計測システムに用いる、通信バスを電気的に絶縁する双方向バスアイソレーション装置において、
前記データバス上のデータがコマンドであることを表す制御信号および前記データバスが入力され、これらの入力信号から信号の方向を表す第1のバス方向制御信号を出力するバス方向制御部と、
前記第1のバス方向制御信号が入力され、この入力信号を電気的に絶縁した第2のバス方向制御信号を出力する第1の一方向絶縁回路と、
前記第1および第2のバス方向制御信号および前記通信バスの制御信号のうちコントローラ機器が出力する制御信号が入力され、前記第1および第2のバス方向制御信号により、前記コントローラ機器が出力する制御信号を電気的に絶縁した制御信号または固定値を出力する第2の一方向性絶縁回路と、
前記第1および第2のバス方向制御信号、前記通信バスのデータバスおよび前記第2の一方向絶縁回路に入力されない制御信号が入力され、前記第1および第2のバス方向制御信号によって前記データバスおよび前記入力された制御信号の方向を決定し、これらデータバスおよび制御信号を電気的に絶縁した信号を出力する双方向絶縁回路と、
を具備したものである。簡単な構成で通信バスを電気的に絶縁できる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記バス方向制御部には機器のアドレスを設定するスイッチが接続され、
送信機器のアドレスを保存するトーカアドレスレジスタと、
このトーカアドレスレジスタと前記スイッチに設定されたアドレスを比較し、その比較結果に関連する信号が前記第1のバス方向制御信号となるコンパレータと、
を具備したものである。バス方向制御部を簡単に構成できる。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、
データバス上のデータが送信機器の設定コマンドであることを検出するトーカコマンド検出部と、
データバス上の信号が有効であり、かつコマンドであることを検出する第1のゲートと、
前記トーカコマンド検出部の出力と前記第1のゲートの出力の論理積を演算する第2のゲートと、
を具備し、前記トーカアドレスレジスタは前記第2のゲートの出力に基づいてデータバス上のアドレスを保存するようにしたものである。簡単な構成でトーカアドレスを保存できる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、
前記第1のゲートと前記第2のゲートとの間に遅延部を設けたものである。トーカコマンド検出部の遅れを補償できる。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項1若しくは請求項4いずれかに記載の発明において、
前記第1および第2の一方向性絶縁回路、および前記双方向絶縁回路はフォトカプラを内蔵し、このフォトカプラによって信号を電気的に絶縁するようにしたものである。簡単に信号を絶縁できる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1若しくは請求項5いずれかに記載の発明において、
前記双方向バスアイソレーション装置は、電気的に絶縁された電圧を出力する絶縁型電源部を具備したものである。双方向バスアイソレーション装置を単一電源で駆動できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、GP−IBバスのような多数の信号線がある通信バスを電気的に絶縁する装置であって、コマンドから信号の方向を表すバス方向制御信号を作成し、コントローラが出力する制御信号を一方向絶縁回路で絶縁した信号を作成し、データバスおよびその他の制御信号を双方向絶縁回路で絶縁した信号を作成して、この双方向絶縁回路の方向を前記バス方向制御信号で制御するようにした。
【0023】
比較的簡単な構成で、GP−IBバスのような多数の信号線を有する通信バスを電気的に絶縁することができるという効果がある。また、複数の機器の間に本双方向バスアイソレーション装置を挿入するだけで絶縁することができるので、機器毎に設置する必要がない。そのため、システム構成が簡単になり、低価格でシステムを構成することができるという効果もある。
【0024】
また、フォトカプラを用いることにより、より簡単かつ低価格な装置を実現することができる。さらに、絶縁型電源部を内蔵することにより、単一電源を供給するだけでよく、システム構成をさらに簡単化かつ低コスト化することができるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る双方向バスアイソレーション装置の一実施例を示す構成図である。図1において、40は双方向バスアイソレーション装置であり、電源部41、絶縁型電源部42、GP−IBバスの電気仕様を満たすトランシーバ44および49、バス方向性制御部45、アドレススイッチ43、一方向性絶縁回路46および47、双方向絶縁回路48で構成される。なお、この双方向バスアイソレーション装置40はコントローラ機能を持つGP−IB機器を固定することにより、構成を簡単にしている。
【0026】
51はコントローラ機能、トーカ機能、リスナ機能を有するGP−IB機器であり、トランシーバ44に接続される。54は双方向性GP−IBバスであり、トランシーバ49に接続される。この双方向性GP−IBバス54にはトーカ機能とリスナ機能を有するGP−IB機器52および53が接続される。双方向バスアイソレーション装置40は、GP−IB機器51と同52、53間を電気的に絶縁するために用いられる。なお、この実施例では双方向性GP−IBバス54に2台のGP−IB機器52、53が接続されているが、最大13台を接続することができる。
【0027】
この双方向バスアイソレーション装置40では、GP−IB機器51と同52、53間が絶縁されるので、互いに絶縁された2種類の電源部が必要になる。電源部41はGP−IB機器51側の電源を供給する。この電源部41の出力をV1、共通電位点をG1とする。絶縁型電源部42には電源部41の出力V1、G1が入力され、GP−IB機器52、53側の電源を供給する。この絶縁型電源部42の出力をV2、共通電位点をG2とする。絶縁型電源部42は、入出力間が絶縁されるDC−DCコンバータのような絶縁型電源を用いる。このようにすると、双方向バスアイソレーション装置40には単一電源のみ供給すればよい。
【0028】
なお、双方向バスアイソレーション装置40に互いに絶縁された2種類の電源を供給し、電源部41、絶縁型電源部42を内蔵しないなど、必要に応じて適宜構成を変更することができる。
【0029】
バス方向制御部45は送信機器のアドレスを保持し、双方向バスアイソレーション装置40の内部バスの方向を制御する部分であり、GP−IBバスの制御信号の1つであるATNおよび8ビットのデータバスDIO[8:1]が入力される。[8:1]はビット8〜1からなる8ビットバスであることを表している。このバス方向制御部45にはアドレススイッチ43が接続される。このアドレススイッチ43にはGP−IB機器51と同じアドレスが設定される。
【0030】
バス方向制御部45の出力であるBUSDIR1は一方向性絶縁回路46に入力される。この一方向性絶縁回路46にはフォトカプラが内蔵されており、BUSDIR1を電気的に絶縁したBUSDIR2を出力する。なお、信号BUSDIR1は一方向絶縁回路47、トランシーバ44および双方向絶縁回路48にも入力され、信号BUSDIR2は一方向絶縁回路47、双方向絶縁回路48およびトランシーバ49に入力される。
【0031】
一方向絶縁回路47にはGP−IBの制御信号の1つであるATN、REN、IFCが入力され、これらの信号を電気的に絶縁した信号を出力する。コントローラとして動作するGP−IB機器はGP−IB機器51だけなので、これらの制御信号の方向は一方向に限定される。そのため、一方向絶縁回路47は双方向性である必要はない。絶縁された制御信号ATN、REC、IFCはトランシーバ49に入力される。
【0032】
なお、ATNはデータバス上の信号がコマンドであるかデータであるかを表す制御信号、RENはGP−IB機器をリモート制御するかローカル制御するかを指示する制御信号、IFCはGP−IB機器のインターフェイスを初期化する制御信号であり、いずれもコントローラが出力する。
【0033】
双方向絶縁回路48にはGP−IBバスのデータバスDIOおよび制御信号EOI、SRQ、DAV、NDAC、NRFDが入力され、これらの信号を絶縁した信号をトランシーバ49に出力する。これらの信号は双方向性であるので、双方向性絶縁回路48は逆方向に並列接続されたフォトカプラの組を複数組有している。
【0034】
なお、DAV、NDAC、NRFDはハンドシェイクのための制御信号であり、後述する。EOIはデータ転送の終了を表す制御信号、SRQは他のGP−IB機器からコントローラに割り込みを要求するときの制御信号である。
【0035】
次に、図2に基づいてGP−IBバスのデータ転送時のハンドシェイクタイミングを説明する。データ転送を行うためには、データバスDIOの他にDAV、NRFD、NDAVの3つの制御信号を用いる。データバスDIOとDAVは送信側が出力し((T)で示す)、NRFDとNDACは受信側が出力する((P)で示す)。なお、図2は負論理で記載されている。
【0036】
図2において、(1)はデータバスDIO、(2)はDAV、(3)はNRFD、(4)はNDACの波形である。受信側は、(3)に示すようにNRFDを高レベルにしてデータ受信が可能なことを送信側に知らせる。送信側はNRFDの高レベルを検出すると、データバスDIOにデータを出力し、この出力が安定するのを待ってDAVを低レベルにして、データが有効であることを受信側に知らせる。
【0037】
受信側は、DAVが低レベルになるとNRFDを低レベルに戻す。そして、データを受信するとNDACを高レベルにしてデータを受信したことを送信側に知らせる。送信側は、NDACの高レベルを検出するとDAVを高ベルに戻し、データバスDIOをハイインピーダンスにしてデータ送信を終了する。受信側は、DAVが高レベルになるとNDACを低レベルにする。
【0038】
このため、GP−IB機器51からGP−IB機器52、53にデータを送信するときは、バス方向制御部45はトランシーバ44、49と双方向性絶縁回路48のDIOとDAVの部分をGP−IB機器51が出力側になるようにし、NRFDとNDACの部分をGP−IB機器52,53が出力側になるようにする。
【0039】
逆に、GP−IB機器52、53からGP−IB機器51にデータを送信するときは、バス方向制御部45はトランシーバ44、49と双方向性絶縁回路48のDIOとDAVの部分をGP−IB機器52,53が出力側になるようにし、NRFDとNDACの部分をGP−IB機器51が出力側になるようにする。すなわち、バス方向制御部45は、トランシーバ44、49と双方向性絶縁回路48の対応する部分が同じ方向になるように制御する。
【0040】
次に、図3を用いてデータ送信時の動作を説明する。図3(1)はATN、(2)はデータバスDIO、(3)はDAV、(4)はNRFD、(5)はNDAC、(6)はBUSDIR1、(7)はBUSDIR2の波形を表す。
【0041】
GP−IBバスでは、最初にコントローラがコマンドを用いて、データを送信するトーカ(送信機器)と受信するリスナ(受信機器)を指定する。トーカおよびリスナはいずれもGP−IB機器である。図1実施例ではGP−IB機器51のみがコントローラになれるので、コマンドはGP−IB機器51から同52、53に送信される。コマンドを送信する期間をコマンドモード、データを送信する期間をデータモードという。コマンドモードでは、ATNは低レベルに保持され、データモードでは高レベルに保持される。
【0042】
図3において、時刻t1でコントローラはATNを低レベルにし、コマンド1〜3を送信してトーカとリスナを指定する。各コマンドは図2で説明したハンドシェイクタイミングで送信される。(3)〜(5)のDAV、NRFD、NDACの波形はこのハンドシェイクを表しているが、重複するので説明を省略する。時刻t2でコントローラはATNを高レベルにする。トーカは図2のハンドシェイクによりデータ1〜3を送信する。
【0043】
ATNが低レベルになると、バス方向制御部45はBUSDIR1を低レベルにする。これによりBUSDIR2も低レベルになり、バストランシーバ44、49と双方向絶縁回路48はGP−IB機器51が送信側、GP−IB機器52、53が受信側になるようにセットされる。
【0044】
一方向絶縁回路47は、BUSDIR1、BUSDIR2が低レベルのときはGP−IB機器51が送信側、同52、53が受信側になるように信号を伝達する。BUSDIR1、BUSDIR2が高レベルのときは、プルアップ抵抗により出力信号を高レベルに固定する。
【0045】
図3のコマンド1はトーカアドレス指定、コマンド2、3はリスナアドレス指定とする。GP−IB機器51〜53のアドレスを同じ51〜53とする。コマンド1〜3は、GP−IB機器52をトーカ、51、53をリスナに設定するものとする。
【0046】
バス方向制御部45はコマンドを監視し、トーカアドレス(52)をレジスタに記憶する。このアドレスはアドレススイッチ43に設定されたアドレスと一致しないので、バス方向制御部45はGP−IB機器51がリスナあるいは未指定であると認識し、次のデータモード(ATN=高レベル)でBUSDIR1を高レベルにする。トランシーバ44、49および双方向絶縁回路48は、GP−IB機器52、53が送信側、同51が受信側にセットされる。
【0047】
記憶したトーカアドレスがアドレススイッチ43で指定されたアドレスに一致すると、バス方向制御部45はデータモードでBUSDIR1を低レベルにする。トランシーバ44、49および双方向絶縁回路48は、GP−IB機器51が送信側、同52、53が受信側にセットされる。
【0048】
最後のデータ送信時に、送信側GP−IB機器はEOIを低レベルにして受信側GP−IB機器に最後のデータ転送であることを通知する。データモードが終了すると、再度GP−IB機器51がコントローラになり、次のデータ転送のためにATNを低レベルにして次のコマンドを送信する。
【0049】
図4にGP−IB機器51〜53のトーカ、リスナの組み合わせとそれに対するバス方向制御信号(BUSDIR1、BUSDIR2)の信号レベルを示す。GP−IB機器の中にはトーカにもリスナにも指定されない場合があるが、その場合は“未指定”とした。なお、コントローラにはGP−IB機器51のみがなることができる。コマンドモードのときは、GP−IB機器51のみが送信側になるので、BUSDIR1、BUSDIR2は低レベルになる。
【0050】
データモードのときは、GP−IB機器51〜53のいずれもトーカになることができる。トーカにならなかったGP−IB機器はリスナになるか、未指定となる。未指定の場合でも、双方向バスアイソレーション装置40内ではリスナとして扱われる。
【0051】
ATNは、コマンドモードでは低レベル、データモードでは高レベルになる。BUSDIR1、BUSDIR2は、GP−IB機器51が送信側になるときは低レベル、その他のときは高レベルになる。
【0052】
ATN、REN、IFCは、GP−IB機器51が送信側のときはGP−IB機器51側が出力になり、その他のときはハイインピーダンスになる。これらの制御信号は、コントローラ(GP−IB機器51)のみが出力するためである。
【0053】
DIO、DAV、EOIは送信機器が出力するものであるので、GP−IB機器51が送信側のときはGP−IB機器51から同52、53の方向になり、その他のときは逆方向になる。NDAC、NRFDは受信機器が出力するものであるので、DIO等とは逆の方向に制御される。SRQはコントローラ以外のGP−IB機器が出力するものであるので、常にGP−IB機器52、53側から同51の方向になる。
【0054】
図5にバス方向制御部40の構成の一例を示す。なお、図1と同じ要素には同一符号を付し、説明を省略する。またDIOを除き、負論理を前提として構成されている。またコマンドモードのときは、DIOのビット8(MSB)は使用せず、ビット7〜5をコマンドとして使用する。但し、トーカとリスナの指定のときは、ビット7〜6をコマンド、ビット5〜1をアドレスとして使用する。
【0055】
図5において、69はアンドゲートであり、DAVとATNを反転した信号が入力される。すなわち、アンドゲート69はATNとDAVの両方が低レベルになると、その出力は高レベルになる。61はコマンドレジスタであり、DIOのビット7〜5が入力され、アンドゲート69の出力でこの入力値をラッチする。62はデコーダであり、コマンドレジスタ61にラッチされたコマンドが入力される。
【0056】
64はオアゲートであり、デコーダ62の4および5の信号が入力される。このオアゲート64は、トーカアドレスのラッチ信号を生成するためのものである。トーカアドレス指定のコマンドはビット7〜6がバイナリで“10”になる。そのため、4(バイナリで“100”)と5(バイナリで“101”)の論理和をオアゲート64で取り、ラッチ信号を生成する。なお、ここでは他の回路の都合上デコーダ62にDIOのビット7〜5を入力したが、ビット7〜6を入力し、デコーダ62の“2”に相当する出力をラッチ信号としてもよい。
【0057】
オアゲート64の出力はアンドゲート72に入力される。71は遅延部であり、アンドゲート69の出力を所定時間だけ遅延させる。この遅延部71の出力CKDLYはアンドゲート72に入力される。デコーダ62、オアゲート64の出力が安定するまでに若干の時間がかかるので、遅延部71を挿入して、オアゲート64の出力が安定するのを待つようにしている。
【0058】
65はトーカアドレスレジスタであり、DIOのビット5〜1が入力され、この入力値をアンドゲート72の出力信号でラッチする。このため、トーカアドレスレジスタ65にはトーカのアドレスが保存される。
【0059】
66はコンパレータであり、トーカアドレスレジスタ65およびアドレススイッチ43の出力が入力され、この2つの入力値を比較して、比較結果XTalker−Selを出力する。このXTalker−selは、比較結果が一致していれば低レベル、一致していなければ高レベルになる。
【0060】
74はオアゲートであり、XTalker−SelおよびATNを反転した信号が入力される。75はアンドゲートであり、オアゲート74の出力およびATNが入力される。アンドゲート75の出力がBUSDIR1である。このBUSDIR1は、ATNが低レベルのときは低レベルになり、高レベルのときはXTalker−Selと同レベルになる。このため、コマンドモードまたはGP−IB機器51がトーカのときはBUSDIR1は低レベルになり、その他のときは高レベルになる。
【0061】
63はアンドゲートであり、リセット信号XPONRSTおよびIFCが入力され、その出力はコマンドレジスタ61のリセット端子に入力される。IFCはGP−IB機器のインターフェイスの初期化信号なので、この信号IFCまたはリセット信号XPONRSTが低レベルになると、コマンドレジスタ61はクリアされる。
【0062】
68はコンパレータであり、トーカアドレスレジスタ65の出力と固定値出力部67の出力を比較し、一致していればXUNTを低レベルにする。固定値出力部67は1FH(31)を出力する。アドレスとして使用できるのは0〜30で、1FHはトーカアドレスの解除として定義されている。コンパレータ68はトーカアドレスの解除コマンドを検出する。
【0063】
73はアンドゲートであり、XPONRST、IFCおよびXUNTが入力され、その出力はトーカアドレスレジスタ65をリセットする。すなわち、リセット信号XPONRST、初期化信号IFC、イレギュラーアドレス信号XUNTのいずれかが低レベルになると、トーカアドレスレジスタ65はクリアされる。
【0064】
なお、この実施例ではコマンドレジスタ61、デコーダ62およびオアゲート64でトーカコマンド検出部を構成しているが、必要に応じて他の構成とすることができる。要は、送信機器を指定するコマンドが出力されたことを検出できる構成であればよい。また、この実施例は負論理で構成しているが、適宜変更することにより、正論理信号で構成することもできる。
【0065】
図6は、図4で説明したバス方向制御部のタイムチャートである。遅延部66の出力であるCKDLYは、コマンドモード(ATN=低レベル)のときに、DAVより遅れた信号を出力する。時刻t3でトーカアドレスが出力される。このトーカアドレスはトーカアドレスレジスタ65にラッチされ、コンパレータ66でアドレススイッチの値と比較される。GP−IB機器51がトーカに指定されているとXTalker−Selは低レベル、指定されていないと高レベルになる。
【0066】
図7に双方向性絶縁回路48と一方向性絶縁回路47の構成を示す。図7(1)は双方向絶縁回路48のDIO、DAV、EOI部分の構成である。これらは送信側から受信側に伝達される。
【0067】
図7(1)において、81、82は互いに逆方向に接続されたトライステートバッファであり、BUSDIR1によって出力制御される。85、86も互いに逆方向に接続されたトライステートバッファであり、BUSDIR2によって出力制御される。83はフォトカプラであり、その発光ダイオードはトライステートバッファ85で制御され、出力はトライステートバッファ81に入力される。84はフォトカプラであり、その発光ダイオードはトライステートバッファ82で制御され、その出力はトライステートバッファ86に入力される。フォトカプラ83、84は、信号を電気的に絶縁するために用いられる。
【0068】
R1〜R3はプルアップ抵抗であり、電源V1に接続される。R4〜R6もプルアップ抵抗であり、電源V2に接続される。トライステートバッファ82の入力と81の出力の接続点にはGP−IB機器51の信号線が接続され、トライステートバッファ85の入力と86の出力の接続点にはGP−IB機器52、53の信号線が接続される。
【0069】
このような構成において、BUSDIR1、BUSDIR2が低レベルになるとトライステートバッファ82と86の出力がアクティブになり、同81と85の出力はハイインピーダンスになる。そのため、フォトカプラ83には電流は流れない。GP−IB機器51の信号はトライステートバッファ82、フォトカプラ84、トライステートバッファ86の経路でGP−IB機器52、53に出力される。
【0070】
BUSDIR1、BUSDIR2が高レベルになるとトライステートバッファ81と85の出力がアクティブになり、同82と86の出力はハイインピーダンスになる。GP−IB機器52、53の信号はトライステートバッファ85、フォトカプラ83、トライステートバッファ81の経路でGP−IB機器51に出力される。
【0071】
図7(2)は双方向絶縁回路48のNDAC、NRFD、SRQ部分の構成である。(1)とほぼ同じ構成であるが、トライステートバッファ81と82、同85と86が入れ替わっている。そのため、BUSDIR1、BUSDIR2が低レベルであると信号はGP−IB機器52、53からGP−IB機器51に伝達され、高レベルであるとGP−IB機器51からGP−IB機器52、53に伝達される。
【0072】
これらの回路では、フォトカプラの左側と右側では電源のみならず共通電位点もG1とG2のごとく異なっている。従って、電気的に完全に絶縁された信号を伝達することができる。
【0073】
図7(3)に一方向絶縁回路47の構成を示す。87はトライステートバッファであり、GP−IB機器51の信号が入力され、BUSDIR1でその出力が制御される。88はフォトカプラであり、トライステートバッファ87の出力でその内部の発光ダイオードが駆動される。89はトライステートバッファであり、フォトカプラ88の出力が入力され、BUSDIR2でその出力が制御される。R7、R8はプルアップ抵抗であり、電源V1に接続される。R9、R10もプルアップ抵抗であり、電源V2に接続される。
【0074】
BUSDIR1、BUSDIR2が低レベルの時はトライステートバッファ87、89の出力はオンになり、GP−IB機器51の信号は同52、53に伝達される。BUSDIR1、BUSDIR2が高レベルのときはトライステートバッファ87、89の出力はオフになる。GP−IB機器52、53の信号は抵抗R10によってプルアップされ、高レベルを維持する。
【0075】
なお、図1では双方向性GP−IBバス54に接続されるGP−IB機器の数を2台としたが、1台あるいは3台以上接続するようにしてもよい。
【0076】
また、図5のバス方向制御部ではアンドゲート69の出力を遅延部71で遅らせてトーカアドレスレジスタ65のラッチ信号を作成しているが、シーケンスカウンタを設け、クロックに同期したタイミングで遅らせるなど、他の構成を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】GP−IBバスのハンドシェイク手順を示す図である。
【図3】GP−IBバスのタイミングチャートである。
【図4】GP−IB機器の組合せを示す表である。
【図5】バス方向制御部の構成図である。
【図6】バス方向制御部の動作タイミングチャートである。
【図7】一方向絶縁回路、双方向絶縁回路の構成図である。
【図8】従来のデジタルバス絶縁装置の構成図である。
【図9】GP−IB機器の絶縁装置の構成図である。
【符号の説明】
【0078】
40 双方向バスアイソレーション装置
41 電源部
42 絶縁型電源部
43 アドレススイッチ
44、49 トランシーバ
45 バス方向制御部
46、47 一方向絶縁回路
48 双方向絶縁回路
51〜53 GP−IB機器
61 コマンドレジスタ
62 デコーダ
64、74 オアゲート
65 トーカアドレスレジスタ
66 コンパレータ
69、72、75 アンドゲート
71 遅延部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データバスおよび複数の制御信号を有する通信バスによって接続された複数の機器のそれぞれに異なるアドレスを設定し、コントローラ機器がコマンドを用いて送信機器および受信機器を指定して、前記送信機器から前記受信機器にデータを転送する計測システムに用いる、前記通信バスを電気的に絶縁する双方向バスアイソレーション装置において、
前記データバス上のデータがコマンドであることを表す制御信号および前記データバスが入力され、これらの入力信号から信号の方向を表す第1のバス方向制御信号を出力するバス方向制御部と、
前記第1のバス方向制御信号が入力され、この入力信号を電気的に絶縁した第2のバス方向制御信号を出力する第1の一方向絶縁回路と、
前記第1および第2のバス方向制御信号および前記通信バスの制御信号のうちコントローラ機器が出力する制御信号が入力され、前記第1および第2のバス方向制御信号により、前記コントローラ機器が出力する制御信号を電気的に絶縁した制御信号または固定値を出力する第2の一方向性絶縁回路と、
前記第1および第2のバス方向制御信号、前記通信バスのデータバスおよび前記第2の一方向絶縁回路に入力されない制御信号が入力され、前記第1および第2のバス方向制御信号によって前記データバスおよび前記入力された制御信号の方向を決定し、これらデータバスおよび制御信号を電気的に絶縁した信号を出力する双方向絶縁回路と、
を具備したことを特徴とする双方向バスアイソレーション装置。
【請求項2】
前記バス方向制御部には機器のアドレスを設定するスイッチが接続され、
送信機器のアドレスを保存するトーカアドレスレジスタと、
このトーカアドレスレジスタと前記スイッチに設定されたアドレスを比較し、その比較結果に関連する信号が前記第1のバス方向制御信号となるコンパレータと、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の双方向バスアイソレーション装置。
【請求項3】
データバス上のデータが送信機器の設定コマンドであることを検出するトーカコマンド検出部と、
データバス上の信号が有効であり、かつコマンドであることを検出する第1のゲートと、
前記トーカコマンド検出部の出力と前記第1のゲートの出力の論理積を演算する第2のゲートと、
を具備し、前記トーカアドレスレジスタは前記第2のゲートの出力に基づいてデータバス上のアドレスを保存するようにしたことを特徴とする請求項2記載の双方向バスアイソレーション装置。
【請求項4】
前記第1のゲートと前記第2のゲートとの間に遅延部を設けたことを特徴とする請求項3記載の双方向バスアイソレーション装置。
【請求項5】
前記第1および第2の一方向性絶縁回路、および前記双方向絶縁回路はフォトカプラを内蔵し、このフォトカプラによって信号を電気的に絶縁するようにしたことを特徴とする請求項1若しくは請求項4いずれかに記載の双方向バスアイソレーション装置。
【請求項6】
前記双方向バスアイソレーション装置は、電気的に絶縁された電圧を出力する絶縁型電源部を具備していることを特徴とする請求項1若しくは請求項5いずれかに記載の双方向バスアイソレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−97058(P2007−97058A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286527(P2005−286527)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】