説明

反射スクリーン、映像表示システム

【課題】明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン及びそのような高品位の反射スクリーンを備える映像表示システムを提供する。
【解決手段】反射スクリーン10は、レンズ層11と、単位レンズ111のレンズ面111a上に形成される反射層12と、レンズ層11よりも映像源側に配置され、単位レンズ111の配列方向に平行な方向において、反射スクリーンのスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きい光制御層14とを備える。光制御層14は、映像源側に、単位レンズ111の配列方向に平行な方向に、断面形状が略四角形形状の凸部141と凹部142とが交互に配列され、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aには光を拡散させる微細凹凸形状が形成されているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン、反射スクリーンを備える映像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、反射スクリーンに映像を投射する映像源として、至近距離からの投写で大画面表示を実現する短焦点型の映像投射装置(プロジェクタ)等が広く利用されている。このような短焦点型の映像投射装置は、反射スクリーンに対して、上方又は下方から従来の映像源よりも大きな入射角度で投射することができ、反射スクリーンを用いた映像表示システムの省スペース化等に寄与している。
そして、このような短焦点型の映像投射装置によって投射された映像光を良好に表示するために、単位レンズが複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状やサーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層の表面に反射層を形成した反射スクリーン等が様々に開発されている(例えば、特許文献1,2)。
また、反射スクリーンを用いた映像表示システムとして、明室環境下でもコントラスト等が良好な映像を表示可能である映像表示システムへの需要が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開2008−76522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のようなレンズ層を用いた反射スクリーン等では、好適な視野角を得る目的で、レンズ層よりも映像源側に光を拡散させる光拡散層等を備えるものがある。
しかし、反射スクリーンに入射した映像光の一部は、この光拡散層によって拡散され、適切な角度で反射層へ到達することができない。そのため、反射スクリーンの略正面方向となる観察者側に届く映像光の光量が低減し、映像光の利用効率が大幅に低下し、映像の輝度が低下したりぼやけたりするという問題が生じる場合がある。
また、反射スクリーンに入射する照明光等の不要な外光も、光拡散層によって拡散されるために、観察者に届き、映像のコントラストの低下を招くという問題がある。
前述の特許文献1,2には、そのような映像光の利用効率の低下を防止する対策に関しては、一切開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、明室環境下であっても明るくコントラストが高い良好な映像を表示できる反射スクリーン及びそのような高品位の反射スクリーン及びこの反射スクリーンを備える映像表示システムを提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源から投射された映像光を反射して観察可能に表示する反射スクリーンであって、レンズ面(111a)と非レンズ面(111b)とを有する単位レンズ(111)が該反射スクリーンのスクリーン面に沿って複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層(11)と、少なくとも前記単位レンズのレンズ面上に形成され、光を反射する反射層(12,32)と、前記レンズ層よりも映像源側に配置され、前記単位レンズの配列方向に平行な方向において、該反射スクリーンのスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きい光制御層(14)と、を備え、前記光制御層は、その映像源側に、映像源側に凸となる凸部(141)と、前記凸部よりもレンズ層側に位置する凹部(142)とがスクリーン面に沿って前記単位レンズの配列方向に平行な方向に交互に配列されており、前記凸部は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が略四角形形状であり、前記凸部の映像源側の頂面(141a)及び前記凹部の表面(142a)には、光を拡散させる微細凹凸形状が形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10,20,30)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、前記凸部(141)の配列ピッチをP、前記凹部(142)の表面(142a)から前記凸部の頂面(141a)までの寸法をHとするとき、0.12≦H/P≦0.2という関係を満たすこと、を特徴とする反射スクリーン(10,20,30)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、前記凸部(141)の頂面(141a)及び前記凹部(142)の表面(142a)の微細凹凸形状の表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)は、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上であること、を特徴とする反射スクリーン(10,20,30)である。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記凸部(141)は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が、略矩形形状であること、を特徴とする反射スクリーン(10,20,30)である。
【0007】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記レンズ層(11)よりも映像源(LS)側に、スクリーン面内において、前記単位レンズ(111)の配列方向に平行な方向における拡散作用に比べて前記単位レンズの配列方向に直交する方向における拡散作用の方が大きい異方性光拡散層(25)を備えること、を特徴とする反射スクリーン(20)である。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記単位レンズ(111)及び前記凸部(141)の配列方向は、該反射スクリーンの画面上下方向であること、を特徴とする反射スクリーン(10,20,30)である。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、前記単位レンズ(111)は、前記非レンズ面(111b)上に光を吸収する光吸収層(36)が形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(30)である。
【0008】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の反射スクリーン(10,20,30)と、前記反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源(LS)と、を備える映像表示システム(1)である。
請求項9の発明は、請求項8に記載の映像表示システムにおいて、前記映像源(LS)は、短焦点プロジェクタであること、を特徴とする映像表示システム(1)である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明による反射スクリーンは、単位レンズの配列方向に平行な方向において、反射スクリーンのスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きい光制御層を備え、光制御層は、その映像源側に、映像源側に凸となる凸部と、凸部よりもレンズ層側に位置する凹部とがスクリーン面に沿って単位レンズの配列方向に平行な方向に交互に配列されており、凸部は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が略四角形形状であり、凸部の映像源側の頂面及び凹部の表面には、光を拡散させる微細凹凸形状が形成されているものとした。
従って、反射スクリーンに対して下方等から斜めに投射する映像光は、殆ど拡散させることなく反射層へ到達させて反射し、略正面方向へ光制御層から出射する際に確実に拡散させることができる。よって、映像光を効率よく反射させることができ、明るく明瞭であって、視野角が広い映像を表示できる。
また、反射スクリーンに対して上方から斜めに入射する外光は、殆ど拡散させることなく反射層へ到達させて反射し、反射スクリーンの下方側へ光制御層から出射する際にも殆ど拡散作用を受けない。よって、観察者側のいる反射スクリーンの正面方向へ届く外光を大幅に低減でき、外光によるコントラストの低減を改善し、コントラストの高い映像を表示できる。
このような効果は、特に、映像光を画面上下方向において下方側や上方側から一般の投射系に比べて大きな入射角度で投射する短焦点型の映像源を用いる場合には、高く発揮される。
【0010】
(2)凸部の配列ピッチをP、凹部の表面から凸部の頂面までの寸法をHとするとき、0.12≦H/P≦0.2という関係を満たすので、明るく、輝度ムラ等がなく、明瞭であってコントラストの高い映像を表示できる。
【0011】
(3)凸部の頂面及び凹部の表面の微細凹凸形状の表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)は、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上であるので、映像光を拡散して広げることができ、良好な視野角を得ることができる。
【0012】
(4)凸部は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が、略矩形形状であるので、光制御層に対してそのシート面(光制御層全体としてみた場合の平面方向となる面であり、反射スクリーンのスクリーン面に平行な面)に対して法線方向から入射する光を確実に、100%拡散させることができる。また、凸部の断面形状が略矩形形状であるので、成形時に成形型から光制御層(凸部)を離型しやすく、製造が容易に行える。
【0013】
(5)反射スクリーンは、レンズ層よりも映像源側に、スクリーン面内において、単位レンズの配列方向に平行な方向における拡散作用に比べて単位レンズの配列方向に直交する方向における拡散作用の方が大きい異方性光拡散層を備える。従って、映像光に単位レンズの配列方向に直交する方向における拡散作用を付与することができ、良好な視野角を得ることができる。
【0014】
(6)単位レンズ及び凸部の配列方向は、反射スクリーンの画面上下方向であるので、画面上下方向において、映像光を反射スクリーンの下方や上方側から投射し、略正面方向へ反射させることができる。また、反射スクリーンの上方から主として入射する外光を効率よく下方側へ反射することできる。
【0015】
(7)単位レンズは、非レンズ面上に光を吸収する光吸収層が形成されているので、外光を吸収してコントラストを向上させることができる。
【0016】
(8)本発明による反射スクリーンと、反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源とを備える映像表示システムであるので、明るく、明瞭であり、コントラストの高い映像を表示することができる。
【0017】
(9)映像源は、短焦点プロジェクタであるので、映像表示システムの省スペース化を図ることができる。また、短い投射距離で大画面表示を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の反射スクリーン10を用いた映像表示システム1を示す図である。
【図2】第1実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
【図3】光制御層14の形状を説明する図である。
【図4】反射スクリーン10に入射する光の画面上下方向における拡散や透過の角度範囲の様子を示す図である。
【図5】比H/P別の入射角度と光制御層14に入射する或る光束のうち拡散されずに透過する光(非拡散透過光)の割合との関係を示すグラフである。
【図6】第2及び第3実施形態の反射スクリーン20,30を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。従って、各光線の入射角度等に関して、実際の角度とは異なる場合がある。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光学シートは、光学フィルムとしてもよいし、光学板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の反射スクリーン10を用いた映像表示システム1を示す図である。
映像表示システム1は、反射スクリーン10、映像源LS等を有している。本実施形態では、反射スクリーン10が映像源LSから投影された映像光を反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを説明するが、これに限らず、映像表示システム1は、例えば、映像光を映像源LSから投射するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10と映像源LSと反射スクリーンの観察画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。
映像源LSは、映像光Lを反射スクリーンへ投影する映像投射装置であり、汎用のプロジェクタ等を用いることができる。この映像源LSは、図1(b)に示すように、反射スクリーン10使用状態におけるスクリーンの画面中央よりも下方側から映像光Lを投影する短焦点型の汎用プロジェクタである。
【0021】
反射スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示する。使用状態において、この反射スクリーン10の観察画面は平面状であり、観察者O側から見て、その観察画面は、長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。なお、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)であるとする。
この反射スクリーン10は、反射層12よりも背面側に、平板状の支持板50が、粘着材等からなる不図示の接合層を介して設けられており、この支持板50により、その平面性を維持している。本実施形態の支持板50は、光透過性を有していない。
【0022】
図2は、第1実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
図2(a)では、反射スクリーン10のスクリーン面に直交し、使用状態における画面上下方向に平行な断面での断面の一部を拡大して示している。また、図2(b),(c)では、図2(a)における断面の単位レンズ121をさらに拡大して示しているが、図2では、理解を容易にするために、支持板50等は適宜省略して示してある。
反射スクリーン10は、その映像源LS側(観察面側)から順に、光制御層14、基材層13、レンズ層11、反射層12等を備えている。ここで、スクリーン面とは、この反射スクリーン10において、スクリーン全体として見たときにおける、反射スクリーン10の平面方向となる面を示すものであり、本明細書中、及び、特許請求の範囲においても同一の定義として用いている。この反射スクリーン10のスクリーン面は、反射スクリーン10の観察画面に平行である。
本実施形態の反射スクリーン10は、例えば、画面サイズが対角80インチサイズ(1220×1620mm)とすることができる。
【0023】
基材層13は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層13の映像源側(観察面側)には、光制御層14が一体に形成され、背面側(裏面側)には、レンズ層11が一体に形成されている。
この基材層13としては、例えば、厚さが100〜200μmであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル系樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等の樹脂製のシート状部材を用いることができる。本実施形態の基材層13は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を用いている。
なお、基材層13は、所定の透過率とするためのグレー等の染料や顔料等により着色が施されていてもよい。
【0024】
レンズ層11は、基材層13の背面側に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層13とは反対側)には、フレネルレンズ形状が形成されている。
レンズ層11に形成されるフレネルレンズ形状は、単位レンズが一方向に配列されたリニアフレネルレンズ形状としてもよいし、単位レンズが同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状としてもよく、反射スクリーン10の使用環境や映像源LSの光学特性等に合わせて、適宜最適な方を選択して用いることができる。
本実施形態では、レンズ層11は、リニアフレネルレンズ形状が形成されている例を挙げて説明する。本実施形態のレンズ層11のリニアフレネルレンズ形状は、単位レンズ111がスクリーン面に沿って画面上下方向に複数配列されることにより形成されている。
【0025】
レンズ層11は、紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、レンズ層11は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
このレンズ層11は、例えば、光制御層14が一方の面に形成された基材層13の他方の面に、紫外線成形法等によりレンズ層11を形成することにより作成することができる。なお、レンズ層11の形成方法は、適宜自由に選択してよく、この限りではない。
レンズ層11(単位レンズ111)を紫外線成形法により形成することにより、よりピッチの細かく、かつ、形状精度の高い単位レンズ111を形成することができる。
【0026】
単位レンズ111は、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚み方向)に平行であって単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な断面における断面形状が、略三角形形状であり、頂点tと、フレネルレンズ形状のレンズ面であるレンズ面111aと、頂点tを挟んでレンズ面111aと対向する非レンズ面111bとを有している。本実施形態の単位レンズ111は、背面側に凸となる略三角柱形状であり、その長手方向は、画面左右方向に平行であり、画面上下方向に配列されている。
この単位レンズ111は、反射スクリーン10の使用状態において、レンズ面111aが頂点tを挟んで非レンズ面111bよりも鉛直方向上側に位置する。すなわち、鉛直方向において頂点tに対して非レンズ面111bが映像源LS側に位置し、レンズ面111aが映像源LSとは反対側に位置する。
【0027】
単位レンズ111は、図2(b)に示すように、レンズ面111aがスクリーン面に平行な面となす角度がαであり、非レンズ面111bがスクリーン面に平行な面となす角度がβ(β>α)である。また、単位レンズ111の配列ピッチがP1である。
単位レンズ111の配列ピッチP1や角度α、角度βは、映像光を投影する映像源LS(プロジェクタ)の画素(ピクセル)の大きさや、映像源LSの映像光の投射角度(スクリーン面に対する映像光の入射角度)等に応じて、適宜変更可能である。
図2では、理解を容易にするために、単位レンズ111の配列ピッチP1、角度α及び角度βは、一定である例を示しているが、実際には、角度αは、単位レンズ111の配列方向に沿って所定の角度範囲内で変化している。
一例として、本実施形態の単位レンズ111は、配列ピッチP1が100μm、角度αが6〜20°の範囲内で配列方向に沿って可変であり、角度βが90°である。また、本実施形態の単位レンズ111(レンズ層11)の屈折率は、1.55である。
【0028】
なお、角度α,β及び配列ピッチP1は、例えば、単位レンズ111の配列ピッチP1が略一定であり、画面上下方向(単位レンズ121の配列方向)において下側となるにしたがって、角度αが小さくなる形態としてもよい。また、例えば、配列ピッチP1が単位レンズ111の配列方向に沿ってしだいに変化してもよい。使用環境や所望する光学性能等に合わせて、単位レンズ111は、適宜その形状を選択してよい。
【0029】
反射層12は、光を反射する作用を有し、少なくともレンズ面111a上に形成される層である。
この反射層12は、銀色系の塗料や、銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂や、銀やアルミニウム等の金属蒸着膜、金属箔等により形成される。また、反射層12は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがさらに好ましい。
本実施形態の反射層12は、単位レンズ111間の谷部を充填し、レンズ面111a及び非レンズ面111bを被覆する形態となっており、銀色の顔料を含有する紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、これに限らず、レンズ面111a及び非レンズ面111bからなる凹凸形状に沿って所定の厚さで形成してもよい。
上述のように、単位レンズ111のレンズ面111a及び非レンズ面111bは反射層12が被覆しているので、レンズ面111a及び非レンズ面111bに入射する光は反射層12によって反射される。
【0030】
レンズ層11は、上述のようなフレネルレンズ形状を有しているので、図2(c)に示すように、映像源LSから投射され、画面上下方向において反射スクリーン10の下方から入射する映像光L1は、光制御層14及び基材層13を透過してレンズ層11の単位レンズ111へ入射し、レンズ面111aへ入射して反射層12によって反射され、観察可能な光線として反射スクリーン10の観察画面の略法線方向(略正面方向)へ向かう。
また、外光G1は、画面上下方向において、主として反射スクリーン10の上方から入射し、単位レンズ111のレンズ面111aへ入射して反射層12によって反射され、反射スクリーン10の下方へ向かうので、反射スクリーン10の観察画面の略法線方向(略正面方向)の観察者Oには殆ど届かない。
従って、反射スクリーン10によれば、映像光を効率よく観察者O側へ反射させ、外光を観察者Oが映像を視認しない方向へ向けることができる。
【0031】
光制御層14は、レンズ層11よりも映像源LS側に配置され、単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向において、反射スクリーン10のスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きいという機能を有する層である。
図3は、光制御層14を説明する図である。図3(a)〜(c)では、反射スクリーン10のスクリーン面に直交し、画面上下方向に平行な断面での光制御層14の映像源側表面の一部を拡大して示している。図3(d)では、光制御層14の拡散作用の大きさの異なる入射角度範囲及び出射角度範囲を模式的に示している。
光制御層14は、図3(a)に示すように、その映像源LS側に、スクリーン面に沿って単位レンズ111の配列方向(反射スクリーン10の画面上下方向)に平行な方向に交互に凸部141と凹部142とが配列された凹凸形状を有している。
光制御層14は、紫外線硬化型樹脂により形成されているが、これに限らず、電子線硬化型樹脂等、他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
【0032】
凸部141は、映像源LS側に凸となる形状であり、その配列方向(画面上下方向)に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が略矩形形状である。この凸部141は、略矩形柱形状であり、その長手方向を画面左右方向とし、画面上下方向に所定の間隔で複数配列されている。
凸部141は、映像源LS側の面となる頂面141aと、この頂面141aを挟んで対向する側面141b,141cを備えている。本実施形態では、頂面141aは、スクリーン面に略平行であり、側面141b,141cは、スクリーン面に直交している。
凹部142は、スクリーン面に沿って画面上下方向に凸部141と交互に設けられており、その表面142aが凸部141よりもレンズ層11側(背面側)となる部分である。本実施形態の凹部142の表面142aは、スクリーン面に略平行である。
【0033】
凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aは、その表面に微細な凹凸形状が形成されており、光を拡散する光拡散性を有している。この微細な凹凸形状は、光拡散性を発揮するという観点から、その表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が、0.3μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
この微細な凹凸形状は、凸部141及び凹部142の形状を賦形する成形型の頂面141a及び表面142aに相当する部分に微細な凹凸形状を形成し、凸部141及び凹部142の形状の成形時に転写することにより形成してもよいし、平面状の凸部141及び凹部142の形状を形成後、拡散剤を含有するバインダを凸部141の頂面141aや凹部142の表面142aにコーティング等して形成してもよし、凹部142の表面142aには上述のような転写により微細凹凸形状を形成し、凸部141の頂面141aには上述のようなコーティング等で微細凹凸形状を形成してもよい。凸部141の頂面141aと凹部142の表面142aとで、表面粗さが異なっていてもよいし、形成方法が異なっていてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aは、略同じ算術平均粗さRaを有しており、Ra=0.8μmである。また、本実施形態の凸部141の頂面141a及び凹部142の表面142aの微細凹凸形状は、凸部141及び凹部142を賦形する成形型の頂面141a及び表面142aに対応する部分に、この微細凹凸形状を賦形する微細な凹凸形状を形成し、凸部141及び凹部142の形状の成形時に微細な凹凸形状を転写することにより形成されている。
【0035】
また、光制御層14の凸部141の画面上下方向における配列ピッチは、Pであり、反射スクリーン10の厚み方向(スクリーン面に直交する方向)における凸部141の頂面141aから凹部142の表面142aまでの寸法(凸部141の高さ)は、Hであり、画面上下方向における凸部141の幅がW1であり、凹部142の幅がW2である(P=W1+W2)。
本実施形態では、凸部141の配列ピッチP=100μmであり、凸部141の高さH=20μm、凸部141の幅W1及び凹部142の幅W2は等しく、W1=W2=50μmである。
また、本実施形態では、配列ピッチPと高さHの比H/P=0.2である。この比H/Pは、0.12≦H/P≦0.2とすることが、明るく明瞭でありコントラストの高い映像を表示する観点からこのましい。
【0036】
光制御層14は、このような凸部141及び凹部142を有することにより、反射スクリーン10のスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きいという機能を奏する。
図3(d)に示すように、画面上下方向(凸部141及び凹部142の配列方向)において、スクリーン面の法線方向を含む角度範囲R2,R4内の入射角度で光制御層14に入射する光に対しては、拡散作用を発揮する。しかし、上記の角度範囲以外の角度範囲R1,R3,R5,R6内の入射角度で入射する光に対しては、拡散作用を発揮せず直進透過させる、又は、拡散してもその拡散作用の大きさは小さい。なお、図3(d)中に示す直線Sは、スクリーン面に直交する直線である。
【0037】
そのため、画面上下方向(凸部141の配列方向)において角度範囲R1,R3,R5,R6内の入射角度で入射する光は、一部が凸部141の頂面141aや凹部142の表面142aから入射して拡散されるが、それ以外の一部の光は、図3(b)の光A1〜A3に示すように、凸部141に対して側面141b,141cから入射又は出射する。この側面141b,141cは、微細な凹凸形状等を有していない平面であるので、光A1,A2,A3は、殆ど拡散されずに光制御層14を透過し、基材層13へ進んだり、反射スクリーン10から出射したりする。
一方、角度範囲R2,R4内の入射角度で入射する光A4,A5は、図3(c)に示すように、画面上下方向(凸部141の配列方向)において、凸部141の頂面141a又は凹部142の表面142aを透過するので、拡散される。
この角度範囲R1〜R6は、凸部141の配列ピッチPと高さHとの比H/Pによって定められる。なお、角度範囲R1は角度範囲R6と等しく、角度範囲R2は角度範囲R4と等しく、角度範囲R3は角度範囲R5と、その大きさが等しいものとする。
【0038】
図4は、反射スクリーン10に入射する光の画面上下方向における拡散や透過の角度範囲の様子を示す図である。
上述のように、本実施形態の反射スクリーン10は、光制御層14を備えている。映像源LSにより反射スクリーン10の下方から投射される映像光L2は、角度範囲R3の範囲内の入射角度で反射スクリーン10に入射し、反射層12で反射されて略正面方向である角度範囲R2範囲内に出射する。このとき、映像光L2は、反射スクリーン10への入射時には、光制御層14の拡散作用を受けない又は受けても僅かである。しかし、出射時には、映像光L2は、光制御層14の拡散作用を受け、その殆どが拡散される。
従って、映像光は、殆ど拡散されずに反射層12(レンズ面111a)に到達するので、映像光が効率よく観察者O側へ反射され、明るく明瞭な映像を表示できる。また、映像光は、反射層12で反射された後に拡散されるので、視野角を広げることができ、明るさの面均一性も向上できる。
【0039】
一方、照明光等の不要な外光G2は、主として反射スクリーン10の上方から、角度範囲R1の範囲内の入射角度で反射スクリーン10入射し、レンズ面111aの反射層12で反射されて、反射スクリーン10の下方側となる角度範囲R3の範囲内に出射する。このとき、外光G2は、反射スクリーン10への入射時には、光制御層14の拡散作用を受けない又は受けても僅かである。また、出射時においても、外光G2は、光制御層14の拡散作用を受けない又は受けても僅かである。
従って、外光は、殆ど拡散されずに反射層12(レンズ面111a)で反射して、殆ど拡散されずに反射スクリーン10の下方側へ出射するので、観察者O側に届くことがない、もしくは、観察者O側に届く外光を極力低減できる。従って、外光によるコントラスト低減を、より効果的に防止できる。
【0040】
ここで、凸部141の配列ピッチPと高さHとの関係に関して、0.12≦H/P≦0.2が好ましい理由を述べる。
図5は、比H/P別の入射角度と光制御層14に入射する或る光束のうち拡散されずに透過する光(非拡散透過光)の割合との関係を示すグラフである。
図5に示す縦軸は、光制御層14に入射する光束のうち、拡散されずに透過する光(非拡散透過光)の割合であり、横軸は、入射角度(スクリーン面に対する入射角度)である。
非拡散透過光の割合とは、ある入射角度(スクリーン面に対する入射角度)で光制御層14に入射する光束において、凸部141の頂面141aや凹部142の表面142aによる拡散作用を受けない光の割合を意味する。本実施形態のように映像源LSが反射スクリーン10の下方から映像を投射する場合には、非拡散透過光の割合とは、例えば、凸部141の側面141bから入射して光制御層14を透過し、凸部141の頂面141aや凹部142の表面142aに入射することなく基材層13へ入射する光の割合である。
この比H/Pと非拡散透過光の割合との関係を示すグラフは、計算により算出される。図5では、比H/P=0.1,比H/P=0.15,比H/P=0.2について、入射角度30〜80°の範囲内で2°毎に非拡散透過光の割合を算出した。なお、このとき、幅W1=W2であり、W1=W2=P/2であるとして算出している。
【0041】
図5に示すように、入射角度が小さいうちは、比H/Pが大きい方が、非拡散透過光の割合が大きい。そして、非拡散透過光の割合は、比H/Pに関わらず、スクリーン面に対する入射角度が大きくなるにつれて、大きくなり、比H/P毎に所定の入射角度をピークとし、それを超えると減少している。この非拡散透過光の割合がピークとなる入射角度は、比H/Pが大きいほど小さくなる傾向を有している。
ここで、比H/P=0.2では、非拡散透過光の割合が入射角度約68°をピークとして減少し始めた後、入射角度78°で再び増加に転じている。このような再び増加に転じる変曲点を有する場合、スクリーンの画面において、輝度のばらつきが生じ輝度ムラとなって観察され、明るさの面均一性が低下する。
従って、比H/Pは、H/P≦0.2とすることが、輝度ムラの低減等の観点から好ましい。なお、比H/P=0.2では、前述のように変曲点を有しているが、一般的に使用される短焦点型の映像源に対応する反射スクリーンでは、入射角度が最大で80°程度であり、78°付近に変曲点を有していても輝度ムラ等への影響は小さく、良好に使用できる。
【0042】
【表1】

【0043】
表1は、比H/P=0.2の場合に入射角度30〜80°で入射する光全体における非拡散透過光の光量を基準(100%)とした場合の、比H/P別の非拡散透過光の光量の割合を示す表である。
すなわち、図5に示す比H/P=2.0での非拡散透過光の割合の曲線を積分し、その積分値を基準(100%)とした場合の各H/P毎の非拡散透過光の割合の曲線の積分値の割合に相当する。
表1に示すように、比H/Pが大きくなると、入射角度30〜80°で入射する光全体における非拡散光の光量が大きくなる。
そして、比H/P=0.11では、77%であるが、比H/P=0.12では、82%となっている。入射角度30〜80°で入射する光全体における非拡散透過光の光量の割合は、比H/P=0.2を基準(100%)とした場合の80%以上であることが、明瞭な映像を表示し、外光によるコントラスト低下を防止する観点から好ましい。従って、比H/Pは、H/P≧0.12であることが好ましい。
以上の結果から、比H/Pは、0.12≦H/P≦0.2を満たすことが好ましい。
本実施形態の反射スクリーン10は、この比H/P=0.2であり、好ましい範囲を満たしている。
【0044】
(第2及び第3実施形態)
図6は、第2及び第3実施形態の反射スクリーン20,30を説明する図である。
図6(a)には、第2実施形態の反射スクリーン20の層構成を示す図であり、反射スクリーン20の画面上下方向に平行であってスクリーン面に直交する方向における断面を模式的に示している。
第2実施形態の反射スクリーン20は、光拡散層25を備えている点が、第1実施形態の反射スクリーン10とは異なる以外は、前述の第1実施形態の反射スクリーン10と略同様の形態である。従って、前述の第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
第2実施形態の反射スクリーン20は、光拡散層25を基材層13と光制御層14との間に備えており、前述の第1実施形態の反射スクリーン10と同様に映像表示システム1に用いることができる。この光拡散層25は、光制御層14よりも映像源LS側に配置してもよい。
【0045】
光拡散層25は、画面上下方向における拡散特性に比べて、画面左右方向における拡散特性の方が大きい異方性拡散層である。この光拡散層25は、PET等の樹脂中に針状の拡散剤が添加されて形成されており、その拡散剤の配向方向が画面上下方向となっている。なお、これ以外の形態のものであっても、所望の光学特性を有するものであれば、適宜使用してよい。
【0046】
本実施形態によれば、光拡散層25を備えるので、主として水平方向に光を拡散することができ、水平方向の視野角を広げることができ、視野角を向上させることができる。また、垂直方向においては光を拡散する作用が小さいので、等方性の拡散作用を有する拡散層に比べて、正面輝度を向上させることができる。よって、本実施形態によれば、正面輝度を高く維持しつつ、水平方向の視野角を広げることができる。
【0047】
図6(b)は、第3実施形態の反射スクリーン30のレンズ層11及び反射層32、光吸収層36を説明する図である。なお、図6(b)では、理解を容易にするために、レンズ層11及び反射層32、光吸収層36のみを示している。
第3実施形態の反射スクリーン30は、反射層32及び光吸収層36を備えている点が、第1実施形態の反射スクリーン10とは異なる以外は、前述の第1実施形態の反射スクリーン10と略同様の形態である。従って、前述の第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
反射スクリーン30は、光制御層14、基材層13、レンズ層11を備え、さらに、レンズ層11の背面側に反射層32及び光吸収層36を備えており、前述の第1実施形態の反射スクリーン10と同様に映像表示システム1に用いることができる。
【0048】
反射層32は、レンズ層11のレンズ面111a上に所定の厚さで形成されており、非レンズ面111b上には形成されていない。
光吸収層36は、光を吸収する作用を有する層であり、レンズ層11の非レンズ面111bを被覆するように形成されている。この光吸収層36は、黒色等の暗色系の塗料や、暗色系の顔料や染料等を含有する樹脂等により形成される。
この光吸収層36は、図6(b)に示すように、反射層32が形成されたレンズ層11の背面側に、単位レンズ111間の谷部を充填するように形成してもよいし、非レンズ面111b上にのみ所定の厚さで形成されている形態としてもよいし、製造方法や材料等に応じて適宜選択できる。
【0049】
本実施形態によれば、光吸収層36を備えるので、反射スクリーン30の上方から入射する外光の一部(外光G3)が、非レンズ面111bに入射した場合に、光吸収層36により吸収される。これにより、外光によるコントラストの低下をさらに抑制することができ、コントラスト向上を図ることができる。
【0050】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30のレンズ層11の背面側にはリニアフレネルレンズ形状が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズ111が同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状が形成されたレンズ層としてもよい。
【0051】
(2)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30は、その背面側に設けられた支持板50に粘着材層等を介して接合され、略平板状である例を示したが、これに限らず、例えば、粘着材層等を介して壁面に接合される形態としてもよい。
また、各実施形態において、反射スクリーン10,20,30は、使用状態及び不使用状態において略平板状である例を示したが、これに限らず、不使用時には巻き取って保管できる巻き取り可能な形態としてもよい。このような形態の場合には、支持板50等を設けず、反射スクリーン10,20,30の背面側を、光を透過しにくい布製又は樹脂製の遮光幕や耐傷性を向上させる保護層で被覆する形態としてもよい。
【0052】
(3)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30は、例えば、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層、紫外線吸収作用を有する紫外線吸収層、タッチパネル層等をさらに備えた形態としてもよい。これらの層を設ける位置に関しては、適宜設定してよい。
【0053】
(4)各実施形態において、光制御層14は、反射スクリーン10,20,30の最も映像源LS側(観察面側)に設けられる例を示したが、これに限らず、例えば、光制御層14の映像源LS側に、ハードコート機能や、紫外線吸収機能、防眩機能、帯電防止機能、防汚機能等を有する表面機能層を設けてもよい。このとき、光制御層14の凸部141及び凹部142からなる凹凸形状が粘着材等により充填される場合には、光制御層14と接合層等の間には屈折率差があることが好ましい。
【0054】
(5)各実施形態において、凸部141は、その断面形状が略矩形形状である例を示したが、これに限らず、例えば、映像源LS側の頂面の幅が、反射層側の幅よりも狭い略台形形状としてもよいし、一部が曲面等からなる形状としてもよい。さらに、凸部141の断面形状は、略五角形形状や略六角形形状等、多角形形状としてもよい。
また、各実施形態において、凸部141の配列ピッチや高さHは、一定である例を示したが、これに限らず、映像源からの距離や映像光の入射角度等に応じて、反射スクリーン10,20,30の画面上における位置に応じてその形状を適宜変更してもよい。
さらに、凸部141の頂面141aの幅W1と凹部142の表面142aの幅W2は、配列方向に沿って共に変化してもよいし、それぞれ異なる値としてもよい。
【0055】
(6)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30の使用状態において、映像光の主たる入射方向は、反射スクリーン10の下方からである例を示したが、これに限らず、例えば、映像光の主たる入射方向が画面上方である場合には、それに合わせて、実施形態の反射スクリーン10,20,30を上下反転させた形態とすればよい。
【0056】
(7)各実施形態において、レンズ層11が基材層13の片面に紫外線成形により一体に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、押し出し成形によりレンズ層を形成してもよい。このとき、レンズ層11に十分な厚みがあれば、基材層13を備えない形態としてもよいし、レンズ層11と基材層13と一体に積層した状態で押し出し成形してもよい。このような形態とすることにより、大量生産がさらに容易になり、安価に提供できる。
【0057】
(8)各実施形態において、光制御層14は、その映像源LS側に凸部141及び凹部142が交互に複数配列されている例を説明したが、これに限らず、光制御層14として、視界制御作用を有する光学フィルムである、住友化学工業株式会社製の「ルミスティー」(登録商標)等を用いてもよい。この視界制御作用を有する光学フィルムは、その表面に凸部や凹部のような凹凸形状を有していないので、この層に他の機能を有する層を積層しやすい。
【0058】
(9)各実施形態において、反射スクリーン10,20,30と映像源LSとを備える映像表示システム1を示したが、これに限らず、例えば、さらに、パーソナルコンピュータ等の制御部や、使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置を備え、位置検出装置及び映像源をパーソナルコンピュータ等の制御部と通信可能としたインタラクティブボードシステムとしてもよい。このような形態とすれば、例えば、使用者が反射スクリーン10,20,30の観察画面上にタッチペンや指等により描画した文字や図形等の情報を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示したり、それらの情報を含む投影画像等をデータ化して保存したりすることができる。
また、反射スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察画面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりすることができ形態としてもよい。なお、このような形態とする場合には、光制御層14よりも映像源側にハードコート機能や筆記性等を有する層を設けることが、凸部141の破損等を防止することや、インタラクティブボードシステムとしての品質向上等の観点から好ましい。
【0059】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0060】
1 映像表示システム
10,20,30 反射スクリーン
11 レンズ層
111 単位レンズ
111a レンズ面
111b 非レンズ面
12,32 反射層
13 基材層
14 光制御層
141 凸部
141a 頂面
142 凹部
142a 凹部の表面
25 光拡散層
36 光吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投射された映像光を反射して観察可能に表示する反射スクリーンであって、
レンズ面と非レンズ面とを有する単位レンズが該反射スクリーンのスクリーン面に沿って複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層と、
少なくとも前記単位レンズの前記レンズ面上に形成され、光を反射する反射層と、
前記レンズ層よりも映像源側に配置され、前記単位レンズの配列方向に平行な方向において、該反射スクリーンのスクリーン面に直交する方向を含む特定の角度範囲の入射角度で入射する光に対する拡散作用の大きさが、それ以外の角度から入射する光に対する拡散作用に比べて大きい光制御層と、
を備え、
前記光制御層は、その映像源側に、映像源側に凸となる凸部と、前記凸部よりもレンズ層側に位置する凹部とがスクリーン面に沿って前記単位レンズの配列方向に平行な方向に交互に配列されており、
前記凸部は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が略四角形形状であり、
前記凸部の映像源側の頂面及び前記凹部の表面には、光を拡散させる微細凹凸形状が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記凸部の配列ピッチをP、前記凹部の表面から前記凸部の頂面までの寸法をHとするとき、
0.12≦H/P≦0.2
という関係を満たすこと、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記凸部の頂面及び前記凹部の表面の微細凹凸形状の表面粗さである算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)は、好ましくは0.3μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記凸部は、その配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面における断面形状が、略矩形形状であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記レンズ層よりも映像源側に、スクリーン面内において、前記単位レンズの配列方向に平行な方向における拡散作用に比べて前記単位レンズの配列方向に直交する方向における拡散作用の方が大きい異方性光拡散層を備えること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位レンズ及び前記凸部の配列方向は、該反射スクリーンの画面上下方向であること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位レンズは、前記非レンズ面上に光を吸収する光吸収層が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載の反射スクリーンと、
前記反射スクリーンに対して映像光を投射する映像源と、
を備える映像表示システム。
【請求項9】
請求項8に記載の映像表示システムにおいて、
前記映像源は、短焦点プロジェクタであること、
を特徴とする映像表示システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−226103(P2012−226103A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93283(P2011−93283)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】