説明

反射スクリーン及び反射スクリーンの製造方法

【課題】明室環境下であってもコントラストが高く良好な映像を表示できる反射スクリーン及びそのような高品位の反射スクリーンを容易に製造可能な反射スクリーンの製造方法を提供する。
【解決手段】反射スクリーン10は、単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層12を備え、単位レンズ121は、背面側に凸であり、単位レンズ121の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する断面の形状が略四角形状であり、単位レンズ121の頂部となる頂面121bと、頂面121bを挟んで対向するレンズ面121aと非レンズ面121cとを備え、レンズ面121aには、光反射する反射部13が形成され、頂面121bには、光を吸収する光吸収部14が形成されているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射スクリーン及び反射スクリーンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、反射スクリーンとして、表面にマット形状が付されたマットタイプの反射スクリーンが知られている。しかし、このようなマットタイプの反射スクリーンは、明室環境下においては、コントラストが低く、良好な映像が得られない。
近年、明室環境下でもコントラスト等が良好な映像を表示可能な反射スクリーンへの需要が高まっている。そこで、単位レンズが複数配列されて形成されたリニアフレネルレンズ形状やサーキュラーフレネルレンズ形状を有するレンズ層の表面に反射層形成した反射スクリーン等が開発されている(例えば、特許文献1,2)。
このようなレンズ層を用いた反射スクリーンでは、各レンズ形状を構成する単位レンズのレンズ形状の表面に反射層を形成し、投影された映像光を反射して映像を表示する。また、このような反射スクリーンでは、レンズ層よりも観察者側(光源側)に光を拡散させる光拡散層等を備えることにより、好適な視野角も確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−29875号公報
【特許文献2】特開2008−76522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、このような反射スクリーンの中には、映像光の反射に寄与しない非レンズ面に光を吸収する作用を有する光吸収層を形成することにより、外光や迷光等を吸収させ、コントラストの向上等を図ったものがある。
しかし、単位レンズは非常に微細であるため、反射層及び光吸収層を精度よく形成することは困難である。
特許文献1,2に記載の反射スクリーンは、上述のような光吸収層を備えておらず、また、光吸収層を備えた反射スクリーンの製造方法に関しては、一切開示されていない。
【0005】
本発明の課題は、明室環境下であってもコントラストが高く良好な映像を表示できる反射スクリーン及びそのような高品位の反射スクリーンを容易に製造可能な反射スクリーンの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
請求項1の発明は、映像源(LS)から投影された映像光(L)を反射させて観察可能に表示する反射スクリーンであって、単位レンズ(121)が複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層(12)を備え、前記単位レンズは、背面側に凸であり、前記単位レンズの配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面の形状が略四角形状であり、前記単位レンズの頂部となる頂面(121b)と、前記頂面を挟んで対向するレンズ面(121a)と非レンズ面(121c)とを備え、前記レンズ面には、光反射する反射部(13,23)が形成され、前記頂面には、光を吸収する光吸収部(14,24)が形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
請求項2の発明は、請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、前記単位レンズ(121)間の谷部を充填するように前記反射部(13,23)が形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、前記レンズ層(12)は、電離放射線硬化型樹脂製であり、前記レンズ層よりも映像源側に設けられた基材層(11)に一体に形成されていること、を特徴とする反射スクリーン(10,20)である。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンの製造方法であって、前記頂面(121b)に光を吸収する光吸収材料を塗布して光吸収部(14,24)を形成する光吸収部形成工程と、配列された前記単位レンズ(121)間の谷部に光を反射する反射材料を充填して反射部(13,23)を形成する反射部形成工程と、を備えること、を特徴とする反射スクリーンの製造方法である。
請求項5の発明は、請求項4に記載の反射スクリーンの製造方法において、前記反射部形成工程を行った後に、前記光吸収部形成工程を行い、前記反射部形成工程では、前記単位レンズ(121)間の谷部に前記反射材料を充填して前記反射部(13)を形成し、前記光吸収部形成工程では、前記単位レンズ間の谷部に充填された前記反射材料及び前記頂面(121b)により形成された面の全面に前記光吸収材料を塗布して前記光吸収部(14)を形成すること、を特徴とする反射スクリーンの製造方法である。
請求項6の発明は、請求項5に記載の反射スクリーンの製造方法において、前記光吸収部形成工程を行った後に、前記反射部形成工程を行い、前記光吸収部形成工程では、前記頂面(121b)上にのみ前記光吸収材料を塗布して前記光吸収部(24)を形成し、前記反射部形成工程では、前記単位レンズ(121)間の谷部に前記反射材料を塗布して充填し、前記反射部(23)を形成すること、を特徴とする反射スクリーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の反射スクリーンは、単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層を備え、単位レンズは、背面側に凸であり、単位レンズの配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面の形状が略四角形状であり、単位レンズの頂部となる頂面と、頂面を挟んで対向するレンズ面と非レンズ面とを備え、レンズ面には、光反射する反射部が形成され、頂面には、光を吸収する光吸収部が形成されているものとした。
これにより、映像光を効率よく観察者側へ反射し、照明光等の不要な外光を吸収でき、明室環境下でも明るくコントラストの高い良好な映像を表示できる。また、光吸収部は、頂部に形成されるので、形成が容易である。
【0009】
(2)反射スクリーンは、単位レンズ間の谷部を充填するように反射部が形成されているので、反射部の形成が容易に行える。また、反射部としての厚みも十分得られるので、映像光の反射率を向上でき、明るい映像を表示できる。
【0010】
(3)レンズ層は、電離放射線硬化型樹脂製であり、レンズ層よりも映像源側に設けられた基材層に一体に形成されている。従って、基材層をベース(基材)とし、レンズ層に形成される単位レンズの形状を高い精度で製造することができる。
【0011】
(4)本発明の反射スクリーンの製造方法は、頂面に光を吸収する光吸収材料を塗布して光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、配列された単位レンズ間の谷部に光を反射する反射材料を充填して反射部を形成する反射部形成工程とを備えるものとした。
これにより、反射部及び光吸収部の形成が容易に行え、反射スクリーンを安価で提供できる。
【0012】
(5)反射スクリーンの製造方法は、反射部形成工程を行った後に、光吸収部形成工程を行い、反射部形成工程では、単位レンズ間の谷部に反射材料を充填して反射部を形成し、光吸収部形成工程では、単位レンズ間の谷部に充填された反射材料及び頂面により形成された面の全面に光吸収材料を塗布して光吸収部を形成するものとした。これにより、反射部及び光吸収部の形成が容易に行え、反射スクリーンを安価で提供できる。
【0013】
(6)反射スクリーンの製造方法は、光吸収部形成工程を行った後に、反射部形成工程を行い、光吸収部形成工程では、頂面にのみ光吸収材料を塗布して光吸収部を形成し、反射部形成工程では、単位レンズ間の谷部に反射材料を塗布して充填し、反射部を形成するものとした。これにより、反射部及び光吸収部の形成が容易に行え、反射スクリーンを安価で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態の反射スクリーン10を用いた映像表示システムを示す図である。
【図2】第1実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
【図3】第1実施形態の反射スクリーン10の製造方法の一部を説明する図である。
【図4】第2実施形態の反射スクリーン20の層構成を示す図である。
【図5】第2実施形態の反射スクリーン20の製造方法の一部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
なお、図1を含め、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。従って、各光線の入射角度等に関しても実際の角度とは異なる場合がある。
また、板、シート、フィルム等の言葉を使用しているが、これらは、一般的な使い方として、厚さの厚い順に、板、シート、フィルムの順で使用されており、本明細書中でもそれに倣って使用している。しかし、このような使い分けには、技術的な意味は無いので、シート、板、フィルムの文言は、適宜置き換えることができるものとする。例えば、光学シートは、光学フィルムとしてもよいし、光学板としてもよい。
さらに、本明細書中に記載する各部材の寸法等の数値及び材料名等は、実施形態としての一例であり、これに限定されるものではなく、適宜選択して使用してよい。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の反射スクリーン10を用いた映像表示システムを示す図である。
映像表示システムは、反射スクリーン10、映像源LS等を有している。本実施形態では、反射スクリーン10が映像源LSから投影された映像光を反射して、その画面上に映像を表示する一般的な映像表示システムを説明する。映像表示システムは、これに限らず、例えば、映像光を映像源LSから投射するフロントプロジェクションテレビシステム等としてもよいし、反射スクリーン10と映像源LSと反射スクリーンの観察画面上の位置を検出する位置検出部やパーソナルコンピュータ等を備えたインタラクティブボードシステムとしてもよい。
映像源LSは、映像光Lを反射スクリーンへ投影する装置であり、汎用のプロジェクタ等を用いることができる。この映像源LSは、図1(b)に示すように、反射スクリーン10使用状態におけるスクリーンの画面中央よりも下方側から映像光Lを投影する。
【0017】
反射スクリーン10は、映像源LSが投射した映像光Lを観察者O側へ向けて反射し、映像を表示する。使用状態において、この反射スクリーン10の観察画面は平面状であり、観察者O側から見て、その観察画面は、長辺方向が画面左右方向となる略矩形状である。なお、以下の説明中において、画面上下方向、画面左右方向とは、特に断りが無い場合、この反射スクリーン10の使用状態における画面上下方向(鉛直方向)、画面左右方向(水平方向)であるとする。
この反射スクリーン10は、反射部13(図2参照)よりも背面側に、平板状の支持板50が、粘着材等からなる不図示の接合層を介して設けられており、この支持板50により、その平面性を維持している。
【0018】
図2は、第1実施形態の反射スクリーン10の層構成を示す図である。
図2(a)では、反射スクリーン10のスクリーン面に平行であり、使用状態における画面上下方向に平行な断面での断面の一部を拡大して示している。図2(b)では、図2(a)における断面の単位レンズ121をさらに拡大して示している。図2(c)は、単位レンズ形状を説明する図である。なお、図2(a)は、理解を容易にするために、支持板50等は省略して示してある。
反射スクリーン10は、その映像源側(観察面側)から順に、表面機能層15、基材層11、レンズ層12、反射部13、光吸収部14等を備えている。
本実施形態の反射スクリーン10は、例えば、画面サイズが対角80インチサイズ(1220×1620mm)とすることができる。
【0019】
基材層11は、この反射スクリーン10の基材となる透明又は半透明のシート状の部材である。基材層11の映像源側には、表面機能層15が設けられ、背面側には、レンズ層12が一体に形成されている。この基材層11としては、例えば、厚さが100〜200μmであるPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、アクリル系樹脂、TAC(トリアセチルセルロース)樹脂等の樹脂製のシート状部材を用いることができる。本実施形態の基材層11は、厚さ100μmのPET樹脂製のシート状の部材を用いている。
なお、基材層11は、視野角を広げたり明るさの面内均一性の向上を図ったりする目的で光を拡散する拡散材を含有する形態としてもよいし、所定の透過率とするためのグレー等の染料や顔料等により着色が施されていてもよい。また、この基材層11に光拡散作用を有する光拡散層等が一体に積層された形態等としてもよい。
【0020】
レンズ層12は、基材層11の背面側に設けられた光透過性を有する層であり、その背面側(基材層11とは反対側)には、フレネルレンズ形状が形成されている。
レンズ層12に形成されるフレネルレンズ形状は、単位レンズが一方向に配列されたリニアフレネルレンズ形状としてもよいし、単位レンズが同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状としてもよく、反射スクリーン10の使用環境や映像源LSの光学特性等に合わせて、適宜最適な方を選択して用いることができる。本実施形態では、レンズ層12は、リニアフレネルレンズ形状が形成されている例を挙げて説明する。
このリニアフレネルレンズ形状は、単位レンズ121が画面上下方向に沿って複数配列されることにより形成されている。
レンズ層12は、紫外線硬化型樹脂により形成されている。なお、レンズ層12は、電子線硬化型樹脂等の他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。
このレンズ層12は、例えば、表面機能層15が一方の面に形成された基材層11の他方の面に、紫外線成形法等によりレンズ層12を形成することにより作成することができる。レンズ層12(単位レンズ121)を紫外線成形法により形成することにより、よりピッチの細かく、かつ、形状精度の高い単位レンズ121を形成することができる。
【0021】
単位レンズ121は、スクリーン面に直交する方向(反射スクリーン10の厚み方向)に平行であって単位レンズ121の配列方向に平行な断面における断面形状が、略四角形形状であり、頂部となる頂面121bと、フレネルレンズのレンズ面に相当するレンズ面121aと、頂面121bを挟んでレンズ面121aと対向する非レンズ面121cとを有している。本実施形態の単位レンズ121は、背面側に凸となる略四角柱形状であり、その長手方向は、画面左右方向に平行であり、画面上下方向に配列されている。
この単位レンズ121は、反射スクリーン10の使用状態において、レンズ面121aが頂面121bを挟んで非レンズ面121cよりも鉛直方向上側、すなわち、鉛直方向において頂面121bに対して非レンズ面が映像源LS側に位置し、レンズ面121aが映像源LSとは反対側に位置する。
本実施形態の頂面121bは、スクリーン面及び基材層11の背面側の面と平行であり、単位レンズ121の図2に示す断面形状は、略台形状となっている。
【0022】
単位レンズ121は、図2(b)に示すように、レンズ面121aがスクリーン面に平行な面となす角度がαであり、非レンズ面121cがスクリーン面に平行な面となす角度がβ(β>α)である。
また、単位レンズ121の配列ピッチは、Pであり、単位レンズ121の配列方向における頂面121bの寸法は、dである。単位レンズ121のレンズ高さ(スクリーンの厚み方向における頂面121bから単位レンズ121間の谷底となる点vまでの寸法)は、hである。
【0023】
一例として、本実施形態の単位レンズ121は、配列ピッチPが100μm、頂面121bの寸法dが15μm、角度αが16°、角度βが90°である。また、本実施形態の単位レンズ121(レンズ層12)の屈折率は、1.55である。
単位レンズ121の配列ピッチPや寸法d、角度α及び角度βは、映像光を投影する映像源LS(プロジェクタ)の画素(ピクセル)の大きさや、映像源LSの投射角度(映像光の入射角度)等に応じて、適宜変更可能であり、上記の値に限定されるものではない。
【0024】
なお、図2では、理解を容易にするために、単位レンズ121の配列ピッチP、角度α及び角度β、レンズ高さhは、一定である例を示しているが、これに限らず、例えば、単位レンズ121の配列ピッチPが略一定であり、画面上下方向(単位レンズ121の配列方向)において下側となるにしたがって、角度αが小さくなる形態としてもよい。また、例えば、配列ピッチPが単位レンズ121の配列方向に沿ってしだいに変化してもよい。使用環境や所望する光学性能等に合わせて、単位レンズ121は、適宜その形状を選択してよい。
【0025】
反射部13は、光を反射する作用を有し、少なくともレンズ面121aに形成される。
この反射部13は、白色又は銀色系の塗料や、白色又は銀色系の顔料やビーズ等を含有する紫外線硬化型樹脂又は熱硬化性樹脂等により形成される。また、反射部13は、明るい映像を表示するために、その反射率が40%以上とすることが好ましく、70%以上とすることがより好ましい。
本実施形態の反射部13は、単位レンズ121間の谷部を充填するように形成されており、レンズ面121a及び非レンズ面121cを被覆する形態となっているが、頂面121bは被覆していない。また、本実施形態の反射部13は、銀色の顔料を含有する紫外線硬化型樹脂により形成されている。
【0026】
光吸収部14は、頂面121b及び反射部13が交互に配列されて形成された面上に所定の厚さで形成された層状であり、光を吸収する作用を有している。光吸収部14は、頂面121bを被覆しているが、レンズ面121a及び非レンズ面121cは被覆していない。この光吸収部14は、黒色等の暗色系の塗料や、黒色等の暗色系の顔料や染料及び光吸収作用を有するビーズ等を含有する熱硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂により形成される。
本実施形態の光吸収部14は、黒色顔料を含む紫外線硬化型樹脂により形成されており、その厚みは、5〜30μmで設定可能である。
上述のように、単位レンズ121のレンズ面121a及び非レンズ面121cは反射部13が被覆しているので、レンズ面121a及び非レンズ面121cに入射する光は反射部13によって反射される。また、頂面121bは光吸収部14に被覆されているので、頂面121bに入射した光は、光吸収部14によって吸収される。
【0027】
図2(c)に示すように、この単位レンズ121は、所謂リニアフレネルレンズを形成し、レンズ面121a,121eと非レンズ面121c,121fとからなり、頂点121dを有する略三角柱形状の単位レンズ121Aの頂部(図2(c)に示す破線部分)を切断した形状に等しい。
図2(c)に破線で示す面121eは、レンズ面121aの延長部分であり、レンズ面に相当するが、映像光の投射角度等の関係により、この面121eには映像光が到達しないため、映像光の反射に寄与しない領域である。
本実施形態の単位レンズ121は、この面121eとこれに対向する非レンズ面121cの延長部分に相当する面121fとを有する頂角部を、単位レンズ121の配列方向に平行に切削した形状に相当し、頂面121b上に光吸収部14が形成されている。このような形状とすることにより、映像光の反射率を低下させることなく、図2(a)に示すように、反射スクリーン10の上方から入射した外光G1等が頂面121bに到達し、光吸収部14に入射して吸収され、外光の吸収効率を上げることができる。
【0028】
表面機能層15は、基材層11の観察者O側(映像源側)に設けられる層である。この表面機能層15は、反射防止機能や防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けることができる。
また、この反射スクリーン10が、インタラクティブボードの映像を表示したり文字を筆記したりするボード(スクリーン)等として用いられる場合には、その表面に耐傷性を向上させるハードコート機能等を付与してもよいし、タッチパネル層等を設けてもよい。
表面機能層15は、基材層11とは別層であって不図示の粘着材等により基材層11に接合される形態としてもよいし、基材層11のレンズ層12とは反対側の面に直接形成してもよい。
本実施形態の表面機能層15は、防眩機能及び耐スクラッチ機能を有しており、基材層11の映像源LS側の表面に、ハードコート機能を有する電離放射線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート等)を膜厚20μm程度で形成されている。
【0029】
ここで、本実施形態の反射スクリーン10へ入射する映像光及び外光の様子を説明する。
映像源LSから投影された映像光Lは、反射スクリーン10の下方から入射し、表面機能層15及び基材層11を透過してレンズ層12の単位レンズ121へ入射する。そして、図2(a)に示すように、映像光Lは、レンズ面121aへ入射して反射部13によって反射され、観察可能な光線として観察者O側へ向かう。ここで、非レンズ面121cは、反射部13に被覆されているが、角度βは、反射スクリーン10の画面上下方向の各点における映像光Lの入射角度よりも大きく(望ましくは90°)、かつ、映像光Lが反射スクリーン10の下方から投射されるため、映像光Lの反射には影響しない。
【0030】
一方、照明光等の不要な外光G1,G2は、主として反射スクリーン10の上方から入射し、表面機能層15及び基材層11を透過してレンズ層12の単位レンズ121へ入射する。そして、図2(a)に示すように、頂面121bへ入射して光吸収部14に吸収されたり(外光G1)、非レンズ面121cに入射して反射部13によって反射され、頂面121bへ入射して光吸収部14に吸収され(外光G2)、これによりコントラストが向上する。
さらに、前述の外光G1,G2よりも小さな入射角度でこの反射スクリーン10に上方から入射する外光G3は、図2(a)に示すように、レンズ面121aで反射して、反射スクリーン10の下方側へ向かうので、観察者O側には直接届かない。
【0031】
従って、本実施形態の反射スクリーン10によれば、映像光Lは、レンズ面121a上に形成された反射部13によって効率よく観察者O側へ反射でき、かつ、外光G1,G2やレンズ層12内で発生した迷光は、光吸収部14で吸収できるので、明室環境下であっても、明るく、コントラストの高い良好な映像を表示できる。
また、単位レンズ121の頂部が平面(頂面121b)となるので、単位レンズ121の破損が生じにくく、製造過程や搬送時、使用時の破損を防止でき、耐久性を向上できる。
【0032】
(第1実施形態の反射スクリーンの製造方法)
図3は、第1実施形態の反射スクリーン10の製造方法の一部を説明する図である。なお、図3においては、反射スクリーン10の単位レンズ121の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向(スクリーンの厚さ方向)に平行な断面を示している。
まず、図3(a)に示すように、紫外線成形法等により、基材層11の片面にレンズ層12を形成する。
【0033】
次に、図3(b)に示すように、レンズ層12の単位レンズ121のレンズ間の谷部に、反射材料である反射性を有する銀色系の顔料等を含有する紫外線硬化型樹脂をワイピングすることにより、単位レンズ112間に充填する。これにより、本実施形態では、反射部13の面13aと単位レンズ121の頂面121bとが同一平面又は略同一平面となる。なお、これに限らず、反射部13の面13aが頂面121bに対して単位レンズ121間の谷部側に窪んだ形状等としてもよい。
次に、この反射材料に対して紫外線を照射して硬化させ、反射部13が形成される。
【0034】
そして、次に、反射部13が形成されたレンズ層12の頂面121b上に、スクリーン印刷等により、光吸収材料である黒色顔料を含有する紫外線硬化型樹脂を全面に塗布し、紫外線を照射して硬化させ、光吸収部14を形成する。なお、光吸収材料を塗布する方法は、上記のスクリーン印刷に限らず、例えば、グラビアリバースコート、インクジェット方式、ダイコート方式、フローコート方式による塗布等の方法を用いることができる。
次に、所定の大きさに裁断し、反射スクリーン10が完成する。
以上の工程は、基材層11及びレンズ層12が、ウェブ状であっても枚葉状であっても適用可能である。
【0035】
以上のことから、本実施形態によれば、明室環境下であってもコントラストが高く、明るく良好な映像を表示することができる反射スクリーンとすることができる。
また、本実施形態によれば、単位レンズ121の角度αや角度β、配列ピッチP等を、映像源LSの位置や反射スクリーンを使用する環境、所望する光学性能等に合わせて、適宜選択でき、さらに良好な映像を表示できる反射スクリーンとすることができる。
さらに、単位レンズ121の頂部が平面状(頂面121b)となるので、単位レンズ121の破損が生じにくい。
加えて、本実施形態によれば、上述のような良好な反射スクリーン10を、微細な単位レンズのレンズ面と非レンズ面に反射材料や光吸収材料を層状に塗り分ける等とった煩雑な工程を経ることなく容易に製造することができる。従って、作業時間の低減や生産コストの低減等を図ることができる。
さらにまた、本実施形態によれば、ウェブ状の基材層及びレンズ層を用いて連続して反射部及び光吸収部を形成することができ、大量生産も容易に行える。
加えて、本実施形態によれば、反射スクリーン10の背面側(裏面側)に支持板50等を設けない場合にも、最も背面側に光吸収部14が位置するので、背面側(裏面側)からの外光を吸収することができ、反射スクリーン10の背面側に窓がある等の背面側からの外光が考慮されるような使用状態においても、良好な映像を表示できる。
【0036】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の反射スクリーン20の層構成を示す図である。
図4(a)では、第2実施形態の反射スクリーン20のスクリーン面に直交し、使用状態における画面上下方向(単位レンズ121の配列方向)に平行な断面での断面の一部を拡大して示している。図4(b)では、図4(a)における断面の単位レンズ121をさらに拡大して示している。
第2実施形態の反射スクリーン20は、反射部23及び光吸収部24の形状が第1実施形態の反射スクリーン10とは異なる点以外は、第1実施形態の反射スクリーン10と略同様の形態である。従って、前述した第1実施形態の反射スクリーン10と同様の機能を果たす部分には、同一の符号又は末尾に同一の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。
第2実施形態の反射スクリーン20は、観察者側(映像源側)から順に、表面機能層15、基材層11、レンズ層12、反射部23、光吸収部24等を備えている。この反射スクリーン20は、前述の第1実施形態の反射スクリーン10に変えて、前述の第1実施形態の映像表示システムに用いることができる。
【0037】
第2実施形態の反射スクリーン20は、頂面121bの表面に光吸収部24が形成されている。この光吸収部24は、第1実施形態の光吸収部14とは異なり、頂面121b上のみに形成されている。
また、単位レンズ121間の谷部に反射材料が充填されて反射部23が形成されており、レンズ面121a及び非レンズ面121cが反射部23により被覆されている。さらに、この反射部23は、図4に示すように光吸収部24の背面側も被覆している。なお、反射部23を、レンズ面121a及び非レンズ面121cに沿って所定の厚さで形成してもよい。
本実施形態の反射部23及び光吸収部24は、前述の第1実施形態の反射部13及び光吸収部14を作製可能な材料とそれぞれ同様の材料により形成されている。なお、反射部23は、高反射性を有する金属による蒸着やスパッタ、箔押し等により形成による金属膜としてもよい。この場合は、反射部23は、単位レンズ121間の谷部において、レンズ面121a及び非レンズ面121cに沿った形状に形成され、レンズ面121a及び非レンズ面121cを被覆している。
【0038】
(第2実施形態の反射スクリーン20の製造方法)
図5は、第2実施形態の反射スクリーン20の製造方法の一部を説明する図である。なお、図5においては、反射スクリーン20の単位レンズ121の配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向(スクリーンの厚さ方向)に平行な断面を示している。
まず、図5(a)に示すように、紫外線成形法等により、基材層11の片面にレンズ層12を形成する。
【0039】
次に、図5(b)に示すように、グラビアオフセット印刷により、レンズ層12の頂面121b上に光吸収材料(本実施形態では、黒色顔料を含有する熱硬化型樹脂)を塗布し、加熱により硬化させ、光吸収部24を形成する。図5(b)に示すブランケット胴60は、その外周面に不図示の刷胴等にから光吸収材料が転写されており、ブランケット胴60が回転することにより、頂面121b上に所定の厚さで光吸収材料が塗布される。
【0040】
次に、図5(c)に示すように、スクリーン印刷等により、反射材料(本実施形態では、銀色系の顔料を有する紫外線硬化型樹脂)をレンズ層12の単位レンズ121間に塗布する。なお、反射材料を塗布する方法は、上記のスクリーン印刷に限らず、例えば、グラビアリバースコート、インクジェット方式、ダイコート方式、フローコート方式、真空蒸着方式等の方法を用いることができる。
次に、所定の大きさに裁断し、反射スクリーン20が完成する。
【0041】
よって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、明室環境下であってもコントラストが高く、明るく良好な映像を表示することができる反射スクリーン20とすることができる。
また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、上述のような良好な反射スクリーン20を、微細な単位レンズのレンズ面と非レンズ面に反射材料や光吸収材料を塗り分ける等とった煩雑な工程を経ることなく容易に製造することができる。従って、作業時間の低減や生産コストの低減等を図ることができる。
さらに、本実施形態によれば、ウェブ状の基材層及びレンズ層を用いて連続して反射部及び光吸収部を形成することができ、大量生産も容易に行える。
【0042】
(変形形態)
以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の範囲内である。
(1)各実施形態において、反射スクリーン10,20のレンズ層12の背面側にはリニアフレネルレンズ形状が形成される例を示したが、これに限らず、例えば、単位レンズ121が同心円状に配列されたサーキュラーフレネルレンズ形状が形成されたレンズ層としてもよい。
【0043】
(2)各実施形態において、反射スクリーン10,20は、基材層11、レンズ層12、反射部13,23、光吸収部14,24、表面機能層15等を備える例を示したが、これに限らず、例えば、光を拡散させる拡散材を含有した光拡散層や、反射スクリーンの剛性を高め、平面性を維持するためのガラス製や樹脂製の基板層や、コントラストを向上させる着色層等を備えた形態としてもよい。
【0044】
(3)各実施形態において、反射スクリーン10,20は、その背面側に設けられた支持板50に粘着材層等を介して接合され、略平板状である例を示したが、これに限らず、例えば、粘着材層等を介して壁面に接合される形態としてもよい。
また、各実施形態において、反射スクリーン10,20は、使用状態及び不使用状態において略平板状である例を示したが、これに限らず、不使用時には巻き取って保管できる巻き取り可能な形態としてもよい。このような形態の場合には、支持板50等を設けず、反射スクリーン10,20の背面側を、光を透過しにくい布製又は樹脂製の遮光幕や耐傷性を向上させる保護層で被覆する形態としてもよい。
【0045】
(4)各実施形態において、単位レンズ121は、レンズ面121a,頂面121b,非レンズ面121cがいずれも平面状である例を示したが、これに限らず、例えば、少なくとも1つの面が曲面であってもよいし、何れかの面の一部が曲面等であってもよい。例えば、第2実施形態において、頂面121bを凹曲面とした場合には、光吸収材料を頂面121b上に塗布した場合に塗膜が安定して形成され、塗工性が向上する。
また、レンズ面121a及び非レンズ面121c等が複数の面から構成される形態であり、シート面に直交かつ単位レンズの配列方向に平行な断面において、その断面形状が例えば、略五角柱形状や略六角柱形状となる形状としてもよい。
【0046】
(5)各実施形態において、反射スクリーン10,20の使用状態において、映像光の主たる入射方向は、反射スクリーン10の下方からであり、単位レンズ121は、画面左右方向(水平方向)に同一断面形状で延在し、画面上下方向(垂直方向)に多数並んでいる例を示したが、これに限らず、例えば、映像光の主たる入射方向が画面上方である場合には、それに合わせて、実施形態の反射スクリーン10,20を上下反転させた形態とすればよい。
【0047】
(6)各実施形態において、レンズ層12が基材層11の片面に紫外線成形により一体に形成される例を示したが、これに限らず、例えば、押し出し成形によりレンズ層を形成してもよい。このとき、レンズ層12に十分な厚みがあれば、基材層11を備えない形態としてもよいし、レンズ層12と基材層11と一体に積層した状態で押し出し成形してもよい。これによろり、大量生産がさらに容易になり、安価に提供できる。
【0048】
(7)第1実施形態において、反射部13は、頂面121b上には形成されない例を示したが、これに限らず、非常に薄い厚さであれば頂面121b上に形成されていてもよい。このような場合、頂面121bに入射した光(主として外光や迷光)は、一部は反射される可能性があるが、大半は光吸収部によって吸収され、コントラストの低下を抑制できる。しかも、製造がより、容易になり、かつ作業時間も低減できる。
【0049】
(8)各実施形態では、反射スクリーン10,20と映像源LSとを備える映像表示システムを示したが、これに限らず、例えば、パーソナルコンピュータ等の制御部や、使用者が触れた反射スクリーン10の画面上の位置を検出する位置検出装置を備え、位置検出装置及び映像源をパーソナルコンピュータ等の制御部と通信可能としたインタラクティブボードシステムとしてもよい。このような形態とすれば、例えば、使用者が反射スクリーン10の観察画面上にタッチペンや指等により描画した文字や図形等の情報を、投影画像と組み合わせ、図形や文字等が投影画像上に描かれたように表示したり、それらの情報を含む投影画像等をデータ化して保存したりすることができる。
また、反射スクリーン10は、一般的なホワイトボード等のように、マーカー等の所定の筆記具を用いてその表面(観察画面)に手書きで文字や図形等の情報を描画したり、描画した文字等を消去したりすることができ形態としてもよい。
【0050】
なお、本実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した各実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0051】
10,20 反射スクリーン
11 基材層
12 レンズ層
13,23 反射部
14,24 光吸収層
15 表面機能層
LS 映像源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像源から投影された映像光を反射させて観察可能に表示する反射スクリーンであって、
単位レンズが複数配列されたフレネルレンズ形状を背面側に有するレンズ層を備え、
前記単位レンズは、
背面側に凸であり、前記単位レンズの配列方向に平行であってスクリーン面に直交する方向に平行な断面の形状が略四角形状であり、
前記単位レンズの頂部となる頂面と、前記頂面を挟んで対向するレンズ面と、非レンズ面とを備え、
前記レンズ面には、光反射する反射部が形成され、
前記頂面には、光を吸収する光吸収部が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射スクリーンにおいて、
前記単位レンズ間の谷部を充填するように前記反射部が形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射スクリーンにおいて、
前記レンズ層は、電離放射線硬化型樹脂製であり、前記レンズ層よりも映像源側に設けられた基材層に一体に形成されていること、
を特徴とする反射スクリーン。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の反射スクリーンの製造方法であって、
前記頂面に光を吸収する光吸収材料を塗布して光吸収部を形成する光吸収部形成工程と、
配列された前記単位レンズ間の谷部に光を反射する反射材料を充填して反射部を形成する反射部形成工程と、
を備えること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記反射部形成工程を行った後に、前記光吸収部形成工程を行い、
前記反射部形成工程では、前記単位レンズ間の谷部に前記反射材料を充填して前記反射部を形成し、
前記光吸収部形成工程では、前記単位レンズ間の谷部に充填された前記反射材料及び前記頂面により形成された面の全面に前記光吸収材料を塗布して前記光吸収部を形成すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の反射スクリーンの製造方法において、
前記光吸収部形成工程を行った後に、前記反射部形成工程を行い、
前記光吸収部形成工程では、前記頂面上にのみ前記光吸収材料を塗布して前記光吸収部を形成し、
前記反射部形成工程では、前記単位レンズ間の谷部に前記反射材料を塗布して充填し、前記反射部を形成すること、
を特徴とする反射スクリーンの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−226047(P2012−226047A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92070(P2011−92070)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】