説明

反射フィルムの製造方法及び反射フィルム

【課題】
合成樹脂フィルムを基材としその表面にアンダーコート層と金属薄膜層とトップコート層とを順次積層してなる反射フィルムであって、なおかつ全体の厚みをより一層薄いものとすることが出来る反射フィルムの製造方法、及び該製造方法により得られる反射フィルムを提供する。
【解決手段】
基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、金属層を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法であって、前記アンダーコート層積層工程、前記金属積層工程、及びトップコート層積層工程がドライコーティング法によるものであり、かつこれらが記載順に実行されてなる製造方法、及び該方法により得られる反射フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は品質の高められた反射フィルムの製造方法及び該製造方法により得られる反射フィルムに関する発明であって、具体的には、層間密着性、外観、層表面の均一性、等が改善された反射フィルムの製造方法及び該製造方法により得られる反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピューター、テレビなどの画像表示装置として液晶表示装置が用いられているが、これは従来用いられていたブラウン管表示装置に比べてはるかに薄型に出来る、また容易に小型にすることが出来る、という利点がある。特に昨今著しく見られる軽薄短小化への要求の高まりに伴い、この液晶表示装置の利用が求められる場面は急増していると言える。
【0003】
さて、このような液晶表示装置では液晶表示部分が明瞭に視認出来るように通常バックライト装置が備えられているものであるが、このバックライト装置における光源から発せられる光線が最終的には効率的に液晶表示素子に到達する仕組みが必要である。なぜなら液晶表示装置において表示部分を背面からより強く照らすことで、液晶表示部分がより鮮明になるからである。
【0004】
例えば冷陰極管を光源に用いるバックライト装置における光源から発せられる光線を効率よく液晶表示装置に到達させるために、バックライト装置には光源から発する光線を全て液晶表示装置に向かわせるために、光源の周囲に略半包囲状態で光源用反射体が設置されている。この光源用反射体により、光源から発せられた光線が一方向に向かうのである。また昨今その使用が普及しているLED(発光ダイオード)を光源とする場合はかような光源用反射体を用いることなく光を導光板に向けて射出することが出来る。そして光線が向かう先に導光板が設置されており、この導光板に入射した光線が液晶板方向に向けて放出されるのである。しかしこの際においても、全ての光線が同一方向に向けて放出されるのではなく、中には本来不必要な方向に向けて光線が放出されてしまう。つまり、光源から発せられた光線が直接液晶表示装置に向かえばよいが、導光板からあたかもこぼれ落ちてしまった、即ち不要方向に向かってしまった光線を再び導光板に戻す必要がある。そのために、光線が放出されるのに不要な向きに該当する箇所に光線を反射する反射フィルムを設置しておき、不要な方向に放出されてしまった光線を再び導光板に戻す、という構成を備えたバックライト装置が液晶表示装置において採用されている。
【0005】
以上説明したように、現在の液晶表示装置において反射フィルムから反射される光を有効に利用するためには、反射フィルムから反射される光が正しく導光板をへて液晶表示装置に到達しなければならず、そのために例えば特許文献1に記載されたような反射フィルムが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平06−167709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1に記載された反射フィルムでは、合成樹脂フィルムの表面に金属薄膜層を積層したフィルムと電気抵抗率が10Ω・m以上である支持体とを積層してなる構成を採用しており、このように構成することで高い反射効率を維持したまま絶縁性を有する反射体を得られる、とされている。
【0008】
このように絶縁性を維持しつつ高反射効率を実現した点はその通りであるが、実際に係る構成の反射フィルムを利用しようとすると、特に金属薄膜層として用いられる銀は容易に硫化されて黒ずんでしまい、反射効率が急激に低下することも広く知られたところであるので、このような現象を防ぐために金属層のさらに表面に防食性のある層をトップコート層として積層することが広く行われている。また同時に合成樹脂フィルムと金属薄膜層とが容易に剥離してしまわないようにするために、これらの層の間に、これらの層間密着力を確保するためにアンダーコート層を設けることも広く行われている。さらに言うならば、このアンダーコート層に対しても防食性が必要であることも広く知られており、またその対策も種々実行されているものである。
【0009】
しかしこれらトップコート層とアンダーコート層とは共に樹脂を用いて行われることが多く、またトップコート層としては例えば透明性を有する金属層を積層することも実施されることはあるが、その積層方法についてはグラビアコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法が用いられることが主流である。
【0010】
即ち特許文献1に記載された反射フィルムの金属薄膜層を保護するためにトップコート層を積層すること、及び基材となる合成樹脂フィルムと金属薄膜層との層間密着力を確保するためにこれらの層の間にアンダーコート層を積層すること、は広く行われるところであったが、これらの層はいずれもウェットコーティング法により積層されるものであったところ、前述した軽薄短小化への要望に伴う装置の小型化が理由で、係る反射フィルムであってもより一層薄く、なおかつ金属薄膜層が硫化、劣化せず、さらには基材フィルムと金属薄膜層とが容易に剥離しない、という条件は維持すること、が強く望まれるようになってきている。
【0011】
さらに加えて昨今の市場要求として外観をより一層優れたものとすることがあげられる。これは昨今の高品質化要求に伴い、以前では重要な問題とはされていなかった微細な外観欠点が存在するだけでも現在では使用不可とされるようになってきた状況によるものであるが、上記した特許文献1に記載されたような従来のウェットコーティング法→ドライコーティング法→ウェットコーティング法という手順による製造方法であると、各段階において中間生成物を移送する際に大気中のゴミが生成物表面に付着してしまい、これを原因として外観欠点が大量に発生してしまう、という問題が重大な問題として認識されるようになってきており、この点からも新規な製造方法の実現が望まれるようになってきているのである。
【0012】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の反射フィルムの一般的な構成である、合成樹脂フィルムを基材としその表面にアンダーコート層と金属薄膜層とトップコート層とを順次積層してなる反射フィルムであって、なおかつ全体の厚みをより一層薄いものとすることが出来る反射フィルムの製造方法、及び該製造方法により得られる反射フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の反射フィルムの製造方法に関する発明は、少なくとも、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、金属層を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法であって、前記アンダーコート層積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、前記金属積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、かつ前記アンダーコート層積層工程が完了した後に実行されるものであり、前記トップコート層積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、かつ前記金属積層工程が完了した後に実行されるものであること、を特徴とする。
【0014】
本願発明の請求項2に記載の反射フィルムの製造方法に関する発明は、請求項1に記載の反射フィルムの製造方法であって、前記ドライコーティング法が、真空蒸着法、イオンプレーティング法、又はスパッタリング法、のいずれか若しくは複数であること、を特徴とする。
【0015】
本願発明の請求項3に記載の反射フィルムの製造方法に関する発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射フィルムであって、前記アンダーコート層と、前記トップコート層と、が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物により形成されてなり、前記金属層が、銀又はアルミニウムのいずれか若しくは双方、又はいずれか若しくは双方を用いた混合物又は合金により形成されてなること、を特徴とする。
【0016】
本願発明の請求項4に記載の反射フィルムの製造方法に関する発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムの製造方法であって、前記アンダーコート層の厚みが10nm以上500nm以下であり、前記金属層の厚みが10nm以上500nm以下であり、前記トップコート層の厚みが10nm以上500nm以下であること、を特徴とする。
【0017】
本願発明の請求項5に記載の反射フィルムの製造方法に関する発明は、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、銀を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法であって、前記アンダーコート層積層工程が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物をスパッタリング法により積層するものであり、前記金属積層工程が、銀又はアルミニウムのいずれか若しくは双方、又はいずれか若しくは双方を用いた混合物又は合金をスパッタリング法により積層するものであり、かつ前記アンダーコート層積層工程が完了した後に実行されるものであり、前記トップコート層積層工程が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物をスパッタリング法により積層するものであり、かつ前記金属積層工程が完了した後に実行されるものであり、前記アンダーコート層の厚みが10nm以上500nm以下であり、前記金属層の厚みが10nm以上500nm以下であり、前記トップコート層の厚みが10nm以上500nm以下であること、を特徴とする。
【0018】
本願発明の請求項6に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の反射フィルムの製造方法により得られてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本願発明に係る反射フィルムの製造方法であれば、基材となるフィルムの表面に積層される各層は、全て同一のドライコーティング法と呼ばれる手法による工程によって積層されるので、作業に要する時間も大幅に短縮出来、また一つの装置で一気に完成品を得ることが出来るようになる。
【0020】
即ち従来であれば、例えば最初にウェットコーティング法による積層工程を行い、その次にドライコーティング法による積層工程を行い、そして最後にウェットコーティング法による積層工程を行うような場合、一つの工程が一段落し完了すると、その段階での中間品を別の装置に移設して次の工程を行い、それが終わると再び中間品を別の装置に移設して最後の工程を行う、というように工程の合間ごとに中間品の移設が必要であったところ、本願発明に係る製造方法であると、全ての層を同一のドライコーティング法、例えばスパッタリング用によるものとしたので、3回行われるスパッタリングの条件を全て揃えておけば、最初にスパッタリング法を実行する装置に基材を挿入したら、係る装置から中間体を搬出することなく最終工程まで同一の装置内で各積層工程を実行出来るだけでなく、積層体としての完成品を得るまでの要する時間を短くすることが出来るので、要するに全体としていちいち装置間の移設をする必要がない、同一装置で一気に完成品にすることが出来る、しかも従来よりも短時間で完成品を得られる、という効果を得ることが出来る。
【0021】
さらに加えて外観をより一層優れたものとすべき、という昨今の強い市場要望に対し、本願発明に係る反射フィルムの製造方法であれば上述したように同一装置内部で一気に完成品にすることが出来る、という点より、従来であれば製造過程各段階において中間生成物を移送する際に大気中のゴミが生成物表面に付着してしまい、これを原因として外観欠点が大量に発生してしまう、という問題を解消することが可能となり、その結果外観欠点の発生がほぼ生じない製造方法とすることが出来るようになったのである。
【0022】
さらに各層をドライコーティング法によるものとしたので、積層される各層の厚みをウェットコーティング法による場合に比して均一化することが出来、さらにその表面も滑らかなものとすることが出来る、という効果も奏するものであり、また各層をドライコーティング法によるものとしたので積層物全体の厚みも薄いものとすることが出来るので、軽薄短小化が要求される現在の状況に応じた反射フィルムを製造することが出来、また本願発明に係る反射フィルムの製造方法によって得られた反射フィルムも同様の効果、即ち全体を薄く出来る、層の厚みが均一であるが故に性能も安定させやすい、等の効果を得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る反射フィルムの製造方法について第1の実施の形態として説明する。
【0024】
本実施の形態に係る反射フィルムの製造方法は、少なくとも、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、金属層を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法である。そしてこれらアンダーコート層積層工程、金属積層工程、及びトップコート層積層工程が全てドライコーティング法と称される手法によるものであり、かつアンダーコート層積層工程、金属積層工程、トップコート層積層工程の順に実行されるものである。
【0025】
そして本実施の形態におけるドライコーティング法とは、例えば真空蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の手法を指すものであって、以下の説明においてはスパッタリング法を用いてなることとする。
【0026】
まず最初に基材となるプラスチックフィルムであるが、これは通常利用されているプラスチックフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のような透明フィルムであったり、反射率を向上させるために白色PETフィルムといった白色のフィルムを用いることとしてもよく、さらにはオレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等の利用も考えられるが、本実施の形態では従来公知のPETフィルムを用いることとする。
【0027】
またこの基材となるプラスチックフィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えば20μm以上400μm以下であることが望ましいが、これは400μm以上であると本実施の形態に係る反射フィルム全体の厚さを必要なまでに薄くすることが出来なくなるからであり、20μm以下であると本実施の形態に係る反射フィルムとするに際して基材フィルム自身が破損する、又は得られた反射フィルムが容易に破損する、得られた反射フィルムそのものに必要な「こし」が得られないので実際の使用に際しては柔らかすぎて殆ど使えないものとなってしまう、といった問題が生じやすくなるからである。
【0028】
次にこのプラスチックフィルムの表面に設けられるアンカーコート層を積層するアンカーコート層積層工程につき説明する。
【0029】
このアンカーコート層は、前述した基材フィルムと後述する金属蒸着層とが容易に剥離してしまわないために設けられるものであって、その材料としては特段制限するものではないが、本実施の形態では前述の通りドライコーティング法を用いるため、ドライコーティング法により積層可能な物質、例えば酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれかを原料として用いればよい。尚、ドライコーティング法の詳細については後述する。
【0030】
アンカーコート層積層工程を終えると、積層されたアンカーコート層のさらに表面に金属を積層するための金属積層工程を実行する。この工程においても前述の通りやはりドライコーティング法を用いるものであって、積層される金属について特段制限するものではないが、例えば銀やアルミニウムのいずれか、さらにはこれら双方を用いることが考えられるが、本実施の形態では銀を積層することとする。この金属積層工程を実行するに際してのドライコーティング法の詳細についても後述する。
【0031】
金属積層工程を実行して金属層を積層すると、さらにその表面にトップコート層を積層するトップコート層積層工程を実行する。このトップコート層は、例えば銀を積層してなる金属層が外気に触れて硫化し黒ずんでしまうことを防ぐために積層されるものであって、その材料としては特段制限するものではないが、本実施の形態では前述の通りドライコーティング法を用いるため、ドライコーティング法により積層可能な物質、例えば酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれかを原料として用いればよい。尚、ドライコーティング法の詳細については後述する。
【0032】
以上説明した工程を順次実行することにより、基材プラスチックフィルムの表面にアンダーコート層が、そしてその表面に金属層、トップコート層の順で積層され、本実施の形態に係る反射フィルムを得ることが出来る。
【0033】
ここで各工程において実行されるドライコーティング法につき説明する。
従来、上述したアンダーコート層積層工程及びトップコート層積層工程は、グラビアコーティング法やバーコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法により実行されるものであったが、これらウェットコーティング法による積層工程を用いた場合、この工法は単体で観察すると製造に係るコストや装置の簡潔さといった点で有利であった一方、本実施の形態に係る反射フィルムにおいて必須である金属蒸着層を積層するにはドライコーティング法を用いざるを得ないことより、アンダーコート層積層工程=ウェットコーティング法、金属蒸着層積層工程=ドライコーティング法、トップコート層積層工程=ウェットコーティング法、ということになり、反射フィルムを製造する工程全体を観察すると、ウェットコーティング法を実行する装置とドライコーティング法を実行する装置とが必要となり、また積層工程が終わるごとにこれら装置の間を積層中の中間体を移送しなければならないので、製造効率が非常に悪いと言わざるを得なかった。
【0034】
さらに従来の技術において説明したように、製造工程における各段階で中間生成物を移送する際に大気中のゴミが生成物表面に付着してしまい、これを原因として外観欠点が大量に発生してしまう、という重大な欠点を呈する問題が生じてしまっていたのであるが、本実施の形態に係る反射フィルムの製造方法では、必要な工程全てをドライコーティング法としているのであるが、各積層工程におけるドライコーティング法を全て同一の手法で、かつ同一の条件で実行すれば、一つの装置を用いるだけで全ての工程を完了させることが出来るようになり、またこのことより製造工程における各段階で中間生成物を移送する必要が全く生じないことより、大気中のゴミを原因とする外観欠点の発生を非常に抑制することが容易に可能となるのである。
【0035】
さらに別な観点から考察すると、昨今軽薄短小化が望まれる電子部品にあって、本実施の形態に係る反射フィルムもやはり軽薄短小化が望まれているが、それと同時に性能をより向上させることが望まれている。即ち反射フィルムを薄くするためにはウェットコーティング法では限界があり、またその積層表面を均一化するにも限界があったところ、ドライコーティング法を用いることで同等の性能を発揮する層の厚みがウェットコーティング法の場合よりはるかに薄くすることが可能であり、かつ積層表面を滑らかにすることで反射フィルムとしての性能をより高度なものとすることが可能となるのである。
【0036】
係る理由により、本実施の形態に係る反射フィルムの製造方法では、3つの積層工程を同等のドライコーティング法により実行することとしているのである。
【0037】
そして本実施の形態では種々存在するドライコーティング法の中でもスパッタリング法により積層することとしているが、これは反射フィルムを製造するに際して金属蒸着を実行するのにスパッタリング法を用いることが好ましいからであり、本実施の形態では金属蒸着層をスパッタリング法で実行することに伴い、アンダーコート層積層工程及びトップコート層積層工程も同等のスパッタリング法を用いるのである。
【0038】
例えば原料に酸化亜鉛を用いてスパッタリング法によりアンダーコート層積層工程を実行し、次いで原料に銀を用いて、アンダーコート層積層工程と同一環境のもとでスパッタリング法を実行することにより金属蒸着層積層工程を実行し、さらに原料に酸化亜鉛を用いてアンダーコート層積層工程と同一環境のもとでスパッタリング法を実行することによりトップコート層積層工程を実行することにより、基材フィルム/ZnO/Ag/ZnOという構成を有する積層体を得ることが出来る。
【0039】
そして上述したように3つの工程を全て同様の手法により実行することにより、製造に係る手間が相当軽減されることとなり、またドライコーティング法を用いることで各層の厚みを薄くすることが可能となるので、より一層従来より薄い反射フィルムを得ることが出来る。例えばアンダーコート層の厚みが10nm以上500nm以下、金属蒸着層の厚みが10nm以上500nm以下、トップコート層の厚みが10nm以上500nm以下、とし、さらに基材となるプラスチックフィルムの厚みが25μm以上400μm以下のものを用いる、とすれば、全体の厚みを従来の反射フィルムの厚みよりも薄いものとすることが可能であることがわかるし、また従来の反射フィルムと同等の厚みであったとても、本実施の形態に係る反射フィルムの製造方法により得られたものであればいわゆる熱じわ等の問題が発生する可能性は低いので、得られる反射フィルムの性能は従来のものよりも高いものとすることが出来るし、従来品に比して外観欠点が発生する割合が非常に低いものとなり、即ち外観的にも非常に美麗な反射フィルムを容易に得られるようになる。
【0040】
尚、以上説明した反射フィルムの製造方法により得られる反射フィルムの基材フィルム側又はトップコート層側に、別途金属蒸着フィルムや白色PETフィルムを貼着させた、いわゆる「二枚貼り」と呼ばれる構成とすることも考えられるが、ここではこれ以上の詳述は省略する。
【0041】
このように、以上説明した本実施の形態に係る反射フィルムの製造方法であれば、同一装置内で一気に所望の反射フィルムを得ることが出来るだけでなく、各層をドライコーティング法により積層してなることより、性能を維持しつつ若しくは向上させるも、全体の厚みをウェットコーティング法を用いていた場合に比して薄くすることが出来る、という効果を奏することが出来るし、またこの製造方法により得られる反射フィルムは上記の特徴を備えたものとすることが出来るようになるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、金属層を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法であって、
前記アンダーコート層積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、
前記金属積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、かつ前記アンダーコート層積層工程が完了した後に実行されるものであり、
前記トップコート層積層工程が、ドライコーティング法によるものであり、かつ前記金属積層工程が完了した後に実行されるものであること、
を特徴とする、反射フィルムの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の反射フィルムの製造方法であって、
前記ドライコーティング法が、真空蒸着法、イオンプレーティング法、又はスパッタリング法、のいずれか若しくは複数であること、
を特徴とする、反射フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射フィルムであって、
前記アンダーコート層と、前記トップコート層と、が、
酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物により形成されてなり、
前記金属層が、銀又はアルミニウムのいずれか若しくは双方、又はいずれか若しくは双方を用いた混合物又は合金により形成されてなること、
を特徴とする、反射フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムの製造方法であって、
前記アンダーコート層の厚みが10nm以上500nm以下であり、
前記金属層の厚みが10nm以上500nm以下であり、
前記トップコート層の厚みが10nm以上500nm以下であること、
を特徴とする、反射フィルムの製造方法。
【請求項5】
基材となる高分子樹脂フィルムの表面に、アンダーコート層を積層するアンダーコート積層工程と、銀を積層する金属積層工程と、トップコート層を積層するトップコート積層工程と、よりなる反射フィルムの製造方法であって、
前記アンダーコート層積層工程が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物をスパッタリング法により積層するものであり、
前記金属積層工程が、銀又はアルミニウムのいずれか若しくは双方、又はいずれか若しくは双方を用いた混合物又は合金をスパッタリング法により積層するものであり、かつ前記アンダーコート層積層工程が完了した後に実行されるものであり、
前記トップコート層積層工程が、酸化珪素、酸化チタン、酸化亜鉛、ニオブ、酸化錫−インジウム、硫化亜鉛、窒化珪素、酸化アルミニウム、のいずれか若しくは複数、又はこれらのいずれか若しくは複数を含有する化合物をスパッタリング法により積層するものであり、かつ前記金属積層工程が完了した後に実行されるものであり、
前記アンダーコート層の厚みが10nm以上500nm以下であり、
前記金属層の厚みが10nm以上500nm以下であり、
前記トップコート層の厚みが10nm以上500nm以下であること、
を特徴とする、反射フィルムの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の反射フィルムの製造方法により得られてなること、を特徴とする、反射フィルム。

【公開番号】特開2009−115867(P2009−115867A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−285669(P2007−285669)
【出願日】平成19年11月2日(2007.11.2)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】