説明

反射フィルム

【課題】
液晶表示装置に用いるバックライト装置にあって、これを通過するFPC等の他部材と貼り付かないようにした、また同時に反射フィルムから放出される光に高い指向性を付与することができる、反射フィルムを提供する。
【解決手段】
液晶表示装置用バックライト装置に用いる反射フィルムであって、前記反射フィルムの導光板側とは反対面側に、又は導光板側と導光板側とは反対面との両面に、算術平均径により算出される平均粒径が0.001μm以上10μm以下のフィラーを含む塗料を塗布してなる貼り付き防止層を積層してなる構成を有した、反射フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源からの光線を効率よく反射するために用いられる反射フィルムであって、具体的には、液晶表示装置等における効率的な光線利用を目的とした反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピューター、テレビなどの画像表示装置として液晶表示装置が用いられているが、これは従来用いられていたブラウン管表示装置に比べてはるかに薄型にできる、また容易に小型にすることができる、という利点があるからである。特に昨今著しく見られる軽薄短小化への要求の高まりに伴い、この液晶表示装置の利用が求められる場面は急増していると言える。
【0003】
さて、このような液晶表示装置では液晶表示部分が明瞭に視認できるように通常バックライト装置が備えられているものであるが、このバックライト装置における光源から発せられる光線が最終的には効率的に液晶表示素子に到達する仕組みが必要である。なぜなら液晶表示装置において表示部分を背面からより強く照らすことで、液晶表示部分がより鮮明になるからである。
【0004】
例えば冷陰極管を光源に用いるバックライト装置における光源から発せられる光線を効率よく液晶表示装置に到達させるために、バックライト装置には光源から発する光線を全て液晶表示装置に向かわせるために、光源の周囲に略半包囲状態で光源用反射体が設置されている。この光源用反射体により、光源から発せられた光線が一方向に向かうのである。また昨今その使用が普及しているLED(発光ダイオード)を光源とする場合はかような光源用反射体を用いることなく光を導光板に向けて射出することができる。そして光線が向かう先に導光板が設置されており、この導光板に入射した光線が液晶板方向に向けて放出されるのである。しかしこの際においても、全ての光線が同一方向に向けて放出されるのではなく、中には本来不必要な方向に向けて光線が放出されてしまう。つまり、光源から発せられた光線が直接液晶表示装置に向かえばよいが、導光板からあたかもこぼれ落ちてしまった、即ち不要方向に向かってしまった光線を再び導光板に戻す必要がある。そのために、光線が放出されるのに不要な向きに該当する箇所に光線を反射する反射フィルムを設置しておき、不要な方向に放出されてしまった光線を再び導光板に戻す、という構成を備えたバックライト装置が液晶表示装置において採用されている。
【0005】
そしてさらに液晶表示装置の輝度そのものをより向上させるため、バックライト装置においてプリズムシートを利用することが一般的となっている。このプリズムシートとは導光板を透過して出る光と反射フィルムを経由して導光板を透過して出る光とをまとめて液晶板方向に向けて射出するための部材であり、プリズムシートを経た光はその向きを正面方向に変えられるのである。このように光の向きを正面方向に変えることによって液晶表示装置における輝度が向上するのである。
【0006】
このプリズムシートについて述べると、従来方式のバックライト装置の構成にあっては上向きプリズムシートを用いる場合と下向きプリズムシートを用いる場合とが存在している。そして上向きプリズムシートを用いる場合は2枚のシートを用いるのに対し、下向きプリズムシートを用いる場合は1枚のシートを用いるだけの構成となっている。
【0007】
以上説明したように、現在の液晶表示装置において反射フィルムから反射される光を有効に利用するためには、プリズムシートを経て液晶表示装置に至る光を有効に利用しなければならないが、そのためには反射フィルムから反射される光が正しく導光板を経てプリズムシートに到達しなければならず、そのために例えば特許文献1に記載されたような反射フィルムが提案されている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−266629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この特許文献1に記載された反射フィルムでは導光板と反射フィルムの表面とが貼り付いてしまわないように反射フィルム表面に対しエンボス加工を施したものである。これは、これらが不用意に貼り付いてしまうとフィルムがたるみ、輝度ムラなどが発生してしまうからであり、係る現象が生じることを回避するために設けられている、とされている。
【0010】
しかし実際にこの反射フィルムを用いると導光板側とは反対側面は平滑であるため反射フィルムとシャーシとが部分的に貼り付いてしまうことがあり、またこれを実際にバックライト装置に組み込もうとしたとき、材料が発する熱や湿度による収縮、伸びが材料ごとに異なるために貼り付いた箇所と貼り付いていない箇所とが生じることとなり、その結果反射フィルムにたるみが生じてしまい良質な反射光を射出することができず問題であった。
【0011】
さらに先述した下向きプリズムシートを用いた液晶表示装置において特許文献1に記載された反射フィルムを用いると充分な輝度を得られず問題であった。これは、下向きプリズムシートを用いる場合、反射フィルムの導光板側表面が平滑でなければ、導光板を経て下向きプリズムシートに入射する光線が特定方向の高い指向性を持った光線でなければならないところ、特許文献1に記載された反射フィルムの導光板側表面は平滑でないので、これを用いても特定方向の高い指向性を持った光線を得ることができないからである。
【0012】
また、そうであるならば、単純に上下を逆にすることにより導光板側表面が平滑となるように特許文献1に記載された反射フィルムを用いればよいようにも思われるが、実際のところ反射フィルムとはその使用面が予め決められているものであることは当業者にとり周知の事実であり、仮に逆にして用いると導光板との行路差等を理由として輝度低下現象や輝度ムラ等の問題が生じてしまうことは容易に想像できるところであり、また実際にかような問題が生じてしまうため特許文献1に記載された反射フィルムを逆にして用いることは非現実的であると言わざるを得ない。
【0013】
さらに特許文献1に記載された反射フィルムの反対面側に対し単純に新たにエンボス加工を施すことは理論的に考えられるが、いずれにせよ特許文献1に記載された反射フィルムにエンボス加工を施す、ということは反射フィルムそのものに直接物理的に変形加工を施すことになるので、反射フィルムを製造する際に反射フィルムを傷めてしまう、等の加工上の問題も発生することが考えられるので、必ずしも好適であるとは言えない。
【0014】
さらに、実際の液晶表示装置においてはその軽薄短小化要求に伴いバックライト装置を構成する部材以外の部材がバックライト装置内部を通過する部材が存在する場合も生じてきているのであるが、例えば液晶表示装置を構成するFPC(フレキシブルプリントサーキット)を、バックライト装置内部の、反射フィルムの導光板側とは反対面、換言すれば導光板側から見て背面側を通過させる構成とする場合に特許文献1に記載された反射フィルムを用いれば、特許文献1に記載された反射フィルムの背面側においては何ら処理が施されていないため、反射フィルムと背面側を通過するFPCとが部分的に貼り付いてしまい、反射フィルムとFPCとがそれぞれ発する熱や湿度による収縮、伸びが材料ごとに異なるために反射フィルムとFPCとが部分的に貼り付いてしまうことがあり、貼り付いた箇所と貼り付いていない箇所とが生じることとなり、その結果反射フィルムにたるみが生じてしまい良質な反射光を射出することができず問題であった。
【0015】
結局従来と同様に輝度ムラが生じてしまうという問題が生じてしまっていた。さらにこの場合を平面視で観察すると、反射フィルム表面の面積とFPCの面積とは全然異なっており、つまりこれらを重ねても重なる部分は反射フィルム表面の一部分に過ぎないのであって、反射フィルムの面から考えると、反射フィルムの面の一部分しかFPCが重なっていない状況となり、さらには熱や湿度によるFPCの伸び率と反射フィルムの伸び率とが異なることもあり、その結果、反射フィルムにたるみが生じ、また輝度ムラが生じたりするため問題となってしまうのである。
【0016】
要するに、特許文献1に記載された反射フィルムであれば、導光板側とは反対側面に対して何ら処理が施されていないため、この部分がFPC等の他の部材や、さらにはバックライト装置を構成するシャーシ(又はケース)と部分的に貼り付く現象が生じてしまい、反射フィルムとしての機能が損なわれることがある、という点が問題となってしまうのである。
【0017】
そこで本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶表示装置に用いるバックライト装置にあって、これを通過するFPC等の他部材と貼り付いてしまわないようにした、また同時に反射フィルムから放出される光に高い指向性を付与することができる、反射フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の反射フィルムに関する発明は、液晶表示装置用バックライト装置に用いる反射フィルムであって、前記反射フィルムの導光板側とは反対面側に、又は導光板側と導光板側とは反対面との両面に、算術平均径により算出される平均粒径が0.001μm以上10μm以下のフィラーを含む塗料を塗布してなる貼り付き防止層を積層してなること、を特徴とする。
【0019】
本願発明の請求項2に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1に記載の反射フィルムにおいて、前記フィラーが、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化チタン、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、又はエポキシ系樹脂、のいずれか若しくは複数によるものであること、を特徴とする。
【0020】
本願発明の請求項3に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1又は請求項2に記載の反射フィルムにおいて、前記塗料が、ポリエステル系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はメラミン系樹脂による塗料であること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項4に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、前記反射フィルムが、基材プラスチックフィルム、アンダーコート層、金属蒸着層、トップコート層、の順に積層されてなり、かつその使用面が前記基材プラスチックフィルム側であること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項5に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、前記反射フィルムが、基材プラスチックフィルム、アンダーコート層、金属蒸着層、トップコート層、の順に積層されてなり、かつその使用面が前記トップコート層側であること、を特徴とする。
【0023】
本願発明の請求項6に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項4又は請求項5に記載の反射フィルムにおいて、前記使用面の反対側の表面にさらにプラスチックフィルムを積層してなること、を特徴とする。
【0024】
本願発明の請求項7に記載の反射フィルムに関する発明は、請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、前記貼り付き防止層が前記反射フィルム使用面とは反対側の表面のみに設けられてなること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本願発明に係る反射フィルムであれば貼り付き防止層を備えているので、これを液晶表示装置のバックライト装置を構成する部材として用いれば、バックライト装置を収める部材であるシャーシと反射フィルムとが貼り付いてしまうことがなくなるので、反射フィルムから射出される反射光も良質なものとなり、従来品であれば生じていた輝度ムラの発生を抑制できるようになる。また同時に、かかる貼り付き防止層をシャーシ側のみに設け、導電光板側には設けない、という構成にすれば、導光板側の面は平滑なものとなるので、本願発明に係る反射フィルムから導光板に向けて射出される光線は正反射成分が非常に多いものとなるので、バックライト装置が下向きプリズムを採用している場合にこれを用いれば輝度を向上させることが容易に可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る反射フィルムについて第1の実施の形態として説明する。
【0027】
本実施の形態に係る反射フィルムは液晶表示装置用バックライト装置に用いる反射フィルムであって、この反射フィルムの導光板側とは反対面側に、又は導光板側と導光板側とは反対面との両面に、算術平均径により算出される平均粒径が0.001μm以上10μm以下のフィラーを含む塗料を塗布してなる貼り付き防止層を積層した構成を有している。
【0028】
ここで、予め本実施の形態に係る反射フィルムを用いてなる液晶表示装置に用いられるバックライト装置の一例につき簡単に説明をしておく。
バックライト装置の構成の一例は次の通りである。即ち、光源と、光源を側面視で半円形に包囲する光源反射板と、光源の光と光源反射板により反射されて照射される光とが入射する導光板と、導光板から液晶表示装置方向とは逆側にこぼれ出た光を再び導光板側に反射させこれに入射させるための反射フィルムと、反射フィルムを支持するためのシャーシと、導光板から射出される光を液晶表示装置にて正面方向に光を集めるため、またそのようにすることで液晶表示装置の輝度を向上させるためのプリズムシートと、を備えている。
【0029】
光源は例えば発光ダイオード(LED)等によるものであり、光源反射板は例えば表面が金属で蒸着された金属蒸着シートであったり、白色PETフィルムであったりする。導光板は光源等から入射した光を、その入射した方向とは別の方向であって同一方向に向けて射出するための板であって、例えばアクリル板に反射ドットを印刷したものであったり、アクリル面に凹凸を付けたりしたものであるが、いずれにせよ他の部材が導光板に貼着してしまうと貼り付いてしまった部材がたるんでしまい光輝ムラが発生してしまう、導光板の効果が低減してしまう、等の現象が生じることがあるので、従来より導光板に他の部材が貼着しないように、他の部材がたるんでしまわないように、バックライト装置を構成する各部材が設置されるように工夫されている。尚、本実施の形態に係る反射シートを用いるバックライト装置でも当然これらの部材は公知のものであって構わない。
【0030】
また導光板から射出される全ての光を、その先に設置されている液晶表示装置に対し効率よく集め導くためにプリズムシートが用いられることがあるが、このプリズムシートの用い方として、上向きプリズムシートと下向きプリズムシートとの2種類が存在する。そして上向きプリズムシートの場合はプリズムで光線を屈折させることにより液晶表示装置方向(以下正面方向とも記する。)に光を導き、下向きプリズムシートの場合はプリズム斜面で光を全反射させ正面方向に光を導く。また上向きプリズムシートの場合は入射する光は拡散反射成分が多くても問題ないが、下向きプリズムシートの場合は入射する光は正反射成分を持つ光でないと輝度向上などの効果が得られないのであって、下向きプリズムシートの場合は特定方向の高い指向性を持った光が放出される導光板と組み合わせて用いることが有効であり、かつ不可欠であるとされる。
【0031】
本実施の形態に係る反射シートは、例えば上述したようなバックライト装置を構成する部材として用いられるものである。その個々の構成等につき以下、順に説明をしていく。
【0032】
まず最初に基材プラスチックフィルムであるが、これは通常利用されているプラスチックフィルムであってよく、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のような透明フィルムであったり、反射率を向上させるために白色PETフィルムといった白色のフィルムを用いることとしてもよく、さらにはオレフィン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルフォン(PES)フィルム等の利用も考えられるが、本実施の形態では従来公知のPETフィルムを用いることとする。
【0033】
またこの基材プラスチックフィルムの厚みは特に限定するものではないが、例えば20μm以上200μm以下であることが望ましいが、これは200μm以上であると本実施の形態に係る反射フィルム全体の厚さを必要なまでに薄くすることができなくなるからであり、20μm以下であると本実施の形態に係る反射フィルムとするに際して基材フィルム自身が破損する、又は得られた反射フィルムが容易に破損する、得られた反射フィルムそのものに必要な「こし」が得られないので実際の使用に際しては柔らかすぎて殆ど使えないものとなってしまう、といった問題が生じやすくなるからである。
【0034】
次にこの基材プラスチックフィルムの表面に設けられるアンカーコート層につき説明する。
このアンカーコート層は、前述した基材フィルムと後述する金属蒸着層とが容易に剥離してしまわないために設けられるものであって、その材料としては特段制限するものではないが、例えばポリエステル系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はメラミン系樹脂等が用いられ、本実施の形態ではアクリル系樹脂を用いることとする。
【0035】
この層を積層する方法としてはグラビアコーティング等のいわゆるウェットコーティングと呼ばれる一群の従来公知の手法でよい。そしてこの手法により積層される本実施の形態におけるアンカーコート層の厚みも特段制限をするものではないが、例えば0.001μm以上10μm以下であると好適である。
【0036】
このようにアンカーコート層を積層すると、次にその表面に金属蒸着層を積層するが、本実施の形態に係る反射フィルムにおいてはこの金属蒸着層の表面で主に入射した光線を反射させるので、この金属蒸着層の表面にはいわゆる金属光沢が備わっていることが必要である。そして所望の反射を得るために、本実施の形態では、この金属蒸着層は銀により形成されることとするが、これ以外であっても、銀を用いた場合と同様に所望の反射を得られるのであれば、例えばアルミニウム等、さらには銀やアルミニウムの合金、等により金属蒸着層を形成しても構わないこととする。
【0037】
この金属蒸着層は、従来公知の手法で積層されるものであってよく、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等の手法であって構わない。また得られる金属蒸着層の厚みとしては、500Å以上1500Å以下であることが好適であると言えるが、これは500Å未満とすると充分な光線反射が得られず、また1500Åを超えると、本実施の形態で得られる反射フィルム全体の厚みを薄くすることに限界が生じてしまうし、なによりも製造コストの抑制ができなくなり、また厚くなりすぎると内部応力の発生により層が破断しやすくなってしまうからである。
【0038】
このように金属蒸着層を積層すると、次にその表面にトップコート層を設けるが、このトップコート層もやはり従来公知の材料を用いて積層すればよく、例えばポリエステル系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はメラミン系樹脂等の樹脂、又は酸化ケイ素や弗化マグネシウム、弗化アルミニウム、弗化カルシウム等のいずれか又は複数をその材料として用いることが考えられ、本実施の形態ではアクリル系塗料を用いることとする。尚、これらの材料の積層方法に関しては従来公知の手法であってよく、例えばスパッタリング法や真空蒸着法等のいわゆるドライコーティング法、グラビアコーティング法やバーコーティング法等のいわゆるウェットコーティング法、等を用いればよい。さらにこの層の厚みとしては0.001μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0039】
また、このトップコート層が最外面に積層されることにより、金属蒸着層は外気と直接接触することが殆どなく、そのため金属蒸着層と空気とが接触することにより金属蒸着層が腐食してしまい、そのために金属蒸着層での光線反射機能が低下し、ひいては反射フィルムの反射性能が低下する、ということが防止される、といった、金属蒸着層の腐食を防止する機能をも発揮する。
【0040】
このように本実施の形態に係る反射フィルムは、以上説明した各部材を順次積層したそのさらに表面に貼り付き防止層を積層してなる構成を有する。即ち、基材プラスチックフィルムたるPETフィルムの表面に順にアンダーコート層、金属蒸着層、そしてトップコート層、の順に積層した積層フィルムとすることで、これにさらに貼り付き防止層を積層して本実施の形態に係る反射フィルムとなる。そして普通反射フィルムとは光が入射する側を想定しているものであり、即ち使用面として積層体のどちらの面から光が入射するかを想定した上で設計、積層されるのが常であり、さらには通常一般的には基材プラスチックフィルム側が使用面とされることが多いものであるところ、本実施の形態においてはトップコート層側が使用であるものと想定してさらに説明を続ける。しかし基材プラスチックフィルムがPETフィルムであっても、又はそれ以外のプラスチックフィルムであっても、ある程度透明であり可視光線を透過することができるフィルムを基材プラスチックフィルムとして用いるならば、基材プラスチックフィルム側を使用面とすることも可能であり、または構わず、即ち実際のところは設計次第でいずれの面でも使用面とし利用可能であることを付言しておく。
【0041】
次に貼り付き防止層につき説明する。
本実施の形態に係る反射フィルムでは、PETフィルム/アンダーコート層/金属蒸着層/トップコート層という構成を有する積層フィルムのPETフィルム側表面に、さらに貼り付き防止層が積層されている。この貼り付き防止層とは、要するにフィラーを含有した塗料を塗布することにより積層されてなるものであり、本実施の形態に係る反射フィルムがバックライト装置を構成する他部材に、具体的にはシャーシに貼り付いてしまわないために積層される層である。
【0042】
この貼り付き防止層は、算術平均径により算出される平均粒径が0.001μm以上10μm以下のフィラーを含む塗料を塗布することにより積層されるもおのであり、フィラーとしては、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化チタン、ポリエステルやポリオレフィン、ポリアミド等のポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、又はエポキシ系樹脂、のいずれか若しくは複数を、また塗料としては、ポリエステル系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はメラミン系樹脂の塗料であること、が考えられるが、本実施の形態では酸化ケイ素をフィラーとし、これをポリエステル系塗料に含有させたものを用いることとする。
【0043】
またアクリル系塗料に含有されるフィラーの割合は固形分の10%であるものとするが、本実施の形態においては0.1%以上50%以下であればよいものとする。さらに係るフィラー含有塗料の塗布方法、即ち貼り付き防止層形成方法は従来公知のウェットコーティング法と呼ばれる手法であってよく、例えばバーコーティング法、グラビアコーティング法、等であってよく、本実施の形態では特段その手法を制限するものではないことを断っておく。
【0044】
本実施の形態に係る反射フィルムは以上説明した各部材により構成されており、即ち、貼り付き防止層/PETフィルム/アンダーコート層/金属蒸着層/トップコート層、という構成を有し、かつその使用面はトップコート層としている。
【0045】
また、本実施の形態に係る反射フィルムとして、上述した構成に対し、貼り付き防止層とPETフィルムとの間にプラスチックフィルムを介在させてなる反射フィルムとすることも考えられる。これは俗に「二枚貼り」とも呼ばれるものであって、例えばアルミニウムなどの金属を蒸着させた金属蒸着フィルムや、白色PETフィルム、等のプラスチックフィルムを貼着するものであるが、これは使用面たるトップコート層から入射した光線をより一層有効に用いるために、即ち入射した光線を出来るだけ完全に反射させるために、PETフィルムから使用面側とは反対側にこぼれてしまう光線をさらに反射させるためにPETフィルムの使用面側とは反対側面に貼着されるものであるが、本実施の形態においては、この二枚貼りとしたものの使用面側とは反対面側に貼り付き防止層を積層する、という構成を採ることも可能であるものとする。ちなみにPETフィルム/アンダーコート層/金属蒸着層/トップコート層という構成にあってPETフィルム側を使用面とした場合、貼り付き防止層はトップコート層側に設けられることとなるが、この場合ではトップコート層を貼り付き防止層と兼用して設計することも考えられる。また上記同様にトップコート層側にさらにプラスチックフィルムを貼着する構成とする場合、かかるプラスチックフィルムのさらに表面に貼り付き防止層を備えることで上述したのと同様の効果を得られる。いずによ、これらの場合に関してはこれ以上の詳述は省略する。
【0046】
この反射フィルムは、その使用面が導光板側に位置するようにバックライト装置に設置される。即ち、貼り付き防止層が略断面視において最下部、即ちシャーシに面する側に位置することになる。この場所に貼り付き防止層が位置することにより、本実施の形態に係る反射フィルムを用いた液晶表示装置用バックライト装置では、反射フィルムが不用意にシャーシに貼り付いてしまうことがなくなり、従来この部分が貼り付くことにより生じていた液晶表示面における輝度ムラが発生しなくなる。
【0047】
さらに上述の通り、貼り付き防止層はシャーシ側に位置するのみであり、導光板側には位置しないことより、本実施の形態に係る反射シートを用いたバックライト装置では反射フィルムから反射された光線が導光板に対し正反射成分を充分に含んだ光線となるので、導光板から射出する光をさらに正面方向に導くためにプリズムシートを設置する場合を考えると、下向きプリズムシートを用いたバックライト装置においても利用することができる。その結果例えば携帯電話などのような小型・超小型液晶表示装置において極力薄型化が求められる構成部材であっても、下向きプリズムシートを用いることを前提として装置全体を設計するに際してもプリズムシートの使用枚数は必要最小限に留めることができるようになるので、薄型化に非常に寄与するものとなるのである。
【0048】
さらに、昨今の激しい軽薄短小化の要求に伴い、液晶表示装置、バックライト装置以外の部材であって、装置全体の軽薄短小化に伴い従来配置可能であった箇所に配置ができなくなった部材、例えばFPC(フレキシブルプリンテッドサーキット)を、バックライト装置内部を透過させるようになること、具体的には反射フィルムとシャーシとの間を透過させるようになること、が考えられるが、予め反射フィルムに上述したような貼り付き防止層を設けておくことで、この箇所にFPCを通してもFPCと本実施の形態に係る反射フィルムとが不用意に貼り付いてしまうことを防止できるので、これらが貼り付いてしまうことにより生じる輝度ムラや輝度低下といった現象が発生することを未然に防止することができるようになる。
【0049】
またここでは詳述しないが、反射フィルムの基本的な部分について、PETフィルム/アンカーコート層/金属蒸着層/トップコート層、としたフィルムのPETフィルム側を使用面とした場合、当然導光板に面する側にPETフィルムが位置するように使用することとなるので、この場合、前述した貼り付き防止層はトップコート層側表面に積層されることとなることを付言しておく。
【0050】
(実施の形態2)
先に説明した第1の実施の形態では、貼り付き防止層/PETフィルム/アンカーコート層/金属蒸着層/トップコート層、という構成につき説明したが、さらにトップコート層の表面に対しても貼り付き防止層を形成することが考えられる。この構成を第2の実施の形態として説明する。
【0051】
先に述べた実施の形態に係る反射フィルムでは導光板とは反対側の面に貼り付き防止層を形成することによって、バックライト装置を構成するシャーシと反射フィルムとが貼り付いてしまわないようにすることを可能としたが、このような場合であっても、導光板又は反射フィルムの設置に際してそれらが貼り付いてしまうことが考えられる。
【0052】
そこで、導光板側とは反対側の面に貼り付き防止層を形成するのみならず、同時に導光板側に位置する、即ち使用面側であるトップコート層側の表面にも先述同様の貼り付き防止層を形成することによって、即ち両面に貼り付き防止層を設けておくことで、本実施の形態に係る反射フィルムが他の部材と不用意に貼り付いてしまうことを防ぐことができる。尚、この貼り付き防止層をトップコート層と兼用できるように設計されていても構わないが、これに関してはこれ以上の詳述は省略するものとする。
【0053】
このように、その両面に貼り付き防止層を設けた反射フィルムであると、前述した下向きプリズムシートを用いたバックライト装置にあっては利用することが困難であることも想定されるが、上向きプリズムシートを用いた場合であると、今度は前述した通り上向きプリズムシートでは光線の拡散成分が求められることより、上向きプリズムシートを用いたバックライト装置で本実施の形態に係る反射シートを用いると、導光板側とは反対面に貼り付き防止層を形成しているので、この反射シートとシャーシとが貼り付くことを防止できる上に、導光板側にも貼り付き防止層が形成されるので、導光板に導入される光線の拡散成分が強調されるようになり、その結果導光板を経て上向きプリズムシートに導入される光線の質が良好なものになる、と言えるのである。
【0054】
以上説明した実施の形態に係る反射フィルムを液晶表示装置におけるバックライト装置に用いることで、反射フィルムが不意に他の部材と貼り付いてしまうことが防止されるので、従来であれば反射フィルム等の撓みが原因として生じていた輝度ムラなどの発生を抑制することが可能となり、その結果容易に液晶表示装置全体の輝度を向上させることができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置用バックライト装置に用いる反射フィルムであって、
前記反射フィルムの導光板側とは反対面側に、又は導光板側と導光板側とは反対面との両面に、算術平均径により算出される平均粒径が0.001μm以上10μm以下のフィラーを含む塗料を塗布してなる貼り付き防止層を積層してなること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の反射フィルムにおいて、
前記フィラーが、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、酸化ケイ素、硫酸バリウム、酸化チタン、ポリエチレン系樹脂、アクリル系樹脂、又はエポキシ系樹脂、のいずれか若しくは複数によるものであること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の反射フィルムにおいて、
前記塗料が、ポリエステル系樹脂、シロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、又はメラミン系樹脂による塗料であること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、
前記反射フィルムが、基材プラスチックフィルム、アンダーコート層、金属蒸着層、トップコート層、の順に積層されてなり、かつその使用面が前記機材プラスチックフィルム側であること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、
前記反射フィルムが、基材プラスチックフィルム、アンダーコート層、金属蒸着層、トップコート層、の順に積層されてなり、かつその使用面が前記トップコート層側であること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の反射フィルムにおいて、
前記使用面の反対側の表面にさらにプラスチックフィルムを積層してなること、
を特徴とする、反射フィルム。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の反射フィルムにおいて、
前記貼り付き防止層が前記反射フィルム使用面とは反対側の表面のみに設けられてなること、
を特徴とする、反射フィルム。

【公開番号】特開2009−109625(P2009−109625A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280111(P2007−280111)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】