説明

反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物及びそれを用いた反射体

【課題】耐熱性や反射率等の反射体の要求性能を満たし、さらに射出成形時の離型剛性が向上し生産性の向上に寄与する、反射体用のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、(B)酸化チタン20〜110質量部、(C)ガラス繊維35〜110質量部、(D)酸変性ポリフェニレンエーテル1.5〜5質量部、および(E)結晶化核剤1〜5質量部を配合してなる反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、及びそれを用いた反射体に関し、詳しくは発光ダイオード(LED)の反射体などに適した反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、及びそれを用いた反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは電気エネルギーを直接光に変換することが可能で、長寿命で小型軽量であるとう特徴から、携帯電話等の電子機器のバックライト用や道路交通表示板用等として広く利用されている。さらに、近年の青色LEDや白色LEDの開発に伴い、白熱電球や蛍光灯に代わる一般照明器具用としても期待され、さらなる技術開発が求められている。
【0003】
上記の技術開発においては、半導体チップの高性能化の他にも封止剤や反射体に用いられる材料の高性能化が重要である。例えば、LEDの寿命に関しては封止剤等に用いられる樹脂の劣化が影響することが知られている。またLEDの高輝度化は重要な課題であり、光の回収率の向上を目的として高性能の反射体の開発が進められている。
【0004】
反射体用の材料に関しては、高い反射率の他にも耐熱性が求められる。例えば、LEDの高輝度化を目指して電流を増加させると、半導体チップが発熱して反射体が劣化し易くなるという問題がある。また、LEDの製造工程においては封止する際に熱処理(約150℃)があり、また表面実装時にも加熱(約240℃以上)されるため、耐熱性が重要になる。従来はこの耐熱性の観点から、反射体としてポリフタルアミド(PPA)やナイロン9T(PA9T)等のナイロン系樹脂が使用されてきたが、上記の熱処理により色調変化が起き、反射率が低下するという問題があった。
【0005】
この色調変化の問題に関しては、近年、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)によって解決する方法が知られている。例えば、特許文献1は、結晶性スチレン系樹脂を使用する反射体を開示し、この反射体は加熱に伴う色調変化の抑制という点で優れていた。しかしながら、この反射体はSPSが結晶化できる140〜150℃の高温金型での離型剛性が低く、射出成形時の成形サイクルが長くなり、生産性が低下するという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2007−218980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、耐熱性や反射率等の反射体の要求性能を満たし、さらに射出成形時の離型剛性が向上し生産性の向上に寄与する、反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、及びそれを用いた反射体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を配合してなるシンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物により上記課題が解決されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち本発明は、
1. (A)シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、(B)酸化チタン20〜110質量部、(C)ガラス繊維35〜110質量部、(D)酸変性ポリフェニレンエーテル1.5〜5質量部、および(E)結晶化核剤1〜5質量部を配合してなる反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
2. さらに(F)熱可塑性エラストマー10〜20質量部を配合してなる上記1に記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
3. さらに(G)離型剤0.3〜1.5質量部を配合してなる上記1または2に記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
4. さらに(H)酸化防止剤0.1〜5質量部を配合してなる上記1〜3のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
5. さらにホウ酸アルミニウム及び/又はタルク5〜10質量部を配合してなる上記1〜4のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
6. 曲げ弾性率が8000MPa以上であり、かつ1.8MPaでの荷重たわみ温度が210℃以上である上記1〜5のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
7. 波長450nmの光に対する初期反射率が85%以上であり、かつ260℃、10分間の熱処理後の反射率が75%以上である上記1〜6のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、
8. 上記1〜7のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物を成形してなる反射体、
9. 発光ダイオード用の反射体である上記8に記載の反射体
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性や反射率等の反射体の要求性能を満たし、さらに射出成形時の離型剛性が向上し生産性の向上に寄与する、反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物、およびそれを用いた反射体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物(以下、本発明の樹脂組成物ということがある。)は、(A)シンジオタクチックポリスチレン、(B)酸化チタン、(C)ガラス繊維、(D)酸変性ポリフェニレンエーテル、および(E)結晶化核剤を配合してなる樹脂組成物である。
【0011】
(A)成分のシンジオタクチックポリスチレンは、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体であって、核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量されるシンジオタクチシティーはラセミダイアッドでは通常は75%以上、好ましくは85%以上であり、またラセミペンタッドでは通常は30%以上、好ましくは50%以上である。
【0012】
シンジオタクチックポリスチレンとしては、ポリスチレン,ポリ(アルキルスチレン),ポリ(ハロゲン化スチレン),ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン),ポリ(アルコキシスチレン),ポリ(ビニル安息香酸エステル),これらの水素化重合体及びこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体が挙げられる。なお、これらのシンジオタクチックポリスチレンは、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
ポリ(アルキルスチレン)の具体例としては、ポリ(メチルスチレン),ポリ(エチルスチレン),ポリ(イソプロピルスチレン),ポリ(ターシャリ−ブチルスチレン)などが挙げられる。ポリ(ハロゲン化スチレン)の具体例としては、ポリ(クロロスチレン),ポリ(ブロモスチレン),ポリ(フルオロスチレン)などが挙げられる。ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)の具体例としては、ポリ(クロロメチルスチレン)などが挙げられる。ポリ(アルコキシスチレン)の具体例としては、ポリ(メトキシスチレン),ポリ(エトキシスチレン)などが挙げられる。上記以外の具体例としては、ポリ(フェニルスチレン),ポリ(ビニルナフタレン),ポリ(ビニルスチレン)などが挙げられる。
【0014】
好ましいシンジオタクチックポリスチレンとしては、ポリスチレン,ポリ(p−メチルスチレン),ポリ(m−メチルスチレン),ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン),ポリ(p−クロロスチレン),ポリ(m−クロロスチレン),ポリ(p−フルオロスチレン),水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
【0015】
本発明で用いるシンジオタクチックポリスチレンは分子量および分子量分布について特に制限はないが、重量平均分子量が10000以上、のものが好ましく、50000以上、のものがより好ましい。重量平均分子量が10000未満では、得られる組成物あるいは成形品の熱的性質,力学的物性が低下する場合があり好ましくない。
【0016】
本発明で用いるシンジオタクチックポリスチレンは、従来公知の方法で製造することができ、例えば不活性炭化水素溶媒中、又は溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62−187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、上記水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
【0017】
(B)成分の酸化チタンは特に限定されず、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンのいずれも使用することができるが、熱安定性の点でルチル型酸化チタンが好ましい。またその形状は特に限定されるものではなく、球状,鱗片状,不定形等適宜選択して使用できる。酸化チタンの平均粒径は、通常0.05〜5μm程度、好ましくは0.05〜1μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。平均粒径が0.05μm未満又は5μmを越えると、可視光の反射率が低くなる場合がある。なお、酸化チタンの粒径とは、球状の場合は直径を指し、その他の場合は最長の両端間距離を指す。また、平均粒径は、電子顕微鏡(透過型(TEM)又は走査型(SEM))でいくつかの単一粒子径を測定し、平均した値である。
【0018】
酸化チタンの配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、20〜110質量部、好ましくは25〜100質量部、さらに好ましくは40〜80質量部である。20質量部未満であると、光の反射率が低下してLEDの輝度が低下しやすく、110質量部を超えると、組成物の流動性が低下し、LED反射体のような微細成形が困難になる。
【0019】
(C)成分のガラス繊維は、形態において特に制限はなく、例えば、チョップドストランドが挙げられる。また、原料においても特に制限はなく、含アルカリガラス、低アルカリガラス及び無アルカリガラス等を原料としたものをいずれも好適に用いることができる。また、その表面を有機化合物やシラン系カップリング剤でコーティングしてもよいし、多数のガラス繊維を有機化合物で収束する等の処理を施してもよい。ガラス繊維の繊維長、繊維径に特に制限はないが、平均繊維長が0.3〜10mmであることが好ましく、平均繊維径が1〜50μmのものが好ましい。
【0020】
ガラス繊維の配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、35〜110質量部、好ましくは35〜90質量部、さらに好ましくは50〜90質量部である。35質量部未満であると、シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物を射出成形時、金型内で十分に結晶化させる金型温度(135〜150℃)で十分な離型剛性が得られにくく、110質量部を超えると、流動性が低下し、LED反射体のような微細成形が困難になる。
【0021】
(D)成分の酸変性ポリフェニレンエーテルは、ポリフェニレンエーテルを酸変性して得られる。ポリフェニレンエーテルとしては公知の化合物を使用することができ、好ましいものとして、ポリ(2,3−ジメチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−クロロメチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ〔2−(4’−メチルフェニル)−1,4−フェニレンエーテル〕,ポリ(2−ブロモ−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−クロロ−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル),ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)及びポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。さらに、米国特許第3,306,874号,同3,306,875号,同3,257,357号及び同3,257,358号の各明細書に記載された化合物を使用することができる。
【0022】
ポリフェニレンエーテルは、通常、銅アミン錯体、一種又はそれ以上の二箇所もしくは三箇所置換フェノールの存在下で、ホモポリマー又はコポリマーを生成する酸化カップリング反応によって調製される。ここで、銅アミン錯体としては、第一,第二及び第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。
【0023】
酸変性に用いられる酸としては、無水マレイン酸、フマル酸およびフマル酸誘導体が挙げられ、フマル酸またはフマル酸誘導体が好ましい。フマル酸誘導体の具体例としては、フマル酸ジエステル,フマル酸金属塩,フマル酸アンモニウム塩,フマル酸ハロゲン化物等が挙げられる。
【0024】
酸変性ポリフェニレンエーテルの配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、1.5〜5質量部、好ましくは1.5〜4質量部、さらに好ましくは2〜4質量部である。1.5質量部未満であると、シンジオタクチックポリスチレンとガラス繊維の界面の密着性が不十分となり十分な離型剛性が発現しないおそれがあり、5質量部を超えると反射率が低下しやすい。なお、酸変性ポリフェニレンエーテルは、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(E)成分の結晶化核剤は、公知のものを使用することができ、例えば、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)等のカルボン酸の金属塩、ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム等のリン酸の金属塩、フタロシアニン誘導体などを挙げることができる。
【0026】
結晶化核剤の配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、1〜5質量部、好ましくは1〜4質量部、さらに好ましくは2〜4質量部である。1質量部未満であると、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を射出成形時、金型内で十分に結晶化させることができず、十分な離型剛性が発現しないおそれがあり、5質量部を超えると成形品表面や金型を汚染しやすい。なお、結晶化核剤は、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分の他に(F)熱可塑性エラストマー、(G)離型剤、(H)酸化防止剤を配合してもよく、さらに本発明の効果を損なわない範囲で、反射体製造において通常用いられるその他の添加剤を配合することができる。
【0028】
(F)成分の熱可塑性エラストマーとしては、例えば天然ゴム,ポリブタジエン,ポリイソプレン,ポリイソブチレン,ネオプレン,ポリスルフィドゴム,チオコールゴム,アクリルゴム,ウレタンゴム,シリコーンゴム,エピクロロヒドリンゴム,スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBR),水素添加スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEB),スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS),水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SEBS),スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIR),水素添加スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEP),スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS),水素添加スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SEPS),エチレンプロピレンゴム(EPR),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM),ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン−コアシェルゴム(ABS),メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MBS),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−スチレン−コアシェルゴム(MAS),オクチルアクリレート−ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(MABS),アルキルアクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンコアシェルゴム(AABS),ブタジエン−スチレン−コアシェルゴム(SBR),メチルメタクリレート−ブチルアクリレート−シロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴムなどのコアシェルタイプの粒子状弾性体、またはこれらを変性したゴムなどが挙げられる。
なお、これらの熱可塑性エラストマーは、一種のみを単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
熱可塑性エラストマーを配合することで、反射体の靭性を改善することができる。熱可塑性エラストマーの配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、10〜20質量部が好ましい。
【0029】
(G)成分の離型剤としては、ポリエチレンワックス,シリコーンオイル,長鎖カルボン酸,長鎖カルボン酸塩など、公知のものから任意に選択して用いることができる。離型剤を配合することで、射出成形時の金型からの離型性が改善され、生産性が向上する。離型剤の配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、0.3〜1.5質量部が好ましい。
【0030】
(H)成分の酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤を使用することができ、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤を配合することで、混練、成形時の熱分解を低減化でき、さらに実使用時の長期耐熱性が向上し長期間にわたって物性を維持することができる。酸化防止剤の配合量は、シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましい。酸化防止剤は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0031】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール・ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール・ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート−ジエチルエステル、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナムアミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等を挙げることができる。
【0032】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエテル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェビン6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェビン6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等を挙げることができる。
【0033】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等を挙げることができる。
【0034】
その他の添加剤としては、光安定剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。特に本発明の目的の一つである射出成形時の離型剛性を向上させ生産性を改善できることから、ホウ酸アルミニウムやタルクを単独または併用して配合することが好ましく、この場合の配合量はシンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、合計で5〜10質量部が好ましい。
【0035】
本発明のシンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物は、上記の各必須成分及び所望により用いられる任意成分を所定の割合で配合し、例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機等により適当な温度、例えば270〜320℃の範囲の温度で十分に混練することにより、調製することができる。本発明の樹脂組成物は、各種成形方法によって所望の形状に成形できる。例えば、上記組成物をペレット状に造粒したものを、射出成形機等に投入することにより成形できる。
【0036】
上記の方法によって得られる本発明の樹脂組成物は、通常曲げ弾性率が8000MPa以上であり、かつ1.8MPaでの荷重たわみ温度が210℃以上である。したがって、射出成形時の離型剛性が向上され生産性が改善される。また、本発明の樹脂組成物は、波長450nmの光に対する初期反射率が、通常85%以上であり、かつ260℃、10分間の熱処理後の反射率が75%以上である。したがって、本発明の樹脂組成物は反射体用として好適に用いられ、特にLED等の耐熱性が要求される場合において好ましく用いられる。本発明はまた、前記樹脂組成物を成形してなる反射体をも提供する。
【実施例】
【0037】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例において用いた材料を以下に示す。
(A)シンジオタクチックポリスチレン:出光興産(株)製シンジオタクチックポリスチレンホモポリマー、融点270℃、重量平均分子量140,000
(B)酸化チタン:石原産業(株)製二酸化チタン 平均粒径0.26nm
(C)ガラス繊維:オーエンスコーニング(株)製 グラスファイバー 商品名JAFT164G 平均繊維長さ3mm、平均径10μm
(D)酸変性ポリフェニレンエーテル:出光興産(株)製 フマル酸変性ポリフェニレンエーテル 商品名CX−1
(E)結晶化核剤A:ナトリウム−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ADEKA(株)製 結晶化核剤 商品名 アデカスタブ NA−11
結晶化核剤B:ADEKA(株)製 結晶化核剤 商品名 アデカスタブ NA−70(リン酸エステル系化合物)
(F)熱可塑性エラストマー:クラレ(株)製 SEBS 商品名セプトン8006
(G)離型剤A:信越化学工業(株)製 シリコーンオイル 商品名SH550
離型剤B:東レダウコーニングシリコーン(株)製 シリコーンオイル 商品名SH200CV
(H)酸化防止剤A:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製 フェノール系酸化防止剤 商品名IRGANOX1010
酸化防止剤B:ADEKA(株)製 リン系酸化防止剤 商品名PEP36
酸化防止剤C:住友化学(株)製 イオウ系酸化防止剤 商品名SUMILIZER TPD
(I)その他添加剤A:ホウ酸アルミニウム 四国化成工業(株)製 商品名アルボレックス
その他添加剤B:タルク 富士タルク工業(株) 商品名 TPA−25
【0039】
実施例1
シンジオタクチックポリスチレン100質量部、酸化チタン40質量部、ガラス繊維50質量部、酸変性ポリフェニレンエーテル2質量部、結晶化核剤2質量部を混合後、東芝機械製35mmφ二軸混練機TEM−35に投入し、300℃、吐出量25kg/hで混練した。ストランドは水槽にて冷却し、カッターに投入してペレットを得た。
【0040】
実施例2〜18、比較例1〜8
第1表〜第3表に記載の原料を用いた他は実施例1と同様にしてペレットを得た。なお、実施例1で使用していない添加剤(離型剤等)を加える場合にはサイドフィードにて行った。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
評価方法
上記実施例1〜18および比較例1〜8の樹脂組成物を用いて、以下の試験(1)〜(5)を行った。結果を第4表〜第6表に示す。
(1)初期反射率
東芝機械成形機エンジニアリング(株)製型締め力55t射出成形機を用い、成形温度300℃、金型温度150℃で2mm厚みの80mm角平板を成形した。その後、島津製作所製自記分光光度計UV−2450を用いバリウム粉末を標準試料として、450nm波長光の分光反射率を測定した。
(2)加熱後反射率
上記初期反射率を測定した成形品をジェットオーブン中で、260℃、10分間熱処理した後、同様に450nmの反射率を測定した。
【0045】
(3)曲げ弾性率
住友重機械製(株)製100t射出成形機SH100Aを用い、成形温度300度、金型温度150℃でASTMテストピース型を用い、試験片を作製した。曲げ弾性率はASTM D790に準拠して行った。
(4)荷重たわみ温度
曲げ弾性率に記載の方法で試験片を作製し、ASTM D648に準拠し、荷重1.8MPaにて実施した。
(5)射出成形サイクル
日本Sodic製縦型電動40t射出成形機TR40EHVを用い、LEDチップ128個取りフープ成形用金型で下記条件にて射出成形を実施した。
〔成形温度320℃、金型温度ヒーター135℃、射出時間0.2sec、射出圧力130MPa〕
なお、数値を示していない比較例は充填不可を意味する。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、耐熱性や反射率等の反射体の要求性能を満たし、さらに射出成形時の離型剛性が向上し生産性の向上に寄与する、反射体用のシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物が提供される。本発明のシンジオタクチックポリスチレンを使用することで、LEDの性能向上が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シンジオタクチックポリスチレン100質量部に対して、(B)酸化チタン20〜110質量部、(C)ガラス繊維35〜110質量部、(D)酸変性ポリフェニレンエーテル1.5〜5質量部、および(E)結晶化核剤1〜5質量部を配合してなる反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項2】
さらに(F)熱可塑性エラストマー10〜20質量部を配合してなる請求項1に記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項3】
さらに(G)離型剤0.3〜1.5質量部を配合してなる請求項1または2に記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項4】
さらに(H)酸化防止剤0.1〜5質量部を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項5】
さらにホウ酸アルミニウム及び/又はタルク5〜10質量部を配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項6】
曲げ弾性率が8000MPa以上であり、かつ1.8MPaでの荷重たわみ温度が210℃以上である請求項1〜5のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項7】
波長450nmの光に対する初期反射率が85%以上であり、かつ260℃、10分間の熱処理後の反射率が75%以上である請求項1〜6のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の反射体用シンジオタクチックポリスチレン樹脂組成物を成形してなる反射体。
【請求項9】
発光ダイオード用の反射体である請求項8に記載の反射体。

【公開番号】特開2009−256420(P2009−256420A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104937(P2008−104937)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】