説明

反射型カラーフィルム基板

【課題】 本発明の目的は、顔料、色素、染料等の従来の着色材を使用せずに、発色し、かつ透明な透明フィルムを提供することにある。また、本発明の別の目的は、上述した透明フィルムを用いた性能に優れた反射型カラーフィルム基板を提供することにある。
【解決手段】 本発明の透明フィルムは、透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明フィルムであって、前記球状粒子が、該透明フィルム中に平均粒子径50〜200nmで分散していることを特徴とする。また、本発明の電子部品用基板は、上記に記載の透明フィルムで構成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型のカラーフィルム基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムを着色するためには着色顔料、色素、染料等を含有させることが必須であった。しかし、顔料の粒子径が大きいものを使用するとフィルムは不透明になってしまう。一方、粒子径をナノスケールの小さいものを使用した場合であっても粒子が凝集するためフィルムが不透明になることが多かった。さらに、色素、染料等は、耐熱性に劣り、経時変化が問題となる場合があった。
【0003】
そこで、顔料、色素、染料等のような一部の光を吸収することで着色する以外の方法として、球状ナノ微粒子のコロイド微結晶の構造発色を利用した光学発色体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、透明性を維持したままの構造発色を示す透明フィルムは得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−182392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、顔料、色素、染料等の従来の着色材を使用せずに、発色し、かつ透明な透明フィルムを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上述した透明フィルムを用いた性能に優れた反射型カラーフィルム基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(8)に記載の本発明により達成される。
(1)透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明フィルムであって、
前記球状粒子が、平均粒子径40〜200nmで、該透明フィルム中に分散していることを
特徴とする透明フィルム。
(2)前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均粒径と、粒子間距離との関係が、
(1)平均粒径40〜60nm、粒子間距離が120〜180nmである透明フィルム
(2)平均粒径70〜90nm、粒子間距離が210〜270nmである透明フィルム
(3)平均粒径100〜120nm、粒子間距離が300〜360nmである透明フィルムの、3つの透明フィルムの中で少なくとも2つを積層した積層フィルムである(1)の透明フィルム。
(3)前記球状粒子の含有量は、透明フィルム全体の5〜80体積%である(1)または(2)に記載の透明フィルム。
(4)前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均の粒子間距離は、120〜360nmである(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の透明フィルム。
(5)前記透明性樹脂は、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のいずれか一方である(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の透明フィルム。
(6)前記球状粒子は、ケイ素を含有する金属酸化物の粒子である(1)ないし(5)のいずれか1項に記載の透明フィルム。
(7)前記透明性樹脂と、前記球状粒子との屈折率差が、0.1以下である(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の透明フィルム。
(8)(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の透明フィルムで構成されてなることを特徴とする反射型カラーフィルム基板。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顔料、色素、染料等の従来の着色材を使用せずに、発色し、かつ透明な透明フィルムを得ることができる。
また、本発明によれば性能に優れた反射型カラーフィルム基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】透明シートの小角X線散乱測定のデータを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の透明フィルムおよび反射型カラーフィルム基板について説明する。
本発明の透明フィルムは、透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明フィルムであって、前記球状粒子が、該透明フィルム中に平均粒子径40〜120nmで分散していることを特徴とする。
また、本発明の反射型カラーフィルム基板は、上記に記載の透明フィルムで構成されてなることを特徴とする。
【0010】
(透明フィルム)
まず、透明フィルムについて説明する。
本発明の透明樹脂フィルムは、透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明フィルムであって、前記球状粒子が、該透明フィルム中に平均粒子径40〜200nmで分散していることを特徴とする。これにより、球状粒子が光照射下で、特定の波長の光を選択し、構造発色することができ、かつ球状粒子が上述したようにミクロで分散しているので透明性にも優れているものである。
このように、球状粒子が特定の波長の光を選択して、構造発色できる理由は、次のように考えられる。
球状粒子を樹脂中で凝集することなく固定化(配置)することにより、球状粒子が透明フィルム中で規則的な配列構造を形成することができ、それによって特定の波長のみを選択的に反射できるようになり、その波長の光が発色することができるようになるものである。
【0011】
ここで構造発色とは、構造色とも呼ばれ規則的に並んだ立体構造に起因して光が散乱する現象のことである。構造発色を示すかどうかの判別は、定量的に、以下のように実施できる。透明フィルムの波長分散の光線透過率において構造発色する色の波長領域の光線透過率、300〜500nmの光線透過率において反射率が30%以上、好ましくは40%以上の単峰性のピークが観察された場合、青色の構造発色を示すと判別する。また、緑色の場合、500〜600nmの光線透過率、赤色であれば550〜700nm光線透過率において反射率が30%以上、好ましくは40%以上の単峰性のピークが観察された場合においてそれぞれの構造発色を示す。
【0012】
前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均粒子径は、特に好ましくは10〜200nmであり、最も好ましくは120〜160nmである。平均粒子径が前記範囲内であると、特に透明性と発色性とのバランスに優れる。
このような透明フィルム中の球状粒子の平均粒子径は、例えば高輝度放射光を用いた小角X線散乱で評価することができる。
【0013】
具体的には、以下の平均粒子径と粒子間距離において、それぞれ青、緑、赤の構造発色するフィルムを作製することができる。
(1)平均粒子径40〜60nm、粒子間距離が120〜180nmである青色の構造発色をする透明フィルム
(2)平均粒子径70〜90nm、粒子間距離が210〜270nmである緑色の構造発色する透明フィルム
(3)平均粒子径100〜120nm、粒子間距離が300〜360nmである赤色の構造発色する透明フィルム
【0014】
前記フィルムは、それぞれ、淡色の構造発色をする透明フィルムとして作製することができる。原理的に1枚のフィルムで、複数種の構造発色をする透明フィルムを作製することは難しい。
【0015】
前記の光の三原色である青、緑、赤を構造発色するフィルムをそれぞれ作製した後に、積層することにより多色の発色が可能な透明フィルムを作製することも可能である。
フィルムの積層方法としては、それぞれのフィルムを重ねて圧着させる方法が好ましい。圧着の方法には、熱圧着や超音波圧着の方法がある。また、フィルムの接合面に接着剤を塗布し接着により積層することも可能である。フィルムに光透過性が必要なことから、接着材を使用しない圧着による積層が最も好ましい積層方法である。
【0016】
前記透明性樹脂としては、例えば脂環式ポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、エポキシポリマー等が挙げられる。
また、上述した透明性樹脂と、硬化剤等とを含有する樹脂組成物でも良い。具体的には、これらの中でも脂環式ポリマー、ポリアクリレート等の透明性を有する樹脂を含有する樹脂組成物が好ましい。具体的には、2つ以上の官能基を有する化合物を含有する樹脂組成物を、熱、光等により硬化・架橋して得られるものが好ましい。
【0017】
前記2つ以上の官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリレート等のアクリル樹脂、グリシジル型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、オキセタン化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂およびアクリルのいずれか一方であることが好ましい。これにより、架橋反応性を向上することができる。
【0018】
グリシジル型エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂またはこれらの水添化物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート骨格を有するエポキシ樹脂、カルド骨格を有するエポキシ樹脂、ポリシロキサン構造を有するエポキシ樹脂が挙げられ、脂環式エポキシ樹脂としては例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3'、4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2,8,9−ジエポキシリモネン、ε−カプロラクトンオリゴマーの両端にそれぞれ3,4−エポキシシクロヘキシルメタノールと3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸がエステル結合したもの、水添ビフェニル骨格、及び水添ビスフェノールA骨格を有する脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。)等が好適に用いられる。
【0019】
これらの中でも、耐熱性、線膨張係数の点で、脂環式構造を有し、2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートが好まし。さらに、脂環式構造を含む2つ以上の官能基を有する(メタ)アクリレートであれば特に制限されないが、耐熱性や透明性の点から下記の化学式(1)および化学式(2)より選ばれた少なくとも1種以上の(メタ)アクリレートが好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
【化2】

【0022】
前記式(1)、式(2)で示される(メタ)アクリレートの中でも、反応性、熱安定性の面から、式(1)、式(2)より選ばれた少なくとも1種のアクリレートが好ましく、さらに好ましくは、一般式(1)において、R1、R2が水素で、aが1、bが0である構造を持つジシクロペンタジエニルジアクリレート、一般式(2)において、Xが−CH2OCOCH=CH2、R3、R4が水素で、pが1である構造を持つパーヒドロ−1,4;5,8−ジメタノナフタレン−2,3,7−(オキシメチル)トリアクリレート、X、R3、R4がすべて水素で、pが0または1である構造を持つアクリレートより選ばれた少なくとも1種以上のアクリレートであり、粘度等の点を考慮すると、最も好ましくは、 X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレートである。式(2)で示される(メタ)アクリレートは、特開平5−70523で示される公知の方法で得ることができる。
【0023】
前記2つ以上の官能基を有する化合物を含む樹脂組成物には、柔軟性を付与する等の目的で、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、単官能の化合物を含有させることができる。
【0024】
前記透明フィルム中の前記透明性樹脂の含有量は、透明フィルム全体の50〜70体積%が好ましく、特に50〜60体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、特に透明性に優れる。
【0025】
前記樹脂組成物を紫外線等の活性エネルギー線により硬化させる場合は、樹脂組成物中にラジカル、カチオン等を発生する光重合開始剤を含有させることが好ましい。その際に用いる光重合開始剤としては、例えばラジカル発生剤としてはベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩等が挙げられる。これらの光重合開始剤は2種以上を併用しても良い。
【0026】
前記光重合開始剤の樹脂組成物中における含有量は、適度に硬化させる量であればよく、樹脂組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましく、さらに好ましくは、0.02〜1重量部であり、最も好ましくは、0.1〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が多すぎると、重合が急激に進行し、複屈折の増大、着色、硬化時の割れ等の問題が発生する。また、少なすぎると組成物を十分に硬化させることができず、架橋後に型に付着して取れない等の問題が発生する。
【0027】
前記樹脂組成物に熱をかけて熱重合させる場合は、必要に応じて、樹脂組成物中に熱重合開始剤を含有させることができる。その際に用いる熱重合開始剤としては、ラジカル発生剤としてはベンゾイルパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等が挙げられ、カチオン発生剤としては芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、アンモニウム塩、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体等が挙げられる。使用量は、樹脂組成物中の官能基を含有する有機成分100重量部に対し、3重量部以下が好ましい。
【0028】
本発明の透明フィルムは、上述したように球状粒子が上述したような平均粒子径で分散しているものであるが、このような分散状態とするための球状粒子としては、粒子径の標準偏差が10%以内であることが好ましい。
【0029】
このような球状粒子としては、例えばケイ素を含有する金属酸化物の(微)粒子、半導体(微)粒子等が挙げられる。
ケイ素を含有する金属酸化物の微粒子としては、乾燥された粉末状のシリカ微粒子、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を使用することができる。分散性の点で、有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いることが好ましい。
【0030】
前記有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)を用いる場合の有機溶媒としては、樹脂組成物中に使用する有機成分が溶解するものを用いることが好ましく、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、グリコールエーテル類が挙げられる。脱溶媒のしやすさから、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、n−プロピルアルコール等のアルコール系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系の有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ、シリカゾル、シリカ微粒子を用いることが好ましく、さらに好ましくは、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカである。特に、イソプロピルアルコールに分散されたコロイダルシリカを用いた場合は、脱溶媒後の粘度が他の溶剤系に比べて低く、粘度が低い複合体組成物を安定して作製するのに適している。
【0031】
これらの有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)、シリカ微粒子は、要求される特性を極端に損なうことのない範囲で、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤等のカップリング剤で表面処理されたものであっても良く、有機溶媒に分散させるために、界面活性剤等の分散剤を使用しているものであっても良い。
【0032】
前記半導体微粒子としては、光や電子線のようなエネルギーを吸収することにより、2つのエネルギー順位の差に反比例する波長の光を発する性質を有するものであれば、特に制限されないが、カルコゲン化物を含有する微粒子が好適に用いられる。
カルコゲン化物としては、カルコゲン(周期律表のVI族元素のうち、酸素(O)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、ポロニウム(Po)の5元素の総称)を含む化合物を称し、特に、周期律表のII族元素とVI族元素との化合物であるII−VI族化合物が好ましい。さらに好ましくは、ZnS、CdS、ZnSe、CdSe、ZnTe、CdTe、ZnOから選択される少なくとも1種である。
【0033】
前記半導体微粒子は、発行効率を増加させるため、ボーア半径の2倍よりも小さな粒子径の半導体超微粒子をマトリックス中に凝集なく均一に分散してなる微粒子にすることが好ましい。マトリックスには、種々の無機物、有機物を用いることができる。無機物としては、ケイ素系の化合物などが挙げられる。有機物としては、耐熱性の面から、ポリイミドや脂環式構造を有する樹脂などが挙げられる。マトリックス中にケイ素やチタンを含有するカップリング剤を使用することもできる。
【0034】
前記球状粒子の含有量は、特に限定されないが、前記透明フィルム全体の5〜80体積%が好ましく、特に20〜40体積%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、透明フィルム作製前の組成物の流動性、分散性が良好であるため、フィルムの製造が容易であり、透明性を維持したままの構造発色を示す透明フィルムを製造が容易にすることができる。
【0035】
このような球状粒子の一次粒子の平均粒径は、特に限定されないが、15〜400nmが好ましく、透明性と流動性とのバランスの点で、さらに好ましくは20〜150nm、最も好ましくは40〜60nmである。平均粒径が下限値未満では、作製した組成物の粘度が極端に増大するため、球状粒子の充填量が制限されるとともに分散性が低下し、十分な透明性を得ることができない場合があった。また、上限値を超えると透明性が著しく低下する場合がある。
【0036】
前記透明性樹脂と、前記球状粒子との屈折率差は、特に限定されないが、0.1以下であることが好ましく、特に0.05以下であることが好ましい。屈折率差が前記範囲内であると、特に透明性に優れる。
【0037】
前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均粒子間距離は、特に限定されないが、特に透明性と青色発色性に優れたフィルムの場合、100〜350nmであることが好ましく、特に120〜180nmであることが好ましい。透明性と緑色発色性に優れたフィルムの場合、180〜350nmであることが好ましく、特に210〜270nmであることが好ましい。また、透明性と赤色発色性に優れたフィルムの場合、250〜400nmであることが好ましく、特に300〜360nmであることが好ましい。
前記平均粒子間距離は、例えば走査型電子顕微鏡写真で評価することができる。
【0038】
また、波長300〜700nmの光線透過率を低下させないために、球状粒子には、1次粒径が400nm以上の微粒子が5%以下の割合で存在するものを用いることが好ましく、その割合が0%であることがより好ましい。
【0039】
このような透明フィルムにおいて、透明性を維持したまま構造発色を示すためには、透明フィルム中で前記球状粒子の配列が充填配列構造を有していることが好ましい。
ここで、充填配列構造とは最終的に六方最密充填構造に充填されるべく形式で粒子が充填されている様子を意味する。
ここで、充填配列構造の有無については、例えば透明複合フィルムの小角X線散乱測定により得られる小角X線散乱プロファイルにおいて、粒子径に相当するピークが少なくとも5つ以上存在し、好ましくは高次のピークまで一定間隔でピークトップが観察された場合、微粒子の1次粒子が充填配列構造を有すると判別する。
【0040】
上述した樹脂組成物には、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、熱可塑性又は熱硬化性のオリゴマーやポリマーを併用することができる。又、必要に応じて、透明性、耐溶剤性、耐液晶性、耐熱性等の特性を損なわない範囲で、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、他の無機フィラー等の充填剤等を含んでいても良い。
【0041】
本発明おける透明フィルムにおいて、透明性とは、フィルムを透過する光線量のことであり、透明性が高い複合フィルムは透過する光線量が多いことを意味する。透明性の判定は、透明複合フィルム(厚さ200μm)のD65標準光源における全光透過率を測定し、70%以上である場合に透明であると判定する。
【0042】
上述したような透明複合フィルムを製造する方法について、透明性樹脂と、硬化剤とを含む樹脂組成物を用い、球状粒子としてシリカ(シリカゾル)を用いる場合を例に挙げて説明する。
(1)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、必要に応じて、撹拌しながら減圧することにより有機溶媒を除去する方法、
(2)有機溶媒に分散されたコロイダルシリカ(シリカゾル)と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、必要に応じて、脱溶媒した後、キャストし、さらに脱溶媒させる方法、
(3)粉末状のシリカ微粒子と樹脂組成物およびその他の配合物を混合し、分散能力の高い混合装置を用いて乾燥した分散させる方法、等が挙げられる。
【0043】
これらの方法のなかにおいて球状粒子を分散させる方法が重要となるが、分散能力が高い装置としては、例えば、特殊機化工業(株)製のフィルミックスや種々のビーズミル等が挙げられる。分散能力が高い装置を使用するときは、混合又は混練中に、反応が急速に進まないように、温度が上昇しすぎないよう注意する必要がある。
【0044】
透明複合フィルムを製造する際における有機溶媒を除去するための温度は、30〜100℃に保つことが好ましく、脱溶媒スピードとのバランスでさらに好ましくは30〜70℃であり、最も好ましくは、35〜60℃である。温度を上げすぎると、流動性が極端に低下したり、ゲル状になってしまったりして、フィルム化するのが困難となる場合がある。
【0045】
有機溶媒に分散したコロイダルシリカを用いる場合、この有機溶媒を樹脂組成物中に残存させても良い。有機溶媒を含有させる場合、熱処理等の後処理工程を設け、最終的に樹脂組成物から有機溶媒を脱離させればよい。有機溶媒の樹脂組成物中における含有量は、架橋工程や熱処理等によって揮発成分を除去する工程で、発泡する、フィルムにうねりが発生する、着色するなどの問題を回避するためには、樹脂組成物全体の10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、5重量%以下であり、最も好ましくは、3重量%以下である。
【0046】
そして、叙述した樹脂組成物を、熱、光等により硬化・架橋して透明複合フィルムが得られる。
フィルム化する方法としては、複合体組成物をキャストし、必要に応じ乾燥させる方法、表面平滑性を持つガラス板、プラスチック板、金属板等の間に所望のフィルム厚さが得られるようにスペーサーを挟み、樹脂組成物を挟み込む方法等がある。後者を用いて、活性エネルギー線等で硬化させる場合は、少なくとも1方は、透明なガラス板、プラスチック板を使用する必要がある。
【0047】
樹脂組成物を架橋させる方法としては、活性エネルギー線により硬化させる方法、熱をかけて熱重合させる方法等があり、これらを併用することもできる。使用する活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。紫外線を発生させるランプとしては、例えば、メタルハライドタイプ、高圧水銀灯ランプ等が挙げられる。
【0048】
活性エネルギー線による硬化及び/又は熱重合による架橋後に高温で熱処理する場合は、その熱処理工程の中に、線膨張係数を低減する等の目的で、窒素雰囲気下又は真空状態で、200℃〜300℃、1〜24時間の熱処理工程を含ませることが好ましい。
【0049】
前記樹脂組成物中には、樹脂組成物作製時に重合反応が進行し、粘度が上昇することを防ぐ目的で、重合禁止剤を含有させても良い。硬化反応の完結、揮発分の除去をする等の目的で、さらに高温での熱処理工程を併用することが好ましい。
【0050】
(反射型カラーフィルム基板)
本発明の反射型カラーフィルム基板は、上述した透明複合フィルムで構成されているものである。このような透明複合フィルムは、着色材を使用せずに発色するので透明性、耐熱性、耐久性に優れ、具体的に電子用基板として透明板、光学レンズ、光ディスク基板、液晶表示素子用プラスチック基板、カラーフィルター用基板、有機EL表示素子用プラスチック基板、太陽電池基板、タッチパネル、光学素子、光導波路等に利用できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
1.複合体組成物の製造
前記化学式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(TO−2111;東亞合成株式会社製)5重量部、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1重量部、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部(シリカ含量15重量%、平均粒子径120nm、日産化学製)を配合し、40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製のイルガキュア184)を0.03重量部添加して溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、複合体組成物を得た。
複合体組成物中の溶剤含有量は、10%未満であった。また、複合体組成物中の球状粒子の平均粒子径は120nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、152nmであった。
複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。また、使用した透明樹脂と、球状粒子との屈折率差は、0.1以下であった。
【0053】
2.フィルム化
得られた複合体組成物を所定の温度(60〜80℃)のオーブンで加熱し、ガラス板上に作成した厚み0.4mmの枠内に注入し、上部よりガラス板をのせ枠内に複合体組成物を充填した。そして、ガラス板に挟んだ複合体組成物に、両面から約500mJ/cm2のUV光を照射して硬化させ、ガラスからフィルムを剥離した。
ガラスから剥離したフィルムを、それぞれ、真空オーブン中で、約100℃で3時間加熱後、さらに約275℃で3時間加熱し、光学フィルムを得た。
【0054】
(実施例2)
実施例1において、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部をシリカ含量33vol%、平均粒子径250nm(日産化学製)にしたものでフィルム化。シリカ体積分率は50重量%であった。また、使用した透明樹脂と、球状粒子との屈折率差は、0.1以下であった。
【0055】
(実施例3)
同様に実施例1において、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部をシリカ含量50vol%、平均粒子径250nm(日産化学製)にしたものでフィルム化。シリカ体積分率は80重量%であった。また、使用した透明樹脂と、球状粒子との屈折率差は、0.1以下であった。
【0056】
(実施例4)
実施例1〜3で作製したフィルムを積み重ねて、熱圧着し1枚のフィルムにした。
【0057】
(比較例1)
前記化学式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(TO−2111;東亞合成株式会社製)5重量部、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1重量部、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部(シリカ含量30重量%、平均粒子径10nm、日産化学製)を配合し、40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製のイルガキュア184)を0.03重量部添加して溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、複合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にした。複合体組成物中の溶剤含有量は、10%未満であった。また、複合体組成物中の球状粒子の平均粒子径は10nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、336nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。また、使用した透明樹脂と、球状粒子との屈折率差は、0.1以下であった。
【0058】
(比較例2)
化学式(2)において、X、R3、R4がすべて水素で、pが0である構造を持つノルボルナンジメチロールジアクリレート(TO−2111;東亞合成株式会社製)5重量部、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン1重量部、イソプロピルアルコール分散型コロイダルシリカ20重量部(シリカ含量30重量%、平均粒子径300nm、日本触媒製)を配合し、40℃で撹拌しながら減圧下揮発分を除去した。その後、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバスペシャリティケミカル製のイルガキュア184)を0.03重量部添加して溶解させた後、さらに減圧下揮発分を除去し、複合体組成物を得た以外は、実施例1と同様にした。複合体組成物中の溶剤含有量は、10%未満であった。また、複合体組成物中の球状粒子の平均粒子径は300nmであり、球状粒子の平均粒子間距離は、650nmであった。複合体組成物の硬化アニール後の400℃、1時間加熱後の重量残さからシリカ体積分率は33vol%であった。また、使用した透明樹脂と、球状粒子との屈折率差は、0.1以下であった。
【0059】
各実施例および比較例で得られた複合体組成物について、以下の評価を行った。評価項目を内容と共に示す。得られた結果を表1に示す。
1.構造発色の有無
構造発色の有無は、全光線透過率の波長依存性で評価した。全光線透過率の波長依存性は、分光光度計U3200(日立製作所製)で測定した。透明フィルムの波長分散の光線透過率において構造発色する青色の波長領域(300〜500nm)の光線透過率において反射率が30%以上だったもの、緑色の波長領域(500〜600nm)の光線透過率において反射率が30%以上だったもの、赤色の波長領域(600〜750nm)の光線透過率において反射率が30%以上だったもの、をそれぞれ構造発色が有ったとした。
【0060】
2.透明性(ヘイズおよび全光線透過率)
透明性(ヘイズおよび全光線透過率)は、日本電色工業株式会社製NDH2000を用いて測定した。
【0061】
3.球状粒子の平均粒子径
球状粒子の平均粒子径は、SPring8高輝度放射光、BL08B2ラインを使用して波長1.5Å、カメラ長6mに調節したイメージングプレート検出器を備えた小角散乱測定装置で測定した。図1に示すqとI(q)のプロット図からリガク社製のNANO−Solverソフトウェアを用いて球状粒子の平均粒子径を算出した。
【0062】
【表1】

【0063】
表1から明らかなように、実施例1〜3は、それぞれのの光線透過率において反射率が3
%以上であり発光(構造発色)していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性樹脂と、球状粒子とを含む透明フィルムであって、
前記球状粒子が、平均粒子径40〜200nmで、該透明フィルム中に分散していることを
特徴とする透明フィルム。
【請求項2】
前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均粒径と、粒子間距離との関係が、
(1)平均粒子径40〜60nm、粒子間距離が120〜180nmである透明フィルム
(2)平均粒子径70〜90nm、粒子間距離が210〜270nmである透明フィルム
(3)平均粒子径100〜120nm、粒子間距離が300〜360nmである透明フィルムの、3つの透明フィルムの中で少なくとも2つを積層した積層フィルムである請求項1の透明フィルム。
【請求項3】
前記球状粒子の含有量は、透明フィルム全体の5〜80体積%である請求項1または2に記載の透明フィルム。
【請求項4】
前記透明フィルム中に分散している前記球状粒子の平均の粒子間距離は、120〜360nmである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項5】
前記透明性樹脂は、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂のいずれか一方である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項6】
前記球状粒子は、ケイ素を含有する金属酸化物の粒子である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項7】
前記透明性樹脂と、前記球状粒子との屈折率差が、0.1以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の透明フィルム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透明フィルムで構成されてなることを特徴とする反射型カラーフィルム基板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−118321(P2012−118321A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268335(P2010−268335)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】