説明

反射性物品及びその製造方法

【課題】高温で反射性を維持する反射性物品を提供する。
【解決手段】基材(20)、反射金属層(30)及び基材と反射金属層との間にヘイズ防止層(40)を含んでなり、この基材(20)は、約140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度、及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有する非晶質熱可塑性樹脂を含み、またヘイズ防止層(40)は、1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び約3×10psi以上の引張弾性を有する物質を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性基材と反射金属層からなる反射性物品は、現在、自動車用ヘッドライトの反射板を始めとして各種の製品用途に用いられている。かかる物品は、周囲温度では良好に機能し得るが、ある種の製造及び使用条件で遭遇する高温では、反射コーティングにおけるヘイズの生成によってその反射性が損なわれ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第2999835号明細書
【特許文献2】米国特許第3153008号明細書
【特許文献3】米国特許第3169121号明細書
【特許文献4】米国特許第3306874号明細書
【特許文献5】米国特許第3306875号明細書
【特許文献6】米国特許第3334154号明細書
【特許文献7】米国特許第3642946号明細書
【特許文献8】米国特許第3847867号明細書
【特許文献9】米国特許第3850885号明細書
【特許文献10】米国特許第3852242号明細書
【特許文献11】米国特許第3855178号明細書
【特許文献12】米国特許第3983093号明細書
【特許文献13】米国特許第3986997号明細書
【特許文献14】米国特許第4001184号明細書
【特許文献15】米国特許第4011200号明細書
【特許文献16】米国特許第4038343号明細書
【特許文献17】米国特許第4123436号明細書
【特許文献18】米国特許第4131575号明細書
【特許文献19】米国特許第4156069号明細書
【特許文献20】米国特許第4210841号明細書
【特許文献21】米国特許第4348462号明細書
【特許文献22】米国特許第4363844号明細書
【特許文献23】米国特許第4491508号明細書
【特許文献24】米国特許第4624870号明細書
【特許文献25】米国特許第4663421号明細書
【特許文献26】米国特許第5034458号明細書
【特許文献27】米国特許第5346767号明細書
【特許文献28】米国特許第5378284号明細書
【特許文献29】米国特許第5447767号明細書
【特許文献30】米国特許第5503934号明細書
【特許文献31】米国特許第5506038号明細書
【特許文献32】米国特許第5508092号明細書
【特許文献33】米国特許第5527596号明細書
【特許文献34】米国特許第5849087号明細書
【特許文献35】米国特許第6110544号明細書
【特許文献36】米国特許第6347016号明細書
【特許文献37】米国特許第6355723号明細書
【特許文献38】米国特許第6355723号明細書
【特許文献38】米国特許第6379757号明細書
【特許文献39】米国特許第6379757号明細書
【特許文献32】米国特許第6397776号明細書
【特許文献33】米国特許第6420032号明細書
【特許文献34】米国特許第6436503号明細書
【特許文献35】米国特許第6520650号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2002/0048691号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2002/0094455号明細書
【特許文献36】米国特許出願公開第2002/0197438号明細書
【特許文献37】米国特許出願公開第2003/0044564号明細書
【特許文献37】米国特許出願第10/638099号明細書
【特許文献38】米国特許出願第10/638094号明細書
【特許文献40】米国特許出願第10/638145号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Second Edition,Vol.16,pp.272−281(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、高温でその反射性を維持する反射性物品に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態は耐熱性の向上した反射性物品であり、この物品は、ASTM D648に従って66psiで測定して約140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有する非晶質熱可塑性樹脂を含む基材、反射金属層及び基材と反射金属層との間に挟まれたヘイズ防止層を含んでおり、このヘイズ防止層は、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して約3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含む。
【0007】
その他の実施形態、例えば反射性物品の製造方法については以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、熱可塑性基材20、反射金属層30及びヘイズ防止層40からなる反射性物品10の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一実施形態は、ASTM D648に従って66psiで測定して約140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有する非晶質熱可塑性樹脂を含む基材、反射金属層及び基材と反射金属層との間に挟まれたヘイズ防止層を含んでなる反射性物品であって、このヘイズ防止層は、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して約3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含む。
【0010】
自動車用ヘッドライトの反射板の商用開発中、熱可塑性基材の直接金属化によって製造された反射板は、最初は優れた反射性を示すが、使用条件下では反射面のヘイズが生じ、その結果その部品の故障に至るのが観察されることがあった。各種材料に対する広範な研究により、本発明者は、熱可塑性基材と反射金属層との間に、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して約3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含むヘイズ防止層を挟むことによって、高温条件下でのヘイズの生成を低減又は排除することができるということを発見した。
【0011】
基材は、ASTM D648に従って66psiで測定して約140℃以上、好ましくは約170℃以上、さらに好ましくは約185℃以上、さらに一段と好ましくは約200℃以上の熱変形温度を有する非晶質熱可塑性樹脂を含む。非晶質熱可塑性樹脂はまた、1.7g/mL未満、好ましくは1.6g/mL未満、さらに好ましくは1.5g/mL未満の密度を有する。非晶質熱可塑性樹脂の密度はASTM D792に従って25℃で決定することができる。従って、非晶質熱可塑性樹脂は、反射性物品を形成するのにしばしば使用されているバルクモールディングコンパウンドより密度が低い。反射性物品がヘッドライトの反射板である場合、この非晶質樹脂を使用するとヘッドライトの重量が低減することにより重量低下となり、そのため車両の燃料1ガロン当たりのマイル数を大きくできる。さらに、非晶質熱可塑性樹脂は、有機揮発分含量がASTM D4526に従って測定して1000重量ppm未満、好ましくは750重量ppm未満、さらに好ましくは500重量ppm未満である。ASTM D4526に規定されているように、揮発分は、90℃の熱可塑性樹脂と平衡になっているヘッドスペースから試料を採取し、水素炎イオン化検出を用いて定量することによって決定される。従って、有機揮発分含量は、高温でガスを発生し反射金属層の反射率を低下させる高濃度の残留モノマーを含有することがあるバルクモールディングコンパウンドより低い。適切な熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルイミドスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテルスルホン、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリアリーレートなど及びこれらの混合物がある。これらの熱可塑性樹脂及びその製造方法は当技術分野で公知である。
【0012】
好ましいポリエーテルイミドには、次式(I)の構造単位を含むものがある。
【0013】
【化1】


式中、二価T部分は式(I)のそれぞれのアリールイミド部分のアリール環の3,3′、3,4′、4,3′又は4,4′位置間を橋かけしており、Tは−O−又は式−O−Z−O−の基であり、Zは次式(II)からなる群から選択される二価基である。
【0014】
【化2】


式中、Xは次式(III)の二価基からなる群から選択される基である。
【0015】
【化3】


式中、yは1〜約5の整数である。式(II)中のqは0又は1である。また、式(I)中のRは、(a)6〜約20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基及びそのハロゲン化誘導体、(b)2〜約20個の炭素原子を有するアルキレン基、(c)3〜約20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、並びに(d)次の一般式(IV)の二価基から選択される二価有機基である。
【0016】
【化4】


式中、Qは共有結合又は次式(V)からなる群から選択される基である。
【0017】
【化5】


式中、y′は1〜約5の整数である。
【0018】
上記式で、X又はQが二価スルホン結合からなる場合、そのポリエーテルイミドはポリエーテルイミドスルホンと考えられる。
【0019】
一般に、有用なポリエーテルイミドは、6.6kgの錘を用いる米国材料試験協会(ASTM)D1238により337℃で測定して約0.1〜約10g/minのメルトインデックスを有する。
【0020】
好ましい実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、ポリスチレン標準を用いるゲルクロマトグラフィーで測定して約10000〜約150000原子質量単位(AMU)の重量平均分子量を有する。かかるポリエーテルイミド樹脂は通例、m−クレゾール中25℃で測定して約0.2dL/gより大きい固有粘度を有する。約0.35dL/g以上の固有粘度が好ましい。また、約0.7dL/g以下の固有粘度が好ましい。
【0021】
ポリエーテルイミド樹脂を製造する多くの方法の中には、例えば、Heathらの米国特許第3847867号、Takekoshiらの同第3850885号、Whiteの同第3852242号及び同第3855178号、並びにWilliamsらの同第3983093号に記載されているものがある。
【0022】
好ましい実施形態では、ポリエーテルイミド樹脂は、各Rが独立にパラフェニレン又はメタフェニレンであり、Tが次式(VI)の二価基である式(I)の構造単位を含む。
【0023】
【化6】


特に好ましいポリエーテルイミド樹脂は、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とパラフェニレンジアミン及びメタフェニレンジアミンの1種以上との溶融重合により形成される反応生成物である。ポリエーテルイミドはGeneral Electric CompanyからULTEM(登録商標)樹脂として、例えばULTEM(登録商標)1000、ULTEM(登録商標)1010、ULTEM(登録商標)6000、ULTEM(登録商標)XH6050及びULTEM(登録商標)CRS5000として市販されている。ポリエーテルイミドポリマーの追加の記載は、例えば、ASTM 5205の「ポリエーテルイミド(PEI)材料の標準分類系」に見られる。
【0024】
熱可塑性基材に使用するのに適切なポリスルホンは、1以上のスルホン基を有する繰返し単位を含んでなるポリマーである。ポリスルホン及びその製造方法は当技術分野で周知であり、例えばGrabowskiらの米国特許第3642946号及びKirk−Othmer、Encyclopedia of Chemical Technology、Second Edition、Vol.16、pp.272−281(1968)に記載されている。このタイプの代表的なポリマーとしては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン及びポリフェニルスルホンがある。
【0025】
本発明で利用することができるポリスルホンは、次の一般式(VII)で表される1以上の繰返し構造単位を含有している。
【0026】
【化7】


式中、各Arは独立に非置換フェニレン又はフェニル、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ハロゲン、ニトロなどで置換されたフェニレンであり、各Aは独立に炭素−炭素直接結合、C〜C12アルキリデン、C〜Cシクロアルキリデン、カルボニル、スルホキシド、イオウ、スルホン、アゾ、イミノ、酸素などである。
【0027】
式(VII)のポリスルホンは好ましくはビスフェノールと反応したジクロロジフェニルスルホンから誘導される。式Iで表されるスルホンの第2のグループは各Arがフェニレンで、Aがスルホンであるものである。式Iで表されるポリスルホンの第3の主要なグループは、各Arがフェニレンで、Aが酸素であるもの、すなわち、ポリアリールエーテルスルホンである。Arがフェニレンである場合、好ましくはメタ又はパラであるべきであり、環位置がC〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基などで置換されていてもよい。特に有用なポリスルホンは、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテルと反応した4,4−ビフェニルジスルホニルクロリドのようなジスルホニルクロリドから誘導されたものである。
【0028】
ポリフェニレンエーテルスルホンを始めとするポリアリールエーテルスルホンは少なくとも以下の繰返し構造単位を含有している。
【0029】
【化8】


式中、R、R及びRは独立にC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル及びハロゲン基から選択され、WはC〜Cアルキレン、C〜Cアルキリデン、4〜約16個の環炭素原子を含有するシクロアルキレン又はシクロアルキリデン基などであり、bは0又は1であり、n、n1及びn2は独立に0、1、2、3又は4である。ポリスルホンに関する追加の記載は、例えば、ASTM D6394、Standard Specification for Sulfone Plastics(SP)に見られる。
【0030】
適切なポリ(アリーレンエーテル)としては、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)コポリマー、グラフトコポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー及びアルケニル芳香族化合物、ビニル芳香族化合物及びポリ(アリーレンエーテル)などのブロックコポリマー、並びにこれらの1種以上を含む組合せなどがある。ポリ(アリーレンエーテル)は、次式の構造単位を複数含む公知のポリマーである。
【0031】
【化9】


式中、各構造単位で、各Qは独立にハロゲン、第一若しくは第二C〜Cアルキル、フェニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアミノアルキル、C〜C炭化水素オキシ又は2個以上の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているC〜Cハロ炭化水素オキシであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一若しくは第二C〜Cアルキル、フェニル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアミノアルキル、C〜C炭化水素オキシ又は2個以上の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているC〜Cハロ炭化水素オキシである。好ましくは、各Qがアルキル又はフェニル、殊にC〜Cアルキルであり、各Qが独立に水素又はメチルである。
【0032】
ホモポリマーとコポリマーの両方のポリ(アリーレンエーテル)が包含される。好ましいホモポリマーは2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものである。適切なコポリマーとしては、例えば、かかる単位を2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて含むランダムコポリマー又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールの共重合から誘導されたコポリマーがある。2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールのかかるコポリマー、殊に2,3,6−トリメチルフェノールから誘導された単位を約5〜約50重量%含有するものは、その耐熱性のために特に好ましい。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフト化することにより製造された部分を含有するポリ(アリーレンエーテル)、並びに低分子量ポリカーボネート、キノン類、複素環式化合物及びホルマールのようなカップリング剤を2つのポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と公知の方法で反応させてより高分子量のポリマーを生成させてなるカップル化ポリ(アリーレンエーテル)も包含される。さらに、本発明のポリ(アリーレンエーテル)には以上のものの任意の組合せ、例えば、ポリ(アリーレンエーテル)とポリスチレン樹脂のブレンドが包含される。
【0033】
ポリ(アリーレンエーテル)は一般に、ゲルクロマトグラフィーで決定される数平均分子量が約3000〜約40000原子質量単位(AMU)で、重量平均分子量が約20000〜約80000AMUである。また、ポリ(アリーレンエーテル)は一般にクロロホルム中25℃で測定して約0.2〜約0.6dL/gの固有粘度を有することができる。この範囲内で、固有粘度は好ましくは約0.5dL/g以下、さらに好ましくは約0.47dL/g以下であろう。また、この範囲内で、固有粘度は好ましくは約0.3dL/g以上であろう。高い固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)と低い固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)を組み合わせて利用することも可能である。2つの固有粘度を使用する場合、正確な比の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び目的とする最終の物理的性質に依存する。
【0034】
ポリ(アリーレンエーテル)は通例、2,6−キシレノール又は2,3,6−トリメチルフェノールのような1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって製造される。一般にかかるカップリングには触媒系が使用される。これらの触媒系は通例、銅、マンガン又はコバルトの化合物のような1種以上の重金属化合物を、通常は様々な他の物質と組み合わせて含有する。ポリ(アリーレンエーテル)を製造するのに適切な方法は、例えば、Hayの米国特許第3306874号及び同第3306875号、並びにYonemitsuらの同第4011200号及び同第4038343号に記載されている。
【0035】
適切なポリカーボネートは二価フェノールをホスゲン、ハロホルメート又はカーボネートエステルのようなカーボネート前駆体と反応させることによって製造することができる。一般に、かかるカーボネートポリマーは次式の繰返し構造単位を有する。
【0036】
【化10】


式中、Aはポリマー生成反応に使用した二価フェノールの二価芳香族基である。好ましくは、本発明の樹脂混合物を提供するのに使用されるカーボネートポリマーは固有粘度が(塩化メチレン中25℃で測定して)約0.30〜約1.00dL/gである。かかる芳香族カーボネートポリマーを提供するのに使用される二価フェノールは、各々が芳香核の炭素原子に直接結合している2つのヒドロキシ基を官能基として含有する単核又は多核の芳香族化合物であることができる。典型的な二価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4′−(ジヒドロキシジフェニル)メタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ジヒドロキシジフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジエチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、5′−クロロ−2,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジクロロジフェニルエーテル、4,4−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどがある。
【0037】
ポリカーボネート樹脂の製造に使用するのに適切なその他の二価フェノールは、例えば、Goldbergの米国特許第2999835号、Kimの同第3334154号及びAdelmannらの同第4131575号に記載されている。
【0038】
これらの芳香族ポリカーボネートは、例えば、上記文献及びHolubらの米国特許第4123436号に記載の方法に従って上記のように二価フェノールをホスゲンのようなカーボネート前駆体と反応させることにより又はFoxの米国特許第3153008号に開示されているようなエステル交換プロセスにより、並びに当業者に公知のその他のプロセスのような公知のプロセスによって製造することができる。
【0039】
また、ホモポリマーではなくカーボネートコポリマー又は共重合体が望ましい場合には、2種以上の異なる二価フェノールを使用することも、或いは二価フェノールとグリコール又はヒドロキシ−若しくは酸−末端終止ポリエステル若しくは二塩基酸とのコポリマーを使用することも可能である。Scottの米国特許第4001184号に記載されているような枝分れポリカーボネートも有用である。また、線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも利用することができる。さらに、以上の材料の任意のブレンドを本発明の実施の際に使用して芳香族ポリカーボネートを提供してもよい。
【0040】
これらのポリカーボネートは枝分れでも線状でもよく、一般にゲルクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量が約10000〜約200000AMU、好ましくは約20000〜約100000AMUである。本発明のポリカーボネートは、性能を改良するために各種の末端基を使用することができる。クミルフェノールのような嵩高いモノフェノールが好ましい。
【0041】
適切なポリカーボネートとして、さらに、アルキルシクロヘキサン単位を含有するビスフェノールから誘導されたものがある。かかるポリカーボネートは次式の構造に対応する構造単位を有する
【0042】
【化11】


式中R〜Rは各々独立に水素、C〜C12ヒドロカルビル又はハロゲンであり、R〜Rは各々独立に水素、C〜C12ヒドロカルビルである。本明細書で使用する「ヒドロカルビル」とは、炭素と水素のみを含有する残基を指す。この残基は脂肪族又は芳香族、直鎖状、環式、二環式、枝分れ、飽和又は不飽和であり得る。しかし、このヒドロカルビル残基は、当該置換基の炭素及び水素原子に加えてヘテロ原子を含有していてもよい。すなわち、かかるヘテロ原子を含有するとして特に記載されている場合、ヒドロカルビル残基はカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含有していてもよいし、また当該ヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含有していてもよい。アルキルシクロヘキサンを含有するビスフェノール、例えば2モルのフェノールと1モルの水素化イソホロンの反応生成物は、高いガラス転移温度と高い熱変形温度を有するポリカーボネート樹脂を作成するのに有用である。かかるイソホロンビスフェノール含有ポリカーボネートは次式の構造に対応する構造単位を有する。
【0043】
【化12】


式中、R〜Rは上記定義の通りである。これらのイソホロンビスフェノール系樹脂、例えば、非−アルキルシクロヘキサンビスフェノールを含有して作成されたポリカーボネートコポリマー及びアルキルシクロヘキシルビスフェノールを含有するポリカーボネートと非−アルキルシクロヘキシルビスフェノールポリカーボネートとのブレンドは、Bayer Co.によりAPECという商標で供給されており、また例えばSeriniらの米国特許第5034458号に記載されている。
【0044】
適切な熱可塑性樹脂にはさらに「ポリアリーレート」が包含され、これは芳香族ジカルボン酸とビスフェノールのポリエステルを指す一般用語である。アリールエステル結合に加えてカーボネート結合を含むポリエステル−カーボネートともいわれるポリアリーレートコポリマーも適している。これらの樹脂は単独で、若しくは互いに組み合わせて又はさらに好ましくはビスフェノールポリカーボネートと組み合わせて使用できる。これらの樹脂は溶液中又は溶融重合により芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とビスフェノール及びその誘導体から製造することができる。適切なジカルボン酸はイソフタル酸及びテレフタル酸、これらのエステル又は酸塩化物である。好ましいビスフェノールはビスフェノールA又はその二酢酸誘導体である。ポリエステルカーボネート及びポリアリーレートはまた、ヒドロキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸から誘導された結合を含有していてもよい。最も好ましいポリエステル−カーボネート及びポリアリーレートはビスフェノールAと、イソフタル酸とテレフタル酸の混合物とから誘導された非晶質の樹脂である。適切なポリアリーレート及びその製造は、例えば、Markの米国特許第4663421号に記載されている。適切なポリエステル−カーボネート及びその製造は、例えば、Goldbergの米国特許第3169121号及びPrevorsekらの同第4156069号に記載されている。
【0045】
一実施形態では、基材は、約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、さらに好ましくは約90重量%以上、さらに一段と好ましくは約95重量%以上の熱可塑性樹脂を含んでいる。
【0046】
一実施形態では、基材は、熱可塑性樹脂に加えて、例えば、タルク、雲母、粘土、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、ウォラストナイトなど又はこれらの混合物のような無機充填材を含んでいる。
【0047】
別の実施形態では、基材は無機充填材を実質的に含まない。本明細書中で、「無機充填材を実質的に含まない」とは、無機充填材を0.1重量%未満しか含むものとして定義される。基材は無機充填材を0.01重量%未満しか含むのが好ましい。
【0048】
基材樹脂はさらに、溶融加工、成形又は部品安定性を改良する添加剤を含有していてもよい。有用な添加剤としては、脂肪族エステル、例えばペンタエリトリトールテトラステアレート又はポリオレフィン、例えば高密度ポリエチレンのような滑剤及び離型剤がある。アリールホスファイト及びヒンダードフェノールのような安定剤も基材樹脂とブレンドすることができる。その他の添加剤としては、静電気の蓄積を低減する化合物がある。基材中に使用する場合、かかる添加剤は、熱的に安定であり、低い揮発性を示し、そして金属化された物品中でヘイズを生じることのないように選択するのが重要である。
【0049】
基材の寸法は反射性物品の用途によって決まる。例えば、反射性物品がヘッドライトの反射板である場合、その厚さはヘイズ防止層及び反射金属層に対して垂直な寸法で約0.1〜約20mmであり得る。この範囲内で、厚さは好ましくは約0.5mm以上、さらに好ましくは約1mm以上であろう。またこの範囲内で、厚さは好ましくは約10mm以下、さらに好ましくは約8mm以下であろう。
【0050】
反射性物品は反射金属層を含んでいる。反射金属層に使用するのに適切な金属としては、周期表の第IIIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII、IB及びIIB族の金属がある。これらの金属の混合物及び合金も使用できる。好ましい金属としては、アルミニウム、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、銅など及び以上の金属を1種以上含む合金がある。アルミニウム及びその合金は反射金属層として特に好ましい金属である。
【0051】
反射金属層は、スパッタリング、真空金属蒸着、アーク蒸着、プラズマ化学蒸着、熱金属蒸着及びイオンメッキを始めとして当技術分野で公知の方法を用いて形成することができる。
【0052】
反射金属層は約1〜約1000nmの厚さを有し得る。この範囲内で、厚さは好ましくは約10nm以上、さらに好ましくは約20nm以上であろう。またこの範囲内で、厚さは好ましくは約500nm以下、さらに好ましくは約200nm以下であろう。
【0053】
反射性物品は基材と反射金属層との間に挟まれたヘイズ防止層を含んでいる。このヘイズ防止層は、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率と、25℃でASTM D638に従って測定して約3×10psi(2068MPa)以上の引張弾性率を有する物質を含んでいる。この体積抵抗率は好ましくは1×10−2Ωcm以上、さらに好ましくは1Ωcm以上であり得る。引張弾性率は好ましくは約5×10psi(3447MPa)以上、さらに好ましくは約8×10psi(5516MPa)以上、さらに一段と好ましくは約1×10psi(6895MPa)以上であり得る。好ましい実施形態では、ヘイズ防止層は、基材中に使用した非晶質樹脂の熱変形温度で測定して3×10psi(2068MPa)以上の引張弾性率を有する。この実施形態で、基材が1種より多くの非晶質樹脂を含んでいる場合、引張弾性率はあらゆる非晶質樹脂の中の最低の熱変形温度で測定する。ヘイズ防止層は好ましくは非金属であり、プラズマ重合したヘイズ防止層が極めて好ましい。上記抵抗率の制限を満たすことに加えて、非金属ヘイズ防止層は、ゼロ価の金属を合計で1重量%未満含むのが好ましい。
【0054】
一実施形態では、ヘイズ防止層はプラズマ重合したオルガノシリコーンを含んでいる。ヒドロキシ炭化ケイ素又はケイ素オキシ炭素コーティングといわれることもあるプラズマ重合したオルガノシリコーンは、次式を有するケイ素前駆体のプラズマ蒸着の生成物である。
【0055】
【化13】


式中、各Rは独立に水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルアルキル、C〜C18アリールなどであり、nは0〜約100であり、mは1〜約100であり、Xは−O−又は−NH−である。
【0056】
好ましいオルガノシリコーン化合物としては、次式のものなど及びこれらの混合物がある。
【0057】
【化14】

【0058】
【化15】


オルガノシリコーンのプラズマ重合は、コーティング中に取り込まれ得る小量の酸素の存在下で行うことができる。プラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ低減層は、ラジオ周波数(RF)のプラズマ源を用いるプラズマ支援又は助長化学蒸着(PECVD、PACVD)、マイクロ波(MW)、誘導結合プラズマ(ICP)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、中空カソード、熱プラズマ、拡大熱プラズマ(ETP)及びプラズマアーク又はジェットを始めとする各種のプラズマ蒸着技術で形成することができる。好ましい実施形態では、ヘイズ低減層は、Iacovangeloの米国特許第6420032号及びYangらの同第6397776号に記載されているようにETPによって蒸着させる。
【0059】
一実施形態では、ヘイズ防止層は、ヘイズ防止層の総重量を基準にして約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、さらに好ましくは約90重量%以上、さらに一段と好ましくは約95重量%以上のプラズマ重合したオルガノシリコーンを含んでいる。
【0060】
別の実施形態では、ヘイズ防止層はダイヤモンド様炭素を含んでいる。ダイヤモンド様炭素を含むヘイズ防止層は、例えばKnappらの米国特許第5506038号、並びにKimockらの同第5527596号及び同第5508092号に記載されているように有機モノマーのプラズマ−支援化学蒸着で形成することができる。
【0061】
別の実施形態では、ヘイズ防止層は、シラノール、アクリル又はメタクリルから誘導されたポリマー系に分散したコロイド状シリカを含んでなるコロイド状シリカ組成物を含んでいる。例えば、コロイド状シリカ組成物は、アルコール−水媒質中に分散したコロイド状シリカとヒドロキシル化シルセスキオキサンの酸性分散物であり得る。より特定的には、コーティング組成物は、式RSi(OH)を有するシラノールの低級脂肪族アルコール−水溶液に分散したコロイド状シリカの分散物であり得る。ここで、式中のRは例えばC〜Cアルキル、ビニル、3,3,3−トリフルオロプロピル、γ−グリシドキシプロピル、γ−メタクリルオキシプロピルなどでよい。好ましくは、シラノールの70パーセント以上がCHSi(OH)である。この組成物は、10〜70重量%のコロイド状シリカと30〜90重量%のシラノールの部分的縮合物(すなわち、ヒドロキシル化シルセスキオキサン)とから実質的になる固形分を例えば10〜50重量%含み得る。また、この組成物はpHを3.0〜6.0の範囲にするのに充分な酸を含有している。適切なコーティング組成物とその製造は、例えば、Clarkの米国特許第3986997号及びTilleyらの同第5346767号に記載されている。
【0062】
別の例として、コロイド状シリカ組成物は、水酸化アンモニウムで安定化されたコロイド状シリカ約10〜70重量%と、式R′Si(OR)のオルガノトリアルコキシシランから誘導された部分的縮合物約30〜90重量%とを含んでなる約10〜50重量%の固形分が水/脂肪族アルコール混合物に分散してなるシリカ含有コーティング組成物であり得る。ここで、式中のR′は、例えば、C〜Cアルキル、C〜C13アリールなどでよく、Rは、例えば、C〜Cアルキル、C〜C20アリールなどでよい。この組成物はpHが約7.1〜約7.8である。適切なコーティング組成物とその製造は、例えば、Blairの米国特許第4624870号及びTilleyらの同第5346767号に記載されている。
【0063】
第3の例として、コロイド状シリカ組成物は、約1〜約60重量%のコロイド状シリカ、約1〜約50重量%のアクリル酸シリルの加水分解により生成した物質及び約25〜約90重量%のアクリレートモノマーを含んでなる紫外光硬化性コーティングであり得る。この組成物は、場合によりさらに、約0.1〜約5重量%のUV光開始剤を含んでいてもよい。好ましい組成物は、水性コロイド状シリカ、2−メタクリルオキシ−プロピルトリメトキシシラン、ヘキサンジオールアクリレート及び光増感量の光開始剤から誘導される。適切な組成物とその製造は、例えば、Olsonらの米国特許第4491508号及びTilleyらの同第5346767号に記載されている。
【0064】
第4の例として、コロイド状シリカ組成物は、100重量部のコロイド状シリカ、5〜500重量部のアクリルオキシ官能性シラン又はグリシドキシ官能性シラン、10〜500重量部の非−アクリル酸シリル及び触媒量の紫外光感光性光開始剤を含んでなる紫外光硬化性コーティングであり得る。好ましい組成物は、水性コロイド状シリカ、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサンジオールジアクリレート、グリシジルオキシ官能性シラン及び陽イオン性光開始剤からなる。これらの組成物とその製造は、Chungの米国特許第4348462号、Olsonの同第4491508号及びTilleyらの同第5346767号に開示されている。
【0065】
一実施形態では、ヘイズ防止層は、総重量を基準にして約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、さらに好ましくは約90重量%以上、さらに一段と好ましくは約95重量%以上のコロイド状シリカ組成物を含んでいる。
【0066】
一実施形態では、ヘイズ防止層は熱硬化性樹脂を含む。適切な熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ポリエステル樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ノボラック樹脂、メラミン樹脂などがある。かかる樹脂は当技術分野で周知であり、市販されている。
【0067】
一実施形態では、ヘイズ防止層は、このヘイズ防止層の総重量を基準にして約50重量%以上、好ましくは約80重量%以上、さらに好ましくは約90重量%以上、さらに一段と好ましくは約95重量%以上の高い引張弾性率の熱硬化性樹脂を含む。
【0068】
ヘイズ防止層の厚さはその組成に依存するが、一般に約10nm〜約100μmである。この範囲内で、厚さは好ましくは約20nm以上、さらに好ましくは約40nm以上であろう。またこの範囲内で、厚さは好ましくは約50μm以下、さらに好ましくは約10μm以下であろう。ヘイズ防止層に使用する物質によっては、より薄いヘイズ防止層を使用することが可能であろう。例えば、ヘイズ防止層がプラズマ重合したオルガノシリコーンを含む場合、厚さは100nm未満、好ましくは90nm未満、さらに好ましくは80nm未満、さらに一段と好ましくは70nm未満であり得る。
【0069】
基材はヘイズ防止層を直接設けるのに十分適しているが、ヘイズ防止層を設ける前に基材をプライマーでプレコートすることも可能である。また、反射性物品を透明な堅い保護層でさらにコートして反射金属層を擦過、酸化又は関連する問題から保護することも有利であろう。保護層は、ASTM D1003に従ってnm単位で測定して90%より大きい透過率を示すのが好ましい。保護層は、好ましくは、ASTM D1925に従って測定して5未満の黄色度指数を示し得る。保護性の金属酸化物層の適切な組成及び製造方法は、例えば、Yangらの米国特許第6110544号及びIacovangeloの同第6379757号に記載されている。従って、一実施形態では、反射性物品は基材、ヘイズ防止層、反射層及び保護層を有しており、ヘイズ防止層は基材と反射層に挟まれており、反射層はヘイズ防止層と保護層の間に挟まれている。
【0070】
好ましい実施形態では、反射性物品は、ASTM D523に従って測定して80%以上、さらに好ましくは約85%以上、さらに一段と好ましくは約90%以上の反射率を有する表面を含んでいる。極めて好ましい実施形態では、反射性物品は、基材中の全ての熱可塑性樹脂の最低の熱変形温度に15分曝露した後80%以上、さらに好ましくは約85%以上、さらに一段と好ましくは約90%以上の反射率を有する表面を含んでいる。
【0071】
図1に、反射性物品10の部分の分解斜視図を示す。ヘイズ防止層40が基材20と反射金属層30との間に挟まれている。
【0072】
反射性物品は、例えば、自動車用ヘッドライトの反射板、映写用電球に組み込まれた反射板、あらゆる形状及び曲率のミラーとして使用できる。ヘッドライト反射板及びその製造方法は、例えば、Vodickaらの米国特許第4210841号、Maasらの同第5503934号及びvan Baalらの同第6355723号に記載されている。
【0073】
その単純さのために好ましい実施形態では、反射性物品は、ASTM D648に従って66psiで測定して約140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有する非晶質熱可塑性樹脂を含む基材、反射金属層及び基材と反射金属層との間に挟まれたヘイズ防止層から実質的になり、ここでヘイズ防止層は25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して約3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含んでいる。
【0074】
好ましい実施形態では、反射性物品は、約170℃以上のガラス転移温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有するポリスルホン又はイソホロンビスフェノール含有ポリカーボネート樹脂を含む基材、アルミニウムを含む反射金属層及び基材と反射金属層との間に挟まれたプラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層を含んでおり、ここでヘイズ防止層は、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−2Ωcm以上の体積抵抗率及びASTM D638に従って測定して約5×10psi以上の引張弾性率を有するプラズマ重合したオルガノシリコーンを含んでいる。
【0075】
別の実施形態は、基材の表面にヘイズ防止層を設け、このヘイズ防止層の表面に反射金属層を設けることを含んでなる反射性物品の製造方法であり、ここでヘイズ防止層は、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及びASTM D638に従って測定して約3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含んでおり、基材は、ASTM D648に従って測定して約140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有する非晶質熱可塑性樹脂を含んでいる。
【実施例】
【0076】
以下の非限定実施例により本発明をさらに例証する。本発明の実施例は数字で示し、比較例は文字で示す。
【0077】
比較例A、実施例1〜3
射出成形したポリエーテルイミド(GE Plastics Co.のULTEM 1010)の直径102mm×厚さ3.2mmのディスクを、以下のプロセスを用いてコートした。試料を真空チャンバー内でポンプで減圧し、3.0kWの出力設定で180秒間0.023トルでグロークリーニングした(glow cleaned)。これらの部品を、チャンバー内にヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を導入しプラズマを発生させることにより作成したヘイズ低減性のプラズマ重合したオルガノシリコーンコーティングでプレコートした。圧力は0.027〜0.036トルで、出力は3.2キロワット(kW)であった。プラズマ重合したオルガノシリコーンコーティングの時間を2〜4〜8分で変えて厚さ約40〜約145nmのプラズマ重合したオルガノシリコーンコーティングを得た。次に、これらの部品を0.00005トルにおいて約100nmのアルミニウムでコートした。次いで、金属化後の保護トップコートを0.027トル、出力3.2kW、180秒で施した。コートした試料を次に3.2kW、0.018トルで180秒間ポストグローに供し、チャンバーから取り出した。
【0078】
プラズマ重合したオルガノシリコーンでコートした試料のヘイズ防止性能を試験するために、部品を198℃から210℃まで2℃ずつ加熱し、ヘイズを観察した。結果を表1に示す。比較例Aのプラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層をもたない金属化したポリエーテルイミド(PEI)対照は204℃でヘイズを示した。実施例1の2分間プラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層は208℃までヘイズが生成しなかった。実施例2の4分間プラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層は210℃までヘイズが発生しなかった。実施例3の8分間プラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層は210℃までヘイズが発生しなかった。
【0079】
【表1】


比較例B〜I、実施例4〜11
ガラス転移温度(Tg)が高い様々な熱可塑性樹脂(表2)の102mm×3.2mmのディスクを、上記のように射出成形し金属化した。対照実施例(B〜I)は約100nmの反射アルミニウムコーティングでコートした後トップコート層で保護した。本発明の実施例(4〜11)は最初に、約4分間HMDSOのプラズマ蒸着で生成したヘイズ低減性のヒドロキシ炭化ケイ素層でコートした。このヒドロキシ炭化ケイ素層の厚さは約64nmであった。その後試料をアルミニウムの反射層でコートし、保護層でトップコートした。
【0080】
表2に試験した高いTgの樹脂を示す。熱変形温度(HDT)はASTM D648に従って測定した。ガラス転移温度はASTM D3418に準じて示差走査熱量分析(DSC)によって測定した。
【0081】
【表2】


これらのコートした試料を次に、空気循環式オーブン内で加熱し、ヘイズの生成を検査した。初期温度は、各々の樹脂のガラス転移温度より約20℃低かった。温度を2℃ずつヘイズ発生が観察されるまで上昇させた。試料は各温度に約90分保った。各々の樹脂で、対照試料とヘイズが低減した試料とは同じ条件下で加熱した。加熱温度は、各個々の樹脂又は樹脂混合物の熱能力(Tg及びHDT)を反映するように変えた。
【0082】
表3に、基材が反射アルミニウム層のみでコートされている対照試料B〜Iと、基材、プラズマ重合したオルガノシリコーンヘイズ防止層及び反射金属層を含む本発明の試料4〜11とに対して、ヘイズの生成が最初に観察された温度を示す。各樹脂に対して、プラズマ重合したオルガノシリコーン下層(ヘイズ防止層)がヘイズ発生に対する増大した耐性を付与し、ヘイズ生成の発生がより高い温度で見られることに注意されたい。
【0083】
【表3】


比較例J及びK
厚さが1.52mmと6.35mmの2枚のポリカーボネートプラーク(LEXAN(登録商標)140、General Electric Companyから入手)を70ワット、8ミリトル、20分のDCマグネトロンスパッタリングによりアルミニウムで金属化して厚さ約100〜200nmの反射層を生成させた。これらの金属化した試料を、温度を上昇させながら様々な時間空気循環式オーブン内に入れた。オーブン温度125℃で、試料は48時間後曇っていなかったが、138℃で試料は約10〜20分後に曇ってきた。ヘイズは目視で観察した。選択した試料は光学顕微鏡でも検査した。
【0084】
実施例12及び13
比較例J及びKの手順に従ったが、ポリカーボネートプラークは金属化の前にアクリル変性コロイド状シリカ組成物でプレコートした。このアクリル変性コロイド状シリカ組成物はGE SiliconesからAS4000懸濁物として入手したものであり、流し塗りにより塗布し熱硬化により厚さ約6〜8μmの硬化したヘイズ低減性の層コーティングを生成させた。アルミニウムで金属化した後、試料は145℃もの高い温度で24時間後までヘイズの徴候を示さなかった。145℃でヘイズは発生しなかったが、試料は反り、この温度でアクリル変性コロイド状シリカに亀裂が発生した。この系はヘイズの低減には成功したが、他の性能特性に関して最適ではなかった。
【0085】
比較例L
厚さ3.2mmのポリエーテルイミド(ULTEM 1000)のプラークを、比較例J及びKの手順に従ってアルミニウムで金属化して厚さ約200nmの反射層を作成した。試料をオーブン温度195〜210℃で試験した。試料は48時間(195℃)〜3分(210℃)後にヘイズを発生した。
【0086】
実施例14
3.2mmの厚さのポリエーテルイミド(ULTEM(登録商標)1000)プラークを、プラズマ重合したオルガノシリコーン層でコートして厚さ約2μmのコーティングを得た。このプラズマ蒸着は拡大アルゴン熱プラズマを用いて70アンペア、1.65標準リットル/分(slpm)のアルゴンで行った。蒸着は各々約1μmの厚さの二回のコーティング工程で行った。酸素とオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)は拡大プラズマの下流でリングインジェクターを介して供給した。二回の工程のいずれもD4の供給速度は0.19slpmであり、酸素の供給速度は初回が0.3slpm、二回目が0.8slpmであった。次に、試料のプラズマ重合したオルガノシリコーン表面上にアルミニウムをスパッタリングすることにより金属化して厚さ約200nmの反射層を得た。この試料を上記のようにオーブンで試験した。220℃までの温度でヘイズは観察されなかった。
【0087】
好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、また本発明の要素に代えて等価物を用いることができるということが当業者には理解されよう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正をなすことができる。従って、本発明は、本発明を実施する上で考えられる最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲に入る全ての実施形態を包含するものである。
【0088】
引用した特許、特許出願は全て、援用によりその全体が本明細書の内容の一部をなす。
【符号の説明】
【0089】
10 反射性物品
20 基材
30 反射金属層
40 ヘイズ防止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D648に従って66psiで測定して140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度、及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有し、ポリエーテルイミド類、ポリエーテルイミドスルホン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリフェニレンエーテルスルホン類、ポリ(アリーレンエーテル)類、ポリカーボネート類、ポリエステルカーボネート類、ポリアリーレート類及びこれらの混合物から選択される非晶質熱可塑性樹脂を含む基材(20)、
アルミニウム、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、銅及びこれらの合金から選択される金属を含み、厚さが20〜1000nmの反射金属層(30)、並びに
基材と反射金属層との間に挟まれたヘイズ防止層(40)
を含んでなり、
前記ヘイズ防止層が、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含み、
前記ヘイズ防止層は、プラズマ重合したオルガノシリコーンを含み、
前記反射金属層は、前記ヘイズ防止層と接触しており、
前記ヘイズ防止層は、前記基材と接触している、
反射性物品(10)。
【請求項2】
反射金属層(30)がアルミニウムを含む、請求項1記載の反射性物品(10)。
【請求項3】
オルガノシリコーンが次式を有する、請求項1記載の反射性物品(10)。
【化1】


式中、各Rは独立に水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルアルキル又はC〜C18アリールであり、nは0〜100であり、mは1〜100であり、Xは−O−又は−NH−である。
【請求項4】
ヘイズ防止層(40)が100nm〜100μmの厚さを有する、請求項1記載の反射性物品(10)。
【請求項5】
前記反射金属層(30)はアルミニウムを含み、
前記プラズマ重合したオルガノシリコーンは、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−2Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して5×10psi以上の引張弾性率を有する、請求項1に記載の反射性物品(10)。
【請求項6】
ASTM D648に従って66psiで測定して140℃以上の熱変形温度、1.7g/mL未満の密度及びASTM D4526に従って測定して1000ppm未満の有機揮発分含量を有し、ポリエーテルイミド類、ポリエーテルイミドスルホン類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリフェニレンエーテルスルホン類、ポリ(アリーレンエーテル)類、ポリカーボネート類、ポリエステルカーボネート類、ポリアリーレート類及びこれらの混合物から選択される非晶質熱可塑性樹脂を含む基材(10)の表面に、25℃でASTM D257に従って測定して1×10−4Ωcm以上の体積抵抗率及び25℃でASTM D638に従って測定して3×10psi以上の引張弾性率を有する物質を含むヘイズ防止層(40)を設け、
前記ヘイズ防止層は、重合したオルガノシリコーンを含んでおり、
前記ヘイズ防止層(40)の表面に、アルミニウム、銀、金、ニッケル、パラジウム、白金、銅及びこれらの合金から選択される金属を含み、厚さが20〜1000nmの反射金属層(30)を設ける、
ことを含んでなる、反射性物品(10)の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−203725(P2011−203725A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42212(P2011−42212)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【分割の表示】特願2006−522553(P2006−522553)の分割
【原出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】