説明

反射材用熱可塑性樹脂および反射板

【課題】成形物の機械強度が高く、耐熱性に優れ、しかも高い反射率が安定して得られ、特に、LEDの製造工程およびリフローはんだ工程での加熱による反射率の低下が少ない反射材用熱可塑性樹脂組成物および該樹脂組成物を成形して得られる反射板を提供する。
【解決手段】融点もしくはガラス転移温度が250℃以上でのポリエステル樹脂と、芳香族炭化水素構造を有する低分子量熱可塑性樹脂と、白色顔料と無機充填材とを含む反射材用熱可塑性樹脂組成物が、前記の目的を達成する性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射材料に適し、高温でも使用可能な樹脂組成物および該樹脂組成物を成形して得られる反射板に関する。さらに詳しくは、特定の熱可塑性樹脂、特定の構造を有する低分子量熱可塑性樹脂、無機充填材、及び白色顔料を含み、光の反射率、耐熱性、機械的特性に優れるとともに、インサート成形に好適である反射材用熱可塑性樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形して得られる反射板に関する。
【背景技術】
【0002】
光を効率的に利用するため反射板は種々の局面で利用されている。近年、装置の小型化および光源の小型化のため、光源の半導体化、すなわち光源を半導体レーザー、発光ダイオード(以下、LEDと言う)等に切り替えることが進められている。そのため、反射板をプリント配線基板等へ表面実装すること等も行われ、反射板には機械的強度のみならず、耐熱性が良好で、精密に成形できることが要求されている。また反射板には、光を反射する機能上、安定した高い反射率が得られることが求められ、特にLEDの組立ておよびリフローはんだ工程において、加熱によって反射材料の反射率が低下することを抑制することが求められている。
【0003】
また、近年、反射板を用いた製品へのコストダウン要求は高まる一方であり、TVやモニターなどの最終製品に搭載されるLEDパッケージ数を減少させること、それに伴い素子の高輝度化を図ること、製品の小型化を図ること、および射出成形によるLEDパッケージ製造時の取数を増加させること等が求められている。そのため、反射材料は、高い成形加工性を有することが好ましく、特に溶融流動性が高いことが求められている。
【0004】
反射板の強化材としては一般的に、ガラス繊維が広く用いられている。しかしながら、多数個取の成形に対しては反射材料の溶融流動性が不足すること、さらにゲートカット面が粗くなり、特に小型製品では製品外観への影響が大きくなる傾向がある。
【0005】
この問題を解決すべく、これまで種々の改良が試みられてきた。特に無機強化材として例えばワラストナイト(特許文献1)、チタン酸カリウム(特許文献2)、チタン酸カリウムと酸化チタンの併用系(特許文献3)が示されている。
【0006】
しかしながら、これら技術は複数種類の強化材を配合するため、ベースポリマーへの分散不良が生じ、反射率及び機械強度が低下するなどの懸念がある。また、ベースポリマーへ強化材を分散させるための溶融混合において、特殊なスクリュウ構成や、温度設定などが必要となる場合があり、ベースポリマーへの負荷が増大し、分解による機能低下を引き起こす可能性や、コストアップにも繋がり易いという問題がある。
【0007】
一方で、ベースポリマーの改良により、反射板の反射率低下を抑制する技術も示されている(特許文献4)。反射板にはポリアミド材料が用いられる例が多いが、末端のアミノ基や、アミド結合由来による変色が生じる場合があり、反射率が低下する恐れがある。これに対して、ポリアミド樹脂に代えて耐熱性ポリエステルを用いる試みがなされている。しかしながら、ベースポリマーをポリアミドから耐熱性ポリエステルへ変更する事によって機械強度や流動性がどのように変化するか開示が無く、反射材料としての性能バランスは未知数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4245716号公報
【特許文献2】特許第4117130号公報
【特許文献3】特開2008−18172号公報
【特許文献4】特表2009−507990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らが検討した結果によれば、脂環式炭化水素構造を含むポリエステル樹脂は、耐熱性や経時安定性に優れる一方で、実用的な観点では溶融流動性の改善が必要であることが見出された。従って本発明は、成形物の機械強度が高く、耐熱性に優れ、高い反射率を安定して得ることができ、成形性に優れ、更にLEDの製造工程およびリフローはんだ工程での加熱による反射率の低下が少ない反射材用熱可塑性樹脂組成物、および該樹脂組成物を成形して得られる反射板を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、このような状況に鑑みて鋭意検討した結果、ポリオレフィン骨格と芳香族炭化水素構造とを有する低分子量熱可塑性樹脂と、脂環式炭化水素構造を含むポリエステル樹脂とが特定の比率で含まれる樹脂組成物が、流動性に優れるだけでなく、反射率も従来以上に高い値を示す、即ち上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、融点もしくはガラス転移温度が250℃以上であり、脂環式炭化水素構造を含むポリエステル樹脂(A)30〜85質量%、ポリオレフィン骨格と芳香族炭化水素構造とを有し、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が0.04〜1.0dl/gの熱可塑性樹脂(B)0.1〜10質量%、白色顔料(C)5〜50質量%、および無機充填材(D)10〜50質量%を含む反射材用熱可塑性樹脂組成物に関する。(ただし、A,B,C,Dの合計は100質量%である。)
【0012】
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%からなるジカルボン酸成分単位(a−1)、並びに、炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位(a−2)を含むポリエステル樹脂(A−1)であることが好ましい。
【0013】
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂(A−1)に含まれる前記脂環族ジアルコール成分単位(a−2)が、シクロヘキサン骨格を有することが好ましい。
【0014】
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、前記白色顔料(C)が酸化チタンであることが好ましい。
【0015】
また本発明は、前記の反射材用熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる反射板に関する。
【0016】
本発明の反射板は、発光ダイオード素子用の反射板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成形物の機械強度が高く、耐熱性に優れ、流動性、成形性に優れ、反射率が高く、経時的な反射率低下が少ない反射材用樹脂組成物および、該樹脂組成物を成形して得られる反射板を提供することができる。特に本発明の反射材用樹脂組成物は、初期の反射率が高い上に、LEDの製造工程およびリフローはんだ工程での加熱による反射率の低下が少ないため、その工業的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施例において、リフロー耐熱性を評価する為のリフロー工程の温度プロファイルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.反射材用熱可塑性樹脂組成物
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)(以下、低分子量熱可塑性樹脂(B)ともいう)、白色顔料(C)、および無機充填材(D)を含み、必要に応じて他の添加剤等を含有する。
【0020】
[ポリエステル樹脂A]
本発明のポリエステル樹脂(A)は、融点もしくはガラス転移温度が250℃以上であり脂環式炭化水素骨格を構造単位に含むことを特徴とする。
ポリエステル樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)、もしくはガラス転移温度は250℃以上であり、上記融点もしくはガラス転移温度は270℃〜350℃の範囲内にあることが好ましく、特に290〜335℃の範囲内にあることが好ましい。融点もしくはガラス転移温度が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射板の変形が抑制される。一方、上限温度は原則的としては制限がないが、融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際してポリエステル樹脂の分解を抑制できるので好ましい。
【0021】
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]は、0.3〜1.0dl/gであることが好ましい。極限粘度がこのような範囲にある場合、反射材用熱可塑性樹脂組成物の成形時の流動性が優れるものとし得る。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度の調整は、ポリエステル樹脂(A)の分子量を調整すること等でなし得る。
上記極限粘度は、ポリエステル樹脂(A)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の数式で算出される値である。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t−t0)/t0
【0022】
上記ポリエステル樹脂(A)としては、特定のジカルボン酸成分単位(a−1)及び脂環族ジアルコール成分単位(a−2)を含むポリエステル樹脂(A−1)が好適である。なお、本願発明においては必要に応じ、また本発明の効果を損なわない限り、他のポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂を複数併用しても良い。
【0023】
[ポリエステル樹脂(A−1)]
本発明に好適に使用されるポリエステル樹脂(A−1)は、下記の芳香族ジカルボン酸由来の構成単位を有するジカルボン酸成分単位(a−1)と、脂環式炭化水素骨格を有する脂環族ジアルコール由来の構成単位を有する脂環族ジアルコール成分単位(a−2)とを含むことが好ましい。
【0024】
[ジカルボン酸成分単位(a−1)]
本発明で使用するポリエステル樹脂(A−1)を構成するジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸から誘導されるテレフタル酸成分単位30〜100モル%、好ましくは40〜100モル%、さらに好ましくは40〜80モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位が0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに好ましくは20〜60モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位が、0〜70モル%、好ましくは0〜60モル%、さらに20〜60モル%の量で含まれることが好ましい。これらのジカルボン酸成分単位(a−1)の合計量は100モル%である。
【0025】
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位としては、例えばイソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸から誘導される成分単位が挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用い得る。
【0026】
また、脂肪族ジカルボン酸成分単位は、炭素原子数が4〜20、好ましくは6〜12の脂肪族ジカルボン酸から誘導される成分単位である。脂肪族ジカルボン酸成分単位を誘導するために用いられる脂肪族ジカルボン酸の例としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、特にアジピン酸が好ましい。
【0027】
本発明では、前記の芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分単位(a−1)としてシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などを使用することもできる。
【0028】
また、本発明においては、ジカルボン酸成分単位(a−1)として、上記のような構成単位とともに、少量、例えば、10モル%以下の量の多価カルボン酸成分単位が含まれても良い。このような多価カルボン酸成分単位として具体的には、トリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸および多塩基酸を挙げることができる。
【0029】
[脂環族ジアルコール成分単位(a−2)]
脂環族ジアルコール成分単位(a−2)は、炭素数4〜20の脂環式炭化水素骨格を有するジアルコールから誘導される成分単位を含む。炭素数4〜20の脂環式炭化水素骨格を有するジアルコールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノールなどの脂環族グリコールが挙げられる。中でも耐熱性や吸水性、入手容易性などの観点から、シクロヘキサン骨格を有するジアルコール由来の成分単位が好ましく、シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位がさらに好ましい。
【0030】
脂環族ジアルコールには、シス、トランス構造などの異性体が存在するが、耐熱性の観点からは、トランス構造が好ましい。ポリエステル樹脂(A)に含まれる脂環族ジアルコール成分単位(a−2)全量中のシス/トランス比は、好ましくは30/70〜0/100、さらに好ましくは、50/50〜0/100である。
【0031】
脂環族ジアルコール成分単位(a−2)には、前記の脂環式炭化水素骨格有するジアルコール由来の成分単位のほかに、樹脂としての溶融流動性を高める目的などで、脂肪族ジオール由来の成分単位を含み得る。脂肪族ジオールとして具体的には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどを挙げることができる。
【0032】
[ポリエステル樹脂(A)の調製方法]
ポリエステル樹脂(A)は、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合してジカルボン酸成分単位(a−1)と脂環族ジアルコール成分単位(a−2)とを反応させることにより得ることができる。上述のように、反応系内に分子量調整剤を配合することで、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度を調製し得る。
【0033】
分子量調整剤としては、モノカルボン酸およびモノアルコールを使用することができる。上記モノカルボン酸の例としては、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸を挙げることができる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。例えば、脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸を挙げることができる。また、芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸を挙げることができ、脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロヘキサンカルボン酸を挙げることができる。
【0034】
このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸成分単位(a−1)と脂環族ジアルコール成分単位(a−2)との反応の際に、反応系におけるジカルボン酸成分単位(a−1)の合計量1モルに対して、通常は、0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルの量で使用される。
【0035】
[低分子量熱可塑性樹脂(B)]
本発明で使用する低分子量熱可塑性樹脂(B)は、ポリオレフィン骨格と芳香族炭化水素構造とを有し、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が、0.04〜1.0dl/gである。この極限粘度の好ましい下限は0.05dl/g、より好ましくは0.07dl/gである。一方、好ましい上限は0.5dl/g、より好ましくは0.2dl/gである。極限粘度が低すぎると本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物から低分子量熱可塑性樹脂(B)が必要以上にブリードアウトし易くなり、反射率が低下する可能性がある。また、成形加工時に臭気や発煙の原因となりやすい。一方で極限粘度が高すぎると、溶融粘度は勿論のこと、反射率向上効果が不充分になることがある。
【0036】
低分子量熱可塑性樹脂(B)の140℃における溶融粘度(mPa・s)は10〜2000mPa・sであることが好ましく、20〜1500mPa・sであることがさらに好ましく、30〜1200mPa・sであることが特に好ましい。本発明の低分子量熱可塑性樹脂(B)の140℃における溶融粘度が低すぎると反射材用熱可塑性樹脂組成物から低分子量熱可塑性樹脂(B)が必要以上にブリードアウトし易くなり、反射率が低下する可能性がある。また、成形加工時に臭気や発煙の原因となりやすい。一方で低分子量熱可塑性樹脂(B)の140℃における溶融粘度が高すぎると、樹脂組成物の溶融粘度は勿論のこと、反射率向上効果が不充分になることがある。上記粘度はブルックフィールド粘度計で測定し得る。
【0037】
このような低分子量熱可塑性樹脂(B)としては、通常、スチレン類等に代表される芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物と、ポリオレフィンワックスと称されるワックス(以下、ポリオレフィンワックス(b)と称することがある)とを、ニトリルや過酸化物などのラジカル発生剤の存在下で反応させて得られる所謂変性ワックスを代表例として挙げることが出来る。
【0038】
本発明の低分子量熱可塑性樹脂(B)は、特に、上記ポリオレフィンワックス(b)100質量部に対して、スチレンなどの芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物を1〜900質量部、より好ましくは10〜300質量部、特に好ましくは20〜200質量部導入したものであること望ましい。芳香族炭化水素由来の構造が少な過ぎると、後述する反射率の向上効果が不充分となることがある。一方、芳香族炭化水素由来の構造が多過ぎると臭気が強くなることがある。
【0039】
このような低分子量熱可塑性樹脂(B)の芳香族炭化水素構造の含有率は、調製時のポリオレフィンワックス(b)と芳香族ビニル化合物と仕込み比や、100〜600MHzクラスの核磁気共鳴スペクトル分析装置(NMR)による構造特定と、フェニル構造炭素と他の炭素との吸収強度の比や、フェニル構造水素と他の炭素との吸収強度の比等の常法によって特定することが出来る。勿論、構造特定には赤外吸収スペクトル分析などを併用することも可能である。
【0040】
[芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物]
前記芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物の種類に特に制限はないが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどを挙げることが出来る。これらの中でも好ましくはスチレンである。
【0041】
[ポリオレフィンワックス(b)]
前記ポリオレフィンワックス(b)としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンなどのα−オレフィンの単独重合体または2種以上のα−オレフィンを共重合したエチレン系ワックス、プロピレン系ワックス、4−メチル−1−ペンテン系ワックスなどを挙げることができる。これらのポリオレフィンワックスの中では、エチレンを主成分とするエチレン系ワックスが好適である。
【0042】
前記ポリオレフィンワックス(b)の数平均分子量は、400〜12000であることが好ましく、500〜5000であることがさらに好ましく、600〜2000であることが特に好ましい。ポリオレフィンワックス(b)の分子量が低すぎると低分子量熱可塑性樹脂(B)が、反射材用熱可塑性樹脂組成物から必要以上にブリードアウトし易くなり、反射率が低下する可能性がある。一方で分子量が高すぎると、樹脂組成物の溶融粘度は勿論のこと、反射率向上効果が不充分になることがある。
【0043】
数平均分子量は、下記の様な条件でのGPC測定で求めることが出来る。
装置 : ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
溶剤 : o−ジクロロベンゼン
カラム: TSKgelカラム(東ソー社製)×4
流速 : 1.0 ml/分
試料 : 0.15mg/mL o−ジクロロベンゼン溶液
温度 : 140℃
検量線: 市販の単分散標準ポリスチレンを用いて作成。
分子量換算 : PE換算/汎用較正法
【0044】
なお、汎用較正の計算には、以下に示すMark−Houwink粘度式の下記の係数を用い得る。
ポリスチレン(PS)の係数 :KPS=1.38×10−4,aPS=0.70
ポリエチレン(PE)の係数 :KPE=5.06×10−4,aPE=0.70
【0045】
[熱可塑性樹脂(B)の調製方法]
熱可塑性樹脂(B)は、上述のように、ポリオレフィンワックス(b)に、芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物を導入することにより得られる。
ポリオレフィンワックス(b)は、例えば対応するオレフィンを低圧や中圧で重合することによって得られる。重合に用いる重合触媒の例には、特開昭57−63310号公報、特開昭58−83006号公報、特開平3−706号公報、特許第3476793号公報、特開平4−218508号公報、特開2003−105022号公報等に記載されているマグネシウム担持型チタン触媒や、国際公開第01/53369号、国際公開第01/27124号、特開平3−193796号公報あるいは特開平2−41303号公報などに記載のメタロセン触媒などを代表例とする遷移金属含有オレフィン重合用触媒が好適に用いられる。
また、対応するポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン重合体を常法により熱分解やラジカル分解する事によって得ることもできる。
【0046】
また、ポリオレフィンワックス(b)への芳香族構造の導入方法としては、前述のニトリルや過酸化物などのラジカル発生剤の存在下でポリオレフィンワックス(b)及び芳香族炭化水素構造を有するビニル化合物とを反応させる方法の他、前記のオレフィン重合体とポリスチレンなどの芳香族ビニル化合物の重合体との存在下で熱分解やラジカル分解する方法も好適な例の一つである。
【0047】
[白色顔料(C)]
本発明で使用する白色顔料(C)としては、ポリエステル樹脂(A)等と併用して該樹脂を白色化することで、光反射機能を向上できるものであれば良く、具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナなどが上げられる。これらの白色顔料は、単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの白色顔料はシランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理して使用することもできる。例えばビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。白色顔料としては特に酸化チタンが好ましい。酸化チタンを使用することにより反射率、隠蔽性といった光学特性が向上する。酸化チタンはルチル型が好ましい。酸化チタンの粒子径は、0.1〜0.5μm、好ましくは0.15〜0.3μmである。
【0048】
これらの白色顔料は、反射率を均一化させるためなどの理由で、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
【0049】
[無機充填材(D)]
本発明で使用する無機充填材(D)は、公知の化合物を制限無く用いることが出来る。
【0050】
このような無機充填剤(D)をポリエステル樹脂(A)と併用することで、該樹脂の強度を向上できる。
【0051】
このような無機充填剤としては、具体的には、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の高いアスペクト比を有する形状の種々の無機補強材を使用することが好ましい。具体的にはガラス繊維、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカー、ハイドロタルサイト、チタン酸カリウムなどのチタン酸塩などを挙げることができる。上記のような無機充填材の平均長さは、通常は、10〜100μm、好ましくは10〜50μmの範囲にあり、アスペクト比(L(繊維の平均長)/D(繊維の平均外径))が、通常は1〜100、好ましくは5〜70の範囲にある。平均長さおよびアスペクト比がこのような範囲内にある無機充填剤を使用すると、強度の向上や線膨張係数の低下などの面で好ましい。
【0052】
[その他の添加剤]
本発明では、発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、以下の添加剤、すなわち、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、他の重合体(オレフィン類、変性ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の配合剤を添加することができる。
【0053】
[本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物]
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
【0054】
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の総量(100質量%)中にポリエステル樹脂(A)を30〜85質量%、好ましくは35〜80質量%、より好ましくは40〜75質量%、さらに45〜70質量%の割合で含むことが好ましい。ポリエステル樹脂(A)が30質量%以上、85質量%以下であると、成形性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る耐熱性に優れた反射材用熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0055】
また、本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の総量(100質量%)中に熱可塑性樹脂(B)を、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%、さらに1〜4質量%の割合で含むことが好ましい。
【0056】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定の量熱可塑性樹脂(B)を有しているので、成形性に優れ、さらに反射率が従来よりも高い材料を得ることが出来る。この理由は定かではないが、以下の様に推測される。
【0057】
芳香族炭化水素構造を有する重合体は、その光沢性が高いことが知られている。また、比較的低分子量の重合体は、樹脂組成物の表面に偏在し易い傾向があると考えられる。本発明の熱可塑性樹脂(B)は、比較的低分子量であり、かつ芳香族炭化水素構造を有することから、反射材用熱可塑性樹脂組成物の表面に偏在しやすく、反射用熱可塑性樹脂組成物の反射率が優れると推測される。
また、また芳香族炭化水素構造はポリエステル樹脂(A)のエステル構造など、極性構造と比較的馴染みが良いため、樹脂組成物内で安定であり、反射率の経時変化が少ないことに繋がっていると推測される。
【0058】
また、本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の総量(100質量%)中に白色顔料(C)を、5〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の割合で含む。白色顔料(C)の量が5質量%以上であると、反射率等の十分な光の反射特性を得ることができる。また50質量%以下であれば、成形性を損なうことがなく好ましい。
【0059】
また、本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、熱可塑性樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の総量(100質量%)中に、無機充填材(D)を、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%の割合で含むことが好ましい。無機充填材(D)の量が10質量%以上であると、射出成形時やはんだリフロー工程で成形物が変形することが無く、また、反射率の経時安定性に優れる傾向がある。また50質量%以下であると、成形性および外観が良好な成形品を得ることができる。
【0060】
上記のような組成範囲にある、本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、機械的特性、反射率および耐熱性に優れ、反射板用途に好適に使用することができる。
【0061】
[用途]
本発明の反射材用熱可塑性樹脂組成物は、成形物の機械強度が高く、耐熱性に優れ、流動性、成形性に優れ、反射率が高く、経時的な反射率低下が少ないことから、種々の反射板に好適であり、特に半導体レーザーや発光ダイオード等の光源からの光線を反射する反射板に好適である。
【0062】
2.反射板、発光ダイオード素子用反射板
本発明の反射板は、上述の反射材用熱可塑性樹脂組成物を任意の形状に硬化したものとし得る。
反射板とは、少なくとも光を放射する方向の面が開放された、または開放されていないケーシングやハウジング一般を包括し、より具体的には、箱状または函状の形状を有するもの、漏斗状の形状を有するもの、お椀状の形状を有するもの、パラボラ状の形状を有するもの、円柱状の形状を有するもの、円錐状の形状を有するもの、ハニカム状の形状を有するもの等、光を反射する面(平面、球面、曲面等の面)を有する三次元形状の成形体一般をも包含する。
【0063】
本発明の反射板の用途として、特に好ましくは発光ダイオード素子用の反射板が挙げられる。本発明の発光ダイオード(LED)素子用反射板は、上述の反射材用熱可塑性樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することで得られ、該反射板にLED素子とその他の部品を組み込み、封止用樹脂により封止、接合、接着等して使用される。
【0064】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物および反射板はLED用途のみならず、その他の光線を反射する用途にも適応することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、屋外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用の反射板として使用できる。
【実施例】
【0065】
[曲げ試験(靭性)]
下記の射出成形機を用い、下記の成形条件で調製した長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、曲げ強度、歪量、弾性率、およびその試験片を破壊するのに要するエネルギー(靭性)を測定した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
【0066】
[リフロー耐熱性]
下記の射出成形機を用い、下記の成形条件で調製した長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を、温度40℃、相対湿度95%で96時間調湿した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、図1に示す温度プロファイルのリフロー工程を行った。
【0067】
上記調湿処理を行った試験片を、厚み1mmのガラスエポキシ基板上に載置すると共に、この基板上に温度センサーを設置して、プロファイルを測定した。図1において、所定の速度で温度230℃まで昇温。次いで20秒間で所定の温度(aは270℃、bは265℃、cは260℃、dは255℃、eは250℃)まで加熱した後230℃まで降温した場合において、試験片が溶融せず、且つ表面にブリスターが発生しない設定温度の最大値を求め、この設定温度の最大値をリフロー耐熱温度とした。実施例、比較例の結果を表1に示した。
【0068】
一般的に、吸湿した試験片のリフロー耐熱温度は、絶乾状態のそれと比較して低い傾向がある。
【0069】
[ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]]
ポリエステル樹脂0.5gをフェノールとテトラクロロエタンの50/50wt%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の数式(2)に基づき算出した。
[η]=ηSP/[C(1+0.205ηSP)] (2)
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:ブランク硫酸の流下秒数(秒)
ηSP=(t−t0)/t0
【0070】
[熱可塑性樹脂(B)の極限粘度[η]の測定方法]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。サンプル約20mgを、デカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液に、デカリン溶媒を5ml追加して希釈した後に、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
[η]= lim(ηsp/C) (C→0[分子量])
【0071】
[熱可塑性樹脂(B)の140℃の溶融粘度の測定方法]
ブルックフィールド粘度計を用いて140℃で測定した。
【0072】
[融点(Tm)]
樹脂サンプル約10mgを測定用容器に秤量し、常法に基づき行った。即ち、PerkinElemer社製DSC7を用いて、前記サンプルを一旦330℃で5分間保持し、次いで10℃/分の速度で23℃まで降温せしめた後、10℃/分で昇温した。このときの融解に基づく吸熱ピ−クの頂点を融点とした。
【0073】
[初期反射率]
下記の成形機を用い、下記の成形条件で射出成形して調製した長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:(株)ソディック プラステック社製、ツパールTR40S3A
シリンダー温度:融点(Tm)+10℃、金型温度:120℃
【0074】
得られた試験片をミノルタ(株)CM3500dを用いて、波長領域360nmから740nmの反射率を求めた。470nmと550nmの反射率を代表値として初期反射率を評価した。
【0075】
[加熱後反射率]
初期反射率測定に用いたサンプルを、170℃のオーブンに2時間放置した。続いてエアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、設定温度を20秒間保持する温度プロファイルとし、ピーク温度は設定温度より10℃高く設定したリフロー工程と同様の熱処理を施した。この際、ピーク温度はサンプル表面で260℃となるよう設定した。
【0076】
このサンプルを徐冷後、初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、加熱後反射率とした。
【0077】
[実施例]
ポリエステル樹脂(A)、低分子量熱可塑性樹脂(B)、白色顔料(C)、無機充填材(D)を表1に示す割合でタンブラーブレンダーを用いて混合し、二軸押出機(株)日本製鋼所製 TEX30αにてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬後、ストランド状に押出し、水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物について各物性を評価した結果を表1に示す。
【0078】
・ポリエステル樹脂(A)
組成:ジカルボン酸成分単位(テレフタル酸100モル%)、ジオール成分単位(シクロヘキサンジメタノール100モル%)
極限粘度[η]:0.6dl/g
融点:290℃
・低分子量熱可塑性樹脂(B)
公知の固体状チタン触媒成分で得られたエチレン重合体系ワックスとスチレンとの混合物を公知のラジカル発生剤の存在下に反応させて、以下の低分子量熱可塑性樹脂(B)を得た。
デカリン中135℃で測定した粘度 :0.10dl/g
140℃での溶融粘度 :1,100mPs・s
スチレン単位含有率 :60質量%
・白色顔料(C)酸化チタン(粉末状、平均粒径0.21μm)
・無機充填材(D):炭酸カルシウムウィスカー(長さ25μm、アスペクト比33)
【0079】
[比較例]
低分子量熱可塑性樹脂(B)を添加せずにポリエステル樹脂の含有率を変更した以外は、実施例と同様に行なった。
【0080】
【表1】

【0081】
上記の様に本発明の樹脂組成物は、従来に比して成形物の機械強度、耐熱性、流動性、反射率のバランスに優れる。特に高い反射率を安定して得ることができる。本発明の樹脂組成物によれば、例えばLEDの製造工程およびリフローはんだ工程での加熱による反射率の低下が少ない反射板を得ることができると考えられる。故に、例えば、反射板用の材料として適している。特に好ましい例として、高い耐熱性と反射保持率を要求されるLED反射板用の材料として適している事を示唆している。
【0082】
このような高い性能バランスを示すのは、前述した通り本発明に用いられる特定の低分子量樹脂と高耐熱樹脂との分散性、親和性が良好であるためと推測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点もしくはガラス転移温度が250℃以上であり、脂環式炭化水素構造を含むポリエステル樹脂(A)30〜85質量%、
ポリオレフィン骨格と芳香族炭化水素構造とを有し、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]が0.04〜1.0dl/gの熱可塑性樹脂(B)0.1〜10質量%、
白色顔料(C)5〜50質量%、および
無機充填材(D)10〜50質量%
(ただし、A,B,C,Dの合計は100質量%である)
を含む反射材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%、および/または炭素原子数4〜20の脂肪族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%からなるジカルボン酸成分単位(a−1)、
並びに、炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位(a−2)
を含むポリエステル樹脂(A−1)である、請求項1に記載の反射材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(A−1)に含まれる前記脂環族ジアルコール成分単位(a−2)が、シクロヘキサン骨格を有する、請求項2に記載の反射材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記白色顔料(C)が酸化チタンである、請求項1に記載の反射材用熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の反射材用熱可塑性樹脂組成物を含む反射板。
【請求項6】
発光ダイオード素子用の反射板であることを特徴とする請求項5に記載の反射板。

【図1】
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【公開番号】特開2013−32426(P2013−32426A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168455(P2011−168455)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】