説明

反射材

【課題】優れた反射性、特に優れた光拡散性を有する新たな反射材を提供する。
【解決手段】内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、溶解度パラメータ(SP値)が異なる2種以上の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(B)を備え、樹脂層(B)は、溶解度パラメータ(SP値)が異なる熱可塑性樹脂の組み合わせによって、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となっていることを特徴とする反射材を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板などの構成部材として好適に使用することができる反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめ、照明器具或いは照明看板など多くの分野で反射材が使用されている。最近では、液晶ディスプレイの分野において装置の大型化及び表示性能の高度化が進み、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させることが求められるようになり、反射材に対しても、より一層優れた光反射性(単に「反射性」ともいう)が求められるようになってきている。
【0003】
反射材として、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を主原料とする白色ポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用の反射フィルムが知られている(特許文献1参照)。
しかし、反射材の材料として芳香族ポリエステル系樹脂を用いた場合、芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によって、フィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという問題があった。
【0004】
また、ポリプロピレン樹脂に充填剤を添加して形成されたフィルムを延伸することによって、フィルム内に微細な空隙を形成させ、光散乱反射を生じさせた反射材(特許文献2参照)や、オレフィン系樹脂とフィラーを含有する基材層と、オレフィン系樹脂を含む層より構成された積層構成のオレフィン系樹脂光反射体も知られている(特許文献3参照)。
このようなオレフィン系樹脂を用いた反射フィルムは、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少ないという特徴を有する。
【0005】
さらに、無機粉末を多量には含まない樹脂組成物からなる反射シートとして、ポリプロピレン樹脂と、該ポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂の少なくとも1種以上を含む、熱収縮率が低減された二軸延伸反射シートが知られている(特許文献4参照)。
この反射シートは、無機粉末を多量に含まなくとも、坪量、密度が同程度の従来の反射シートに比べてより高い反射率を示すという特徴を備える。
【0006】
さらに、上述の反射シートの表面は比較的平滑で正反射性が強いため、液晶ディスプレイに組み込んで光源を点灯させると、画面の明るさにムラが生じる(いわゆる輝度ムラ)問題が起こる場合があった。そこで、この画面の輝度ムラの問題を解決するため、表面に有機微粒子などをコーティングして凹凸を形成させることにより、高光拡散性を付与した反射シートが提案されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04−239540号公報
【特許文献2】特開平11−174213号公報
【特許文献3】特開2005−031653号公報
【特許文献4】特開2008−158134号公報
【特許文献5】特開2010−085843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、これまで種々の反射材が提案されてきたが、依然として、高輝度なバックライトを得るために、さらなる反射性が改善された反射材が求められている。
【0009】
また、オレフィン系樹脂を用いた反射材は、上述のように、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少なく、その有用性は高い。しかし、耐熱性が十分ではないので、耐熱性が要求される液晶ディスプレイの構成部材として使用した場合に、熱によってフィルムが収縮したり、波打ちが発生したりする等の問題があった。
液晶ディスプレイや照明器具、照明看板などの分野では、近年、LEDなどの高温発熱を伴う光源が使用されており、反射材により一層の耐熱性が求められている。
【0010】
他方、折り曲げ加工等を施した反射材を液晶表示装置内に組み込んで使用されることがあり、反射材には、このような折り曲げ加工性(以下「耐折曲性」と称する。)も求められる。
【0011】
そこで本発明の目的は、優れた反射性、特に優れた光拡散性を有し、好ましくはさらに耐熱性および耐折曲性にも優れていて高温環境下でも波打ちを生じない、新たな反射材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、微粉状充填材を含有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、ガラス転移温度(JISK7121)が85〜150℃である非晶性樹脂を含有する樹脂層(B)を設けた積層構成とすることにより、優れた反射性を有し、耐熱性および耐折曲性にも優れ、高温環境下でも収縮しない、新たな反射材を見出した。
【0013】
本発明者はまた、非晶性樹脂と、これに非相溶な樹脂を含有する樹脂層(B)について更なる検討を行なった結果、次のような知見を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)上記の2種の樹脂がブレンドされた樹脂層(B)は、三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上であるという特徴的な表面状態となり、高光拡散性という効果を奏することを見出した。
(2)さらに、このような表面状態となるには、混合される2種の樹脂の溶解度パラメータ(SP値)が起因することを突き止めた。
【0014】
すなわち、本発明は、内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、溶解度パラメータ(SP値)が異なる2種以上の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(B)を備え、
樹脂層(B)は、溶解度パラメータ(SP値)が異なる熱可塑性樹脂の組み合わせによって、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となっていることを特徴とする反射材を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提案する反射材は、内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、溶解度パラメータ(SP値)が異なる2種以上の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(B)を備え、樹脂層(B)は、溶解度パラメータ(SP値)が異なる熱可塑性樹脂の組み合わせによって、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となっているものであるため、優れた光拡散性を有し、バックライトに組み込んで使用した場合には、高輝度を得ることができる。
【0016】
さらに、樹脂層(B)を構成する樹脂の一つとして、ガラス転移温度(JISK7121)が85〜150℃である非晶性樹脂を使用することにより、耐折曲性と共に耐熱性を確保することができるようになり、高温環境下でも波打ちを生じないようにすることができた。よって、本発明の反射材は、液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板などの反射材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例で行った波打ち評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例としての反射材(「本反射材」と称する)について説明する。但し、本発明が、この本反射材に限定されるものではない。
【0019】
<本反射材>
本反射材は、内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、熱可塑性樹脂(I)と、これに非相溶な熱可塑性樹脂(II)とを含有する樹脂層(B)を備えた積層構成の反射材であり、該樹脂層(B)は、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上である特徴を有するものである。
【0020】
<樹脂層(A)>
樹脂層(A)は、内部に空隙を有する層であり、本反射材に反射性を付与すると共に、好ましくは本反射材の耐折曲性を高めることのできる層である。
【0021】
(樹脂層(A)の空隙率)
樹脂層(A)は、内部に空隙を有する層であり、その空隙率、すなわち空隙が当該層に占める体積割合は、反射性を確保する観点から、10〜90%であることが好ましい。このような範囲の空隙を設けることで、反射材の白化が十分に進行するので高い反射性を達成することができ、また、反射材の機械的強度が低下して、破断することがない。
このような観点から、樹脂層(A)の空隙率は、上記範囲の中でも、特に20%以上或いは80%以下、その中でも25%以上或いは75%以下、その中でも特に30%以上或いは70%以下であるのが好ましい。
【0022】
樹脂層(A)に空隙を形成する方法としては、例えば化学発泡法、物理発泡法、超臨界発泡法、延伸法、抽出法などを挙げることができる。これらのうち、本反射材においては、製膜性や連続生産性や安定生産性などの面から延伸法が好ましい。
延伸方法の具体例としては、例えばロール延伸法、圧延法、テンター延伸法などを挙げることができる。これらのうち本発明においてはロール延伸法、及び/又はテンター延伸法が延伸条件の選択幅が広いためにこれらを単独であるいは組み合わせて少なくとも1方向に延伸する方法が好適に用いられる。
該延伸は、ロール延伸法等により縦方向(MD)に延伸する一軸延伸法、縦方向への一軸延伸後引き続きテンター延伸法等により横方向(TD)に延伸する逐次二軸延伸法、又はテンター延伸法を用いて縦方向および横方向に同時に延伸する同時二軸延伸法を挙げることができる。
なお、反射性を高める観点からは、二軸延伸するのが好ましい。
【0023】
(ベース樹脂)
樹脂層(A)の主成分をなす樹脂(ベース樹脂)としては、例えばオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ジエン系樹脂等を挙げることができる。中でも、反射性を高める観点から、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0024】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン樹脂や、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂や、エチレン−環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィン系樹脂(上述したシクロオレフィン系樹脂を含む。)や、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等のオレフィン系エラストマーから選ばれた少なくとも一種のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。これらの中でも、機械的性質、柔軟性などから、ポリプロピレン樹脂(PP)やポリエチレン樹脂(PE)が好ましく、その中でも特に、PEに比べて融点が高く耐熱性に優れており、また、弾性率等の機械特性が高いという観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)が好ましい。
また、押出成形性の観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)の中でも、MFR(230℃ 21.18N)が0.1〜20、特に0.2〜10、中でも特に0.5〜5であるポリプロピレン樹脂(PP)が特に好ましい。
【0025】
なお、樹脂層(A)中に含有されるベース樹脂は、樹脂層(A)全体の質量に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上(100%含む)である。
【0026】
(微粉状充填剤)
樹脂層(A)は、優れた反射性を得るために、微粉状充填剤を含有することが好ましい。微粉状充填剤を含有することで、ベース樹脂と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱のほか、微粉状充填剤の周囲に形成される空洞との屈折率差による屈折散乱、さらに微粉状充填剤の周囲に形成される空洞と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱などからも反射性を得ることができる。
【0027】
微粉状充填剤としては、無機質微粉体、有機質微粉体等を例示することができる。
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等を挙げることができる。これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、シートを構成する樹脂との屈折率差を考慮すると、屈折率の大きいものが好ましく、屈折率が1.6以上である、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン又は酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。
また、酸化チタンは、他の無機充填剤に比べて屈折率が顕著に高く、ベース樹脂との屈折率差を顕著に大きくすることができるため、他の充填剤を使用した場合よりも少ない配合量で優れた反射性を得ることができる。さらに、酸化チタンを用いることにより、反射材の厚みを薄くしても高い反射性を得ることができる。
従って、少なくとも酸化チタンを含む充填剤を用いるのがより好ましく、この場合、酸化チタンの量は、無機充填剤の合計質量の30%以上、または有機充填剤と無機充填剤とを組み合わせて使用する場合はその合計質量の30%以上とするのが好ましい。
また、無機質微粉体の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用してもよい。
【0028】
他方、有機質微粉体としては、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等が挙げられ、これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
微粉状充填剤は、粒径が0.05μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは粒径が0.1μm以上10μm以下である。充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、ベース樹脂への分散性が低下することがないので、均質なシートが得られる。また粒径が15μm以下であれば、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面が緻密に形成されて、高反射性の反射材が得られる。
【0030】
また、微粉状充填剤の含有量としては、反射材の反射性、機械的強度、生産性等を考慮すると、樹脂層(A)全体の質量に対して、10〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのがさらに好ましい。微粉状充填剤の含有量が20質量%以上であれば、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができ、反射材に高反射性を付与することができる。微粉状充填剤の含有量が70質量%以下であれば、反射材に必要な機械的強度を確保することができる。
【0031】
樹脂層(A)において、ベース樹脂と微粉状充填剤の含有割合としては、光反射性、機械的強度および生産性等の観点から、ベース樹脂:微粉状充填剤=80:20〜30:70、特に80:20〜60:40とするのが好ましい。
【0032】
(他の成分)
樹脂層(A)は、上述した以外の他の樹脂を含有してもよい。また、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、相溶化剤、滑剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
【0033】
(樹脂層(A)の形態)
樹脂層(A)は、シート体からなる層であってもよいし、また、溶融樹脂組成物を押出或いは塗布などによって(シートを形成することなく)薄膜形成してなる層であってもよい。
シート体からなる場合、そのシート体は未延伸フィルムであっても、一軸或いは二軸延伸フィルムであってもよいが、少なくとも一軸方向に1.1倍以上延伸して得られる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0034】
<樹脂層(B)>
樹脂層(B)は、熱可塑性樹脂(I)と、これに非相溶な熱可塑性樹脂(II)を含有する層である。
【0035】
樹脂層(B)は、上記熱可塑性樹脂樹脂(I)及びこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II)を含有し、三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となるものであればよく、このような算術平均粗さ(Sa)となる限りにおいて、上記熱可塑性樹脂(I)と、これに非相溶な熱可塑性樹脂(II)は、特に制限されることなく使用することができる。
【0036】
(表面粗さ)
樹脂層(B)の表面は、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上であることが重要である。画面の輝度ムラ解消の点から、算術平均粗さ(Sa)は0.5μm以上7.0μm以下であることが好ましく、さらには、1.0μm以上3.0μm以下であることが好ましい。
【0037】
このような樹脂層(B)を形成するための方法としては、例えば、混合される2種の樹脂の溶解度パラメーター(以下「SP値」と表記する)に着目すればよく、より具体的には、混合される樹脂のSP値の絶対値の差が0.3〜3.0(cal/cm0.5、より好ましくは0.5〜1.5(cal/cm0.5となるような組合せを選択すればよい。
このような範囲に調整することで、2種の樹脂の分散性が適度に調整され、形成される樹脂層(B)の三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(Sa)が上記の範囲となり、高光拡散性を発揮することができる。混合される樹脂のSP値の絶対値の差が0.5(cal/cm0.5以上であれば、樹脂層(B)中に非相溶な熱可塑性樹脂(II)の分散相が形成されて、樹脂層(B)の表面が粗くなり、高光拡散性が得られるので好ましい。
一方、混合される樹脂のSP値の絶対値の差が3.0(cal/cm0.5以下であれば、樹脂層(B)中の非相溶な熱可塑性樹脂(II)の分散相が安定して形成され、樹脂層(B)の製膜性も安定するので好ましい。なお、SP値の絶対値の差が大きすぎると、相分離を起こし、例えば熱可塑性樹脂(II)が溶融樹脂組成物より分離・離脱して、Tダイ口金周囲に付着(メヤニ)などを起こす可能性がある。
【0038】
より具体的には、一方の熱可塑性樹脂(I)のSP値が5.0〜15.0(cal/cm0.5であるのが好ましく、中でも7.0(cal/cm0.5以上或いは12.0(cal/cm0.5以下であるのがより好ましい。
また、他方の熱可塑性樹脂(II)のSP値は5.3〜14.7(cal/cm0.5であるのが好ましく、中でも7.3(cal/cm0.5以上或いは11.7(cal/cm0.5以下であるのがより好ましい。
【0039】
このような技術思想から、SP値が上記範囲にある熱可塑性樹脂(I)を候補樹脂1としスクリーニングし、さらにはSP値が上記範囲にある熱可塑性樹脂(I)に非相溶な熱可塑性樹脂(II)を候補樹脂2としてスクリーニングして、これら候補樹脂1及び2の組合せによって形成される樹脂層の中から、三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(Sa)が0.5以上となるものを選択することによって、樹脂層(B)を形成することができる。
【0040】
なお、SP値は、熱可塑性樹脂(I)あるいは非相溶な熱可塑性樹脂(II)を構成する原子および原子団の蒸発エネルギー(Δei)とモル体積(Δvi)を、下記のFedorsの式に代入して求めることができる。
SP値(cal/cm0.5=(ΣΔei/ΣΔvi)0.5
ここで、ΔeiおよびΔviには、Fedorsの提案した定数を用いた(表1参照)。
表1は、Fedorsによる原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積の抜粋である。
【0041】
【表1】

【0042】
なお、樹脂層(B)において、熱可塑性樹脂(I)とこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II)は、それぞれ1種類の樹脂でもよいし、2種類以上の樹脂でもよい。例えば、1種類の熱可塑性樹脂(I−1)と、これに非相溶な2種類の熱可塑性樹脂(II−1)(II−2)が含まれていてもよい。また、熱可塑性樹脂(I−1)とこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II−1)が含まれているほかに、熱可塑性樹脂(I−2)とこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II−2)というように2種類以上の組み合わせが含まれていてもよい。
但し、樹脂層(B)の表面の算術平均粗さ(Sa)を0.5μm以上にする効果の観点から、熱可塑性樹脂(I)とこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II)、言い方を変えれば、SP値の絶対値の差が0.3〜3.0(cal/cm0.5となる組み合わせに含まれる樹脂量が、樹脂層(B)を構成する全樹脂の70質量%以上、中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上を占めるのが好ましい。
【0043】
また、熱可塑性樹脂(I)とこれに非相溶な熱可塑性樹脂(II)の含有割合は、60:40〜90:10、または、40:60〜10:90であるもの、中でも70:30〜80:20、または、30:70〜20:80であるものが、分散相が安定的に形成され、樹脂層(B)の表面を粗面化する効果の点から好ましい。
但し、熱可塑性樹脂(I)及び熱可塑性樹脂(II)のいずれが多くなっても、いずれかが母相或いは分散相となるかの違いであるから、樹脂層(B)の表面を粗面化する効果の点では同様である。
【0044】
(さらなる特性の付与)
樹脂層(B)を構成する樹脂の一種、好ましくはベース樹脂の一種、例えば熱可塑性樹脂(I)又は(II)として、ガラス転移温度(JISK7121、Tg)が85〜150℃である非晶性樹脂を用いることで、本反射材に耐熱性を付与することもできる。
なお、樹脂層(B)のベース樹脂とは、樹脂層(B)全体の質量に対して、20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上を占める樹脂の意味である。
【0045】
ここでいう非晶性樹脂とは、結晶化に伴う発熱ピークが観察されないか、または観察されたとしても結晶融解熱量が10J/g以下となる結晶化度が極めて低い樹脂を示す。
非晶性樹脂は、環境温度が変化してもガラス転移点以下では安定した特性を示し、ガラス転移点付近の温度までは、収縮率が小さく寸法安定性に優れるという性質から、反射材に高い耐熱性を付与させることができる。
【0046】
よって、樹脂層(B)のベース樹脂、例えば熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(Tg)が85〜150℃であれば、液晶ディスプレイ等の構成部材として使用した場合でも耐熱性が充分であり、好ましい。
かかる観点から、樹脂層(B)のベース樹脂のガラス転移温度(Tg)は、90℃以上、150℃以下であるのがさらに好ましく、中でも100℃以上、150℃以下であるのがより一層好ましい。
【0047】
この種の非晶性樹脂として、例えば、シクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等を挙げることができる。中でも、延伸性、ガラス転移温度の範囲、透明性を考慮した場合、シクロオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート樹脂が好ましく、その中でもシクロオレフィン系樹脂が特に好ましい。
【0048】
ここで、樹脂層(B)のシクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマーのいずれであってもよい。
シクロオレフィン系樹脂とは、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(シクロオレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0049】
シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物に分類され、いずれも本反射材に用いることができる。
【0050】
シクロオレフィン系樹脂の具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環のシクロオレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環のシクロオレフィン;
【0051】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環のシクロオレフィン;
【0052】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環のシクロオレフィン;
【0053】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,16]−14−エイコセン;シクロペンタジエンの4量体などの多環のシクロオレフィンなどを挙げることができる。
これらのシクロオレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0054】
シクロオレフィンと共重合可能なα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のエチレン又はα−オレフィンなどを挙げることができる。
これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
シクロオレフィン又はシクロオレフィンとα−オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法に、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0056】
以上のシクロオレフィン系樹脂の中でも、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が70〜170℃、特に80℃以上、160℃以下、中でも特に85℃以上、150℃以下のシクロオレフィン樹脂が好ましい。
この際、2種類以上のシクロオレフィン樹脂を組み合わせて混合し、混合樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記範囲に調整するようにしてもよい。
【0057】
シクロオレフィン系樹脂として市販製品を用いることができる。例えば、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」(化学名;環状オレフィンの開環重合体の水素添加物)、三井化学社製の「アペル(登録商標)」(エチレンとテトラシクロドデセンの付加共重合体)やポリプラスチックス社製の「TOPAS(登録商標)」(エチレンとノルボルネンの付加共重合体)等を挙げることができる。この中でも、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」(化学名;環状オレフィンの開環重合体の水素添加物)及び/又は、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(登録商標)」(エチレンとノルボルネンの付加共重合体)を用いると、高い反射性能を有する反射材が得られるので特に好ましい。
【0058】
なお、シクロオレフィンとして、オレフィンとノルボルネンの共重合体を用いる場合、ノルボルネンの含有量は60〜90wt%であるのが好ましく、特に65wt%以上、80wt%以下であるのが好ましい。
【0059】
上記の非晶性樹脂(2成分以上の非晶性樹脂を含む場合には、これらの合計量)は、樹脂層(B)全体の質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%は除く。)である。
【0060】
上記のように、樹脂層(B)のベース樹脂、例えば熱可塑性樹脂(I)として、ガラス転移温度が85〜150℃である非晶性樹脂を用いる場合、耐折曲性を高める観点を加味すると、他の樹脂として、例えば熱可塑性樹脂(II)として、オレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマーなどを含有するのが好ましい。
例えばシクロオレフィン系樹脂に、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーを配合して樹脂層(B)を形成することで、シクロオレフィン系樹脂単独では得られなかった耐折曲性と、オレフィン系樹脂単独で得られなかった耐熱性とをともに確保することができる。
【0061】
この際、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(「MFR」と称する)は、0.1以上、或いは20以下(JISK7210、230℃、荷重21.18N)であるのが好ましく、特に0.5以上、或いは10以下であるのがより一層好ましい。
また、シクロオレフィン系樹脂のMFRも前記の範囲に調整することが好ましい。このように両者のMFRを調整すると、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーが、シクロオレフィン系樹脂中に配向して、反射材としての機械特性を極端に悪化させてしまう虞がないので、特に好ましい。
【0062】
シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂等を挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリエチレン樹脂(PE)やポリプロピレン樹脂(PP)が好ましく、その中でも特に、ポリエチレン樹脂(PE)に比べて融点が高く耐熱性に優れており、また、弾性率等の機械特性が高いという観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)が好ましい。
また、押出成形性の観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)の中でも、MFR(230℃ 21.18N)が0.1〜20、特に0.2〜10、中でも特に0.5〜5であるポリプロピレン樹脂(PP)が特に好ましい。
【0063】
また、樹脂層(A)(B)間の密着性を高める観点から、樹脂層(A)のオレフィン系樹脂と同一のモノマー単位を含むオレフィン系樹脂を含有するのが好ましい。
【0064】
他方、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、スチレン系エラストマーは、オレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂と相溶するため、樹脂層(A)と樹脂層(B)との接着性を向上させる観点から好ましい。
【0065】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンとブタジエン若しくはイソプレン等の共役ジエンの共重合体、及び/又は、その水素添加物等を挙げることができる。スチレン系エラストマーは、スチレンをハードセグメント、共役ジエンをソフトセグメントとしたブロック共重合体であり、加硫工程が不要であるため、好ましい。また、水素添加をしたものは熱安定性が高く、さらに好ましい。
スチレン系エラストマーの好ましい例としては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体を挙げることができる。
中でも特に、水素添加により共役ジエン成分の二重結合をなくした、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(水素添加されたスチレン系エラストマーともいう。)が好ましい。
【0066】
(微粉状充填剤)
樹脂層(B)は、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となる限りにおいて、微粉状充填剤を含有してもよい。微粉状充填剤の種類、粒径および表面処理方法に関しては、樹脂層(A)で説明した内容と同様であり、好ましい例も同様である。
【0067】
(他の成分)
樹脂層(B)は、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滑剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
なお、相溶化剤、分散剤及び拡散ビーズなどを配合すると、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)を所望範囲に調整することが難しくなるため、樹脂層(B)には基本的にこれらは配合しないが、少量であれば配合することも可能である。
【0068】
(樹脂層(B)の形態)
樹脂層(B)は、シート体からなる層であってもよいし、また、溶融樹脂組成物を押出或いは塗布などによって(シートを形成することなく)薄膜形成してなる層であってもよい。
シート体からなる場合、そのシート体は未延伸フィルムであっても、一軸或いは二軸延伸フィルムであってもよいが、少なくとも一軸方向に1.1倍以上延伸して得られる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0069】
<積層構成>
本反射材は、樹脂層(A)と樹脂層(B)を設けた積層構成を有することを要する。このような構成とすることで、樹脂層(A)に反射性を付与しつつ、耐折曲性などの加工性を保持し、樹脂層(B)に高光拡散性を付与することができる。
このように本反射材は、樹脂層(A)及び(B)の相互作用により、相乗効果を発揮することができ、極めて優れた反射性を奏することができる。
また、樹脂層(B)の樹脂を選択することで、耐熱性を付与させることも可能であり、より高い反射性を発揮しながら、耐熱性および加工性を付与させることができるなどの利点がある。よって、このような積層構成においては、光が照射される側(反射使用面側)の最外層に樹脂層(B)が位置することが好ましい。このような構成とすることで、反射材に高い反射性を付与することができる。
【0070】
また、その他の積層構成としては、例えば、樹脂層(A)の両面に樹脂層(B)を設けた3層の積層構成を挙げることができる。さらに、樹脂層(A)及び樹脂層(B)以外に他の層を備えてもよいし、樹脂層(A)及び樹脂層(B)の各層間に他の層が介在してもよい。例えば、樹脂層(A)、樹脂層(B)間に接着層が介在してもよい。
【0071】
<厚み>
本反射材の厚みは、特に限定するものではなく、例えば30μm〜1500μmであるのが好ましく、特に、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜1000μm程度であるのが好ましい。
例えば、液晶ディスプレイ用途の反射材としては、厚みが50μm〜700μmであるのが好ましく、例えば、照明器具、照明看板用途の反射材としては、厚みが100μm〜1000μmであるのが好ましい。
【0072】
後述する実施例の結果からも分かるように、樹脂層(B)は薄くても反射材全体の耐熱性を高めることができる一方、樹脂層(B)が厚過ぎると耐折曲性が低下してしまう。このような観点から、樹脂層(A)と樹脂層(B)の各層合計厚み比(例えば樹脂層(B)が2層ある場合には2層の合計厚みの比率)は、3:1〜15:1であることが好ましく、特に3:1〜10:1であるのがさらに好ましい。
【0073】
<平均反射率>
本反射材は、少なくとも片面の平均反射率が、波長420nm〜700nmの光に対して97%以上とすることができる。このような反射性を有するものであれば、反射材として良好な反射特性を示し、この反射材を組み込んだ液晶ディスプレイ等はその画面が十分な明るさを実現することができる。
【0074】
<空隙率>
本反射材は、反射性を高めるために樹脂層(A)に空隙を有する層を備えているが、樹脂層(A)の空隙率は、延伸によって空隙を形成する場合の空隙率は、樹脂層(A)を構成するフィルムを対象として次の式によって求めることができる。
空隙率(%)={(延伸前のフィルムの密度−延伸後のフィルムの密度)/延伸前のフィルムの密度}×100
【0075】
<耐折強度>
本反射材は、次の試験方法で測定される耐折強度を1000回以上とすることができる。
この際の試験方法は、MIT耐揉疲労試験機を使用し、長さ10cm、巾10mmに切断した試料に、9.8Nの荷重をかけ、往復折曲げ速度175rpm、振れ角左右135°の条件下で、切断に至るまでの折曲げ回数を測定するものである。
【0076】
<製造方法>
本反射材の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。以下に、積層構成を備えた反射材の製造方法について、一例を挙げて説明するが、下記製造方法に何ら限定されるものではない。
【0077】
先ず、オレフィン系樹脂などに、微粉状充填剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合した樹脂組成物Aを作製する。具体的には、主成分とするオレフィン系樹脂に微粉状充填剤等を必要に応じて加えてリボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、190℃〜270℃)で混練することにより樹脂組成物Aを得ることができる。または、オレフィン系樹脂、微粉状充填剤等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Aを得ることができる。また、微粉状充填剤、その他の添加剤等を予めオレフィン系樹脂に高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておきこのマスターバッチとオレフィン系樹脂とを混合して所望の濃度の樹脂組成物Aとすることもできる。
【0078】
他方、シクロオレフィン系樹脂などの非晶性樹脂に、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー、その他添加剤を必要に応じて配合した樹脂組成物Bを作製する。
具体的には、シクロオレフィン系樹脂に、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー、その他酸化防止剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、220℃〜280℃)で混練することにより、樹脂組成物Bを得ることができる。または、シクロオレフィン系樹脂、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Bを得ることができる。また、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとその他の酸化防止剤等を予めに高濃度に配合したいわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチとシクロオレフィン系樹脂、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを混合して所望の濃度の樹脂組成物Bとすることもできる。
【0079】
次に、このようにして得られた樹脂組成物A及びBを乾燥させた後、それぞれ別の押出機に供給し、それぞれ所定の温度以上に加熱して溶融させる。
押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であるが、例えば、樹脂組成物Aの押出温度は190℃〜270℃、樹脂組成物Bの押出温度は220℃〜280℃であることが好ましい。
その後、溶融した樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを2種3層用のTダイに合流させ、Tダイのスリット状の吐出口から積層状に押出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0080】
得られたキャストシートは、少なくとも1軸方向に延伸されていることが好ましい。延伸することにより、樹脂層(A)内部のオレフィン系樹脂と微粉状充填剤の界面が剥離して空隙が形成され、シートの白化が進行して、フィルムの光反射性を高めることができる。更に、キャストシートは2軸方向に延伸されていることが特に好ましい。1軸延伸をしたのみでは形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされたものとなり円盤状形態になる。
すなわち、2軸延伸することによって、樹脂層(A)内部のオレフィン系樹脂と微粉状充填剤との界面の剥離面積が増大し、シートの白化がさらに進行し、その結果、フィルムの光反射性をさらに高めることができる。また、2軸延伸するとフィルムの収縮方向の異方性が少なくなるので、フィルムに耐熱性を向上させることができ、またフィルムの機械的強度を増加させることもできる。
【0081】
キャストシートを延伸する際の延伸温度は、樹脂層(B)の非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲内の温度であることが好ましい。
延伸温度がガラス転移温度(Tg)以上であれば、延伸時にフィルムが破断することなく安定して行うことができる。また、延伸温度が(Tg+50℃)以下の温度であれば、延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高反射性のフィルムが得られやすい。
【0082】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってフィルムの引取り方向(MD)に延伸した後、テンター延伸によって、MDの直交方向(TD)に延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。2軸延伸の場合の延伸倍率は、面積倍率として6倍以上延伸することが好ましい。面積倍率を6倍以上延伸することによって、樹脂層(A)および樹脂層(B)で構成される反射フィルム全体の空隙率が40%以上を実現することができる場合がある。
【0083】
延伸後は、反射フィルムに寸法安定性(空隙の形態安定性)を付与するため、熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は110℃〜170℃であることが好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましく1秒〜3分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【0084】
<用途>
本反射材は、そのまま反射材として使用することも可能であるが、本反射材を金属板又は樹脂板に積層してなる構成として使用することも可能であり、例えば、液晶ディスプレイ等の液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射板として有用である。
【0085】
この際、本反射材を積層する金属板としては、例えば、アルミ板やステンレス板、亜鉛メッキ鋼板などを挙げることができる。
【0086】
金属板または樹脂板に本反射材を積層する方法としては、例えば接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに、熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等を挙げることができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0087】
より具体的には、金属板又は樹脂板(まとめて「金属板等」という)の反射材を貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射材を貼り合わせることができる。
かかる方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射材を貼り合わせる金属板等の表面に、乾燥後の接着剤膜厚が2μm〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。
次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、金属板等の表面を所定の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射材を被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。
【0088】
本反射材の用途としては、液晶ディスプレイ等の液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射部材として有用である。
一般に液晶ディスプレイは、液晶パネル、偏光反射シート、拡散シート、導光板、反射シート、光源、光源リフレクタ等から構成されている。
本反射材は、光源からの光を効率よく液晶パネルや導光板へ入射させる役割をする反射材として使用することもできるし、エッジ部に配置された光源からの照射光を集光し導光板に入射させる役割を有する光源リフレクタとして使用することもできる。
【0089】
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0090】
また、本明細書において「主成分」と表現した場合、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
【0091】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0093】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。以下、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0094】
(空隙率)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率(%)を求めた。
空隙率(%)={(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0095】
(平均反射率)
分光光度計(「U―3900H」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、アルミナ白板を100%とした時の反射率を、波長420nm〜700nmにわたって0.5nm間隔で測定した。得られた測定値の平均値を計算し、この値を平均反射率(%)とした。
【0096】
(反射材の波打ち評価)
20インチ型TVのバックライトユニットの構造(図1参照)を模したSUS板に対して、SUS板と反射材間に隙間がないように反射材(サンプル)を貼付け、80℃の熱風オーブンに投入した。3時間後に取り出し、室温まで冷却した。その後、SUS板と反射材間の距離(SUS板に対して反射材が何mm波打っているか)を測定した。
【0097】
(耐折強度)
MIT耐揉疲労試験機を使用し、実施例および比較例で作製したサンプルを、長さ10cm、巾10mmに切断して、9.8Nの荷重をかけ、往復折曲げ速度175rpm、振れ角左右135°の条件下で、切断に至るまでの折曲げ回数を測定した。
【0098】
(三次元表面粗さにおける算術平均粗さ(Sa))
下記の装置、条件により、反射材(サンプル)の表面(樹脂層B)を観察し、得られた画像について解析を行い、算術平均粗さ(以下「Sa」と表記する)を計算した。なお、計算に際しては、JIS B0601:2001に準拠した。
【0099】
装置 :電子線三次元粗さ解析装置「ERA−4000」(エリオニクス社製)
蒸着条件 :10mA×100sec、Pt−Pd蒸着
加速電圧 :10kV
観察倍率 :250倍
解析エリア:360(μm)×480(μm)
【0100】
(光拡散性)
下記の装置および条件により、反射材(サンプル)の反射光強度を測定し、次の式に代入して、正反射成分と拡散反射成分の強度比を計算した。
【0101】
反射成分強度比α=Σ(−5度〜5度の反射光強度)/Σ(25度〜35度の反射光強度)
反射成分強度比β=Σ(55度〜65度の反射光強度)/Σ(25度〜35度の反射光強度)
【0102】
装置:自動変角光度計「GP−1R型」(村上色彩技術研究所社製)
光源:ハロゲンランプ
光束しぼり径:10.5mm
受光しぼり径:4.5mm
光入射方向:フィルムのTD
光入射角:−30度
反射光の受光測定範囲:−30度〜90度
測定間隔:1度
【0103】
上記反射成分強度比αおよびβを下記評価基準に照らして、光拡散性の評価を行った。ただし、記号「○」、および「△」は実用レベル以上である。
=評価基準=
「○」:反射成分強度比αおよびβがともに、0.5以上
「△」:反射成分強度比αあるいはβのいずれかが、0.5以上
「×」:反射成分強度比αおよびβがともに、0.5未満
【0104】
<実施例1>
(樹脂層(A)の樹脂組成物Aの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、TiO含有量96.0%、製造法:塩素法)とを、50:50の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物Aを作製した。
【0105】
(樹脂層(B)の樹脂組成物Bの作製)
非晶性シクロオレフィン系樹脂A(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZEONOR 1430R」、密度(ASTMD792):1.01g/cm3、ガラス転移温度Tg(JISK7121):133℃、SP値:7.4)のペレットと、非晶性シクロオレフィン系樹脂B(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZEONOR1060R」、密度(ASTMD792):1.01g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):14g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):100℃、SP値:7.4)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPPEA9」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):0.5g/10min、SP値:8.0)のペレットを、50:25:25の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Bを作製した。
【0106】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物A、Bをそれぞれ、200℃、230℃に加熱された押出機A及びBに供給し、各押出機において、200℃および230℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)の3層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して積層シートを形成した。
得られた積層シートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ225μm(樹脂層(A):185μm、樹脂層(B):20μm 積層比A:B=4.6:1)の反射材(サンプル)を得た。
得られた反射材について空隙率、平均反射率、反射材の波打ち、耐折強度の評価を行った。
なお、空隙率に関しては、樹脂層(A)について評価を行った。すなわち、樹脂組成物Aを押出機Aに供給して、上記操作にしたがって、樹脂層(A)のみの単層フィルム(厚さ185μm)を得て、評価を行った。
【0107】
<実施例2>
実施例1の樹脂組成物Bの作製において、非晶性シクロオレフィン系樹脂A(日本ゼオン株式会社製、商品名「ZEONOR 1430R」、SP値:7.4)のペレット、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPPEA9」、SP値:8.0)のペレットを、75:25の質量割合で混合した点、また実施例1の反射材の作製において、得られた積層シートを、温度138℃で、MDに2倍ロール延伸し、さらに138℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行った点を除いて、実施例1と同様にして厚さ228μm(樹脂層(A):190μm、樹脂層(B):19μm 積層比A:B=5:1)の反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0108】
<実施例3>
(樹脂層(A)の樹脂組成物Aの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min、SP値:8.0)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、TiO2含有量96.0%、製造法:塩素法)とを50:50の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物Aを作製した。
【0109】
(樹脂層(B)の樹脂組成物Bの作製)
非晶性シクロオレフィン系樹脂C(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノア RCY50」、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物、密度(ISO1183):1.01g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK7210:1.2g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):127℃、SP値:7.4)のペレットと、非晶性シクロオレフィン系樹脂B(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノア 1060R」、環状オレフィンの開環重合体の水素添加物、密度(ISO1183):1.01g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK7210):12g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):100℃、SP値:7.4)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP EA9」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):0.5g/10min、SP値:8.0)のペレットを、50:25:25の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Bを作製した。
【0110】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物A、Bをそれぞれ、200℃、230℃に加熱された押出機A及びBに供給し、各押出機において、200℃および230℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)の3層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して積層シートを形成した。
得られた積層シートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ225μm(樹脂層(A):191μm、樹脂層(B):17μm、積層比A:B=5.6:1)の反射材(サンプル)を得た。
得られた反射材について、実施例1と同様の評価を行った。さらに、算術平均粗さ(Sa)および光拡散性の評価を行った。
【0111】
<実施例4>
(樹脂層(A)の樹脂組成物Aの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min、SP値:8.0)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、TiO2含有量96.0%、製造法:塩素法)とを50:50の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物Aを作製した。
【0112】
(樹脂層(B)の樹脂組成物Bの作製)
スチレン系共重合体(東洋スチレン社製、商品名「T080」、スチレン−メタクリル酸共重合体、密度(ISO1183):1.07cm、ガラス転移温度Tg(JISK−7121):123℃、MFR(200℃、49N、JISK−7210):1.7g/10min、SP値:10.6)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min、SP値:8.0)のペレットを、75:25の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Bを作製した。
【0113】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物A、Bをそれぞれ、200℃、230℃に加熱された押出機A及びBに供給し、各押出機において、200℃および230℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、樹脂層(B)/樹脂層(A)/樹脂層(B)の3層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して積層シートを形成した。
得られた積層シートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ225μm(樹脂層A:191μm、樹脂層B:17μm、積層比A:B=5.6:1)の反射材(サンプル)を得た。
得られた反射材について、実施例1と同様の評価を行った。
【0114】
実施例1〜4の反射材について、空隙率、平均反射率、波打ち及び耐折強度の結果を表2に示した。また、実施例3及び4の反射材について、SP値の絶対値の差、Sa、反射成分強度比及び光拡散性の結果を表3に示した。
【0115】
【表2】

【0116】
【表3】

【0117】
表3の結果から、SP値が異なり、その差の絶対値が0.3〜3.0(cal/cm0.5の範囲にある2種の樹脂をブレンドすることによって、表面粗さ(Sa)を0.5μm以上とすることができ、かつ高い光拡散性を発現できることがわかった。
また、SP値の差の絶対値と、表面粗さ(Sa)との相関関係がみられることから、ブレンド樹脂のSP値の絶対値の差が、表面粗さ(Sa)に影響を与えることがわかった。またブレンド樹脂について、SP値の差の絶対値を考慮しつつ、ブレンドする樹脂を選択することによって、耐熱性と耐折曲性を向上できることがわかった。
【0118】
次に、本反射材の樹脂層Bにおいて、SP値の絶対値の差が特定範囲にあるブレンド樹脂を使用して、特定の表面粗さ(Sa)となるように設計することで、光拡散性が発現することを確認するために、次のような実験を行なった(参考例1及び2を参照)。
【0119】
<参考例1>
(樹脂層Bの樹脂組成物Bの作製)
非晶性シクロオレフィン系樹脂C(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノア RCY50」、SP値:7.4)のペレットと、非晶性シクロオレフィン系樹脂B(日本ゼオン株式会社製、商品名「ゼオノア 1060R」、SP値:7.4)のペレットを、67:33の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Bを作製した。
【0120】
(二軸延伸シートの作製)
上記樹脂組成物Bを230℃に加熱された押出機に供給し、押出機において230℃で溶融混練した後、Tダイよりシート状に押出し、冷却固化してシートを形成した。得られたシートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ180μmの二軸延伸シートを得た。
得られた二軸延伸シートについて実施例3と同様にして、算術平均粗さ(Sa)と光拡散性の評価を行った。
【0121】
<参考例2>
(樹脂層Bの樹脂組成物Bの作製)
スチレン系共重合体(東洋スチレン社製、商品名「T080」、SP値:10.6)のペレットをそのまま、樹脂組成物Bとした。
【0122】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物Bを、加熱温度190℃、プレス圧2MPa、加圧時間10分、冷却時間15分の条件でプレス成形を行い、厚さ180μmのプレスシート(サンプル)を得た。
得られたプレスシートについて参考例1と同様の評価を行った。
【0123】
参考例1及び2のシートについて、SP値の絶対値の差、Sa、反射成分強度比及び光拡散性の結果を表4に示した。
【0124】

【表4】

【0125】
参考例1及び2は、本反射材の樹脂層(B)を非ブレンド樹脂とした場合を想定したものであり、これらの場合では、単体樹脂のためSP値に差がなく、表4に示した反射成分強度比からも光拡散性を発現しないことが確認された。
よって、本反射材の樹脂層(B)が光拡散性を発現するには、ブレンド樹脂によって、樹脂層(B)の表面粗さ(Sa)を0.5μm以上とする必要があることが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、溶解度パラメータ(SP値)が異なる2種以上の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(B)を備え、
樹脂層(B)は、溶解度パラメータ(SP値)が異なる熱可塑性樹脂の組み合わせによって、三次元表面粗さの算術平均粗さ(Sa)が0.5μm以上となっていることを特徴とする反射材。
【請求項2】
内部に空隙を有する樹脂層(A)の少なくとも片面に、溶解度パラメータ(SP値)の絶対値の差が0.3〜3.0(cal/cm0.5である2種以上の熱可塑性樹脂を含有する樹脂層(B)を備えた反射材。
【請求項3】
溶解度パラメータ(SP値)の絶対値の差が0.3〜3.0(cal/cm0.5である2種以上の熱可塑性樹脂が、樹脂層(B)を構成する樹脂全体の70質量%以上を占めることを特徴とする請求項2に記載の反射材。
【請求項4】
樹脂層(B)を構成する樹脂の少なくとも一種が、ガラス転移温度(JISK7121)が85〜150℃である非晶性樹脂であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射材。
【請求項5】
前記非晶性樹脂が、シクロオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項4に記載の反射材。
【請求項6】
樹脂層(A)が微粉状充填剤を含有する、請求項1〜5の何れかに記載の反射材。
【請求項7】
樹脂層(A)の空隙率が20%以上70%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射材。
【請求項8】
樹脂層(A)が、オレフィン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の反射材。
【請求項9】
樹脂層(B)が、反射材の反射使用面である最外層に位置することを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の反射材。
【請求項10】
樹脂層(A)と樹脂層(B)との各層合計厚み比が、(A):(B)=3:1〜15:1であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の反射材。
【請求項11】
液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板の構成部材として使用することを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の反射材。

【図1】
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【公開番号】特開2012−158167(P2012−158167A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153954(P2011−153954)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】