説明

反射材

【課題】優れた反射性を有し、しかも耐熱性および耐折性に優れた反射材を提供する。
【解決手段】シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂層(A)を備えた反射材を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板などの構成部材として好適に使用することができる反射材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイをはじめ、照明器具或いは照明看板など多くの分野で反射材が使用されている。最近では、液晶ディスプレイの分野において装置の大型化及び表示性能の高度化が進み、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させることが求められるようになり、反射材に対しても、より一層優れた光反射性(単に「反射性」ともいう)が求められるようになってきている。
【0003】
反射材として、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を主原料とする白色ポリエステルフィルムを用いた液晶ディスプレイ用の反射フィルムが知られている(特許文献1参照)。
しかし、反射材の材料として芳香族ポリエステル系樹脂を用いた場合、芳香族ポリエステル系樹脂の分子鎖中に含まれる芳香環が紫外線を吸収するため、液晶表示装置等の光源から発せられる紫外線によって、フィルムが劣化、黄変して、反射フィルムの光反射性が低下するという問題があった。
【0004】
また、ポリプロピレン樹脂に充填剤を添加して形成されたフィルムを延伸することによって、フィルム内に微細な空隙を形成させ、光散乱反射を生じさせた反射材(特許文献2参照)や、オレフィン系樹脂とフィラーを含有する基材層と、オレフィン系樹脂を含む層より構成された積層構成のオレフィン系樹脂光反射体も知られている(特許文献3参照)。
このようなオレフィン系樹脂を用いた反射フィルムは、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少ないという特徴を有する。
【0005】
さらに、無機粉末を多量には含まない樹脂組成物からなる反射シートとして、ポリプロピレン樹脂と、該ポリプロピレン樹脂と非相溶性の樹脂の少なくとも1種以上とを含む、熱収縮率が低減された二軸延伸反射シートが知られている(特許文献4参照)。
この反射シートは、無機粉末を多量に含まなくとも、坪量、密度が同程度の従来の反射シートに比べてより高い反射率を示すという特徴を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平04−239540号公報
【特許文献2】特開平11−174213号公報
【特許文献3】特開2005−031653号公報
【特許文献4】特開2008−158134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オレフィン系樹脂を用いた反射材は、上述のように、紫外線によるフィルムの劣化や黄変の問題が少なく、その有用性は高い。しかし、耐熱性が十分ではないので、耐熱性が要求される液晶ディスプレイの構成部材として使用した場合に、熱によってフィルムが収縮したり、波打ちが発生したりする等の問題があった。
液晶ディスプレイや、照明器具、照明看板などの分野では、近年、LEDなどの高温発熱を伴う光源が使用されており、反射材により一層の耐熱性が求められている。
【0008】
他方、折り曲げ加工等を施した反射材を液晶表示装置内に組み込んで使用されることがあり、反射材には、このような折り曲げ加工性も求められる。
【0009】
そこで本発明の目的は、優れた反射性を有し、耐熱性および耐折性にも優れ、高温環境下でも収縮しない、新たな反射材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、反射材を構成する主原料として、可視光の吸収が少なく、耐熱性がある樹脂としてシクロオレフィン系樹脂に注目した。しかし、シクロオレフィン樹脂を用いた反射材は、液晶ディスプレイの液晶ディスプレイのバックシャーシ形状に合わせて曲げ加工する際の耐折り曲げ性に問題があることが判明した。
そこで、シクロオレフィン系樹脂に、シクロレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂や熱可塑性エラストマーを配合することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂層(A)を備えた反射材を提案するものである。
【0012】
本発明の反射材は、シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂層(A)を備えるため、シクロオレフィン系樹脂単独では得られなかった耐折性と、オレフィン系樹脂単独で得られなかった耐熱性とをともに確保することができるようになり、高温環境下でも収縮しないようにすることができる。よって、本発明の反射材は、液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板などの反射材として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例としての反射材(「本反射材」と称する)について説明する。但し、本発明が、この本反射材に限定されるものではない。
【0014】
<本反射材>
本反射材は、シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂層(A)を備えた反射材である。
【0015】
本反射材は、樹脂層(A)を備えていればよいから、他の層を備えていてもよい。例えば、樹脂層(A)とオレフィン系樹脂を含有する樹脂層(B)とを備えた構成は、本反射材の好ましい積層構成の一つである。
そこで、以下では、樹脂層(A)及び樹脂層(B)についてそれぞれ説明した後、本反射材の積層構成、厚み、物性(反射率、空隙率、耐折強度)、製造方法、用途などについて順次説明する。
【0016】
<樹脂層(A)>
樹脂層(A)は、シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを主成分として含有する層であり、反射性能を高めるためにさらに微粉状充填剤を含有してもよい。
【0017】
(シクロオレフィン系樹脂)
樹脂層(A)のシクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンホモポリマー、シクロオレフィンコポリマーのいずれであってもよい。
シクロオレフィン系樹脂とは、主鎖が炭素−炭素結合からなり、主鎖の少なくとも一部に環状炭化水素構造を有する高分子化合物である。この環状炭化水素構造は、ノルボルネンやテトラシクロドデセンに代表されるような、環状炭化水素構造中に少なくとも一つのオレフィン性二重結合を有する化合物(シクロオレフィン)を単量体として用いることで導入される。
【0018】
シクロオレフィン系樹脂は、シクロオレフィンの付加(共)重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物、シクロオレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物に分類され、いずれも本反射材に用いることができる。
【0019】
シクロオレフィン系樹脂の具体例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン;シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等の1環のシクロオレフィン;ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環のシクロオレフィン;
【0020】
トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン;トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,7−ジエン若しくはトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエン又はこれらの部分水素添加物(又はシクロペンタジエンとシクロヘキセンの付加物)であるトリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3−エン;5−シクロペンチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−シクロヘキセニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンといった3環のシクロオレフィン;
【0021】
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(単にテトラシクロドデセンともいう)、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルテトラシクロ[4,4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−プロペニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンといった4環のシクロオレフィン;
【0022】
8−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキシル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−シクロヘキセニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−フェニル−シクロペンチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン;テトラシクロ[7.4.13,6.01,9.02,7]テトラデカ−4,9,11,13−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)、テトラシクロ[8.4.14,7.01,10.03,8]ペンタデカ−5,10,12,14−テトラエン(1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−へキサヒドロアントラセンともいう);ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ペンタシクロ[7.4.0.02,7.13,6.110,13]−4−ペンタデセン;ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.03,8.14,7.012,17.113,16]−14−エイコセン;シクロペンタジエンの4量体などの多環のシクロオレフィンなどを挙げることができる。
これらのシクロオレフィンは、それぞれ単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
シクロオレフィンと共重合可能なα−オレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−へキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの炭素数2〜20、好ましくは炭素数2〜8のエチレン又はα−オレフィンなどを挙げることができる。これらのα−オレフィンは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
シクロオレフィン又はシクロオレフィンとα−オレフィンとの重合方法及び得られた重合体の水素添加方法に、格別な制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。
【0025】
以上のシクロオレフィン系樹脂の中でも、耐熱性の観点から、ガラス転移温度(Tg)が70〜170℃、特に80℃以上、160℃以下、中でも特に85℃以上、150℃以下のシクロオレフィン樹脂が好ましい。
この際、2種類以上のシクロオレフィン樹脂を組み合わせて混合し、混合樹脂のガラス転移温度(Tg)を上記範囲に調整するようにしてもよい。
【0026】
本反射材では、シクロオレフィン系樹脂として市販製品を用いることができる。例えば、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」(化学名;環状オレフィンの開環重合体の水素添加物)、三井化学社製の「アペル(登録商標)」(エチレンとテトラシクロドデセンの付加共重合体)やポリプラスチックス社製の「TOPAS(登録商標)」(エチレンとノルボルネンの付加共重合体)等を挙げることができる。この中でも、日本ゼオン社製の「ゼオノア(登録商標)」(化学名;環状オレフィンの開環重合体の水素添加物)及び/又は、ポリプラスチックス社製の「TOPAS(登録商標)」(エチレンとノルボルネンの付加共重合体)を用いると、高い反射性能を有する反射材が得られるので特に好ましい。
【0027】
なお、シクロオレフィンとして、オレフィンとノルボルネンの共重合体を用いる場合、ノルボルネンの含有量は60〜90wt%であるのが好ましく、特に65wt%以上、80wt%以下であるのが好ましい。
【0028】
(オレフィン系樹脂・熱可塑性エラストマー)
シクロオレフィン系樹脂に、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーを配合して樹脂層(A)を形成することで、シクロオレフィン系樹脂のみを主成分として樹脂層(A)を形成した場合には得られなかった耐折性と、オレフィン系樹脂のみを主成分として樹脂層(A)を形成した場合には得られなかった耐熱性とをともに確保することができる。
この際、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(「MFR」と称する)は、0.1以上、或いは20以下(JISK7210、230℃、荷重21.18N)であるのが好ましく、特に0.5以上、或いは10以下であるのがより一層好ましい。
また、シクロオレフィン系樹脂のMFRも前記の範囲に調整することが好ましい。このように両者のMFRを調整すると、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーが、シクロオレフィン系樹脂中に配向して、反射材としての機械特性を極端に悪化させてしまう虞がないので、特に好ましい。
【0029】
シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂としては、例えばポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂等を挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリエチレン樹脂(PE)やポリプロピレン樹脂(PP)が好ましく、その中でも特に、PEに比べて融点が高く耐熱性に優れており、また、弾性率等の機械特性が高いという観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)が好ましい。
また、押出成形性の観点から、ポリプロピレン樹脂(PP)の中でも、MFR(230℃ 21.18N)が0.1〜20、特に0.2〜10、中でも特に0.5〜5であるポリプロピレン樹脂(PP)が特に好ましい。
【0030】
他方、熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等を挙げることができ、これらのうちの一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、スチレン系エラストマーは、樹脂層(B)のオレフィン系樹脂、特にポリプロピレン樹脂と相溶するため、樹脂層(A)と樹脂層(B)との接着性を向上させる観点から好ましい。
また、樹脂層(A)と樹脂層(B)との接着性を向上させる観点からすると、樹脂層(B)のオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン樹脂を採用し、樹脂層(A)の熱可塑性エラストマーとして、スチレン系エラストマーを採用するのがより好ましい。
【0031】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレンとブタジエン若しくはイソプレン等の共役ジエンの共重合体、及び/又は、その水素添加物等を挙げることができる。スチレン系エラストマーは、スチレンをハードセグメント、共役ジエンをソフトセグメントとしたブロック共重合体であり、加硫工程が不要であるため、好ましい。また、水素添加をしたものは熱安定性が高く、さらに好ましい。
スチレン系エラストマーの好ましい例としては、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体を挙げることができる。
中でも特に、水素添加により共役ジエン成分の二重結合をなくした、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(水素添加されたスチレン系エラストマーともいう。)が好ましい。
【0032】
(微粉状充填剤)
樹脂層Aは、光反射性を得るために、微粉状充填剤を含有してもよい。
微粉状充填剤を含有することで、屈折率差による屈折散乱のほか、微粉状充填剤の周囲に形成される空洞との屈折率差による屈折散乱、さらに微粉状充填剤の周囲に形成される空洞と微粉状充填剤との屈折率差による屈折散乱などからも光反射性を得ることができる。
ただし、後述するように、樹脂層(A)および樹脂層(B)の積層構成を備えた反射材の場合には、樹脂層(B)に微粉状充填剤を含有させれば、十分な光反射性を確保できるので、樹脂層(A)に微粉状充填剤を含有させなくてもよい。
【0033】
微粉状充填剤としては、無機質微粉体、有機質微粉体等を例示することができる。
無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等を挙げることができる。これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、シートを構成する樹脂との屈折率差を考慮すると、屈折率の大きいものが好ましく、屈折率が1.6以上である、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン又は酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。
酸化チタンは、他の無機充填剤に比べて屈折率が顕著に高く、ベース樹脂との屈折率差を顕著に大きくすることができるため、他の充填剤を使用した場合よりも少ない配合量で優れた反射性を得ることができる。さらに、酸化チタンを用いることにより、反射材の厚みを薄くしても高い光反射性を得ることができる。
従って、少なくとも酸化チタンを含む充填剤を用いるのがより好ましく、この場合、酸化チタンの量は、無機充填剤の合計質量の30%以上、または有機充填剤と無機充填剤とを組み合わせて使用する場合はその合計質量の30%以上とするのが好ましい。
無機質微粉体の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、シリコン系化合物、多価アルコール系化合物、アミン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用してもよい。
【0034】
有機質微粉体としては、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等が挙げられ、これらは、いずれか1種または2種以上を混合して用いることができる。
無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて用いてもよい。
【0035】
微粉状充填剤は、粒径が0.05μm以上15μm以下であることが好ましく、より好ましくは粒径が0.1μm以上或いは10μm以下である。充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、オレフィン系樹脂への分散性が低下することがないので、均質な反射材が得られる。また粒径が15μm以下であれば、オレフィン系樹脂と微粉状充填剤との界面が緻密に形成されて、高反射性の反射材が得られる。
【0036】
また、微粉状充填剤量としては、反射材の光反射性、機械的強度、生産性等を考慮すると樹脂層(A)全体の質量に対して、10〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのがさらに好ましい。微粉状充填剤の含有量が20質量%以上であれば、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができ、反射材に高反射性を付与することができる。微粉状充填剤の含有量が70質量%以下であれば、反射材に必要な機械的強度を確保することができる。
【0037】
(他の成分)
樹脂層Aは、熱可塑性エラストマーなどを含めて他の樹脂(「他成分樹脂」という)を含有してもよい。また、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、相溶化剤、滑剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
【0038】
(樹脂層(A)の形態)
樹脂層(A)は、シート体からなる層であってもよいし、また、溶融樹脂組成物を押出或いは塗布などによって(シートを形成することなく)薄膜形成してなる層であってもよい。
シート体からなる場合、そのシート体は未延伸フィルムであっても、一軸或いは二軸延伸フィルムであってもよいが、少なくとも一軸方向に1.1倍以上延伸して得られる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0039】
(樹脂層(A)の空隙率)
樹脂層(A)は、反射性能を高める観点からすると、内部に20%以上80%以下の範囲で微細な空隙を有することが好ましい。言い換えれば、樹脂層(A)の空隙率、すなわち樹脂層(A)に占める空隙の体積割合は、20%以上80%以下であるのが好ましく、特に25%以上、或いは、75%以下、中でも特に30%以上、或いは、70%以下であるのが好ましい。
【0040】
<樹脂層(B)>
樹脂層(B)は、オレフィン系樹脂を主成分として含有する層であり、反射性能を高めるためにさらに微粉状充填剤を含有してもよい。
本反射材は、樹脂層(A)以外に、このような樹脂層(B)を備えることで、例えば、樹脂層(B)に光反射性を付与させ、樹脂層(A)に耐熱性を付与させるなどの機能分離が可能になり、より一層高い反射性能と共に、より一層優れた耐熱性及び耐折性を得ることができるなどの利点がある。
【0041】
(オレフィン系樹脂)
樹脂層(B)に用いるオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体等のポリプロピレン樹脂や、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂や、エチレン−環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィン系樹脂(上述したシクロオレフィン系樹脂を含む。)や、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等のオレフィン系エラストマーから選ばれた少なくとも一種のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。これらの中でも、機械的性質、柔軟性などから、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が好ましく、その中でもポリプロピレンが最も好ましい。
【0042】
なお、樹脂層(B)のオレフィン系樹脂は、樹脂層(A)(B)間の密着性を高める観点から、樹脂層(A)がオレフィン樹脂を含有する場合には、このオレフィン系樹脂と同一のモノマー単位を含むオレフィン系樹脂を使用するのが好ましい。
【0043】
(微粉状充填剤)
樹脂層Bは、より一層の反射性能を得る観点から、上記オレフィン系樹脂以外に微粉状充填剤を含有することが好ましい。
微粉状充填剤の種類、粒径および表面処理方法に関しては、樹脂層(A)で説明した内容と同様であり、好ましい例も同様である。
【0044】
樹脂層Bに含有される微粉状充填剤の含有量は、反射材の光反射性、機械的強度、生産性等を考慮すると、樹脂層(B)全体の質量に対して、10〜80質量%であるのが好ましく、20〜70質量%であるのがさらに好ましい。微粉状充填剤の含有量が20質量%以上であれば、ベース樹脂と微粉状充填剤との界面の面積を充分に確保することができ、反射材に高反射性を付与することができる。微粉状充填剤の含有量が70質量%以下であれば、反射材に必要な機械的強度を確保することができる。
【0045】
(他の成分)
樹脂層Bに含有される他の成分としては、他の樹脂を含有してもよい。また、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、相溶化剤、滑剤及びその他の添加剤を含有してもよい。
【0046】
(樹脂層(B)の形態)
樹脂層(B)は、シート体からなる層であってもよいし、また、溶融樹脂組成物を押出或いは塗布などによって(シートを形成することなく)薄膜形成してなる層であってもよい。
シート体からなる場合、そのシート体は未延伸フィルムであっても、一軸或いは二軸延伸フィルムであってもよいが、少なくとも一軸方向に1.1倍以上延伸して得られる延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
【0047】
(樹脂層(B)の空隙率)
樹脂層(B)は、反射性能を高める観点から、内部に20%以上80%以下の範囲で微細な空隙を有することが好ましい。言い換えれば、樹脂層(B)の空隙率、すなわち樹脂層(B)に占める空隙の体積割合は、20%以上80%以下であるのが好ましく、特に25%以上、或いは、75%以下、中でも特に30%以上、或いは、70%以下であるのが好ましい。
【0048】
<積層構成>
本反射材は、樹脂層(A)からなる単層構成であってもよいし、樹脂層(B)を備えた2層構成、或いは、樹脂層(A)及び(B)からなる3層構成、すなわち(A)/(B)/(A)又は(B)/(A)/(B)であってもよい。
樹脂層(A)以外に樹脂層(B)を積層することにより、樹脂層(A)には主に耐熱性を付与する役割を持たせ、樹脂層(B)には主に光反射性を付与する役割を持たせることができるなど、各層の機能分離が可能になり、反射性能、耐熱性及び耐折性の全てを高めることができる。
【0049】
また、樹脂層(A)及び(B)以外の層を備えた3層以上の多層構成であってもよい。例えば樹脂層(A)及び樹脂層(B)の各層間に例えば接着層を介在させるようにしてもよい。
【0050】
上記各種構成において、樹脂層(A)は、反射材全体の耐熱性を高める観点から、反射材の反射使用面である最外層に位置することが好ましい。
【0051】
<厚み>
本反射材の厚みは、特に限定するものではなく、例えば30μm〜1500μmであるのが好ましく、特に、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜1000μm程度であるのが好ましい。
例えば、液晶ディスプレイ用途の反射材としては、厚みが50μm〜700μmであるのが好ましく、例えば、照明器具、照明看板用途の反射材としては、厚みが100μm〜1000μmであるのが好ましい。
【0052】
樹脂層(A)の他に樹脂層(B)を設ける場合、樹脂層(A)と樹脂層(B)の各層合計厚み比(例えば樹脂層(A)が2層ある場合には2層の合計厚みの比率)は、1:2〜1:15であることが好ましい。樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚み比率が1:2以上に樹脂層(B)の厚み比率が大きければ、反射特性に悪影響を及ぼすことがないので好ましい。また柔軟性が十分となるため良好な折り曲げ加工性が得られやすくなり好ましい。また、樹脂層(A)と樹脂層(B)の厚み比率が1:15以上に樹脂層(A)の厚み比率が大きければ、耐熱性が得られるため好ましい。
【0053】
<反射率>
本反射材は、少なくとも片面の平均反射率が、波長420nm〜700nmの光に対して97%以上とすることができる。このような反射性能を有するものであれば、反射材として良好な反射特性を示し、この反射材を組み込んだ液晶ディスプレイ等はその画面が十分な明るさを実現することができる。
【0054】
<空隙率>
本反射材は、反射性能を高めるために空隙を有する層を備えているのが好ましく、その層の空隙率、すなわち、空隙が当該層に占める体積割合は、10%以上、90%以下、特に20%以上80%以下であることが好ましい。このような範囲の空隙を設けることで、反射材の白化が十分に進行するので高い光反射性を達成することができ、また、反射材の機械的強度が低下して、破断することがない。
【0055】
上記のような空隙を有する層は、樹脂層(A)(B)の何れかであっても、両方であっても、その他の層であってもよい。
但し、樹脂層(A)(B)を備える構成においては、樹脂層(A)に空隙を設けると耐熱性が低下し、また、弾性率等の機械特性も低下するため、樹脂層(B)にのみ上記の空隙を設けるのが好ましい。このような空隙を樹脂層(B)のみに設けることで、フィルム全体の耐熱性を高めることができ、耐熱性が低下する虞がない。
【0056】
なお、反射材の空隙率は、延伸によって空隙を形成する場合の空隙率は、次の式によって求めることができる。
空隙率(%)={(延伸前のフィルムの密度−延伸後のフィルムの密度)/延伸前のフィルムの密度}×100
【0057】
<耐折強度>
本反射材は、主に樹脂層(A)におけるシクロオレフィン系樹脂と、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとの比率を調整することで、次の試験方法で測定される耐折強度を1000回以上とすることができる。
【0058】
この際の試験方法は、MIT耐揉疲労試験機を使用し、長さ10cm、巾10mmに切断した試料に、9.8Nの荷重をかけ、往復折曲げ速度175rpm、振れ角左右135°の条件下で、切断に至るまでの折曲げ回数を測定するものである。
【0059】
<製造方法>
本反射材の製造方法としては、特に制限されるものではなく、公知の方法を採用することができる。以下に、積層構成を備えた反射材の製造方法について、一例を挙げて説明するが、下記製造方法に何ら限定されるものではない。
【0060】
先ず、シクロオレフィン系樹脂に、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー、その他添加剤を必要に応じて配合した樹脂組成物Aを作製する。具体的には、シクロオレフィン系樹脂に、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー、その他酸化防止剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の流動開始温度以上の温度(例えば、220℃〜270℃)で混練することにより、樹脂組成物Aを得ることができる。または、シクロオレフィン系樹脂、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマー等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Aを得ることができる。また、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとその他の酸化防止剤等を予めに高濃度に配合したいわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチとシクロオレフィン系樹脂、オレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを混合して所望の濃度の樹脂組成物Aとすることもできる。
【0061】
他方、オレフィン系樹脂に、微粉状充填剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合した樹脂組成物Bを作製する。具体的には、主成分とするオレフィン系樹脂に微粉状充填剤等を必要に応じて加えてリボンブレンダー、タンブラー、 ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度(例えば、190℃〜270℃)で混練することにより樹脂組成物Aを得ることができる。
または、オレフィン系樹脂、微粉状充填剤等を別々のフィーダー等により所定量を添加することにより樹脂組成物Bを得ることができる。また、微粉状充填剤、その他の添加剤等を予めオレフィン系樹脂に高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておきこのマスターバッチとオレフィン系樹脂とを混合して所望の濃度の樹脂組成物Bとすることもできる。
【0062】
次に、このようにして得られた樹脂組成物A及びBを乾燥させた後、それぞれ別の押出機に供給し、それぞれ所定の温度以上に加熱して溶融させる。
押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であるが、例えば、樹脂組成物Aの押出温度は220℃〜270℃、樹脂組成物Bの押出温度は190〜270℃であることが好ましい。
その後、溶融した樹脂組成物A及び樹脂組成物Bを2種3層用のTダイに合流させ、Tダイのスリット状の吐出口から積層状に押出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0063】
得られたキャストシートは、少なくとも1軸方向に延伸されているのが好ましい。延伸することにより、樹脂層(B)内部のオレフィン系樹脂と微粉状充填剤の界面が剥離して空隙が形成され、シートの白化が進行して、フィルムの光反射性を高めることができる。更に、キャストシートは2軸方向に延伸されていることが特に好ましい。1軸延伸をしたのみでは形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされたものとなり円盤状形態になる。
すなわち、2軸延伸することによって、樹脂層(B)内部のオレフィン系樹脂と微粉状充填剤との界面の剥離面積が増大し、シートの白化がさらに進行し、その結果、フィルムの光反射性をさらに高めることができる。また、2軸延伸するとフィルムの収縮方向の異方性が少なくなるので、フィルムに耐熱性を向上させることができ、またフィルムの機械的強度を増加させることもできる。
【0064】
キャストシートを延伸する際の延伸温度は、樹脂層(A)のシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲内のg)以上、(Tg+50℃)以下の範囲内の温度であることが好ましい。
延伸温度がガラス転移温度(Tg)以上であれば、延伸時にフィルムが破断することなく安定して行うことができる。また、延伸温度が(Tg+50)℃以下の温度であれば、延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高い反射率のフィルムが得られやすい。
【0065】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMDに延伸した後、テンター延伸によってTDに延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。2軸延伸の場合の延伸倍率は、面積倍率として6倍以上延伸することが好ましい。面積倍率を6倍以上延伸することによって、樹脂層(A)および樹脂層(B)で構成される反射材全体の空隙率が40%以上を実現することができる場合がある。
【0066】
延伸後は、反射材に寸法安定性(空隙の形態安定性)を付与するため、熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は130〜160℃であることが好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましく1秒〜3分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【0067】
<用途>
本反射材は、そのまま反射材として使用することも可能であるが、本反射材を金属板又は樹脂板に積層してなる構成として使用することも可能であり、例えば、液晶ディスプレイ等の液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射板として有用である。
【0068】
この際、本反射材を積層する金属板としては、例えば、アルミ板やステンレス板、亜鉛メッキ鋼板などを挙げることができる。
【0069】
金属板または樹脂板に本反射材を積層する方法としては、例えば接着剤を使用する方法、接着剤を使用せずに、熱融着する方法、接着性シートを介して接着する方法、押出しコーティングする方法等を挙げることができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0070】
より具体的には、金属板又は樹脂板(まとめて「金属板等」という)の反射材を貼り合わせる側の面に、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系等の接着剤を塗布し、反射材を貼り合わせることができる。
かかる方法においては、リバースロールコーター、キスロールコーター等の一般的に使用されるコーティング設備を使用し、反射材を貼り合わせる金属板等の表面に、乾燥後の接着剤膜厚が2μm〜4μm程度となるように接着剤を塗布する。
次いで、赤外線ヒーター及び熱風加熱炉により塗布面の乾燥及び加熱を行い、金属板等の表面を所定の温度に保持しつつ、直ちにロールラミネーターを用いて、反射材を被覆、冷却することにより、反射板を得ることできる。
【0071】
本反射材の用途としては、液晶ディスプレイ等の液晶表示装置、照明器具、照明看板等に用いられる反射部材として有用である。
一般に液晶ディスプレイは、液晶パネル、偏光反射シート、拡散シート、導光板、反射シート、光源、光源リフレクタ等から構成されている。
本反射材は、光源からの光を効率よく液晶パネルや導光板へ入射させる役割をする反射材として使用することもできるし、エッジ部に配置された光源からの照射光を集光し導光板に入射させる役割を有する光源リフレクタとして使用することもできる。
【0072】
<用語の説明>
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0073】
また、本明細書において「主成分」と表現した場合、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占めるものである。
【0074】
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
【実施例】
【0075】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0076】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。以下、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0077】
(空隙率)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率(%)を求めた。
空隙率(%)={(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0078】
(平均反射率)
分光光度計(「U―3900H」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、アルミナ白板を100%とした時の反射率を、波長420nm〜700nmにわたって0.5nm間隔で測定した。得られた測定値の平均値を計算し、この値を平均反射率(%)とした。
【0079】
(熱収縮率(%))
サンプル(フィルム)のMDおよびTDのそれぞれに200mm幅の標線を入れ、サンプルとして切り出した。この切り出したサンプルを、温度80℃の熱風循環オーブンの中に入れて3時間保持した後、サンプルが収縮した収縮量を測定した。オーブンに入れる前のサンプルの原寸(200mm)に対する収縮量の比率を%値で表示し、これを熱収縮率(%)とした。
【0080】
(耐折試験)
MIT耐揉疲労試験機を使用し、実施例および比較例で作製したサンプルを、長さ10cm、巾10mmに切断して、9.8Nの荷重をかけ、往復折曲げ速度175rpm、振れ角左右135°の条件下で、切断に至るまでの折曲げ回数を測定した。
【0081】
<実施例1>
(樹脂層Aの樹脂組成物Aの作製)
シクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス株式会社製、商品名[TOPAS6013」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):138℃)のペレットと、シクロオレフィン系樹脂B(ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS8007」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):10g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):78℃)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPPEA9」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):0.5g/10min)のペレットを、59:16:25の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Aを作製した。
【0082】
(樹脂層Bの樹脂組成物Bの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、Ti02含有量96.0%、製造法:塩素法)とを50:50の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物Bを作製した。
【0083】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物A、Bをそれぞれ、230℃、200℃に加熱された押出機A及びBに供給し、各押出機において、230℃および200℃で溶融混練した後、2種3層用のTダイに合流させ、樹脂層A/樹脂層B/樹脂層Aの3層構成になるようにシート状に押出し、冷却固化して積層シートを形成した。
得られた積層シートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ225μm(樹脂層A:17μm、樹脂層B:191μm、積層比A:B=1:5.6)の反射材(サンプル)を得た。
得られた反射材について空隙率、平均反射率、耐熱試験、耐折試験の評価を行った。
なお、空隙率に関しては、樹脂層A内部には空隙は無しとして、フィルム全体の空隙率から樹脂層Bの空隙率を算出し、これを反射材(サンプル)の空隙率(%)とした。
【0084】
<実施例2>
実施例1において、樹脂組成物Aと樹脂組成物Bの押出量を変更した点を除いて、実施例1と同様にして厚さ215μm(樹脂層A:31μm、樹脂層B:153μm、積層比A:B=1:2.5)の反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
<実施例3>
実施例1の樹脂組成物Aの作製において、シクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス株式会社製、商品名[TOPAS6013」)、シクロオレフィン系樹脂B(ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS8007」)、スチレン系エラストマー(株式会社クラレ製、商品名「セプトン2007」、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットを、59:16:25の質量割合で混合した点を除いて、実施例1と同様にして、厚さ234μm(樹脂層A;16μm、樹脂層B;202μm 積層比A:B=1:6.3)の反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0086】
<実施例4>
実施例1の樹脂組成物Bの作製において、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、Ti02含有量96.0%、製造法:塩素法)とを89:11の質量割合で混合した点を除いて、実施例1と同様にして厚さ231μm(樹脂層A;19μm、樹脂層B;193μm 積層比A:B=1:5.1)の反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0087】
<実施例5>
(樹脂層Aの樹脂組成物Aの作製)
シクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス株式会社製、商品名[TOPAS6013」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):138℃)のペレットと、シクロオレフィン系樹脂B(ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS8007」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):10g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):78℃)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、Ti02含有量96.0%、製造法:塩素法)とを、36:10:27:27の質量割合で混合した後、230℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Aを作製した。
【0088】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物Aを、230℃に加熱された押出機に供給し、押出機において、230℃で溶融混練した後、Tダイよりシート状に押出し、冷却固化してシートを形成した。
得られたシートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ233μmの反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0089】
<実施例6>
実施例5の樹脂組成物Aの作製において、シクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス株式会社製、商品名[TOPAS6013」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):138℃)のペレットと、シクロオレフィン系樹脂B(ポリプラスチックス株式会社製、商品名「TOPAS8007」、エチレンとノルボルネンの付加共重合体、密度(ISO1183):1.02g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):10g/10min、ガラス転移温度Tg(JISK7121):78℃)のペレットと、ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」、密度(JISK7112):0.9g/cm3、MFR(230℃、21.18N、JISK−7210):2.4g/10min)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」、密度4.2g/cm3、ルチル型酸化チタン、Al,Si表面処理、Ti02含有量96.0%、製造法:塩素法)とを26:7:33.5:33.5の質量割合で混合した点を除いて、実施例5と同様にして厚さ228μmの反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0090】
<比較例1>
(樹脂層Bの樹脂組成物Bの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、商品名「ノバテックPP FY6HA」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)とを50:50の質量割合で混合した後、270℃で加熱された二軸押出機を用いてペレット化し、樹脂組成物Bを作製した。
【0091】
(反射材の作製)
上記樹脂組成物Bを200℃に加熱された押出機に供給し、押出機において200℃で溶融混練した後、Tダイよりシート状に押出し、冷却固化してシートを形成した。得られたシートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに130℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ180μmの反射材(サンプル)を得た。
得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0092】
<比較例2>
(樹脂組成物Aの作製)
シクロオレフィン系樹脂A(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS6013」)のペレットと、シクロオレフィン系樹脂B(ポリプラスチックス株式会社製「TOPAS8007」)のペレットと、酸化チタン(KRONOS社製、商品名「KRONOS2230」)とを、47:13:40の質量割合で混合した後、250℃に加熱された二軸押出機を用いてペレット化して、樹脂組成物Aを作製した。
【0093】
(反射材の作製)
樹脂組成物Aを230℃に加熱された押出機Aに供給し、押出機において230℃で溶融混練した後、Tダイよりシート状に押出し、冷却固化してシートを形成した。得られたシートを、温度130℃でMDに2倍ロール延伸した後、さらに135℃でTDに3倍テンター延伸することで二軸延伸を行い、厚さ170μmの反射材(サンプル)を得た。得られた反射材について実施例1と同様の評価を行った。
【0094】
【表1】

【0095】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜6及び比較例1、2の反射材は、波長420nm〜700nmの光に対する反射率が97%以上で、高い光反射性を有していることが分かった。また、実施例1〜6及び比較例1の反射材の耐折性は良好であることが分かった。
一方、比較例2の反射材は、耐折性の点で実施例1〜6の反射材に劣っていることが分かった。
また、比較例1の反射材は熱による収縮が大きく、耐熱性の点で実施例1〜6の反射材に劣ることが分かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィン系樹脂と、シクロオレフィン系樹脂以外のオレフィン系樹脂および/または熱可塑性エラストマーとを含有する樹脂層(A)を備えた反射材。
【請求項2】
樹脂層(A)が、樹脂層(A)の全体質量に対して10質量%以上70質量%以下の割合で微粉状充填剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の反射材。
【請求項3】
樹脂層(A)の空隙率が20%以上80%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射材。
【請求項4】
樹脂層(A)のほかに、オレフィン系樹脂を含有する樹脂層(B)を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の反射材。
【請求項5】
樹脂層(A)と樹脂層(B)の各層合計厚み比が、(A):(B)=1:2〜1:15であることを特徴とする請求項4に記載の反射材。
【請求項6】
樹脂層(A)のオレフィン系樹脂と、樹脂層(B)のオレフィン系樹脂とが同一のモノマー単位を含むオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項4又は5に記載の反射材。
【請求項7】
樹脂層(A)が、反射材の反射使用面である最外層に位置することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の反射材。
【請求項8】
樹脂層(B)が、樹脂層(B)の全体質量に対して10質量%以上70質量%以下の割合で微粉状充填剤を含有することを特徴とする請求項4〜7の何れかに記載の反射材。
【請求項9】
樹脂層(B)の空隙率が20%以上80%以下であることを特徴とする請求項4〜8の何れかに記載の反射材。
【請求項10】
樹脂層(A)のオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の反射材。
【請求項11】
樹脂層(A)の熱可塑性エラストマーが、スチレン系エラストマーであることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の反射材。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載の反射材を、金属板又は樹脂板に積層してなる構成を有する反射材。
【請求項13】
液晶ディスプレイ、照明器具、或いは照明看板の構成部材として使用することを特徴とする請求項1〜12の何れかに記載の反射材。

【公開番号】特開2012−35616(P2012−35616A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2740(P2011−2740)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】