説明

反射板用ポリアミド組成物、反射板、該反射板を備えた発光装置、ならびに該発光装置を備えた照明装置および画像表示装置

【課題】成形した際に、高い耐熱性と良好な力学物性を有し、かつLEDパッケージ用封止部材との密着性に優れ、またLEDパッケージの製造工程や使用環境で想定される熱や光を受けた後でも高い反射率を保持する反射板用ポリアミド組成物を提供する。
【解決手段】融点280℃以上のポリアミド(A)を30質量%以上および酸化チタン(B)を25質量%以上含み、かつ前記ポリアミド(A)と前記酸化チタン(B)の合計含有量が75質量%以上である反射板用ポリアミド組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射板用ポリアミド組成物、該組成物を用いた反射板、および該反射板を備えた発光装置に関する。本発明はまた、該発光装置を備えた照明装置および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LED(Light Emitting Diode)が、低消費電力、低環境負荷などのメリットを生かして、携帯電話などの移動通信機器等の小型ディスプレイ、パソコンや液晶TVなどの中型/大型ディスプレイ、自動車のコンソールパネルや車内照明、家庭用照明、看板や表示灯、信号機、その他の家電用品など種々の電気電子機器製品に使用されている。
【0003】
一般に、LEDは、LEDパッケージとして用いられ、LEDパッケージは、発光する半導体素子(LED)、リード線、ハウジングを兼ねた反射板、半導体素子を封止する透明な封止部材から主に構成されている。この反射板に用いる材料としては、セラミックが知られている。しかし、反射板にセラミックを用いる場合、生産性や初期反射率の低さが問題とされている。反射板に用いる材料としては、耐熱プラスチックもまた知られている。例えば、特許文献1〜5には、この反射板の耐熱プラスチックに、ポリアミドに酸化チタンを配合した組成物を使用することが開示されている。
【0004】
耐熱プラスチック製の反射板は、LEDパッケージ製造時において導電接着剤または封止剤を熱硬化させる際に、数時間に及び100〜200℃の温度に曝されるため、耐熱性が要求されている。また、LEDパッケージ製造時の高熱や、使用環境下において変色等を起こさず、高い光反射率(特に、白色LED用途向けに波長460nm付近の光に対する反射率)を維持することが要求されている。さらに、反射板としての力学特性が良好であることが要求されている。また、封止部材との密着性が高いことが求められている。
【0005】
このように、数多くの特性が耐熱プラスチック製の反射板には求められており、引用文献1〜5に記載の技術には改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−294070号公報
【特許文献2】特開2004−075994号公報
【特許文献3】特開2005−194513号公報
【特許文献4】特開2006−257314号公報
【特許文献5】国際公開第2007/037355号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明は、成形した際に、高い耐熱性と良好な力学物性を有し、かつLEDパッケージ用封止部材との密着性に優れ、またLEDパッケージの製造工程や使用環境で想定される熱や光を受けた後でも高い反射率を保持する反射板用ポリアミド組成物および該組成物からなる反射板、並びに該反射板を備えた発光装置を提供することを目的とする。本発明はまた、該発光装置を備えた照明装置および画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究した結果、特定のポリアミド樹脂に酸化チタンを高度に配合した組成物によれば、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、融点280℃以上のポリアミド(A)を30質量%以上および酸化チタン(B)を25質量%以上含み、かつ前記ポリアミド(A)と前記酸化チタン(B)の合計含有量が75質量%以上である反射板用ポリアミド組成物である。
【0010】
本発明はまた、上記の反射板用ポリアミド組成物を用いたLED用反射板である。
【0011】
本発明はまた、上記のLED用反射板を備えた発光装置である。
【0012】
本発明はまた、上記の発光装置を備えた照明装置である。
【0013】
本発明はまた、上記の発光装置を備えた画像表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反射板用ポリアミド組成物を成形して得られる反射板は、良好な力学特性を有すると共に高い耐熱性を有する。また、当該反射板は、LEDパッケージ用封止部材との密着性に優れる。さらに、当該反射板は、LEDパッケージの製造工程や使用環境で想定される熱や光を受けた後でも高い反射率(特に、波長460nm付近の光に対する反射率)を保持する。このため、当該反射板を備えた発光装置、ならびに当該発光装置を備える照明装置および画像表示装置は、高寿命となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の発光装置1の構成を模式的に示した図である。
【図2】本発明の発光装置2の構成を模式的に示した図である。
【図3】本発明の発光装置3の構成を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の反射板用ポリアミド組成物は、融点280℃以上のポリアミド(A)を30質量%以上および酸化チタン(B)を25質量%以上含み、かつポリアミド(A)と酸化チタン(B)の合計含有量が75質量%以上である。本発明の反射板用ポリアミド組成物は、必要に応じて、強化材(C)や酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを更に含有することができる。
【0017】
本発明においては、得られる反射板の耐熱性の観点から、ポリアミド(A)の融点は280℃以上である。本発明に用いられるポリアミド(A)の含有量は、本発明の反射板用ポリアミド組成物全体の質量に対して30質量%以上であり、35質量%以上であることが好ましい。ポリアミド(A)の含有量が30質量%未満であると、反射板への成形が難しくなり、また得られる反射板のLEDパッケージ用封止部材との密着性が低くなると共に力学特性、特に靭性が低くなる等の問題が生じる。
【0018】
本発明に用いられるポリアミド(A)は、ジカルボン酸単位およびジアミン単位を含む。ポリアミド(A)のジカルボン酸単位が、テレフタル酸単位を50モル%以上含むことが、本発明の好ましい一実施態様である(以下、ジカルボン酸単位としてテレフタル酸単位を50モル%以上含むポリアミド(A)を、ポリアミド(a−1)と称する)。また、ポリアミド(A)のジカルボン酸単位が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を50モル%より多く含むことが、本発明の好ましい別の一実施態様である(以下、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位を50モル%より多く含むポリアミド(A)を、ポリアミド(a−2)と称する)。
【0019】
ポリアミド(a−1)に関し、得られる反射板の耐熱性などが優れるという観点から、ジカルボン酸単位に含まれるテレフタル酸単位は50モル%以上であり、60モル%以上であることが好ましく、70モル%以上であることが更に好ましい。また、ポリアミド(a−1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、テレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位を含むことができる。テレフタル酸単位以外のジカルボン酸単位としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、3,3−ジエチルコハク酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロデカンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などから誘導される単位が挙げられ、これらの単位は1種または2種以上であってもよい。さらに、本発明のポリアミド組成物が有する上記した性質を損なわない範囲内において、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸から誘導される単位を含ませることもできる。
【0020】
ポリアミド(a−2)に関し、ジカルボン酸単位に含まれる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位は、得られる反射板の耐熱性が優れるという観点から、50モル%より大きく、60モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることが更に好ましい。なお、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のシス/トランス比は何れでも良い。また、ポリアミド(a−2)は、本発明の効果を損なわない範囲で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位を含むことができる。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位以外のジカルボン酸単位としては、例えばマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ジメチルマロン酸、3,3−ジエチルコハク酸、2,2−ジメチルグルタル酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘプタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸、シクロデカンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などから誘導される単位が挙げられ、これらの単位は1種または2種以上であってもよい。さらに、本発明のポリアミド組成物が有する上記した性質を損なわない範囲内において、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸から誘導される単位を含ませることもできる。
【0021】
ポリアミド(A)を構成するジアミン単位は、炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含むことが好ましく、より好ましくは60〜100モル%、さらに好ましくは70〜100モル%、最も好ましくは90〜100モル%の範囲で含有する。炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位の含有量が50モル%以上であると、組成物の成形性と、得られる反射板の耐熱性が特に優れる。
【0022】
炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位としては、例えば、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミン;1−ブチル−1,2−エタンジアミン、1,1−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1−エチル−1,4−ブタンジアミン、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、1,4−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、3,3−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4−ジエチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,3−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,4−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2,5−ジメチル−1,7−ヘプタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、3−メチル−1,8−オクタンジアミン、4−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、1,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,5−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、2,2−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、3,3−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、4,4−ジメチル−1,8−オクタンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を含むことができる。
【0023】
炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位は、耐熱性、低吸水性などの諸物性に優れる反射板を与えるペレットや、耐熱性、低吸水性などの諸物性に優れる反射板を得ることができる観点から、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンからなる群より選ばれる少なくとも1種から誘導される単位であることが好ましく、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であることがより好ましい。
【0024】
上記のジアミン単位は、炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位以外のジアミン単位を含んでもよい。他のジアミン単位としては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン等の脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル等の芳香族ジアミンなどから誘導される単位を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を含むことができる。ジアミン単位におけるこれら他のジアミン単位の含有率は40モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、10モル%以下であることがさらに好ましい。
【0025】
また、ポリアミド(A)はアミノカルボン酸単位を含んでもよい。アミノカルボン酸単位としては、例えば、カプロラクタム、ラウリルラクタム等のラクタム;11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸などから誘導される単位を挙げることができる。ポリアミド(A)におけるアミノカルボン酸単位の含有率は、ポリアミド(A)のジカルボン酸単位とジアミン単位の合計100モル%に対して、40モル%以下の割合であることが好ましく、20モル%以下の割合であることがより好ましい。その他、ポリアミド(A)としてポリアミド46も用いることができる。
【0026】
本発明に用いられるポリアミド(A)は末端封止剤由来の単位を含んでも良い。末端封止剤由来の単位は、前記ジアミン単位に対して1〜10モル%であることが好ましく、3.5〜8.5モル%であることがより好ましい。末端封止剤由来の単位が上記範囲にあると、ポリアミド組成物は成形性に優れ、得られる反射板は耐光性や耐熱性により優れる。
【0027】
末端封止剤由来の単位を上記所望の範囲とするには、重合原料仕込み時にジアミンに対して末端封止剤を上記所望の範囲となるよう仕込むことで行う。なお、重合時にモノマー成分が揮発することを考慮して、得られる樹脂に所望量の末端封止剤由来の単位が導入されるよう、重合原料仕込み時の末端封止剤の仕込み量を微調整することが望ましい。
【0028】
ポリアミド(A)中の末端封止剤由来の単位を求める方法としては、例えば、特開平07−228690号公報に示されているように、溶液粘度を測定し、これと数平均分子量の関係式から全末端基量を算出し、ここから滴定によって求めたアミノ基量とカルボキシル基量を減じる方法や、1H−NMRを用い、ジアミン単位と末端封止剤由来の単位のそれぞれに対応するシグナルの積分値に基いて求める方法などが挙げられる。
【0029】
末端封止剤としては、末端アミノ基もしくは末端カルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物を用いることができる。具体的には、モノカルボン酸、酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類、モノアミンなどが挙げられる。反応性および封止末端の安定性などの観点から、末端アミノ基に対する末端封止剤としては、モノカルボン酸が好ましく、末端カルボキシル基に対する末端封止剤としては、モノアミンが好ましい。また、取扱いの容易さなどの観点から末端封止剤としてはモノカルボン酸がより好ましい。
【0030】
末端封止剤として使用されるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、イソ酪酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、フェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらのなかでも、反応性、封止末端の安定性、価格などの点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が好ましい。
【0031】
末端封止剤として使用されるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、ナフチルアミン等の芳香族モノアミン;これらの任意の混合物などを挙げることができる。これらのなかでも、反応性、高沸点、封止末端の安定性および価格などの点から、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリンが好ましい。
【0032】
本発明に用いられるポリアミド(A)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミンを原料とする溶液重合法または界面重合法、ジカルボン酸とジアミンを原料とする溶融重合法、固相重合法、溶融押出重合法などの方法により製造することができる。
【0033】
ポリアミド(A)は、例えば、最初にジアミン、ジカルボン酸、および必要に応じて触媒や末端封止剤を一括して添加してナイロン塩を製造した後、200〜250℃の温度において加熱重合してプレポリマーとし、さらに固相重合するか、あるいは溶融押出機を用いて重合することにより製造することができる。重合の最終段階を固相重合により行う場合、減圧下または不活性ガス流動下に行うのが好ましく、重合温度が200〜280℃の範囲内であれば、重合速度が大きく、生産性に優れ、着色やゲル化を有効に抑制することができる。重合の最終段階を溶融押出機により行う場合の重合温度としては、370℃以下であるのが好ましく、かかる条件で重合すると、分解がほとんどなく、劣化の少ないポリアミド(A)が得られる。
【0034】
ポリアミド(A)を製造するに際して使用することができる触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、それらの塩またはエステルが挙げられる。上記の塩またはエステルとしては、リン酸、亜リン酸または次亜リン酸とカリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属との塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のアンモニウム塩;リン酸、亜リン酸または次亜リン酸のエチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、デシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステルなどを挙げることができる。
【0035】
本発明のポリアミド組成物を得るにあたり、ポリアミド(A)の50質量%以上を粒径範囲1mm以下の固形物として用いることが好ましい。このとき、酸化チタン(B)の配合量を25質量%以上に容易に高めることができ、酸化チタン(B)が高配合されても各成分が均一に混ざり合った組成物を容易に得ることができる。なお、ポリアミド(A)の粒径は、ふるい分け法により求めることができる。粒径範囲1mm以下の固形物のポリアミド(A)を得るためには、ポリアミド(A)のプレポリマーを粉砕して篩がけし、710μm間隔の篩い目を通過したものを主材料として固相重合に用いるとよい。
【0036】
本発明のポリアミド組成物は、酸化チタン(B)を本発明の反射板用ポリアミド組成物全体の質量に対して25質量%以上含み、好ましくは30質量%以上含む。酸化チタン(B)を25質量%以上含む場合、熱や光を受けた後にも高い反射率を保持し、熱伝導性が高く、かつ耐熱性が高い反射板を与えることができる。またこの場合、ポリアミド(A)の含有量が比較的低い場合でも、得られる反射板のLEDパッケージ用の封止部材との高い密着性を得ることができる。
【0037】
酸化チタン(B)としては、例えば酸化チタン(TiO)、三酸化チタン(Ti23)、二酸化チタン(TiO2)などが挙げられ、これらのいずれを使用しても良いが、二酸化チタンが好ましい。また、二酸化チタンとしては、ルチル型またはアナタ−ゼ型の結晶構造を有するものが好ましく、ルチル型の結晶構造を有するものが更に好ましい。
【0038】
酸化チタン(B)の形状は、特に限定されないが、無定形であることが好ましい。無定形の酸化チタン(B)を用いた場合には、得られる反射板の寸法変化および寸法変化の異方性が小さく、封止剤との剥離などの不具合が抑止されるという効果を奏する。
【0039】
酸化チタン(B)の平均粒径は、小さすぎても大きすぎても光反射率が低下する場合があるので、好ましくは0.1〜0.5μm、より好ましくは0.15〜0.4μm、特に好ましくは0.2〜0.3μmの範囲内である。ここで、塊状のものや平均粒径が大きなものを適宜粉砕し、必要に応じて篩い等によって分級して、上記した平均粒径となるようにしたものを使用してもよい。
【0040】
また、酸化チタン(B)としては、組成物中の分散性を改善するために表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化錫、酸化アンチモン、酸化亜鉛などの金属酸化物;シランカップリング剤、シリコーンなどの有機珪素化合物;チタンカップリング剤などの有機チタン化合物;有機酸、ポリオールなどの有機物などが挙げられる。
【0041】
本発明のポリアミド組成物は、融点280℃以上のポリアミド(A)と酸化チタン(B)を合わせて75質量%以上、好ましくは80質量%以上含む。かかる構成を採用することで、当該組成物を成形した反射板は、LEDパッケージの製造工程や使用環境で想定される熱や光を受けた後でも高い反射率を保持すると共に、良好な力学特性と高い耐熱性を有する。さらに、本発明のポリアミド組成物では酸化チタンを多量に含有することで、熱伝導性を高め、使用環境下におけるLED素子や反射板の温度上昇を抑制することができ、その結果、従来よりもLED素子の高寿命化を達成することができる。
【0042】
本発明の反射板用ポリアミド組成物には、必要に応じて、強化材(C)を含有させてもよい。強化材(C)としては、繊維状、平板状、針状、粉末状、クロス状などの各種形態を有するものを使用することができる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、液晶ポリマー(LCP)繊維、金属繊維等の繊維状充填剤;マイカ、タルク等の平板状充填剤;チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、ワラストナイト、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー等の針状充填剤;シリカ、アルミナ、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、チタン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム(カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム(アタパルジャイト)、ホウ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、アスベスト、ガラスビーズ、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、セリサイト、ハイドロタルサイト、二硫化モリブデン、フェノール樹脂粒子、架橋スチレン系樹脂粒子、架橋アクリル系樹脂粒子等の粉末状充填剤などが挙げられる。これらの強化材は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。これらの強化材(C)の表面は、ポリアミド(A)中への分散性を高める目的で、あるいはポリアミド(A)との接着性を高める目的で、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の高分子化合物、またはその他低分子化合物によって表面処理されていてもよい。
【0043】
上記の強化材(C)の中でも、低コストであり、力学強度が高い成形品が得られることから、繊維状充填剤および/または針状充填剤が好ましい。この強化材(C)は、高強度、低コストの観点からはガラス繊維を使用することが好ましく、表面平滑性の高い成形品が得られる観点からは針状充填剤を使用することが好ましい。特に、白色度を保持する観点から、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、およびホウ酸アルミニウムウィスカーからなる群より選ばれる少なくとも1種を好ましく使用でき、ガラス繊維および/またはワラストナイトがより好ましく用いられる。
【0044】
成形性や力学特性を適度に高めるという観点から、強化材(C)を含有させる場合は、その配合量は、本発明の反射板用ポリアミド組成物全体の質量に対して15質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0045】
本発明の反射板用ポリアミド組成物は、変色を防止し、光反射率の低下を抑制することを目的として、さらに光安定剤を含有することができる。光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、サリチレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、アクリロニトリル系化合物、その他の共役系化合物などの紫外線吸収効果のある化合物、ヒンダードアミン系化合物などのラジカル捕捉能力のある化合物等を挙げることができる。特に、ポリアミド(A)との親和性が高く、耐熱性にも優れている観点から、分子内にアミド結合を有する化合物が好ましい。また、紫外線吸収効果のある化合物とラジカル捕捉能力のある化合物を併用すると、より高い安定化効果が現れるので好ましい。
【0046】
光安定剤を含有させる場合、その使用量は、本発明の反射板用ポリアミド組成物の変色の防止と光反射率の低下の抑制という効果と、過度に製造コストを増大させないという観点とを考慮すると、本発明の反射板用ポリアミド組成物全体の質量に対して好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.05〜2質量%である。なお、これらの光安定剤は2種類以上を併用して使用することも可能である。
【0047】
本発明の反射板用ポリアミド組成物は、酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含有していてもよい。これにより、特に長時間加熱処理を行った際においても、黄変等の変色や白色度の低下を抑制することができる。
【0048】
酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムの平均粒径に特に制限はないが、各種物性向上の観点から0.05〜10μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmである。またポリアミド(A)との密着性および分散性を向上させるために表面処理を施したものを使用してもよい。表面処理剤としては、例えば、アミノシラン、エポキシシランなどのシランカップリング剤、シリコーン等の有機珪素化合物;チタンカップリング剤等の有機チタン化合物;有機酸、ポリオール等の有機物などが挙げられる。
【0049】
酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含有させる場合、その量は、本発明の反射板用ポリアミド組成物全体の質量に対して0.5〜10質量%の範囲であることが好ましく、1〜5質量%の範囲であることが更に好ましい。該含有量が0.5質量%未満では加熱処理後の変色を抑制する効果が小さく、10質量%を超えると成形性が低下する場合がある。
【0050】
さらに本発明の反射板用ポリアミド組成物には、ニグロシンやその他有機系または無機系の着色剤;亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸やこれらのエステル等の熱安定剤;ヒンダードフェノール系、チオ系、リン系等の酸化防止剤;帯電防止剤;結晶核剤;可塑剤;ポリオレフィンワックス、高級脂肪酸エステル等のワックス類;シリコーンオイル等の離型剤;滑剤などの他の成分をさらに配合することもできる。本発明の反射板用ポリアミド組成物に他の成分を配合する場合、その量は5質量%以下であることが好ましい。
【0051】
本発明の反射板用ポリアミド組成物は、上記した各構成成分を、公知の方法に従って混合することによって調製することができる。例えば、ポリアミド(A)の重縮合反応時に各成分を添加する方法、ポリアミド(A)とその他の成分をドライブレンドする方法、押出機を用いて各構成成分を溶融混錬する方法などが挙げられる。これらのなかでも操作が容易であること、均一な組成物が得られることなどから、押出機を用いて各構成成分を溶融混錬する方法が好ましい。この際に用いられる押出機は2軸スクリュー型のものが好ましく、溶融混錬温度としてはポリアミド(A)の融点より5℃高い温度から370℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0052】
本発明の反射板用ポリアミド組成物は、成形性が良好であり、本発明の反射板用ポリアミド組成物は、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの一般に熱可塑性樹脂組成物に対して用いられる成形方法により、反射板に成形することができる。また上記の成形方法を組み合わせた成形方法を採用することもできる。特に、成形の容易さ、量産性、コストなどの面で射出成形が好ましい。また、本発明の反射板用ポリアミド組成物と他のポリマーとを複合成形することもできる。さらに、本発明の反射板用ポリアミド組成物を、金属からなる成形体や布帛などと複合化することも可能である。
【0053】
本発明の反射板用ポリアミド組成物を成形して得られる反射板は、良好な力学特性を有すると共に高い耐熱性を有する。また、当該反射板は、適度な表面粗さを有し、LEDパッケージ用の封止部材との密着性に優れている。さらに、当該反射板は、LEDパッケージの製造工程や使用環境で想定される熱や光を受けた後でも高い反射率(特に、波長460nm付近の光に対する反射率)を保持する。また、当該反射板は、高い熱伝導性を有する。
【0054】
本発明の反射板用ポリアミド組成物を成形して得られる反射板は、各種光源の反射板に使用できるが、特にLEDの反射板として好適に使用できる。
【0055】
<LED用反射板>
そこで、本発明のLED用反射板は、上記本発明の反射板用ポリアミド組成物を用いたLED用反射板である。本発明のLED用反射板は、例えばバックライト光源、照明、自動車の各種ランプなどに用いられるLED用の反射板として好適に使用できる。特に、表面実装に対応したLED用の反射板として好適に使用できる。
【0056】
本発明のLED用反射板においては、紫外線を24時間照射後に測定するスペクトロフォトメーターによる波長460nmの光の反射率が、85%以上であることが好ましい。
【0057】
本発明のLED用反射板は発光装置に用いることができ、当該発光装置は高寿命となる。
【0058】
<発光装置>
そこで、本発明の発光装置は、上記本発明のLED用反射板を備えた発光装置である。本発明の発光装置の例としては、バックライト光源、照明用光源、自動車の各種ランプの光源などが挙げられる。
【0059】
図1に本発明の発光装置の代表的な構成の一例を示す。図1は、SMD(surface mounted device)タイプの発光装置(LED装置)1を模式的に表したものである。発光装置1では基板20とリフレクタ(筐体)30により形成されるパッケージ状部50に発光素子10が配置され、パッケージ状部50には封止部材40(光透過性の樹脂)が充填されている。
【0060】
以下、本発明の発光装置の各要素を説明する。因みに本発明の発光装置は以下の要素に制限されるものではない。
【0061】
<半導体発光素子>
半導体発光素子10は、発光ピーク波長を500nm以下の波長領域に有するものを好適に使用できる。単一の発光ピークを有する半導体発光素子に限られず、複数の発光ピークを有する半導体発光素子を用いることもできる。尚、複数の発光ピークを有する場合には、500nmよりも長波長の領域に1つまたは2つ以上の発光ピークを有していてもよい。また、可視光の長波長領域(501nm〜780nm)に発光ピークを有する半導体発光素子も用いることができる。
【0062】
半導体発光素子10の構成は、上記の波長特性を備えるものであれば特に限定されない。例えばGaAlN、ZnS、ZnSe、SiC、GaP、GaAlAs、AlN、InN、AlInGaP、InGaN、GaN、AlInGaN等の半導体を発光層として形成させたものを用いることができる。
【0063】
また、発光層は任意のドーパントを含有するものであってもよい。
【0064】
半導体発光素子10は適宜複数個用いることができる。例えば、緑色系が発光可能な発光素子を2個、青色系および赤色系が発光可能な発光素子をそれぞれ1個ずつとすることができる。
【0065】
半導体発光素子10の基板20への接続方法には特に制限はないが、導電性のエポキシあるいはシリコーン接着剤を使用することができる。さらに半導体素子から発生する熱を効率良く基板へ伝えるために低融点の金属を使用することができる。例えば、Sn/Ag/Cu(融点220度)、Sn/Au(融点282度)などを例示することができる。
【0066】
<パッケージ>
パッケージは半導体発光素子10が搭載される部材であり、一部または全体が上述の本発明のLED用反射板により形成される。
【0067】
本発明では、パッケージは、単一の部材からなるものであっても、複数の部材を組み合わせて構成されるものであってもよい。
【0068】
パッケージは、好ましくは凹部(カップ状部)を有する。パッケージの1つの例としては、リフレクタ(筐体)と基板を組み合わせたものが挙げられ、例えば、図1では、凹部(カップ状部)50が形成されるように、基板20上に所望の形状のリフレクタ(筐体)30を接着させてパッケージが構成されている。基板20およびリフレクタ30は、上述のポリアミド組成物を成形した本発明のLED用反射板より形成される。基板20およびリフレクタ30の一方のみが、本発明のLED用反射板より形成されてもよい。このように複数の本発明のLED用反射板を用いる場合には、ポリアミド組成物の組成を変えてLED反射板を形成することにより得られる異なる特性のLED用反射板を組み合わせて用いてもよい。別の例としては、上述のポリアミド組成物を、一の面側に凹部(カップ状部)が形成されるように成形し、パッケージを1つのLED用反射板より形成した構成が挙げられる。さらに別の例として、パッケージとして平板状のLED用反射板のみからなるものを用いることもできる。
【0069】
パッケージに形成される凹部(カップ状部)とは、底部と側面部とを有し、光軸に垂直方向の断面の面積が、当該底部から発光装置の光の取り出し方向に向かって連続的または段階的に増加する形状を有する空間からなる部分をいう。かかる条件を満たす範囲において、底部および側面部の形状は特に限定されるものではない。
【0070】
<封止部材>
封止部材40は半導体発光素子10を被覆するように形成される部材であり、主として外部環境から半導体発光素子10を保護する目的で備えられる。
【0071】
封止部材40には、半導体発光素子10や配線の保護を目的として透明熱硬化性樹脂を使用することができる。透明熱硬化性樹脂としてはエポキシあるいはシリコーンを含む熱硬化性樹脂を例示することができる。シリコーンはパッケージの要求特性に応じて樹脂タイプ、ゴムタイプ、ゲルタイプを使用することができる。また、リフレクタ30と封止部材40との密着性を高めるためにリフレクタ30をアルゴンなどの希ガスプラズマで処理することができる。
【0072】
異なる材料からなる複数の層が半導体発光素子10上に積層して形成されるように封止部材40を設けることもできる。
【0073】
封止部材40に蛍光体を含有させることもできる。蛍光体を用いることにより、半導体発光素子10からの光の一部を異なる波長の光に変換することができ、発光装置の発光色を変化させ、または補正することができる。
【0074】
蛍光体は半導体発光素子10からの光により励起可能なものであれば任意のものを用いることができる。例えば、Eu、Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される窒化物蛍光体、酸窒化物系蛍光体、サイアロン系蛍光体;Eu等のランタノイド系またはMn等の遷移金属系の元素により主に賦活されるアルカリ土類金属アルミン酸塩蛍光体、アルカリ土類ケイ酸塩、アルカリ土類硫化物、アルカリ土類チオガレート、アルカリ土類窒化ケイ素、ゲルマン酸塩;Ce等のランタノイド系元素で主に賦活される希土類アルミン酸塩、希土類ケイ酸塩、あるいはEu等のランタノイド系元素で主に賦活される有機化合物および有機錯体等から選ばれる少なくとも1種以上が好ましく用いられる。
【0075】
また複数種類の蛍光体を組み合わせて封止部材40に含有させることもできる。この場合には、半導体発光素子10からの光により励起されて発光する蛍光体、および当該蛍光体からの光により励起されて発光する蛍光体とを組み合わせて用いることもできる。
【0076】
封止部材40に二酸化チタンや酸化亜鉛などの光拡散体を含有させることにより、封止部材40内での光の拡散を促進させて発光ムラを減少させることもできる。
【0077】
図1の発光装置1は、例えば、次のように製造される。まず、本発明のLED用反射板である基板20上に本発明のLED用反射板であるリフレクタ30を配置する。続いて、半導体発光素子10をマウントし、半導体発光素子10の電極と基板20上の配線パターンとをリードで接続する。続いて、主剤と硬化剤からなる液状のシリコーン封止剤を準備し、カップ状部50にポッティングする。この状態で約150℃に加熱してシリコーン封止剤を熱硬化させる。その後、空気中で放熱させる。
【0078】
図2に他の構成からなる本発明の発光装置2の模式図を示す。図2において、発光装置1と同一の要素には同一の符号を付してある。発光装置2では、基板の代わりにリードフレーム80が用いられ、リードフレーム80の上に半導体発光素子10がマウントされる。その他の構成は、発光装置1と同様である。
【0079】
図3に他の構成からなる本発明の発光装置3の模式図を示す。図3において、発光装置1と同一の要素には同一の符号を付してある。発光装置3では、本発明のLED用反射板である基板70が用いられる。基板70には所望の配線71が施されている。また、筐体(リフレクタ)は用いられず、図示されるように半導体発光素子10をマウントした後、所望の型を用いた型成形により封止部材60を形成することができる。また、予め所望の形状に成形した封止部材60を用意しておき、これを半導体発光素子10を覆うように基板70に接着させてもよい。
【0080】
以上、本発明の構成例としてSMDタイプの発光装置について説明したが、本発明は、カップ状部を有するリードフレーム上に発光素子がマウントされ、発光素子およびリードフレームの一部を封止部材で被覆してなる、いわゆる砲弾型発光ダイオードにも適用できるものである。また、発光素子をいわゆるフリップチップの形に基板またはリードフレーム上にマウントしたフリップチップタイプの発光装置にも適用できるものである。
【0081】
<照明装置>
本発明はまた、上記の発光装置を備えた照明装置である。本発明の照明装置は、上記の高寿命の発光装置を用いているため、高寿命となる。本発明の照明装置は、公知方法に準じて構成することができ、例えば、従来のLED照明装置において、LED照明用光源に用いられている従来の発光装置を、上記の発光装置に置き換える等により構成することができる。
【0082】
<画像表示装置>
本発明はまた、上記の発光装置を備えた画像表示装置(例、携帯電話などの移動通信機器の小型ディスプレイ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどの撮影機器の小型ディスプレイ、カーナビゲーションシステムの小型ディスプレイ、パソコン、液晶TVなどの中型/大型ディスプレイ等)である。本発明の画像表示装置は、上記の高寿命の発光装置を用いているため、高寿命となる。本発明の画像表示装置は、公知方法に準じて構成することができ、例えば、従来の画像表示装置において、LEDバックライト光源に用いられている従来の発光装置を、上記の発光装置に置き換える等により構成することができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0084】
なお、以下の実施例および比較例において、極限粘度、融点、反射率、曲げ破断歪み、ウェルド曲げ破断歪み、表面粗さは以下の方法により評価した。
【0085】
<極限粘度[η]>
後述するポリアミドから一部を試料として取り、濃硫酸中、30℃にて、0.05,0.1,0.2,0.4g/dlの濃度の試料の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度0に外挿した値を極限粘度[η]とした。
ηinh=[ln(t1/t0)]/c
〔式中、ηinhは固有粘度(dl/g)を表し、t0は溶媒の流下時間(秒)を表し、t1は試料溶液の流下時間(秒)を表し、cは溶液中の試料の濃度(g/dl)を表す。〕
【0086】
<融点>
後述するポリアミドから一部を試料として取り、メトラー・トレド(株)製の示差走査熱量分析装置(DSC822)を使用して、試料約10mgを、窒素雰囲気下で、30℃から360℃へ10℃/分の速度で加熱し、360℃で2分保持して試料を完全に融解させた後、10℃/分の速度で30℃まで冷却し30℃で2分保持した。再び10℃/分の速度で360℃まで昇温した時に現れる融解ピークのピーク温度を融点とした。融解ピークが複数ある場合は最も高温側の融解ピークのピーク温度を融点とした。
【0087】
<初期反射率>
各実施例および比較例で得られたポリアミド組成物を用い、ポリアミドの融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:140℃)を行い、厚さ1mm、幅40mm、長さ100mmの試験片を作製し、試験片の460nmの波長での反射率を株式会社日立製作所製スペクトロフォトメーター(U−4000)により求めた。
【0088】
<加熱後反射率>
各実施例および比較例で得られたポリアミド組成物を用い、ポリアミドの融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:140℃)を行い、厚さ1mm、幅40mm、長さ100mmの試験片を作製した。この試験片を熱風乾燥機中で170℃で2時間加熱処理した。加熱処理後の試験片の460nmの波長での反射率を株式会社日立製作所製スペクトロフォトメーター(U−4000)により求めた。
【0089】
<光照射後反射率>
各実施例および比較例で得られたポリアミド組成物を用い、ポリアミドの融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:140℃)を行い、厚さ1mm、幅40mm、長さ100mmの試験片を作製した。この試験片をKF−1フィルター(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を備えた耐光性試験装置(ダイプラ・ウィンテス株式会社製スーパーウィン・ミニ)の、上部石英ガラス面から25cmの距離に設置し、24時間の光照射を行った。なお、試験片を設置した位置での300〜400nmの波長における照度は10mW/cm2であった。光照射後の試験片の460nmの波長での反射率を株式会社日立製作所製スペクトロフォトメーター(U−4000)により求めた。
【0090】
<曲げ破断歪みおよびウェルド曲げ破断歪み>
各実施例および比較例で得られたポリアミド組成物を用い、ポリアミドの融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:140℃)を行い、厚さ1mm、幅10mm、長さ30mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、株式会社島津製作所製オートグラフを使用して、23℃における曲げ破断歪みおよびウェルド曲げ破断歪みを測定した。
【0091】
<表面粗さ>
各実施例および比較例で得られたポリアミド組成物を用い、ポリアミドの融点よりも約20℃高いシリンダー温度で射出成形(金型温度:140℃)を行い、厚さ1mm、幅10mm、長さ30mmの試験片を作製した。この試験片を用いて、表面粗さを株式会社小坂研究所製表面粗さ測定器により求めた。なお、この表面粗さは、封止部材と基板との密着性の指標となる。例えば、本発明の構成例として示すSMDタイプの発光装置では、封止剤としてシリコーン樹脂を使用する際には、反射板表面の凹凸が50nmから500μm程度が最適とされ、表面性の凹凸がない場合には、シリコーン樹脂が凹凸に入り込むことができず、アンカリングされないため密着性が悪くなる。また、表面の凹凸が大きすぎると、凹凸部に入り込んだシリコーン樹脂が十分に基板とにアンカリングできないことから密着性が悪くなる。測定結果より、凹凸の粗さが良好なものを「○」、凹凸の粗さが大すぎるものを「×」として表1に示した。
【0092】
以下の実施例および比較例では、下記の材料を使用した。
【0093】
〔ポリアミド(A)〕
(ポリアミド(a−1−i))
特開平7−228689号公報の実施例1に記載された方法に従って調製した、テレフタル酸単位と、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位(1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位のモル比が85:15)からなる、極限粘度[η](濃硫酸中、30℃で測定)が0.9dl/g、融点が306℃、末端封止率が77%(末端封止剤:安息香酸)であるポリアミドを使用した。
【0094】
(ポリアミド(a−1−ii))
テレフタル酸4788.3g(28.8モル)、1,10−デカンジアミン5093.4g(29.6モル)、末端封止剤としての安息香酸143.7g(1.18モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物10g、および蒸留水2.5Lを、内容積40Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、オートクレーブは2MPaまで昇圧した。その後2時間、内部温度を230℃に保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを1mm以下の大きさまで粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥した。これを240℃、13.3Paの条件で10時間固相重合し、極限粘度[η](濃硫酸中、30℃で測定)が0.93dl/g、融点が315℃であるポリアミドを得、これを使用した。
【0095】
(ポリアミド(a−2))
シス:トランス比が70:30の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸5111.2g(29.7モル)、1,9−ノナンジアミン4117.6g(26.0モル)、2−メチル−1,8−オクタンジアミン726.6g(4.59モル)、末端封止剤としての安息香酸224.2g(1.84モル)、次亜リン酸ナトリウム一水和物10g、および蒸留水2.5Lを、内容積40Lのオートクレーブに入れ、窒素置換した。2時間かけて内部温度を200℃に昇温した。この時、オートクレーブは2MPaまで昇圧した。その後2時間、内部温度を215℃に保ち、水蒸気を徐々に抜いて圧力を2MPaに保ちながら反応させた。次いで、30分かけて圧力を1.2MPaまで下げ、プレポリマーを得た。このプレポリマーを1mm以下の大きさまで粉砕し、120℃、減圧下で12時間乾燥した。これを230℃、13.3Paの条件で10時間固相重合し、末端封止剤単位が4.3モル%、極限粘度[η](濃硫酸中、30℃で測定)が0.87dl/g、融点が315℃であるポリアミドを得、これを使用した。
【0096】
なお、ポリアミド(a−1−i)、(a−1−ii)、および(a−2)の製造の際には、それぞれプレポリマーを粉砕後、粉砕したプレポリマーの75〜90質量%が、710μm間隔の篩い目の篩を通過することを確認してから、固相重合を行った。
【0097】
〔酸化チタン(B)〕
石原産業(株)製、「タイペークCR−90」(二酸化チタン:平均粒径0.25μm)
【0098】
〔強化剤(C)〕
日東紡績(株)社製、「CS3J256」(ガラス繊維:GF)
キンセイマテック(株)社製、「SH−1250」(ワラストナイト:WS)
【0099】
〔光安定剤(D)〕
クラリアントジャパン(株)社製、「ナイロスタブS−EED」(2−エチル−2−エトキシ−オキザルアニリド)
【0100】
〔酸化マグネシウム(E)〕
協和化学工業(株)社製、「MF−150」(酸化マグネシウム:平均粒径0.71μm)
【0101】
〔実施例1〜10および比較例1〜3〕
ポリアミド(A)、酸化チタン(B)、強化剤(C)、光安定剤(D)、酸化マグネシウム(E)および離型剤を、表1に示す配合量にて、ふるい選別機を用いてドライブレンドした。得られた混合物を、2軸スクリュー型押出機を用いて、用いるポリアミドの融点より20℃高い温度で溶融混練し、ペレット状に押出してポリアミド組成物を調製した。得られたポリアミド組成物を使用し、前記した方法に従って所定形状の試験片を作製し、各種物性を評価した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
表1に示したように、実施例の反射板用ポリアミド組成物は、LEDの製造工程を想定した高温加熱処理を行っても、波長460nmの反射率95%以上を保持し、実際のLED点灯を想定した光照射処理を行っても、波長460nmの反射率80%以上を保持しており、耐久性に優れた反射特性を有すると同時に、パッケージングの封止工程に対応した表面性、および力学強度を保持している。結果として、LEDパッケージの製造工程や使用環境に適し、当該反射板を備えた発光装置、ならびに当該発光装置を備える照明装置および画像表示装置は、高寿命を可能とする。
【0104】
実施例1および比較例1のポリアミド組成物をそれぞれ用いて反射板を成形し、さらにこの反射板を用いて発光装置を作製し、光度保持率の評価を行なった。評価結果を表2に示す。なお、評価に用いた発光装置および光度保持率の測定方法は下記の通りである。
【0105】
〔実施例11〕
発光装置は、図1に示すSMDタイプの発光装置1の構成とした。発光素子10には460nmに発光ピーク波長を持つ青色に発光するものを用いた。封止部材40はシリコーン(信越化学株式会社製:商品名KER2500)を用いた。リフレクタ30は、自社製3228サイズのリフレクタを使用した。
【0106】
実施例11のリフレクタ30の材料には、実施例1に示すポリアミド組成物を使用した。封止部材には(Y,Ga)3Al512:Ceで表せられるYAG系蛍光体を含有させた。
【0107】
〔比較例4〕
比較例4は、リフレクタ30の材料を比較例1に示すポリアミド組成物へ変更して、実施例11と同様に図1に示すSMDタイプの発光装置を作製した。
【0108】
<光度保持率の測定方法>
実施例11および比較例4の発光装置を、85℃、15mAで1000時間通電試験を行い、0時間の光度に対する1000時間後の光度を求めることで光度保持率(1000時間の光度/0時間の光度)を測定した。なお、各実施例および比較例ごとに150個の発光装置の光度を測定し、その平均値を各実施例および比較例の光度とした。
【0109】
【表2】

【0110】
表2からも明らかなように、本発明のポリアミド組成物に相当する実施例1のポリアミド組成物を用いたLED用反射板を備える発光装置(実施例11)では、優れた光度保持率を有することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の反射板用ポリアミド組成物を用いた反射板は、熱や光を受けた後でも高い反射率を保持するので、光を反射する機能を有する部品、例えば、LED、プロジェクタなどの光源、照明器具や自動車のヘッドランプ用の反射板として好適に使用できる。特に、表面実装に対応したLED反射板として好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点280℃以上のポリアミド(A)を30質量%以上および酸化チタン(B)を25質量%以上含み、かつ前記ポリアミド(A)と前記酸化チタン(B)の合計含有量が75質量%以上である反射板用ポリアミド組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド(A)のジカルボン酸単位が、テレフタル酸単位を50モル%以上含む請求項1に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド(A)のジアミン単位が、炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位を50モル%以上含む請求項1に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項4】
前記炭素数4〜18の脂肪族ジアミン単位が、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位である請求項3に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項5】
さらに15質量%以下の強化材(C)を含む請求項1に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項6】
前記強化材(C)が、ガラス繊維および/またはワラストナイトである請求項5に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項7】
さらに酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む請求項1に記載の反射板用ポリアミド組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の反射板用ポリアミド組成物を用いたLED用反射板。
【請求項9】
紫外線を24時間照射後に測定するスペクトロフォトメーターによる波長460nmの光の反射率が、85%以上である請求項8に記載のLED用反射板。
【請求項10】
請求項8に記載のLED用反射板を備えた発光装置。
【請求項11】
請求項10に記載の発光装置を備えた照明装置。
【請求項12】
請求項10に記載の発光装置を備えた画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−167285(P2012−167285A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107798(P2012−107798)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【分割の表示】特願2012−521898(P2012−521898)の分割
【原出願日】平成24年1月20日(2012.1.20)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】