説明

反射板用ポリエステルフィルム

【課題】炭酸カルシウム粒子を含有するポリエステルフィルムであって、優れた反射率を有し、面内における反射率のバラツキが抑制された反射板用ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する反射層と、支持層とを有するポリエステルフィルムであって、反射層の密度が1.20g/cm以下、反射層のポリエステルの固有粘度が0.50g/dL以上、フィルムのガスマークが200個/m以下である反射板用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粒子を含有する反射板用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶画面の照明用器材として、導光板のサイドから冷陰極線管を照明光源とした、いわゆるサイドライト方式が広く使用されている(例えば特許文献1)。この照明方法において、より光を効率的に活用するため、冷陰極線管の周囲にリフレクターが設けられ、更に導光板から拡散された光を液晶画面側に効率的に反射させるために導光板の下には反射板が設けられている。これにより冷陰極線管からの光のロスを少なくし、液晶画面を明るくする機能を付与している。また近年、液晶テレビのような大画面用では、サイドライト方式では画面の高輝度化が望めないことから直下型ライト方式が採用されてきている。この方式は、液晶画面の下部に冷陰極線管を並列に設けるもので、反射板の上に平行に冷陰極線管が並べられる。反射板は平面状のものや、冷陰極線管の部分を半円凹状に成形したものなどが用いられる。
【0003】
このような液晶画面用の面光源に用いられるリクレクターや反射板には、高い反射機能が要求され、従来、白色染料、白色顔料を添加したフィルムや内部に微細な気泡を含有させたフィルムが単独で、もしくはこれらのフィルムと金属板、プラスチック板などとを張り合わせたものが使用されてきた。特に内部に白色顔料を含有するフィルムを使用した場合には、輝度の向上効果や均一性に優れることから広く使用されており、特許文献2、3などに開示されている。微細な気泡を含有したフィルムの例としては、特許文献4、5などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−62104号公報
【特許文献2】特開2004−050479号公報
【特許文献3】特開2004−330727号公報
【特許文献4】特開平6−322153号公報
【特許文献5】特開平7−118433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、硫酸バリウムや炭酸カルシウムなどの無機粒子は、リフレクターや反射板の添加剤として用いられてきたが、硫酸バリウムはコストが高いという問題がある。また、炭酸カルシウムを用いた反射板用ポリエステルフィルムがあるが、これは反射率の面内バラツキに劣るものであった。なお、炭酸カルシウムには天然品と合成品とがあるが、合成品はコストが高いという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、炭酸カルシウム粒子を含有するポリエステルフィルムであって、優れた反射率を有し、面内における反射率のバラツキが抑制された反射板用ポリエステルフィルムを提供することを課題とする。
さらに本発明は、上記に加えて延伸性にも優れた反射板用ポリエステルフィルムを提供することを望ましい課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。
1.少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する反射層と、支持層とを有するポリエステルフィルムであって、反射層の密度が1.20g/cm以下、反射層のポリエステルの固有粘度が0.50g/dL以上、フィルムのガスマークが200個/m以下である反射板用ポリエステルフィルム。
2.炭酸カルシウムが、表面処理された炭酸カルシウム粒子である上記1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
3.反射層に用いられる炭酸カルシウム粒子を小粒径側から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が140以下である上記1または2に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
4.炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.4〜10μmである上記1〜3のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
5.反射層における炭酸カルシウムの含有量が1〜60質量%である上記1〜4のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
6.反射層の厚みが、フィルム全体厚み100に対して60〜90である上記1〜5のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
7.反射層のポリエステルが、固相重合法で得られたポリエステル原料から形成されたものである上記1〜6のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
8.少なくとも、支持層、反射層、支持層がこの順で積層された構成を含む上記1〜7のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
9.支持層は、硫酸バリウム粒子0.1〜10質量%と、全酸成分に対して1〜10モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99.9〜90質量%とからなり、反射層は、炭酸カルシウム粒子1〜60質量%と、全酸成分に対して5〜20モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99〜40質量%とからなる上記1〜8のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
10.サイドライト方式バックライトユニット反射板用である上記1〜9のいずれか1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭酸カルシウム粒子を含有するポリエステルフィルムであって、優れた反射率を有し、面内における反射率のバラツキが抑制された反射板用ポリエステルフィルムを提供することができる。
また、本発明の好ましい態様によれば、反射率に優れ、反射率の面内バラツキが抑制されると同時に、延伸性が良好であり、液晶表示装置のバックライトユニットに用いる反射板としての使用環境での平面性に優れる、反射板用ポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ガスマークのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する反射層と、支持層とを有する。
【0011】
[支持層]
(支持層のポリエステル)
本発明における支持層は、ポリエステル層であれば特に限定されるものではないが、ポリエステル、好ましくはポリエチレンテレフタレートを、支持層の質量に対して99.9〜90質量%含むことが好ましく、フィルムの延伸性に優れ、また支持層としての強度に優れる。かかるポリエチレンテレフタレートは、フィルムの延伸性、成形性を向上するという観点から、共重合成分を含んでいることが好ましく、かかる共重合成分としてはイソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アジピン酸等の酸成分、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のグリコール成分を例示することができる。本発明においては、支持層を構成するポリエチレンテレフタレートとしては、イソフタル酸またはナフタレン−2,6−ジカルボンを共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましく、イソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。共重合量は、共重合ポリエチレンテレフタレートの全酸成分に対して、好ましくは1〜10モル%であり、共重合量が1モル%以上であることにより延伸性、成形性に優れ、他方共重合量が10モル%以下であることにより耐熱性、機械強度に優れ、共重合量が上記数値範囲にあることによって、これらの特性のバランスに優れる。このような観点から、共重合量は、さらに好ましくは2〜9モル%、特に好ましくは4〜8モル%である。
支持層のポリエステルは、例えば0.50g/dL(o−クロロフェノール、25℃)以上のごとく固有粘度が高いと、延伸性の向上効果を高くすることができる。
【0012】
(不活性粒子)
また、本発明における支持層は、不活性粒子を、支持層の質量に対して0.1〜10質量%含むことが好ましく、反射率の向上効果を高くすることができる。また、ハンドリング性に優れる。不活性粒子の含有量が少ないと反射率の向上効果が低くなる傾向にあり、他方多いとフィルムの延伸性に劣る傾向にある。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは2〜9質量%、特に好ましくは4〜8質量%である。
【0013】
かかる不活性粒子としては、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子、酸化チタン粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子等を挙げることができる。本発明においては、中でも、反射率の向上効果を高くできるという観点から、硫酸バリウム粒子、炭酸カルシウム粒子が好ましく、硫酸バリウム粒子が特に好ましい。なお、炭酸カルシウム粒子としては、後述するような表面処理が施されているものが好ましく、支持層におけるガスマークの発生を抑制し、反射率の向上効果を高くすることができる。
【0014】
これら不活性粒子の平均粒径は、好ましくは0.4〜10μm、さらに好ましくは0.6〜8μm、特に好ましくは0.8〜6μmであり、反射率の向上効果を高くすることができると同時に、フィルムの延伸性が低くなりすぎないという効果がある。
さらに、本発明における支持層は、本発明の目的を損なわない限りにおいて、上記無機粒子以外の粒子、ワックス成分やシリコーン成分のような滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
【0015】
[反射層]
本発明における反射層は、炭酸カルシウム粒子を含有するポリエステル層である。本発明の反射板用ポリエステルフィルムでは、延伸時に、反射層で炭酸カルシウム粒子や後述する硫酸バリウム粒子と、共重合ポリエステルとの界面で剥離が起こり、ボイドが形成される。
【0016】
また、本発明における反射層は、密度が1.20g/cm以下であり、これにより反射率に優れる。このような観点から、反射層の密度は、好ましくは1.10g/cm以下、さらに好ましくは1.00g/cm以下、特に好ましくは0.90g/cm以下である。なお、密度を低くするには、反射層が含有する炭酸カルシウム粒子や硫酸バリウム粒子の添加量や製膜条件を、ボイドを増やす方向に調整すればよい。例えば、粒子の添加量を増やすと、ボイドが増える傾向にある。
【0017】
(炭酸カルシウム粒子)
本発明において反射層に含有される炭酸カルシウム粒子は、粒度分布がシャープであり、平均粒径に対して過度に小さすぎる粒子や大きすぎる粒子を含有しないことが好ましく、小粒径側から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が140以下であることが好ましい。このような態様を有する炭酸カルシウム粒子を用いることによって、反射層におけるガスマークの発生を抑制することができ、フィルム面内における反射率のバラツキ抑制の向上効果を高くすることができる。また、反射率の向上効果を高くすることができる。このような観点から、D90/D10の値は、より好ましくは130以下、さらに好ましくは120以下、特に好ましくは100以下である。このように本発明においては、粒度分布がシャープな、とりわけ小径粒子の少ない炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましく、同添加質量における炭酸カルシウム粒子の総表面積を低減し、それによってガスマークの発生を抑制し、反射率の面内バラツキ抑制の向上効果を高くすると同時に、反射率の向上効果を高くできるというものである。なお、このような粒度分布を有するには、炭酸カルシウム粒子について風力分級を適宜実施し、小径の粒子及び大径の粒子を取り除いていけば良い。
【0018】
また、本発明における反射層が含有する炭酸カルシウム粒子は、平均粒径が0.4〜10μmであることが好ましく、それ自体で反射率の向上効果を高くすることができると同時に、ガスマークの発生を抑制することができるため、反射率の面内バラツキ抑制の向上効果を高くし、反射率の向上効果をさらに高めることができる。また、フィルムの延伸性を極端に低下させてしまうことがない。このような観点から、かかる平均粒径は、さらに好ましくは0.6〜8μm、特に好ましくは0.8〜6μmである。
【0019】
本発明における反射層は、炭酸カルシウム粒子を、反射層の質量に対して1〜60質量%含有することが好ましい。含有量を1質量%以上とすることによって、炭酸カルシウムを含有することによる反射率の向上効果の向上が得られ、他方60質量%以下とすることによって、ガスマークの発生を抑制することができ、それによって反射率の面内バラツキ抑制の向上効果、および反射率の向上効果を高くすることができる。また、フィルムの延伸性に優れる。このような観点から、含有量は、さらに好ましくは5〜55質量%、特に好ましくは8〜50質量%である。
【0020】
本発明における炭酸カルシウム粒子は、表面処理剤により表面処理が施されていることが好ましい。それにより、炭酸カルシウム粒子表面のCa活性を失活させ、ガスマークの発生を抑制することができる。かかる表面処理剤としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、あるいはこれらの誘導体などのリン化合物、および、ステアリン酸などの脂肪酸、シランカップリング剤等が挙げられる。本発明においては、中でもリン化合物による表面処理が好ましく、かかるリン化合物としては、具体的には、リン酸、亜リン酸、リン酸トリメチルエステル、リン酸トリブチルエステル、リン酸トリフェニルエステル、リン酸モノあるいはジメチルエステル、亜リン酸トリメチルエステル、メチルホスホン酸、メチルスルホン酸ジエチルエステル、フェニルホスホン酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸ジエチルエステルなどが好ましく挙げられる。中でもリン酸、亜リン酸およびそれらのエステル成形誘導体が好ましい。本発明においては、トリメチルリン酸で表面処理されていることが最も好ましい。これらリン化合物は、単独で用いることができ、また2種以上を併用してもよい。
【0021】
炭酸カルシウム粒子の表面処理方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用することができる。例えばリン化合物によって表面処理を施す場合は、リン化合物と炭酸カルシウム粒子とを物理的に混合する方法(物理的混合方法)を採用することが好ましい。かかる物理的混合方法としては特に限定されるものではなく、例えばロール転動ミル、高速回転式粉砕機、ボールミル、ジェトミルなどの各種の粉砕機を使用して、炭酸カルシウムを粉砕しながらリン化合物で表面処理する方法、あるいは容器自身が回転する容器回転型混合機、固定容器内に回転翼を有したり、あるいは気流を吹き込む容器固定型混合機等を使用して表面処理する方法を挙げることができる。具体的にはナウタミキサー、リボンミキサー、ヘンシェルミキサー等の混合機が好ましい。
【0022】
またその際の処理条件は特に限定されるものではなく、炭酸カルシウム粒子のポリエステルに対する分散性、ポリエステルの高温滞留時の異物発生、発泡の観点から、処理温度は30℃以上が好ましく、さらには50℃以上、特には90℃以上が好ましい。処理時間は5時間以内とすることが好ましく、さらには3時間以内、特には2時間以内が好ましい。また、リン化合物は炭酸カルシウム粒子と同時に混合してもよく、また予め炭酸カルシウム粒子を仕込んだ後にリン化合物を添加してもよい。その際に、リン化合物は滴下させても、噴霧させてもよく、さらには水あるいはアルコール等に溶解もしくは分散させたものであってもよい。
【0023】
また、本発明においては、炭酸カルシウム粒子の表面処理剤をポリエステルに添加、配合して、次いでそこに炭酸カルシウム粒子を添加して、炭酸カルシウムの表面処理を行なうこともできる。例えば、ポリエステルの製造、すなわち重合反応が完了するまでの任意の段階で、あるいは重合反応完了後から溶融混練を行なうまでの段階で、表面処理剤を添加することができる。
【0024】
上記表面処理工程における表面処理剤の添加量は、炭酸カルシウム粒子表面のCa活性が十分に失活される量であればよいが、例えば炭酸カルシウム粒子の質量に対してリン元素の量が0.1質量%以上となる量である。他方、添加しすぎるとフィルム中にリン化合物が多量に残存してしまい、環境の観点から好ましくなく、また押出機内などにおいて炭酸カルシウム粒子同士が凝集してしまうのを抑制することができるという観点から、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0025】
なお、上記表面処理は、炭酸カルシウム粒子を、あらかじめ風力分級等を用いて平均粒径及び粒度分布を好ましい範囲に調整した後に行なうことが好ましい。
本発明においては、反射層に、反射層の質量を基準として50〜3000ppmリン元素を含有する態様が好ましく、ガスマークの発生をより抑制することができる。
【0026】
(硫酸バリウム粒子)
本発明における反射層は、上記炭酸カルシウム粒子と同時に、硫酸バリウム粒子を併用することもでき、反射率の向上効果を高くするという観点においては好ましい態様である。また、耐光性を付与し、反射板の長期使用による黄変を抑制することができる。
【0027】
かかる硫酸バリウム粒子としては、平均粒径が0.1〜5μmのものを用いることが好ましく、反射率の向上効果を高くすることができる。このような観点から、かかる硫酸バリウム粒子の平均粒径は、さらに好ましくは0.5〜3μm、特に好ましくは0.6〜2μmである。このような平均粒径を選択することにより、硫酸バリウム粒子の凝集が生じず、また、フィルムの破断が発生せず良好な生産でフィルムを製造することができ、コストダウンも期待できる。
【0028】
本発明における反射層において、炭酸カルシウム粒子と硫酸バリウム粒子とを併用する場合は、これらの含有量の合計は、反射層の質量に対して60質量%以下とすることが好ましく、フィルムの延伸性を過度に低下させることがない。このような観点から、かかる含有量の合計の上限は、さらに好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。また、反射率の向上効果を高くするという観点においては、かかる含有量の合計は多い方が好ましく、反射層の質量に対して10質量%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは25質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。このうち、炭酸カルシウム粒子の含有量は、ガスマーク抑制の向上効果を高くするという観点においては、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。他方、含有量の下限は、フィルムの軽量化の観点からは、好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上である。また、炭酸カルシウム粒子を多く含む方が、コスト的に好ましい。
【0029】
(反射層のポリエステル)
本発明における反射層は、上記した必須成分としての炭酸カルシウム粒子、および任意成分としての硫酸バリウム粒子の他に、ポリエステルを含有するが、かかるポリエステルは、反射層の質量に対して99〜40質量%含むことが好ましく、かかる範囲とすることによりフィルムの延伸性により優れる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0030】
本発明においては、反射層のポリエステルの固有粘度(o−クロロフェノール、25℃)は、0.50g/dL以上であることが必要である。このような態様とすることで、ガスマーク発生を抑制することができ、それにより反射率のバラツキをより高度に抑制することができる。また、輝度ムラを抑制することができる。さらに、反射層のフィルム強度を高くすることができ、フィルムの延伸性を向上させることができる。また、カールを抑制することができる。このような観点から、固有粘度は、より好ましくは0.51g/dL以上、さらに好ましくは0.52g/dL以上、特に好ましくは0.54g/dL以上である。また、上記の観点からは固有粘度は高い方が好ましいが、高すぎると溶融押出が困難となる等、生産性に劣る傾向にある。そのため、固有粘度は0.90g/dL以下であることが好ましい。
このような態様とするためには、反射層を構成するポリエステルを、例えば個相重合法等の方法を用いて、重合度を伸長させたポリエステル原料を用いて形成することが好ましい。
【0031】
また、上記ポリエステルは、フィルムの延伸性、成形性を向上するという観点から、共重合成分を含んでいることが好ましく、かかる共重合成分としては支持層に用いることができる前述の成分を例示することができる。本発明においては、反射層を構成するポリエチレンテレフタレートとしては、イソフタル酸またはナフタレン−2,6−ジカルボン酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートが好ましく、イソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。共重合量は、共重合ポリエチレンテレフタレートの全酸成分に対して、好ましくは5〜20モル%であり、共重合量が5モル%以上であることにより、反射層が炭酸カルシウム粒子や硫酸バリウム粒子を多く含有しても、延伸性に優れたものとすることができる。また、成形性に優れる。他方、共重合量が20モル%以下であることにより反射率の向上効果を高くすることができる。また、耐熱性、機械強度に優れる。したがって、共重合量が上記数値範囲にあることによって、これらの特性のバランスに優れる。このような観点から、共重合量は、さらに好ましくは7〜17モル%、特に好ましくは8〜14モル%である。
【0032】
[ガスマーク]
本発明においては、フィルムのガスマークが200個/m以下であることが必要である。このような態様とすることによって、反射率の面内バラツキを抑制することができる。また、反射率を高くすることができる。
ここで、本発明においてガスマークとは、層を形成するための溶融樹脂に気体が含まれることに起因して発生するフィルム欠点であり、表面に存在する窪み状の欠点である。本発明におけるガスマークは、例えば図1に示すようなものである。
【0033】
反射層にガスマークが多量に存在すると、正常な反射面の面積が減少するため、反射率が低下してしまう。また、ガスマークが存在する箇所と存在しない箇所での反射率に差が生じ、フィルム面内での反射率のバラツキが生じてしまう。また、ガスマークが多発すると製膜時に破断が発生しやすくなり、生産性が低下する傾向にある。このような観点から、ガスマークは、好ましくは180個/m以下、より好ましくは160個/m以下、さらに好ましくは150個/m以下、特に好ましくは100個/m以下である。理想的には0個/mである。
【0034】
ガスマークの個数を上記数値範囲とするためには、反射層および好ましくは支持層が含有する炭酸カルシウム粒子として、上述の表面処理が施された炭酸カルシウム粒子を用いれば良い。また、上述の90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)を、本発明における好ましい数値範囲とすることも効果的である。これはかかる比(D90/D10)が好ましい範囲を外れると、小径の粒子を多く含むこととなり、その結果炭酸カルシウム粒子の比表面積が大きくなり、炭酸カルシウム表面での樹脂分解反応が発生しやすくなり、ガスマーク発生しやすくなるためである。また、ガスマークをより低減させるためには、反射層における炭酸カルシウム粒子の平均粒径や添加量を本発明における好ましい数値範囲とすればよい。さらに、反射層を構成するポリエステル樹脂の固有粘度を高くすることにより、ガスマークを低減することができる。
【0035】
[イソフタル酸成分の比率]
本発明においては、反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸の共重合量(反射層を構成するポリエステルの全酸成分に対するモル%)と、支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸の共重合量(支持層を構成するポリエステルの全酸成分に対するモル%)との比率(反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸の共重合量(モル%)/支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸の共重合量(モル%))が1.5〜3.0であることが好ましい。このような態様とすることによって、液晶表示装置のバックライトユニットの反射板として用いた場合において、カールを抑制することができる。例えば、反射層/支持層である二層フィルムにおいては、上記比率が1.5未満であると、フィルムが反射層側にカールしてしまう傾向にあり、他方、3.0を超えると支持層側にカールしてしまう傾向にある。
【0036】
[厚み]
本発明における反射層の総厚みは、フィルム全体厚み100に対して60〜90を有することが好ましく、かかる値は、さらに好ましくは70〜85である。反射層の厚みをこの範囲とすることで、良好な延伸性となり、また反射率の向上効果を高くすることができる。また、支持層の総厚みは、フィルム全体厚み100に対して40〜10を有することが好ましく、かかる値は、さらに好ましくは30〜15であり、良好な延伸性と、支持層として十分な機械的強度を得ることができる。
【0037】
本発明の反射板用ポリエステルフィルムの総厚みは、好ましくは60〜500μm、さらに好ましくは75〜400μm、特に好ましくは100〜350μmである。この範囲の総厚みであることによって、フィルム全体として高い反射率とハンドリング性を得ることができる。
支持層の総厚みは、好ましくは10〜100μmであることが好ましい。この範囲の厚みとすることによって、良好な延伸性と機械的強度を得ることができる。また、反射層の総厚みは好ましくは50〜300μmであることが好ましい。反射層の厚みをこの範囲とすることによって、良好な延伸性を得ながら、反射率の向上効果を高めることができる。
【0038】
[層構成]
本発明の層構成は、特に制約されるものではなく、フィルム延伸性、生産性、反射率およびコストの観点から、支持層(B層と呼称する場合がある。)/反射層(A層と呼称する場合がある。)の二層構成、B層/A層/B層やA層/B層/A層の三層構成などが適用される。また、異なる2種類以上の反射層(例えばA1層とA2層)や支持層(例えばB1層とB2層)を有して、B層/A1層/A2層/B層の構成や、B1層/A層/B2層等の構成であってもよい。この中でも、A層/B層の二層構成、B層/A層/B層の三層構成がより好ましく、特にB層/A層/B層の三層構成が好ましく、これにより延伸性および反射率の向上効果を高くすることができる。また、カール、ガスマークを抑制し、反射率のバラツキ、輝度ムラも良好になる傾向である。
【0039】
一方、本発明の目的を損なわない限りにおいて、他の機能を付与するために、上記以外の層構成や特殊な機能を有する層を有していても良い。かかる層としては、例えば滑性付与層、易接着層、離型層、紫外線吸収層、帯電防止層、透明導電層、金属層等を挙げることができる。
さらに、実際の使用環境において、他部材との接着や擦れによる性能劣化を防止するため、本発明の目的を損なわない限りにおいて、フィルム表面に特殊コーティングや特殊加工を施しても良い。かかる層としては、例えば、ビーズコート層の付与やエンボス加工等が挙げられる。
【0040】
[平均反射率]
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面における反射率が、波長400〜700nmの平均反射率で好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上、特に好ましくは94%以上である。反射率が上記数値範囲にあると、反射板に好適に用いることができる。
【0041】
なお、平均反射率の測定は、フィルムの反射面側の表面において、複数の箇所(例えば5箇所)について測定を実施し、それらの平均値として算出することが好ましい。また、反射面とは、フィルムの一方の表面が反射層で形成され、他方の表面が支持層で形成された積層構成においては、反射層側の表面をさし、両方の表面が支持層で形成されている場合は、反射率の高い側の表面をさす。かかる反射面は、バックライトユニットなどで実際に使用する際に、光が入射する側の表面となり、反射面として用いられる。
【0042】
本発明では、かかる反射率は、反射層が炭酸カルシウム粒子を含有し、さらに反射層におけるガスマークを本発明が規定する範囲とすることにより達成することができる。さらに、反射層において、本発明の好ましいポリエステルの態様や炭酸カルシウム粒子の態様を採用したり、本発明の好ましい支持層の態様を採用したりすることによって、反射率の向上効果を高くすることができる。なお、支持層から光を照射したとしても、光は支持層を透過し、反射層に到達し、反射するため、反射層の構成が反射率等の特性に影響を与える。
【0043】
[反射率の面内バラツキ]
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、反射面表面における反射率の面内バラツキが抑制されたものであり、400cmのサンプル中、任意の100点の反射率(波長550nm)の測定値を用いて下記式で求められる反射率の面内バラツキRが5%以下であることが好ましい。
反射率の面内バラツキR=(反射率の最大値−反射率の最小値)/(反射率の平均値)×100
ここで反射率の最大値とは、上記100点の反射率のうち最大の値、反射率の最小値とは、上記100点の反射率のうち最小の値、反射率の平均値とは、上記100点の反射率の平均値である。
【0044】
反射率の面内バラツキが小さいことによって、液晶表示装置のバックライトユニットに用いた場合に、画面内の輝度のバラツキを抑制することができる。このような観点から、上記Rの値は、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0045】
[輝度ムラ(輝度のバラツキ)]
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、反射率のバラツキを小さくすることで、輝度ムラのバラツキも抑制されたものであり、バックライトユニットの発光面を2×2の4区画に分け、点灯1時間後の正面輝度を測定した場合に、下記式で求められる輝度ムラが0.08以下であることが好ましく、0.05以下がさらに好ましい。
輝度ムラ=(最大輝度−最小輝度)/最大輝度
ここで、最大輝度とは、上記4区画の輝度のうち最大の値、最小輝度とは、上記4区画の輝度のうち最小の値である。輝度ムラを小さくすることによって、液晶表示装置のバックライトユニット等に用いた場合に、画面の明暗ムラが小さく、明度の安定した画像が得られる。
【0046】
[カール]
本発明においては、短冊状に切り出したフィルムサンプル(製膜方向200mm×幅方向50mm)の長辺の一端を固定して垂直に吊り下げ、85℃に設定されたオーブン中で無緊張状態で30分間保持した後のフィルムサンプル下端の垂直位置から距離(カール)を測定した時に、11mm未満であることが好ましい。より好ましくは8mm未満、さらに好ましくは5mm未満である。
なお、カールを抑制することにより、液晶表示装置等に用いた場合、使用中の反射板と他部材との接触を防止することができ、より長期に渡って品質劣化の少ないユニットが形成できる。
【0047】
[フィルムの製造方法]
以下、本発明の反射板用ポリエステルフィルムを製造する方法の一例を説明する。
本発明のポリエステル系樹脂は、従来公知の各種製造方法によって製造することができる。すなわちジカルボン酸とジオールを直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、またはジカルボン酸ジメチルエステルとジオールを反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。更に極限粘度数を増大させるために固相重合を行うことができる。
【0048】
固相重合による重縮合工程の一例を説明すると、上記の溶融重合によりプレポリマーを得た後、上述した縮合反応後の溶融樹脂をチップ化(ペレット化)し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において重縮合反応を進める。固相重合処理が済んだペレットは蒸留水で洗浄し、微細な粉状、ひげ状の樹脂を取り除く。一般にはこのような粉状、ひげ状のものはフィルム化する場合の溶融押し出し、溶融樹脂の濾過工程において、取り除くことが難しいので、フィルム中に入って内部異物として品質欠点となることがある。
【0049】
炭酸カルシウム粒子や硫酸バリウム粒子(以下、これらをまとめて単に粒子と呼称する場合がある。)等のポリエステルへの配合は、ポリエステルの重合時に行ってもよく、重合後に行ってもよい。重合時に行う場合、エステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に配合してもよく、重縮合反応開始前に配合してもよい。重合後に行う場合、重合後のポリエステルに添加し溶融混練すればよい。この場合、粒子を比較的高濃度で含有するマスターペレットを製造し、これを、粒子を含有しないポリエステルペレットに配合することで所望の含有量で炭酸カルシウム粒子や硫酸バリウム粒子を含有するポリエステル組成物を得ることができる。
【0050】
本発明では、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、ポリエステル組成物を濾過することが好ましい。この濾過を行うことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0051】
溶融したポリエステル組成物を、フィードブロックを用いた同時多層押出し法によりダイより押し出し、積層未延伸シートを製造する。すなわち反射層を構成するポリエステル組成物の溶融物と、支持層を構成するポリエステル組成物の溶融物とを、フィードブロックを用いて積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリエステル組成物は、積層された形態を維持してダイより押し出される。なお、押出機における溶融温度によっても、ポリエステルの固有粘度を調整することができ、溶融温度を下げることにより固有粘度を高くなる傾向にある。
【0052】
ダイより押し出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。ここで、キャスティングドラムに接した方の面をD面、その反対面をA面ということとする。この未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、機械軸方向(以下、縦方向またはMDと呼称する場合がある。)に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。延伸温度はポリエステルのガラス転移点温度(Tg)以上の温度、さらにはTg〜(Tg+70)℃の範囲の温度とするのが好ましい。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。縦延伸後のフィルムは、続いて、機械軸方向と直行する方向(以下、横方向またはTDと呼称する場合がある)に横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのガラス転移点温度(Tg)より高い温度から始める。そして(Tg+5)〜(Tg+70)℃の範囲のいずれかの温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0053】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−20)℃〜(Tm−100)℃の温度範囲で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−100)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがあり好ましくない。
【0054】
また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させてもよい。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩して縦方向の熱収縮率を調整することができる。また、フィルム横方向については、フィルムの両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0055】
ここでは、フィルムを逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
このようにして得られる本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、支持層とその一方の面に設けられた反射層の二層から構成されていても比較的良好な平面性を得ることができるが、支持層/反射層/支持層の三層構成の方がより高い平面性を得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、測定、評価は以下の方法で行った。
【0057】
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0058】
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたフィルムサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を薄膜切片にした後、光学顕微鏡を用いて観察撮影し、写真から各層の厚み比を測定し、フィルム全体の厚みから計算して、各層の厚みを求めた。
【0059】
(3)平均反射率
フィルムの反射面の表面について、分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときの反射率を400〜700nmにわたって測定し、得られたチャートより波長2nm間隔で反射率を読み取り、その平均値を求めた。以上の操作を、フィルムの任意の5箇所について実施し、その平均を求め平均反射率とした。
A層(反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムは、A層(反射層)を反射面とし、B層(支持層D面)/A層(反射層)/B層(支持層A面)の三層構成フィルムは、反射率の高い方の面を反射面とした。
【0060】
(4)反射率の面内バラツキ
面積400cm(例えば20cm×20cm)のサンプルを切り出し、切り出したサンプルの反射面について、分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときの波長550nmにおける反射率を測定した。かかる測定をサンプル内で異なる任意の100箇所について行い、得られた100点の反射率の値から、最大値、最小値、および平均値を求め、次式によって反射率の面内バラツキR(%)を算出した。
反射率の面内バラツキR=(反射率の最大値−反射率の最小値)/(反射率の平均値)×100
上記で得られた反射率の面内バラツキRの値から、以下の基準で評価した。
◎:Rが1%以下
○:Rが1%を超え2%以下
△:Rが2%を超え5%以下
×:Rが5%を超える
A層(反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムは、A層(反射層)を反射面とし、B層(支持層D面)/A層(反射層)/B層(支持層A面)の三層構成フィルムは、反射率の高い方の面を反射面として測定を行った。
【0061】
(5)延伸性
実施例に記載のフィルムを製膜するに際して(延伸倍率は、縦方向3.0倍、横方向3.6倍)、安定に製膜できるか観察した。以下の基準で評価した。
◎:400m以上安定に製膜できた。
○:300m以上400m未満は安定に製膜できた。
△:200m以上300m未満は安定に製膜できた。
×:200m経過する前に切断が発生し、安定な製膜ができなかった。
【0062】
(6)ガラス転移点温度(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0063】
(7)バックライトユニットへのフィルムサンプルの組み込み
評価用に用意した液晶テレビ(LG社製LE5310AKR)のLEDサイドライトタイプバックライトユニット(42インチ)から、元々組み込まれていた光反射シートを取り外し、測定対象とするフィルムサンプルを組み込んだ。このとき、二層構成のフィルムは、A層(反射層)を反射面とし、三層構成のフィルムは、反射率の高い方の面を反射面として組み込んだ。
【0064】
(8)反射板としての輝度のバラツキ
上記(7)で得られた、本発明で得られたポリエステルフィルムを組み込んだバックライトユニットを用いて評価を実施した。バックライトユニットの発光面を2×2の4区画に分け、点灯1時間後の正面輝度を、トプコン社製のBM−7を用いて測定した。測定角は1°、輝度計とバックライトユニット発光面との距離は50cmとした。バックライトユニット発光面の面内4箇所においてそれぞれ輝度を測定した。得られた輝度の値から、以下の基準で評価した。
◎:(最大輝度−最小輝度)/最大輝度≦0.05
○:0.05<(最大輝度−最小輝度)/最大輝度≦0.08
△:0.08<(最大輝度−最小輝度)/最大輝度≦0.11
×:0.11<(最大輝度−最小輝度)/最大輝度
ここで、最大輝度とは、上記4区画の輝度のうち最大の値、最小輝度とは、上記4区画の輝度のうち最小の値である。
【0065】
(9)フィルムのカール
短冊状に切り出したフィルムサンプル(製膜方向200mm×幅方向50mm)の長辺の一端を固定して垂直に吊り下げ、85℃に設定されたオーブン中で無緊張状態で30分間保持した後のフィルムサンプル下端の垂直位置から距離(カール量)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:カール量が5mm未満である。
○:カール量が5mm以上8mm未満である。
△:カール量が8mm以上11mm未満である。
×:カール量が11mm以上。
【0066】
(10)フィルムの平面性
評価用に用意した液晶テレビ(SHARP社製AQUOS−65V)の直下型バックライト(65インチ)ユニットから、元々組み込まれていた光反射シートを取り外し、測定対象とするフィルムサンプルを組み込んだ。このとき二層構成のフィルムは、A層(反射層)を反射面とし、三層構成フィルムは、反射率の高い方の面を反射面として組み込んだ。
電源を入れて24時間放置後、評価用サンプルを取り出し、特に平面精度の高いかつ、空気抜孔の付いた専用の平板上に評価用サンプルを広げ、フィルムと平板上の空気を約3分間以上の自然放置により減少させた後、生じるフィルムの浮いた部分それぞれの製膜方向長さ最大値を測定し、その合計値を求め、以下の基準で評価した。
◎:浮いた部分の長さの合計値が50mm以下である。
○:浮いた部分の長さの合計値が50mmを超え100mm以下である。
△:浮いた部分の長さの合計値が100mmを超え150mm以下である。
×:浮いた部分の長さの合計値が150mmを超える。
【0067】
(11)粒子の平均粒径
島津製作所製レーザー散乱式粒度分布測定装置SALD−7000を用いて測定した。測定前のエチレングリコールへの分散は、粒子粉体を5質量%スラリー濃度相当になるよう計量して、ミキサー(たとえばNational MXV253型料理用ミキサー)で10分間攪拌し、常温まで冷却したのち、フローセル方式供給装置に供給した。そして、該供給装置中で、脱泡のために30秒間超音波処理(超音波処理の強度は超音波処理装置のつまみを、MAX値を示す位置から60%の位置)してから測定に供した。粒度分布測定結果より50%体積粒径(D50)を求め、これを平均粒径とした。また、同様にして10%体積粒径(D10)および90%体積粒径(D90)を求めた。
【0068】
(12)ガスマーク
面積2500cm(例えば50cm×50cm)のサンプルを準備し、3波長光源下で目視にて検査しガスマークを数え、1mあたりのガスマークの個数に換算して求めた。
なお、長径が0.3mm以上のガスマークを、ルーペを用いて目視にてカウントした。
【0069】
(13)密度
フィルムから反射層を剥離し、剥離した反射層から5cm×5cmに切り出したサンプルを準備した。かかるサンプルについて上記(1)と同様の方法で、面内で25点厚みを測定し、その算術平均値を厚みとして、反射層の体積を求めた。また、同じサンプルについて精密天秤を用いて反射層の質量を測定した。得られた質量と体積から密度を算出した。かかる測定をn=5で実施し、その平均値を反射層の密度(g/cm)とした。
得られた密度の値から、以下の基準で評価した。
A:0.9g/cm以下
B:0.9g/cmを超え1.0g/cm以下
C:1.0g/cmを超え1.1g/cm以下
D:1.1g/cmを超え1.2g/cm以下
E:1.2g/cmを超える
【0070】
(14)固有粘度
フィルムから反射層を剥離し、剥離した反射層0.3gに、o−クロロフェノール25ml加え100℃で溶解させた。溶解後、遠心分離装置(日立工機製CF−15RXII型)を用いて12000rpmにて30分間遠心分離を行い、無機粒子とo−クロロフェノールに溶解したポリエステル成分とを分離した後、25℃に冷却された状態で固有粘度を測定、算出した。固有粘度は下記換算式にて求めた。
固有粘度=測定値/{(100−無機粒子濃度)/100}
【0071】
[製造例1:表面処理された炭酸カルシウム粒子の製造]
まず、平均粒径が約1.7μmの炭酸カルシウム粒子(天然品)を風力分級による処理を数回実施した。次いで、この炭酸カルシウム粒子を、容器固定型混合機であるヘンシェルミキサー内に仕込み、回転翼の回転数1500rpmで攪拌しながら昇温し、缶内温度が90℃に達した時点で、表面処理剤としてトリメチルリン酸を、仕込んだ炭酸カルシウム粒子の質量に対してリン元素の量が1質量%となるように噴霧させながら添加した。その後10分間混合し、平均粒径(D50)が1.7μm、D90/D10が80の表面処理が施された炭酸カルシウム粒子を得た。
また、上記と同様にして、風力分級処理前の平均粒径、および風力分級の処理回数を調整して、実施例に用いられる平均粒径およびD90/D10の異なる、表面処理された炭酸カルシウム粒子を作成した。
【0072】
[製造例2:反射層(A層)を形成するためのポリエステル組成物1の製造]
テレフタル酸ジメチル135質量部、イソフタル酸ジメチル15質量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり10モル%)、エチレングリコール96質量部、ジエチレングリコール3.0質量部、酢酸マンガン0.05質量部、酢酸リチウム0.012質量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03質量部、二酸化ゲルマニウム0.04質量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し、重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5質量%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。
次いで、得られたポリマーを160℃で3時間予備乾燥した後、210℃、100トール、窒素ガス雰囲気下で5時間固相重合を行った。
このポリエステル樹脂に、表1に示すごとく態様となるように、必要に応じて希釈用のポリエチレンテレフタレート、硫酸バリウム粒子、および炭酸カルシウム粒子を添加して、反射層(A層)を形成するためのポリエステル組成物1を得た。
【0073】
[製造例3:反射層(A層)を形成するためのポリエステル組成物2の製造]
固相重合を行わない以外は上記製造例1と同様にして、反射層(A層)を形成するためのポリエステル組成物2を得た。
【0074】
[製造例4:支持層(B層)を形成するためのポリエステル組成物3の製造]
テレフタル酸ジメチル132質量部、イソフタル酸ジメチル9質量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり6モル%)、エチレングリコール96質量部、ジエチレングリコール3.0質量部、酢酸マンガン0.05質量部、酢酸リチウム0.012質量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03質量部、二酸化ゲルマニウム0.04質量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5質量%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。このポリエステル組成物に、表1に示すごとく態様となるように、必要に応じて希釈用のポリエチレンテレフタレート、および不活性粒子を添加して、支持層(B層)を形成するためのポリエステル組成物3を得た。
【0075】
[実施例1]
上記製造例2で得られた反射層(A層)を形成するためのポリエステル組成物1と、上記製造例4で得られた支持層(B層)を形成するためのポリエステル組成物3とを、それぞれ溶融温度285℃に加熱された2台の押出機に供給し、A層のポリエステル組成物と、B層の組成物とを、A層とB層がB層/A層/B層の積層構成となるような3層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイスよりシート状に成形した。さらにこのシートを表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムを得て、次いで120℃にて加熱し長手方向(縦方向)に3.0倍延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで保持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.6倍に延伸した。その後テンター内で230℃で熱固定を行った。次いで、テンター内においてフィルムのエッジ部分に縦方向に刃を入れることによって、クリップからフィルムを分離し、200℃で2%縦方向の弛緩、および200℃で横方向の弛緩を行い、室温まで冷やして二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
【0076】
[実施例2〜3、5、7〜9]
上記製造例2で得られたA層を形成するためのポリエステル組成物1と、上記製造例4で得られたB層を形成するためのポリエステル組成物3を用いて、ポリエステルの組成、不活性粒子(反射層(A層)における硫酸バリウム粒子および炭酸カルシウム粒子)の態様、および層構成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て、評価を行った。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
なお、実施例7〜9は、反射層(A層)/支持層(B層)の二層構成である。
【0077】
[実施例4、6]
上記製造例2で得られたA層を形成するためのポリエステル組成物1と、上記製造例4で得られたB層を形成するためのポリエステル組成物3を用いて、ポリエステルの組成、不活性粒子(反射層(A層)における硫酸バリウム粒子および炭酸カルシウム粒子)の態様、および層構成を表1に示すとおりに変更し、さらに2台の押出機の温度(溶融温度)を275℃にした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て、評価を行った。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
【0078】
[比較例1〜4]
上記製造例3で得られたA層を形成するためのポリエステル組成物2と、上記製造例4で得られたB層を形成するためのポリエステル組成物3を用いて、ポリエステルの組成、不活性粒子(反射層(A層)における硫酸バリウム粒子および炭酸カルシウム粒子)の態様、および層構成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て、評価を行った。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
【0079】
[比較例5]
上記製造例3で得られたA層を形成するためのポリエステル組成物2と、上記製造例4で得られたB層を形成するためのポリエステル組成物3を用いて、ポリエステルの組成、不活性粒子(反射層(A層)における硫酸バリウム粒子および炭酸カルシウム粒子)の態様、および層構成を表1に示すとおりに変更し、さらに2台の押出機の温度(溶融温度)を275℃にした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て、評価を行った。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
比較例1〜5は、固相重合を実施しない方法で得たポリエステルを用いたため、より小さい固有粘度となった。
【0080】
[比較例6]
上記製造例1で用いた表面処理されていない炭酸カルシウム粒子を用いた以外は、上記製造例2と同様にして、A層を形成するためのポリエステル組成物4を製造し、それと、上記製造例4で得られたB層を形成するためのポリエステル組成物3を用いて、ポリエステルの組成、不活性粒子(反射層(A層)における硫酸バリウム粒子および炭酸カルシウム粒子)の態様、および層構成を表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得て、評価を行った。得られたフィルムの構成および物性は表1および2の通りであった。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
PET:ポリエチレンテレフタレート
IPA:イソフタル酸
TMP:トリメチルリン酸
BaSO:硫酸バリウム
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、反射層を反射面として用いて反射板として用いることができ、特に液晶表示装置のバックライトユニットの面光源反射板として好適に用いることができる。また、サイドライト型のバックライトユニットにおける面光源反射板として特に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭酸カルシウム粒子およびポリエステルを含有する反射層と、支持層とを有するポリエステルフィルムであって、反射層の密度が1.20g/cm以下、反射層のポリエステルの固有粘度が0.50g/dL以上、フィルムのガスマークが200個/m以下である反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
炭酸カルシウムが、表面処理された炭酸カルシウム粒子である請求項1に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
反射層に用いられる炭酸カルシウム粒子を小粒径側から積算した90%体積粒径(D90)と10%体積粒径(D10)との比(D90/D10)が140以下である請求項1または2に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
炭酸カルシウム粒子の平均粒径が0.4〜10μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
反射層における炭酸カルシウムの含有量が1〜60質量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
反射層の厚みが、フィルム全体厚み100に対して60〜90である請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
反射層のポリエステルが、固相重合法で得られたポリエステル原料から形成されたものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
少なくとも、支持層、反射層、支持層がこの順で積層された構成を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
支持層は、硫酸バリウム粒子0.1〜10質量%と、全酸成分に対して1〜10モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99.9〜90質量%とからなり、反射層は、炭酸カルシウム粒子1〜60質量%と、全酸成分に対して5〜20モル%のイソフタル酸を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99〜40質量%とからなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。
【請求項10】
サイドライト方式バックライトユニット反射板用である請求項1〜9のいずれか1項に記載の反射板用ポリエステルフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−88716(P2013−88716A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230863(P2011−230863)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】