説明

反射板用塗布ポリエステルフィルム

【課題】帯電防止性を備え、ドット印刷に用いるインクとの接着性に優れ、反射板としてバックライトユニットに組み込んだときに他の部材と擦れる音を発生させることがなく、反射板付近に配置される他の部材の劣化を発生させないように紫外線反射が抑制された、反射板用塗布ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】白色ポリエステルフィルムおよび該フィルムのうえに塗設された塗布層からなり、該塗布層がベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂15〜80重量%、シリコーン化合物5〜50重量%、帯電防止剤15〜80重量%からなる、厚み0.02〜0.2μmの塗布層である、反射板用塗布ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い反射率を備えるとともに、延伸性の良好な白色の反射板用ポリエステルフィルムおよび該フィルムに塗布層を設けた反射板用塗布ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる反射板には、高い反射性能が要求される。従来、この用途のフィルムには、白色染料を添加したフィルムや、白色顔料を添加してフィルムの内部に微細な気泡を形成した白色フィルムが用いられてきた(特開2004−050479号公報、特開2004−330727号公報、特開平6−322153号公報、特開平7−118433号公報)。
【0003】
しかし、これらの従来の白色フィルムでは、フィルムを構成するポリマーのポリエステルやポリオレフィン自体が、冷陰極管からの光に含まれる紫外線によって劣化して、白色フィルムが本来の白色から黄色に黄変する問題がある。
この黄変を抑制するために、白色フィルムの上に紫外線吸収剤をコーティングすること(特開2002−120330号公報)、光源に面する側の表層に顔料を大量に添加すること(特開2007−015315号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−050479号公報
【特許文献2】特開2004−330727号公報
【特許文献3】特開平6−322153号公報
【特許文献4】特開平7−118433号公報
【特許文献5】特開2002−120330号公報
【特許文献6】特開2007−015315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの構成をとると、バックライトユニット内部での使用環境で、反射板にカールが発生して、長期間の使用に耐えない。
また、反射板やリフレクターは、バックライトユニットにその構成部材として組み込まれるが、組み込む工程での作業を容易にするために、その反射面にインクを用いてドット印刷を施す場合がある。従来の白色フィルムでは、インクとの接着性が不十分である。
そして、液晶表示装置の電源投入時にはバックライトユニット内の温度は光源の熱によって急激に上昇するが、このときに反射板と他の部材とが擦れ不快な摩擦音を発生することがある。
【0006】
さらに、反射板は、可視光線の反射率が高いことが必要であるが、一般に、可視光線の反射率が高い反射板は紫外線の反射率も高い。冷陰極管の光には可視光線の他に紫外線が含まれており、紫外線の反射率が高いと反射板で可視光線とともに紫外線も反射され、反射された紫外線によって、液晶表示装置を構成する反射板付近の他の部材が劣化する可能性がある。
【0007】
本発明は、これらの技術的課題を解決することを目的とする。
本発明における第一の発明の課題は、延伸性が良好であるとともに、液晶表示装置のバックライトユニットに用いる反射板としての使用環境でのカールが抑制され平面性に優れる、反射板用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
本発明における第二の発明の課題は、上記特性に加えて、帯電防止性を備え、ドット印刷に用いるインクとの接着性に優れ、反射板としてバックライトユニットに組み込んだときに他の部材と擦れる音を発生させることがなく、反射板付近に配置される他の部材の劣化を発生させないように紫外線反射が抑制された、反射板用塗布ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0009】
本発明における第三の発明の課題は、帯電防止性を備え、ドット印刷に用いるインクとの接着性に優れ、反射板としてバックライトユニットに組み込んだときに他の部材と擦れる音を発生させることがなく、反射板付近に配置される他の部材の劣化を発生させないように紫外線反射が抑制された、反射板用塗布ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明における第一の発明は、支持層とそのうえに設けられた白色反射層とからなり、支持層は、硫酸バリウム粒子0.1〜10重量%およびイソフタル酸成分を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99.9〜90重量%からなり、フィルム全体厚み100あたり10〜40の厚みを有し、白色反射層は、硫酸バリウム粒子31〜60重量%およびイソフタル酸成分を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート69〜40重量%からなり、フィルム全体厚み100あたり90〜60の厚みを有し、白色反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率と支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率との比率(白色反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率/支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率)が1.5〜3.0であることを特徴とする、反射板用ポリエステルフィルムである。
【0011】
そして、本発明における第二の発明は、上記の反射板用ポリエステルフィルムおよび該フィルムのうえに塗設された塗布層からなり、該塗布層がベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂15〜80重量%、シリコーン化合物5〜50重量%、帯電防止剤15〜80重量%からなる、厚み0.02〜0.2μmの塗布層である、反射板用塗布ポリエステルフィルムである。
【0012】
さらに、本発明における第三の発明は、白色ポリエステルフィルムおよび該フィルムのうえに塗設された塗布層からなり、該塗布層がベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂15〜80重量%、シリコーン化合物5〜50重量%、帯電防止剤15〜80重量%からなる、厚み0.02〜0.2μmの塗布層である、反射板用塗布ポリエステルフィルムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明における第一の発明によれば、延伸性が良好であるとともに、液晶表示装置のバックライトユニットに用いる反射板としての使用環境でのカールが抑制され平面性に優れる、反射板用ポリエステルフィルムを提供することができる。
【0014】
本発明における第二の発明によれば、上記特性に加えて、帯電防止性を備え、ドット印刷に用いるインクとの接着性に優れ、反射板としてバックライトユニットに組み込んだときに他の部材と擦れる音を発生させることがなく、反射板付近に配置される他の部材の劣化を発生させないように紫外線反射が抑制された、反射板用塗布ポリエステルフィルムを提供することができる。
【0015】
本発明における第三の発明によれば、帯電防止性を備え、ドット印刷に用いるインクとの接着性に優れ、反射板としてバックライトユニットに組み込んだときに他の部材と擦れる音を発生させることがなく、反射板付近に配置される他の部材の劣化を発生させないように紫外線反射が抑制された、反射板用塗布ポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
反射板用ポリエステルフィルム
本発明において反射板用ポリエステルフィルムは、白色のポリエステルのフィルムであり、支持層とそのうえに設けられた白色反射層とからなる積層フィルムである。以下、各層について詳しく説明する。
【0017】
支持層
支持層は、硫酸バリウム粒子0.1〜10重量%およびイソフタル酸成分を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート99.9〜90重量%のポリエステル組成物からなる。支持層のポリエステル組成物の硫酸バリウム粒子をこの範囲にすることによって、ハンドリング性に優れる十分な滑り性と白色反射層を支える支持層としての強度を保つことができる。
【0018】
支持層の共重合ポリエチレンテレフタレートにおけるイソフタル酸成分の共重合量は、好ましくは2〜10モル%、さらに好ましくは4〜8モル%である。イソフタル酸成分の共重合量をこの範囲にすることによって、良好な製膜性と支持層としての優れた機械的強度を得ることができる。
支持層のポリエステル組成物には、添加剤が必要に応じてさらに配合されていてもよい。この添加剤としては、例えば、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0019】
白色反射層
白色反射層は、硫酸バリウム粒子31〜60重量%およびイソフタル酸成分を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレート69〜40重量%のポリエステル組成物からなる。白色反射層のポリエステル組成物の硫酸バリウム粒子をこの範囲とすることによって、反射板として長期間使用しても黄変しない優れた耐光性と、生産性に優れた製膜性を得ることができる。この共重合ポリエチレンテレフタレートは、ポリエステル組成物中に、59〜40重量%含有されることが好ましい。この場合、硫酸バリウム粒子は、ポリエステル組成物中に41〜60重量%含有されることになる。
【0020】
白色反射層のイソフタル酸成分を共重合成分として含む共重合ポリエチレンテレフタレートにおけるイソフタル酸成分の共重合量は、好ましくは6〜18モル%、さらに好ましくは8〜12モル%である。イソフタル酸成分の共重合量をこの範囲にすることによって、良好な製膜性と白色反射層としての優れた反射性を得ることができる。
白色反射層のポリエステル組成物には、添加剤が必要に応じてさらに配合されていてもよい。この添加剤としては、例えば、蛍光増白剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0021】
イソフタル酸成分の比率
本発明においては、白色反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率と支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率との比率(白色反射層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率(モル%)/支持層を構成するポリエステルに含まれるイソフタル酸成分の含有率(モル%))が1.5〜3.0であることが肝要である。この比率が1.5未満であると液晶表示装置のバックライトユニットの反射板として用いるときに使用環境でフィルムが白色反射層側にカールしてしまう。他方、3.0を超えると支持層側にカールしてしまう。
【0022】
厚み
支持層は、フィルム全体厚み100あたり10〜40の厚みを有する。フィルム全体厚みに占める支持層の厚みをこの範囲とすることで、良好な製膜性と支持層として十分な機械的強度を得ることができる。
白色反射層は、フィルム全体厚み100あたり90〜60の厚みを有する。フィルム全体厚みに占める白色反射層の厚みをこの範囲とすることで、良好な製膜性と反射板として十分な反射率を確保することができる。
【0023】
本発明の反射板用ポリエステルフィルムの総厚みは、好ましくは60〜400μm、さらに好ましくは75〜300μm、特に好ましくは100〜250μmである。この範囲の総厚みであることによって、フィルム全体として高い反射率とハンドリング性を得ることができる。
【0024】
そして、支持層の厚みは、好ましくは10〜100μmである。この範囲の厚みとすることによって、良好な製膜性と機械的強度を得ることができる。白色反射層の厚みは好ましくは50〜300μmである。白色反射層の厚みをこの範囲とすることによって、高い反射率を確保しながら良好な製膜性を得ることができる。
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、特に高い反射性を得るために、支持層とその一方の面に設けられた白色反射層の2層から構成されることが好ましい。
【0025】
硫酸バリウム粒子
支持層および白色反射層に用いる硫酸バリウム粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜5μm、さらに好ましくは0.5〜3μm、特に好ましくは0.6〜2μmである。平均粒径がこの範囲の硫酸バリウム粒子を用いることで、微粒子の凝集が生じず、また、フィルムの破断が発生せず良好な生産でフィルムを製造することができる。
本発明の反射板用ポリエステルフィルムでは、延伸時に、白色反射層で硫酸バリウム粒子と共重合ポリエステルとの界面で剥離が起こり、ボイドが形成される。
【0026】
平均反射率および熱収縮率
本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、その少なくとも一方の表面の反射率が、波長400〜700nmの平均反射率で90%以上、さらに好ましくは92%以上、特に好ましくは94%以上である。この平均反射率を備えることで高い輝度を得ることができる。
【0027】
また、本発明の反射板用ポリエステルフィルムは、85℃の熱収縮率が、直交する2方向ともに、好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.4%以下、特に好ましくは0.3%以下である。この熱収縮率を備えることで、長期の使用においても輝度斑の少ない反射板を得ることができる。
【0028】
塗布層
本発明における第二の発明の反射板用塗布ポリエステルフィルムにおいて、塗布層は反射板用ポリエステルフィルムのうえに塗設され、好ましくは反射板用ポリエステルフィルムの白色反射層のうえに塗設される。こうすることによって、フィルムを液晶表示装置の反射板として用いたときに、ボイド形成物質によって形成された白色層の表面の突起が、他の部材と擦れる時に発生する音を低減することができる。なお、塗布層は白色ポリエステルフィルムの片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。
【0029】
本発明における第三の発明の反射板用塗布ポリエステルフィルムにおいて、塗布層は白色ポリエステルフィルムのうえに塗設される。
この塗布層は、ベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂15〜80重量%、シリコーン化合物5〜50重量%、帯電防止剤15〜80重量%からなる、厚み0.02〜0.2μmの塗布層である。
塗布層の厚みは、乾燥後の厚みとして、0.02〜0.2μm、好ましくは0.03〜0.1μmである。0.02μm未満であると紫外線吸収性能および帯電防止性が不十分となり、他方、0.2μmを超えると塗布斑が目立つようになり、塗工外観が悪くなる。
【0030】
ベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂
塗布層は、塗布層の組成物100重量%あたり、ベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂を、15〜80重量%、好ましくは30〜70重量%含有する。このベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂は、紫外線吸収剤として作用する。15重量%未満であると紫外線吸収性能が不十分となり、他方、80重量%を超えても紫外線吸収性能が飽和して意味がなく、また、相対的に帯電防止剤を量を少なくせざるを得ず帯電防止性能が不十分となってフィルム表面に埃が付き易くなる。
【0031】
ベンゾトリアゾール基は、(メタ)アクリル樹脂の側鎖にあり、その含有量は、(メタ)アクリル樹脂を構成する(メタ)アクリルモノマー100モル%あたり、例えば10〜80モル%、好ましくは20〜70モル%である。
本発明の反射板用塗布ポリエステルフィルムは、塗布層にこの範囲でベンゾトリアゾール基を存在させることで、365nmの全光線反射率を80%以下、好ましくは70%以下とすることができる。
【0032】
シリコーン化合物
塗布層は、塗布層の組成物100重量%あたり、シリコーン化合物を5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%含有する。シリコーン化合物が5重量%未満であると滑性が不足し、50重量%を超えるとUVインクとの良好な接着性を得ることができない。
【0033】
本発明においてシリコーン化合物は、オルガノシロキサンを骨格とする化合物であり、例えば、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、フロロシリコーン、シリコーンポリエーテル共重合体、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸変性シリコーンを挙げることができる。
シリコーン化合物としては反応性基を有するシリコーン化合物を用いると、塗布層の欠落がなく、滑性や帯電防止性を長期に安定して維持することができ、欠落成分による生産工程への汚染を起こさず高い生産性で生産することができて好ましい。
【0034】
帯電防止剤
塗布層は、塗布層の組成物100重量%あたり、帯電防止剤を15〜80重量%、好ましく30〜70重量%含有する。15重量%未満であると帯電防止性が不十分となり、フィルム表面に埃が付き易くなり、他方、80重量%を超えると、紫外線吸収剤を十分な量含有させることができず、紫外線吸収性能が不足する。
この帯電防止剤は、帯電防止性を付与する剤であり、好ましくはカチオンポリマーを用い、好ましくはビニル系重合体からなり側鎖にカチオン性基を有しそのカチオン性基が第4級アンモニウム塩である化合物を用いる。
【0035】
第4級アンモニウム塩としては、第4級アンモニウムスルホネート、第4級アンモニウムサルフェート、第4級アンモニウムナイトレートを例示することができる。
本発明における反射板用塗布ポリエステルフィルムは、塗膜に帯電防止剤を配合することで、表面固有抵抗値が、1×1012Ω/□以下、好ましくは1×1011Ω/□以下を達成することができる。
【0036】
界面活性剤
塗布層は、水性塗液を用いて塗設されることが好ましい。この場合、塗布層を形成するための塗布液には、塗布層の組成物と化学的に不活性な界面活性剤が配合されていることが好ましい。界面活性剤を配合する場合、塗布層の組成物100重量%あたり、例えば1〜20重量%、好ましくは10〜20重量%配合する。かかる範囲で配合することによって、ポリエステルフィルムへの水性塗布液の濡れを促進し、塗布液の安定性を向上することができる。
【0037】
界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。
【0038】
添加剤
塗布層には、発明の効果を妨げない量の添加剤が、配合されていてもよい。この添加剤として、例えば、蛍光増白剤、酸化防止剤を挙げることができる。
【0039】
製造方法
以下、本発明の第一の発明である、反射板用ポリエステルフィルムを製造する方法の一例を説明する。
硫酸バリウム粒子の共重合ポリエステルへの配合は、ポリエステルの重合時に行ってもよく、重合後に行ってもよい。重合時に行う場合、エステル交換反応もしくはエステル化反応終了前に配合してもよく、重縮合反応開始前に配合してもよい。
【0040】
重合後に行う場合、重合後のポリエステルに添加し溶融混練すればよい。この場合、硫酸バリウム粒子を比較的高濃度で含有するマスターペレットを製造し、これを硫酸バリウム粒子を含有しないポリエステルペレットに配合することで所望の含有率で硫酸バリウム粒子を含有するポリエステル組成物を得ることができる。
【0041】
本発明では、製膜時のフィルターとして線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる平均目開き10〜100μm、好ましくは平均目開き20〜50μmの不織布型フィルターを用い、ポリエステル組成物を濾過することが好ましい。この濾過を行なうことにより、一般的には凝集して粗大凝集粒子となりやすい粒子の凝集を抑えて、粗大異物の少ないフィルムを得ることができる。
【0042】
ダイから溶融したポリエステル組成物をフィードブロックを用いた同時多層押出し法により、積層未延伸シートを製造する。すなわち白色反射層を構成するポリエステル組成物の溶融物と、支持層を構成するポリエステル組成物の溶融物とを、フィードブロックを用いて白色反射層/支持層となるように積層し、ダイに展開して押出しを実施する。この時、フィードブロックで積層されたポリエステル組成物物は、積層された形態を維持している。
【0043】
以下、ポリエステルのガラス転移温度をTg、融点をTmという場合がある。
ダイより押出された未延伸シートは、キャスティングドラムで冷却固化され、未延伸フィルムとなる。この未延伸フィルムをロール加熱、赤外線加熱等で加熱し、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。この延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行うのが好ましい。
【0044】
延伸温度は、好ましくはTg以上の温度、さらに好ましくはTg〜(Tg+70)℃の範囲の温度とする。延伸倍率は、用途の要求特性にもよるが、縦方向、縦方向と直交する方向(以降、横方向と呼ぶ)ともに、好ましくは2.2〜4.0倍、さらに好ましくは2.3〜3.9倍である。2.2倍未満とするとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.0倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなり好ましくない。縦延伸後のフィルムは、続いて、横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとするが、これら処理はフィルムを走行させながら行う。横延伸の処理はポリエステルのTgより高い温度から始める。そして(Tg+5)〜(Tg+70)℃の範囲のいずれかの温度まで昇温しながら行う。横延伸過程での昇温は連続的でも段階的(逐次的)でもよいが通常逐次的に昇温する。例えばテンターの横延伸ゾーンをフィルム走行方向に沿って複数に分け、ゾーン毎に所定温度の加熱媒体を流すことで昇温する。横延伸の倍率は、この用途の要求特性にもよるが、好ましくは2.5〜4.5倍、さらに好ましくは2.8〜3.9倍である。2.5倍未満であるとフィルムの厚み斑が悪くなり良好なフィルムが得られず、4.5倍を超えると製膜中に破断が発生し易くなる。
【0045】
横延伸後のフィルムは両端を把持したまま(Tm−20)℃〜(Tm−100)℃の温度範囲で定幅または10%以下の幅減少下で熱処理して熱収縮率を低下させるのがよい。これより高い温度であるとフィルムの平面性が悪くなり、厚み斑が大きくなり好ましくない。また、熱処理温度が(Tm−100)℃より低いと熱収縮率が大きくなることがあり好ましくない。
【0046】
また、熱固定後フィルム温度を常温に戻す過程で熱収縮量を調整するために、把持しているフィルムの両端を切り落し、フィルム縦方向の引き取り速度を調整し、縦方向に弛緩させてもよい。弛緩させる手段としてはテンター出側のロール群の速度を調整する。弛緩させる割合として、テンターのフィルムライン速度に対してロール群の速度ダウンを行い、好ましくは0.1〜1.5%、さらに好ましくは0.2〜1.2%、特に好ましくは0.3〜1.0%の速度ダウンを実施してフィルムを弛緩して縦方向の熱収縮率を調整することができる。また、フィルム横方向は両端を切り落すまでの過程で幅減少させて、所望の熱収縮率を得ることもできる。
【0047】
ここでは、フィルムを逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれの方法で延伸してもよい。
このようにして得られる、本発明における第二および第三の発明の反射板用ポリエステルフィルムは、支持層とその一方の面に設けられた白色反射層の2層から構成されていても、良好な平面性を得ることができる。
【0048】
次に、本発明における第二および第三の発明である、反射板用塗布ポリエステルフィルムを製造する方法の一例を説明する。塗布層の形成に用いる塗液は、水性塗布液、例えば水溶液、水分散液、乳化液の形態で使用することが好ましい。水性塗布液の固形分濃度は、通常20重量%以下、好ましくは1〜10重量%である。1重量%未満であるとポリエステルフィルムへの塗れ性が不足することがあり好ましくなく、20重量%を超えると塗液の安定性や塗布層の外観が悪化することがあり好ましくない。
【0049】
水性塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で実施することができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で実施するのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布するのが好ましい。
【0050】
ここで、配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)を含むものである。なかでも、未延伸フィルムまたは一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに、上記組成物の水性塗液を塗布し、そのまま縦延伸および/または横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0051】
水性塗布液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理として、フィルム表面に、例えばコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理といった物理処理を施すか、予備処理をしない場合には、塗布液に、塗布層の組成物とは化学的に不活性な界面活性剤を配合することが好ましい。
【0052】
塗布方法として、公知の任意の塗工法が適用することができる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法を適用することができる。これらは単独または組合せて用いることができる。
【0053】
このようにして得られる本発明の反射板用塗布ポリエステルフィルムによれば、少なくとも一方の表面の反射率が波長400〜700nmの平均反射率で90%以上、さらに好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上を達成することができる。この範囲の反射率であると、液晶表示装置のバックライトユニットの反射板として用いたときに、高い輝度を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、測定および評価は以下の方法で行った。
【0055】
(1)フィルム厚み
フィルムサンプルをエレクトリックマイクロメーター(アンリツ製 K−402B)にて、10点厚みを測定し、平均値をフィルムの厚みとした。
【0056】
(2)各層の厚み
フィルムサンプルを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋した。そして、包埋されたフィルムサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S)で縦方向に平行な断面を薄膜切片にした後、光学顕微鏡を用いて観察撮影し、写真から各層の厚み比を測定し、フィルムサンプル全体の厚みから計算して、各層の厚みを求めた。
【0057】
(3)反射率
(3−1)反射率(%)
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%としたときのフィルムの反射率を400〜700nmにわたって測定し、得られたチャートより2nm間隔で反射率を読み取った。なお、A層(白色反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムについて、A層(白色反射層)を反射面として測定を行った。
【0058】
(3−2)UV反射率(%)
分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)に積分球を取り付け、BaSO白板を100%とした時のフィルムの反射率(%)を波長365nmについて測定した。なお、A層(白色反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムについて、A層(白色反射層)を反射面として測定を行った。
【0059】
(4)延伸性
縦方向2.5〜3.4倍、横方向3.5〜3.7倍に延伸して製膜し、安定に製膜できるか否かを観察し、下記の基準で評価した。
○:1時間以上安定に製膜できる
×:1時間経過する前に切断が発生し、安定な製膜ができない
【0060】
(5)ガラス転移点(Tg)、融点(Tm)
示差走査熱量測定装置(TA Instruments 2100 DSC)を用い、昇温速度20m/分で測定を行った。
【0061】
(6)バックライトユニットへのフィルムサンプルの組み込み
評価用に用意した液晶テレビ(SHARP社製AQUOS−20V)の直下型バックライト(20インチ)ユニットから、元々組み込まれていた光反射シートを取り外し、測定対象とするフィルムサンプルを組み込んだ。なお、A層(白色反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムについて、A層(白色反射層)が反射面となるように組み込んだ。
【0062】
(7)反射板としての輝度
バックライトユニットの発光面を2×2の4区画に分け、点灯1時間後の正面輝度を、トプコン社製のBM−7を用いて測定した。測定角は1°、輝度計とバックライトユニット発光面との距離は50cmとした。バックライトユニット発光面の面内4箇所における輝度の単純平均を求め、輝度とした。
【0063】
(8)フィルムのカール
フィルムを製膜方向に長さ200mm、幅方向に長さ50mmの長方形に切り出して、カールの測定用のフィルムサンプルとした。なお、フィルムの製膜方向と垂直な方向を幅方向という。フィルムサンプルが垂直になるようにフィルムサンプルの一方の短辺(以下、これを上端の短辺という)を固定して、フィルムサンプルを吊り下げた。この固定は、把持部分が幅50mm、奧行き5mmのクリップで、上端の短辺を、幅50mm、奥行き5mmの範囲について把持することで行った。このとき、サンプルの他方の短辺(以下、これを下端の短辺という)は、上端の短辺の下側に位置する。この状態でフィルムサンプルを熱処理した。この熱処理は、フィルムサンプルを85℃のオーブン中で、無緊張状態で30分間保持し、この後、オーブンから取り出して25℃の環境で10分間冷却することで行った。この熱処理によって、フィルムサンプルにはカールが生じ、下端の短辺はもとの位置から移動した。上端の短辺から垂直に下ろした面と、下端の短辺との距離を測定することで、カールの程度を測定した。この距離を表の「カール」の欄に示した。
【0064】
(9)フィルムの平面性
評価用に用意した液晶テレビ(SHARP社製AQUOS−65V)の直下型バックライト(65インチ)ユニットから、元々組み込まれていた光反射シートを取り外し、測定対象とするフィルムサンプルを組み込んだ。このときA層(白色反射層)が反射面となるように組み込んだ。
電源を入れて24hr放置後、評価用サンプルを取り出し、特に平面精度の高いかつ、空気抜孔の付いた専用の平板上に評価用サンプルを広げ、フィルムと平板上の空気を約3分間以上の自然放置により減少させた後、生じるフィルムの浮いた部分それぞれの製膜方向長さ最大値を測定し、その合計値を求めた。
【0065】
(10)音鳴り
バックグラウンドレベルが20dB以下の環境で、フィルムサンプルのうえにアクリル板(アクリライトL N865)を重ね合わせ、その上に錘を載せてフィルムを一定速度(10cm/分)で引っ張り、その際に発生する異音を、錘から30cm離れたマイクで集音した。40dB以上の異音が発生する場合を音鳴りあり、40dB未満の音鳴りしか発生しない場合を音鳴りなしとした。なお、A層(白色反射層)/B層(支持層)の二層構成のフィルムについて、A層(白色反射層)側にアクリル板を重ね合わせた。○、△が実用性能を有す。
○:3kgの錘で音鳴りがせず、5kgの錘で音鳴りがしない。
△:3kgの錘で音鳴りがせず、5kgの錘で音鳴りがする。
×:3kgの錘で音鳴りがする。
【0066】
(11)表面固有抵抗値(Ω/□)
サンプルフィルムの塗布層表面の表面固有抵抗値を測定した。タケダ理研社製・固有抵抗測定器を使用し、測定温度23℃、測定湿度60%の条件で、1日調湿後、印加電圧100Vで1分間保持した後の表面固有抵抗値(Ω/□)を測定した。表中、a+bEは、a×10bを意味する。
【0067】
(12)平均粒径
島津製作所製CP−50型セントリフュグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定した。得られた遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径を読み取り、この値を平均粒径とした。
【0068】
(13)UVインキ接着性
サンプルフィルムの塗布層を塗設していない方の面に厚さ250μmのポリエステルフィルムを接着剤にて貼り付け、他方、塗布層を塗設した方の面の上に、紫外線硬化型印刷インキ(東洋インキ製フラッシュドライFDO紅APN)をRIテスター(明製作所製)により印刷した。この後、中圧水銀灯UVキュア装置(80W/cm、一灯式、日本電池製)でキュアリングを行い、厚み3.0μmのUVインキ層を形成した。このUVインキ層の上にセロハンテープ(18mm幅、ニチバン製)を15cmの長さに貼り、この上を2kgの手動式荷重ロールで一定の荷重を与えフィルムを固定した後、セロハンテープの一端を90°方向に剥離した後のUVインキ層を観察した。UVインキの接着性を下記の基準により評価した。○、△が実用性能を有す。
○:UVインキ層が全く剥離しない(UVインキ接着性良好)
△:塗膜とUVインキ層間が部分的に凝集破壊状に剥離する(UVインキ接着性やや良好)
×:塗膜とUVインキ層間が層状に剥離する(UVインキ接着性不良)
【0069】
参考例1
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり12モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。この共重合ポリエステルに表1に示す不活性粒子を表1に示す含有率(組成物の全重量を基準とする)となるように添加して、A層に用いるポリエステル組成物とした。
【0070】
他方、テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル9重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり6モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し、重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。この共重合ポリエステルに表2に示す不活性粒子を、表2に示す含有率(組成物の全重量を基準とする)となるように添加して、B層に用いるポリエステル組成物とした。
A層に用いるポリエステル組成物を280℃に加熱された押出機に供給し、また、B層に用いるポリエステル組成物を280℃に加熱された他の押出機に供給し、A層のポリエステル組成物とB層のポリエステル組成物とを、層Aと層BがA/Bとなるような2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイよりシート状に成形した。
【0071】
得られたシート状物を表面温度25℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを90℃にて、長手方向(縦方向)に3.0倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.6倍に延伸した。その後テンター内で200℃の温度で3秒間熱固定を行い、その後、縦方向に0.5%、横方向に2.0%弛緩を行い、室温まで冷やして、フィルムの厚みが153μm、A層が116μm、B層が37μmの二軸延伸フィルムである反射板用ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表5に示す。
表中、PETはポリエチレンテレフタレート、IPAはイソフタル酸、Tgは共重合ポリマーのガラス転移温度、Tmは融点を意味する。
【0072】
参考例2〜10
A層のポリエステル組成物を表1に示す共重合ポリエステルおよび不活性粒子からなり、表1に示す不活性粒子の含有率(組成物の全重量を基準とする)のポリエステル組成物に変更した。また、B層のポリエステル組成物を表2に示す共重合ポリエステルおよび不活性粒子からなり、表2に示す不活性粒子の含有率(組成物の全重量を基準とする)のポリエステル組成物に変更した。
二軸延伸後のフィルム厚みならびにA層の厚みおよびB層の厚みを表3に示すとおりに変更する以外は、参考例1と同様に延伸して、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表5に示す。
【0073】
比較例1〜9
A層のポリエステル組成物を表1に示す共重合ポリエステルおよび不活性粒子からなり、表1に示す不活性粒子の含有率(組成物の全重量を基準とする)のポリエステル組成物に変更した。また、B層のポリエステル組成物を表2に示す共重合ポリエステルおよび不活性粒子からなり、表2に示す不活性粒子の含有率(組成物の全重量を基準とする)のポリエステル組成物に変更した。
二軸延伸後のフィルム厚みならびにA層の厚みおよびB層の厚みを表3に示すとおりに変更する以外は、参考例1と同様に延伸して、二軸延伸フィルムを得た。得られた二軸延伸フィルムの評価結果を表5に示す。
【0074】
実施例1〜11
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル18重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり12モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。この共重合ポリエステルに、表1に示す不活性粒子を、表1に示す含有率(組成物の全重量を基準とする)となるように添加して、A層に用いるポリエステル組成物とした。
【0075】
テレフタル酸ジメチル132重量部、イソフタル酸ジメチル9重量部(ポリエステルの全ジカルボン酸成分あたり6モル%)、エチレングリコール96重量部、ジエチレングリコール3.0重量部、酢酸マンガン0.05重量部、酢酸リチウム0.012重量部を精留塔、留出コンデンサを備えたフラスコに仕込み、撹拌しながら150〜235℃に加熱しメタノールを留出させエステル交換反応を行った。メタノールが留出した後、リン酸トリメチル0.03重量部、二酸化ゲルマニウム0.04重量部を添加し、反応物を反応器に移した。ついで撹拌しながら反応器内を徐々に0.5mmHgまで減圧するとともに290℃まで昇温し、重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステルのジエチレングリコール成分量は2.5wt%、ゲルマニウム元素量は50ppm、リチウム元素量は5ppmであった。この共重合ポリエステルに、表2に示す不活性粒子を、表2に示す含有率(組成物の全重量を基準とする)となるように添加して、B層に用いるポリエステル組成物とした。
A層に用いるポリエステル組成物を280℃に加熱された押出機に供給し、また、B層に用いるポリエステル組成物を280℃に加熱された他の押出機に供給し、A層のポリエステル組成物とB層のポリエステル組成物とを、層Aと層BがA/Bとなるような2層フィードブロック装置を使用して合流させ、その積層状態を保持したままダイよりシート状に成形した。
【0076】
得られたシート状物を表面温度20℃の冷却ドラムで冷却固化して未延伸フィルムとし、この未延伸フィルムを95℃にて、長手方向(縦方向)に3.0倍に延伸し、25℃のロール群で冷却した。ここにロールコーターにより白色層の表面に表4に示す塗布液(固形分濃度2重量%)、条件で均一に塗設した。続いて、縦延伸したフィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き120℃に加熱された雰囲気中で長手に垂直な方向(横方向)に3.6倍に延伸した。その後テンター内で200℃の温度で3秒間熱固定を行い、その後、縦方向に0.5%、横方向に2.0%弛緩を行い、室温まで冷やして、フィルムの厚みならびにA層の厚みおよびB層の厚みが表3に記載のとおりである二軸延伸フィルムである反射板用塗布ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、85℃、30分の熱収縮率が長手方向0.1%、幅方向0.1%であった。得られたフィルムの評価結果を表5に示す。
なお、表4において、塗液の成分は次のとおりである。
【0077】
紫外線吸収剤1:
下記式に示す構造が50モル%/メチルメタクリレートが45モル%/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/5モル%からなる共重合体である。
【化1】

この紫外線吸収剤1は、ベンゾトリアゾール基を側鎖に有するメタアクリレート樹脂である。
【0078】
帯電防止剤1:
下記式に示す構造が80モル%/メチルアクリレート10モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%からなる共重合体である。
【化2】

(ただし、R、RはそれぞれHであり、Rは炭素数が3のアルキレン基であり、R、Rはそれぞれ炭素数が1の飽和炭化水素基であり、Rは炭素数が2のヒドロキシアルキレン基であり、Yはメチルスルホネートイオンである。)
【0079】
帯電防止剤2:
ジメチルアミノエチルスルホネートメタクリレート80モル%/メチルアクリレート10モル%/N−メチロールアクリルアミド10モル%からなる共重合体である。
【0080】
シリコーン化合物1:
カルボキシ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名X22−3701E)
シリコーン化合物2:
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名KF−101)
シリコーン化合物3:
アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名KF−8012)
シリコーン化合物4:
親水性特殊変性シリコーン(信越化学工業株式会社製 商品名X22−904)
なお、シリコーン化合物1〜4については、予め界面活性剤と先に混合してから、塗布液に添加した。
【0081】
界面活性剤:
ポリオキシエチレン(n=8.5)ラウリルエーテル(三洋化成株式会社製 商品名ナロアクティーN−85)
架橋剤:
オキサゾリン(株式会社日本触媒製 商品名エポクロスWS−700)
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の反射板用ポリエステルフィルムおよび反射板用塗布ポリエステルフィルムは、白色反射層を反射面として用いて反射板として用いることができ、特に液晶表示装置のバックライトユニットの面光源反射板として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色ポリエステルフィルムおよび該フィルムのうえに塗設された塗布層からなり、該塗布層がベンゾトリアゾール基を有する(メタ)アクリル樹脂15〜80重量%、シリコーン化合物5〜50重量%、帯電防止剤15〜80重量%からなる、厚み0.02〜0.2μmの塗布層である、反射板用塗布ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−214816(P2012−214816A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−168437(P2012−168437)
【出願日】平成24年7月30日(2012.7.30)
【分割の表示】特願2009−551639(P2009−551639)の分割
【原出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】