説明

反射板用樹脂組成物および反射板

【課題】本発明は、高い白色度を有し、熱や光に対し優れた耐変色性を有し、さらにシリコーン樹脂との高い密着性(密着力)を有する発光装置用反射板及びその反射板の原料である反射板用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、及びシラノール縮合物を含むことを特徴とする反射板用樹脂組成物、及び当該組成物を用いて得られる発光装置用反射板に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード素子(Light Emission Diode、以下「LED」という)等の発光装置用反射板及び該反射板として好適に使用できる反射板用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LED発光装置は、小型かつ軽量で各種機器類へ組み込み易く、振動やON/OFFの繰り返しに強いため寿命が非常に長く、発色が鮮やかで優れた視認性を示し、加えて電力消費量が比較的少ないといった種々の好ましい特性を有する。中でも、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LED発光装置の実用化により、携帯電話、コンピュータ、テレビ等の液晶表示画面のバックライト、自動車のヘッドライトやインスツルメントパネル、照明器具等の光源として大きな注目を集めている。
【0003】
LED発光装置は、主に発光部であるLED、ハウジングを兼ねた反射板(リフレクタ)、LEDを封止及び保護する透明な封止材、及びリード線から構成されている。
【0004】
その封止材には、耐光性や耐熱性の高さから、通常、シリコーン樹脂が用いられている。装置の信頼性を高めるためには、封止材を構成するシリコーン樹脂と反射板との高い密着性が求められる。
【0005】
また、反射板には、量産性の観点から熱可塑性樹脂が用いられているが、熱可塑性樹脂では、射出成形や半田付け等の製造工程における熱、使用時の熱や光により変色し、白色度が低下することが問題となっている。中でも、耐熱性樹脂として汎用されているポリアミド樹脂は、熱や光により変色しやすいという問題がある。
【0006】
そのため、LED発光装置の反射板は、シリコーン樹脂との高い密着性とともに、白色度や耐変色性を有していることが求められている。
【0007】
また、近年の高輝度やハイパワーを特長とする用途においては、反射板には更なる白色度や耐変色性の改善が求められている。
【0008】
例えば、特許文献1では、チタン酸カリウム繊維及び/又はワラストナイトと、酸化チタンと、半芳香族ポリアミドとが含有されたパッケージからなるLED発光装置が提案されている。このパッケージは、従来のガラス繊維に代えてチタン酸カリウム繊維及び/又はワラストナイトを用いるため、パッケージ表面の平滑性が確保されることから、封止材であるシリコーン樹脂とパッケージとの密着性を高めることができると記載されている(本明細書の比較例1に相当する)。しかし、このパッケージの密着性は必ずしも満足できる性能ではない。また、このパッケージでは、継続的な熱や光に晒されることにより変色し白度が大きく低下する傾向にある。
【0009】
また、特許文献2では、LEDを搭載した基板を有するLED発光装置において、LEDを封止材により封止する前工程として、基板をプラズマ処理し、次いでプライマー組成物(シランカップリング剤等)によりプライマー処理を行った後、LEDを封止材にて封止することで、基板と封止材との接着性を高め、装置の信頼性を向上することが提案されている。しかし、プラズマ処理は、基板を構成する樹脂組成物を劣化させる虞があり、また工程数増加による生産コストが増加するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開2007/037355号パンフレット
【特許文献2】特開2006−253398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い白色度を有し、熱や光に対し優れた耐変色性を有し、さらにシリコーン樹脂との高い密着性(密着力)を有する発光装置用反射板(以下、「反射板」と表記する)、及びその反射板の原料である反射板用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、及びシラノール縮合物を含む樹脂組成物を成形して得られる反射板が、高い白色度、熱及び光に対する優れた耐変色性、並びにシリコーン樹脂との高い密着力を発揮できることを見出した。かかる知見に基づき、さらに研究を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、以下の反射板用樹脂組成物および該樹脂組成物を成形して得られる反射板を提供する。
【0014】
項1 ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、及びシラノール縮合物を含むことを特徴とする反射板用樹脂組成物。
【0015】
項2 該シラノール縮合物が、シランカップリング剤の加水分解縮合物及び/又はシリコーン系化合物である、項1に記載の反射板用樹脂組成物。
【0016】
項3 該ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、並びにシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を含む混合物を混合及び加熱して得られる、項2に記載の反射板用樹脂組成物。
【0017】
項4 該ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、並びにシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を含む混合物100重量%中に、該シランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を0.1〜10重量%の割合で配合している、項3に記載の反射板用樹脂組成物。
【0018】
項5 該シラノール縮合物が、一般式(1)
1Si(OR4−n (1)
(式中、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R1が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物の加水分解縮合物である、項1又は2に記載の反射板用樹脂組成物。
【0019】
項6 該ポリアミド樹脂の融点が、280℃以上である、項1〜5のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【0020】
項7 該ポリアミド樹脂が、全モノマー成分中の芳香族モノマーの割合が20モル%以上である半芳香族ポリアミド樹脂である、項1〜6のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【0021】
項8 該ポリアミド樹脂が、モノマー成分として芳香族ジカルボン酸及び脂肪族アルキレンジアミンを含む半芳香族ポリアミド樹脂である、項1〜7のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【0022】
項9 項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる反射板。
【0023】
項10 該反射板がLED用である項9に記載の反射板。
【発明の効果】
【0024】
本発明の反射板用樹脂組成物から得られる反射板(リフレクタ)は、高い白色度を有し、熱及び光に対し優れた耐変色性を有し、さらに封止材を構成するシリコーン樹脂との高い密着性(密着力)を有している。また、反射板として優れた機械的強度も有している。そのため、発光装置用(特に、LED用)の反射板として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の反射板用樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、及びシラノール縮合物を含むことを特徴とする。該シラノール縮合物は、該反射板用樹脂組成物のマトリックスであるポリアミド樹脂中に分散している。該シラノール縮合物は、シランカップリング剤の加水分解縮合物及び/又はシリコーン系化合物からなり、これらの化合物がポリアミド樹脂と反応し得る反応性官能基を有する場合には、該反射板用樹脂組成物は、該シラノール縮合物とポリアミド樹脂等とが部分的に反応し共有結合を形成しているものも包含する。
【0026】
以下、本発明の反射板用樹脂組成物及び反射板について詳細に説明する。
1.ポリアミド樹脂
本発明で使用するポリアミド樹脂としては、モノマー成分として各種脂肪族モノマーや芳香族モノマーを使用することができ、ポリアミド樹脂であれば特に制限されず使用することができる。本発明で使用するポリアミド樹脂は、リフロー半田時の反射板の変形、変色等を抑制するため、融点が280℃以上であることが好ましい。また、押出、成形などの溶融加工でのポリアミド樹脂の熱分解を抑制するため、融点が350℃以下、さらには330℃以下であることが好ましい。融点は、JIS−K7121に準じて測定することができる。
【0027】
本発明で使用するポリアミド樹脂は、吸湿による変形や物性低下を抑制するため、半芳香族ポリアミド樹脂であることが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂とは、ポリアミド樹脂のモノマー成分として、芳香族モノマーを含有するポリアミド樹脂を意味するものである。本発明で使用する半芳香族ポリアミド樹脂は、ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分中の芳香族モノマーが、通常20モル%以上、好ましくは25モル%以上、より好ましくは25〜60モル%である。ここで、半芳香族ポリアミド樹脂における芳香族モノマーのモル分率は、重合原料に用いる全モノマー中における芳香族モノマーのモル分率を意味する。
【0028】
芳香族モノマーとしては、例えば、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸、芳香族アミノカルボン酸等が挙げられる。芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、メタキシレンジアミン等が、芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が、また芳香族アミノカルボン酸としては、例えば、p−アミノ安息香酸等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0029】
芳香族モノマーは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。芳香族モノマー以外のモノマー成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族アルキレンジアミン、脂環式アルキレンジアミン、脂肪族アミノカルボン酸等が挙げられる。
【0030】
脂肪族ジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸等を挙げられる。これらの中でも、アジピン酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0031】
脂肪族アルキレンジアミンは、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン等が挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン等が好ましい。脂肪族アルキレンジアミンは、1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0032】
脂環式アルキレンジアミンとしては、例えば、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、イソフォロンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。脂環式アルキレンジアミンは1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0033】
脂肪族アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドケカン酸等を挙げることができ、これらに対応する環状のラクタムを用いてもよい。脂肪族アミノカルボン酸は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0034】
これらのモノマー成分の中でも、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族アルキレンジアミン等が好ましい。これらのモノマー成分は1種を単独で使用でき又は2種以上を併用できる。
【0035】
上記の半芳香族ポリアミド樹脂の中でも、芳香族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとを含むもの、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸と脂肪族アルキレンジアミンとを含むものが好ましい。これらの半芳香族ポリアミド樹脂の中でも、ジカルボン酸がテレフタル酸、テレフタル酸とアジピン酸との混合物、テレフタル酸とイソフタル酸との混合物、又は、テレフタル酸とイソフタル酸とアジピン酸との混合物が好ましい。前記3種の混合物においては、テレフタル酸の割合が25モル%以上のものが特に好ましい。更に、これらの半芳香族ポリアミド樹脂の中でも、脂肪族アルキレンジアミンが、ヘキサメチレンジアミン又はヘキサメチレンジアミンと2−メチルペンタメチレンジアミンとの混合物であるものが特に好ましい。
【0036】
半芳香族ポリアミド樹脂の中で、特に好ましいものの一例として、テレフタル酸25〜30モル%(特に、約27.5モル%)、アジピン酸20〜25モル%(特に、約22.5モル%)及びヘキサメチレンジアミン45〜55モル%(特に、約50モル%)を共重合したもの、テレフタル酸30〜35モル%(特に、約32モル%)、アジピン酸15〜20モル%(特に、約18モル%)及びヘキサメチレンジアミン45〜55モル%(特に、約50モル%)を共重合したもの、テレフタル酸45〜55モル%(特に、約50モル%)、ヘキサメチレンジアミン20〜30モル%(特に、約25モル%)及び2−メチルペンタメチレンジアミン20〜30モル%(特に、約25モル%)を共重合したものを挙げることができる。半芳香族ポリアミド樹脂を構成する芳香族モノマーや他のモノマー成分の構成比や種類を適宜選択することにより、融点等を適宜調整することができる。
【0037】
2.酸化チタン
本発明で使用する酸化チタンとしては、反射板としての白色度を向上できる酸化チタンであれば特に制限なく使用できる。必要に応じ、アルミナ、シリカ、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の公知の表面処理剤で処理したものでもよい。
【0038】
本発明で使用する酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型、単斜晶型等の各種結晶形態のものを使用できるが、屈折率が高く光安定性の良いルチル型が好ましい。
【0039】
本発明で使用する酸化チタンは、粒子状、繊維状、板状(薄片状、鱗片状、雲母状等を含む)等の各種形状の粉末を使用でき、好ましくは粒子状のものを使用するのがよい。
【0040】
本発明で使用する酸化チタンの寸法は特に制限されないが、白色度を高くする観点から、その平均粒子径は、好ましくは0.05〜0.5μmがよく、さらに好ましくは0.1〜0.3μmである。酸化チタンの平均粒子径はレーザー回折法により測定することができる。
【0041】
本発明で使用する酸化チタンとしては、上述の酸化チタンを1種又は2種以上使用することができる。
【0042】
3.無機繊維
本発明で使用する無機繊維としては、例えば、ガラス繊維、ガラスミルド繊維、酸化亜鉛繊維、チタン酸ナトリウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ホウ酸マグネシウム繊維、酸化マグネシウム繊維、珪酸アルミニウム繊維、窒化珪素繊維、ワラストナイト等が挙げられる。上述の無機繊維からなる群より選ばれる1種又は2種以上を使用することができ、得られる樹脂組成物の機械強度、寸法安定性、耐熱性を向上するこができる。
【0043】
本発明で使用する無機繊維は、隠蔽力を高くする観点や、平面平滑性やミクロ補強性の観点から、ワラストナイト、チタン酸カリウム繊維からなる群より選ばれる1種又は2種以上を使用するのが好ましい。
【0044】
ワラストナイトは、メタケイ酸カルシウムからなる無機繊維である。ワラストナイトの寸法は特に制限はないが、通常、平均繊維径が0.1〜15μm、好ましくは2.0〜7.0μm、平均繊維長が3〜180μm、好ましくは20〜100μm、平均アスペクト比が3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。本発明では市販品も使用でき、例えば、バイスタルW(商品名:大塚化学株式会社製、平均繊維長:25μm、平均繊維径:3μm)、NyglosI−10013(商品名:Nyco社製、平均繊維長:65μm、平均繊維径:5μm)等を使用することができる。
【0045】
チタン酸カリウム繊維としては、特に制限はなく従来公知のものを広く使用でき、例えば、4チタン酸カリウム繊維、6チタン酸カリウム繊維、8チタン酸カリウム繊維等を使用することができる。チタン酸カリウム繊維の寸法は特に制限はないが、通常、平均繊維径が0.01〜1μm、好ましくは0.1〜0.5μm、平均繊維長が1〜50μm、好ましくは3〜30μm、平均アスペクト比が10以上、好ましくは15〜35である。本発明では市販品も使用でき、例えば、TISMO D102(商品名:大塚化学株式会社製、平均繊維長:15μm、平均繊維径:0.5μm)等を使用することができる。
【0046】
該ワラストナイト及びチタン酸カリウム繊維の平均繊維長及び平均繊維径は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡の観察により測定することができる。
【0047】
本発明においては、得られる樹脂組成物の機械強度等の物性をより一層向上させるために、本発明で使用する無機繊維に表面処理を施してもよい。表面処理は公知の方法に従い、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いて行えばよい。これらの中でも、シランカップリング剤が好ましく、アミノシランが特に好ましい。
【0048】
4.シラノール縮合物
本発明で使用するシラノール縮合物は、シロキサン結合を主骨格とし有機基を有するオリゴマー又はポリマーである。該シラノール縮合物は、好適には、シランカップリング剤の加水分解縮合物又はシリコーン系化合物である。
【0049】
後述するように、例えば、シランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を、ポリアミド樹脂、酸化チタン、及び無機繊維とともに混合及び加熱(特に、溶融混練)することにより、反射板用樹脂組成物を得ることができる。ここで、シランカップリング剤を用いた場合は、混合時にポリアミド樹脂中に存在する水分子や空気中の水分と反応(加水分解)してシラノールとなり、これが加熱処理により縮合してシラノール縮合物を与える。また、シリコーン系化合物を用いた場合は、それ自身がシラノール縮合物となり得る。
【0050】
本発明で使用するシラノール縮合物としては、例えば、一般式(1)
1Si(OR4−n (1)
(式中、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R1が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物(シランカップリング剤)の加水分解縮合物が挙げられる。
【0051】
シラノール縮合物は、一般式(1)で示される化合物の1種又は2種以上の混合物から加水分解及び縮合を経て製造されたものでもよい。
【0052】
で示されるアルキル基としては、通常、直鎖又は分岐状の、炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数2〜4のアルキル基である。該アルキル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0053】
で示されるシクロアルキル基としては、通常、炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられる。具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基である。該シクロアルキル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0054】
で示されるアルケニル基としては、通常、直鎖又は分岐状の、炭素数2〜20のアルケニル基、好ましくは炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。具体的には、例えば、ビニル基、1−プロぺニル基、2−プロぺニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル、ヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のアルケニル基である。該アルケニル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0055】
で示されるシクロアルケニル基としては、通常、炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。具体的には、例えば、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数5〜8のシクロアルキル基である。該シクロアルケニル基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0056】
で示されるアリール基としては、通常、炭素数6〜20のアリール基、好ましくは炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。具体的には、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくは炭素数6〜9のアリール基である。該アリール基は任意の位置に、後述する置換基を1〜4個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1個)有していてもよい。
【0057】
上記のRで示される基はそれぞれ置換基を有していてもよい。当該置換基として、例えば、アリール基(例えば、フェニル基等)又はアミノ低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、メルカプト基、カルボキシル基、エーテル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基、エステル基(例えば、炭素数1〜20アルコキシカルボニル基等)、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基(−NHCONH)、カルバモイル基(−CONH)、アルカノイルアミノ基(例えば、炭素数1〜20のアルカノイルアミノ基等)、アルカノイルオキシ基(例えば、炭素数1〜20のアルカノイルオキシ基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロへキシル基等)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)等が挙げられる。
【0058】
これらの置換基のうち、樹脂組成物のマトリックスであるポリアミド樹脂との親和性の観点から、ポリアミド樹脂のアミド基、アミノ基又はカルボキシル基と反応し得る反応性官能基が好ましく、例えば、フェニル基又はアミノ低級(例えば、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4)アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、エポキシシクロアルキル基(例えば、3,4−エポキシシクロヘキシル基等)、水酸基、イソシアネート基等が好適なものとして挙げられる。
【0059】
で示される基のうち、好ましくは、フェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1〜3個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0060】
で示される基のうち、より好ましくは、フェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1又は2個(特に1個)の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0061】
で示される基のうち、特に好ましくは、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0062】
で示される基の好適な具体例としては、例えば、以下の一般式(1a)〜(1g)で表される基が挙げられる。
【0063】
【化1】

【0064】
(式中、a〜gは、同一であっても異なっていてもよく、2〜6の整数を示す。)
a〜gは、好ましくは2又は3を示し、より好ましくは、aは2であり、b〜gは3である。
【0065】
で示される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、イソプロピル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0066】
一般式(1)で示される化合物の好ましい具体例としては、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルエトキシシラン等が挙げられる。
【0067】
本発明で使用する一般式(1)で示される化合物(即ち、シランカップリング剤)は、ポリアミド樹脂と混合及び加熱することで、アルコキシ基(−OR)の一部又は全部が、ポリアミド樹脂中に含まれる水分や空気中の水分と反応してシラノール基を生成し(加水分解)、シラノール基同士の縮合反応によりシラノール縮合物となる。
【0068】
前記処理は、溶融混練法を用いるのが好ましい。溶融混練の熱によりシラノール縮合物が生成し、溶融混練のせん断力によりシラノール縮合物をポリアミド樹脂中に分散させることができる。さらに、シラノール縮合物が反応性官能基を有する場合には、ポリアミド樹脂と反応して結合を形成すると考えられるため、ポリアミド樹脂中のシラノール縮合物の分散状態を維持(保持)することができ、結果としてシラノール縮合物のブリードアウトを抑制することができる。
【0069】
また、前記処理は、例えば、溶融混練の前工程として、ポリアミド樹脂に一般式(1)で示される化合物を添加して混合する(例えば、ポリアミド樹脂を撹拌しながら、これに一般式(1)で示される化合物を滴下、噴霧等する)ことにより実施することできる。この混合には、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー等のミキサーを用いることができる。一般式(1)で示される化合物は、そのままで用いてもよく、又は加水分解を促進する溶媒(例えば、水、アルコール又はこれらの混合溶媒)に溶解して溶液として用いてもよい。
【0070】
本発明の反射板用樹脂組成物では、一般式(1)で示される化合物とポリアミド樹脂とが溶融混練されることにより、生成したシラノール縮合物がマトリックスであるポリアミド樹脂中に存在又は分散していることを特徴とする。
【0071】
本発明の反射板用樹脂組成物が、シリコーン樹脂(封止剤)との密着力、白色度及び耐変色性が大きく向上するのは、ポリアミド樹脂中にシロキサン結合を主骨格とするシラノール縮合物が形成されるためと考えられる。この点は、後述するポリシロキサン結合を主骨格とするシリコーン系化合物(典型例として、一般式(2)で表される化合物)を用いて樹脂組成物を調製した場合に同様の効果が発揮されることからも、容易に理解できる。
【0072】
また、アミド基、アミノ基又はカルボキシル基と反応し得る反応性官能基を有する一般式(1)で示される化合物を用いた場合には、得られる樹脂組成物は耐変色性、特に光による変色を更に抑制できるという優れた効果を奏する。作用機構は不明であるが、該反応性官能基の一部又は全部が、ポリアミド樹脂のアミド基、アミノ基又はカルボキシルと、共有結合、水素結合等の化学結合を形成するためであると推測される。
【0073】
なお、シランカップリング剤で表面処理された無機繊維及び/又は酸化チタンをポリアミド樹脂中に分散させただけの樹脂組成物では、上記の本発明の効果(優れた密着力、白色度及び耐変色性)は得られない。その理由は、この樹脂組成物では、無機繊維/又は酸化チタンの表面にのみシランカップリング剤の加水分解反応物が局在しており、ポリアミド樹脂全体にシロキサン結合を主骨格とするシラノール縮合物が分散していないためであり、及び反応性官能基が無機繊維/又は酸化チタンの表面にのみ局在しているためポリアミド樹脂との化学結合の形成が不十分なためである、と考えられる。
【0074】
また、本発明では、一般式(1)で示される化合物を予め縮合させたシラノール縮合物(即ち、シリコーン系化合物)を原料に用いることもできる。当該シリコーン系化合物は、一般式(1)で示される化合物の1種、又は2種以上を加水分解及び縮合して得られるシラノール縮合物である。このシリコーン系化合物を原料に用いると、反射板の耐変色性をさらに向上させることができる。
【0075】
シリコーン系化合物の具体例として、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル等のシリコーンオイル;直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造をもつシリコーンゴム;シロキサン結合が(CHSiO3/2で表される三次元網目状に架橋した構造をもつポリメチルシルセスキオキサン;3官能シロキサン単位を主成分とした3次元網目構造のシリコーンレジン等が挙げられる。これらのシリコーン系化合物は、商業的に入手可能な公知の化合物、及び当業者が公知の方法を用いて製造できる化合物のいずれをも包含する。
【0076】
これらのシリコーン系化合物の典型例として、一般式(2)
【0077】
【化2】

【0078】
(式中、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、l及びmは1以上の任意の整数を示し、括弧内の各繰り返し単位構造の結合の順番は特に限定はない。)
で表される化合物が挙げられる。
【0079】
ここで、Rで示される基は、前記一般式(1)におけるRとして列挙された基を採用することができる。
【0080】
で示される基のうち、好ましくは、フェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1〜3個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0081】
で示される基のうち、より好ましくは、フェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1又は2個(特に1個)の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0082】
で示される基のうち、特に好ましくは、アミノ基、フェニルアミノ基、アミノエチルアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1個の基で置換されたアルキル基が挙げられる。
【0083】
で示される基の好適な具体例としては、例えば、上記一般式(1a)〜(1g)で表される基が挙げられる。
【0084】
lは好ましくは1〜20,000の整数、より好ましくは1〜10,000の整数であり、mは好ましくは1〜20,000の整数、より好ましくは1〜10,000の整数である。
【0085】
上記一般式(2)で表されるシリコーン系化合物のうち、好ましいものとして、一般式(3)
【0086】
【化3】

【0087】
(式中、R3Aはフェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1〜3個の基で置換されたアルキル基であり、l及びmは前記に同じであり、括弧内の各繰り返し単位構造の結合の順番は特に限定はない。)
で表される化合物が挙げられる。
【0088】
3Aとして好ましくは、上記のRとして好ましく例示された基が挙げられ、特に一般式(1a)〜(1g)で表される基であり、より好ましくは、一般式(1b)、(1c)及び(1d)で表される基である。
【0089】
上記一般式(2)で表されるシリコーン系化合物のうち、他の好ましいものとして、一般式(4)
【0090】
【化4】

【0091】
(式中、フェニル基又はアミノ炭素数2〜4アルキル基で置換されていてもよいアミノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、カルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、及びエポキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる1〜3個の基で置換されたアルキル基であり、l及びmは前記に同じであり、括弧内の各繰り返し単位構造の結合の順番は特に限定はない。)
で表される化合物が挙げられる。
【0092】
3Bとして好ましくは、上記のRとして好ましく例示された基が挙げられ、特に一般式(1a)〜(1g)で表される基であり、より好ましくは、一般式(1b)、(1c)及び(1d)で表される基である。
【0093】
一般式(2)で示されるシリコーン系化合物が液状物の場合(例えば、シリコーンオイル等)は、粘度(25℃)は通常10〜2,000mm/s、好ましくは10〜1,000mm/sである。粘度がこの範囲にあると、溶融混合時にポリアミド樹脂との粘度差を小さくできるため均一分散しやすくなる。粘度は、動粘度測定装置で測定することができる。
【0094】
一般式(2)で示されるシリコーン系化合物が固体の場合(例えば、シリコーンゴム、ポリメチルシルセスキオキサン、シリコーンレジン等)は、粉末状が好ましく、その平均粒子径は、通常、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜10μmである。平均粒子径がこの範囲にあると、溶融混合時により樹脂組成物中に分散しやすくなる。平均粒子径は、レーザー回折法で測定することができる。
【0095】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂中にシロキサン結合を主骨格とするシラノール縮合物を含有することにより、シリコーン樹脂との密着力、白色度及び耐変色性が向上する。また、シラノール縮合物の分子中にアミド基、アミノ基又はカルボキシル基と反応し得る反応性官能基を有する場合には、光による変色を更に抑制できるという優れた効果を奏する。詳細の作用機構は不明であるが、該反応性官能基の一部又は全部が、ポリアミド樹脂のアミド基、アミノ基又はカルボキシルと、共有結合、水素結合等の化学結合を形成するためであると推測される。
【0096】
5.その他の添加剤
本発明の反射板用樹脂組成物には、その好ましい物性を損なわない範囲で、無機充填材、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、可塑剤、核剤、染料、顔料、離型剤、紫外線吸収剤等の添加剤を1種又は2種以上配合してもよい。
【0097】
無機充填材としては、例えば、タルク、シリカ、酸化亜鉛(テトラポット形状のものを含む)等が挙げられる。
【0098】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール・ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール・ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドキシベンジルフォスフォネート−ジエチレステル、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)が好ましい。
【0099】
リン系酸化防止剤の具体例としては、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェビン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェビン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェビン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1.3.2]ジオキサフォスフェビン−6−イル]オキシ]エチル]エタナミンが好ましい。
【0100】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、例えば、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
【0101】
6.反射板用樹脂組成物及び反射板の製法
本発明の樹脂組成物は、各種配合割合にてポリアミド樹脂、無機繊維、酸化チタン、並びにシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物と、更に必要に応じて、その他の添加剤とを含む混合物を、混合及び加熱(特に、溶融混練)することによって製造できる。溶融混練には、例えば、二軸押出機等の公知の溶融混練装置を使用できる。
【0102】
本発明で使用するポリアミド樹脂は、上記混合物の合計量100重量%中に30〜80重量%の割合となるように配合するのがよい。本発明で使用するポリアミド樹脂の上限値は70重量%が好ましく、65重量%がさらには好ましい。本発明で使用するポリアミド樹脂の下限値は40重量%が好ましく、45重量%がさらには好ましい。ポリアミド樹脂が30〜80重量%であると、成形性を損なうことなく、耐熱性が優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0103】
本発明で使用する酸化チタンは、上記混合物の合計量100重量%中に5〜50重量%の割合となるように配合するのがよい。本発明で使用する酸化チタンの上限値は40重量%が好ましく、30重量%がさらには好ましい。本発明で使用する酸化チタンの下限値は10重量%が好ましく、15重量%がさらには好ましい。酸化チタンが5〜50重量%であると、成形性や外観が良好で、満足できる白色度を有する製品を得ることができる。
【0104】
本発明で使用する無機繊維は、上記混合物の合計量100重量%中に5〜60重量%の割合となるように配合するのがよい。本発明で使用する無機繊維の上限値は40重量%が好ましく、30重量%がさらには好ましい。本発明で使用する無機繊維の下限値は10重量%が好ましく、15重量%がさらには好ましい。無機繊維が5〜60重量%であると、成形性や外観が良好で、満足できる機械強度、寸法安定性、耐熱性を有する製品を得ることができる。
【0105】
本発明で使用するシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物は、上記混合物の合計量100重量%中に0.1〜10重量%の割合となるように配合するのがよい。本発明で使用するシラノール縮合物の上限値は7重量%が好ましく、5重量%がさらには好ましい。本発明で使用するシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物の下限値は0.3重量%が好ましく、0.5重量%がさらには好ましい。シランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物が0.1〜10重量%であると、ブリードアウトすることがなく、満足できる耐変色性、シリコーン樹脂との密着力を有する製品を得ることができる。
【0106】
本発明で使用してもよい上記必須成分以外の添加剤の量は、本発明の樹脂組成物の好ましい物性を損なわない範囲であれば特に制限はない。通常は、上記混合物の合計量100重量%中に、9.9重量%以下、好ましくは7重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。
【0107】
溶融混練における、加熱温度は、ポリアミド樹脂が溶融し得る温度であれば特に限定はなく、通常、ポリアミド樹脂の融点以上で分解開始温度未満である。通常、溶融混練に用いる溶融混練装置のシリンダー内温度をこの温度範囲に調整する。
【0108】
溶融混練処理により、一般式(1)で示される化合物(シランカップリング剤)から得られるシラノール縮合物及び/又はシリコーン系化合物は、ポリアミド樹脂中に混合及び分散される。加えて、該シラノール縮合物及び/又はシリコーン系化合物の分子中に反応性官能基が存在する場合は、該官能基の一部又は全部が、ポリアミド樹脂のアミド基、アミノ基又はカルボキシル基と反応する。
【0109】
かくして、所望の効果を発揮する本発明の樹脂組成物が製造される。
【0110】
本発明の樹脂組成物は、目的とする成形品の種類、用途、形状などに応じて、射出成形、インサート成形、圧縮成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形等の公知の樹脂成形方法より、各種成形品とすることできる。また上記の成形方法を組み合わせた成形方法を採用することもできる。
【0111】
本発明の樹脂組成物を成形することで得られる反射板は、封止材であるシリコーン樹脂との密着力が優れていることからLED反射板として好適に使用でき、しかも、白色度や耐変色性も優れていることから、光反射面にメッキ処理を施すことなくLED反射板として使用することができる。
【0112】
本発明の反射板は、上述したように発光装置用反射板(リフレクタ)を意味する。なお、反射「板」と表記しているが、光を反射する性能を有するものであれば、その形状は特に限定されず、「板」状の平面形状に限定されるものではない。例えば、箱状、円錐状、パラボナ状等の立体形状をも包含するものである。
【0113】
本発明の反射板はLED発光装置のみならず光を反射する他の用途にも適応することができる。例えば、各種の電機電子部品、自動車のキーレスエントリーシステム、冷蔵庫庫内照明、液晶表示装置のバックライト、自動車フロントパネル照明装置、照明スタンド、ベッドライト、家電製品インジゲーター類、赤外線通信等の光通信機器類、天井照明装置等の反射板が挙げられる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、本実施例および比較例で使用したポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、シランカップリング剤及びシラノール縮合物は具体的には次の通りである。また、ポリアミド樹脂の融点は、示差走査型熱量計(商品名:DSC6200、セイコーインスツルメンツ社製)を用いて、窒素気流下25℃から10℃/分で昇温することにより得られた吸熱ピークとした。
<ポリアミド樹脂>
ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸、アジピン酸をそれぞれ50モル%、27.5モル%、22.5モル%の割合で重合させてなる半芳香族ポリアミド樹脂(商品名:ザイテルHTN502HF、デュポン社製、融点310℃)
<酸化チタン>
粉末状酸化チタン(商品名:JR−405、テイカ株式会社製、平均粒子径0.21μm)
<無機繊維>
ワラストナイト(商品名:バイスタルW、大塚化学株式会社製、平均繊維長25μm、平均繊維径3μm)
チタン酸カリウム繊維(商品名:TISMO D102、大塚化学株式会社製、平均繊維長15μm、平均繊維径0.5μm)
ガラス繊維(商品名:ECS 03T−289H/PL、日本電気硝子株式会社製、平均繊維長3mm、平均繊維径11μm)
<シラノール縮合物又はシランカップリング剤>
シラノール縮合物1:両末端型エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:KF−105、信越化学工業株式会社製、粘度(25℃)15mm/s)
シラノール縮合物2:側鎖型アミノ変性シリコーンオイル(商品名:BY16−213、東レ・ダウコーニング株式会社製、粘度(25℃)55mm/s)
シラノール縮合物3:側鎖型エポキシ変性シリコーンオイル(商品名:X22−2000、信越化学工業株式会社製、粘度(25℃)190mm/s)
シラノール縮合物4:側鎖型高級脂肪酸アミド含有シリコーンオイル(商品名:KF−3935、信越化学工業株式会社製、融点49℃)
シラノール縮合物5:シリコーンレジンパウダー(商品名:KMP590、信越化学工業株式会社製、平均粒子径2μm)
シラノール縮合物6:シリコーンゴムパウダー(商品名:KMP597、信越化学工業株式会社製、平均粒子径5μm)
シランカップリング剤7:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:KBE−603、信越化学工業株式会社製)
シランカップリング剤8:3−グリシドキシプロピルエトキシラン(商品名:KBE−403、信越化学工業株式会社製)
【0115】
実施例1〜17、比較例1〜3
表1に示す配合割合で、二軸押出機のメインホッパーからポリアミド樹脂とシラノール縮合物又はシランカップリング剤とを、サイドフィーダーから無機繊維と酸化チタンとを加えることで溶融混練し、それぞれペレットを製造した。なお二軸押出機のシリンダー温度は320℃であった。
【0116】
得られたペレットを射出成形機にてJIS試験片及び縦30mm×横30mm×厚さ3mmの平板を成形し、評価サンプルとした。なお射出成形機のシリンダー温度は330℃、金型温度は130℃であった。
【0117】
評価方法
(1)引張強さ及び引張破断伸び
JIS K7113に準じて測定し、結果を表1に示した。
(2)曲げ強さ及び曲げ弾性率
JIS K7271に準じて測定し、結果を表1に示した。
(3)ノッチ付きアイゾット(IZOD)衝撃値
JIS K7110に準じ、1号試験片で測定し、結果を表1に示した。
(4)ハンター白色度
色差計(商品名:ZE6000、日本電色株式会社製)を用いて、得られた平板のハンター白色度を測定し、成形直後のハンター白色度(W1)を測定し、結果を表1に示した。
(5)耐熱変色試験によるハンター白色度保持率
得られた平板を180℃×2時間空気中オーブンで加熱した。加熱後の平板のハンター白色度を(4)と同様に測定し、成形直後のハンター白色度に対する加熱後の値の比率を、以下の式に基づいて算出し、結果を表1に示した。
【0118】
ハンター白色度度保持率(%)=W2/W1×100
W1:成形直後(加熱前)のハンター白色度
W2:加熱後のハンター白色度度
(6)耐光変色試験によるハンター白色度保持率
得られた平板を、メタルハライドランプにて16mW/cmで、120℃×500時間、光を照射した。光照射後の平板のハンター白色度を(4)と同様に測定し、成形直後のハンター白色度に対する光照射後の値の比率を、以下の式に基づいて算出し、結果を表1に示した。
【0119】
ハンター白色度保持率(%)=W3/W1×100
W1:成形直後(メタルハライドランプによる光照射前)のハンター白色度
W3:メタルハライドランプによる光照射後のハンター白色度
(7)密着力
得られた平板の表面上にてシリコーン封止材(商品名:OE−6636、東レ・ダウコーニング株式会社製)を150℃×1時間で硬化させ、4mm×4mm×高さ1mm突起物を作製した。得られた突起物を平板から剥がす力を測定し、結果を表1に示した。
【0120】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、及びシラノール縮合物を含むことを特徴とする反射板用樹脂組成物。
【請求項2】
該シラノール縮合物が、シランカップリング剤の加水分解縮合物及び/又はシリコーン系化合物である、請求項1に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項3】
該ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、並びにシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を含む混合物を混合及び加熱して得られる、請求項2に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項4】
該ポリアミド樹脂、酸化チタン、無機繊維、並びにシランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を含む混合物の合計量100重量%中に、該シランカップリング剤及び/又はシリコーン系化合物を0.1〜10重量%の割合で配合している、請求項3に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項5】
該シラノール縮合物が、一般式(1)
1Si(OR4−n (1)
(式中、nは1〜3から選択される任意の整数を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を示し、それらの基は置換基を有していてもよく、R1が複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、Rが複数存在する場合には、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物の加水分解縮合物である、請求項1又は2に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項6】
該ポリアミド樹脂の融点が、280℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項7】
該ポリアミド樹脂が、全モノマー成分中の芳香族モノマーの割合が20モル%以上である半芳香族ポリアミド樹脂である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項8】
該ポリアミド樹脂が、モノマー成分として芳香族ジカルボン酸及び脂肪族アルキレンジアミンを含む半芳香族ポリアミド樹脂である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射板用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物を成形して得られる反射板。
【請求項10】
該反射板がLED用である請求項9に記載の反射板。

【公開番号】特開2013−91737(P2013−91737A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235393(P2011−235393)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】