説明

反射率維持特性に優れた銀合金

本発明は、銀を主成分とし、第1の添加元素として銀より高融点の元素を少なくとも1種含んでなる反射率維持特性に優れる銀合金である。本発明において、第1の添加元素は、銅、マンガン、シリコン、ニッケル、コバルト、イットリウム、鉄、スカンジウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステンが好ましい。また、本発明では、第2の添加元素として、白金、金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、クロム、ゲルマニウム、インジウム、錫、鉛、アルミニウム、カルシウム、ガリウム、ビスマス、アンチモン、ストロンチウム,ハフニウム、ガドリニウム、サマリウム、ネオジウム、ランタン、セリウム、イッテルビウム、ユーロピウムの少なくとも1種を含むものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録媒体、ディスプレイ等に設けられる反射膜の構成材料として好適な銀合金に関する。特に、長期の使用においても反射率を維持することができる反射膜用の銀合金に関する。
【背景技術】
【0002】
銀は、光記録媒体、ディスプレイ等で使用される反射膜の材料として最も好ましい材料とされている。銀は反射率が高い上に、同じく高反射率を有する金よりも安価であることによる。そして、近年の光記録媒体の分野では、追記・書換型の媒体(CD−R/RW、DVD−R/RW/RAM)へ推移し、光記録媒体の重要性の拡大に伴い、高反射率を有し、コストの比較的低い銀は、反射膜用の材料の中心として重要視されている。
【0003】
一方、銀は耐食性に乏しく、腐食により黒色に変色して反射率を低下させるという問題がある。この反射膜の腐食の要因としては、その適用される製品(記録媒体、ディスプレイ等)により異なるが、例えば、ディスプレイの反射膜では、大気中の湿度等により反射膜の腐食が発生するおそれがある。
【0004】
また、光記録媒体の反射層においては、大気等の雰囲気による腐食も懸念されるが、それ以上に、反射層と接する記録媒体の他の構成層(記録層、誘電体層等)の影響による腐食を考慮する必要がある。例えば、追記型の光ディスク(CD−R、DVD−R、DVD+R等)は、ポリカーボネートの基板上にアゾ系、シアニン系の有機色素インクを記録層として塗布・乾燥し、その表面に反射層を形成し、これを紫外線硬化型接着剤でポリカーボネート基板と接合する構成をとる。この場合、反射層と接する記録層中の有機色素インクや紫外線硬化型接着剤には、硫黄がその成分又は不純物として含まれているが、銀は耐硫化性に乏しいことから、使用過程による腐食のおそれに晒されている。また、書換型の光ディスク(CD−RW、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等)の場合には、誘導体層、記録層、誘電体層、反射層を積層させた構造を有し、反射層は誘電体層と接する状態にある。ここで、誘電体層の材料としては種々あるが、最近では硫化亜鉛(ZnS)を適用したものが用いられている(蓄熱制御のため、硫化亜鉛に酸化ケイ素を添加したZnS−20mol%SiO等が適用されることもある)。従って、この場合にも硫化物による腐食のおそれがある。このように、光記録媒体の反射層は、追記型及び書換型のいずれにおいても硫黄又は硫化物を含む層と接触する環境下にあることから、湿度等雰囲気からの腐食以上に耐硫化特性が重要となり、記録媒体の長期間の使用により反射率の低下のおそれがある。
【0005】
更に、銀からなる反射膜には熱によっても反射率が低下するという問題がある。この加熱による反射率低下の機構は定かではないが、銀薄膜を加熱した場合、薄膜に局所的な凝集が生じ、下地層が露出するという現象が生じることが確認されている。従って、光記録媒体、プラズマディスプレイ等の反射膜には加熱を受ける可能性があるために、耐熱性も要求される。
【0006】
以上のような反射膜の反射率低下の問題に対応すべく、従来から、反射率を確保しつつ耐食性、耐熱性を向上させた反射膜用銀合金の開発が行われている。これらの多くは銀を主成分として、これに種々の添加元素を1種又は2種以上添加するものであり、例えば、銀に0.5〜10原子%のルテニウム及び0.1〜10原子%のアルミニウムを添加するもの、銀に0.5〜4.9原子%のパラジウムを添加したもの等が開示されている。そして、これらの銀合金は、耐食性が良好で使用環境下でも反射率を維持することができ、反射膜に好適であるとしている(これらの先行技術の詳細については、特許文献1、2を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平11−134715号公報
【特許文献2】特開2000−109943号公報
【0008】
上記銀合金については、耐食性、耐熱性について一応の改善はみられる。しかしながら、これらの銀合金であっても使用環境下で全く劣化しないという訳ではない。そして、反射率の低下についてもこれを完全に保証するものではなく、より高い次元で反射率を維持できる材料が求められる。
【0009】
また、光記録装置の分野では、現在のところ記録用光源として赤色の半導体レーザー(波長650nm)が適用されているが、最近になって青色レーザー(波長405nm)の実用化の見通しが立ってきている。この青色レーザーを適用すると、現在の光記録装置の5〜6倍の記憶容量が確保できることから、次世代の光記録装置は青色レーザーを適用したものが主流になると考えられている。ここで、本発明者等によれば、反射膜の反射率は、入射レーザー光の波長により異なることが確認されており、特に短波長のレーザー照射に対しては腐食の有無に関わらず反射率が低下し、腐食による反射率低下の幅も長波長レーザー照射の場合より大きくなることが多いことが確認されている。従って、今後の記録用光源の推移に対応可能な記録媒体を製造する為には、短波長域のレーザー照射に対しても高反射率を有し、更に実用的範囲内で反射率を維持できる材料の開発が望まれる。
【0010】
本発明は以上のような背景の下になされたものであり、光記録媒体等の反射膜を構成する銀合金であって、長期の使用によっても反射率を低下させること無く機能することのできる材料を提供することを目的とする。また、短波長のレーザー光に対しても高い反射率を有する材料を提供する。
【発明の開示】
【0011】
かかる課題を解決すべく、本発明者等は、従来技術と同様、銀を主体としつつ、好適な添加元素の選定を行った。その結果、添加元素として、銀よりも高融点の元素の添加により、反射率維持の効果があり、耐熱性、耐湿性又は耐硫化性の向上に有用であることを見出し、本発明に想到するに至った。
【0012】
本発明は、銀を主成分とし、第1の添加元素として銀より高融点の元素を少なくとも1種含んでなる反射膜用の銀合金である。
【0013】
ここで、第1添加元素である銀より高融点の元素としては、薄膜の特性のいずれを重視するかにより選択される。本発明者等によれば、銀合金薄膜の性能向上に有用な高融点金属元素としては、ニッケル、モリブデン、銅、コバルト、チタン、スカンジウム、イットリウム、マンガン、シリコン、鉄、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、タングステンである。これらの元素を少なくとも1つ含有させることで高反射率の維持に有用な銀薄膜とすることができる。
【0014】
そして、本発明者等の検討によれば、上記のうちニッケル、銅、モリブデンを添加した銀合金において、反射膜に要求される諸特性を特に高い次元で保持することが確認されている。この銀−ニッケル合金、銀−モリブデン合金は、耐食性、耐熱性の双方に優れており、光記録媒体用の反射層にのみならず、ディスプレイ用の反射膜にも好適である。
【0015】
更に、本発明においては、第2の添加元素として、ガリウム、ツリウム、ジスプロシウム、白金、パラジウム、マグネシウム、亜鉛、テルビウム、ガドリニウム、エルビウム、金、アルミニウム、ネオジウム、ホルミウム、錫、ビスマス、プラセオジウム、ゲルマニウム、インジウム、サマリウム、イッテルビウム、ストロンチウム、ホウ素、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、クロム、鉛、カルシウム、アンチモン、ハフニウム、ランタン、セリウム、ユーロピウムの少なくとも1種を添加したものが好ましい。これらの元素は、第1の添加元素とともに、耐硫化性、耐湿性、耐熱性を改良する作用を有し、第1の添加元素と複合的に作用する。
【0016】
特に、第2の添加元素として、ガリウム、ツリウム、ジスプロシウム、白金、パラジウムを添加する銀合金は、加湿環境中において薄膜材料中で発生する凝集現象を有効に抑制することができ、好ましい合金である。
【0017】
そして、添加元素濃度、即ち、第1の添加元素の濃度と第2の添加元素の濃度との合計は、0.01〜5.0原子%とするのが好ましい。0.01原子%未満の添加量では、反射率維持の効果がなく、また、添加元素濃度が5.0原子%を超えると、使用環境、入射レーザー光の波長によっては、反射率の低下が大きくなり反射率の保証ができなくなるからである。そして、特に好ましい濃度は0.01〜3.5原子%である。この範囲では、使用環境、レーザー光波長によらず反射率をより高い次元で維持することができるからである。
【0018】
以上説明した本発明に係る反射膜材料としての銀合金は、溶解鋳造法、焼結法により製造可能である。溶解鋳造法による製造においては特段に困難な点はなく、各原料を秤量し、溶融混合して鋳造する一般的な方法により製造可能である。また、焼結法による製造においても、特に困難な点はなく、各原料を秤量し、焼結する一般的な方法により製造可能である。
【0019】
本発明に係る銀合金は、反射膜として好ましい特性を有し、使用過程において反射率の低下が抑制されている。また、後述のように、短波長のレーザー光照射下においても、従来の反射膜用材料よりも良好な反射率及びその維持を示す。そして、上記のように光記録媒体等の反射膜の製造においてはスパッタリング法が一般に適用されている。従って、本発明に係る銀合金からなるスパッタリングターゲットは好ましい特性を有する反射膜を備える光記録媒体、ディスプレイ等を製造することができる。
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、長期使用によっても反射率の低下の少ない反射膜を製造することができ、これにより光記録媒体、ディスプレイ等反射膜を適用する各種装置の寿命を長期化できる。また、本発明に係る銀合金は、短波長のレーザー光照射下においても、従来の反射膜用材料よりも良好な反射率及びその維持を示す。従って、今後の主流となるであろう短波長レーザーを光源とする光記録装置用の記録媒体にも対応可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を比較例と共に説明する。ここでは、Agを主要成分とする2元系、3元系の各種の組成の銀合金を製造し、これからターゲットを製造してスパッタリング法にて薄膜を形成した。そして、この薄膜について種々の環境下での腐食試験(加速試験)を行い、腐食試験後の反射率の変化について検討した。
【0022】
銀合金の製造は、各金属を所定濃度になるように秤量し、高周波溶解炉中で溶融させて混合して合金とする。そして、これを鋳型に鋳込んで凝固させインゴットとし、これを鍛造、圧延、熱処理した後、成形してスパッタリングターゲットとした。
【0023】
薄膜の製造は、基板(ホウ珪酸ガラス)及びターゲットをスパッタリング装置に設置し、装置内を5.0×10−3Paまで真空に引いた後、アルゴンガスを5.0×10−1Paまで導入した。スパッタリング条件は、直流4kWで8秒間の成膜を行ない、膜厚を1200Åとした。尚、膜厚分布は±10%以内であった。
【0024】
製造した薄膜は、まず、耐熱性、耐湿性について評価した。これらの特性評価は、薄膜を環境中に暴露し、分光光度計にて波長を変化させつつ試験後の薄膜の反射率を測定することにより行い、成膜直後の銀の各波長における反射率を基準としてその変化を検討することにより行った。
【0025】
薄膜の耐熱性を検討するための加熱試験は、薄膜をホットプレート上に載置し、大気中で250℃で1時間加熱し、加熱後の反射率を評価した。薄膜の耐湿性を検討するための加湿試験は、薄膜を温度100℃、湿度100%の雰囲気中に暴露し、加湿後の反射率を評価した。暴露時間は24時間(加湿試験I)、100時間(加湿試験II)の2種類で行った。この腐食試験の結果を表1〜表3に示す。これらの表で示す反射率は、成膜直後の銀の反射率を100とした相対値である。また、各測定値は、波長400nm、550nm、650nm(各々、青色、黄色、赤色レーザーの波長に相当する。)における反射率である。尚、表中には比較のため純銀からなるターゲットから製造した薄膜についての試験結果も示している。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
この結果から、本実施例に係る銀合金により製造される薄膜は、反射率の値をみると銀よりも高い値を示し、耐熱性、耐湿性の改良効果が確認された。また、全体的な傾向として、入射光波長が短くなると反射率の低下がみられる。
【0030】
次に、製造した薄膜の一部について、耐硫化性を評価すべく硫化試験を行って試験後の反射率を評価した。硫化試験は、薄膜を0.01%硫化ナトリウム水溶液(温度25℃)に1時間浸漬した。その結果を表4に示すがこの試験結果から、全ての波長域において、本実施形態に係る合金薄膜は、耐硫化性が向上する傾向があることが確認できた。
【0031】
【表4】

【0032】
次に、本発明に係る銀合金膜について、実際の反射膜としての適用性を評価した。この評価は、本発明者等が考案した簡便な模擬的な評価方法と、光記録媒体を実際に製造し、その性能(エラーの有無)を検討する評価方法の2種の評価方法により行なった。本願において、前者の模擬的な評価を行なうのは、以下の理由による。光記録媒体の例をとれば、上述のように、光記録媒体は、反射層に加えて、基板、記録層、媒体の形式により誘電体層、放熱層等、多数の層からなる。そして、光記録媒体の反射層の適応性を評価するためには、基板にこれらの構成層を形成して記録媒体を製造して評価しなければならず、煩雑である。
【0033】
また、現在、実用化がなされている光記録媒体については、これを製造して評価するのは比較的容易ともいえる。しかし、HD−DVDやBlu−layディスクのように、今後実用化へ向けて開発されている高密度、大容量の記録媒体においては、その構成がより複雑となり、反射層も半透過反射層として機能させるため、更に薄膜化して使用される見通しがある(現在使用されている光記録媒体の反射層の膜厚は1000〜1200Å前後であるが、この次世代光記録媒体の反射層は、200Å以下の膜厚で検討されている)。このような、複雑化する媒体に関しては、実際に製造、評価することは困難である。
【0034】
そこで、本発明者等は、光記録媒体を製造することなしに形成した薄膜の反射膜としての適応性を評価するため、簡便な方法として、所定の環境に暴露し、その後の表面形態を観察することにより実使用への適応性を評価することとした。
【0035】
この方法では、加湿試験の場合は製造後の薄膜を、まず、室温以下(好ましくは10℃)の冷却雰囲気に放置し(20〜30分)、基板と共に薄膜を十分冷却し、これを所定の加湿環境に暴露し、取出・乾燥後の薄膜の表面形態を観察するものである。加湿環境としては、温度100℃、湿度100%の雰囲気であり、この場合の暴露時間は20分間とするのが好ましい。また、加熱試験の場合は製造後の薄膜を基板と共に直接加熱環境に投入する、加熱環境としては、250℃の大気雰囲気であり、この場合の暴露時間は60分間とするのが好ましい。
【0036】
表面形態の観察は、各環境下に暴露後に薄膜表面に黒色の点状となって生じている銀の凝集(以下、黒点と称する。)の発生度合いを評価する。これは、加熱された銀合金膜の劣化の形態として、その表面上に局所的な銀の凝集が生じるが、これが反射膜の特性に影響を及ぼすと考えられ、黒点の発生度合いを評価することで反射膜としての適応性を判定できると考えたことによる。この際、カウントの対象とする黒点のサイズは1〜10μmのものを対象とすることが好ましい。このように評価対象を明確にすることで、評価の便宜を図ることができる。また、このサイズは、光記録媒体において記録再生用に使用されるマークのサイズに合致している。
【0037】
黒点の発生度合いの評価は、例えば、薄膜表面の写真を撮影し、これを画像処理して黒点の面積率を算出することによっても良い。より簡便な方法として、形成直後の銀薄膜の表面状態を基準とし(この場合、黒点はほとんど発生していない)、これに対する加熱後の表面状態を相対的に判定して数段階のレベル分けを行って評価する方法がある。
【0038】
そして、本実施形態では、加湿環境として温度100℃、湿度100%の雰囲気とし、暴露時間は20分間に設定した。本実施形態での薄膜の模擬的評価では、120Å、1200Åの各種銀合金薄膜を製造し、これを冷却後、上記加湿環境に暴露し、その後の薄膜の表面形態を光学顕微鏡で観察した。そして、形成直後の銀薄膜の表面状態を基準として「レベル1」とし、これよりも表面状態が不良な順(黒点が多い順)で5段階評価し、レベル1〜レベル5に区分して膜の特性を判定した。表5はその結果を示す。
【0039】
【表5】

【0040】
この模擬試験の結果、2元系合金ではモリブデン、銅、ニッケルを含むものが、3元系合金では第2添加元素としてガリウムを含むものが特性に優れることが推定される。
【0041】
次に、本発明に係る銀合金からなる薄膜を反射層とするDVD−R媒体を実際に製造し、光記録媒体の反射膜としての特性を評価した。この試験では、プリフォーマット・パターンが形成されているスタンパを備える射出成形機により製造したポリカーボネート基板(直径120mm、板厚0.6mm、グルーブ深さ0.17μm、グルーブ幅0.3μm、グルーブピッチ0.74μm)を基板として用いた。そして、この基板の上面に含金属アゾ系記録用インクをスピンコートで塗布して乾燥後、本実施形態で製造したスパッタリングターゲットにより反射膜を膜厚1200Åで形成した。そして、この基板に、基板と同一寸法のポリカーボネート基板を紫外線硬化樹脂を用いて接合し、DVD−R媒体を製造した。
【0042】
そして、製造したDVD−R媒体について光ディスク評価装置(パルステック工業製光ディスク評価装置ODU1000)にかけて、製造後の初期状態におけるジッター値、PI8エラー、POエラーを測定し、それらがDVD規格の範囲内にあることを確認した。確認後、DVD−R媒体を温度80℃、相対湿度85%の環境中に暴露する加速環境試験を行い、加速環境試験後のDVD−R媒体について評価装置による各値の測定を行った。
【0043】
図1〜図3は、この試験で測定された、加湿時間とジッター値、PI8エラー値、POエラーとの関係を示すものである。これらの図には、純銀を反射膜としたDVD−R媒体、及び、市販のDVD−R媒体について同様の試験を行なったときの結果も併せて示した。
【0044】
これらの図からわかるように、本発明に係る銀合金から成る反射膜を備える記録媒体は、長時間の加湿後であっても各値が規格をクリアしており、長期安定性を有することが確認された。これに対し、純銀反射膜を備える記録媒体では、150時間の加湿で記録装置に認識されなくなり使用不可となった。また、市販品についてもジッター値が規格を超えており、また、エラー値は規格をクリアすることはできるものの本実施形態に係る記録媒体より特性が劣ることが確認された。
【0045】
また、表6は、上記検討とは異なる組成の銀合金からなる反射膜を備えるDVD−R媒体を製造し、上記と同様に、加湿環境中に暴露し、その後のジッター値、PI8エラー、POエラーを測定を測定したときの結果を示す。
【0046】
【表6】

【0047】
この表からも、本発明に係る銀合金を反射層として備える記録媒体は、加湿後であっても各値が規格をクリアしており、長期安定性を有することが確認された。また、これら媒体を製造して行なう評価は、既に行なった、模擬的試験(1200Åの評価結果)とも符合し、模擬試験で良好な特性を有すると予測された、ニッケル、銅、モリブデン、ガリウムを含む反射膜を備える記録媒体は、長期安定性を有する。従って、本実施形態で行なった模擬的試験は、実際に記録媒体を製造することなく銀合金の特性を判定するのに便宜な方法であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係る反射膜を備えるDVD−R媒体について行なった加速環境試験の結果(ジッター値)を示す図。
【図2】本実施形態に係る反射膜を備えるDVD−R媒体について行なった加速環境試験の結果(PI8エラー値)を示す図。
【図3】本実施形態に係る反射膜を備えるDVD−R媒体について行なった加速環境試験の結果(POエラー値)を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀を主成分とし、第1の添加元素として銀より高融点の元素を少なくとも1種含んでなる反射膜用の銀合金。
【請求項2】
第1の添加元素は、ニッケル、モリブデンの少なくともいずれかである請求項1記載の反射膜用の銀合金。
【請求項3】
第1の添加元素は、銅、コバルト、チタン、スカンジウム、イットリウム、マンガン、シリコン、鉄、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、タングステンの少なくともいずれかである請求項1記載の反射膜用の銀合金。
【請求項4】
第2の添加元素として、ガリウム、ツリウム、ジスプロシウムの少なくとも1種を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射膜用の銀合金。
【請求項5】
第2の添加元素として、白金、パラジウム、マグネシウム、亜鉛、テルビウム、ガドリニウム、エルビウムの少なくとも1種を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射膜用の銀合金。
【請求項6】
第2の添加元素として、金、アルミニウム、ネオジウム、ホルミウム、錫、ビスマス、プラセオジウムの少なくとも1種を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射膜用の銀合金。
【請求項7】
第2の添加元素として、ゲルマニウム、インジウム、サマリウム、イッテルビウム、ストロンチウム、ホウ素、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、クロム、鉛、カルシウム、アンチモン、ハフニウム、ランタン、セリウム、ユーロピウムの少なくとも1種を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射膜用の銀合金。
【請求項8】
第1の添加元素と第2の添加元素との濃度の合計は、0.01〜5.0原子%である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の反射膜用の銀合金。
【請求項9】
第1の添加元素と第2の添加元素との濃度の合計は、0.01〜3.5原子%である請求項8記載の反射膜用の銀合金。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の銀合金からなるスパッタリングターゲット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/056849
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516164(P2005−516164)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018366
【国際出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000217228)田中貴金属工業株式会社 (146)
【Fターム(参考)】