説明

反射率計測の精度修正

反射率を修正するシステム及び方法は、試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を決定することと、試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定することと、反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定することと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法§119(e)の下、2003年10月3日に出願されたMethod For Increasing Precision Of Reflectance Measurementsと題する、所有者が同じである同時係属中の米国仮特許出願第60/508,830号の優先権を主張する。
【0002】
対象の分野
本発明の概念は、反射率ベースのシステムの分野に関し、特に、反射率計の結果及び性能を最適化することに関する。
【0003】
背景
反射率ベースの計器が多様な用途で長らく使用されている。反射率ベースのシステムの1タイプとして、特定の医療及び研究用途で試験を実施するために使用される「反射率計」と呼ばれるものである。典型的な形態で、反射率計は、所与の波長の一つ以上の光シグナルを発するように構成された1個以上の光源を含む。試験対象物がそのシグナルを受け、その一部を反射させる(「反射率」と呼ばれる)。反射率は、実際に試料から離れて出る光と、吸収が起こらない場合に試料から離れて出るであろう量との比として定義されるため、通常は無単位であると考えられている。近年、米国標準技術局(NIST)が、物理的な反射率標準を提供するのではなく、この種の数学モデルとして反射率を定義した。1個以上の検出器又はセンサが反射シグナルを受けるように向けられている。プロセッサがその受けられた反射シグナルの特性を解析し、試験結果を出す。
【0004】
このような反射率計は、試薬試験ストリップに対して試験を実施するために使用されることもある。そのような場合、試験ストリップ上の試験パッドを漸増的に試験して、その試験パッドに吸収された液体試料中の分析対象物の存在を測定することができる。このようなシステムは、一例として、尿分析試験を実施するために使用することができる。すなわち、所与の試験パッドに液体試料(たとえば尿試料)の一部を吸収させたのち、試験パッドの対応する反射率値を反射率計で読むことにより、液体試料中の分析対象物のレベル又は存在を測定することができる。反射率計は、試験パッドによって反射されるシグナルの反射率特性に基づき、所与の試験パッド中の分析対象物の存在又はレベルを測定する。一例として、試験パッドは、尿試料からの尿の吸収に応答して色を変化させて分析対象物のレベル又は存在を表示する。反射シグナルの特性は、試験パッドの組成及び色ならびに光源の波長の関数である。したがって、試験パッドの色の変化は、反射シグナルの特性における対応する変化を生じさせる。
【0005】
試験ストリップは通常、業界で認められたフォーマットにしたがって製造される。尿分析用反射率計の場合、試験ストリップは、様々な長さ、たとえば長さ3.25インチ又は長さ4.25インチのフォーマットで提供されている。各フォーマット内で、試験ストリップは、その設計、すなわち試験ストリップに含まれる試験パッドの数、タイプ及びオーダにしたがって定義される。一般に、各試験ストリップの構成は一意的に識別される。したがって、試験ストリップ識別及び/又は確認で暗示的であるものは、試験ストリップフォーマット及び試験パッドの構成である。当業者によって理解されるように、そのような試験パッドとしては、たとえば、pH、ケトン、亜硝酸及びグルコース試験パッドがある。反射率計が有効な結果を出すためには、試験ストリップがフォーマット及び構成によって識別されて、反射率計が、受けた反射シグナル又はそれから導出される反射率値を評価するのに適切な状況を有するようにしなければならない。すなわち、反射率計は、受けた反射率シグナルが、たとえばグルコース試験パッドによって発されたものであるのか、ケトン試験パッドによって発されたものであるのかを知る必要がある。
【0006】
また、試験ストリップに使用されるやり方と非常に類似したやり方で反射率計を使用して試薬カセットを試験することもできる。このような試薬カセットは、試験ストリップの試験パッドに類似した、試験結果の視覚的表示を提供する試験領域を含む。試験領域は、試験結果を具現化する一連の線を生成することができる。
【0007】
免疫クロマトグラフィー装置を使用する高速試験が数多く市販されている。大部分は、それらの不十分な定量(すなわち、量を高精度に計測又は推定する能力が不十分)のせいで、YES/NO回答に限定されている。より高レベルの定量を達成するためには、反射率計を使用して、試験製品上に形成したカラーバンドを主観的に審査することができる。しかし、反射率計における反射率計測は、試験ストリップ又は試薬カセットの配置及び高さが検出器に達する光子の量を大きく変えるおそれがあるため、多くの誤差原因をこうむりやすい。試験製品の高さのわずかな違いでさえ、得られる反射率値を変化させるおそれがあり、したがって、反射率計測によって分析対象物を濃度を計測する場合に誤差の原因になる。
【0008】
一部のシステムは、簡単な波長の比率設定によってこれらの状況に対処することを試みている。単に波長を比率設定することに伴う問題は、そのような数字に意味を対応させる際に多大な難があり、後続情報又は試験結果を出すために関連の反射率計測値を使用するプロセス又はアルゴリズムには適応しないということである。たとえば、反射率値を使用するあるプロセスは、反射率計測を線形化するための、次式によって与えられる「K/S」変換である。
【0009】
【数1】

【0010】
ここで、波長の比は、このような式で有用な反射率値Rを出さないであろう。Rの使用のみに頼る他の関数でも同様な問題が現実化するであろう。
【0011】
発明の概要
本発明の一つの態様にしたがって、反射率を修正する方法であって、試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めることと、試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定することと、反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定することと、を含む方法が提供される。
【0012】
本発明のもう一つの態様にしたがって、反射率修正を含む反射率ベースのシステムであって、異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように設計された検出器と、反射率値を記憶するように設計された記憶装置のセットと、反射率を修正する方法を具現化するように構成されたプログラムを実行するように構成されたプロセッサのセットと、を含むシステムが提供される。方法は、試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めることと、試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定することと、反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定することと、を含む。
【0013】
本発明のさらに別の態様にしたがって、異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように構成された検出器と、反射率値を記憶するように設計された記憶装置のセットと、を含む反射率ベースの装置において反射率を修正する方法を実施するために少なくとも1個のプロセッサによって実行される命令を具現化するコンピュータプログラムコードが提供される。方法は、試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を決定することと、試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定することと、反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定することと、を含む。
【0014】
本発明のさらに別の態様にしたがって、反射率修正を含む反射率ベースのシステムであって、異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように設計された検出器と、反射率値を記憶するように設計された記憶装置のセットと、試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を決定するための手段と、試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定するための手段と、反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定するための手段と、を含むシステムが提供される。
【0015】
本発明の上記態様のいずれかにしたがって、試験製品は、試験ストリップ又は試薬カセットであってもよく、試験物質は、たとえば分析対象物であってもよい。
【0016】
図面は、好ましい実施態様を限定としてではなく一例として示す。図中、同様な符号が同じ又は類似した要素を参照する。
【0017】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明にしたがって、修正された反射率計測値を使用して後続の変換を実施する波長比率設定及び能力の利点を可能にする方法が提供される。好ましい実施態様では、カラー粒子及び物質から離れた波長における、その粒子又は物質の濃度の変化によって変化しない実際の計測値に対する所定の反射率定数の比を使用することによってカラー粒子又は物質の反射率読み値を修正することにより、改善された試験内高精度結果が達成される。
【0018】
代表的な反射率ベースの計器
図1は、本発明の波長修正を具現化する機能性を含むことができる、反射率ベースの計器の一例としての反射率計100の実施態様の斜視図を提示する。当業者によって理解されるように、本発明は、他の反射率計又は反射率ベースの計器として具現化することもでき、したがって、本明細書で提供する実施態様に限定されない。反射率計100は、入出力装置をタッチスクリーン120の形態で提供する。出力ポート140が、反射率計100のオペレータ又はユーザに対して報告(たとえば試験又は診断報告)をプリントするための手段として設けられてもよい。同じく当業者によって理解されるように、他の形態の入出力機構を使用してもよい。たとえば、反射率計100は、有線又は無線手段によってパーソナルコンピュータ、手持ち式コンピュータ、ネットワーク、モニタ、プリンタ、音声/視覚システムなどに結合されるように構成されてもよい。ハウジング110がタッチスクリーン120及び多様な内部機能性要素を収容している。キャリッジを介して1個以上の試験ストリップ又は試薬カセット(まとめて「試験製品」という)を挿入しやすくするため、入力ポート130が設けられている。
【0019】
図2を参照すると、反射率計100とで使用するための試験製品挿入部品の集合体200が示されている。キャリッジ240が、反射率計100の入力ポート130に試験製品とともに挿入されるように構成されている。キャリッジ240は、試験製品(たとえば試薬試験ストリップ290又はカセット250)を保持するように構成された試験製品インサート220を中に配置することができる挿入領域210を含む。好ましい形態では、インサート220は、試薬試験ストリップ290をスロット216内に保持するように構成された第一の側部214を含む。代表的な試験ストリップ290は複数の試験パッド292を含み、試験パッドの構成は具体的な試験ストリップタイプに依存する。ひとたび試験ストリップ290がスロット216内に配置されると、インサート220を、その側部214が試験を受けることができるようにキャリッジ240に装填することができる。キャリッジ240は、多様な長さの試験ストリップ290、たとえば長さ3.25インチ及び4.25インチのフォーマットの試験ストリップを収容するように構成されていることができる。
【0020】
試験される対象領域は、1個以上の試験パッド292を含むことができる。試験パッド292が試験されるためには、そのようなパッドは、以下、図3A及び図3Bに関して説明するように、光検出器による検出のためにLEDから光を受け、その光を反射するように配置されなければならない。したがって、図2の実施態様では、試験ストリップ290は、試験ストリップパッド292がそのような部品に対して見えるようにキャリッジ240内に配置される。
【0021】
インサート220は、場合によっては、試薬カセット250を受けるように構成された第二の側部212を含むことができる。このような試薬カセットは当該技術で公知である。たとえば、試薬カセット250は、妊娠試験を実施するための使い捨てhCGアミノカセットであってもよい。試薬カセット250は、試験ストリップ290の場合と同様、窓254によって画定される試験区域を含み、また、バーコード256のような識別マーキングを含むことができる対象領域を含む。キャリッジが反射率計100に装填されているとき、試薬試験区域が見え、試験を受けることができる。
【0022】
試薬カセット250は、試験物質、たとえば尿のような体液試料を付着させるところである開口又はウェル252を有する。流体試料は、窓254によって画定された試験区域まで伝播する。試薬カセット試験区域は、当該技術で公知であるように、試験ライン区域、基準ライン区域及び対照ライン区域を含む。試験結果は、試験物質の導入(又は装填)に応答してこれらの区域に表示される1本以上の線の形態をとることができる。流体試料の導入とともに、試薬カセット試験区域は色を変化させることができ、たとえば、少なくとも1本のカラーストライプが窓254の中に現れることができる。
【0023】
一例として、図2の様々な部品は、2004年4月9日に出願されたTRAY ASSEMBLY FOR OPTICAL INSPECTION APARRATUSと題する、所有者が同じである同時係属中の米国特許出願第10/821,441号でさらに詳細に記載されているものの形態をとることができる。
【0024】
図3A及び3Bは、反射率計100内の試験製品の反射率ベースの試験を実施するために使用することができる様々な機能性要素の実施態様の二つの異なる図を示す。図3Aには平面図が示され、図3Bには側面図が示されている。各図で示すように、試験シグナルが送信器302によって発される。この形態では、送信器302は、図3Aに示すように好ましくは6個のLEDであり、それぞれが、独自の波長を有する異なるシグナルを送信する。
【0025】
この実施態様では、LEDによって送信されるシグナルは、
1)LED1:中心波長が約470ナノメートル(nm)の青色の光、
2)LED2:中心波長が約525nmの緑色の光、
3)LED3:中心波長が約565nmの緑色の光、
4)LED4:中心波長が約625nmの赤色の光、
5)LED5:中心波長が約660nmの赤色の光、及び
6)LED6:中心波長が約845nmの赤外線(IR)シグナル
である。
【0026】
LED302からの試験シグナルは、ガイド304を通過して矢印Aの方向に送信される。ガイド304からの試験シグナルは、例示的な実施態様では、約45°の角度で試験製品390(たとえば、キャリッジ240内に収容された試薬カセット250又は試験ストリップ290)に衝突する。試験製品390から矢印Bの方向に反射した光は、開口342を通過したのち、凸面鏡330(図3Aには示さず)に衝突し、この鏡が反射シグナルを矢印Cの方向に向け直し、収束させる。この配置では、鏡330の向きのせいで、反射シグナルの経路は、試験製品390を離れたのち約90°方向転換する。矢印Cの方向に伝播する反射シグナルは、開口340を通過し、非球面レンズ350で収束する。非球面レンズ350は反射シグナルを散開させ、散開した反射シグナルは矢印Cの方向に伝播し続ける。反射シグナルは検出器360に衝突する。当業者によって理解されるように、ミラー及びレンズの形状及び配置は、特に、図3A及び3Bの例示的な実施態様で示す形状及び配置に合致しなくてもよいし、それらに限定されなくてもよい。
【0027】
検出器360は、反射シグナルを受けると、それらのシグナルを、試験製品390に対応する反射率値を表すデータで構成されたイメージに変換し、そのイメージから試験結果が導出される。この実施態様では、検出器360は、反射シグナルを受けるように設計された2048画素のマトリックスで構成された電荷結合素子(CCD)である。反射シグナルからのデータは、反射率値として画素ごとに記録される。画素データがグループ分けされ、試験製品390の部分と対応させられる。その結果、試験製品390の試験部分の反射率値が記憶される。
【0028】
反射率修正
本発明は、反射率ベースの装置、たとえば図1〜3Bで先に記載した反射率計100の反射率計測における精度の向上を達成する。このような反射率計では、試験結果は、試験製品への試験物質、たとえば分析対象物の導入に応答して色を帯びる粒子又は物質で構成された試験区域の反射率の計測値を処理することによって決定することができる。分析対象物の濃度との関連を有しないパラメータにおける差が、反射率値の差、ひいては試験結果の誤差を生じさせることがある。本発明によって提供される修正は、そのような反射率計のより良好な較正、ひいてはより正確な結果を可能にする。たとえば、試薬カセットは、赤及び青に変色することによって分析対象物に応答する粒子を有する白いバンドを含むことができる。そのような場合、一例として、赤い粒子が、分析対象物の存在で赤い線を形成することができる。試験ストリップでも、特定の区域を同様に構成することができる。
【0029】
本発明にしたがって、カラー粒子又は物質の反射率読み値は、同じ波長(λ)で測定された、計測反射率値(Rλ-meas)に対する既知の反射率定数(Rλ-const)の比を使用して修正される。波長λは、試験される分析対象物の導入又は濃度によって反射率が実質的に変化しないところの波長であるように選択される。この波長は通常、カラー粒子又は物質に関する試験結果を得るために使用される波長とはスペクトル的に離れているであろう。このようにして波長λを選択すると、既知の反射率定数Rλ-constと計測反射率値Rλ-measとの差が、分析対象物の関数にはならず、むしろ、先に論じた一つ以上の誤差誘発要因の関数になることが保証される。
【0030】
図4Aは、本発明にしたがって反射率修正を実施する反射率計の機能性部品又はモジュール400の例示的な実施態様を示すブロック図である。当該技術で一般に公知であるように、一つ以上のバス402を使用して様々なモジュールの間の通信を促進してもよい。図3A及び図3Bで示したように、送信器302がシグナルを発し、このシグナルが試験製品から反射したのち検出器360によって検出される。検出された反射率値は、図4Aでは記憶装置404のセットとして示す1個以上の記憶装置に記憶することができる。様々な公知の処理関数、たとえば、処理関数406として一般に示す、試験結果を測定するために使用される処理関数を実施するための1個以上のモジュールを設けてもよい。このような関数の一つの具体例は、反射率結果を線形化するために使用されるK/S関数である。制御装置410を使用して、様々な関数モジュール、それらの間のデータ及び命令の流れならびに記憶装置404のセットとの間を行き来するデータの流れを全般的に管理してもよい。
【0031】
また、図4Aの関数モジュール400に修正モジュール420を含めてもよい。例示的な実施態様では、修正モジュール420は、本発明にしたがって反射率値を修正する方法を実施する。実施態様の方法が図4Bのフローチャート450に提示されている。このような方法を使用すると、不正確な反射率計測によって生じる計器内誤差が減る。方法は、次式にしたがって反射率修正を実施する。
【0032】
【数2】

【0033】
式中、
λ′cは、所与の波長又は広帯域フィルタに関する修正反射率値であり、
λ-constは、分析対象物濃度に応答しない波長である波長λ−に関する修正反射率値定数であり、
λ′は、最高のシグナル・ノイズ比を有する波長λ′を使用して計測された実測反射率値であり、
λ-measは、実測反射率値λである。
【0034】
ステップ4Bに戻ると、ステップ452で、分析対象物の濃度によって反射率が比較的変化しない、すなわち、試験製品との結合化学反応による反射率を実質的に有しないところの波長λを定める。このように、反射率における変化は、膜、計器又は試験製品の向き(たとえば試験ストリップの高さ)の変異によるものと推定され、分析対象物の濃度の関数とは推定されない。これらの要因によって生じる反射率の変異はすべてのLED波長でしばしば認められ、したがって、波長にかかわらず反射率修正は適切である。例示的な実施態様では、光源は、分析対象物の導入又は濃度にかかわらず試験製品の白いバンドの反射率が実質的に変化しないところの約850nmの波長λを有するIR LED光源である。一例として、金ゾル標識複合体の場合、IR反射率がこの標識とほとんど又は全く対応しないため、このIR波長が適切である。選択される基準波長は、分析対象物濃度の増大に対応する実質的なシグナル変化を示さない限り、IR以外の波長であることができる。
【0035】
ステップ454でRλ-constを決定し、これを波長定数と呼ぶことができる。例示的な形態では、この値は、多数の試行を平均化し、波長λに関してそれらの試行での平均反射率値を得ることによって決定される。このように、波長定数は、いくつかの計測での平均反射率として実験的に決定することができる。また、いくつかの反射率計で決定してもよい。他のやり方としては、波長定数は、予測的技術を使用して決定することもできるし、場合によっては、一般に公知の情報に基づくこともできる。一例として、ポリスチレン試験ストリップに固着された湿潤ニトロセルロース膜の場合、Rλ-constに75%の値を割り当てることができる。この既知の値をIRに使用することにより、式2に示す比を使用することによってすべての実測波長における変異を修正することができる。アルゴリズムで使用される未処理の反射率値がこの方法で調節されたのち、特定のアルゴリズム又は関数406に組み込まれる(また、図4Bのステップ464を参照)。
【0036】
ステップ456で、Rλ′を、ここではλ′によって表す、最大のシグナル・ノイズ比(SNR)を有する波長を使用して計測された反射率値として測定する。SNRが最高になるところの波長を選択することが好ましい。理由は、そうすることにより、ノイズを実際の反射シグナルからもっとも容易に区別することができるからである。このように、このような波長が、本発明の修正を使用しての、反射率計の最良の較正を可能にする。この実施態様では、λ′は、試験製品の白いバンドに埋め込まれた赤い粒子の反射率のSNRが最大になるところの波長である約525nmであるように選択される。あるいはまた、青い粒子の反射率を最大にする波長を選択することもできる。この実施態様では、Rλ′cは、525nmの波長λ′でLEDからパルススキャンを送出することによって測定される。
【0037】
ステップ458で、Rλ-measを、Rλ-constが決定されたところの波長である波長λで実測される反射率として測定する。したがって、これは、分析対象物濃度の増大による大きなシグナル変化を示さない波長である。この実施態様ではλ=850nmであるため、Rλ-measは、IR光源が約850nmの波長でシグナルを送信するとき反射率計のIRフィルタを通して測定される反射率である。この実施態様では、Rλ-measは、850nmの波長でIRのパルススキャンを送出することによって測定される。このパルススキャンは、λ′=525nmパルススキャンの直後に送られるか、少なくとも、λ′=525nmパルススキャンの時点の状態に対して状態の大きな変化が起こらないよう十分に近い時間で送られる。スキャンとスキャンとの間で状態の大きな変化を許してしまうならば、上記式2は、所与の計算に関して有効であり続けることはできない。
【0038】
λ-const及びRλ-measは、いずれも、図4Aの記憶装置404のセットに記憶することができる。計測値Rλ′もまた、この記憶装置のセットに記憶することができる。Rλ-const及びRλ-measが既知であると、上記式(2)に示すようにして、すなわち[Rλ-const/Rλ-meas]として比を決定することができる。これらの既知の値から、図4Aの修正モジュール420により、図4Bのステップ460に示すようにして、波長λ′に関する修正反射率Rλ′cを決定することができる。
【0039】
図4Bでは、決定ボックス462は、処理の間、ステップ456〜460を連続的又は定期的較正として何回も実施することができることを示す。すなわち、ボックス462の問いに対する答えがyesであるならば、プロセスはボックス456に続くことができる。答えがnoであるならば、プロセスはステップ464に続き、そこで、処理関数モジュール406によってRλ′cを使用することができる。そして、修正反射率Rλ′cを、たとえば、次式によって示すK/S線形化アルゴリズムで使用することができる。
【0040】
【数3】

【0041】
いくつかの実施態様では、試験ボックス462が省略され、プロセスはボックス460から直接ボックス464に移行する。
【0042】
本発明の上記態様を使用した結果の例を示すため、高速PSA(前立腺特異抗原)免疫クロマトグラフィーストリップの7試料3複製実験が、以下の表1に示す、修正の前後の反射率を出した。この場合、捕捉バンドは、ニトロセルロース上に縞模様に埋め込んだモノクロナール抗PSAであり、捕集バンドは、ウサギ抗ヤギ抗体であった。シグナルは、ヤギ抗PSAでコーティングした金ゾル粒子によって発されたものである。
【0043】
【表1】

【0044】
上記で、標準偏差(SD)は、未修正(又は「未処理」)データでは比較的大きかったが(たとえば、2.0及び1.85)、修正データではずっと良好であった(たとえば、1.14及び0.67)。この場合、データは、個々の試験のデータではなく、「プールされた」データである。「反射率SDの減少係数」は、未処理の反射率SDを修正反射率SDで割ることによって決定した。明らかに、>1の減少係数は精度の改善を示す。
【0045】
IR修正は複製読みの間の誤差を除くため、試料サイズがN=12であった以下の表2の例で示すように、シグナル・ノイズ比(SNR)を向上する場合にも重要である。この例では、未処理のSDをIR修正のSDと比較すると、SDによって与えられる不正確さが75%又は場合によってはそれを超えるほど減らされている。
【0046】
【表2】

【0047】
ここまで、最良の形態及び/又は他の好ましい実施態様と考えられるものを記載したが、それらに様々な改変を加えることができ、本発明を、様々な形態及び態様で具現化し、本明細書ではごく一部しか記載していない数多くの用途に適用することができることが理解されよう。本明細書で使用する「含む」とは、限定のないことを意味する。請求の範囲では、発明の概念の真の範囲に含まれるすべての改変及び変形を特許請求することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によって提供される修正を含むことができる反射率計の斜視図である。
【図2】様々な試験ストリップを収容するためのキャリッジとで使用されるインサートの図を含む、図1の分光計とで使用されるキャリッジの従来技術図である。
【図3A】図1の反射率計内での機能性要素の配置を示す従来技術図である。
【図3B】図1の反射率計内での機能性要素の配置を示す従来技術図である。
【図4A】本発明を具現化するために使用することができるモジュールのセットのブロック図である。
【図4B】図4Aのモジュールによって具現化することができる方法のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射率を修正する方法であって、
A.試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めるステップと、
B.試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定するステップと、
C.反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を定めるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
試験物質が分析対象物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
試験製品が、複数の試験パッドを含む試験ストリップである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
試験製品が試薬カセットである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
計測反射率を第二の波長でのパルススキャンで測定する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
基準反射率を第一の波長でのパルススキャンで測定する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
試験物質の濃度に対する状態が計測反射率が測定された時点から実質的に変化しない前に基準反射率を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
反射率修正を含む反射率ベースのシステムであって、
A.異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように構成された検出器と、
B.反射率値を記憶するように構成された記憶装置のセットと、
C.反射率を修正する方法を具現化するように構成されたプログラムを実行するように構成されたプロセッサのセットと、
を含み、前記方法が、
i)試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めるステップと、
ii)試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定するステップと、
iii)反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定するステップと、
を含むものであるシステム。
【請求項9】
試験物質が分析対象物である、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
試験製品が、複数の試験パッドを含む試験ストリップである、請求項8記載のシステム。
【請求項11】
試験製品が試薬カセットである、請求項8記載のシステム。
【請求項12】
計測反射率が第二の波長でのパルススキャンで測定される、請求項8記載のシステム。
【請求項13】
基準反射率が第一の波長でのパルススキャンで測定される、請求項8記載のシステム。
【請求項14】
試験物質の濃度に対する状態が計測反射率が測定された時点から実質的に変化しない前に基準反射率が測定される、請求項8記載のシステム。
【請求項15】
異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように構成された検出器と、反射率値を記憶するように構成された記憶装置のセットと、を含む反射率ベースの装置において反射率を修正する方法を実施するために少なくとも1個のプロセッサによって実行される命令を具現化するコンピュータプログラムコードであって、前記方法が、
A.試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めることと、
B.試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定することと、
C.反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定することと、
を含むものであるコンピュータプログラムコード。
【請求項16】
試験物質が分析対象物である、請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項17】
試験製品が、複数の試験パッドを含む試験ストリップである、請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項18】
試験製品が試薬カセットである、請求項15記載のコンピュータプログラム製品。
【請求項19】
反射率修正を含む反射率ベースのシステムであって、
A.異なる波長のシグナルを試験製品に送信するための送信器及び試験製品から異なる波長で反射率を検出するように構成された検出器と、
B.反射率値を記憶するように構成された記憶装置のセットと、
C.試験物質の存在で反射率が実質的に変化しないところの第一の波長で試験製品に関する反射率定数を定めるための手段と、
D.試験製品が試験物質を装填された状態で、シグナル・ノイズ比が最大になるところの第二の波長で反射率を測定し、第一の波長で計測反射率を測定するための手段と、
E.反射率と、計測反射率に対する反射率定数の比との積として修正反射率を決定するための手段と、
を含むシステム。
【請求項20】
試験物質が分析対象物である、請求項19記載のシステム。
【請求項21】
試験製品が、複数の試験パッドを含む試験ストリップである、請求項19記載のシステム。
【請求項22】
試験製品が試薬カセットである、請求項19記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−507716(P2007−507716A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534061(P2006−534061)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/032008
【国際公開番号】WO2005/036144
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(503106111)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (154)
【Fターム(参考)】