説明

反射鏡装置

【目的】 設置場所を選ぶことなく、充分な曇り止め機能を有する反射鏡装置を安価に提供する。
【構成】 対向する車両等を反射像として映す反射映像膜を有する鏡面板2と、鏡面板2の表面に向けて送風するファン11を設けた小型モータ10と、太陽電池20で発電した電力を蓄電するバッテリーと、小型モータ10を制御する制御手段とを備えてなり、小型モータ10を駆動して鏡面板2の表面付近に空気の流動層を形成して曇り止めする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、反射鏡装置に関し、特に道路、鉄道等において見通しの悪い場所に設置する反射鏡装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように、反射鏡装置は、見通しの悪いカーブ等に設けられる重要な安全装置であるが、寒冷時に曇って機能を失うことがあり、このため重大な事故の原因になることがある。そこで、鏡面の曇りを防止するために、従来から種々の改良がなされている。例えば、鏡面板と裏板との間に蓄熱材を配設したり(特開平5−112915号公報、特開平2−204508号公報等)、鏡面板の背面側に電熱ヒーターや電球等の発熱体を配設して(実開昭57−82303号公報、実開昭61−23309号公報等)、鏡面板の温度が大気温よりも低下しないように加熱して、結露や着霜等による曇りを防止するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の発熱体を配設した反射鏡装置は、電源が必要であるために設置箇所が限られると共に、発熱体が老化し易く耐久性がない。しかも、設置の工事費や、設置後の維持管理費が嵩む。また、蓄熱体を配設したものは、日中に充分な蓄熱が得られない場合に、期待するほどの効果が発揮されないのが現状である。本発明は上記に鑑み提案されたもので、設置場所を選ぶことなく、充分な曇り止め機能を有する反射鏡装置を安価に提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、反射映像膜を有する鏡面板と、鏡面板の表面に向けて送風する電気的送風手段と、送風手段へ供給する電力を貯留する蓄電手段と、蓄電手段に電力を供給する発電手段と、上記送風手段を制御する制御手段と、を備えてなり、上記鏡面板の表面付近に空気の流動層を形成して曇り止めすることを特徴とするものである。
【0005】
【作用】日中に発電手段で発電した電力を蓄電手段に蓄え、この蓄電手段に蓄えた電力により制御手段を介して送風手段を夜間に駆動し、気温が低下した際に、鏡面板の表面付近の空気を攪拌して空気の流動層を形成し、鏡面板の温度を外気温とほゞ同じに保ち、鏡面板の結露を防止して曇り止めをなす。
【0006】
【実施例】以下、本発明を図示の一実施例について説明すると、図1は、反射鏡装置の一部を欠截した斜視図、図2は縦断面図、図3は要部の斜視図、図4は結線図である。
【0007】本発明に係る反射鏡装置1は、反射映像膜を有する鏡面板2と、鏡面板2の表面に向けて送風する電気的送風手段と、送風手段へ供給する電力を貯留する蓄電手段と、蓄電手段に電力を供給する発電手段と、上記送風手段を制御する制御手段と、を備えてなる。
【0008】上記鏡面板2は、透明樹脂板或はガラス板等の裏面にアルミニウム等の真空蒸着膜を形成したり、表面をメッキで鏡面仕上げしたアルミニウム板を設けたり、表面を鏡面研磨したステンレス板を設けて反射映像膜とした凸面鏡である。この鏡面板2は、適宜立設した支柱3に対し、高さ位置及び方向を取付装置4を介して調整自在に止着される。尚、図示の実施例では、ほゞ矩形の鏡面板2を示しているが、鏡面板2は鏡面板2の形状を問うものではなく、円形など、他の形状であってもよい。
【0009】鏡面板2の上縁には、後述する送風手段を収納すると共に、当該鏡面板2の上方部分を庇状に覆うカバー体5を設ける。即ち、カバー体5は、前方へ延出する上板部6と、該上板部6の前縁から起立する前蓋部7と、上記上板部6の側端から鏡面板2の側縁に延びるほゞ三角形状の側板部8とからなり、上板部6のほゞ中央部分には後述する送風手段を収納するための下向に開口する収納部9が隆設してある。尚、上記前蓋部7は、黄色と黒色とに色分けして所謂ゼブラ板を形成すると、視認が容易になる。
【0010】上記カバー体5の収納部9には、鏡面板2の表面に向けて送風し、鏡面板2の表面付近に空気の流動層を形成する送風手段を収設する。この送風手段は、例えば小型モータ10とファン(プロペラ)11とからなり、当該小型モータ10はカバー体5の収納部9に対して揺動可能に軸着されている。例えば、図示の実施例では、モータケース12に支軸13を延設すると共にガイド軸14を延設し、上記支軸13を収納部9の側板15で回動自在に支持すると共に、モータケース12の側部16に開設した円弧状のガイド孔17にガイド軸14を挿通し、このガイド軸14に例えばナット等の止着部材18を螺着するようになっている。従って、収納部9の下方から手や工具を差し述べて、上記止着部材18を緩め、ガイド孔17に沿ってガイド軸14を移動させ、所望の位置で上記止着部材18を締めれば、小型モータ10即ち当該モータの出力軸に装着したファン11を、所望の角度で鏡面板2に対峙させることができる。しかも、ガイド軸14及び止着部材18やガイド孔17等が収納部9の外に露出しないので、雨水に対して万全である。尚、ファン11を所望の向きに向けて支軸13を直接固定するように構成してもよい。
【0011】そして、上記小型モータ10を駆動すれば、鏡面板2の表面付近に空気の流動層を形成することができる。このため、本発明は、蓄電手段であるバッテリー19と、このバッテリー19を充電する電力を供給する発電手段、即ち太陽電池20を備える。従って、日中、太陽光によって発電した電力をバッテリー19に蓄電し、夜間、この蓄電した電力で小型モータ10を駆動する。
【0012】上記小型モータ10を効率的に駆動し、効果的な曇り止めを実行するため、本発明は制御手段を備える。この制御手段の基本的な回路構成を図4に示す。即ち、制御手段は、光センサ21またはタイマ22或はセンサ21とタイマ22を併用して構成する。例えば、光センサ21により日没後、小型モータ10を駆動して送風するのであるが、夜間始終駆動していてはバッテリー19の容量が不足するので、タイマ22により所定時間毎に断続的に駆動するように設定する。或は、タイマ22によって、気温が最も低下する夜明け前ないし日の出直後の時間帯に駆動するように設定する。更に、温度センサを設け、気温が設定値以下に低下した場合に駆動したり、気温と鏡面板2との温度差が設定値を越えた場合に駆動するようにしてもよい。
【0013】また、図4に示す実施例はトルクスイッチ23を備え、ファン11に風が吹き付けて設定値以上のトルクが加わる場合に、回路を遮断して、ファン11が自由に回転できるようになっている。従って、駆動時に強風が吹く場合であっても、モータ10が焼損する虞れがない。
【0014】尚、発電手段としての太陽電池20及び蓄電手段としてのバッテリー19、並びに制御手段は、支柱3の上端部に装着する収納ボックス24に収納されている。また、太陽電池20は、日射を充分に受けるように太陽に向けて傾斜状の配置してある。
【0015】以上本発明を図面の実施例について説明したが、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した構成を変更しない限り適宜に実施できる。例えば、制御手段は他の構成であってもよい。
【0016】
【発明の効果】以上要するに本発明は、反射映像膜を有する鏡面板と、鏡面板の表面に向けて送風する電気的送風手段と、送風手段へ供給する電力を貯留する蓄電手段と、蓄電手段に電力を供給する発電手段と、上記送風手段を制御する制御手段と、を備えているので、鏡面板から放射冷却が起こる程に気温が低下しても、ファンを設けた小型モータを駆動して鏡面板の表面付近の空気を攪拌し、鏡面板の表面付近に空気の流動層を形成することができる。このため、鏡面板の放射冷却が阻止されて鏡面板の温度が外気温とほゞ同じに保たれる。従って、空気中の水分が鏡面板の表面に結露し或は着霜して当該鏡面板が曇ることがない。また、本発明の反射鏡装置は、自ら発電及び蓄電手段を備えているので、送電線による電力の供給を必要としないので、設置場所を選ぶことがなく、山間部などにも容易に設置可能である。しかも、製造、設置及び維持管理等が容易であって、コストも安い。従って、本発明は、常に良好な反射映像を確保することができる反射鏡装置を安価に提供可能であって、交通安全に寄与することができる実用的価値が極めて高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】反射鏡装置の一部を欠截した斜視図である。
【図2】反射鏡装置の縦断面図である。
【図3】反射鏡装置の要部の斜視図である。
【図4】制御手段を含む結線図である。
【符号の説明】
1 反射鏡装置
2 鏡面板
10 小型モータ
11 ファン
19 蓄電手段としてのバッテリー
20 発電手段としての太陽電池
21 制御手段を構成する光センサ
22 制御手段を構成するタイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 反射映像膜を有する鏡面板と、鏡面板の表面に向けて送風する電気的送風手段と、送風手段へ供給する電力を貯留する蓄電手段と、蓄電手段に電力を供給する発電手段と、上記送風手段を制御する制御手段と、を備えてなり、上記鏡面板の表面付近に空気の流動層を形成して曇り止めすることを特徴とする反射鏡装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平7−138918
【公開日】平成7年(1995)5月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−311092
【出願日】平成5年(1993)11月18日
【出願人】(393028586)トーデンコー株式会社 (1)