説明

反射防止コーティング

【課題】太陽電池モジュールの構築に特に有用な反射防止コーティングを形成する組成物を提供する。
【解決手段】0.5〜30μmの平均粒子直径、および100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度を有するポリマー粒子を含む組成物において、組成物は、80℃以下のTを有する膜形成性ポリマーも含み、ポリマー粒子と膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差は0.04以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールの構築に特に有用な反射防止コーティングを形成するのに使用されうる組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトルの一部分の選択のための光学フィルタが知られている。例えば、米国特許第4,501,470号はこの目的のための光学バンドパスフィルタを開示する。しかし、このフィルタは組成および屈折率が異なる一連の層を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,501,470号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって取り組まれる課題は太陽電池モジュールの構築に特に有用な反射防止膜を形成するのに使用されうるコーティングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は(a)0.5〜30μmの平均粒子直径、および(b)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度を有するポリマー粒子と、80℃以下のTを有する膜形成性ポリマーとを含む組成物であって、前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、並びに前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04である組成物を提供する。
本発明は(a)0.5〜30μmの平均粒子直径、および(b)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度を有するポリマー粒子と、80℃以下のTを有する連続ポリマー相とを含む膜であって、前記ポリマー粒子と前記連続ポリマー相との間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、前記ポリマー粒子と前記連続ポリマー相との間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04であり、並びに前記ポリマー粒子間の平均距離が0.85〜30μmである膜にさらに関する。
本発明は(a)(i)0.5〜30μmの平均粒子直径、(ii)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度、および(iii)少なくとも2.5重量%の架橋剤の重合残基を有するポリマー粒子と、(b)140℃以下の沸点を有する非水系溶媒と、(c)膜形成性ポリマーとを含む組成物であって、前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、並びに前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04である組成物にさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
他に特定されない限りは、パーセンテージは重量パーセンテージ(重量%)であり、温度は℃単位である。他に特定されない限りは、RI値はナトリウムD線、λ=589.29nm、20℃で決定される。「非水系」溶媒は水を実質的に含まない、すなわち、水を0.3%未満しか、好ましくは0.2%未満しか、好ましくは0.1%未満しか、好ましくは0.05%未満しか、好ましくは0.02未満しか含まない溶媒である。沸点は、大気圧、すなわち101kPaで測定される。ポリマー粒子は有機ポリマー、好ましくは付加ポリマーを含み、並びに好ましくは実質的に球状である。平均粒子直径は算術平均粒子直径として決定される。T値はフォックス(Fox)式を用いてホモポリマーT値から計算される;Bulletin of the American Physical Society1,3,ページ123(1956)を参照。粒子全体で組成が変化しているポリマー粒子のTは、その粒子中の異なる組成のT値の重量平均である。モノマーの重量パーセンテージは、多段ポリマーの各段階について、その段階における重合混合物に添加されるモノマーの全重量を基準にして計算される。本明細書において使用される場合、用語「(メタ)アクリル」とはアクリルもしくはメタクリルをいい、「(メタ)アクリラート」とはアクリラートもしくはメタクリラートをいう。用語「(メタ)アクリルアミド」とはアクリルアミド(AM)もしくはメタクリルアミド(MAM)をいう。「アクリルモノマー」には、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、AAおよびMAAのエステル、イタコン酸(IA)、クロトン酸(CA)、アクリルアミド(AM)、メタクリルアミド(MAM)、並びにAMおよびMAMの誘導体、例えば、アルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。AAおよびMAAのエステルには、これに限定されないが、アルキル、ヒドロキシアルキル、ホスホアルキルおよびスルホアルキルエステル、例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(HPMA)、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸2−エチルヘキシル(EHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸ベンジル(BzA)およびメタクリル酸ホスホアルキル(例えば、PEM)が挙げられる。「スチレン系モノマー」には、スチレン、α−メチルスチレン;2−、3−もしくは4−アルキルスチレン、例えば、メチル−スチレンおよびエチル−スチレンが挙げられる。
【0007】
用語「ビニルモノマー」とは、窒素もしくは酸素のようなヘテロ原子に連結された炭素−炭素二重結合を含むモノマーをいう。ビニルモノマーの例には、これに限定されないが、酢酸ビニル、ビニルホルムアミド、ビニルアセトアミド、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、並びにネオデカン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルのような長鎖アルカン酸ビニルが挙げられる。
【0008】
好ましくはポリマー粒子は150〜600Kgf/mm、好ましくは200〜500Kgf/mm、好ましくは240〜400Kgf/mmのビッカーズ(Vicker’s)スケール硬度を有する。ビッカーズ硬度はダイアモンドチップを備えた標準硬度試験機を用いて測定される。硬度はH=1.85444(P/d)(Pはkg単位での荷重であり、およびdはmm単位での圧入の面積である)から決定される。本発明の粒子についての硬度は島津微小圧縮試験機MCT500を用いて決定された。
【0009】
好ましくは、ポリマー粒子は(a)75〜150℃のTを有する粒子;(b)架橋剤の重合残基を少なくとも0.5%有する粒子;またはこれらの組み合わせのいずれかである。この粒子が−50〜75℃のTを有する場合には、好ましくはこの粒子は架橋剤の残基を少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも0.75%、好ましくは少なくとも1%、好ましくは少なくとも1.25%、好ましくは少なくとも1.5%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、好ましくは少なくとも5%有する。75〜150℃のTを有する粒子は上記量の架橋剤残基を含むことができ、またはかなり少ない量の架橋剤残基を有することができる。ポリマー粒子は高度に架橋されていてよくかつ高いTを有していてもよく、例えば、ジビニル芳香族モノマー(例えば、ジビニルベンゼン)の重合により形成される粒子であってよく、または多量の、好ましくは少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%のジビニル芳香族モノマーを他のモノマー、好ましくはスチレン系モノマーもしくはアクリルモノマーと一緒に有するモノマー混合物の重合により形成される粒子であってよい。
【0010】
好ましくは、ポリマー粒子は少なくとも0.8μm、好ましくは少なくとも1μm、好ましくは少なくとも1.5μm、好ましくは少なくとも2μm、好ましくは少なくとも2.5μmの平均粒子直径を有し;好ましくは、これら粒子は20μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは12μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは8μm以下、好ましくは6μm以下の平均粒子直径を有する。好ましくは、ポリマー粒子は単一モードを示す粒子サイズ分布を有し、好ましくは、半高さ(half−height)での粒子サイズ分布の幅は0.1〜3μm、好ましくは0.2〜1.5μmである。組成物もしくは膜は異なる平均直径を有する粒子を含むことができるが、ただしそれぞれの平均直径の粒子はすぐ上に記載されるような粒子サイズ分布を有する。粒子サイズ分布は粒子サイズ分析機を用いて決定される。好ましくは、ポリマー粒子および膜形成性ポリマーは、少なくとも1.5μm、好ましくは少なくとも1.8μm、好ましくは少なくとも2μm、好ましくは少なくとも3μmの平均粒子直径を有する多段ポリマー粒子の形態に一体化される。好ましくは、多段ポリマー粒子は20μm以下、好ましくは15μm以下、好ましくは12μm以下、好ましくは10μm以下、好ましくは9μm以下、好ましくは8μm以下、好ましくは7μm以下の平均粒子直径を有する。好ましくは、多段ポリマー粒子は2段階粒子であり、すなわち、当該粒子の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%は本明細書においてポリマー粒子および膜形成性ポリマーについて示される特性を有する。粒子サイズ分布は粒子サイズ分析機を用いて決定される。
【0011】
好ましくは、ポリマー粒子は75〜150℃のTを有する。好ましくは、ポリマー粒子は少なくとも80℃、好ましくは少なくとも85℃、好ましくは少なくとも90℃、好ましくは少なくとも95℃のTを有する。好ましくは、ポリマー粒子は140℃以下、好ましくは130℃以下、好ましくは120℃以下のTを有する。好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相は70℃以下、好ましくは60℃以下、好ましくは50℃以下、好ましくは40℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは20℃以下、好ましくは10℃以下、好ましくは0℃以下、好ましくは−10℃以下のTを有する。好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相は少なくとも−50℃、好ましくは少なくとも−40℃、好ましくは少なくとも−30℃のTを有する。好ましくは、ポリマー粒子は放射状(radial)屈折率勾配を有する粒子である(「GRIN」粒子、米国特許出願公開第20090097123号参照)。好ましくは、GRIN粒子は1.45〜1.59、好ましくは1.45〜1.55、好ましくは1.46〜1.5の中央での屈折率、並びに1.57〜1.63、好ましくは1.58〜1.62、好ましくは1.58〜1.61の表面での屈折率を有する。好ましくは、GRIN粒子は少なくともアクリル第1段階を有する多段粒子である。好ましくは、GRIN粒子は少なくとも80℃、好ましくは少なくとも90℃、好ましくは少なくとも100℃のTを有する第2の段階を有する。好ましくは、この第2の段階はスチレン系モノマーおよび/またはメタクリル酸メチルの重合残基を含む。好ましくは、第1の段階はこの粒子の30〜95%、好ましくは50〜90%、好ましくは65〜85%である。好ましくは、第1の段階および第2の段階のそれぞれは、架橋剤の重合残基を少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%含む。「第1の段階」もしくは「第2の段階」いずれかの側上にまたはこれらの間に配置される別のモノマーを含む別の段階が存在することができるが、ただし、この第1の段階および第2の段階は集合的に、粒子の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%を構成する。
【0012】
本明細書において示される屈折率差は絶対値である。好ましくは、ポリマー粒子と膜形成性ポリマーとの間、またはポリマー粒子と連続ポリマー相との間の、400nm〜1100nmで測定される屈折率差(すなわち、その差の絶対値)は0.03以下、好ましくは0.02以下、好ましくは0.015以下、好ましくは0.01以下である。好ましくは、ポリマー粒子と膜形成性ポリマーとの間、またはポリマー粒子と連続ポリマー相との間の、400nm未満および1100nm超で測定される屈折率差は少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.06、好ましくは少なくとも0.07、好ましくは少なくとも0.08である。好ましくは、1100nmを超えて測定される屈折率は1100nm〜2500nmで測定され、400nm未満で測定される屈折率は190nm〜400nmで測定される。好ましくは、ポリマー粒子の屈折率は1.45〜1.7、好ましくは1.46〜1.6、好ましくは1.47〜1.55である。好ましくは、膜形成性ポリマーまたは連続ポリマー相の屈折率は1.4〜1.6、好ましくは1.45〜1.55、好ましくは1.46〜1.53である。ポリマー粒子がGRIN粒子である場合には、屈折率差を計算する目的のためのその屈折率は粒子表面での屈折率である。
【0013】
本発明の組成物において、膜形成性ポリマー:ポリマー粒子の重量比は好ましくは、1:3〜6:1、好ましくは2:3〜3:1である。膜中の連続相においては、ポリマー粒子間の平均距離はこれら粒子の中心間距離である。好ましくは、この距離は0.9〜14μm、好ましくは2〜15μm、好ましくは3〜10μmである。
【0014】
好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相はアクリルモノマーの重合残基を少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%含む。好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相は(メタ)アクリル酸C−C12アルキルの重合残基を35〜70%、好ましくは40〜65%、好ましくは45〜65%含む。好ましくは、(メタ)アクリル酸C−C12アルキルはアクリル酸C−C12アルキル、好ましくはアクリル酸C−C10アルキル、好ましくはBAおよび/またはEHAである。好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相は(メタ)アクリル酸C−Cアルキルの重合残基を30〜65%、好ましくは35〜60%、好ましくは35〜55%、および酸モノマー(例えば、AA、MAA、IA、CA)の重合残基も0〜5%含み、並びに少量のビニルモノマーの残基も含むことができる。好ましくは、(メタ)アクリル酸C−Cアルキルは(メタ)アクリル酸C−Cアルキル、好ましくはMMAおよび/またはEMAである。
【0015】
好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相はビスフェノールAのグリシジルエーテル、ノボラック樹脂、アミノプロピルトリエトキシシランと一緒にされたトリフェニルメタンのトリグリシジルエーテルを含む。
【0016】
好ましくは、非水系溶媒と一緒にされた膜形成性ポリマーは光学的に透明であり、すなわち、400〜800nmで(150μmの厚さで測定して)少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%の光透過率を有する。好ましくは、ポリマーは処理もしくは使用条件下で結晶化しない熱可塑性ポリマーであり、すなわち、それは約50℃より高いガラス転移温度を有し、よって、本発明のポリマー粒子の組み込みの後で非晶質であり、本発明の膜を形成する処理の後でも非晶質のままである。このポリマーは典型的には約1400〜約3500MPaの弾性係数を有し、成形、キャスティング、押出し、もしくは当業者に明らかな他の処理によって成形物品に形成されうる。ポリ(酢酸ビニル)、可塑化塩化ビニルホモポリマーおよびコポリマー、可塑化セルロースエーテルなどのような可塑化可能なポリマーをはじめとする、さらに柔らかいマトリックスポリマーも使用されうる。本発明に有用なマトリックスポリマーの別の好ましい種類は熱硬化性ポリマーである。製造の際に、ポリマーは熱硬化されることができ、例えば、膜を固定するのに充分な多官能性モノマーを含むポリ(メタクリル酸メチル)、または重合が完了した後に、例えば、重合されたシートの加熱によって硬化反応を活性化することによりポリマーが熱硬化されうる。このような熱硬化性マトリックスポリマーの例には、メタクリル酸メチル、スチレン、塩化ビニルなどのホモポリマー、ポリグルタルイミドとして知られているメタクリル酸メチルのイミド化ポリマー、およびメタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルとのコポリマー、40%以下のアクリロニトリルとスチレンとのコポリマー、メタクリル酸メチルとスチレンとのコポリマー、メタクリル酸メチルとアルファ−メチルスチレンとのコポリマー、並びにアクリル酸アルキルおよび塩化ビニルと酢酸ビニルもしくはプロピレンとのコポリマーが挙げられる。マトリックスポリマーの適合性もしくは屈折率適合ブレンドが使用されうる。好ましいマトリックスポリマーはメタクリル酸メチルと1〜15%のアクリル酸アルキルとのコポリマーであって、当該アルキル基は1〜8個の炭素原子を含み、かつ当該コポリマーは0.05〜2%の量で多官能性ジメタクリラートモノマーも含むか、または当該コポリマーは0.05〜5%の量でアクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミドを含む。熱硬化性ポリマーはビニルモノマーから形成されることを必要としていないが、縮合もしくは開環重合によって、例えば、多官能性グリコールの存在下でのポリエステル化によって、または三官能性エポキシドの存在下でのエポキシド重合によって製造されうる。このようなポリマーの例には、メタクリル酸メチル、スチレン、塩化ビニルなどのホモポリマー、ポリグルタルイミドとして知られているメタクリル酸メチルのイミド化ポリマー、およびメタクリル酸メチルとアクリル酸アルキルとのコポリマー、40%以下のアクリロニトリルとスチレンとのコポリマー、メタクリル酸メチルとスチレンとのコポリマー、メタクリル酸メチルとアルファ−メチルスチレンとのコポリマー、並びにアクリル酸アルキル、塩化ビニルと酢酸ビニルもしくはプロピレンとのコポリマーが挙げられ、前記アクリル酸アルキルのアルキル基は1〜8個の炭素原子を含む。セルロースアセタートブチラートのホモポリマーおよびコポリマー、並びに特定の非晶質縮合ポリマー、例えば、ポリ(エチレンテレフタラート)およびポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタラート)も好適である。好ましいマトリックスポリマーはメタクリル酸メチルと約1〜約15%のアクリル酸アルキル(当該アルキルは1〜8個の炭素原子を含む)とのコポリマーである。
【0017】
好ましくは、非水系溶媒と一緒になったポリマー粒子は架橋剤の重合残基を少なくとも3%、好ましくは少なくとも3.5%、好ましくは少なくとも4%、好ましくは少なくとも5%、好ましくは少なくとも6%有する。
【0018】
好ましくは、溶媒は少なくとも35℃、好ましくは少なくとも40℃の沸点を有する。好ましい溶媒には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、イソプロパノール、エチルアルコールおよびキシレンが挙げられる。
【0019】
架橋剤は2以上のエチレン性不飽和基もしくは結合性基(例えば、シラン)を有するモノマーであるか、またはイオン性架橋剤(例えば、金属酸化物)である。2以上のエチレン性不飽和基を有する架橋剤には、例えば、ジビニル芳香族化合物、ジ−、トリ−およびテトラ−(メタ)アクリラートエステル、ジ−、トリ−およびテトラ−アリルエーテルもしくはエステル化合物、並びに(メタ)アクリル酸アリルが挙げられうる。このようなモノマーの好ましい例には、ジビニルベンゼン(DVB)、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、テトラアリルペンタエリスリトール、トリアリルペンタエリスリトール、ジアリルペンタエリスリトール、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、ビスフェノールAジアリルエーテル、アリルスクロース、メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリアクリラート、メタクリル酸アリル(ALMA)、エチレングリコールジメタクリラート(EGDMA)、ヘキサン−1,6−ジオールジアクリラート(HDDA)、およびブチレングリコールジメタクリラート(BGDMA)が挙げられる。好ましくは、膜形成性ポリマーもしくは連続ポリマー相において重合される架橋剤残基の量は0.2%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下、好ましくは0.02%以下、好ましくは0.01%以下である。好ましくは、75〜150℃のTを有するポリマー粒子において重合される架橋剤残基の量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下、好ましくは0.2%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%以下である。好ましくは、架橋剤が存在する場合には、架橋剤は100〜250、好ましくは110〜230、好ましくは110〜200、好ましくは115〜160の分子量を有する。好ましくは、架橋剤は2官能性もしくは3官能性であり、すなわち、架橋剤はそれぞれジエチレン性もしくはトリエチレン性不飽和であり、好ましくは2官能性である。
【0020】
好ましくは、本発明の組成物は本発明のポリマー粒子の水性エマルションであり、好ましくは35〜65%、好ましくは40〜60%の固形分量であり;または前記のと同じ量での溶媒中のポリマー粒子の分散物である。ポリマー粒子および膜形成性ポリマーが多段粒子において一緒にされている場合には、好ましくは、組成物は多段乳化重合によって好適なモノマーから製造される。好ましくは、異なるモノマー組成物が重合に導入される2つの重合段階が存在するが、その粒子はより多くの段階で製造されることができ、ただし全体的な組成は本明細書に示される通りである。好ましくは、組成物および膜は実質的に顔料もしくは固体無機粒子を含まず、すなわち、組成物および膜は0.5重量%未満、好ましくは0.2重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.05重量%未満しか有さない。
【0021】
本発明の膜は、ポリマー粒子と、当該粒子を取り囲んで連続ポリマー相を形成するであろう反応性成分とで、例えば、二成分ポリウレタンシステムもしくはエポキシ開始剤システムで表面をコーティングすることにより形成されることもできる。
【0022】
本発明の組成物は水性分散物、例えば、アルカリ性、アニオン性もしくは非イオン性の形態をとることができ、およびさらに添加剤を含むことができる。好ましい添加剤には、例えば、シロキサンカップリング剤、流動もしくは湿潤剤、増粘剤および/またはレオロジー調整剤、硬化剤、酸化防止剤、造膜溶媒および可塑剤が挙げられる。好ましくは、エポキシもしくはアミン官能基を有するもののような1種以上のシロキサンカップリング剤がガラスおよびプラスチックへの接着性を向上させるために添加される。特に好ましいシロキサンカップリング剤には、例えば、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシランおよびN−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられ、これらは好ましくは組成物中の固形分ポリマーの全重量を基準にして0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の量で使用される。
【0023】
好ましくは、本発明のポリマー粒子を含む膜は、本発明のポリマー粒子の水性エマルションを固体の基体上にコーティングし、そしてこのコーティングを乾燥させることにより製造される。この膜は上述のような反応システム中でもしくは溶媒中でポリマー粒子の分散物をコーティングすることによっても製造されうる。好ましくは、基体はガラス、木材、皮革、または光学的に透明なプラスチック、例えば、ポリ(エチレンテレフタラート);好ましくは、ガラスもしくは光学的に透明なプラスチックである。好ましくは、この用途のためのプラスチックおよびガラスの屈折率は最低1.4(ポリフッ化ビニリデンについて)から1.8(酸化タリウム(TlO)でドープされたガラスについて)まで変化する。好ましくは、ウェット塗膜は2〜30mil(0.05〜0.76mm)、好ましくは4〜20mil(0.1〜50mm)、好ましくは6〜12mil(0.15〜0.3mm)の厚みを有する。0.5〜15μmの平均直径を有するポリマー粒子は会合して、実質的に面心立方もしくは六方最密充填配置でコアのマトリックスを生じさせ、連続ポリマー相を形成している外側層を伴っていると考えられる。
【実施例】
【0024】
実施例1
この実施例は5μmの勾配屈折率(Gradient Refractive Index;GRIN)粒子と共に配合されるコーティング組成物を記載する。使用される材料は以下の表1に特定される。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例2〜7
この実施例は化学組成:(80%BA/ALMA=96/4)//20%(MMA/EA=96/4)の5μmGRIN粒子、およびバインダーと称される膜形成性ポリマー(80%(EA/AA=96.5/3.5)//20%(MMA))(FFP)を使用する様々なコーティングの製造を示す。様々な厚さを生じさせるために、1.5milおよび3milバードアプリケータ並びに#15および#25ダウ(Dow)ドローダウンバーを使用して、様々なビーズ添加のコーティング配合物がマイラー膜上に堆積された。このコーティングから生じた試験膜は寸法が77mm×56mm×3mmであった。これらのサンプルはASTM D10003−00(透明プラスチックの光透過率およびヘイズについての標準試験方法)およびASTM E313−00(機器で測定された色座標から黄変および白色度を計算するための標準的実施)によって評価された。データは表3に記録される。PVセル性能に及ぼすこのコーティングの影響は、未コートのガラス基体に対するPVセル効率として表7に記録される。
【0027】
【表2】

【0028】
【表3】

【0029】
実施例8〜13
これらの実施例は化学組成:(80%BzA/ALMA=96/4)//20%(MMA/EA=96/4)(BZA)の5μmGRIN粒子、およびバインダー膜形成性ポリマー(FFP)からの様々なコーティング組成物の製造を示す。様々な厚さを生じさせるために、1.5milおよび3milバードアプリケータ並びに#15および#25ダウドローダウンバーを使用して、様々なビーズ添加のコーティング配合物がマイラー膜上に堆積された。このコーティングから生じた試験膜は寸法が77mm×56mm×3mmであった。これらのサンプルはASTM D10003−00(透明プラスチックの光透過率およびヘイズについての標準試験方法)およびASTM E313−00(機器で測定された色座標から黄変および白色度を計算するための標準的実施)によって評価された。データは表4に記録される。PVセル性能に及ぼすこのコーティングの影響は、未コートのガラス基体に対するPVセル効率として表7に記録される。
【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
実施例14〜19
これらの実施例は化学組成:(77%MMA/DVB=77/23)(LTL−4603)の5.11μm粒子、およびバインダー膜形成性ポリマーからの様々なコーティング組成物の製造を示す。様々な厚さを生じさせるために、1.5milおよび3milバードアプリケータ並びに#15および#25ダウドローダウンバーを使用して、様々なビーズ添加のコーティング配合物がマイラー膜上に堆積された。このコーティングから生じた試験膜は寸法が77mm×56mm×3mmであった。これらのサンプルはASTM D10003−00(透明プラスチックの光透過率およびヘイズについての標準試験方法)およびASTM E313−00(機器で測定された色座標から黄変および白色度を計算するための標準的実施)によって評価された。データは表4に記録される。PVセル性能に及ぼすこのコーティングの影響は、未コートのガラス基体に対するPVセル効率として表7に記録される。
【0033】
【表6】

【0034】
【表7】

【0035】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0.5〜30μmの平均粒子直径、および(b)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度を有するポリマー粒子と、80℃以下のTを有する膜形成性ポリマーとを含む組成物であって、前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、並びに前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04である組成物。
【請求項2】
前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.03以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記平均粒子直径が1〜10μmである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリマー粒子が1.46〜1.6の屈折率勾配を有する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
(a)0.5〜30μmの平均粒子直径、および(b)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度を有するポリマー粒子と、80℃以下のTを有する連続ポリマー相とを含む膜であって、前記ポリマー粒子と前記連続ポリマー相との間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、前記ポリマー粒子と前記連続ポリマー相との間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04であり、並びに前記ポリマー粒子間の平均距離が0.85〜30μmである膜。
【請求項6】
前記ポリマー粒子と前記連続ポリマー相との間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.03以下である、請求項5に記載の膜。
【請求項7】
前記平均粒子直径が1〜10μmである、請求項6に記載の膜。
【請求項8】
前記ポリマー粒子が1.46〜1.6の屈折率を有する、請求項7記載の膜。
【請求項9】
(a)(i)0.5〜30μmの平均粒子直径、(ii)100〜700Kgf/mmのビッカーズスケール硬度、および(iii)少なくとも2.5重量%の架橋剤の重合残基を有するポリマー粒子と、(b)140℃以下の沸点を有する非水系溶媒と、(c)膜形成性ポリマーとを含む組成物であって、前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.04以下であり、並びに前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の1100nm超もしくは400nm未満で測定される平均屈折率差が少なくとも0.04である組成物。
【請求項10】
前記ポリマー粒子と前記膜形成性ポリマーとの間の400nm〜1100nmで測定される平均屈折率差が0.03以下であり、前記平均粒子直径が1〜10μmであり、並びに前記ポリマー粒子が1.46〜1.6の屈折率勾配を有する、請求項9に記載の組成物。

【公開番号】特開2012−73602(P2012−73602A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−183194(P2011−183194)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】