説明

反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置

【課題】 防眩性に優れ、透明性が高く、着色の少ない、耐擦傷性など高い物理強度を有し、塵埃(埃など)の付着防止性に優れた反射防止フィルムを提供することである。さらに、適切な手段により反射防止処理がされている偏光板、画像表示装置を提供すること。
【解決手段】 透明支持体上に、少なくとも光拡散層、帯電防止層、透明支持体よりも屈折率が低い低屈折率層をこの順に塗設した反射防止フィルムにおいて、帯電防止層を塗設する前の光拡散層表面の中心線平均粗さRa1で帯電防止層塗設後の帯電防止層表面の中心線平均粗さRa2を除した値が、0.5〜1.0であることを特徴とする反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、それを用いた偏光板およびび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)は大画面化が進み、反射防止フィルムを配置した液晶表示装置が増大している。
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置において、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために、ディスプレイの表面に配置される。そのため、反射防止フィルムには高い物理強度(耐擦傷性など)、透明性、耐薬品性、耐候性(耐湿熱性、耐光性など)が要求される。さらにまた、ディスプレイの視認性を低下させる塵埃(埃など)が、反射防止フィルムの表面に付着するのを防止する対策も要求される。
【0003】
反射防止フィルムに用いる反射防止層(高屈折率層、中屈折率層、低屈折率層など)としては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から普通に用いられている。金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法により形成することが通常に行われてきた。しかし、蒸着による金属酸化物の透明薄膜の形成方法は生産性が低く大量生産に適しておらず、生産性が高い塗布により形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
塗布方式によって作製される反射防止フィルムの塵埃付着防止性を向上させるためには、導電性を塗設層のいずれかに持たせることが有効であり、また、汚れ付着防止には例えば最外層に含フッ素化合物を含有することが有効である。
フィルムの透明性を損なうことなく導電性を付与するために、例えば帯電防止層を塗設層のうちの支持体側に位置する層に含有させる方法が種々検討されてきている。(特許文献5、同6)この層配置は、帯電防止層の上に光学特性を制御するための諸機能層を設置できるために、帯電防止層を表面側に設置することによる光学特性の目減りを回避できるという点で有利であるが、導電性が発現されにくい欠点があった。この欠点を改良するために、帯電防止層が支持体側に位置する構成において、粒径のかなり大きい極少量の導電性の高い機能粒子を帯電防止層と表面の間に渡って位置するように含有させて、帯電防止層と表面との導電パスを作る方法も提案されている(特許文献7)が、コストアップやヘイズ上昇等の問題があった。
さらに、3層以上からなる反射防止膜において、導電層を表面の低屈折率層に隣接させる層構成も開示されている(特許文献8)が、凹凸を有する光拡散層が用いられておらず、防眩性と導電性とを両立する技術ではなかった。
【0004】
一方、液晶表示装置において偏光板は不可欠な光学材料であり、一般に、偏光膜が2枚の保護フィルムによって保護されている構造をしている。
これらの保護フィルムに反射防止機能を付与することができれば、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
偏光板に用いる保護フィルムは、偏光膜と貼り合わせるうえで十分な密着性を有していることが必要である。偏光膜との密着性を改良する手法として、保護フィルムを鹸化処理して保護フィルムの表面を親水化処理することが通常行われている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−116323号公報
【特許文献2】特開2002−156508号公報
【特許文献3】特開2002−361769号公報
【特許文献4】特開2003−4903号公報
【特許文献5】特開2000−233467号公報
【特許文献6】特開2002−254573号公報
【特許文献7】特開2003−39586号公報
【特許文献8】特開平11−138677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、防眩性に優れ、透明性が高く、着色の少ない、耐擦傷性など高い物理強度を有し、塵埃(埃など)の付着防止性に優れた反射防止フィルムを提供することである。さらに、適切な手段により反射防止処理がされている偏光板、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、下記構成の反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置により達成された。
【0008】
(1)透明支持体上に、少なくとも光拡散層、帯電防止層、透明支持体よりも屈折率が低い低屈折率層をこの順に塗設した反射防止フィルムであって、かつ帯電防止層を塗設する前の光拡散層表面の中心線平均粗さRa1で帯電防止層塗設後の帯電防止層表面の中心線平均粗さRa2を除した値が、0.5〜1.0であることを特徴とする反射防止フィルム。
(2)帯電防止層を塗設する前の光拡散層表面の中心線平均粗さRa1が0.03〜0.30μmであり、帯電防止層塗設後の帯電防止層表面のRa2が、0.02〜0.25μmであることを特徴とする(1)に記載の反射防止フィルム。
(3)帯電防止層および/または低屈折率層が、少なくとも塗布と電離放射線硬化を含む工程によって形成されたことを特徴とする(1)または(2)に記載の反射防止フィルム。
(4)低屈折率層が下記一般式(1)で表される含フッ素化合の架橋または重合反応により形成されたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(1)
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(1)中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。
(5)低屈折率層に中空シリカ微粒子を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(6)低屈折率層を有する側の表面抵抗が1×1012Ω/□以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(7)帯電防止層に含有される導電材が金属酸化物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(8)帯電防止層の層厚みが60〜200nmであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(9)帯電防止層に含有される導電材が10〜400m2/gの比表面積を有する微粒子であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(10)帯電防止層に含有される導電材が平均粒径1〜200nmの微粒子であることを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(11)帯電防止層に含有される導電材がアニオン性基を有する分散剤で分散されたことを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(12)帯電防止層の導電材の含有率が帯電防止層の全固形分の20〜60質量%であることを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0011】
(13)光拡散層が平均粒径が0.5〜8μmの透光性粒子を含有することを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(14)光拡散層のバインダーマトリックスの屈折率が1.45〜1.90であり、さらに光拡散層のバインダーマトリックスと透光性粒子の屈折率差が0.02〜0.30であることを特徴とする(1)〜(13)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(15)前記低屈折率層を有する側の表面に凹凸が形成されており、防眩性を有することを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0012】
(16)低屈折率層が、下記一般式(A)で表わされるポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(A)
【0013】
【化3】

【0014】
一般式(A)中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換基を表し、それぞれの基が複数ある場合それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R1、R3、R4
のうち少なくとも一つの基が架橋又は重合性の官能基を表す。pは1≦p≦4を満たす整数を表す。qは10≦q≦500を満たす整数を表し、rは0≦r≦500を満たす整数を表し、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
(17)透明支持体上のいずれかの層に、下記一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物及び/又はその誘導体を含有することを特徴とする上記(1)〜(16)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0015】
一般式(a) (R10s−Si(Z)4-s
【0016】
一般式(a)中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Zは水酸基または加水分解可能な基を表す。sは1〜3の整数を表す。
(18)透明支持体上のいずれかの層が、酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で形成されていることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(19)(1)〜(18)のいずれかに記載の反射防止フィルムを偏光膜の2枚の保護フィルムの少なくとも一方に有することを特徴とする偏光板。
(20)(1)〜(18)のいずれかに記載の反射防止フィルム、または(19)に記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
(21)画像表示装置が、TN、STN、IPS、VA又はOCBモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする(22)に記載の画像表示装置。

【0017】
本発明の反射防止フィルムの特徴は、帯電防止層を低屈折率層に接して(低屈折率層の直下に)設けたことである。この層構成にすることによって帯電防止層の厚みを薄くしても予想外に大きい帯電防止効果が維持され、かつ光拡散層が更に下層であるにも拘わらずその凹凸が反射防止フィルム表面に反映されて良好な光拡散性も発揮できることが判明した。このような優れた効果を発揮できる条件としては光拡散層の上に帯電防止層などの上層を塗設しても、その表面粗さは、上層の塗設前の光拡散層の表面粗さの0.5〜1.0の範囲に維持されることであり、上記層構成による薄層・高導電効果の寄与によっている。
また、帯電防止層の表面の表面粗さが、光拡散層の表面粗さを反映して上記の粗さ比率範囲に入るためには、上層厚みの均一性の寄与が大きいが、そのような均一性は、光拡散層表面の中心線平均粗さRa1が0.03〜0.30μmであり、帯電防止層塗設後の帯電防止層表面のRa2が、0.02〜0.25μmであるときに確保されることも判明した。
本発明の上記特徴により、次項に要約される効果が得られている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐擦傷性が高く、埃など塵埃に対する防塵性や防汚性に優れた反射防止フィルムを提供することができる。
さらにこれらにより、上記特徴を有する偏光板、画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明について更に詳細に説明する。
(帯電防止層)
本発明における帯電防止層について説明する。
本発明の反射防止フィルムにおいて、帯電防止層を構築することで、反射防止フィルム表面に塵埃(埃など)が付着するのを防止する、すなわち優れた防塵性を発現させることができる。防塵性は、反射防止フィルム表面の表面抵抗値を下げることで発現され、帯電防止層の導電性が高いほど高い効果が得られる。本発明の反射防止フィルムにおいては、含フッ素化合物を含有する低屈折率層を有する側の表面の表面抵抗値が、1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□以下であることがより好ましく、1×1010Ω/□以下であることが更に好ましく、1×108Ω/□以下であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の反射防止フィルムにおいて、支持体上に塗布(コーティング)方式で層を設置することを塗設と称する。帯電防止層は、透明支持体上に少なくとも1層以上が塗設される。帯電防止層は、光拡散層と含フッ素化合物を有する低屈折率層との間に塗設される。
【0021】
帯電防止層を塗設する場合、導電材(電子伝導型の導電性粒子、イオン伝導型の有機化合物など)を結着剤(バインダーなど)に含有させて、帯電防止層を作製することが好ましい。特に、電子伝導型の導電材は、環境の変化を受け難く導電性能が安定し、特に低湿環境下でも良好な導電性能を発現する点で好ましい。
以下、塗布法で帯電防止層を作製する好ましい方法について記載する。
【0022】
〈導電材〉
帯電防止層に用いられる好ましい導電材としては、π共役系導電性有機化合物、導電性微粒子などの電子伝導型の導電材が好ましい。
π共役系導電性有機化合物としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられる。
【0023】
導電性微粒子としては、カーボン系、金属系、金属酸化物系、導電被覆系微粒子等が挙げられる。
カーボン系微粒子としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボン粉末、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等のカーボン繊維、膨張化黒鉛粉砕品のカーボンフレーク等が挙げられる。
金属系微粒子としては、アルミニウム、銅、金、銀、ニッケル、クロム、鉄、モリブデン、チタン、タングステン、タンタル等の金属、及び、それらの金属を含有する合金の粉末や、金属フレーク、鉄、銅、ステンレス、銀メッキ銅、黄銅等の金属繊維等が挙げられる。
金属酸化物系微粒子としては、酸化錫、アンチモンをドープした酸化錫(ATO)、酸化インジウム、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛、アンチモン酸亜鉛、五酸化アンチモンなどが挙げられる。
導電被覆系微粒子としては、例えば、酸化チタン(球状、針状)、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、マイカ、シリカ等の各種微粒子表面を、酸化錫、ATO、ITO等の導電材で被覆した導電性微粒子、金及び/又はニッケルなどの金属で表面処理されたポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂等の樹脂ビーズが好ましい。
【0024】
帯電防止層の導電材としては、π共役系導電性有機化合物(特に、ポリチオフェン系導電性ポリマー)、導電性微粒子としては金属系微粒子(特に、金、銀、銀/パラジウム合金、銅、ニッケル、アルミニウム)や金属酸化物系微粒子(特に、酸化錫、ATO、ITO、酸化亜鉛、アルミニウムをドープした酸化亜鉛)が好ましい。特に、金属や金属酸化物などの電子伝導型の導電材が好ましく、なかでも金属酸化物系微粒子が特に好ましい。
【0025】
導電材の一次粒子の質量平均粒径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。導電材の平均粒径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
導電材の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
導電材の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、鱗片状、針状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは、不定形状、針状、鱗片状である。
【0026】
〈帯電防止層の形成法〉
帯電防止層を塗布法で作製する場合、導電材は、分散物の状態で帯電防止層の形成に使用することが好ましい。
導電材の分散においては、分散剤の存在下で、分散媒体中に分散することが好ましい。
分散剤を用いて分散することにより、導電材は極めて微細に分散することができ、透明な帯電防止層の作製を可能にする。特に、帯電防止層を光学干渉層として用いて層に反射防止機能ももたせる場合には、導電材を微細に分散することで層の透明性が上がり、反射防止性能も向上させることができる点で好ましい。
【0027】
本発明に係る導電材の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが好ましい。アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ基)、リン酸基(ホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上が含有されていればよい。導電材の分散性をさらに改良する目的で分散材にはアニオン性基が1分子当たり複数個含有されていてもよい。1分子当たり平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
アニオン性の極性基を有する分散剤としては、ホスファノール(PE−510、PE−610、LB−400、EC−6103、RE−410など;東邦化学工業(株)製)、Disperbyk(−110、−111、−116、−140、−161、−162、−163、−164、−164、−170、−171など;ビックケミー・ジャパン社製)、アロニックスM5300など;東亞合成(株)製、KAYAMER(PM-21、PM-2など;日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0028】
分散剤は、さらに架橋又は重合性の官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性の官能基としては、ラジカル種による架橋反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
【0029】
本発明に係る帯電防止層に用いる導電材の分散に用いる分散剤は、アニオン性基、及び、架橋又は重合性の官能基を有し、かつ該架橋又は重合性の官能基を側鎖に有する分散剤であることが特に好ましい。
【0030】
アニオン性基、及び、架橋又は重合性の官能基を有し、かつ、該架橋又は重合性の官能基を側鎖に有する分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。該分散剤のより好ましい質量平均分子量(Mw)は2000〜1000000であり、さらに好ましくは5000〜200000、特に好ましくは10000〜100000である。
【0031】
分散剤の導電材に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
導電材は分散剤の存在下で、分散媒体中に分散することが好ましい。
【0032】
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0033】
導電材は、分散機を用いて分散することが好ましい。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、ダイノミル、高速インペラーミル、アイガーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルなどが含まれる。サンドグラインダーミル、ダイノミルなどのメディア分散機が特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
導電材は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均粒径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
導電材を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない帯電防止層を作製できる。
【0034】
本発明において、帯電防止層は、上記導電材以外に有機化合物のバインダーを含有することが好ましく、該バインダーにより層のマトリックスを形成し、導電材を分散させることが好ましい。このため帯電防止層は、分散媒体中に導電材を分散した分散液に、好ましくは、バインダーまたはバインダー前駆体を添加して作製することが好ましい。バインダーまたはバインダー前駆体としては、非硬化系の熱可塑性樹脂、あるいは熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂のような硬化系樹脂等を用いることができる。
バインダーまたはバインダー前駆体の軟化温度又はガラス転移点は、50℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。
【0035】
本発明において、帯電防止層は、分散液にバインダー前駆体(架橋又は重合性の官能基を有する化合物)に、光重合開始剤等を加えて帯電防止層形成用の塗料とし、透明支持体上に該帯電防止層形成用の塗料を塗布して、バインダー前駆体の架橋又は重合反応により硬化させて作製することが特に好ましい。バインダー前駆体としての架橋又は重合性の官能基を有する化合物としては、電離放射線硬化性化合物が好ましく、例えば、後述する電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーなどが好ましい。
上記作製法において帯電防止層のバインダーは、架橋又は重合性の官能基を有する化合物の硬化物として形成される。さらに、帯電防止層のバインダーを層の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させて硬化させて形成することが好ましい。
このようにして作製した帯電防止層のバインダーは、例えば、上記の分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となり、アニオン性基が導電材の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、導電材を含有する帯電防止層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良できるので好ましい。
【0036】
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0037】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、等を挙げることができる。
【0038】
さらにはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0039】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。さらに好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。
多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0040】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類等が挙げられる。
【0041】
市販の光ラジカル重合開始剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX-S、BP-100、BDMK、CTX、BMS、2-EAQ、ABQ、CPTX、EPD、ITX、QTX、BTC、MCAなど)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651、184、500、907、369、1173、2959、4265、4263など)、サートマー社製のEsacure(KIP100F、KB1、EB3、BP、X33、KT046、KT37、KIP150、TZT)等が挙げられる。
【0042】
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、高薄一弘著「最新UV硬化技術」((株)技術情報協会、159頁、1991年)に記載されている。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651、184、907)等が挙げられる。
【0043】
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI、EPA)などが挙げられる。
光重合反応は、帯電防止層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
紫外線照射には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0044】
帯電防止層の架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有することが好ましい。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
【0045】
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋又は重合構造を有する。
【0046】
アニオン性基は、連結基を介してバインダーの側鎖として、主鎖に結合していることが好ましい。
アニオン性基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。架橋又は重合構造は、二つ以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)する。架橋又は重合構造は、三つ以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋又は重合構造は、−CO−、−O−、−S−、窒素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価以上の基からなることが好ましい。
【0047】
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96モル%であることが好ましく、4〜94モル%であることがさらに好ましく、6〜92モル%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二つ以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98モル%であることが好ましく、6〜96モル%であることがさらに好ましく、8〜94モル%であることが最も好ましい。
【0048】
バインダーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋又は重合構造の双方を有していてもよい。バインダーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋又は重合構造もない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
架橋又は重合しているバインダーは、帯電防止層形成用の塗料を透明支持体上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によって作製することが好ましい。
【0049】
帯電防止層における導電材の含有量は、帯電防止層の質量に対し30〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜80質量%、特に好ましくは50〜75質量%である。導電材は帯電防止層内で二種類以上を併用してもよい。
【0050】
帯電防止層の好ましい塗布溶媒としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
特に好ましい塗布溶媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、又は、エステル類であり、最も好ましい溶媒としては、ケトン類である。ケトン類の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
塗布溶媒は、その他の溶媒を含んでいてもよい。例えば、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。
【0051】
塗布溶媒は、ケトン系溶媒の含有量が塗料に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0052】
帯電防止層の形成は、特に帯電防止層を電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により形成する場合には、酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。
帯電防止層を酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で作製することにより、帯電防止層の物理強度(耐擦傷性など)、耐薬品性、耐候性、更には、帯電防止層と帯電防止層と隣接する層との接着性を改良することができる。
好ましくは酸素濃度が3体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により作製することであり、更に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。
酸素濃度を4体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0053】
帯電防止層の膜厚は用途により適切に設計することができる。優れた透明性を有する帯電防止層を作製する場合、膜厚は20〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは40〜300nm、更に好ましくは60〜200nmである。
【0054】
帯電防止層のヘイズは、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。この場合のヘイズは平滑な透明支持体に帯電防止層のみを塗設・硬化することによって求めた値である。
帯電防止層は光拡散層の上に塗設され、塗設後の表面の中心線平均粗さRa2(他層のRaと区別するために、帯電防止層塗設後のRaをRa2と表現する)は0.02〜0.25μmであることが好ましく、0.04〜0.20μmがさらに好ましく、0.06〜0.17μmが最も好ましい。
帯電防止層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。このために帯電防止層がハードコート処理されていることも好ましい。
【0055】
帯電防止層には、前記の成分(導電材、重合開始剤、光増感剤、バインダーなど)以外に、樹脂、界面活性剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。
【0056】
(光拡散層)
光拡散層は、透光性ポリマーからなるバインダー、透光性粒子、および高屈折率化または低屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための微細無機フィラー、から形成される。
光拡散層の厚さは、通常0.5μm〜30μm程度で、好ましくは1μm〜15μm、さらに1.5μm〜10μmが好ましい。厚すぎると、カール、ヘイズ値、高コスト等の欠点がでて、逆に薄すぎると防眩性と光拡散効果の調整が難しくなる。
【0057】
〈バインダー〉
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有する透光性ポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマー(バインダー前駆体)の重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0058】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。
さらに、二個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物などのオリゴマーまたはプレポリマー等もあげられる。これらのモノマー、は2種以上併用してもよく、また、二個以上のエチレン性不飽和基を有する樹脂はバインダー全量に対して10〜70%含有することが好ましい。
【0059】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0060】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
バインダーの屈折率は、好ましくは1.45〜2.00であり、より好ましくは1.48〜1.90であり、更に好ましくは1.50〜1.85であり、特に好ましくは1.51〜1.80である。なお、バインダーの屈折率は、光拡散層の成分から透光性粒子を除いて測定した値である。
光拡散層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0061】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンが挙げられる。
【0062】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0063】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、透光性粒子および無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0064】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。また、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0065】
〈透光性粒子〉
光拡散層には、後記の微細無機フィラー粒子より粒径が大きい、平均粒径が0.5〜8μm、好ましくは1〜6μmの透光性粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。これは、ディスプレイ表面で反射する外光を散らして弱めたり、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、黒白反転または色相変化を起こりにくくしたりする目的で用いられる。平均粒径が0.5μm未満では光拡散効果が弱く、また8μm以上ではザラツキ感が目立ち好ましくない。
光拡散層塗設後の表面の中心線平均粗さRa1は0.03〜0.30μmであることが好ましく、0.05〜0.25μmがさらに好ましく、0.07〜0.20μmが最も好ましい。(光拡散層塗設後の表面の中心線平均粗さとは、本発明では、すなわち帯電防止層塗設前の表面の中心線平均粗さを指す。)
透光性粒子と透光性樹脂との間の屈折率差は0.02〜0.30であり、0.04〜0.20であることが特に好ましい。その差が0.30を超えると、フィルムが白濁し、0.02未満であると十分な光拡散効果を得ることができない。透光性粒子の透光性樹脂に対する添加量も屈折率同様、大きすぎるとフィルムが白濁し、小さすぎると十分な光拡散効果が得られないため、透光性粒子の層内含有率は、光拡散層全固形分中3〜40質量%であり、5〜25%であることが特に好ましい。
透光性粒子の塗布量は、形成された光拡散層中の粒子量が好ましくは10〜10000mg/m2、より好ましくは50〜4000mg/m2、最も好ましくは100〜1500mg/m2となるように拡散層に含有される。
粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0066】
透光性粒子は、異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。2種類以上の透光性粒子を用いる場合には、複数種類の粒子の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために、最も屈折率の高い透光性粒子と最も屈折率の低い透光性粒子との間の屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、透光性樹脂の屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
上記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、中空シリカ粒子、アルミナ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;ポリメチルメタアクリレート粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、メチルメタアクリレート−スチレン共重合体粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、ポリカーボネート粒子、ポリ塩化ビニル粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋ポリメチルメタアクリレート粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できるが、ヘイズ値と拡散性の制御性、塗布面状の均質性から単分散粒子が好ましい。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布の粒子を得ることができる。
【0067】
光拡散層には、層の屈折率を高めるため、上記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、一次粒子の平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である微細な無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、高屈折率の透光性粒子を用いた光拡散層では、透光性粒子との屈折率差を大きくするためにバインダーの屈折率を低くしなければならない。このためにシリカ微粒子、中空シリカ微粒子を用いることも好ましい。好ましい粒径は前記の高屈折率化微細無機フィラーと同じである。
光拡散層に用いられる微細無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの微細無機フィラーの添加量は、光拡散層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、微細無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分短いために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質の性質を有する。
【0068】
〈帯電防止層塗設前後の表面の凹凸〉
本発明の反射防止フィルムにおいて、効果的な防塵性を発現するためには、光拡散層塗設後の該層表面の中心線平均粗さRa1で、光拡散層の上にさらに帯電防止層を塗設した後の該層表面の中心線平均粗さRa2を除した値が0.5〜1.0であることが必要とされ、好ましくは0.55〜0.95、さらに好ましくは0.6〜0.9である。この値が1.0より大きいと防眩性やヘイズが高すぎて画像のコントラストが下がる欠点がでてくる。逆に0.5より小さいと防眩性が低すぎて表面反射が大きくなる欠点がでてくる。
光拡散層塗設後の中心線平均粗さRa1と、この上に帯電防止層を塗設した後の中心線平均粗さRa2の好ましい値に関しては、前記各層の項で記載したとおりであり、Raに関しては、奈良次郎著、テクノコンパクトシリーズ(6)「表面粗さの測定・評価法」((株)総合技術センター)に記載されている。
本発明の反射防止フィルムの各層表面のこのような凹凸形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
【0069】
表面の凹凸の形成法としては公知の手法が用いられる。本発明では、フィルムの表面に高い圧力で凹凸の形状を有する版を押し当てる(例えば、エンボス加工)ことにより形成する手法、または反射防止フィルムの特定の塗設層に粒子を含有させる手法が好ましい。特に、後者の方法が容易に表面凹凸を形成できる点で好ましい。
エンボス加工により表面に凹凸を形成する方法では、公知の手法が適用できるが、特開2000−329905号公報に記載されている手法により凹凸を形成することが特に好ましい。
【0070】
(低屈折率層)
本発明に用いられる低屈折率層は、含フッ素化合物を含有する。特に、含フッ素化合物を主体とする低屈折率層を構築することが好ましい。含フッ素化合物を主体とする低屈折率層は、通常反射防止フィルムの最外層として位置し、防汚層としての機能も有する。ここで、「含フッ素化合物を主体とする」とは、低屈折率層の中に含まれる構成成分のうち、含フッ素化合物の質量比が最も大きいことを意味し、含フッ素化合物の含有率が低屈折率層の全質量に対し50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上含まれることがより好ましい。
【0071】
低屈折率層の含フッ素化合物は、架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物の架橋又は重合反応により形成することが好ましく、該架橋又は重合性の官能基は電離放射線硬化性の官能基であることが好ましい。以下、低屈折率層に含まれる含フッ素化合物について記載する。
【0072】
〈含フッ素化合物〉
低屈折率層に含まれる含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47、さらに好ましくは1.38〜1.45である。
含フッ素化合物には、含フッ素ポリマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素エーテルなどが挙げられる。
含フッ素ポリマーとしては、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの架橋又は重合反応により合成されたものが挙げられる。フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーの例には、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、フッ素化ビニルエーテルおよびフッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが含まれる。
【0073】
含フッ素ポリマーとしてフッ素原子を含む繰り返し構造単位とフッ素原子を含まない繰り返し構造単位からなる共重合体も用いることができる。
上記共重合体は、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマーとフッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーの重合反応により得ることができる。
フッ素原子を含まないエチレン性不飽和モノマーとしては、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレンおよびその誘導体(例、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル等)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド(例、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミドおよびアクリロニトリルが挙げられる。
【0074】
含フッ素シラン化合物としては、パーフルオロアルキル基を含むシラン化合物などが挙げられる。
【0075】
含フッ素界面活性剤は、疎水性部分を構成する炭化水素の水素原子の一部または全部が、フッ素原子により置換されているもので、その親水性部分はアニオン性、カチオン性、ノニオン性および両性のいずれであってもよい。
【0076】
含フッ素エーテルは、一般に潤滑剤として使用されている化合物である。含フッ素エーテルとしては、パーフルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0077】
低屈折率層の含フッ素化合物としては、架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーが特に好ましい。架橋又は重合構造が導入された含フッ素ポリマーは、架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物を架橋又は重合させることにより得られる。
【0078】
架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物は、架橋又は重合性の官能基を有さない含フッ素化合物に、架橋又は重合性の官能基を側鎖として導入することにより得ることができる。架橋又は重合性の官能基としては、光(好ましくは紫外線照射)、電子ビーム(EB)照射あるいは加熱などにより反応して含フッ素ポリマーが架橋又は重合構造を有するようになる官能基であることが好ましい。架橋又は重合性の官能基としては、(メタ)アクリロイル、イソシアナート、エポキシ、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロールおよび活性メチレン等の基が挙げられる。架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物として、市販品を用いてもよい。
【0079】
低屈折率層の含フッ素化合物は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位をからなる共重合体を主成分として含有することが好ましい。該共重合体由来の成分は最外層の全質量に対し50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。以下に、低屈折率層に用いられるのに好ましい上記共重合体について説明する。
【0080】
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学工業(株)製)やM−2020(商品名、ダイキン工業(株)製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%であり、特に好ましくは30〜50質量%である。
【0081】
上記共重合体は(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を有する。(メタ)アクリロイル基の導入法は特に限定されるものではないが、例えば、(i)水酸基、アミノ基等の求核基を有するポリマーを合成した後に、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物等を作用させる方法、(ii)上記求核基を有するポリマーに、硫酸等の触媒存在下、(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(iii)上記求核基を有するポリマーにメタクリロイルオキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(iv)エポキシ基を有するポリマーを合成した後に(メタ)アクリル酸を作用させる方法、(v)カルボキシル基を有するポリマーにグリシジルメタクリレート等のエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を併せ持つ化合物を作用させる方法、(vi)3−クロロプロピオン酸エステル部位を有するビニルモノマーを重合させた後で脱塩化水素を行う方法などが挙げられる。これらの中で本発明では特に水酸基を含有するポリマーに対して(i)または(ii)の手法によって(メタ)アクリロイル基を導入することが好ましい。
【0082】
側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位は、上記共重合体中に5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
【0083】
上記共重合体には、上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、透明支持体など下層への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合させることもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、より好ましくは0〜40モル%、特に好ましくは0〜30モル%である。
【0084】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N,N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル誘導体等を挙げることができる。
【0085】
本発明に用いられる含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位からなる共重合体の好ましい形態として、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。
一般式(1)
【0086】
【化4】

【0087】
一般式(1)中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖、分岐、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していてもよい。
好ましい例としては、*−(CH2)2−O−**、*−(CH2)2−NH−**、*−(CH2)4−O−**、*−(CH2)6−O−**、*−(CH2)2−O−(CH2)2−O−**、−CONH−(CH2)3−O−**、*−CH2CH(OH)CH2−O−**、*−CH2CH2OCONH(CH2)3−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0088】
一般式(1)中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0089】
一般式(1)中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、透明支持体など下層への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていてもよい。
【0090】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0091】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10である。
【0092】
さらに上記共重合体の特に好ましい形態として一般式(2)で表されるものが挙げられる。
一般式(2)
【0093】
【化5】

【0094】
一般式(2)中、X、x、yはそれぞれ一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数組成によって構成されていてもよい。例としては、前記一般式(1)におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のモル%を表わし、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表わす。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
一般式(2)で表される共重合体としては、40≦x≦60、30≦y≦60、z2=0を満たすものが特に好ましい。
【0095】
一般式(1)又は一般式(2)で表わされる共重合体の好ましい具体例として、特開2004−45462号公報の[0043]〜[0047]に記載されたものが挙げられる。また、一般式(1)又は一般式(2)で表わされる共重合体の合成法も該公報に詳しく記載されている。
【0096】
本発明において、低屈折率層を作製するのに用いる組成物は、塗料の形態をとることが好ましく、含フッ素化合物を必須の構成成分とし、必要に応じて各種添加剤およびラジカル重合開始剤を適当な溶剤に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが0.01〜60質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0097】
低屈折率層は、目的に応じて充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのポリシロキサン化合物等)、オルガノシラン化合物及びその誘導体、バインダー、界面活性剤等の添加剤を含有することができる。特に、充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)、滑り剤(ジメチルシリコーンなどのポリシロキサン化合物等)を添加することは好ましい。
以下に、低屈折率層に用いる好ましい充填剤、滑り剤等について記載する。
【0098】
〈低屈折率層の好ましい充填剤〉
充填剤(例えば、無機微粒子や有機微粒子等)は、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)を改良する点で、添加することが好ましい。低屈折率層に添加する充填剤としては無機微粒子が好ましく、中でも屈折率が低い二酸化珪素(シリカ)、中空のシリカ、細孔を有するシリカ、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)などが好ましい。特に好ましいのは二酸化珪素(シリカ)、中空シリカである。
【0099】
充填剤の一次粒子の質量平均粒径は、1〜150nmであることが好ましく、1〜100nmであることがさらに好ましく、1〜80nmであることが最も好ましい。低屈折率層において充填剤は、より微細に分散されていることが好ましい。充填剤の形状は米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状、短繊維状、リング状、不定形状であることが好ましく、また、粒子構造として中空、細孔または微細空隙を有する構造であることがさらに好ましい。特に好ましい形状は、球形状、不定形状である。充填剤は、結晶質、非晶質のいずれでも良い。
【0100】
充填剤は、分散液中あるいは塗料中で、分散安定化を図るために、あるいは低屈折率層の構成成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていてもよい。カップリング剤による表面処理が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシ化合物(例、チタネートカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。特に、シランカップリング剤処理が有効である。
【0101】
充填剤の表面処理は、低屈折率層の塗料の調製前にあらかじめ表面処理を実施しておくことが好ましいが、カップリング剤による表面処理の場合、塗料の調製時に塗料中にカップリング剤を添加して実施することも好ましい。
充填剤は、媒体(溶媒など)中に予め分散されていることが好ましい。
【0102】
充填剤の添加量は、低屈折率層の全質量に対し5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。少なすぎると物理強度(耐擦傷性など)の改良効果が減り、多すぎると低屈折率層が白濁することがある。
【0103】
充填剤の平均粒径は、低屈折率層の膜厚に対し20〜100%が好ましく、より好ましくは30〜80%、特に好ましくは30%〜50%である。
【0104】
低屈折率層に添加する充填剤が二酸化珪素微粒子の場合、中空の二酸化珪素微粒子を用いることが特に好ましい。中空の二酸化珪素微粒子は、屈折率が1.17〜1.45であることが好ましく、より好ましくは1.17〜1.40、さらに好ましくは1.17〜1.37である。ここで、中空の二酸化珪素微粒子の屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空の二酸化珪素微粒子を形成している外殻の二酸化珪素のみの屈折率を表わすものではない。中空の二酸化珪素微粒子を用いることで低屈折率層の屈折率を下げることができる。
【0105】
この時、粒子内の空洞の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(1)で表される。
【0106】
数式(1) x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
【0107】
空隙率xは10〜60%が好ましく、20〜60%がさらに好ましく、30〜60%であ
ることが最も好ましい。
【0108】
充填剤は、2種類以上を併用して用いることも好ましい。また、平均粒子径が異なる粒子も併用して用いることができる。
【0109】
〈低屈折率層の好ましい滑り剤〉
滑り剤は、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)、防汚性を改良する点で添加することが好ましい。
滑り剤としては、含フッ素エーテル化合物(パーフルオロポリエーテル、及び、その誘導体など)、ポリシロキサン化合物(ジメチルポリシロキサン、及び、その誘導体など)などが挙げられる。ポリシロキサン化合物が好ましい。
【0110】
ポリシロキサン化合物の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物の末端、及び/又は、側鎖に置換基を有するものが挙げられる。
ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として含む化合物中にはジメチルシリルオキシ単位以外の構造単位(置換基)を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。
【0111】
好ましい置換基の例としては(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。
【0112】
滑り剤の分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シロキサン化合物のSi原子含有量には特に制限はないが5質量%以上であることが好ましく、10〜60質量%であることが特に好ましく、15〜50質量%であることが最も好ましい。
【0113】
特に好ましい滑り剤は、下記一般式(A)で表わされる架橋又は重合性の官能基を有するポリシロキサン化合物及びその誘導体(誘導体とは、例えば、一般式(A)で表わされるポリシロキサン化合物の架橋又は重合体、一般式(A)で表わされるポリシロキサン化合物とポリシロキサン化合物以外の架橋又は重合可能な官能基を有する化合物との反応生成物など)である。
【0114】
一般式(A)
【化6】

【0115】
一般式(A)中、R1〜R4はそれぞれ独立に炭素数1〜20の置換基を表し、それぞれの基が複数ある場合それらは互いに同じであっても異なっていてもよく、R1、R3、R4のうち少なくとも一つの基が架橋又は重合性の官能基を表す。
pは1≦p≦4を満たす整数を表す。qは10≦q≦500を満たす整数を表し、rは0≦r≦500を満たす整数を表し、{ }で囲われているポリシロキサン部分はランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0116】
本発明に用いられる低屈折率層は、一般式(A)で表わされる架橋又は重合性の官能基を有するポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体と含フッ素化合物とを含む硬化物を含有することが好ましい。
【0117】
ポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体の含有量は、含フッ素化合物に対し、0.1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0118】
ポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体において、好ましい架橋又は重合性の官能基は、最外層の他の構成成分(含フッ素化合物、バインダー、など)と架橋又は重合反応して結合を形成することができる官能基であればよく、例えば、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β−ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、カチオン重合可能な基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニル基、ビニルオキシ基等)、ラジカル種による架橋または重合が可能な不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基等)、加水分解性シリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、酸無水物、イソシアネート基、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0119】
これらの架橋又は重合性官能基は低屈折率層の構成成分に合わせて適宜選択される。好ましくは、電離放射線硬化性の官能基である。
【0120】
また、一般式(A)の架橋又は重合性の官能基は、含フッ素化合物が有する架橋又は、重合性の官能基と架橋又は重合反応することが好ましく、特に好ましい官能基はカチオン開環重合反応性基(特に、エポキシ基、オキセタニル基など)、ラジカル重合反応性基(特に、(メタ)アクリロイル基)である。
【0121】
一般式(A)のR2が表す置換基は、炭素数1〜20の置換又は無置換の有機基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基等)、フッ素化アルキル基(トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等)または炭素数6〜20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基、フッ素化アルキル基またはフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。こららはさらにこれらの基で置換されていてもよい。
一般式(A)のR1、R3、R4が架橋又は重合性の官能基でない場合、上記有機基をとることができる。
【0122】
pは1≦p≦4を満たす整数を表す。qは10≦q≦500を満たす整数を表し、好ましくは50≦q≦400であり、特に好ましくは100≦q≦300である。rは0≦r≦500を満たす整数を表わし、好ましくは0≦r≦qであり、特に好ましくは0≦r≦0.5qである。
【0123】
一般式(A)で表わされる化合物のポリシロキサン構造は、その繰り返し単位(−OSi(R22−)が単一の置換基(R2)のみで構成された単独重合体であっても、異なる
置換基を有する繰り返し単位の組み合わせによって構成されたランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
【0124】
一般式(A)で表わされる化合物の質量平均分子量は、103〜106であることが好ましく、より好ましくは5×103〜5×105であり、特に好ましくは104〜105である。
【0125】
一般式(A)で表されるポリシロキサン化合物は市販されているもの、例えば、KF-100T、X-22-169AS、KF-102、X-22-3701IE、X-22-164B、X-22-164C、X-22-5002、X-22-173B、X-22-174D、X-22-167B、X-22-161AS、X-22-174DX、X-22-2426、X-22-170DX、X-22-176D、X-22-1821(信越化学工業(株)製)、AK-5、AK-30、AK-32(東亜合成化学(株)製)、サイラプレーンFM-0275、FM-0721、FM-0725、FM-7725、DMS-U22、RMS-033、RMS-083、UMS-182(チッソ(株)製)等を用いることもできる。また、市販のポリシロキサン化合物が含有する水酸基、アミノ基、メルカプト基等に架橋、又は、重合性官能基を導入することで作製することもできる。
【0126】
以下に、一般式(A)で表わされる好ましいポリシロキサン化合物の好ましい具体例として特開2003−329804号公報の[0041]〜[0045]に記載されたものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0127】
一般式(A)で表わされるポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体の添加量は、最外層の全固形分に対し、0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜15質量%、特に好ましくは1〜10質量%である。
【0128】
〈低屈折率層及びその形成法〉
低屈折率層は、上記含フッ素化合物、さらに必要に応じて、上記充填剤、上記ポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体、を溶媒に溶解、又は、分散した塗料を塗布することにより作製することが好ましい。
好ましい溶媒としては、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、水などを挙げることができる。
特に好ましい溶媒としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類であり、最も好ましい溶媒としては、ケトン類である。ケトン類の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが特に好ましい。溶媒には、ケトン系溶媒の含有量が塗料に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
2種類以上の溶剤を併用することもできる。
【0129】
架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物であれば、低屈折率層の塗布と同時または塗布後に、含フッ素化合物を架橋又は重合反応させ、低屈折率層を作製することが好ましい。
含フッ素化合物が、ラジカルで架橋又は重合する官能基を有していれば、ラジカル重合開始剤、特に光ラジカル重合開始剤を用いて架橋又は重合反応させることが好ましい。また、カチオンで架橋又は重合する官能基を有していれば、カチオン重合開始剤、特に光カチオン重合開始剤を用いて架橋又は重合反応させることが好ましい。
【0130】
ラジカル重合開始剤としては熱の作用によりラジカルを発生するもの、あるいは光の作用によりラジカルを発生するものが好ましい。特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
【0131】
熱の作用によりラジカル重合を開始する化合物としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0132】
光の作用によりラジカル重合を開始する化合物を使用する場合は、例えば紫外線など用いる化合物に応じた光の照射によって硬化させ、低屈折率層を作製することができる。
光ラジカル重合開始剤の例としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類がある。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
特に、光開裂型の光ラジカル重合開始剤が好ましい。光開裂型の光ラジカル重合開始剤については、高薄一弘著「最新UV硬化技術」((株)技術情報協会、159頁、1991年)に記載されている。
市販の光ラジカル重合開始剤も好ましく用いることができ、帯電防止層で記載した開始剤等が挙げられる。
【0133】
光重合開始剤は、含フッ素化合物100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。さらには、これらの光重合開始剤と併用して光増感剤も好ましく用いることができ、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。市販の光増感剤も好ましく用いることができ、帯電防止層で記載した増感剤等が挙げられる。
【0134】
バインダーは、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)、最外層と隣接する層との密着性を改良する点で、添加することが好ましい。
含フッ素化合物が、架橋又は重合性の官能基を有する化合物であれば、バインダーは含フッ素化合物と架橋又は重合する官能基を有するバインダーであることが好ましい。
特に、含フッ素化合物が、光架橋又は光重合性の官能基を有する化合物であれば、バインダーとして光架橋又は光重合性の官能基を有する多官能モノマーであることが好ましい。光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、帯電防止層で記載したものが挙げられる。多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
低屈折率層の含フッ素化合物は、架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物と、一般式(A)で表されるポリシロキサン化合物及び/又はその誘導体、及び/又は、該架橋又は重合性の官能基を有する含フッ素化合物と架橋又は重合するバインダーとから形成される硬化物であることが好ましい。
【0135】
低屈折率層は、含フッ素化合物、その他最外層の構成成分を溶解あるいは分散させた塗料を、塗布と同時又は塗布後に、光照射、電子線ビーム照射、加熱処理などを実施して、架橋又は重合反応させ、作製することが好ましい。
紫外線照射の場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0136】
低屈折率層の作製は、特に最外層を電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により形成する場合には、酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。
低屈折率層を酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で作製することにより、低屈折率層の物理強度(耐擦傷性など)、耐薬品性、耐候性、更には、最外層と最外層と隣接する層との接着性を改良することができる。
好ましくは酸素濃度が3体積%以下の雰囲気で、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により作製することであり、更に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。
酸素濃度を4体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0137】
低屈折率層の膜厚は30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜150nm、特に好ましくは60〜120nmである。低屈折率層を防汚層として用いる場合、膜厚は3〜50nmが好ましく、より好ましくは5〜35nm、特に好ましくは7〜25nmである。
【0138】
低屈折率層は反射防止フィルムの物理強度を改良するために、表面の動摩擦係数が0.25以下であることが好ましい。ここで記載した動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で表面を移動させたときの、表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
【0139】
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
また、低屈折率層の表面の水に対する接触角は後述する鹸化処理の前後で変わらないことが望ましく、鹸化処理の前後で変化量が10°以内であることが好ましく、特に好ましくは5°以内である。
【0140】
低屈折率層のヘイズは、低いほど好ましい。3%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0141】
低屈折率層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0142】
低屈折率層には、前記の成分(含フッ素化合物、重合開始剤、光増感剤、充填剤、滑り剤、バインダーなど)以外に、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。
【0143】
低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50、更に好ましくは1.35〜1.48、特に好ましくは1.37〜1.45である。
低屈折率層には、後述の一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物、及び、その誘導体(加水分解物、および該加水分解物が縮合して生成した架橋ケイ素化合物など)からなる群から選ばれた化合物を含有することも好ましい。
【0144】
(ハードコート層)
本発明の反射防止フィルムには、物理強度を付与するためにハードコート層を設けることができる。特に、透明支持体と前記最外層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋又は重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗料を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋又は重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0145】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、帯電防止層で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、ハードコート層形成用の塗料を塗布することで構築することが好ましい。
【0146】
塗布溶媒としては、帯電防止層で例示したケトン類、エステル類、芳香族炭化水素類であることが好ましい。特に、ケトン系溶媒を用いることで、例えば、透明支持体(特に、トリアセチルセルロース支持体)の表面とハードコート層との接着性がさらに改良する。
特に好ましい塗布溶媒は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
塗布溶媒は、帯電防止層で例示したケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。
塗布溶媒は、ケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0147】
ハードコート層が電離放射線硬化性の化合物の架橋又は重合反応により作製される場合、架橋又は重合反応は酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が4体積%以下の雰囲気で作製することにより、物理強度(耐擦傷性など)や耐薬品性に優れたハードコート層を作製することができる。
好ましくは酸素濃度が3体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により作製することであり、更に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、最も好ましくは0.5体積%以下である。
酸素濃度を4体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0148】
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、1〜10μmであることが好ましく、より好ましくは2〜7μm、特に好ましくは3〜5μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0149】
ハードコート層には樹脂、分散剤、界面活性剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、などを添加することもできる。また、ハードコート層の硬度を高くする、硬化収縮を抑える、屈折率を制御するなどの目的で、後述する一次粒子の平均粒径が1〜200nmの無機微粒子を添加することができる。
さらには、防眩機能、液晶表示装置の視野角拡大機能を付与する目的で後述する平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有することもできる。
【0150】
(透明支持体)
透明支持体としては、プラスチックフィルムであることが好ましい。プラスチックフィルムとしてはセルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4'−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンが含まれる。トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましく、特に、液晶表示装置に用いる場合、トリアセチルセルロースであることが好ましい。
【0151】
透明支持体がトリアセチルセルロースフィルムの場合、トリアセチルセルロースを溶剤に溶解することで調整したトリアセチルセルロースドープを単層流延、複数層共流延の何れかの流延方法により作製したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
【0152】
特に、環境保全の観点から、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶剤に溶解することで調整したトリアセチルセルロースドープを用いて作製したトリアセチルセルロースフィルムが好ましい。
本発明に好ましく用いられるトリアセチルセルロースフィルムについては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745)に例示されている。
【0153】
上記の透明支持体の膜厚は特に限定されるものではないが、膜厚は1〜300μmがよく、好ましくは30〜150μm、特に好ましくは40〜120μm、最も好ましくは40〜100μmである。
透明支持体の光透過率は、80%以上であることが好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。
透明支持体のヘイズは低い方が好ましい。2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。
透明支持体の屈折率は、1.40〜1.70であることが好ましい。
【0154】
透明支持体には、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を添加してもよい。赤外線吸収剤の添加量は、透明支持体の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがさらに好ましい。
また、透明支持体には、滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に添加してもよい。無機化合物の例には、SiO2、TiO2、BaSO4、CaCO3、タルクおよびカオリンが含まれる。
【0155】
透明支持体に、表面処理を実施してもよい。表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理とコロナ放電処理が特に好ましい。
【0156】
(オルガノシラン化合物)
本発明において、反射防止フィルムの各層に特に好ましく用いることができるオルガノシラン化合物について記載する。
皮膜の物理強度(耐擦傷性など)、皮膜と皮膜に隣接する層の密着性を改良する点でオルガノシラン化合物及び/又はその誘導体を透明支持体上のいずれかの層に添加することが好ましい。
【0157】
オルガノシラン化合物及び/又はその誘導体としては、下記一般式(a)で表される化合物及び/又はその誘導体を用いることができる。好ましいのは、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基を含有するオルガノシラン化合物であり、特に好ましいのはエポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイルなど)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノなど)を含有するオルガノシラン化合物である。
【0158】
一般式(a) (R10s−Si(Z)4-s
【0159】
一般式(a)中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6である。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Zは水酸基または加水分解可能な基を表す。例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR12COO(R12は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
sは1〜3の整数を表す。好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
10あるいはZが複数存在するとき、複数のR10あるいはZはそれぞれ異なっていてもよい。
【0160】
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ基(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アルコキシシリル基(トリメトキシシリル、トリエトキシシリル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更にこれらの置換基で置換されていてもよい。
【0161】
これらのうちで更に好ましくは水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アルコキシシリル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基である。特に、架橋又は重合性の官能基が好ましく、エポキシ基、重合性のアシルオキシ基((メタ)アクリロイル)、重合性のアシルアミノ基(アクリルアミノ、メタクリルアミノ)が好ましい。またこれら置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。
【0162】
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。一般式(a)で表されるオルガノシラン化合物及びその誘導体の中でも、下記一般式(b)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物及び/又はその誘導体が好ましい。
一般式(b)
【0163】
【化7】

【0164】
一般式(b)において、R11は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、又は塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合、*−COO−**、*−CONH−**、*−O−**、又は*−NH−CO−NH−**を表し、単結合、*−COO−**、*−CONH−**が好ましく、単結合、*−COO−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。ここで、*は=C(R11)−に結合する位置を、**はLに結合する位置を表す。
【0165】
1は2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていてもよい。
【0166】
tは0または1を表す。tとして好ましくは0である。
10は一般式(a)と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Zは一般式(a)と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。Zが複数存在するとき、複数のZはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0167】
一般式(a)、一般式(b)の化合物、及びその誘導体は、2種類以上を併用してもよい。
以下に、一般式(a)、一般式(b)で表されるオルガノシラン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0168】
【化8】

【0169】
【化9】

【0170】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、および(M−5)が特に好ましい。
【0171】
本発明において、一般式(a)、一般式(b)で表されるオルガノシラン化合物の誘導体とは、一般式(a)、一般式(b)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物、部分縮合物などを意味する。以下、本発明で用いるオルガノシラン化合物の好ましい誘導体(加水分解物及び/又は部分縮合物)について説明する。
オルガノシラン化合物の加水分解反応及び/又は縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、Ti又はAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0172】
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒を塗料あるいは塗料の一部として用いることが好ましく、その他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0173】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0174】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜90%の範囲であり、好ましくは20%〜70%の範囲である。
【0175】
オルガノシラン化合物の加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
本発明では、一般式R13OH(式中、R13は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式R14COCH2COR15(式中、R14は炭素数1〜10のアルキル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti及びAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより加水分解を行うことが好ましい。
【0176】
金属キレート化合物は、一般式R13OH(式中、R13は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式R14COCH2COR15(式中、R14は炭素数1〜10のアルキル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる金属キレート化合物は、一般式Zr(OR13p1(R14COCHCOR15p2、Ti(OR13q1(R14COCHCOR15q2、およびAl(OR13r1(R14COCHCOR15r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR13およびR14は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R15は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1およびr2は、それぞれ、p1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0177】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0178】
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いられる。0.01質量%未満では、オルガノシラン化合物の縮合反応が遅く、塗膜の耐久性が低下するおそれがあり、一方50質量%を超えると、オルガノシラン化合物の加水分解物及び/又は部分縮合物と金属キレート化合物を含有してなる組成物の保存安定性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0179】
上記オルガノシラン化合物及び/又はその誘導体(加水分解物、部分縮合物)、さらに必要に応じて添加される金属キレート化合物などを含む組成物に、β−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を添加することが好ましい。
【0180】
本発明では、一般式R14COCH2COR15で表されるβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物が好ましく用いられ、組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウム及び/又はアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の誘導体(加水分解物、部分縮合物等)などの縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。 β−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物を構成するR14及びR15は、前記金属キレート化合物を構成するR14及びR15と同様である。
【0181】
このβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物及び/又はβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがあり好ましいものではない。
【0182】
上記オルガノシラン化合物及び/又はその誘導体の添加量は、添加する層により適宜調整される。添加量は層の全固形分に対し、0.1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜25質量%、特に好ましくは5〜20質量%である。
【0183】
オルガノシラン化合物及び/又はその誘導体は、これらを含有する層の他の成分と架橋又は重合反応することが、皮膜の物理強度(耐擦傷性など)を極めて向上させることが可能となるので、好ましい。このため、オルガノシラン化合物が架橋又は重合する官能基を有したり、無機微粒子やバインダーなどにオルガノシラン化合物と架橋又は重合する官能基を有する化合物用いたりすることが好ましい。
例えば、電離放射線硬化性の架橋又は重合性の官能基を有するオルガノシラン化合物及び/又はその誘導体は、さらに、皮膜中の電離放射線硬化性の架橋又は重合性の官能基を有する他の化合物と架橋又は重合反応して硬化物を生成する。
【0184】
オルガノシラン化合物を添加するのに好ましい層は、帯電防止層、ハードコート層、防眩層、光拡散層、高屈折率層、低屈折率層、最外層であり、より好ましくはハードコート層、防眩層、光拡散層、低屈折率層、最外層であり、特に好ましくは最外層及び/又は該最外層の隣接層である。
【0185】
(反射防止フィルムの形成法等)
本発明において反射防止フィルムを構成する各層は、塗布法により作製したものが好ましい。塗布で形成する場合、各層はディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2,681,294号明細書記載)により作製することができる。2層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2,761,791号、同2,941,898号、同3,508,947号、同3,526,528号の各明細書および原崎勇次著、「コーティング工学」、253頁、朝倉書店(1973年)に記載がある。ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法が好ましい。特に、マイクログラビアコート法が好ましい。
マイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を支持体に転写させて塗工することを特徴とする塗布法である。
【0186】
マイクログラビアコート法では、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、より好ましくは100〜300本/インチである。グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、より好ましくは5〜200μmである。グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、より好ましくは5〜200rpmである。支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、より好ましくは1〜50m/分である。
【0187】
反射防止フィルムの各層を塗布法で作製する上で、層を作製するのに用いる塗料には、面状改良剤を添加することが好ましい。以下に、面状改良剤について説明する。
【0188】
(面状改良剤)
本発明の透明支持体上のいずれかの層を作製するのに用いる塗料には、面状故障(塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥など)を改良するために、フッ素系及び/又はシリコーン系の面状改良剤を添加することが好ましい。
【0189】
面状改良剤は、塗料の表面張力を1mN/m以上変化させることが好ましい。ここで、塗料の表面張力が1mN/m以上変化するとは、面状改良剤を添加後の塗料の表面張力が、塗布/乾燥時での濃縮過程を含めて、面状改良剤を添加してない塗料の表面張力と比較して、1mN/m以上変化することを意味する。
好ましくは、塗料の表面張力を1mN/m以上下げる効果がある面状改良剤であり、更に好ましく2mN/m以上下げる面状改良剤、特に好ましくは3mN/m以上下げる面状改良剤である。
【0190】
フッ素系の面状改良剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基を含有する化合物(「フッ素系面状改良剤」と略記する)が挙げられる。特に、下記一般式(i)のモノマーに相当する繰り返し単位、及び、下記一般式(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
このような単量体としては、Polymer Handbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2,Page 1〜483記載のものを用いることが好ましい。
例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
一般式(i)
【0191】
【化10】

【0192】
一般式(i)においてR21は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。X2は酸素原子、イオウ原子又は−N(R22)−を表し、酸素原子又は−N(R22)−がより好ましく、特に酸素原子が好ましい。R22は水素原子又は、炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。aは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが特に好ましい。bは1〜18の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が特に好ましい。
フッ素系面状改良剤中に一般式(i)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていてもよい。
一般式(ii)
【0193】
【化11】

【0194】
一般式(ii)において、R23は水素原子、ハロゲン原子又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Y2は酸素原子、イオウ原子又は−N(R25)−を表し、酸素原子又は−N(R25)−がより好ましく、特に酸素原子が好ましい。R25は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基、特に好ましくは水素原子又はメチル基である。
24は水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、又は置換もしくは無置換の芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基、又は総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐もしくは環状のアルキル基が更に好ましい。以下でポリ(アルキレンオキシ)基について説明する。
【0195】
ポリ(アルキレンオキシ)基は、−(OR)−を繰り返し単位とした基であり、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH(CH3)CH(CH3)−が挙げられる。
前記のポリ(オキシアルキレン)基中のオキシアルキレン単位(前記−OR−)はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一であってもよく、また互いに異なる2種以上のオキシアルキレンが不規則に分布されたものであってもよく、直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレンもしくはオキシエチレン単位であったり、または直鎖もしくは分岐状のオキシプロピレン単位のブロックもしくはオキシエチレン単位のブロックのように存在するものであってもよい。
このポリ(オキシアルキレン)鎖は1つまたはそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連鎖の結合が3つまたはそれ以上の原子価を有する場合には、これは分岐鎖のオキシアルキレン単位を得るための手段を供する。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(オキシアルキレン)基の分子量は250〜3000が適当である。
ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名"プルロニック"[Pluronic(旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)"カルボワックス"[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、"トリトン"[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法
でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0196】
一般式(i)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤において、フッ素系面状改良剤の形成に用いられる全モノマー量に対する一般式(i)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、特に好ましくは80〜100モル%の範囲である。
また、一般式(ii)で示されるモノマーの量は、0〜50モル%であることが好ましく、0〜30モル%であることがより好ましい。
【0197】
一般式(i)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
ここで、質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0198】
一般式(i)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の好ましい添加量は、添加する層の塗料に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0199】
以下、一般式(i)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の具体的な構造の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0200】
【化12】

【0201】
【化13】

【0202】
表面張力を調整する観点から、上記とは構造が異なるモノマーを含有するフッ素系の面状改良剤も好ましい。特に、下記一般式(iii)のモノマーに相当する繰り返し単位、及び、下記一般式(iv)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が好ましい。
一般式(iii)
【0203】
【化14】

【0204】
一般式(iii)中、R31は水素原子またはメチル基を表し、X3は酸素原子、イオウ原子または‐N(R32)‐を表し、mは1以上6以下の整数、nは2または3の整数を表す。R32は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。X3は酸素原子が好ましい。一般式2中のmは1以上6以下の整数が好ましく、2が特に好ましい。一般式2中のnは1〜3であって、1〜3の混合物を用いてもよい。
【0205】
上記一般式(iii)で表されるモノマーと共重合可能なモノマーとして下記一般式(iv)で示されるモノマーが好ましい。
一般式(iv)
【0206】
【化15】

【0207】
一般式(iv)中、R13は水素原子またはメチル基を表し、Y1は酸素原子、イオウ原子または‐N(R15)‐を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH3)−が好ましい。R14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0208】
一般式(iii)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の合成に用いられる一般式(iii)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系面状改良剤の各単量体の合計量に基づいて10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
【0209】
上記一般式(iii)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。一般式(iii)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の好ましい添加量は、効果の発現、塗膜の乾燥性、塗膜の性能(例えば反射率、耐擦傷性等)等を考慮して、塗布液に対して好ましくは0.001〜5質量%の範囲であり、より好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0210】
以下、一般式(iii)で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系面状改良剤の具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0211】
【化16】

【0212】
【化17】

【0213】
本発明の面状改良剤は、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、芳香族炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン等)を含有する塗料に用いることが好ましくい。特に、ケトン系溶媒が好ましい。ケトン系溶媒の中でも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。
また、特にケトン系溶媒を全溶媒の10質量%以上含有する塗料であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0214】
塗料の溶媒は、ケトン系溶媒以外の溶媒を含んでいてもよい。例えば、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)などがあげられる。
【0215】
面状改良剤は、層と層の界面の密着性を悪化させることがある。従って、層の表面に存在する面状改良剤を、該層の隣接層を形成する塗料中に溶出させて、層と層の界面近傍に面状改良剤が残らないようにすることが好ましい。そのため、隣接層の塗料中に面状改良剤を溶解する溶媒を含有させることが好ましい。そのような溶媒としては、上記ケトン系溶媒が好ましい。
【0216】
透明支持体上に形成する層の塗料において、面状改良剤を添加するのが特に好ましいのは、ハードコート層、防眩層、光散乱層、帯電防止層、高屈折率層を形成するための塗料であり、特に好ましいのはハードコート層、防眩層、光散乱層を形成するための塗料である。
【0217】
(反射防止フィルム)
本発明の反射防止フィルムは、物理強度(耐擦傷性など)を改良するために、最外層を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。ここで記載した動摩擦係数は、直径5mmのステンレス剛球に0.98Nの荷重をかけ、速度60cm/分で最外層を有する側の表面を移動させたときの、最外層を有する側の表面と直径5mmのステンレス剛球の間の動摩擦係数をいう。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
さらに反射防止フィルムは、防汚性能を改良するために、最外層を有する側の表面の水に対する接触角が80゜以上であることが好ましい。更に好ましくは90゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0218】
本発明に係る反射防止フィルムのヘイズは、0.5〜60%であることが好ましく、1〜50%であることがさらに好ましく、1〜40%であることが最も好ましい。
【0219】
本発明の反射防止フィルムの反射率は低いほど好ましく、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%以下、特に好ましくは1.5%以下である。
【0220】
(反射防止フィルムの構成)
本発明の反射防止フィルムの構成例を図面を引用しながら説明する。
図1は、優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【0221】
図1に示す態様は、透明支持体1、防眩層2、帯電防止層4、そして低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。防眩層2に含まれる粒子3は、平均粒径が0.2〜10μmの粒子である。
図1に示す態様では透明支持体1、帯電防止層4、低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。すなわち、帯電防止層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率。
【0222】
図1のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、帯電防止層が下記数式(11)、低屈折率層が下記数式(12)をそれぞれ満足することがさらに優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムとすることができる点で好ましい。
【0223】
数式(11) (m8λ/4)×0.7<n88<(m8λ/4)×1.3
【0224】
数式(11)中、m8は正の整数(一般に1、2または3)であり、n8は帯電防止層の屈折率であり、そして、d8は帯電防止層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長で
あり、380〜680(nm)の範囲の値である。
【0225】
数式(12) (m9λ/4)×0.7<n99<(m9λ/4)×1.3
【0226】
数式(12)中、m9は正の奇数(一般に1)であり、n9は低屈折率層の屈折率であり、そして、d9は低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長であり、380〜680(nm)の範囲の値である。
なお、図1に示した態様は、防眩性に優れた反射防止フィルムである。
【0227】
(偏光板用保護フィルム)
本発明の反射防止フィルムを偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いることができる。この場合、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。さらに好ましくは30°以下であり、特に好ましくは25°以下である。接触角を40°以下にすることは、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。この接触角は下記の鹸化処理の処理条件により調整することができる。
【0228】
偏光板用保護フィルムとして用いる反射防止フィルムの透明支持体としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。
【0229】
本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、下記2つの手法が挙げられる。
(1)鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、帯電防止層、ハードコート層、低屈折率層、高屈折率層、最外層など)を塗設する手法。
(2)透明支持体の一方の面に上記の各層(例、帯電防止層、ハードコート層、低屈折率層、最外層など)を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法。
【0230】
上記(1)の手法において、透明支持体の一方の面のみが鹸化処理されている場合、各層は鹸化処理されていない側に塗設する。透明支持体の両方の面が鹸化処理されている場合、各層を塗設する側の鹸化処理した透明支持体の表面をコロナ放電処理、グロー放電処理、火焔処理などの手法により表面処理し、その後、各層を塗設することが好ましい。
上記(2)において、反射防止フィルム全体を鹸化液に浸漬することが好ましい。この場合、反射防止フィルムは各層を有する側の表面を保護フィルムで保護して鹸化液に浸せきし、偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面を鹸化処理することもできる。
さらにまた、反射防止フィルムの偏光膜と貼り合わせる側の透明支持体の表面に鹸化処理液を塗布して、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理することもできる。
鹸化処理は、保護フィルムの上に反射防止性能を付与した後に実施することで、よりコストを削減でき、特に(2)の手法が、偏光板用保護フィルムを安価に製造できる点で好ましい。
【0231】
偏光板用保護フィルムは、光学性能(反射防止性能、防眩性能など)、物理性能(耐擦傷性など)、耐薬品性、防汚性能(耐汚染性など)、耐候性(耐湿熱性、耐光性)、防塵性能において、本発明の反射防止フィルムで記載した性能を満足することが好ましい。
従って、最外層を有する側の表面の表面抵抗値が1×1013Ω/□以下であることが好ましく、1×1012Ω/□以下であることがより好ましく、1×1010Ω/□以下であることが更に好ましく、1×108Ω/□以下であることが特に好ましい。
最外層を有する側の表面の動摩擦係数は0.25以下であることが好ましい。好ましくは0.17以下であり、特に好ましくは0.15以下である。
また、最外層を有する側の表面の水に対する接触角は90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0232】
(鹸化処理)
上記の鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に透明支持体、又は、反射防止フィルムを適切な時間浸漬して実施するのが好ましい。
アルカリ液は、水酸化カリウム水溶液、及び/又は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/lであり、特に好ましくは1〜2mol/lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃である。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0233】
鹸化処理することにより、透明支持体の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは25゜以下である。
【0234】
(偏光板)
本発明の偏光板は、偏向膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方に、本発明の反射防止フィルムを有する。偏光板用保護フィルムは、上記のように、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が40°以下であることが好ましい。
【0235】
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを2枚の保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムをもう一方に用いた偏光板は、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角を非常に広げることができるので、好ましい。
【0236】
(光学補償フィルム)
上記光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性層を有し、該ディスコティック化合物とフィルム面とのなす角度が、光学異方性層の深さ方向で変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。すなわち、ディスコティック構造単位を有する化合物の配向状態としては、例えば、ハイブリッド配向、ベント配向、ツイスト配向、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向等であることが好ましく、ハイブリッド配向であることが特に好ましい。該角度は、光学異方性層中で光学補償フィルムの支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
【0237】
また、光学異方性層が更にセルロースエステルを含んでいる態様、光学異方性層と光学補償フィルムの透明支持体との間に配向層が形成されている態様、該光学異方性層を有する光学補償フィルムの透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、且つ該透明支持体面の法線方向に光軸を有する態様、更に下記の条件を満足する態様も好ましい。
【0238】
20≦{(nx+ny)/2−nz}×d≦400
【0239】
式中、nxは面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率、nzは面に垂直方向の屈折率である。また、dは光学異方性
層の厚さ(nm)である。
【0240】
(画像表示装置)
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。反射防止フィルムは、反射防止フィルムの透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着する。
本発明に用いる反射防止フィルム及び偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。 特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、上記の光学補償フィルムと反射防止フィルムを保護フィルムとして有する偏光板を用いることで、視野角特性と反射防止特性を大幅に改良できる。
また、さらに市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、透過型または半透過型の液晶表示装置において、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面および内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0241】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(パーフルオロオレフィン共重合体PF−1の合成)
【0242】
【化18】

【0243】
ステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40質量部、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7質量部、及び過酸化ジラウロイル0.55質量部を仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25質量部をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2(529kPa)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が3.2kg/cm2(314kPa)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。
得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー生成物28質量部を得た。
次に該ポリマー生成物の20質量部をN,N−ジメチルアセトアミド100質量部に溶解、氷冷下で、アクリル酸クロライド11.4質量部を滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗し、有機層を抽出後、濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることにより上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1を19質量部得た。得られたパーフルオロオレフィン共重合体の屈折率は1.421であった。
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30%の溶液を得た。
【0244】
(オルガノシラン化合物A溶液の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3質量部を加えて混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させた。室温まで冷却し、オルガノシラン化合物Aの溶液を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィーによって分析したところ、原料の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランは殆ど残存していなかった。
【0245】
(光拡散層用塗料H−1の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)50.0質量部に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2.0質量部、フッ素系面状改良剤(P−7)0.75質量部、オルガノシラン化合物(KBM−5103、信越化学工業(株)製)10.0質量部、トルエン38.5質量部を添加して撹拌した。この溶液を塗布したのち、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液1.7質量部、及び、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液13.3質量部を添加して撹拌した。
孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散層用塗料H−1を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.51であった。
なお、光拡散層用塗料H−1の表面張力は32mN/mであった。
【0246】
(光拡散層用塗料H−2の調製)
光拡散層用塗料H−1において、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET-30、日本化薬(株)製)の量を47.0質量部に減らし、平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を2.6質量部、及び、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を20.0質量部に増加した以外は光拡散層用塗料H−1と同じにして添加、撹拌、ろ過して、光拡散層用塗料H−2を調製した。
【0247】
(光拡散層用塗料H−3の調製)
光拡散層用塗料H−2において、架橋ポリスチレン粒子の平均粒径を2.5μmに変更し、架橋アクリル−スチレン粒子の平均粒径も2.5μmに変更した以外は光拡散層用塗料H−2と同じにして添加、撹拌、ろ過して、光拡散層用塗料H−3を調製した。
【0248】
(光拡散層用塗料H−4の調製)
光拡散層用塗料H−2において、架橋ポリスチレン粒子の平均粒径を4.5μmに変更し、架橋アクリル−スチレン粒子の平均粒径も4.5μmに変更した以外は光拡散層用塗料H−2と同じにして添加、撹拌、ろ過して、光拡散層用塗料H−4を調製した。
【0249】
(光拡散層用塗料H−5の調製)
酸化ジルコニウム微粒子を含有する透明高屈折率ハードコート材料(デソライトZ7404、JSR(株)製)285.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)85.0質量部、オルガノシラン化合物(KBM−5103、信越化学工業(株)製)28.0質量部、メチルイソブチルケトン60.0質量部、メチルエチルケトン17.0質量部を添加して撹拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径3.0μmの分級を強化した架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液35.0質量部、ポリトロン分散機にて10000rpmで分散した平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスタKE−P150、(株)日本触媒製)の30%メチルエチルケトン分散液90.0質量部を添加して撹拌した。孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗料(II)を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.61であった。
なお、ハードコート層用塗料(II)において塗料の表面張力は25mN/mであった。
【0250】
(光拡散層用塗料H−6の調製)
前記光拡散層用塗料H−5の分級を強化した架橋PMMA粒子の平均粒径を、3.5μmに変更した以外は光拡散層用塗料H−5と全く同じにして光拡散層用塗料H−6を調製した。
【0251】
(帯電防止層用塗料AS−1)
市販の透明帯電防止層用塗料「ペルトロンC−4456S−7」(固形分濃度45%、日本ペルノックス(株)製)を帯電防止層用塗料Aとして用いた。C−4456S−7は、分散剤を用いて分散された導電性微粒子ATOを含有する透明帯電防止層用塗料である。この塗料による塗膜の屈折率は1.55であった。
【0252】
(帯電防止層用塗料AS−2)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する分散剤(B−1)5.0質量部、メチルエチルケトン75質量部を添加して撹拌した。
【0253】
【化19】

【0254】
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、58nmであった。
上記ATO分散液100質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、14.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.9質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−2を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.61であった。
【0255】
(帯電防止層用塗料AS−3)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、
三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)3.0質量部、シクロヘキサノン77質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、62nmであった。
上記ATO分散液100質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、16.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.8質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−3を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.62であった。
【0256】
(帯電防止層用塗料AS−4)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)0.8質量部、シクロヘキサノン79.2質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、102nmであった。
上記ATO分散液100質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、18.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.9質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−4を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.63であった。
【0257】
(帯電防止層用塗料AS−5)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、シクロヘキサノン80質量部を添加して撹拌した。分散剤は使用しなかった。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて帯電防止層用塗料Cで記載したのと全く同様に、上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、250nmであり、ATO微粒子を微細に分散できなかった。このようにして、ATO分散液を作製した。
上記ATO分散液100質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)19質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.8質量部を添加して撹拌して帯電防止層用塗料AS−5を調製した。屈折率は1.64であった。
【0258】
(帯電防止層用塗料AS−6)
上記帯電防止層用塗料AS−3塗料100質量部に、メチルエチルケトンを60質量部加えて撹拌して帯電防止層用塗料AS−6を調製した。
【0259】
(帯電防止層用塗料AS−7)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)3.0質量部、シクロヘキサノン43.7質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、67nmであった。
上記ATO分散液66.7質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、16.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.9質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−7を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.62であった。
【0260】
(帯電防止層用塗料AS−8)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)3.0質量部、シクロヘキサノン27.0質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、72nmであった。
上記ATO分散液50.0質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、16.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.9質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−8を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.62であった。
【0261】
(帯電防止層用塗料AS−9)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)3.0質量部、シクロヘキサノン48質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、62nmであった。
上記ATO分散液71質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、3.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.5質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−9を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.68であった。
【0262】
(帯電防止層用塗料AS−10)
前記の帯電防止層用塗料AS−3の分散剤B−1を、アロニックスM5300(カルボン酸基含有モノマー、東亞合成(株)製)で等量置き換えした以外は、帯電防止層用塗料AS−3と全く同様にして分散を行って、帯電防止層用塗料AS−10を調製した。分散後の導電材粒径は65nmであり、この塗料による塗膜の屈折率は1.62であった。
【0263】
(低屈折率層用塗料L−1の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)13.0質量部に、シリカ微粒子のMEK分散液(MEK−ST−L、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製)1.3質量部、上記オルガノシラン化合物A溶液0.6質量部、メチルエチルケトン5.0質量部およびシクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−1を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.42であった。
【0264】
(低屈折率層用塗料L−2の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)15.0質量部に、シリカ微粒子のMEK分散液(MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製)0.6質量部、シリカ微粒子のMEK分散液(MEK−ST−L、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製)0.8質量部、上記オルガノシラン化合物A溶液0.4質量部、およびメチルエチルケトン3.0質量部、シクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−2を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.42であった。
【0265】
(中空のシリカ微粒子のMEK分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616の調製例4に準じサイズを変更して作成)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製)30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加した。この分散液500gにほぼシリカの含量一定となるようにメチルエチルケトンを添加しながら、圧力20kPaで減圧蒸留による溶媒置換を行った。分散液に異物の発生はなく、固形分濃度をメチルエチルケトンで調整し20質量%にしたときの粘度は25℃で5mPa・sであった。得られた分散液A−1のイソプロピルアルコールの残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ、1.5%であった。
【0266】
(低屈折率層用塗料L−3の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)13.0質量部に、上記中空のシリカ微粒子のMEK分散液(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)1.95質量部、上記オルガノシラン化合物A溶液0.6質量部、およびメチルエチルケトン4.35質量部、シクロヘキサノン0.6質量部を添加して攪拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−3を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.40であった。
【0267】
(低屈折率層用塗料L−4の調製)
イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン=1/1(質量比)の混合溶媒に、テトラメトキシシラン1モル、0.1mol/lの塩酸2モルを添加した。室温で2時間撹拌して加水分解反応を行い、テトラメトキシシランの加水分解物の溶液を調製した。
イソプロピルアルコール/メチルエチルケトン=1/1(質量比)に、テトラメトキシシランの加水分解物9.0質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート1.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.5質量部、固形分濃度が4.5質量%になるように添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−4を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.45であった。
【0268】
(低屈折率層用塗料L−5の調製)
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1の溶液(固形分濃度30%)15.0質量部に、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(X−22−164C、信越化学工業(株)製)0.15質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.23質量部、メチルエチルケトン81.8質量部及びシクロヘキサノン2.8質量部を添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−6を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.43であった。
【0269】
(低屈折率層用塗料L−6の調製)
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1の溶液(固形分濃度30%)10.5質量部に、シリカ微粒子のMEK分散液(MEK−ST−L、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学工業(株)製)4.5質量部、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(X−22−164C,信越化学工業(株)製)0.15質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.23質量部、上記オルガノシラン化合物A溶液2.0質量部、メチルエチルケトン81.2質量部及び、シクロヘキサノン2.8質量部を添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−6を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.44であった。
【0270】
(低屈折率層用塗料L−7の調製)
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1の溶液(固形分濃度30%)10.5質量部に、中空のシリカ微粒子のMEK分散液(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)6.75質量部、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(X−22−164C,信越化学工業(株)製)0.15質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.23質量部、上記オルガノシラン化合物A溶液2.0質量部、メチルエチルケトン81.2質量部及び、シクロヘキサノン2.8質量部を添加して撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−7を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.41であった。
【0271】
(低屈折率層用塗料L−8の調製)
上記パーフルオロオレフィン共重合体PF−1の溶液(固形分濃度30%)13.5質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.45質量部、アクリロイル基を有するポリシロキサン化合物(X−22−164C、信越化学工業(株)製)0.15質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.23質量部、メチルエチルケトン81.2質量部及び、シクロヘキサノン2.8質量部を添加して、撹拌した。孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗料L−8を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.44であった。
【0272】
[実施例1]
【0273】
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、光拡散層用塗料(H−1〜H−6)をマイクログラビア塗布方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。
60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、光拡散層つきフィルムを作製した。
【0274】
上記で塗設した光拡散層の上に、帯電防止層用塗料(AS−1〜AS−10)を、マイクログラビア塗工方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布した。
100℃で150秒乾燥した後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、帯電防止層を有するフィルムを作製した。
【0275】
上記帯電防止層の上に、低屈折率層用塗料(L−1〜L−8)をマイクログラビア塗布方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布した。
その後、L−1〜L−3についての乾燥、硬化条件は、以下で行った。
120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(最外層)を形成した。
L−4についての乾燥、硬化条件は、以下で行った。
120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で20分熱処理して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。
また、L−5〜L−8についての乾燥、硬化条件は、以下のように行った。
90℃で30秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ低屈折率層(最外層)を形成した。
【0276】
反射防止フィルムにおける上記光拡散層、上記帯電防止層および低屈折率層の塗設組み合わせを、表1に記載したとおりに行った。さらに各反射防止フィルム試料の光拡散層まで塗設したフィルムの光拡散層を有する側の平均表面粗さRa1と、帯電防止層まで塗設したフィルムの帯電防止層を有する側の平均表面粗さRa2を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した結果も表1に記載した。(表1)
【0277】
【表1】

【0278】
(反射防止フィルムの評価)
得られた反射防止フィルムについて、以下の項目の評価を行った。結果を表2に示す。
【0279】
(1)表面抵抗の評価
反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面の表面抵抗を、超絶縁抵抗/微小電流計TR8601((株)アドバンテスト製)を用いて、25℃、相対湿度60%の条件下で測定した。
【0280】
(2)塵埃除去性の評価
反射防止フィルムをモニターに張り付け、モニター表面に塵埃(布団、衣服の繊維屑)を振りかけた。クリーニングクロスで塵埃を拭き取り、塵埃の除去性を調べ、下記3段階で評価した。
○;塵埃が完全に取り除けたもの。
△;塵埃が若干残ったもの(許容範囲内)。
×;塵埃がかなり残ったもの。
【0281】
(3)防眩性の評価
作製した反射防止フィルムにルーバーなしのむき出し蛍光灯(8000cd/cm2)を映し、その反射像のボケの程度を以下の基準で評価した。
◎:蛍光灯の輪郭が全く〜ほとんどわからない。
○:蛍光灯の輪郭がわずかにわかる。
△:蛍光灯の周囲が白っぽく見えるが、輪郭は識別できる(許容範囲内)。
×:蛍光灯がほとんどボケない。
(4)平均反射率の評価
分光光度計(日本分光(株)製;V−550)を用いて、380〜780nmの波長領域において、積分球を用いて、入射角5°における分光反射率を測定した。分光反射率の評価において、450〜650nmの平均反射率を用いた。
【0282】
(5)動摩擦係数の評価
反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面の滑り性の指標として動摩擦係数を評価した。動摩擦係数は試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、動摩擦測定機(HEIDON−14)で、直径5mmのステンレス剛球を用い、荷重0.98N、速度60cm/分で測定した。
【0283】
(6)耐擦傷性の評価
反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面において、ラビングテスターを用いてスチールウールによる擦りテストを実施した。
こすり材としてスチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)を用い、移動距離(片道)13cm、こすり速度13cm/秒、荷重4.9N/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数10往復の条件で実施した。最外層の表面についた傷について目視観察して、下記4段階で評価した。
◎;注意深く見ても、全く傷が見えない。
○;注意深く見ると、僅かに弱い傷が見える。
△;弱い傷が見える(許容範囲内)。
×;一目見ただけで目立つ傷が見える。
【0284】
(7)接触角の評価
反射防止フィルムを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面における水の接触角を評価した。
【0285】
(8)防汚性の評価
反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側の表面に油性マジック(ZEBRAマッキー、赤)を付着させて30分経時させ、それをクリーニングクロスで拭き取った時の状態を観察して、以下の3段階で評価した。
○:マジックが完全に拭き取れたもの。
△:マジックの一部が拭き取れずに残ったもの(許容範囲内)。
×:マジックのほとんどが拭き取れずに残ったもの。
(9)ヘイズの評価
ヘイズはヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
試料1サンプルにつき5点測定し、その平均値を採用した。
【0286】
【表2】

【0287】
表2の結果より、帯電防止層Ra2値を光拡散層Ra1値で除した値が0.5〜1.0に入っている本発明の試料101〜109、111、112、114〜122は比較試料110、113、123に比べて塵埃除去性、防眩性、耐擦傷性、ヘイズのすべての項目を満足する性能を示しており、これが本発明の効果によることが明白である。
【0288】
[比較例A]
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、帯電防止層用塗料(AS−3)を、マイクログラビア塗工方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布した。
100℃で150秒乾燥した後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、膜厚0.1μmの帯電防止層を有するフィルムを作製した。
前記で塗設した帯電防止層の上に、光拡散層塗料(H−1)をマイクログラビア塗布方式で、搬送速度30m/分の条件で塗布した。
60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、膜厚4μmの光拡散層を有するフィルムを作製した。
【0289】
前記で塗設した光拡散層の上に、低屈折率層用塗料(L−1)をマイクログラビア塗布方式で、搬送速度15m/分の条件で塗布した。
その後、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、膜厚0.09μmの低屈折率層(最外層)を形成して反射防止フィルム[比較試料A]を作製した。この試料に実施例1と同じ評価を実施した結果を表3に示す。
【0290】
[比較例B]
前記で作製した[比較試料A]に対して、帯電防止層用塗料(AS−3)の塗料液量が4倍になるマイクログラビア塗布条件で塗布し、硬化後膜厚0.41μmの帯電防止層を作製した。帯電防止層の上に、前記[比較試料A]と同じ条件で順に、光拡散層と低屈折率層を形成して反射防止フィルム[比較試料B]を作製した。この試料に実施例1と同じ評価を実施した結果を表3に示す。
【0291】
[比較例C]
(帯電防止層用塗料AS−11)
市販の導電性微粒子ATO(アンチモンドープ酸化錫T−1、比表面積80m2/g、三菱マテリアル(株)製)20.0質量部に、アニオン性基とメタアクリロイル基を有する上記分散剤(B−1)2.0質量部、シクロヘキサノン28質量部を添加して撹拌した。
メディア分散機(直径0.5mmのジルコニアビーズ使用)を用いて上記液中のATO粒子を分散した。光散乱法で分散液中のATO粒子の質量平均粒径を評価した結果、69nmであった。
上記ATO分散液50質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)、2.0質量部、重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.3質量部を添加して撹拌した。このようにして帯電防止層用塗料AS−11を調製した。この塗料による塗膜の屈折率は1.72であった。
この帯電防止層用塗料AS−11を[比較試料A]の層配置と同じにして、[比較試料A]に対して帯電防止層用塗料(AS−11)の塗料液量が4倍になるマイクログラビア塗布条件で塗布し、硬化後膜厚0.60μmの帯電防止層を作製した。帯電防止層の上に、前記[比較試料A]と同じ条件で順に、光拡散層と低屈折率層を形成して反射防止フィルム[比較試料C]を作製した。この試料に実施例1と同じ評価を実施した結果を表3に示す。
【0292】
[比較例D]
実施例1の試料101の低屈折率層の作製において、窒素パージを実施せずに、大気雰囲気(酸素濃度約21%)の中で低屈折率層を硬化させた以外は、試料101と全く同様にして反射防止フィルム[比較試料D]を作製し、実施例1と同じ評価を実施した。この試料に実施例1と同じ評価を実施した結果を表3に示す。
【0293】
【表3】

【0294】
表3の結果について述べる。比較例A試料の評価結果と実施例1の本発明試料101との評価結果の比較から、帯電防止層を光拡散層の下側へ塗設すると表面抵抗値が大きくなって、塵埃除去性が劣ることが分かる。
次に、比較例B試料、比較例C試料と比較例A試料の評価結果の比較から、比較例A試料の層配置で帯電防止層の塗布膜厚を厚くすると(0.09μmに対して0.41μm、0.60μm)表面抵抗値は小さくなるが、ヘイズが増加することが分かる。さらにこの比較例B試料と比較例C試料は、反射防止フィルムを白紙上に置いて目視観察する色味評価において、実施例1の本発明試料101に比べて、青黒い着色が濃くなっていることが観察された。さらにコスト試算によりコストアップになることが確認された。
比較例D試料の評価結果と実施例1の本発明試料101との評価結果の比較から、UV硬化時の雰囲気を窒素パージせずに大気下で行うと耐擦傷性が劣化することが分かる。
前記本発明試料101と比較例A試料〜D試料について、後記評価法による密着性の評価を行った。その結果、前記本発明試料101と比較例A試料と比較例D試料は評価◎で、比較例試料Bは評価△、比較例試料Cは評価×であった。
比較例試料Cのように帯電防止層を支持体に近い側に配置することによる導電性の低下を、帯電防止層中の導電材の密度増加で補おうとすると密着性が破綻することが判る。
【0295】
(10)密着性の評価
反射防止フィルム試料を温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した。各試料の帯電防止層を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0296】
[実施例2]
(画像表示装置の評価)
実施例1の試料101〜109、111、112、114〜122の反射防止フィルムを、画像表示装置(TN、STN、IPS、VA、又はOCBのモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置、及び、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT))のディスプレイ面に装着した。本発明の反射防止フィルムを用いた画像表示装置は、反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
さらにまた、切断面の面積が100μm2以上の凹は存在せず、画素サイズが100ppi(100ピクセル/インチ:長さ1インチ当たりに100画素がある)における画像表示装置におけるギラツキ故障の発生が無かった。
【0297】
[実施例3]
(偏光板用保護フィルムの作製)
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温した鹸化液を調整した。さらに、0.005mol/lの希硫酸水溶液を調製した。
実施例1の試料101〜109、111、112、114〜122の反射防止フィルムにおいて、低屈折率層(最外層)を有する側とは反対側の透明支持体の表面を、上記鹸化液を用いて鹸化処理した。
鹸化処理した透明支持体表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄して、100℃で十分に乾燥させた。
反射防止フィルムの低屈折率層(最外層)を有する側とは反対側の、鹸化処理した透明支持体の表面の水に対する接触角を評価したところ、40°以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
【0298】
(偏光板の作製)
特開2002−86554号公報に記載の偏向膜の一方の面に、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として用いて、本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士写真フィルム(株)製フジタック、レターデーション値3.0nm)を同じ接着剤を用いて貼り合わせた。このようにして、本発明の偏光板を作製した。
【0299】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を装着したTN、STN、IPS、VA、OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
なお、種々公知化されている偏向膜を用い、上記と同様に作製した偏光板においても同様の結果が得られた。
【0300】
[実施例4]
(偏光板の作製)
光学補償フィルム(ワイドビューフィルムSA 12B、富士写真フイルム(株)製)の、光学異方性層を有する側とは反対側の表面を実施例3と同様の条件で鹸化処理した。
【0301】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を装着したTN、STN、IPS、VA、OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が広く、さらに、反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
特に、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル−ポリスチレン粒子、架橋PMMA粒子、シリカ粒子による透過光の光散乱効果により、下方向の視野角が顕著に広がり、左右方向の黄色味が改善されていた。
なお、種々公知化されている偏向膜を用い、上記と同様に作製した偏光板においても同様の結果が得られた。
【0302】
[実施例5]
(画像表示装置の評価)
実施例1の試料101〜109、111、112、114〜122の反射防止フィルムを、有機EL表示装置に装着したところ、反射防止性、防塵性、耐擦傷性、防汚性に優れていた。
また、偏光膜の一方の面に実施例3で作製した偏光板用保護フィルム、もう一方の面にλ/4板を有する偏光板を実施例3と同様にして作製した。上記の偏光板を有機EL表示装置に装着したところ、偏光板を貼ったガラス表面からの光の反射もカットされ、極めて視認性の高い表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】反射防止フィルムを画像表示装置に適用する態様を模式的に示す概略図である。
【符号の説明】
【0304】
1 透明支持体
2 光拡散層
3 透光性粒子
4 帯電防止層
5 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、少なくとも光拡散層、帯電防止層、透明支持体よりも屈折率が低い低屈折率層をこの順に塗設した反射防止フィルムであって、かつ帯電防止層を塗設する前の光拡散層表面の中心線平均粗さRa1で帯電防止層塗設後の帯電防止層表面の中心線平均粗さRa2を除した値が、0.5〜1.0であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
帯電防止層を塗設する前の光拡散層表面の中心線平均粗さRa1が0.03〜0.30μmであり、帯電防止層塗設後の帯電防止層表面のRa2が、0.02〜0.25μmであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
帯電防止層および/または低屈折率層が、少なくとも塗布と電離放射線硬化を含む工程によって形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
低屈折率層が下記一般式(1)で表される含フッ素化合の架橋または重合反応により形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(1)
【化1】

一般式(1)中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。
【請求項5】
低屈折率層に中空シリカ微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
低屈折率層を有する側の表面抵抗が1×1012Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
帯電防止層に含有する導電材が金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
帯電防止層の層厚みが60〜200nmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
帯電防止層の導電材の含有率が帯電防止層の全固形分の20〜60質量%であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項10】
光拡散層が平均粒径が0.5〜8μmの透光性粒子を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
光拡散層のバインダーマトリックスの屈折率が1.45〜1.90であり、さらに光拡散層のバインダーマトリックスと透光性粒子の屈折率差が0.02〜0.30であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の反射防止フィルムを偏光膜の2枚の保護フィルムの少なくとも一方に有することを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の反射防止フィルム、または請求項12に記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【請求項14】
画像表示装置が、TN、STN、IPS、VA又はOCBモードの、透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置であることを特徴とする請求項13に記載の画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−23350(P2006−23350A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199073(P2004−199073)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】