説明

反射防止フィルム、反射防止性偏光板、及び透過型液晶ディスプレイ

【課題】十分な光学特性と機械特性、防汚性を備えた反射防止フィルムを提供すること、及びそれを用いた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材11の一方の面にハードコート層12と低屈折率層13を積層した反射防止フィルムである。ハードコート層が、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体から形成される。低屈折率層が、フッ素ポリマーと、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子80〜100重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー30〜50重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤0.5〜1.5重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤0.5〜1.5重量部と、を含有してなる低屈折率コーティング剤から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止性能及び帯電防止性能を備える反射防止フィルムに関する。さらには、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイの表示画面に適用される反射防止フィルムに関する。また、その反射防止フィルムを適用した反射防止性偏光板、及び透過型液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することは必須であり、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
一般に反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と低屈折率層の繰り返し構造による多層構造の反射防止層を形成することで得ている。これらの多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といった乾式成膜法により形成することができる。
【0003】
乾式成膜法を用いて反射防止層を形成する場合にあっては、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある一方、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産が可能である塗液を用いた湿式成膜法による反射防止層の生産が注目されている。
湿式成膜法により反射防止層、特に低屈折率層を設けるにあっては、形成される低屈折率層を低屈折率とするために塗液に低屈折率ナノ微粒子が添加される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-292831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで特許文献1に記載の方法では、低屈折ナノ微粒子含有量を増量することで非常に低い屈折率を実現することはできるが、多くの場合、強度不足等により反射防止層が十分な機械特性を得られるに至っていない。
本発明は、十分な光学特性と機械特性、防汚性を備えた反射防止フィルム、及びそれを用いた反射防止性偏光板、及び透過型液晶ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、透明基材の一方の面に対し、ハードコート層と低屈折率層とを積層した反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体から形成され、
前記低屈折率層は、低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマーと、アクリルモノマーと、フッ素系添加剤と、シリコーン系添加剤とを含有している低屈折率コーティング剤から形成されていることを特徴とする。
ここで、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基の少なくとも一方を言う。
【0007】
次に、請求項2に記載した発明は、前記低屈折率層は、フッ素ポリマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し80重量部より大きく且つ100重量部未満の低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマー100重量部に対し30重量より大きく且つ50重量部未満のアクリルモノマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のフッ素系添加剤と、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のシリコーン系添加剤とを含有してなる低屈折率コーティング剤から形成されていることを特徴とする。
【0008】
次に、請求項3に記載した発明は、前記フッ素ポリマーの平均分子量が1500000以下であることを特徴とするものである。
次に、請求項4に記載した発明は、前記アクリルモノマーの平均分子量が1500以下であることを特徴とするものである。
次に、請求項5に記載した発明は、前記低屈折率コーティング剤の屈折率は、1.30以上1.40以下の範囲であり、
低屈折率層の屈折率は、1.30以上1.45以下の範囲であることを特徴とする。
【0009】
次に、請求項6に記載した発明は、平均視感反射率が0.3%以上0.7%以下であり、全光線透過率が95.0%以上98.0%以下であり、且つ、ヘイズが0.01%以上0.20%以下の範囲内となっている反射防止フィルムであることを特徴とする。
次に、請求項7に記載した発明は、前記低屈折率層は、主溶媒の沸点の−60℃以上+20℃以下の範囲内の乾燥温度で乾燥し、更に積算光量が200mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内で紫外線照射することで製造されたものであることを特徴とする。
【0010】
次に、請求項8に記載した発明は、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムにおける低屈折率層を形成していない低屈折率層非形成面側に積層された第1の偏光板とを備えたことを特徴とする反射防止性偏光板を提供するものである。
次に、請求項9に記載の発明は、観察者側から、請求項8に記載の反射防止性偏光板、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットがこの順に配置され、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な光学特性と機械特性、防汚性を維持した反射防止フィルム、及びそれを使用した反射防止性偏光板、及び透過型液晶ディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る反射防止フィルムの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(低屈折率コーティング剤)
まず本実施形態で使用する低屈折率層に用いられる低屈折率コーティング剤について説明する。
本実施形態の低屈折率コーティング剤は、低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマーと、アクリルモノマーと、フッ素系添加剤と、シリコーン系添加剤と、を含有する。
【0014】
本実施形態の低屈折率コーティング剤に含まれる低屈折率ナノ微粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)、シリカ等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、粒子内部に空隙を有する粒子として、多孔質シリカ粒子、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0015】
なお、平均粒径にあっては、1nm以上100nm以下であることが好ましい。粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層が白化して反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層における粒子の凝集等の問題が生じる。
平均粒径とは、溶液中の粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50 メジアン径)を意味する。
【0016】
また、内部に空隙を有するシリカ粒子の空隙としては、20nm以上50nm以下であることが好ましい。空隙が50nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が0.7%以上となるためである。
【0017】
なお、内部に空隙を有するシリカ粒子の一例としては、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.30であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルである。
【0018】
また、本実施形態の低屈折率コーティング剤に用いられるフッ素ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0019】
また本実施形態の低屈折率コーティング剤に用いられるアクリルモノマーとしては、2−アクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレ−ト、2−メタクリロイルオキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレ−ト、2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト、2−ヒドロキシエチルメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テルアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルモノエチルエ−テルメタクリレ−ト、イソボルニルアクリレ−ト、イソボルニルメタクリレ−ト、3−メトキシブチルアクリレ−ト、3−メトキシブチルメタクリレ−ト、エチレングリコ−ルジアクリレ−ト、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ビスフェノキシエタノ−ルフルオレンジアクリレ−ト、ビスフェノキシエタノ−ルフルオレンジメタクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジアクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオ−ルジメタクリレ−ト、1,9−ノナンジオ−ルジアクリレ−ト、1,9−ノナンジオ−ルジメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルトリメタクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラアクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラメタクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルペンタメタクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト、ジペンタエリスリト−ルヘキサメタクリレ−ト、トリ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェ−ト、トリ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェ−ト等を挙げられる。
【0020】
本実施形態の低屈折率コーティング剤に用いられるフッ素系添加剤としては、C2d+1(dは1〜21の整数)で表されるパーフルオロアルキル基、−(CFCF)g−(gは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキレン基、またはF−(−CF(CF)CFO−)−CF(CF)(ここで、eは1〜50の整数)で表されるパーフルオロアルキルエーテル基、ならびに、CF=CFCFCF−、(CFC=C(C)−、および((CFCF)C=C(CF)−等で例示されるパーフルオロアルケニル基を有することが好ましい。
【0021】
本実施形態の低屈折率コーティング剤に用いられるシリコーン系添加剤としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサンなどのポリアルキル、ポリアルケニル等を挙げることができる。
本実施形態の低屈折率コーティング剤におけるそれぞれの材料の割合は、フッ素ポリマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し80重量部より大きく且つ100重量部未満の低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマー100重量部に対し30重量より大きく且つ50重量部未満のアクリルモノマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のフッ素系添加剤と、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のシリコーン系添加剤となっている。
【0022】
ここで、フッ素ポリマー添加量100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の添加量を80重量部より大きく100重量部未満とする理由は、次の通りである。80重量部以下であると平均視感反射率は0.7%以上となり、また100重量部以上であると機械特性(耐擦傷性能)が低下し、500g/cm2荷重で傷が生じてしまうためである。
また、フッ素ポリマー添加量100重量部に対して、アクリルモノマーの添加量を30重量部より大きく且つ50重量部未満とする理由は、次の通りである。30重量部以下であると機械特性(耐擦傷性能)が低下し、500g/cm2荷重で傷が生じてしまうためであり、50重量部以上であると平均視感反射率が0.7%以上になるためである。
【0023】
また、フッ素ポリマー100重量部に対して、フッ素系添加剤の添加量を0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満とする理由は、次の通りである。0.5重量部以下であると十分な防汚性が得られなくなるためであり、1.5重量部以上であるとブリードアウトするためである。ブリードアウトとは、添加物がフィルム表面に凝集することである。
また、フッ素ポリマー100重量部に対して、シリコーン系添加剤の添加量を0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満とする理由は次の通りである。0.5重量部以下であると十分な防汚性が得られなくなるためであり、1.5重量部以上であるとブリードアウトするためである。
【0024】
また、本実施形態の低屈折率コーティング剤におけるフッ素ポリマーの平均分子量は1500000以下とすることが好ましい。これは、平均分子量が1500000を超える添加は溶解性が悪くなるため塗料化が困難であるためである。なお、フッ素ポリマーの平均分子量は塗料化できる範囲内で高ければ高いほど好ましく、500000以上であることが好ましい。
また、本発明の低屈折率コーティング剤におけるアクリルモノマーの平均分子量は1500以下とすることが好ましい。これは、平均分子量が1500を超える添加は溶解性が悪くなるため塗料化が困難であるためである。なお、アクリルモノマーの分子量は100以上であることが好ましい。
【0025】
なお、低屈折率コーティング剤には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、低屈折率コーティング剤には添加剤として、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
【0026】
なお、低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率層形成用塗液を塗布した後、紫外線を照射することにより低屈折率層を形成する場合には、低屈折率層形成用塗液に、低屈折率コーティング剤と共に光重合開始剤を加えることができる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0027】
(反射防止フィルム)
図1は、本発明に基づく本実施形態の反射防止フィルムの模式断面図である。
本実施形態の反射防止フィルム1は、図1に示すように、透明基材11の一方の面に対しハードコート層12と低屈折率層13を順に備える。
【0028】
(透明基材)
次に前記透明基材11について説明する。
透明基材11としては、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。
【0029】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは、複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本実施形態の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。例えば、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60程度である。
また、本実施形態の反射防止フィルムは、透明基材と低屈折率層との間にハードコート層を備える。ハードコート層を備えることにより、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムとすることができる。
【0030】
(ハードコート層)
次に、前記ハードコート層12について説明をする。
ハードコート層12は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを主成分とする重合体からなることが好ましい。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、へキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0031】
なお、ハードコート層12は、他の機能性材料を含んでいてもかまわない。例えば、ハードコート層に導電性材料を含有させることにより、反射防止フィルムに帯電防止性能を付与することができる。
本実施形態の反射防止フィルム1では、透明基材11上に対し、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを含む塗液を塗布し、必要に応じて乾燥をおこない、電離放射線を照射することによりハードコート層12が形成される。
【0032】
透明基材11上に、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを主成分とする重合体からなるハードコート層12が形成される。更に、前記ハードコート層12上に、低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率層形成用塗液を塗布した後、乾燥し、電離放射線を照射することにより低屈折率層13を形成することにより反射防止フィルムが作製することができる。
【0033】
(低屈折率層)
次に、実施形態の反射防止フィルムにおける低屈折率層13について説明する。
反射防止フィルムにあっては、低屈折率層単層で構成される単層構造の反射防止層や、低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造の反射防止層を形成することが知られている。本実施形態の反射防止フィルム1にあっては、反射防止層が、バインダマトリックス中に低屈折率粒子を含む低屈折率層単層構造であることが好ましい。
【0034】
前記反射防止層を形成する方法としては、反射防止層形成用塗液を防眩層表面に塗布し反射防止層を形成する湿式成膜法による方法と、真空蒸着法やスパッタリング法やCVD法といった真空中で反射防止層を形成する真空成膜法による方法に分けられる。
低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造の反射防止層を形成する場合、形成する高屈折率層、低屈折率層の膜厚を精密に制御する必要があり、真空成膜法により形成する必要がある。本実施形態の反射防止フィルムにあっては、低屈折率粒子とバインダマトリックスを含む低屈折率塗液を用い、湿式成膜法により反射防止フィルムを形成することにより、反射防止フィルムを製造することができる。
【0035】
このとき、低屈折率層単層は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設形成される。
低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率層形成用塗液を、ハードコート層が形成された透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いた塗工方法を使用できる。
【0036】
低屈折率層形成用塗液がハードコート層上に塗布された後、ハードコート層上の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。本実施形態の反射防止フィルムの製造方法としては、乾燥工程における塗膜の乾燥温度が、主溶媒の沸点−60℃以上主溶媒の沸点+20℃以下の範囲内であることが好ましい。
なお、本実施形態において主溶媒の沸点とは低屈折率層形成用塗液に含まれる溶媒が1種類のときはその溶媒の沸点である。低屈折率層形成用塗液に含まれる溶媒が2種類以上のときは、主溶媒の沸点は重量割合がもっとも大きい溶媒の沸点である。また、低屈折率層形成用塗液に含まれる溶媒が2種類以上であって、重量割合がもっとも大きい溶媒が2種類以上あるときは、重量割合がもっとも大きい溶媒のうち沸点の高いほうの溶媒を主溶媒の沸点とする。
【0037】
乾燥温度が低屈折率層の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点−60℃を下回る場合には、溶媒の乾燥が不十分であり低屈折率層に含まれるシリコーン材料成分がフィルム上に残ってしまい、低屈折率層の防汚性と耐擦傷性が低下してしまう。一方、乾燥温度が低屈折率層の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点+20℃を上回る場合には、製造コストが高くなり、また熱によって反射防止フィルムに熱シワと呼ばれるシワが発生してしまう場合がある。
【0038】
低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率層形成用塗液を、ハードコート層12が形成された透明基材11上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、低屈折率層13が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0039】
本実施形態に係る反射防止フィルムの製造方法は、紫外線照射工程において、照射される紫外線の積算光量を200mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内とすることが好ましい。照射される紫外線の積算光量が200mJ/cm未満の場合は、硬化が不十分であり、低屈折率層の耐擦傷性が低下してしまう。一方、照射される紫外線の積算光量が400mJ/cmを超える場合であっては、製造コストが高くなってしまう。
【0040】
本実施形態の反射防止フィルムは、低屈折率層13の表面での平均視感反射率が0.3%以上から0.7%以下であることが好ましい。低屈折率層13の表面の平均視感反射率は低いほど、優れた反射防止機能を備える。
低屈折率層13の表面での平均視感反射率が0.7%を超える場合にあっては、十分な反射防止機能を備える反射防止フィルムとすることができなくなってしまう。一方、低屈折率層13の表面での平均視感反射率を0.3%未満の反射防止フィルムを低屈折率層単層で実現することは困難である。
【0041】
本実施形態の反射防止フィルム1の分光反射率は、反射防止フィルムの低屈折率層13と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層13の表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。平均視感反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0042】
本実施形態の反射防止フィルムのヘイズを0.2%以下とすることにより、明所コントラストの高い反射防止フィルムとすることができる。ヘイズが0.2%を超える場合には、散乱による透過損失によって暗所での黒表示させた際の光モレを見かけ上抑制することが可能となるが、明所での黒表示の際に散乱によって黒表示が白ボケしてコントラストが低下してしまう。
【0043】
反射防止フィルムの全光線透過率を95.0%以上98.0%以下とすることにより、コントラストを良好なものとすることができる。反射防止フィルムの全光線透過率が95.0%に満たない場合にあっては、白表示した際の白輝度が低下し、コントラストが低下してしまう。一方、裏面反射等を考慮すると全光線透過率98.0%を超える反射防止フィルムを作製することは実質的に困難であり、本発明の反射防止フィルムにあっては全光線透過率98.0%以下であることを特徴とする。
【0044】
なお、本実施形態の反射防止フィルムは、必要に応じて、帯電防止性能、電磁波シールド性能、赤外線吸収性能、紫外線吸収性能、色補正性能等を有する機能層が設けられていてもよい。これらの機能層としては、帯電防止層、電磁波遮蔽層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等が挙げられる。また、本発明にあっては、各種層間の接着性向上のために、各層間にプライマー層や接着層等を設けても良い。
【0045】
(ディスプレイ及び偏光板)
本実施形態の反射防止フィルム1は、ディスプレイ表面に好適に用いることができる。ディスプレイとしてはLCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等を挙げることができる。また、ディスプレイ内部に用いることもできる。以下に本実施形態の反射防止フィルム1を液晶ディスプレイの部材としての偏光板に用いる場合について説明する。
本実施形態の偏光板は、透明基材11におけるハードコート層形成面と反対側の面に、偏光層と透明基材を順に備える。本実施形態の偏光板は、偏光層が2枚の透明基材で狭持された構造をとる。
【0046】
また、透過型液晶ディスプレイにおいては、バックライトユニット、偏光板、液晶セル、偏光板、反射防止フィルム1をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム1の反射防止層形成面側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
前記バックライトユニットは、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セルを挟むように設けられる偏光板にあっては、透明基材間に偏光層を挟持した構造となっている。
【0047】
また、本実施形態の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。なお、これらは公知のものを使用できる。
【実施例】
【0048】
以下に、本発明に基づく実施形態を採用した実施例により、さらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
以下の(調整例1)〜(調整例13)の低屈折率コーティング剤を調整した後、それぞれの低屈折率層形成用塗液1〜13を作製し、(実施例1)〜(実施例12)、(比較例1)の反射防止フィルムを作製した。
【0049】
<調整例1>
(低屈折率コーティング剤1)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子80重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液1を作製した。なお、MIBK(メチルイソブチルケトン)の沸点は115℃であり、t−BuOH(t−ブタノール)の沸点は142℃であり、シクロヘキサノンの沸点は156℃である。
【0050】
<調整例2>
(低屈折率コーティング剤2)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液2を作製した。
【0051】
<調整例3>
(低屈折率コーティング剤3)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子100重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、(フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液3を作製した。
【0052】
<調整例4>
(低屈折率コーティング剤4)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)30重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液4を作製した。
【0053】
<調整例5>
(低屈折率コーティング剤5)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)50重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液5を作製した。
【0054】
<調整例6>
(低屈折率コーティング剤6)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤0.5重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液6を作製した。
【0055】
<調整例7>
(低屈折率コーティング剤7)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1.5重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液7を作製した。
【0056】
<調整例8>
(低屈折率コーティング剤8)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤0.5重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液8を作製した。
【0057】
<調整例9>
(低屈折率コーティング剤9)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1.5重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液9を作製した。
【0058】
<調整例10>
(低屈折率コーティング剤10)
フッ素ポリマー(分子量2000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1.5重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液10を作製した。
【0059】
<調整例11>
(低屈折率コーティング剤11)
フッ素ポリマー(分子量1000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量2000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1.5重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液11を作製した。
【0060】
<調整例12>
(低屈折率コーティング剤12)
フッ素ポリマー(分子量2000000)と、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量2000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1.5重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液12を作製した。
【0061】
<比較例1>
(低屈折率コーティング剤13)
フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子90重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマー(分子量1000)40重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤1重量部と、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤1重量部になるよう組み合わせて調液し、MIBK:t−BuOH:シクロヘキサノン=20:55:25を加え、3.5wt%の低屈折率層形成用塗液13を作製した。
【0062】
(低屈折率層の形成)
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを硬化させたハードコート層を備えるトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム製:膜厚80μm)上に、前記(低屈折率コーティング剤1)〜(低屈折率コーティング剤13)で作製した低屈折率層形成用塗液をそれぞれ塗布し、80℃・40秒オーブンで乾燥し、膜厚が100nmとなるように塗布した。乾燥後、窒素パージ下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量380mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層を形成し、下記表1及び表2中に示す(実施例1)〜(実施例12)、及び(比較例1)の反射防止フィルムを作製した。
【0063】
前記の(実施例1)〜(実施例12)、(比較例1)で得られた反射防止フィルムについて、以下の方法で評価をおこなった。
(1)光学特性
「分光反射率・平均視感反射率」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
「ヘイズ値および全光線透過率」
得られた反射防止フィルムについて、写像性測定器[日本電色工業社製、NDH−2000]を使用してヘイズ値、及び全光線透過率を測定した。
【0064】
(2)防汚性
「接触角測定」
接触角計〔CA−X型:協和界面科学社製〕を用いて、0.9μlの液滴を針先に作り、これを基材(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体が接する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。液体には、蒸留水を使用した。
【0065】
「油性ペン(マッキー、マジック)の拭取り性」
基材表面に付着した油性ペンをティッシュペーパー〔エリエール社製〕で拭き取り、その取れ易さを目視評価した。判定基準を以下に示す。
○:油性ペンを容易に拭き取ることが出来る。
△:油性ペンを拭き取れる。
×:油性ペンを拭き取ることが出来ない
【0066】
(3)機械特性
「耐擦傷性試験」
基材表面をスチールウール〔ボンスター#0000:日本スチールウール社製〕により200g/cm、300g/cm、400g/cm、500g/cmでそれぞれ10回擦り、傷の有無を目視評価した(スチールウール試験)。
判定基準を以下に示す。
○:傷なし
×:傷あり
【0067】
(4)ブリードアウト
塗工表面をティッシュペーパー〔エリエール社製〕で拭取り、拭取ることができるかを目視評価した。
判定基準を以下に示す。
○:ブリードなし(拭取れない)
×:ブリードあり(拭取れる)
結果を表1及び表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1から分かるように、(実施例2)で反射率が低く、機械特性、防汚性の優れた低屈折率層を得ることができた。
フッ素ポリマー100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の添加量が80重量部であると平均視感反射率は0.7%以上となってしまう。また低屈折率ナノ微粒子添加量が100重量部であると耐擦傷性試験において400g/cm荷重で傷が生じてしまう。低屈折率ナノ微粒子添加量に関して反射率と機械特性はトレードオフの関係にある。このことから十分な光学特性と機械特性を備えた反射防止フィルムを作成するためには、フッ素ポリマー100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子添加量が80重量部より大きく且つ100重量部未満である必要であることがわかる。
【0071】
また、フッ素ポリマー100重量部に対して、アクリルモノマーの添加量が30重量部であると耐擦傷性試験において400g/cm荷重で傷が生じてしまう。また低屈折率ナノ微粒子添加量が50重量部であると平均視感反射率は0.7%以上となってしまう。アクリルモノマーの添加量に関して反射率と機械特性はトレードオフの関係にある。このことから十分な光学特性と機械特性を備えた反射防止フィルムを作成するためには、フッ素ポリマー100重量部に対してアクリルモノマーの添加量が30重量部より大きく且つ50重量部未満である必要であることがわかる。
【0072】
また、フッ素ポリマー100重量部に対して、フッ素系添加剤の添加量が0.5重量部であると十分な防汚性が発現しない。またフッ素系添加剤が1.5重量部であるとブリードが生じてしまう。シリコーン系添加剤添加量に関して防汚性とブリードはトレードオフの関係にある。このことから十分な防汚性を備えたブリードが発生しない反射防止フィルムを作成するためには、フッ素ポリマー100重量部に対してフッ素系添加剤の添加量が0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満である必要であることがわかる。
【0073】
同様にフッ素ポリマー100重量部に対して、シリコーン系添加剤の添加量が0.5重量部であると十分な防汚性が発現しない。またシリコーン系添加剤が1.5重量部であるとブリードが生じてしまう。シリコーン系材料添加量に関して防汚性とブリードはトレードオフの関係にある。このことから十分な防汚性を備えたブリードが発生しない反射防止フィルムを作成するためには、フッ素ポリマー100重量部に対してシリコーン系添加剤の添加量が0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満である必要であることがわかる。
また表2から分かるように、フッ素ポリマーの平均分子量が1000000を超える添加は溶解性が悪くなるため塗料化は困難である。また、アクリルモノマーの平均分子量が1000を超える添加も溶剤溶解性が悪くなるため塗料化は困難である。
【0074】
以上のように、本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層に、フッ素ポリマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し80重量部より大きく且つ100重量部未満の低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマー100重量部に対し30重量より大きく且つ50重量部未満のアクリルモノマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のフッ素系添加剤と、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のシリコーン系添加剤とを添加し、主溶媒の沸点の−60℃以上前記主溶媒の沸点の+20℃以下の範囲内の乾燥温度で乾燥し、積算光量が200mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内で紫外線を照射することにより形成する結果、平均視感反射率0.7%以下という低屈折率光学特性と優れた防汚性、優れた機械強度とを兼備した反射防止フィルムを形成できるものである。すなわち、本発明の反射防止フィルムはディスプレイなどの最外層に配置されることに優れたものである。
【符号の説明】
【0075】
1 反射防止フィルム
11 透明基材
12 ハードコート層
13 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に対し、ハードコート層と低屈折率層とを積層した反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体から形成され、
前記低屈折率層は、低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマーと、アクリルモノマーと、フッ素系添加剤と、シリコーン系添加剤とを含有している低屈折率コーティング剤から形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層は、フッ素ポリマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し80重量部より大きく且つ100重量部未満の低屈折率ナノ微粒子と、フッ素ポリマー100重量部に対し30重量より大きく且つ50重量部未満のアクリルモノマーと、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のフッ素系添加剤と、フッ素ポリマー100重量部に対し0.5重量部より大きく且つ1.5重量部未満のシリコーン系添加剤とを含有してなる低屈折率コーティング剤から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記フッ素ポリマーの平均分子量が1500000以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記アクリルモノマーの平均分子量が1500以下であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記低屈折率コーティング剤の屈折率は、1.30以上1.40以下の範囲であり、
低屈折率層の屈折率は、1.30以上1.45以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
平均視感反射率が0.3%以上0.7%以下であり、全光線透過率が95.0%以上98.0%以下であり、且つ、ヘイズが0.01%以上0.20%以下の範囲内となっている反射防止フィルムであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折率層は、主溶媒の沸点の−60℃以上+20℃以下の範囲内の乾燥温度で乾燥し、更に積算光量が200mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内で紫外線照射することで製造されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムにおける低屈折率層を形成していない低屈折率層非形成面側に積層された第1の偏光板とを備えたことを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項9】
観察者側から、請求項8に記載の反射防止性偏光板、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットがこの順に配置され、前記反射防止性偏光板の低屈折率層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−63687(P2012−63687A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209382(P2010−209382)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】