説明

反射防止フィルム、表示装置および低屈折率コーティング剤

【課題】本発明は十分な光学特性および機械特性を備えた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明者は、紫外線硬化型樹脂における光重合開始剤の量が、耐擦傷性だけでなく反射防止フィルムの光学特性である反射率にも影響を及ぼすことを見出し、本発明に至った。本発明は、「紫外線硬化型材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、を含む低屈折率コーティング剤」を用いて低屈折率層を形成することにより、十分な光学特性および機械特性を備えた反射防止フィルムを提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止のため用いられる反射防止フィルム、該反射防止フィルムを組み込んだ表示装置、および該反射防止フィルムを専ら製造するために用いられる低屈折率コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイは、室内外での使用を問わず、外光などが入射する環境下で使用される。外光などの入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することが求められている。
【0003】
一般に、反射防止機能は、透明基材上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と低屈折率層の繰り返し構造による多層構造の反射防止層を形成することで得られる。これらの多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といった乾式成膜法により形成することができる。
【0004】
乾式成膜法を用いて反射防止層を形成する場合にあっては、低屈折率層、高屈折率層の膜厚を精密に制御できるという利点がある一方、成膜を真空中でおこなうため、生産性が低く、大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として、大面積化、連続生産が可能である塗液を用いた湿式成膜法による反射防止層の生産が注目されている。
【0005】
例えば、湿式成膜法により反射防止フィルムを製造する方法として、低屈折率ナノ微粒子を添加した塗液を用いて低屈折率層を形成することが提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、反射防止フィルムは、反射防止機能以外の機能を発揮する機能の複合化が求められている。特に、反射防止フィルムはディスプレイの外面に配置されることから、強度強化のための十分な機械特性などが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−81743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、本発明は十分な光学特性および機械特性を備えた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、透明基材と、前記透明基材上に積層されたハードコート層と、前記ハードコート層上に積層された低屈折率層と、を備え、前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体から形成されたハードコート層であり、前記低屈折率層は、低屈折率コーティング剤より形成された低屈折率層であり、前記低屈折率コーティング剤は、紫外線硬化型材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、を含む低屈折率コーティング剤であることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0010】
また、前記低屈折率コーティング剤の屈折率が、1.30以上1.40以下の範囲であり、前記低屈折率層の屈折率が1.30以上1.45以下の範囲であってもよい。
【0011】
また、平均視感反射率が0.4%以上0.7%未満であり、全光線透過率が95%以上98%以下であり、ヘイズが0.01%以上0.20%以下であってもよい。
【0012】
また、更に、前記反射防止フィルムの前記透明基材の低屈折率層非形成面側に積層された偏光層と、前記偏向層上に積層された第二透明基材と、を備えてもよい。
【0013】
本発明の一実施形態は、請求項4に記載の反射防止フィルムと、液晶セルと、第二偏光板と、バックライトユニットと、をこの順に備え、前記低屈折率層が最表面に位置することを特徴とする表示装置である。
【0014】
本発明の一実施形態は、紫外線硬化型材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、を含むことを特徴とする低屈折率コーティング剤である。
【発明の効果】
【0015】
本発明者は、紫外線硬化型樹脂における光重合開始剤の量が、耐擦傷性だけでなく反射防止フィルムの光学特性である反射率にも影響を及ぼすことを見出し、本発明に至った。本発明は、「紫外線硬化型材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、を含む低屈折率コーティング剤」を用いて低屈折率層を形成することにより、十分な光学特性と機械特性、防汚性を備え、かつ、ブリードアウトのない反射防止フィルムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の反射防止フィルムの概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの概略断面図である。
【図3】本発明の表示装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の反射防止フィルムの製造方法について説明する。
【0018】
図1に本発明の反射防止フィルムの模式断面図を示した。
本発明の反射防止フィルム(1)にあっては、透明基材(11)上にハードコート層(12)及び該ハードコート層(12)上に低屈折率層(13)を備える。ハードコート層(12)は、電離放射線硬化型材料を硬化することにより形成され、主に耐擦傷性を付与する。低屈折率層(13)は反射防止フィルムの最表層に設けられ、反射防止機能、防汚機能、耐擦傷機能を付与する。
【0019】
本発明の反射防止フィルムは、透明基材上に少なくともハードコート層、低屈折率層となる順に備えられており、低屈折率層は、紫外線硬化型材料と、低屈折率ナノ微粒子と、シリコーン系材料と、光重合開始剤とを含有する低屈折率コーティング剤からなる低屈折率コーティング剤から形成される。
【0020】
まず、本発明の低屈折率層に用いられる低屈折率コーティング剤について説明する。
【0021】
低屈折率コーティング剤にあっては、紫外線硬化型材料と、低屈折率ナノ微粒子と、シリコーン系材料と、光重合開始剤を含有する。
【0022】
低屈折率コーティング剤に加えられる紫外線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0023】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0026】
低屈折率コーティング剤に含まれる低屈折率ナノ微粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、Na3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)、シリカ等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、多孔質シリカ粒子、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0027】
なお、平均粒径にあっては、1nm以上100nm以下であることが好ましい。粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層が白化して反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による低屈折率層における粒子の凝集等の問題が生じる。
【0028】
平均粒径とは、溶液中の粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50 メジアン径)を意味する。
【0029】
また、内部に空隙を有するシリカ粒子の空隙としては、20nm以上50nm以下であることが好ましい。空隙が50nmを超える場合、十分な耐擦傷性が得ることができずディスプレイ表面に設ける反射防止フィルムに適さなくなってしまうためである。一方、空隙が20nm未満の場合、屈折率が1.45以上となってしまい平均視感反射率が0.7%以上となるためである。
【0030】
なお、内部に空隙を有するシリカ粒子の一例としては、球状の形状を保持したまま、硝子の屈折率1.45に比べて低い屈折率1.30であり、半径20nm以上25nm以下、密度(ρ1)の球状の構造が中心部分にあり、周囲を厚み10nm以上15nm以下の異なる密度(ρ2)の層が覆っており、(ρ1/ρ2)の値が0.5、0.1、0.0を示し、シリカ粒子の中心部分は外部のシリカの1/10程度の密度となるような構造モデルである。
【0031】
低屈折率コーティング剤に用いられるシリコーン系材料とは、シリコーン結合を持つ材料のことをいう。例えば、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等を挙げることができる。
【0032】
低屈折率コーティング剤に用いられる光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等の光重合開始剤が挙げられる。
【0033】
また、低屈折率コーティング剤における材料の割合としては、紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が40重量部より多く、70重量部未満の範囲内であり、且つ、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であり、且つ、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2重量部より多く、3重量部未満の範囲内の範囲内であることが好ましい。
【0034】
また、本発明の低屈折率コーティング剤における低屈折率ナノ微粒子の割合にあっては、紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の添加量は40重量部より多く、70重量部未満の範囲内が好ましい。これは、40重量部以下であると平均視感反射率は0.7%以上となり、また70重量部を超えると機械特性(耐擦傷性能)が低下し、耐擦傷性試験において200g/cm荷重で傷が生じてしまうためである。
【0035】
また、低屈折率コーティング剤におけるシリコーン系材料の割合にあっては、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の添加量は、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内が好ましい。これは、0.5重量部以下であると十分な防汚性が得られなくなるためであり、1.5重量部以上であるとブリードアウトするためである。なお、ブリードアウトとは、添加物がフィルム表面に凝集することである。
【0036】
また、低屈折率コーティング剤における光重合開始剤の割合にあっては、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2重量部より多く、3重量部未満の範囲内が好ましい。これは、2重量部以下であると機械特性(耐擦傷性能)が低下し、耐擦傷性試験において200g/cm荷重で傷が生じてしまうためであり、3重量部以上であると平均視感反射率は0.7%以上となるためである。
【0037】
低屈折率コーティング剤には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、低屈折率コーティング剤には添加剤として、表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることもできる。
【0038】
次に、本発明の反射防止フィルムに用いる透明基材について説明する。
【0039】
透明基材としては、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。さらに、これらの有機高分子に公知の添加剤、例えば帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものも使用できる。また、透明基材は上記の有機高分子から選ばれる1種または2種以上の混合物、または重合体からなるものでもよく、複数の層を積層させたものであってもよい。
【0040】
中でも、トリアセチルセルロースフィルムは複屈折が少なく、透明性が良好であることから、本発明の反射防止フィルムを液晶ディスプレイに用いるにあっては好適に使用することができる。トリアセチルセルロースフィルムの屈折率は約1.50であって、他の透明基材と比較して屈折率が低い。例えば、透明基材として広範に用いられるポリエチレンテレフタレートフィルムは、1.60程度である。
【0041】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、透明基材と低屈折率層との間にハードコート層を備えることが好ましい。ハードコート層を備えることにより、耐擦傷性に優れた反射防止フィルムとすることができる。
【0042】
次に、本発明の反射防止フィルムに用いるハードコート層について説明をする。
【0043】
本発明の反射防止フィルムにおけるハードコート層にあっては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを主成分とする重合体からなることが好ましい。
【0044】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーとしては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート、イソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0045】
本発明の反射防止フィルムにあっては、透明基材上に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを含む塗液を透明基材上に塗布し、必要に応じて乾燥をおこない、電離放射線を照射することによりハードコート層が形成される。
【0046】
本発明にあっては透明基材上に、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する官能性モノマーを主成分とする重合体からなるハードコート層が形成され、前記ハードコート層上に、低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率コーティング剤を塗布した後、乾燥し、電離放射線を照射することにより低屈折率層を形成することにより反射防止フィルムが作製することができる。
【0047】
また、本発明の反射防止フィルムにおいて、ハードコート層には導電性材料を添加してもよい。ハードコート層に導電性材料を添加することにより、帯電防止機能を付与することができる。導電性材料としては、四級アンモニウム塩材料、金属酸化物粒子、導電性高分子等を用いることができる。
【0048】
導電性材料である四級アンモニウム塩材料としては、四級アンモニウム塩材料を官能基として分子内に含む材料を好適に用いることができる。四級アンモニウム塩材料は−N+ X−の構造を示し、四級アンモニウムカチオン(−N+)とアニオン(X−)を備えることによりハードコート層に導電性を発現させる。また、導電性材料として用いられる金属酸化物粒子としては、酸化ジルコニウム、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、スズ含有酸化インジウム、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、アルミニウム含有酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン含有酸化亜鉛及びインジウム含有酸化亜鉛から選択される1種又は2種以上の金属酸化物を主成とする導電性を有する金属酸化物粒子を用いることができる。また、導電性材料として用いられる導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンサルファイド、ポリ(1,6−ヘプタジイン)、ポリビフェニレン(ポリパラフェニレン)、ポリパラフィニレンスルフィド、ポリフェニルアセチレン、ポリ(2,5−チエニレン)及びこれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0049】
次に、本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層について説明する。
【0050】
反射防止フィルムにあっては、低屈折率層単層で構成される単層構造の反射防止層や、低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造の反射防止層を形成することが知られている。本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止層が、バインダマトリックス中に低屈折率粒子を含む低屈折率層単層構造である。
【0051】
また、反射防止層を形成する方法としては、反射防止層形成用塗液を防眩層表面に塗布し反射防止層を形成する湿式成膜法による方法と、真空蒸着法やスパッタリング法やCVD法といった真空中で反射防止層を形成する真空成膜法による方法に分けられる。低屈折率層と高屈折率層の繰り返し構造からなる積層構造の反射防止層を形成するにあっては、形成する高屈折率層、低屈折率層の膜厚を精密に制御する必要があり、真空成膜法により形成する必要がある。本発明の反射防止フィルムにあっては、低屈折率粒子とバインダマトリックスを含む低屈折率塗液を用い、湿式成膜法により反射防止フィルムを形成することにより、安価に反射防止フィルムを製造することができる。
【0052】
このとき、低屈折率層単層は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設形成される。具体的には、低屈折率層の光学膜厚は50nm以上200nm以下の範囲内となるように設計される。
【0053】
低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率コーティング剤を、ハードコート層が形成された透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ダイコーターを用いた塗工方法を使用できる。
【0054】
低屈折率コーティング剤を用いた低屈折率コーティング剤を、ハードコート層が形成された透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、低屈折率層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。
【0055】
低屈折率コーティング剤がハードコート層上に塗布された後、ハードコート層上の塗膜中の溶媒を除去するために乾燥工程が設けられる。本発明の実施の形態に係る反射防止フィルムの製造方法としては、乾燥工程における塗膜の乾燥温度が、主溶媒の沸点−20℃以上主溶媒の沸点+20℃以下の範囲内であることが好ましい。
【0056】
乾燥温度が低屈折率層の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点−20℃を下回る場合には、溶媒の乾燥が不十分であり低屈折率層に含まれるシリコーン材料成分がフィルム上に残ってしまい、低屈折率層の防汚性と耐擦傷性が低下してしまう。一方、乾燥温度が低屈折率層の形成用塗液に用いられる主溶媒の沸点+20℃を上回る場合には、製造コストが高くなり、また熱によって反射防止フィルムに熱シワと呼ばれるシワが発生してしまう場合がある。
【0057】
低屈折率層は、ハードコート層上の塗膜に対し、紫外線を照射することにより塗膜は硬化され形成される。紫外線を発生する光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。
【0058】
また、本発明の反射防止フィルムの製造にあたり、紫外線照射工程において、照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内であることが好ましい。照射される紫外線の積算光量が100mJ/cm未満の場合は、硬化が不十分であり、低屈折率層の耐擦傷性が低下してしまう。一方、照射される紫外線の積算光量が400mJ/cmを超える場合であっては、製造コストが高くなってしまう。
【0059】
本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層表面での平均視感反射率が0.4%以上から0.7%以下であることが好ましい。低屈折率層表面の平均視感反射率は低いほど、優れた反射防止機能を備える。
【0060】
低屈折率層表面での平均視感反射率が0.7%を超える場合にあっては、十分な反射防止機能を備える反射防止フィルムとすることができなくなってしまう。一方、低屈折率層表面での平均視感反射率を0.4%未満の反射防止フィルムを低屈折率層単層で実現することは困難である。
【0061】
本発明の反射防止フィルムの分光反射率は、反射防止フィルムの低屈折率層と反対側の面を黒色塗料で艶消し処理した後におこなわれ、低屈折率層表面に対しての垂直方向から入射角度は5度に設定され、光源としてC光源を用い、2度視野の条件下で求められる。平均視感反射率は、可視光の各波長の反射率を比視感度により校正し、平均した反射率の値である。このとき、比視感度は明所視標準比視感度が用いられる。
【0062】
本発明の反射防止フィルムのヘイズを0.01%以上0.2%以下の範囲内とすることが好ましい。本発明の反射防止フィルムのヘイズを0.2%以下とすることにより、明所コントラストの高い反射防止フィルムとすることができる。ヘイズが0.2%を超える場合には、散乱による透過損失によって暗所での黒表示させた際の光モレを見かけ上抑制することが可能となるが、明所での黒表示の際に散乱によって黒表示が白ボケしてコントラストが低下してしまう。反射防止フィルムのヘイズは小さいほうが好ましいが、0.01%未満の反射防止フィルムを作製することは困難である。
【0063】
反射防止フィルムの全光線透過率を95%以上98%以下とすることにより、コントラストを良好なものとすることができる。反射防止フィルムの全光線透過率が95%に満たない場合にあっては、白表示した際の白輝度が低下し、コントラストが低下してしまう。一方、裏面反射等を考慮すると全光線透過率98%を超える反射防止フィルムを作製することは実質的に困難であり、本発明の反射防止フィルムにあっては全光線透過率98%以下であることが好ましい。
【0064】
また、更に、前記反射防止フィルムの前記透明基材の低屈折率層非形成面側に積層された偏光層と、前記偏向層上に積層された第二透明基材と、を備えることが好ましい。偏向層と第二透明基材をそなえることにより、液晶ディスプレイにおける偏向板として用いることが出来る。
【0065】
図2に、本発明の反射防止フィルムを偏光板として用いた例における概略断面図を示す。低屈折率層(13)、ハードコート層(12)、透明基材(11)がこの順で積層された反射防止フィルム(1)の透明基材(11)側に、偏光層(22)、第二透明基材(22)をこの順で積層し、本発明の反射防止フィルム(偏光板)(2)とする。
【0066】
本発明の反射防止フィルムを透過型液晶ディスプレイ表面に設けるにあっては、反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の透明基材に偏光層および第二透明基材が積層する。本発明の反射防止フィルム(偏光板)にあっては、反射防止フィルムの低屈折率層形成面と反対側の面に、該透明基材側から順に偏光層及び第二透明基材が積層される。偏光層としては、例えば、ヨウ素を加えた延伸ポリビニルアルコール(PVA)を用いることができる。また、もう一方の透明基材としては、反射防止フィルムに用いる透明基材を用いることができ、トリアセチルセルロースからなるフィルムを好適に用いることができる。
【0067】
図3に本発明の反射防止フィルムを偏光板として用いた表示装置(透過型液晶ディスプレイ)の模式断面図を示す。
本発明の表示装置にあっては、バックライトユニット(5)、第二偏光板(4)、液晶セル(3)、本発明の反射防止フィルム(偏光板)(2)をこの順に備えている。このとき、本発明の反射防止フィルム(偏光板)(2)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
また、バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる。第二偏光板(4)は、第二偏光板偏光層(42)を、第二偏光板第一透明基材(41)および第二偏光板第二透明基材(43)で挟む構成となる。
【0068】
また、本発明の表示装置にあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。また、バックライトユニット、偏光板、液晶セル等は公知のものを使用できる。
【実施例】
【0069】
<実施例1>
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを硬化させたハードコート層を備えるトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム製:膜厚80μm)上に、低屈折率コーティング剤を塗布し、70℃・40秒オーブンで乾燥し、膜厚が100nmとなるように塗布した。乾燥後、窒素パージ下で紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量380mJ/mで紫外線照射をおこなって硬化させて低屈折率層を形成し、本発明の反射防止フィルムを作製した。
【0070】
なお、本実施例1において低屈折率コーティング剤は以下の組成とした。
(低屈折率コーティング剤1)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が40重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0071】
<実施例2>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤2)とした。
(低屈折率コーティング剤2)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が50重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0072】
<実施例3>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤3)とした。
(低屈折率コーティング剤3)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0073】
<実施例4>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤4)とした。
(低屈折率コーティング剤4)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が70重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0074】
<実施例5>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤5)とした。
(低屈折率コーティング剤5)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が0.5重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0075】
<実施例6>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤6)とした。
(低屈折率コーティング剤6)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が0.75重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0076】
<実施例7>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤7)とした。
(低屈折率コーティング剤7)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の含有量が1.5重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の含有量が2.5重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤を作製した。
【0077】
<実施例8>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤8)とした。
(低屈折率コーティング剤8)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン化合物の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤8を作製した。
【0078】
<実施例9>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤9)とした。
(低屈折率コーティング剤9)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン化合物の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2.2重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤9を作製した。
【0079】
<実施例10>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤10)とした。
(低屈折率コーティング剤10)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン化合物の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2.8重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤10を作製した。
【0080】
<実施例11>
実施例1と同様に反射防止フィルムを製造した。ただし、用いた低屈折率コーティング剤を、下記組成の(低屈折率コーティング剤11)とした。
(低屈折率コーティング剤11)
紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の含有量が60重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン化合物の含有量が1重量部、紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が3重量部になるよう組み合わせて調液し、IPA:MIBK:DAA=77:8:15を加え、3.4wt%の低屈折率コーティング剤11を作製した。
【0081】
<評価>
前記の(実施例1)〜(実施例11)で得られた反射防止フィルムについて、以下の方法で評価をおこなった。
【0082】
(1)光学特性
「分光反射率・平均視感反射率」
得られた反射防止フィルムの低屈折率層表面について、自動分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。
【0083】
「ヘイズ値および全光線透過率」
得られた反射防止フィルムについて、写像性測定器[日本電色工業社製、NDH−2000]を使用してヘイズ値、及び全光線透過率を測定した。
【0084】
(2)防汚性
「接触角測定」
接触角計〔CA−X型:協和界面科学社製〕を用いて、0.9μlの液滴を針先に作り、これを基材(固体)の表面に接触させて液滴を作った。接触角とは、固体と液体が接する点における液体表面に対する接線と固体表面がなす角で、液体を含む方の角度で定義した。液体には、蒸留水を使用した。
【0085】
「油性ペン(マッキー、マジック)の拭取り性」
基材表面に付着した油性ペンをティッシュペーパー〔エリエール社製〕で拭き取り、その取れ易さを目視評価した。判定基準を以下に示す。
○:油性ペンを容易に拭き取ることが出来る。
△:油性ペンを拭き取れる。
×:油性ペンを拭き取ることが出来ない
【0086】
(3)機械特性
「耐擦傷性試験」
基材表面をスチールウール〔ボンスター#0000:日本スチールウール社製〕により200g/cm、300g/cm、400g/cm、500g/cmでそれぞれ10回擦り、傷の有無を目視評価した(スチールウール試験)。
判定基準を以下に示す。
○:傷なし
×:傷あり
【0087】
(4)ブリードアウトの確認
塗工表面をティッシュペーパー〔エリエール社製〕で拭取り、塗工表面において拭き取った箇所と拭き取ってない箇所を蛍光灯下で目視で確認することによりブリードアウトしているかを評価した。
判定基準を以下に示す。
○:ブリードなし(拭き取った箇所が目視により確認できない)
×:ブリードあり(拭き取った箇所が目視により確認できる)
【0088】
以下、表1に評価結果を示す。
【0089】
【表1】

【0090】
(表1)に示すように、(実施例2)(実施例3)で反射率が低く、機械特性の優れた低屈折率層を得ることができた。紫外線硬化型材料100重量部に対して、低屈折率ナノ微粒子の添加量が40重量部であると平均視感反射率は0.7%以上となってしまう。また低屈折率ナノ微粒子添加量が70重量部であると耐擦傷性試験において200g/cm荷重で傷が生じてしまう。低屈折率ナノ微粒子添加量に関して反射率と機械特性はトレードオフの関係にある。このことから十分な光学特性と機械特性を備えた反射防止フィルムを作成するためには、紫外線硬化型材料100重量部に対して低屈折率ナノ微粒子添加量が40重量部より多く、70重量部未満である必要がわかる。
【0091】
同様に、(実施例3)(実施例6)で防汚性の優れた、ブリードのない低屈折率層を得ることができた。紫外線硬化型材料100重量部に対して、シリコーン系材料の添加量が0.5重量部であると十分な防汚性が発現しない。またシリコーン系材料が1.5重量部であるとブリードが生じてしまう。シリコーン系材料添加量に関して防汚性とブリードはトレードオフの関係にある。このことから十分な防汚性を備えたブリードが発生しない反射防止フィルムを作成するためには、紫外線硬化型材料100重量部に対してシリコーン系材料の添加量が0.5重量部より多く、1.5重量部未満である必要がわかる。
【0092】
同様に、(実施例3)(実施例9)(実施例10)で十分に硬化した機械特性の優れた低屈折率層を得ることができた。紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が2重量部であると耐擦傷性試験において200g/cm荷重で傷が生じてしまう。また紫外線硬化型材料100重量部に対して、光重合開始剤の添加量が3重量部であると平均視感反射率は0.7%以上となってしまう。光重合開始剤の添加量に関して反射率と機械特性はトレードオフの関係にある。このことから、十分な光学特性と機械特性を備えた反射防止フィルムを作成するためには、紫外線硬化型材料100重量部に対して光重合開始剤添加量が2重量部より多く、3重量部未満である必要がわかる。
【0093】
本発明の反射防止フィルムは、低屈折率層に紫外線硬化型材料、低屈折率ナノ微粒子、シリコーン系材料、光重合開始剤を紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内で添加し、主溶媒の沸点の−20℃以上+20℃以下の範囲内の乾燥温度で乾燥し、積算光量が100mJ/cm以上400mJ/cm以下の範囲内で紫外線を照射することにより、平均視感反射率0.7%以下という低屈折率光学特性と優れた防汚性、優れた機械強度とを兼備した反射防止フィルムを形成できるものである。すなわち、本発明の反射防止フィルムはディスプレイなどの最外層に配置されることに優れたものである。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の反射防止フィルムは、反射防止が求められる用途に対して光学部材として広範に用いられることが期待される。例えば、LCD、PDP、CRT、プロジェクションディスプレイ、ELディスプレイ等のディスプレイ、3D表示装置、照明具、建材、などの分野に利用が期待される。
【符号の説明】
【0095】
1……反射防止フィルム
11……透明基材
12……ハードコート層
13……低屈折率層
2……反射防止フィルム(偏光板)
22……第二透明基材
23……偏光層
3……液晶セル
4……第二偏光板
41……第二偏光板第一透明基材
42……第二偏光板偏光層
43……第二偏光板第二透明基材
5……バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に積層されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に積層された低屈折率層と、を備え、
前記ハードコート層は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体から形成されたハードコート層であり、
前記低屈折率層は、低屈折率コーティング剤より形成された低屈折率層であり、
前記低屈折率コーティング剤は、
紫外線硬化型材料と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、
を含む低屈折率コーティング剤であること
を特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率コーティング剤の屈折率が、1.30以上1.40以下の範囲であり、
前記低屈折率層の屈折率が1.30以上1.45以下の範囲であること
を特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
平均視感反射率が0.4%以上0.7%未満であり、
全光線透過率が95%以上98%以下であり、
ヘイズが0.01%以上0.20%以下であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
更に、
前記反射防止フィルムの前記透明基材の低屈折率層非形成面側に積層された偏光層と、 前記偏向層上に積層された第二透明基材と、を備えたこと
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の反射防止フィルムと、液晶セルと、第二偏光板と、バックライトユニットと、をこの順に備え、前記低屈折率層が最表面に位置すること
を特徴とする表示装置。
【請求項6】
紫外線硬化型材料と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、40重量部より多く、70重量部未満の範囲内である低屈折率ナノ微粒子と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、0.5重量部より多く、1.5重量部未満の範囲内であるシリコーン系材料と、
前記紫外線硬化型材料100重量部に対して、2重量部より多く、3重量部未満の範囲内である光重合開始剤と、を含むこと
を特徴とする低屈折率コーティング剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−189754(P2012−189754A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52596(P2011−52596)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】