説明

反射防止フィルムおよびその製造方法

【課題】十分なギラツキ防止性、反射防止性、耐擦傷性、および高い生産性を兼ね備えた反射防止フィルム、及びこれを簡易且つ簡便に製造できる製造方法を提供すること。
【解決手段】透明支持体上に光散乱層と低屈折率層を有し、光散乱層は、平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子を透光性樹脂に分散し、透光性粒子と透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなり、低屈折率層は、架橋性若しくは重合性の官能基を含むバインダーを有してなる硬化性組成物を塗布して形成された屈折率が1.30〜1.55の層である反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関し、更に詳細には、反射防止性と耐擦傷性とが両立されており、さらにはギラツキ防止性にも優れた反射防止フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には透明プラスチックフィルム基材などの透明支持体上に適切な膜厚の、透明支持体より低屈折率の低屈折率層による皮膜を形成することにより作製されている。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において、高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。
【0004】
そこで、材料の屈折率を下げるために、(1)フッ素原子を導入する、(2)密度を下げる(空隙を導入する)という手段が提案されているが、いずれの手段も皮膜強度や下層との界面の密着性が低下し、耐擦傷性が低下するという問題があり、低い屈折率と高い耐擦傷性の両立は困難な課題であった。
【0005】
そこで、耐擦傷性が向上するように、ある程度皮膜強度を高める方法として、特許文献1及び2において、フッ素含有ゾルゲル膜を用いる方法が提案されているが、(1)硬化に長時間加熱を要し、製造の負荷が大きい、(2)鹸化液(アルカリ処理液)に対し耐性が無く、透明プラスチックフィルム基材の表面を鹸化処理する場合に、反射防止フィルム製膜後にできない、などの大きな制約が発生してしまう。
【0006】
一方、特許文献3〜5には、含フッ素ポリマー中にポリシロキサン構造を導入することにより皮膜表面の摩擦係数を下げて耐擦傷性を改良する手段が提案されている。これらの手段は耐擦傷性改良に対してはある程度有効であるが、本質的な皮膜強度および界面密着性が不足している皮膜に対して該手法のみでは十分な耐擦傷性が得られない。
【0007】
更に、近年の画像表示装置の高精細化に伴い、表示画素と光散乱層との相互作用が無視できなくなり、画面が赤、緑、青色にギラついて見えるギラツキが問題となっている。この問題に対しては、特許文献6に記載されている、光散乱層への内部散乱の導入が有効であることが知られている。しかしながら、この提案でも、十分な反射防止性、耐擦傷性、および高い生産性のすべてを満足するものではなかった。
【特許文献1】特開2002−265866号公報
【特許文献2】特開2002−317152号公報
【特許文献3】特開平11−189621号公報
【特許文献4】特開平11−228631号公報
【特許文献5】特開2000−313709号公報
【特許文献6】特開平11−305010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上要するに、反射防止性と高い耐擦傷性とを両立すると共に高い生産性を満たし、更にはギラツキも解消した反射防止フィルムは提案されてないのが現状である。
従って、本発明の目的は、十分なギラツキ防止性、反射防止性、耐擦傷性、および高い生産性を兼ね備えた反射防止フィルム、及び該反射防止フィルムを簡易且つ簡便に製造できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、光散乱層を特定の屈折率の差を有する透光性樹脂及び透光性粒子で構成し、更に透光性粒子の粒径や、低屈折率層をバインダー自体のフッ素含有率の調整や無機微粒子により屈折率を調整することによって、前記目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の構成により、前記目的を達成したものである。
(1) 透明支持体上に少なくとも光散乱層と低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、
該光散乱層は、少なくとも1種の平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子を透光性樹脂に分散してなる層であって、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなる層であり、
前記低屈折率層は、架橋性若しくは重合性の官能基を含むバインダーを含有してなる硬化性組成物を塗布して形成された屈折率が1.30〜1.55の層であることを特徴とする反射防止フィルム。
(2) 前記低屈折率層のバインダーが(A)架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーを含有することを特徴とする(1)に記載の反射防止フィルム。
(3) 前記含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体であることを特徴とする前記(2)に記載の反射防止フィルム。
(4) 前記硬化性組成物が、
(B)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、
(C)平均粒径が前記低屈折率層の厚みの30%以上100%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子、
(D)重合開始剤
を、各々少なくとも1種含有する硬化性組成物であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
(5) 前記硬化性組成物が、
(A)前記含フッ素ポリマー、
(C)平均粒径が前記低屈折率層の厚みの30%以上100%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子、
(E)酸触媒の存在下で製造されてなる、下記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物
を、各々少なくとも1種含有する硬化性組成物であることを特徴とする前記(2)又は(3)に記載の反射防止フィルム。
一般式[A]
(R10m −Si(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
(6) 前記硬化性組成物が、更に
ラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能重合性化合物並びに
(D)重合開始剤を含有する硬化性組成物であることを特徴とする前記(1)〜(5)に記載の反射防止フィルム。
(7) 前記硬化性組成物が、更に下記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する硬化性組成物であることを特徴とする(4)に記載の反射防止フィルム。
一般式[A]
(R10m −Si(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
(8) バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有し、
前記塗布工程は、前記スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、前記光散乱層及び前記低屈折率層の何れか一方、または両方の層を形成するための塗布液を塗布する工程であることを特徴とする、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の反射防止フィルムは、十分な反射防止性を有しながら耐擦傷性、生産性に優れたものである。更には、ギラツキ防止性にも優れたものである。このため、本発明の反射防止フィルムを直接又は該反射防止フィルムを備えた偏光板を介して有する液晶表示装置などのディスプレイ装置は、高精細パネルであってもギラツキや外光の写り込みや背景の写り込みが少なく、極めて視認性が高いものである。
また、本発明の反射防止フィルムの製造方法は、上記反射防止フィルムを簡易且つ簡便に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の反射防止フィルムについて好適な一実施形態の基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本発明の反射防止フィルムの好ましい1実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示す本実施形態の反射防止フィルム1は、透明支持体2と、透明支持対2上に形成された光散乱層3と、そして光散乱層3上に形成された低屈折率層4とからなる。
光散乱層3は、透光性樹脂と透光性樹脂中に分散された透光性粒子5とからなる。
本発明における反射防止フィルムを構成する各層の屈折率は以下の関係を満たすことが好ましい。
光散乱層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
本発明においては、光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、本実施形態においては、1層で形成されたものを例示しているが、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。また、本実施形態のように透明支持体上に直接設けてもよいが、帯電防止層や防湿層等の他の層を介して設けてもよい。
【0012】
本発明の反射防止フィルムは、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計するのが、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成されるので、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99とするのが、反射光の色味がニュートラルとなるので、好ましい。またC光源下での透過光のb*値を0〜3とすると、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差を20以下とすると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0013】
また、本発明の反射防止フィルムは、その光学特性を、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とするのが、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため、好ましい。また、ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とするのが、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成されるので、好ましい。
【0014】
次に、前記低屈折率層について以下に説明する。
<低屈折率層>
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の屈折率は、1.30〜1.55であり、好ましくは1.35〜1.40の範囲である。
屈折率が1.30未満であると、反射防止性能は向上するが、膜の機械強度が低下し、1.55を超えると、反射防止性能が著しく悪化してしまう。
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(I)
(mλ/4)×0.7<n1×d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、前記数式(I)を満たすとは、前記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0015】
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の低屈折率層は、架橋性若しくは重合性の官能基を含むバインダーを有してなる硬化性組成物を塗布して形成された、屈折率が1.30〜1.55に調整された硬化膜である。
硬化性組成物としては、
(1)
(A)架橋性若しくは重合性の官能基を有する含フッ素ポリマー
を含有する組成物、
(2)
(B)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、
(C)中空構造を有する無機微粒子、及び
(D)重合開始剤
を含有する組成物、
を挙げることができる。
また、(1)の含フッ素ポリマーを含有する組成物は、必要に応じて、
(C)中空構造を有する無機微粒子、
(E)オルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物
を含有することが好ましく、これらの成分をすべて含むことがより好ましい。
【0016】
まず(A)含フッ素ポリマーについて説明する。
<含フッ素ポリマー>
前記含フッ素ポリマーは、硬化被膜にした場合の被膜の動摩擦係数が0.03〜0.20、水に対する接触角が90〜120°、純水の滑落角が70°以下であり、熱または電離放射線により架橋するポリマーであるのが、ロールフィルムをウェブ搬送しながら塗布、硬化する場合などにおいて生産性向上の点で好ましい。
また、本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなるので、剥離力は、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難いので、該表面硬度が、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0017】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーは、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含有し、且つ架橋性もしくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーであり、例えば、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物〔例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン〕の加水分解物や脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性単位とを構成単位とする含フッ素共重合体が挙げられる。含フッ素共重合体の場合、主鎖は、炭素原子のみからなるのが好ましい。すなわち、主鎖骨格に酸素原子や窒素原子などを有しないのが好ましい。
【0018】
前記含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、被膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0019】
架橋反応性付与のための構成単位としては主として以下の(a)、(b)、(c)で示される単位が挙げられる。
(a):グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、
(b):カルボキシル基やヒドロキシル基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、
(c):分子内に上記(a)、(b)の官能基と反応する基とそれとは別に架橋性官能基を有する化合物を、上記(a)、(b)の構成単位と反応させて得られる構成単位(例えばヒドロキシル基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で合成できる構成単位)。
【0020】
上記(c)の構成単位は、特に本発明においては、該架橋性官能基が光重合性基であることが好ましい。ここに、光重合性基としては、例えば(メタ)アクリロイル基、アルケニル基、シンナモイル基、シンナミリデンアセチル基、ベンザルアセトフェノン基、スチリルピリジン基、α−フェニルマレイミド基、フェニルアジド基、スルフォニルアジド基、カルボニルアジド基、ジアゾ基、o−キノンジアジド基、フリルアクリロイル基、クマリン基、ピロン基、アントラセン基、ベンゾフェノン基、スチルベン基、ジチオカルバメート基、キサンテート基、1,2,3−チアジアゾール基、シクロプロペン基、アザジオキサビシクロ基などを挙げることができ、これらは1種のみでなく2種以上であってもよい。これらのうち、(メタ)アクリロイル基およびシンナモイル基が好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリロイル基である。
【0021】
光重合性基含有共重合体を調製するための具体的な方法としては、下記の方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸クロリドを反応させてエステル化する方法、
(2)水酸基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、イソシアネート基を含有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させてウレタン化する方法、
(3)エポキシ基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させてエステル化する方法、
(4)カルボキシル基を含有してなる架橋性官能基含有共重合体に、エポキシ基を含有する含有(メタ)アクリル酸エステルを反応させてエステル化する方法。
尚、上記光重合性基の導入量は任意に調節することができ、塗膜面状安定性・無機微粒子共存時の面状故障低下・膜強度向上などの点からカルボキシル基やヒドロキシル基等を一定量残すことも好ましい。
【0022】
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(被膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0023】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル類等を挙げることができる。
【0024】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%の場合である。好ましいポリマーについては、特開2002−243907号、特開2002−372601号、特開2003−26732号、特開2003−222702号、特開2003−294911号、特開2003−329804号、特開2004−4444、特開2004−45462号に記載のものを挙げることができる。
【0025】
また本発明の含フッ素ポリマーには防汚性を付与する目的で、ポリシロキサン構造が導入されていることが好ましい。ポリシロキサン構造の導入方法に制限はないが例えば特開平6−93100号、特開平11−189621号、同11−228631号、特開2000−313709号の各公報に記載のごとく、シリコーンマクロアゾ開始剤を用いてポリシロキサンブロック共重合成分を導入する方法、特開平2−251555号、同2−308806号の各公報に記載のごとくシリコーンマクロマーを用いてポリシロキサングラフト共重合成分を導入する方法が好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平11−189621号の実施例1、2、及び3のポリマー、又は特開平2−251555号の共重合体A−2及びA−3を挙げることができる。これらのポリシロキサン成分はポリマー中の0.5〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%である。
【0026】
本発明に好ましく用いることのできるポリマーの好ましい分子量は、質量平均分子量が5000以上、好ましくは10000〜500000、最も好ましくは15000〜200000である。平均分子量の異なるポリマーを併用することで塗膜面状の改良や耐傷性の改良を行うこともできる。
【0027】
本発明に用いられる共重合体の好ましい形態として一般式1のものが挙げられる。
【0028】
【化1】

【0029】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N及びSから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*-(CH2)2-O-**, *-(CH2)2-NH-**,*-(CH2)4-O-**, *-(CH2)6-O-**, *-(CH2)2-O-(CH2)2-O-**,*-CONH-(CH2)3-O-**, *-CH2CH(OH)CH2-O-**,*-CH2CH2OCONH(CH2)3-O-**( * はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0030】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0031】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、低屈折率層をその表面に形成する下層への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0032】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0033】
一般式1中、x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65が好ましく、更に好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。ただし、x+y+z=100である。
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。
【0034】
【化2】

【0035】
一般式2においてXは一般式1と同じ意味を表わし、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
x、y、z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、x及びyは、それぞれ30≦x≦60、5≦y≦70を満たすのが好ましく、更に好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55の場合である。z1及びz2については、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たすのが好ましく、更に好ましくは0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。ただし、x+y+z1+z2=100である。
一般式1又は2で表わされる共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。この際用いられる再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0036】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号公報および特開2000−17028号公報に記載のごとく適宜重合性不飽和基を有する硬化剤を併用してもよい。また、特開2002−145952号に記載のごとく含フッ素の多官能の重合性不飽和基を有する化合物との併用も好ましい。多官能の重合性不飽和基を有する化合物の例としては、後述(B)の2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーを挙げることができる。これら化合物は、特にポリマー本体に重合性不飽和基を有する化合物を用いた場合に耐擦傷性改良に対する併用効果が大きく好ましい。
これら化合物は、ポリマー本体100質量部に対して、1〜50質量部使用するのが好ましく、更に好ましくは2〜40質量部、最も好ましくは3〜30質量部である。
【0037】
ポリマーに架橋性化合物を配合することにより、さらなる硬化性を付与することができる。例えばポリマー本体に水酸基を含有する場合には、各種アミノ化合物を硬化剤として用いることが好ましい。架橋性化合物として用いられるアミノ化合物は、例えば、ヒドロキシアルキルアミノ基及びアルコキシアルキルアミノ基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上含有する化合物であり、具体的には、例えば、メラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物、グリコールウリル系化合物等を挙げることができる。
【0038】
メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているものであり、具体的には、メラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができるが、1分子中にメチロール基及びアルコキシ化メチル基のいずれか一方又は両方を合計で2個以上有するものが好ましい。具体的には、メラミンとホルムアルデヒドとを塩基性条件下で反応させて得られるメチロール化メラミン、アルコキシ化メチルメラミン、又はそれらの誘導体が好ましく、特に硬化性組成物に良好な保存安定性が得られる点、及び良好な反応性が得られる点で、アルコキシ化メチルメラミンが好ましい。架橋性化合物として用いられるメチロール化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンには特に制約はなく、例えば、文献「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されている方法で得られる各種の樹脂状物の使用も可能である。
【0039】
また、尿素系化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、ウロン環を有するメチロール化ウロン及びアルコキシ化メチルウロン等を挙げることができる。そして、尿素誘導体等の化合物についても、上記の文献に記載されている各種樹脂状物の使用が可能である。
これら架橋性化合物は、ポリマー本体100質量部に対して、1〜50質量部使用するのが好ましく、更に好ましくは5〜40質量部、最も好ましくは10〜30質量部である。
【0040】
次に(B)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーについて説明する。
<2個以上のエチレン性不飽和基を含有するモノマー>
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミド等が挙げられる。これらモノマーは2種以上併用してもよい。これらモノマーは、バインダー中の架橋基の密度を上げることができ、硬度の高い硬化膜を形成できるが、含フッ素ポリマーバインダーに比較すると屈折率は低くない。しかしながら、後述する(C)屈折率が1.15〜1.40である中空構造を有する無機微粒子と併用することで、本発明の低屈折率層として十分に有効な屈折率を得ることができる。
【0041】
<重合開始剤>
本発明の低屈折率層形成用の硬化性組成物は、(D)重合開始剤を使用する事ができ、該重合開始剤としては、電離放射線または熱の照射によりラジカルや酸を発生する化合物(それぞれ、光ラジカル開始剤、熱ラジカル開始剤、感光性酸発生剤、熱酸発生剤)を好適に使用することができる。ここでは、これらの化合物について説明する。
【0042】
[光ラジカル開始剤]
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。
【0043】
アセトフェノン類の例には、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシ-ジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシ-ジメチル-p-イソプロピルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、が含まれる。
ベンゾイン類の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノン、4,4'-ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、3,3'、4、4'-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが含まれる。
ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
活性エステル類の例には1、2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、スルホン酸エステル類、環状活性エステル化合物などが含まれる。
具体的には特開2000-80068記載の実施例記載化合物1〜21が特に好ましい。
オニウム塩類の例には、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩が挙げられる。
ボレート塩の例にはカチオン性色素とのイオンコンプレックス類が挙げられる。
活性ハロゲン類の例にはS-トリアジンやオキサチアゾール化合物が知られており、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(p-スチリルフェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-(3-Br-4-ジ(エチル酢酸エステル)アミノ)フェニル)-4,6-ビス(トリクロルメチル)-s-トリアジン、2-トリハロメチル-5-(p-メトキシフェニル)-1,3,4-オキサジアゾールが含まれる。具体的には特開昭58-15503のp14〜p30、特開昭55-77742のp6〜p10、特公昭60-27673のp287記載のNo.1〜No.8、特開昭60-239736のp443〜p444のNo.1〜No.17、US-4701399のNo.1〜19などの化合物が特に好ましい。
無機錯体の例にはビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6−ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムが挙げられる。
クマリン類の例には3−ケトクマリンが挙げられる。
これらの開始剤は単独でも混合して用いても良い。
【0044】
本発明においては、分子量が高く塗膜から揮散しにくい化合物が好ましく、この観点から、オリゴマー型の重合開始剤が好ましい。オリゴマー型放射線重合開始剤としては、放射線照射により光ラジカルを発生する部位を有するものであれば、特に制限はないが、例えば、その質量平均分子量が、400〜10,000であるものが好ましい。400未満(単量体 240)であると、揮散性が悪化する傾向があり、10,000を超えると、硬度が十分でなくなることがある。また、オリゴマー型放射線重合開始剤の具体例としては、下記一般式(7)に示すオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)を挙げることができる。
【0045】
【化3】



【0046】
前記式(7)中、Rは、一価の基、好ましくは一価の有機基、nは、2〜45の整数をそれぞれ示す。
【0047】
前記式(7)に示すオリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)の市販品としては、フラテツリ ランベルティ社製 商品名:エザキュアKIP150(CAS−No.163702−01−0、n=4〜6)、KIP65LT(KIP150及びトリプロピレングリコールジアクリレートの混合物)、KIP100F(KIP150及び2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの混合物)、KT37,KT55(以上、KIP150及びメチルベンゾフェノン誘導体の混合物)、KTO46(KIP150、メチルベンゾフェノン誘導体、及び2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドの混合物)、KIP75/B(KIP150及び2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンの混合物)等を挙げることができる。
【0048】
光ラジカル開始剤は、「最新UV硬化技術」,(株)技術情報協会,1991年,p.159、及び、「紫外線硬化システム」 加藤清視著、平成元年、総合技術センター発行、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,819、907、1870(CGI-403/Irg184=7/3混合開始剤、500,369,1173,2959,4265,4263など)、OXE01)等、日本化薬(株)製のKAYACURE(DETX-S,BP-100,BDMK,CTX,BMS,2-EAQ,ABQ,CPTX,EPD,ITX,QTX,BTC,MCAなど)、サートマー社製のEsacure(KIP100F,KB1,EB3,BP,X33,KT046,KT37,KIP150,TZT)等及びそれらの組み合わせが好ましい例として挙げられる。
【0049】
光重合開始剤は、バインダー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。また、熱処理による揮散防止のために、重合開始剤の分子量は250以上10,000以下が好ましく、更に好ましくは300以上10,000以下である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーケトンおよびチオキサントン、などを挙げることができる。
更にアジド化合物、チオ尿素化合物、メルカプト化合物などの助剤を1種以上組み合わせて用いてもよい。
市販の光増感剤としては、日本化薬(株)製のKAYACURE(DMBI,EPA)などが挙げられる。
これら光増感剤や助剤の量は、必要な増感度が得られる限りにおいては特に制限は無く、光重合開始剤100質量部に対して、1〜1000質量部が好ましく、更に好ましくは10〜500質量部、最も好ましくは50〜400質量部である。
【0050】
[熱ラジカル開始剤]
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
これら熱ラジカル開始剤は、バインダー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0051】
[熱酸発生剤]
熱酸発生剤の具体例としては、例えば、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、アミン塩、各種金属塩、リン酸や有機酸のリン酸エステル等を挙げることができる。
市販されている材料としては、キャタリスト4040、キャタリスト4050、キャタリスト600、キャタリスト602、キャタリスト500、キャタリスト296−9、以上日本サイテックインダストリーズ(株)製、やNACUREシリーズ155、1051、5076、4054JやそのブロックタイプのNACUREシリーズ2500、5225、X49−110、3525、4167以上キング社製などが挙げられる。
この熱酸発生剤の使用割合は、硬化性組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。添加量がこの範囲であると、硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好で塗膜の耐擦傷性も良好なものとなる。
【0052】
[感光性酸発生剤]
感光性酸発生剤としては、例えば、(1)ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等の各種オニウム塩;(2)β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化合物;(3)アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;(4)スルホンイミド化合物類;(5)ジアゾメタン化合物類;を挙げることができる。この感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。
【0053】
次に、(C)無機微粒子について説明する。
<無機微粒子>
無機微粒子の配合量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。少なすぎると、耐擦傷性の改良効果が減り、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
無機微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上100%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
前記無機微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0054】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、前記無機微粒子は、中空構造であるのが好ましく、また、無機微粒子の屈折率は1.15〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空構造の無機微粒子の場合に外殻の無機質のみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記(数式2)で表される。
(数式2)
x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
空隙率xは好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
中空の無機微粒子の屈折率をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点からは屈折率1.15以上の粒子が好ましい。
なお、無機微粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定を行い測定した。
【0055】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満である無機微粒子(以下「小サイズ無機微粒子」と称す)の少なくとも1種を前記の好ましい範囲内の粒径の無機微粒子(以下「大サイズ無機微粒子」と称す)と併用してもよい。
小サイズ無機微粒子は、大サイズ無機微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ無機微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ無機微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このような無機微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
上述のように前記無機微粒子としては、平均粒径が上述のように低屈折率層の厚みの30〜100%であり、中空構造からなり、屈折率が上述のように1.15〜1.40であるものが特に好ましく用いられる。
【0056】
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。中でもカップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。シランカップリング剤の好ましい化合物としては、後述の(E)オルガノシラン化合物の頁で述べるものを挙げることができる。
前記カップリング剤は、低屈折率層の無機微粒子の表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
無機微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0057】
次に、(E)オルガノシラン化合物について説明する。
<オルガノシラン化合物>
前記硬化性組成物には、オルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物等(以下、得られた反応溶液を「ゾル成分」とも称する)を含有させることが、耐擦傷性の点で、特に反射防止能と耐擦傷性とを両立させる点で、好ましい。
このゾル成分は、前記硬化性組成物を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成することにより低屈折率層のバインダーとして機能する。また、本発明においては、前記含フッ素ポリマーを有するので、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
前記オルガノシラン化合物は、下記一般式[A]で表されるものが好ましい。
一般式[A]
(R10m −Si(X)4-m
前記一般式[A]において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アルキル基として好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
Xは、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
【0058】
10あるいはXが複数存在するとき、複数のR10あるいはXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0059】
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましい。
前記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の中でも、下記一般式[B]で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
【0060】
【化4】

【0061】
前記一般式[B]において、R1は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合もしくは *−COO−** ,*−CONH−** 又は *−O−** を表し、単結合、*−COO−** および *−CONH−** が好ましく、単結合および*−COO−** が更に好ましく、*−COO−** が特に好ましい。* は=C(R1)−に結合する位置を、** はLに結合する位置を表す。
【0062】
Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0063】
nは0または1を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。nとして好ましくは0である。
10は一般式[A]と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
Xは一般式[A]と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0064】
一般式[A]、一般式[B]の化合物は2種類以上を併用しても良い。以下に一般式[A]、一般式[B]で表される化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0065】
【化5】

【0066】
【化6】

【0067】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、および(M−5)が特に好ましい。
【0068】
そして、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物は、一般に前記オルガノシラン化合物を触媒の存在下で処理して製造されるものである。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、Ti又はAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。本発明においては、無機酸類及び有機酸類の酸触媒を用いるのが好ましい。中でも、無機酸では塩酸、硫酸が好ましく、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、更には、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸が好ましく、特に、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、具体的には、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
これら触媒の好ましい使用量は、オルガノシラン化合物100質量部当たり、0.1〜5質量部が好ましく、更に好ましくは0.2〜5質量部、最も好ましくは0.5〜3質量部である。
【0069】
また、本発明においては、前記硬化性組成物に、更にβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物が添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
【0070】
本発明で使用されるのは、一般式R4COCH2COR5で表されるβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物であり、本発明に用いられる硬化性組成物の安定性向上剤として作用するものである。ここで、R4は炭素数1〜10のアルキル基、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を表す。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を構成するR4およびR5は、前記金属キレート化合物を構成するR4およびR5と同様である。
【0071】
このβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル以上であれば得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがなく好ましい。
【0072】
前記オルガノシラン化合物の配合量は、低屈折率層の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
前記オルガノシラン化合物は硬化性組成物(低屈折率層用等の塗布液)に直接添加してもよいが、前記オルガノシラン化合物をあらかじめ触媒の存在下に処理して前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物を調製し、得られた反応溶液(ゾル液)を用いて前記硬化性組成物を調整するのが好ましく、本発明においてはまず前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物および金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を添加した液を低屈折率層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
【0073】
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾル成分の使用量は、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。使用量の下限が上記範囲内であれば、本発明の効果が得にくくなるといった不具合が生じず、上限が上記範囲内であれば、屈折率が増加したり、膜の形状・面状が悪化したりするといった問題が起こらないため、好ましい。
【0074】
前記硬化性組成物には、上述した無機微粒子以外の無機フィラーを本発明の所望の効果を損なわない範囲の添加量で添加することもできる。無機フィラーの詳細については後述する。
【0075】
低屈折率層と直接接する下層との界面密着性等の観点からは、前述(B)に挙げた多官能(メタ)アクリレート化合物又は、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して30質量%以下の範囲とすることが好ましく、20質量%以下の範囲とすることがより好ましく、10質量%以下の範囲とすることが特に好ましい。
【0076】
また、防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系化合物あるいはフッ素系化合物の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0077】
シリコーン系化合物の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシリコーン系化合物の例としては信越化学(株)製、X-22-174DX、X-22-2426、X-22-164B、X22-164C、X-22-170DX、X-22-176D、X-22-1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM-0725、FM-7725、DMS-U22、RMS-033、RMS-083、UMS-182(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0078】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば-CF2CF3,-CH2(CF2)4H, -CH2(CF2)8CF3,-CH2CH2(CF2)4H 等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF3)2,CH2CF(CF3)2, CH(CH3)CF2CF3,CH(CH3)(CF2)5CF2H 等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCH2OCH2CF2CF3,CH2CH2OCH2C4F8H, CH2CH2OCH2CH2C8F17,CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R-2020、M-2020、R-3833、M-3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF-171、F-172、F-179A、ディフェンサMCF-300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0079】
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤あるいはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低n層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製、メガファックF-150(商品名)、東レダウコーニング(株)製、SH-3748(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0080】
次に、光散乱層について以下に説明する。
【0081】
<光散乱層>
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するため透光性樹脂、及び光拡散性を付与するための透光性粒子を必須成分とし、更に必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んでなる。
【0082】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が低下する場合があるので、前記範囲内とするのが好ましい。
【0083】
前記透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを選択することもできる。
【0084】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。前記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0085】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0086】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、前記光散乱層は、上述のエチレン性不飽和モノマー等の透光性樹脂形成用のモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、透光性粒子および必要に応じて無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化させることにより形成することができる。光ラジカル開始剤及び熱ラジカル開始剤としては、前述の低屈折率層で述べた化合物を用いることができる。
【0087】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、透光性粒子および無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して光散乱層を形成することができる。
【0088】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0089】
光散乱層に用いられる前記透光性粒子は、光拡散性及び防眩性付与の目的で用いられるものであり、その平均粒径が0.5〜5μm、好ましくは1.0〜4.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がるため、ディスプレイの文字解像度の低下を引き起こしたり、表面凹凸が形成しにくくなるため防眩性が不足したりするため、好ましくない。一方、5μmを超えると、光散乱層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールが大きくなる、素材コストが上昇してしまう、等の問題が生じる。
前記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、メタクリル粒子、架橋メタクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0090】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、上述したようなギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0091】
さらに、前記透光性粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ透光性粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布とすることができる。
【0092】
前記透光性粒子は、形成された光散乱層中に、光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されるように配合される。好ましくは5〜20質量%である。3質量%未満であると、光散乱効果が不足し、30質量%を超えると、像の解像度の低下や表面の白濁やギラツキ等の問題が生じる。
また、透光性粒子の密度は、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2である。
透光性粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0093】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、前記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、透光性粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率透光性粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーを用いる場合、その添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このような無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
また、光散乱層にも上述の(E)オルガノシラン化合物、その加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかを用いることができる。
低屈折率層以外の層へのオルガノシラン化合物の添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
【0094】
本発明における透光性樹脂と透光性粒子との混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を前記範囲とするには、透光性樹脂及び透光性粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
また、本発明においては、透光性樹脂と透光性粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折率−透光性樹脂の屈折率)が、0.02〜0.2であり、好ましくは0.05〜0.15である。この差が0.02未満であると、内部散乱の効果が不足するためギラツキが悪化し、0.2を超えると、フィルム表面の白濁の問題が生じる。
また、前記透光性樹脂の屈折率は、1.45〜2.00であるのが好ましく、1.48〜1.60であるのが更に好ましい。
また、前記透光性粒子の屈折率は、1.40〜1.80であるのが好ましく、1.50〜1.70であるのが更に好ましい。
ここで、前記透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0095】
本発明の光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光散乱層形成用の塗布液中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0096】
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記一般式3で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とする、あるいは一般式3で表されるモノマーと共重合可能な下記一般式4で示されるモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。
【0097】
【化7】

【0098】
一般式3においてR11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは2〜4の整数を表す。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
【0099】
【化8】

【0100】
一般式4において、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH3)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0101】
本発明で用いられるフッ素系ポリマー中に用いられるこれらの一般式3で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの各単量体に基づいて10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
【0102】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。フッ素系ポリマーの添加量が0.001質量%未満では効果が不十分であり、また5質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、塗膜としての性能(例えば反射率、耐擦傷性)に悪影響を及ぼす。
【0103】
以下、一般式3で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0104】
【化9】

【0105】
【化10】

【0106】
しかしながら、前記のようなフッ素系ポリマーを使用することにより、光散乱層表面にF原子を含有する官能基が偏析することにより光散乱層の表面エネルギーが低下し、前記光散乱層上に低屈折率層をオーバーコートしたときに反射防止性能が悪化する問題が生じる。これは低屈折率層を形成するために用いられる硬化性組成物の濡れ性が悪化するために低屈折率層に目視では検知できない微小なムラが悪化するためと推定される。このような問題を解決するためには、フッ素系ポリマーの構造と添加量を調整することにより、光散乱層の表面エネルギーを好ましくは20mN・m-1〜50mN・m-1に、より好ましくは30mN・m-1〜40mN・m-1に制御することが効果的であることを見出した。前記のような表面エネルギーを実現するためには、X線光電子分光法で測定したフッ素原子由来のピークと炭素原子由来のピークの比であるF/Cが0.1〜1.5であることが必要である。
【0107】
或いは、上層を塗布する時には上層を形成する溶媒に抽出されるようなフッ素系ポリマーを選択することにより、F原子を含有する官能基が下層表面(=界面)に偏在することがなくなり、上層と下層の密着性を持たせることができ、高速塗布においても面状の均一性を保ち、かつ耐擦傷性の強い反射防止フィルムの提供ができる表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前の光散乱層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。そのような素材の例は下記一般式5で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とする、あるいは一般式5で表されるモノマーと共重合可能な下記一般式6で示されるモノマーに相当する繰り返し単位を含むことを特徴とするアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体である。
【0108】
【化11】

【0109】
一般式5においてR16は水素原子またはハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R17)−を表し、酸素原子または−N(R17)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R17は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Xは酸素原子が好ましい。
一般式5中のmは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式5中のnは1〜18の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式5で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていても良い。
【0110】
【化12】

【0111】
一般式6において、R18は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R20)−を表し、酸素原子または−N(R20)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R20は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
19は置換基を有しても良い炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、置換基を有していても良い芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐、または環状のアルキル基、または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐、または環状のアルキル基が更に好ましい。
【0112】
以下、一般式5で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに相当する繰り返し単位を含むフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお、式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0113】
【化13】

【0114】
【化14】

【0115】
【化15】

【0116】
【化16】

【0117】
【化17】

【0118】
また光散乱層上に低屈折率層をオーバーコートする時点で表面エネルギーの低下を防げば、反射防止性能の悪化が防げる。光散乱層塗布時にはフッ素系ポリマーを用いて塗布液の表面張力を下げて面状均一性を高め、高速塗布による高生産性を維持し、光散乱層塗布後にコロナ処理、UV処理、熱処理、鹸化処理、溶剤処理といった表面処理手法を用いて、特に好ましいのはコロナ処理であるが、表面自由エネルギーの低下を防ぐことにより、低屈折率層塗布前の光散乱層の表面エネルギーを前記範囲に制御することでも目的を達成することができる。
【0119】
また、本発明者等は、ゴニオフォトメーターで測定される散乱光の強度分布が視野角改良効果に相関することを確認した。すなわち、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された光散乱層を有する反射防止フィルムで拡散されればされるほど視野角特性がよくなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。そこで、鋭意検討の結果、所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視認角改良効果と相関ある30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましい。
散乱光プロファイルは、作成した光散乱フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
【0120】
また、本発明の光散乱層を形成する為の塗布液中に、チクソトロピー剤を添加しても良い。チクソトロピー剤としては、0.1μm以下のシリカ、マイカ等があげられる。これら添加剤の含有量は、通常、光散乱層形成用樹脂100質量部に対して、1〜10質量部程度とするのが好適である。
【0121】
<高屈折率層、中屈折率層>
本発明の反射防止フィルムでは、より良い反射防止能を付与するために、高屈折率層や中屈折率層を設けることができる。
前記高屈折率層の屈折率は屈折率1.55〜2.40であり、この範囲内の層があれば、本発明における高屈折率層が存在するといえる。この屈折率の範囲は、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれる範囲であるが、以下の本明細書では、これらの層を総称して高屈折率層と呼ぶことがある。
また、高屈折率層と中屈折率層とが混在する場合、屈折率が支持体、光散乱層、中屈折率層よりも高い層を高屈折率層といい、屈折率が支持体、光散乱層、中屈折率層よりも高く高屈折率層より低い層を中屈折率層という。屈折率は、添加する無機微粒子やバインダーの使用量などを調節することにより適宜調節できる。
【0122】
<二酸化チタンを主成分とする無機微粒子>
前記高屈折率層には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子が含有される。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜100nm、特に好ましくは2〜80nmである。
【0123】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co、Al及びZrから選ばれる少なくとも1つの元素を含有させることで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、高屈折率層の耐候性を改良することができる。
本発明に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理してもよい。表面処理は、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3、Zr(OH)4のような無機化合物または、シランカップリング剤のような有機化合物を用いて実施する。本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
高屈折率層に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定形状、紡錘形状である。
【0124】
<分散剤>
前記無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよいが、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。アニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。さらに、分散剤は架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。
【0125】
<高屈折率層及びその形成法>
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層の形成に使用する。
無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、アミド、エーテル、エーテルアルコールが含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0126】
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子分散物は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
【0127】
本発明に用いる高屈折率層は、前記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(前述の光散乱層と同様のもの)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布液とし、透明支持体上に高屈折率層形成用の塗布液を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0128】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤としては、前述の低屈折率層で述べた化合物を用いることができる。
【0129】
高屈折率層においてバインダーは、さらにシラノール基を有することが好ましい。バインダーがさらにシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば架橋又は重合性官能基を有する化合物を前記の高屈折率層形成用の塗布液に添加し、塗布液を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー等を架橋反応、又は、重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0130】
高屈折率層においてバインダーは、アミノ基または四級アンモニウム基を有することも好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーは、高屈折率層における無機微粒子の良好な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
【0131】
架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
【0132】
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96mol%であることが好ましく、4〜94mol%であることがさらに好ましく、6〜92mol%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98mol%であることが好ましく、6〜96mol%であることがさらに好ましく、8〜94mol%であることが最も好ましい。
【0133】
高屈折率層は前述の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の他にも微細な無機微粒子を含むことができる。該他の無機微粒子は前記光散乱層に含有される無機微粒子を用いても良く、微細に分散されていることが好ましく、好ましい分散後粒径と一次粒子粒径は前記光散乱層の欄に記載のとおりである。
高屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機微粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
【0134】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、防眩性付与粒子、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0135】
高屈折率層の形成において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下、好ましくは酸素濃度が6体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。
【0136】
<無機フィラー>
上述の各層には無機フィラーを添加することが好ましい。各層に添加する無機フィラーはそれぞれ同じでも異なっていても良く、各層の屈折率、膜強度、膜厚、塗布性などの必要性能に応じて、種類、添加量、は適宜調節されることが好ましい。
なお、低屈折率層に用いる無機フィラーは、上述した無機微粒子以外のものであり、光散乱層に用いる無機フィラーは、上述した透光性粒子以外の無機フィラーである。
【0137】
本発明に使用する前記無機フィラーの形状は、特に制限されるものではなく、例えば、球状、板状、繊維状、棒状、不定形、中空等のいずれも好ましく用いられるが、球状であると分散性がよく、より好ましい。また、前記無機フィラーの種類についても特に制限されるものではないが、非晶質のものが好ましく用いられ、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなるものが好ましく、金属酸化物が特に好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、Pb、ZrおよびNi等が挙げられる。無機フィラーの平均粒子径は、透明な硬化膜を得るためには、0.001〜0.2μmの範囲内の値とするのが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1μm、さらに好ましくは0.001〜0.06μmである。ここで、粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
本発明における無機フィラーの使用方法は特に制限されるものではないが、例えば、乾燥状態で使用することができるし、あるいは水もしくは有機溶媒に分散した状態で使用することもできる。
【0138】
本発明において、無機フィラーの凝集、沈降を抑制する目的で、各層を形成するための塗布液に分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤および、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特にシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。分散安定化剤としてのシランカップリング剤の添加量は特に制限されるものではないが、例えば、無機フィラー100質量部に対して、1質量部以上の値とするのが好ましい。また、分散安定化剤の添加方法も特に制限されるものではないが、予め加水分解したものを添加することもできるし、あるいは、分散安定化剤であるシランカップリング剤と無機フィラーとを混合後、さらに加水分解および縮合する方法を採ることができるが、後者の方がより好ましい。
【0139】
<透明支持体>
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート
(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、代表的には富士写真フイルム(株)製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィンが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
セルロースアシレートは、単層または複数の層からなる。単層のセルロースアシレートは、特開平7−11055号等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるセルロースアシレートは、公開特許公報の特開昭61−94725号、特公昭62−43846号等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0140】
前記のような、セルロースアシレートを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。
【0141】
前記のような種々のセルロースアシレートフィルム(トリアセチルセルロースなどからなるフィルム)およびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0142】
セルロースアシレートフィルムの厚みとしては40μm〜120μmが好ましい。ハンドリング適性、塗布適性等を考慮すると80μm前後が好ましいが、近年の表示装置の薄手化の傾向から、偏光板の薄手化のニーズが大きく、偏光板薄手化の観点では40μm〜60μm前後が好ましい。このような薄手のセルロースアシレートフィルムを本発明の反射防止フィルムの透明支持体として用いる場合には、セルロースアシレートフィルムに直接塗布する層の溶媒、膜厚、架橋収縮率等を最適化することにより前記のハンドリング、塗布適性等の問題を回避することが好ましい。
【0143】
<他の層について>
透明支持体と本発明の光散乱層の間に設けても良い他の層として、帯電防止層(ディスプレイ側からの表面抵抗値を下げる等の要求がある場合、表面等へのゴミつきが問題となる場合)、ハードコート層(光散乱層だけで硬度が不足する場合)、防湿層、密着改良層、虹ムラ(干渉ムラ)防止層等が挙げられる。
これらの層は、公知の方法にて形成することができる。
【0144】
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0145】
<塗布液の調製>
本発明の各層を形成するための塗布組成物に用いられる溶剤としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は2種類以上のものを混合して用いることができる。特に、乾燥負荷の観点から、常圧における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
【0146】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
【0147】
沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0148】
上記溶剤を用い、まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。その際、溶剤の揮発量を最小限に抑制することにより、塗布液中の含水率の上昇を抑制できる。塗布液中の含水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。溶剤の揮発量の抑制は、各素材をタンクに投入後の攪拌時の密閉性を向上すること、移液作業時の塗布液の空気接触面積を最小化すること等で達成される。また、塗布中、或いはその前後に塗布液中の含水率を低減する手段を設けてもよい。
【0149】
光散乱層を形成する塗布液中には、直接その上に形成される低屈折率層の乾燥膜厚(50nm〜120nm程度)に相当する異物を概ね全て(90%以上を指す)除去できるろ過をすることが好ましい。光拡散性を付与する為の透光性粒子が低屈折率層の膜厚と同等以上であるため、前記ろ過は、透光性粒子以外の全ての素材を添加した中間液に対して行うことが好ましい。また、前記のような粒径の小さな異物を除去可能なフィルターが入手できない場合には、少なくとも直接その上に形成される層のウエット膜厚(1〜10μm程度)に相当する異物を概ね全て除去できるろ過をすることが好ましい。このような手段により、直接その上に形成される層の点欠陥を減少することができる。
【0150】
<塗布>
次に、光散乱層および低屈折率層を形成するための塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。その後、光照射および/または加熱して、光散乱層または低屈折率層を形成するためのモノマーを重合して硬化する。これにより光散乱層、低屈折率層が形成される。
【0151】
上記の塗布方法の中でも、マイクログラビア法が一般的に好ましく用いられる。本発明の光散乱層や低屈折率層もマイクログラビア法で製造することができる。幅方向の塗布量分布や各種の面状故障に対しても良好な面状が得られ、長手方向の塗布量分布も掻き落しに用いる金属ブレードの素材、形状等の最適化により、満足な性能が得られる。
一方、より高い生産速度の観点では、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。ダイコート法は、生産性と塗布ムラのない面状を高次元で両立できるため、好ましく用いられる。
本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた以下の本発明の製造方法が好ましい。
すなわち、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有し、該塗布工程は、スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、スロットダイを塗布位置にセットしたときに、ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下(以下、この数値限定については「オーバーバイト長さ」と称する)大きくなるように設置した塗布装置を用いて、光散乱層及び低屈折率層の何れか一方、または両方の層を塗布する反射防止フィルムの製造方法である。
特に、本発明の製造方法において好ましく用いることができるダイコーターについて、以下に図面を参照して説明する。該ダイコーターは、ウエット塗布量が少ない場合(20ml/m2以下)に用いることができ、好ましい。
【0152】
<ダイコーターの構成>
図2は本発明を好適に実施できるスロットダイを用いたコーター(塗布装置)の断面図である。
コーター10は、バックアップロール11とスロットダイ13とからなり、バックアップロール11に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ13から塗布液14がビード形状14aで吐出されて塗布されることにより、ウェブW上に塗膜14bを形成する。
【0153】
スロットダイ13の内部には、ポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向(ここで、スロットダイ13の幅方向とは、図2の記載された図面に向かって手前方向又は奥側の方向を指す。)にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている(図示せず)。
【0154】
スロット16は、ポケット15からウェブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さになるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブW走行方向の接線とのなす角度は、30°以上90°以下が好ましい。
【0155】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブWの進行方向の上流側(進行方向すなわち図中の矢印方向とは逆側)を上流側リップランド18a、下流側(進行方向側)を下流側リップランド18bと称する。
上流側リップランド18aとウェブWとの隙間は、下流側リップランド18bとウェブWとの隙間よりも上述の範囲で大きい。また、下流側リップランドランド18bの長さは、上述の範囲である。
図3(A)を参照して上述した数値限定に関する部位について説明すると、ウェブの進行方向側のランド長さは、図3(A)のILOで示される部分であり、上記オーバーバイト長さは、図9のLOで示される部分である。
【0156】
次に図3を参照して本発明の反射防止フィルムの製造方法の実施に用いられる塗布装置と従来の塗布装置とを比較して説明する。ここで、図3は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明のスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。
従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
【0157】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは上述のように、30μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上80μm以下、最も好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μm以上であれば、先端リップのエッジあるいはランドが欠けにくく、塗膜へのスジの発生を抑えることができ好ましい。また、下流側の濡れ線位置の設定がしやすい。さらには、塗布液の下流側における広がりを抑えることができ、好ましい。下流側における塗布液の濡れによる広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながる。一方、下流側リップのランド長さILOが100μm以下であれば、ビード14aを形成することができる。塗布液がビード14aを形成することにより、薄層塗布を行うことができる。
【0158】
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成14aが可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブWの隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブWの隙間を示す。
【0159】
次に、図4を参照して上記塗布工程全般について説明する。
図4は、本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。スロットダイ13に対しウェブWの進行方向側とは反対側(すなわちビード14aより上流側)に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブWの間には隙間GB、サイドプレート40bとウェブWの間には隙間GS が存在する。
減圧チャンバー40とウェブWとの関係について図5及び6を参照して説明する。図5及び図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブWを示す断面図である。
サイドプレート40bとバックプレート40aは図5のようにチャンバー40本体と一体のものであってもよいし、例えば、図6のように適宜隙間GBを変えられるようにバックプレート40aをチャンバー40にネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェブWの間、サイドプレート40bとウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GS と定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブWとの隙間GB とは、減圧チャンバー40を図4のようにウェブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0160】
バックプレート40aとウェブWとの隙間GB をスロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GL(図3参照)よりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブWの間の隙間GB は100μm以上500μm以下が好ましい。
【0161】
<材質、精度>
前記ウェブの進行方向側の先端リップのウェブ走行方向における長さ(図3(A)に示す下流側リップランド長さlLO)は、前述の範囲内とすることが好ましく、また、lLOのスロットダイ幅方向における変動幅を20μm以内とすることが好ましい。この範囲内であれば、かすかな外乱によってもビードが不安定になることがなく、好ましい。
スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまうため、好ましくない。ステンレス鋼などの場合、下流側リップランド長さlLOを前記の30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足することが困難である。高い加工精度を維持するには、特許第2817053号明細書に記載されているような超硬材質のものを用いることが好ましい。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
高精度な塗布の実現には、前記下流側リップランド長さlLOが重要であり、さらに隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を制御することが望ましい。前記バックアップロール11と前記先端リップ17とは、隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を制御できる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップロール11の真直度とすることである。
【0162】
<塗布速度>
上記の様なダイコート法を用いた製造方法により、本発明の製造方法における塗布工程は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、本発明の製造方法における塗布工程は前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。前述したようにウエット塗布量が少ない場合(20ml/m2以下)、低塗布量の塗布液に対して、本発明の製造法における塗布工程は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた本発明の製造方法が好ましい。ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であることから、段状のムラが発生しやすく、リバースロールコート法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすく、さらに、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難であるため、膜厚の安定性が高く前計量方式である本発明の製造方法を用いることが好ましい。本発明の製造方法を用いることで25m/分以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
【0163】
<ウエット塗布量>
光散乱層を形成する際には、透明支持体フィルム上に直接又は他の層を介してウエット塗布膜厚として6〜20μmの範囲で前記塗布液を塗布するのが好ましく、乾燥ムラ防止の観点からさらに3〜20μmの範囲がより好ましい。また、低屈折率層を形成する際には、光散乱層上に直接、或いは他の層を介してウエット塗布膜厚として1〜10μmの範囲で塗布液を塗布するのが好ましく、2〜5μmの範囲で塗布されるのがより好ましい。
【0164】
<乾燥>
光散乱層および低屈折率層は、透明支持体フィルム上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布液に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布液に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
【0165】
また、各層の塗布液を透明支持体フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布液の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
また、各層の塗布液を透明支持体フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で透明支持体フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと透明支持体フィルムとの温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
【0166】
<硬化>
溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線および/または熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。例えば塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm2〜1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。更に表面硬化を促進する為に窒素ガス等をパージして酸素濃度を低下する必要がある際には、酸素濃度0.01%〜5%が好ましく、幅方向の分布は酸素濃度で2%以下が好ましい。
【0167】
また、光散乱層の硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値となった場合、その上に本発明の低屈折率層を設けて電離放射線および/または熱により低屈折率層を硬化した際に下層の光散乱層の硬化率が低屈折率層を設ける前よりも高くなると、光散乱層と低屈折率層との間の密着性が改良され、好ましい。
【0168】
前記のようにして製造された本発明の反射防止フィルムは、これを用いて偏光板を作成することにより液晶表示装置に用いることができる。この場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。本発明の反射防止フィルムは、偏光板における偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0169】
本発明の反射防止フィルムを2枚の偏光膜の表面保護フィルムの内の一方として用いて偏光板を作成する際には、前記の反射防止フィルムを、反射防止構造を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、接着面における接着性を改良することが好ましい。
【0170】
<鹸化処理>
(1)アルカリ液に浸漬する法
アルカリ液の中に反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/Lであり、特に好ましくは1〜2mol/Lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜75℃、特に好ましくは40〜60℃である。
前記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0171】
鹸化処理することにより、透明支持体の反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。 偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に低屈折率層を有する表面から内部の光散乱層までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反対側の表面の透明支持体の水に対する接触角を用いた場合、特に透明支持体がトリアセチルセルロースであれば、好ましくは10度〜50度、より好ましくは30度〜50度、さらに好ましくは40度〜50度となる。50度以上では、偏光膜との接着性に問題が生じる為、好ましくない。一方、10度未満では、反射防止膜の受けるダメージが大きすぎる為、物理強度を損ない、好ましくない。
【0172】
(2)アルカリ液を塗布する方法
上述の浸漬法における反射防止膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
【0173】
前記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の反射防止フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。さらに、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
【0174】
(3)反射防止膜をラミネートフィルムで保護して鹸化する方法
前記(2)と同様に、光散乱層および/または低屈折率層がアルカリ液に対する耐性が不足している場合に、低屈折率層まで形成した後に低屈折率層を形成した面にラミネートフィルムを貼り合せてからアルカリ液に浸漬することで低屈折率層を形成した面とは反対側のトリアセチルセルロース面だけを親水化し、然る後にラミネートフィルムを剥離することができる。この方法でも、光散乱層、低屈折率層へのダメージなしに偏光板保護フィルムとして必要なだけの親水化処理をトリアセチルセルロースフィルムの反射防止層を形成した面とは反対の面だけに施すことができる。前記(2)の方法と比較して、ラミネートフィルムが廃棄物として発生する半面、特別なアルカリ液を塗布する装置が不要である利点がある。
【0175】
(4)光散乱層まで形成後にアルカリ液に浸漬する方法
光散乱層まではアルカリ液に対する耐性があるが、低屈折率層がアルカリ液に対する耐性不足である場合には、光散乱層まで形成後にアルカリ液に浸漬して両面を親水化処理し、然る後に光散乱層上に低屈折率層を形成することもできる。製造工程が煩雑になるが、特に低屈折率層がフッ素含有ゾル−ゲル膜等、親水基を有する場合には光散乱層と低屈折率層との層間密着性が向上する利点がある。
【0176】
(5)予め鹸化済のトリアセチルセルロースフィルムに反射防止膜を形成する方法
トリアセチルセルロースフィルムを予めアルカリ液に浸漬するなどして鹸化し、何れか一方の面に直接または他の層を介して光散乱層、低屈折率層を形成してもよい。アルカリ液に浸漬して鹸化する場合には、光散乱層または他の層と鹸化により親水化されたトリアセチルセルロース面との層間密着性が悪化することがある。そのような場合には、鹸化後、光散乱層または他の層を形成する面だけにコロナ放電、グロー放電等の処理をすることで親水化面を除去してから光散乱層または他の層を形成することで対処できる。また、光散乱層または他の層が親水性基を有する場合には層間密着が良好なこともある。
【0177】
以下に、本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板及び該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
<偏光板>
本発明の好ましい偏光板は、偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方として、本発明の反射防止フィルムを有する。偏光板用保護フィルムは、前記のように、反射防止構造を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が10度〜50度の範囲にあることが好ましい。
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、耐光性に優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角が非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0178】
<光学補償層>
偏光板には光学補償層(位相差層)を設けることにより、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償層としては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性を有する層を有し、該ディスコティック化合物と透明支持体とのなす角度が透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする光学補償層が好ましい。
該角度は該ディスコティック化合物からなる光学異方性層の透明支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
光学補償層を偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
【0179】
<偏光膜>
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0180】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0181】
<液晶表示装置>
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル
(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0182】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0183】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digestof tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル
(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0184】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(OpticallyCompensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0185】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0186】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001-100043等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0187】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0188】
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【化18】

【0189】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.53MPaであった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPaに達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N-ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
【0190】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0191】
(ゾル液bの調製)
反応後室温まで冷却した後、アセチルアセトン6部を添加したこと以外は前記ゾル液aと同様にしてゾル液bを得た。
【0192】
(光散乱層用塗布液Aの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET−30、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.5gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.61、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−107)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液Aを調製した。
【0193】
(光散乱層用塗布液Bの調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤含有)285g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)85gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学(株)製)28gを混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
さらにこの溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を35g加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスタKE-P150、日本触媒(株)製)の30%メチルエチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を90g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−1)0.12gを混合攪拌し、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液Bを調製した。
【0194】
(光散乱層用塗布液Cの調製)
前記光散乱層用塗布液Bにおいて平均粒径1.5μmのシリカ粒子の代わりに、平均粒径1.5μmの分級強化高架橋PMMA粒子(MXS−150H、架橋剤エチレングリコールジメタクリレート、架橋剤量30%、綜研化学(株)製、屈折率1.49)の30%メチルエチルケトン分散液を130g用いた以外は添加量も含め前記塗布液Aと同様にして、光散乱層用塗布液Cを作成した。
【0195】
(光散乱層用塗布液Dの調製)
前記光散乱層用塗布液Aにおいて平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子および平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子の代わりに、平均粒径3.0μmの分級強化高架橋PMMA粒子(架橋剤エチレングリコールジメタクリレート、架橋剤量40%、屈折率1.50)の30%トルエン分散液を15g用いた以外は添加量も含め前記塗布液Aと同様にして、光散乱層用塗布液Dを作成した。
【0196】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、ゾル液a0.6gおよびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.43であった。
【0197】
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
前記低屈折率層用塗布液Aにおいて、シリカゾルの代わりに中空シリカゾル(屈折率1.31、平均粒径60nm、固形分濃度20%)を1.95g用いた以外は添加量も含め前記塗布液Aと同様にして、低屈折率層用塗布液Bを作成した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.38であった。
【0198】
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)15g、シリカゾル(シリカ、MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学社製)0.6g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)0.8g、ゾル液a0.4gおよびメチルエチルケトン3g、シクロヘキサノ0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Cを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.43であった。
【0199】
(低屈折率層用塗布液Dの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の15.2g、シリカゾルMEK−ST−L(シリカ、MEK-STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学社製)14.0g、反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)0.3g、ゾル液a7.3g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.76g、メチルエチルケトン301g、シクロヘキサノン9.0gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Dを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.44であった。
【0200】
(低屈折率層用塗布液Eの調製)
前記低屈折率層用塗布液Dにおいて、シリカゾルの代わりに中空シリカゾル(CS−60;商品名、触媒化成工業(株)、屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、空隙率58%、固形分濃度20%)を19.5g用いた以外は添加量も含め前記塗布液Dと同様にして、低屈折率層用塗布液Eを作成した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.396であった。
【0201】
(低屈折率層用塗布液Fの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、およびシクロヘキサノン0.3gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Fを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.42であった。
【0202】
(低屈折率層用塗布液Gの調製)
熱架橋性含フッ素ポリマー(特開平11−189621公報実施例1に記載の含フッ素熱硬化ポリマー)6.20g、硬化剤(サイメル303;商品名、日本サイテックインダストリーズ(株)製)1.60g、硬化触媒(キャタリスト4050;商品名、日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.16g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)13.0g、ゾル液a6.0gおよびメチルエチルケトン170g、シクロヘキサノン6.0gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Gを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.43であった。
【0203】
(低屈折率層用塗布液Hの調製)
前記低屈折率層用塗布液Gにおいて、シリカゾルの代わりに中空シリカゾル(屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、空隙率58%、シリカ固形分に対して10質量%のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)で表面処理、固形分濃度22%)17.7g用いた以外は添加量も含め前記塗布液Gと同様にして、低屈折率層用塗布液Hを作成した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.394であった。
【0204】
(低屈折率層用塗布液Iの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.3g、中空シリカゾル(屈折率1.31、平均粒径60nm、シェル厚み10nm、空隙率58%、シリカ固形分に対して10質量%のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)で表面処理、固形分濃度22%)30.0g、ゾル液a2.0g、反応性シリコーンX−22−164B(商品名;信越化学工業社製)0.15g、含フッ素化合物F3035(商品名;日本油脂株式会社製、固形分濃度30%)0.50g、光重合開始剤(イルガキュア907(商品名)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.20g、メチルエチルケトン90.0g、シクロヘキサノン3.0gを添加、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Iを調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.44であった。
【0205】
[実施例1]
(1)光散乱層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、前記の光散乱層用塗布液Aを線数120本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの光散乱層を形成し、巻き取った。
【0206】
(2)低屈折率層の塗設
該光散乱層を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、前記低屈折率層用塗布液Aを線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ
(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
【0207】
(反射防止フィルムの鹸化処理)
製膜後、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルムを作製した。これを実施例1試料1とする。
【0208】
(反射防止フィルムの評価)
得られたフィルムについて、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0209】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球平均反射率を用いた。
【0210】
(2)耐擦傷性;スチールウール耐擦傷性評価(dryスチール)
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
◎:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
○△:弱い傷が見える。
△:中程度の傷が見える。
△×〜×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0211】
(3)耐擦傷性;水綿棒こすり耐性評価(wet綿棒)
ラビングテスターのこすり先端部に綿棒を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に500gの荷重をかけて、こすり回数を変えてこすりテストを行った。こすり条件は以下のとおり。
こすり距離(片道):1cm、 こすり速度:約2往復/秒
こすり終えた試料を観察して、膜剥がれが起こった回数で、こすり耐性を以下のように評価した。
0〜10往復で膜剥がれ ×
10〜30往復で膜剥がれ ×△
30〜50往復で膜剥がれ △
50〜100往復で膜剥がれ ○△
100〜150往復で膜剥がれ ○
150往復でも膜剥がれなし ◎
【0212】
表1の記載の通り、実施例1試料1において、光散乱層用塗布液を光散乱層用塗布液(B、C、D)に、あるいは低屈折率層用塗布液(B〜H)に変える以外は、実施例1試料1と同様にして実施例1試料2〜試料9、及び比較例である試料10を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
なお、光散乱層の乾燥後の膜厚は、3.4μmとなるよう、マイクログラビアロールの線数、回転数を調整した。
【0213】
【表1】

【0214】
表1に示された結果より、以下のことが明らかである。
本発明の反射防止フィルムにおいて、本発明により優れた面状均一性と高い耐擦傷性を持つ反射防止膜が生産性高く得られる。
【0215】
実施例1試料1、4〜7において、光散乱層塗布液Aで用いる希釈溶剤をトルエンの代わりにトルエン/シクロヘキサノン=85/15、トルエン/シクロヘキサノン=70/30という溶剤組成にすると、シクロヘキサノンの比率が高くなるにつれて透明支持体/光散乱層の界面密着力が強化され、耐擦傷性能が向上した。
また実施例1試料1〜7において、低屈折率層塗布液に使用しているオルガノシランのゾル液aの代わりにbを使用したところ、塗布液の経時安定性が良くなり、連続塗布に対する適性が高くなった。
また低屈折率層塗布液A、B、およびCに使用している熱架橋性含フッ素ポリマーの代わりに、屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113、固形分濃度6%、JSR(株)製)を使用したところ、耐擦傷性が著しく向上した。
また低屈折率層塗布液D、Eにジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)10gを添加して、同様に塗布したところ、耐擦傷性が著しく向上した。
【0216】
[実施例2]
実施例1の試料1と同様に作製した光散乱層の上に、前記低屈折率層用塗布液Eを線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、100℃で75秒乾燥の後、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取った。
その後、実施例1に記載の鹸化処理を行い、鹸化処理済み反射防止フィルムを作製した。これを実施例2試料201−1とする。
【0217】
試料201−1において、低屈折率層の塗布液を前記低屈折率用塗布液Iに変更した以外は試料201−1と同様にして試料202−1を作製した。
光重合開始剤を変更して表2に示すように試料201−1〜201−4及び202−1〜202−4を作製した。光重合開始剤はそれぞれ等質量部になるようにして変更した。
実施例1に準じた評価を行った結果を表2に示す。
【0218】
【表2】

【0219】
表2に示された結果より、本発明において低屈折率層の光重合開始剤の分子量を高くすることで耐擦傷性が改良されることがわかる。
【0220】
[実施例3]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/l、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報に記載の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保った。80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フィルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得た。
次に、実施例1試料1〜9(鹸化処理済み)フィルムを前記偏光板と貼り合わせて反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて低屈折率層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、光散乱性により反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0221】
[実施例4]
1.5mol/l、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例1試料1の裏面鹸化済みトリアセチルセルロースフィルムに、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0222】
[実施例5]
実施例1試料1〜9を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムとして、視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムSA 12B、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
また、自動変角光度計GP−5型((株)村上色彩技術研究所製)を用いて、入射光に対してフィルムを垂直に配置し、全方位に渡って散乱光プロファイルを測定した。このプロファイルより、出射角0°に対する30℃の散乱光強度を求めた。実施例1試料2及び3(光散乱層用塗布液B、C)は、出射角0°に対する30°の散乱光強度が0.06%であり、この光拡散性により、特に下方向の視野角アップ、左右方向の黄色味が改善され、非常に良好な液晶表示装置であった。比較として、試料10(比較例)のフィルムでは、出射角0°に対する30°の散乱光強度が実質0%であり、下方向視野角アップ、黄色味改善効果は全く得られなかった。
【0223】
[実施例6]
実施例1試料1〜9を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
【0224】
[実施例7]
実施例1試料1〜9および実施例3で作成した偏光板を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い表示が得られた。
【0225】
[実施例8]
実施例1試料1の光散乱層用塗布液Aおよび低屈折率層用塗布液Aを、以下の条件で塗布し、厚さ6μmの光散乱層、厚さ100nmの低屈折率層を形成した。下記のような高い塗布速度でも幅方向、長手方向に塗布量均一性の高い試料が得られた。得られたフィルムについて、実施例1試料1と同じように、反射防止フィルムの評価を行ったところ、実施例1試料1と同等の性能であった。
【0226】
基本条件:図2、図3(A)、図4および図5の図に示す塗布装置を用いた。ここで、スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部16aのウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の流路長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブ12の隙間を、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間よりも50μm長くし(オーバーバイト長さLOが50μm)、下流側リップランド18bとウェブ12との隙間GLを50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブ12との隙間GS 、及びバックプレート40aとウェブ12との隙間GBはともに200μmとした。それぞれの塗布液の液物性に合わせて、光散乱層:塗布速度=50m/分、ウエット塗布量=15ml/m2で、低屈折率層:塗布速度=40m/分、ウエット塗布量=5ml/m2で塗布を行った。なお、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】本発明の反射防止フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明において好ましく用いられるダイコーターの1実施形態を示す概略断面図である。
【図3】(A)図2のダイコーターの拡大図である。(B)従来のスロットダイを示す概略断面図である。
【図4】本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図5】図4の減圧チャンバーとウェブとの関係を模式的に示す断面図である。
【図6】図4の減圧チャンバーとウェブとの関係を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0228】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 光散乱層
4 低屈折率層
5 透光性粒子
W ウェブ
10 コーター
11 バックアップロール
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード形状
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a スロット開口部
17 先端リップ
18 ランド(平坦部)
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
UP 上流側リップランド18aのランド長さ
LO 下流側リップランド18bのランド長さ
LO オーバーバイト長さ
L 先端リップ17とウェブWの隙間
30 スロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
B バックプレート40aとウェブWの間の隙間
S サイドプレート40bとウェブWの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に少なくとも光散乱層と低屈折率層を有する反射防止フィルムであって、
該光散乱層は、少なくとも1種の平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子を透光性樹脂に分散してなる層であって、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、該透光性粒子が光散乱層全固形分中に3〜30質量%含有されてなる層であり、
前記低屈折率層は、架橋性若しくは重合性の官能基を含むバインダーを有してなる硬化性組成物を塗布して形成された屈折率が1.30〜1.55の層であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層のバインダーが(A)架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーを含有することを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記硬化性組成物が、
(B)2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、
(C)平均粒径が前記低屈折率層の厚みの30%以上100%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子、
(D)重合開始剤
を、各々少なくとも1種含有する硬化性組成物であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記硬化性組成物が、
(A)前記含フッ素ポリマー、
(C)平均粒径が前記低屈折率層の厚みの30%以上100%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子、
(E)酸触媒の存在下で製造されてなる、下記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物
を、各々少なくとも1種含有する硬化性組成物であることを特徴とする請求項2又は3に記載の反射防止フィルム。
一般式[A]
(R10m −Si(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【請求項6】
前記硬化性組成物が、更に
ラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる重合性基を少なくとも2個以上含有する多官能重合性化合物並びに
(D)重合開始剤
を含有する硬化性組成物であることを特徴とする請求項2、3または5のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記硬化性組成物が、更に(E)下記一般式[A]で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する硬化性組成物であることを特徴とする請求項4に記載の反射防止フィルム。
一般式[A]
(R10m −Si(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【請求項8】
バックアップロールによって支持されて連続走行するウェブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有し、
前記塗布工程は、前記スロットダイのウェブ進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブとを、両者の隙間が、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、前記光散乱層及び前記低屈折率層の何れか一方、または両方の層を形成するための塗布液を塗布する工程であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−48025(P2006−48025A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195311(P2005−195311)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】