説明

反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、塗布組成物

【課題】本発明は、1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することにより製造効率を向上させることができる反射防止フィルムの製造方法、該製造方法により得られる反射率、密着性、耐擦傷性、面状故障の改良の観点で優れた反射防止フィルム、並びに前記多層構造を形成するために用いられる塗布組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)含フッ素炭化水素構造またはポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムの製造方法、反射防止フィルム、及び塗布組成物に関する。より詳細には、1度の塗布工程で多層構造を形成することが可能で製造効率が高い塗布組成物、該塗布組成物を用いて2層以上の多層構造を有する反射防止フィルムを製造する方法、該方法で製造された反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示装置において、ディスプレイの表面に配置され、外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するために低い反射率が要求されると共に、高い物理強度(耐擦傷性など)、透明性等も要求されている。
そのため、反射防止フィルムとしては、一般に、基材上にハードコート層と該基材より低い屈折率を有する、適切な膜厚の低屈折率層がこの順で形成されたものである。
【0003】
これら反射防止フィルムは通常、塗布法により製造されるものであるが、異なる屈折率である薄膜を複数層積層することは、少なくとも複数回の塗布工程をはじめとする成膜工程が必要であり、複数の成膜工程に付随する設備を設けなくてはならず、またそれらを稼動させる工程時間も必要であるため生産性に問題を有している。
この問題に関し、1の塗液から2以上の層を形成することができる技術が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、反射防止フィルムを少ない塗布工程で製造できる点でこの技術は優れているが、塗布溶剤の選択肢の自由度がなく、塗布後の乾燥工程の制御が困難であり、条件の変動や乾燥の不均一性によって精密な膜厚制御によって得られる高い反射防止性能を有する反射防止フィルムを得ることが困難である。
また、反射防止フィルムにおいて、各層間の密着性、表面の耐擦傷性、面状故障の改良の観点でも更なる改良が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206832号公報
【特許文献2】特開2007−038199号公報
【特許文献3】特開2007−238897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することにより製造効率を向上させることができる反射防止フィルムの製造方法、該製造方法により得られる反射率、密着性、耐擦傷性、面状故障の改良の観点で優れた反射防止フィルム、並びに前記多層構造を形成するために用いられる塗布組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、下記構成とすることにより前記課題を解決し目的を達成しうることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明のひとつの形態は、1度の塗布工程で2層構造を形成可能な製造効率を向上させる塗布組成物に関する技術であり、特に表面エネルギーが低く、かつ無機微粒子への結合力に優れた特定の化合物で該無機微粒子を表面被覆することよって、該表面被覆された無機微粒子の表面エネルギーを低下させ、該無機微粒子を塗布した塗布膜内で自発的に偏在させるように制御する技術である。
特に、上記のような表面エネルギーが低下した無機微粒子は、空気界面側の上層に偏在させることができ、塗布膜内で多層構造を形成することが可能である。塗布組成物中に前記表面エネルギーの低い化合物と相分離しやすい硬化性バインダーを用いることで、上部に前記無機微粒子が存在する層と粒子が存在しない層を形成することができる。
本発明の課題は下記構成の構成によって達成される。
【0008】
1.
下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。
2.
前記(A)成分が、一般式(1)で表される含フッ素ポリマーである、上記1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MD)g
一般式(1)中、a〜e、及びgは、それぞれ各構成単位のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、0≦d≦50、0≦e≦50、0.1≦g≦30の関係を満たす値を表す。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(MD):塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
3.
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する重合単位を含有する重合体であって、塩基性成分を含む構成単位がグラフトされている、上記1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
4.
前記(MD)が、塩基性官能基を含有する不飽和基含有プレポリマーを反応させて得られた構成単位である、上記2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
5.
前記(MD)が、塩基性官能基を含有する化合物を多官能エポキシ化合物を介して結合した成分を反応させて得られた構成単位である、上記2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
6.
前記(A)成分が、一般式(2)で表されるポリシロキサン化合物である、上記1に記載の反射防止フィルムの製造方法
一般式(2):
(ポリシロキサン単位)α−(MA)β−(MB)γ−(MD)ε
一般式(2)中、α〜γ、及びεは、それぞれ各構成単位の質量比表し、2≦α≦99、0≦β≦70、0≦γ≦70、0.1≦ε≦30の関係を満たす値を表す。
(ポリシロキサン単位):他成分と共重合可能なポリシロキサン単位を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(MD):塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
7.
前記(A)成分が、分子内に含フッ素炭化水素単位及びポリシロキサン単位の両方を含有する、上記1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
8.
前記(A)成分が、分子内に重合性の官能基を含有する上記1〜7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
9.
前記(B)成分が、平均粒径1〜150nm、かつ屈折率1.46以下の金属酸化物微粒子である、上記1〜8のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
10.
前記(B)成分がオルガノシラン化合物、その部分加水分解物、及びその縮合物から選ばれる少なくとも一種で表面処理された無機微粒子である、上記1〜9のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
11.
前記(B)成分が、無機微粒子の表面が少なくともケイ素を構成成分とする金属酸化物粒子である、上記1〜10のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
12.
前記(C)成分の硬化性バインダーとして、分子内に少なくとも複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有する、上記1〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
13.
前記塗布組成物中に更に(E)成分として分子内にフッ素原子を含有する硬化性化合物を含有する上記1〜12のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
14.
前記(A)成分と前記(E)成分が共に含フッ素共重合体であり、それぞれの共重合体を形成する構成単位の少なくとも2種が共通している、上記13に記載の反射防止フィルムの製造方法。
15.
前記(C)成分の硬化性バインダーと前記(A)成分の化合物との混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)がゼロより大きい、上記1〜14のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
16.
前記塗布組成物中、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である上記13又は14に記載の反射防止フィルムの製造方法。
17.
前記(D)成分が以下の少なくとも2種の混合溶剤である、上記1〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
(D−1):(A)成分と(C)成分のいずれか一方との相溶性パラメーターの差が1〜10である揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
18.
前記溶剤が更に(D−3)成分として、沸点が100℃を超える揮発性溶剤を含有する上記17に記載の反射防止フィルムの製造方法。
19.
上記1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られた反射防止フィルム。
20.
上記19の反射防止フィルムであって、
上記1に記載の塗布組成物から形成される硬化層の膜厚が0.1〜20μmであり、硬化層中には、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層を有し、
該低屈折率層の膜厚が40〜300nmである、反射防止フィルム。
21.
上記20に記載の反射防止フィルムであって、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層の屈折率が1.15〜1.48である、反射防止フィルム。
22.
下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物。
(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と、少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1度の塗布工程で2層以上の多層構造を形成することが可能な塗布組成物を提供できる。また、該塗布組成物を用いることで生産性に優れた(製造工程が簡略化された)反射防止フィルムの製造方法を提供できる。更に、反射率が低く、高い耐擦傷性、高い密着性、更に面状故障の改良効果を有する反射防止フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法に関する。
(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。
また、本発明は前記塗布組成物にも関する。
【0011】
<(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物>
本発明における塗布組成物は(A)成分として、「含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物」を含有する。
【0012】
含フッ素炭化水素構造としては、含フッ素炭化水素を含有する基、及び含フッ素炭化水素を含有するモノマー単位(含フッ素炭化水素を含む単量体から得られる単位)などが挙げられる。
含フッ素炭化水素構造としては、含フッ素脂肪族炭化水素基、含フッ素芳香族炭化水素基、含フッ素脂肪族炭化水素を含有するモノマー単位、及び含フッ素芳香族炭化水素を含有するモノマー単位が挙げられ、含フッ素脂肪族炭化水素基又は含フッ素脂肪族炭化水素を含有するモノマー単位が好ましい。
含フッ素炭化水素構造の分子量は500〜100000が好ましく、更に好ましくは1000〜80000であり、最も好ましくは2000〜50000である。含フッ素炭化水素構造の分子量の調節は、含フッ素炭化水素を含有するモノマー単位の場合は、含フッ素ビニルモノマーの重合度を変えて行うことが容易であり好ましい。含フッ素ビニルモノマーとしては、例えばフルオロオレフィン類、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類、ビニルエーテル類の部分又は完全フッ化物等が挙げられる。これら含フッ素炭化水素構造は単独でも、複数種が混合されていてもよい。
【0013】
ポリシロキサン構造としては、アルキル基又はアリール基で置換されたシロキサンのオリゴマー又はポリマーが好ましく、アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、該アルキル基における水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい。例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、該アリール基における水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されていてもよい。前記アリール基の例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基及びフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。ポリシロキサン構造の分子量は500〜100000が好ましく、更に好ましくは1000〜50000であり、最も好ましくは2000〜20000である。
【0014】
(A)成分に含まれる塩基性官能基としてはアミノ基、4級アンモニウム基、アミド基、ピリジル基、トリアジン基、ピリル基、インドリル基、カルバゾイル基、イミダゾイル基等が挙げられる。中でも、粒子との相互作用の観点からアミノ基又はアミド基が好ましい。
【0015】
(A)成分の1分子当たりの塩基性官能基の個数は1〜20が好ましい。化合物中で塩基性の官能基がランダムに存在する場合は、1〜10が更に好ましく、最も好ましくは1〜5である。また、塩基性の官能基を後述のように化合物内の特定の位置に局在化させて導入する場合には、2〜20が好ましく、更に好ましくは3〜20、最も好ましくは4〜15である。また、(A)成分の分子量としては1000〜100000が好ましく、更に好ましくは2000〜50000が好ましく、3000〜30000である。
【0016】
(A)成分である「含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物」の合成方法に特に制限はないが、(A)成分を合成する好ましい第1の合成方法は、不飽和2重結合を含有する重合性の塩基性モノマー(ア)と含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有する不飽和2重結合を含有する重合性の化合物(イ)とを反応させる合成方法である。
【0017】
(A)成分を合成する好ましい第2の合成方法は、前記含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有する不飽和2重結合を含有する重合性の化合物(イ)に、前記塩基性モノマー(ア)に由来する重合単位を含有する不飽和2重結合を含有するプレポリマー(ウ)をグラフトさせる合成方法である。
【0018】
(A)成分を合成する好ましい第3の合成方法は、含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有しかつ末端にカルボキシル基を有するプレポリマー(エ)と塩基性化合物(オ)とを、多官能エポキシ化合物(カ)を介してグラフトさせる合成方法である。
【0019】
上記第2又は第3の合成方法により得られる(A)成分は、複数の塩基性の官能基を分子内に局在化して導入することが可能であり、(A)成分の無機微粒子への吸着性を高めるとともに、複数の塩基性官能基による無機微粒子の架橋凝集などの弊害を低減できるため特に好ましい。
【0020】
<塩基性モノマー、プレポリマー>
上述の好ましい合成方法において用いられる(ア)、(ウ)、(オ)、(カ)の各成分について述べる。
【0021】
(ア)不飽和2重結合を含有する重合性の塩基性化合物
本発明の(A)成分の好ましい第1の合成方法に用いることのできる不飽和2重結合を含有する重合性の塩基性化合物としては、以下のモノマーを好ましく用いることができる。アミノ(メタ)アクリレート類:ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジブチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、アミノプロピルアクリレート等(メタ)アクリルアミド類:N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジブチルメタクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−t−ブチルアクリルアミド、N−t−ブチルメタクリルアミド、**N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジブチルアミノエチル)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジブチルアミノエチル)メタクリルアミド、N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、t−ブチルアミノエチルアクリルアミド、t−ブチルアミノエチルメタクリルアミド等、が挙げられる。
これらモノマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ジアルキルアミノ基又はジアルキルアミド基を含有するモノマーが好ましい。
【0022】
(ウ)塩基性モノマーに由来する重合体成分からなる不飽和2重結合を含有するプレポリマー
本発明において、塩基性モノマーに由来する重合体成分からなる不飽和2重結合を含有するプレポリマーを用いて、本発明の(A)成分に塩基性基を局在化させて導入することができる。該プレポリマーは、塩基性モノマーに由来する重合体の多官能の塩基性官能基の一部を、エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物のエポキシ基と結合させて得ることが好ましい。エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
塩基性のモノマーは、上記(ア)の不飽和2重結合を含有する重合性の塩基性化合物を用いるのが好ましい。これら塩基性のモノマーは複数種を混合して用いてもよく、本発明の効果を妨げない範囲で他のモノマーと共重合することもできる。
塩基性モノマーに由来する重合体中の塩基性官能基の数は、2〜21が好ましく、更に好ましくは4〜21である。エポキシ基と不飽和二重結合性基を含有する化合物は、重合体中の塩基性官能基に対してエポキシ基は0.1〜0.5当量の範囲で該塩基性重合体に対して添加して反応させることが好ましい。このような条件とすることで、得られるプレポリマー中に不飽和2重結合を過剰に導入することが防止できる。本願の(ウ)のプレポリマー1分子中には、不飽和2重結合は1個であることが好ましい。
【0023】
(オ)塩基性化合物
塩基性化合物(オ)は、多官能エポキシ化合物を介して、上記(エ)の(末端)カルボキシル基を有するプレポリマーと結合することによって本願の(A)成分を形成することができる。この合成方法に用いることのできる塩基性化合物は、1級又は2級のアルキルアミンが好ましく、エポキシ基との反応性が高いため高収率で塩基性のアミンを固定できる。この塩基性化合物としては、アルキルアミン:
エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、ジエチレントリアミン又はテトラエチレンペンタミン等、アミノ複素環化合物:
N−アミノピペリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、2−アミノ−3−ニトロピリジン、2−ピコリルアミン、3−ピコリルアミン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン又は2−アミノピラジン等、複素環化合物アミン:
トリアゾール、イミダゾール、モルホリン、ピペリジンピロリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン又は4−ピペコリン等が挙げられる。
これらは単独で使用できるし、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0024】
(カ)多官能エポキシ化合物
本発明の上記好ましい3の態様において、用いることのできる多官能エポキシ化合物は、1分子内に複数個のエポキシ基を有する化合物であれば特に制限はないが、グリシジル基を有する不飽和2重結合基含有モノマーの(共)重合体、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型のエポキシ樹脂であることが好ましい。これら化合物は、分子量200〜5000の化合物が好ましく、更に好ましくは分子量300〜3000である。エポキシ当量は150〜500が好ましく、更に好ましくは150〜300である。一分子内のエポキシ基は2〜20が好ましく、更に好ましくは3〜15である。この範囲にすることで、本願の含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造と、塩基性成分を効率よく結合させることが容易である。
【0025】
市販のエポキシ樹脂としては、日本化薬製EOCN−120,EOCN−102、EOCN−103、EOCN−104等、三菱化学製エポキシ樹脂1001、1002、806、807、152,154,157S70等を使用することができる。
【0026】
<含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有するモノマー、プレポリマー>
上述の好ましい合成方法において用いられる(イ)、(エ)の各成分について述べる。
【0027】
(イ)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有する不飽和2重結合を含有する重合性の化合物
(イ)の化合物としては、不飽和二重結合を有する含フッ素炭化水素系のモノマーや不飽和二重結合を有するポリシロキサン系マクロモノマーが挙げられる。
【0028】
含フッ素ビニルモノマーとしては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM-2020(ダイキン製)等)、ビニルエーテル類の部分又は完全フッ化物等が挙げられる。これら含フッ素炭化水素成分は単独でも、複数種が混合されていてもよい。
【0029】
ポリシロキサンの片末端又は両末端が(メタ)アクリロイル基などで変性されたマクロモノマーとしては、その合成方法に制限はないが、チッソ(株)製サイラプレーンシリーズや信越化学工業(株)の変性シリコーンオイル等が入手できる。
(メタ)アクリロイル基で変性されたものとしてはサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725、FM−7711、FM−7721、FM−7725、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475等が挙げられる。
ポリシロキサンの分子量は1000〜100000が好ましく、更に好ましくは1500〜50000である。
【0030】
(エ)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有しかつ(末端)カルボキシル基を有するプレポリマー
本発明において、含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造を有しかつ(末端)カルボキシル基を有するプレポリマーを用いて、本発明の(A)成分に塩基性基を導入することができる。該プレポリマーは、以下の方法により合成することができる。
モノマーを重合する際に、汎用のアゾ−ニトリル化合物やパーオキサイド化合物を重合開始剤として重合を開始せしめ、連鎖移動剤としてカルボキシル基を含有する化合物、例えばメルカプト酢酸を用いることによって、形成される重合体の末端にカルボキシル基を導入したプレポリマーが合成できる。
また、カルボキシル基含有開始剤、例えば4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタイック酸)を用いて重合を開始させることにより、形成される重合体の末端にカルボキシル基を導入したプレポリマーが合成できる。
また、末端に限定されないが、含フッ素炭化水素成分又はポリシロキサン成分を有するポリマーにカルボキシル基を導入する方法は、重合体形成時にモノマーとともに、カルボキシル基含有モノマーを汎用のアゾ−ニトリル化合物やパーオキサイド化合物を重合開始剤で重合する方法である。カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
上記3つのプレポリマーの合成方法のなかでも。その後の(A)成分の合成時にゲル化などの問題が起こりにくいため、末端にカルボキシル基が導入される合成方法が好ましい。
これらの方法で合成されるプレポリマーの分子量は1000〜100000が好ましく、更に好ましくは2000〜50000である。
【0031】
また、本発明の(A)成分の別の合成方法によれば、主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド(市販のものでは、例えばVPS−0501、1001、和光純薬工業(株)社製)等のポリマー型開始剤を用いて合成することができる。該開始剤を用いて不飽和2重結合を有する前記塩基性モノマー(ア)を単独又はその他共重合可能なモノマーとともに重合し、ポリシロキサン構造を有する塩基性化合物を合成することができる。
【0032】
また、本発明の(A)成分の別の合成方法によれば、含フッ素炭化水素成分又はポリシロキサン成分を有し、かつイソシアネート基を有する化合物を合成し、その化合物のイソシアネート基を加水分解することにより1級アミノ基を導入することができる。イソシアネート基の導入方法に制限はないが、例えば不飽和2重結合を有するイソシアネート化合物を不飽和2重結合を有する含フッ素炭化水素成分又はポリシロキサン成分とともに共重合することで合成することができる。
【0033】
<塩基性官能基を有する含フッ素ポリマー>
本発明における(A)成分である分子内に塩基性官能基を有する化合物は、合成の容易性、併用する低屈折率硬化性材料との相溶性の観点から、以下の一般式(1)で表される構造の含フッ素ポリマーであることが好ましい。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MD)g
一般式(1)中、a〜e、及びgは、それぞれ各構成単位のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、0≦d≦50、0≦e≦50、0.1≦g≦30の関係を満たす値を表す。
【0034】
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(MD):塩基性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
【0035】
(MD)の構成単位は、前述の好ましい合成法で述べた(ア)の塩基性官能基を有する重合可能単量体から重合される構成単位であることが好ましい。
【0036】
(MF1)〜(MF3)における各単量体(下記一般式(1−1)〜(1−3)で表される化合物)について説明する。
・CF=CF−Rf:一般式(1−1)
式中、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
一般式(1−1)の化合物としては重合反応性の観点からは、パーフルオロプロピレン又はパーフルオロブチレンが好ましく、入手性の観点からパーフルオロプロピレンであることが特に好ましい。
【0037】
・CF=CF−ORf12:一般式(1−2)
式中、Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。前記含フッ素アルキル基は置換基を有していてもよい。Rf12は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の含フッ素アルキル基であり、更に好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基である。Rf12の具体例としては、下記のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。
−CF、−CFCF、−CFCFCF、−CFCF(OCFCFCF)CF
【0038】
・CH=CH−ORf13:一般式(1−3)
式中、Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。前記含フッ素アルキル基は置換基を有していてもよい。Rf13は、直鎖状であっても、分岐構造を有するものであってもよい。また、Rf13は脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環)を有していてもよい。更に、Rf13は炭素−炭素間にエーテル結合を有するものであってもよい。Rf13は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜15の含フッ素アルキル基である。
Rf13としては、具体的には下記のもの等が挙げられるが、これらに限定されない。(直鎖状)
−CFCF、−CH(CF)aH、−CHCH(CF)aF(a:2〜12の整数)
(分岐構造)
−CH(CF、−CHCF(CF、−CH(CH)CFCF、−CH(CH)(CFCF
(脂環式構造)
ペルフルオロシクロへキシル基、ペルフルオロシクロペンチル基又はこれらで置換されたアルキル基等
(その他)
−CHOCHCFCF、−CHCHOCH(CF)bH、−CHCHOCH(CF)bF(b:2〜12の整数)、−CHCHOCFCFOCFCF
その他、一般式(1−3)で表わされる上記単量体は、例えば特開2007−298974号公報の段落[0025]〜[0033]に記載のものも使用することができる。
【0039】
塗膜の強度向上の点で、本発明の(A)成分である含フッ素ポリマーは、ポリマー分子内に架橋性部位を有する繰り返し単位を含むことが好ましく、該架橋性部位が、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和2重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、求核剤によって置換され得る基、及び酸無水物の少なくともいずれかであることがより好ましい。
一般式(1)の(MA)は、架橋性部位(架橋反応に関与しうる反応性部位)を少なくとも1つ含有する構成単位を表す。
架橋性部位としては、例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和2重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
(MA)の架橋性基は、好ましくは反応性不飽和2重結合を有する基又は開環重合反応性基であり、より好ましくは反応性不飽和2重結合を有する基である。
【0040】
以下に、上記一般式(1)中の(MA)で表される構成単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化1】

【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
一般式(1)における(MB)は任意の構成単位を表す。(MB)は、他の構成単位とともに共重合体を形成可能な単量体の構成単位であれば特に制限はなく、溶剤への溶解性、無機微粒子との親和性、無機微粒子の分散安定性などの観点から適宜選択することができる。
【0047】
(MB)を形成するための単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0048】
また、(MB)は、ポリシロキサン構造を有する構成単位を含むことが好ましい。(MB)としてポリシロキサン構造を含むことにより、無機微粒子の上部偏在性を高めることができ、更に面状故障の原因となる下層に微量残存する無機微粒子を低減することができる。
より具体的には、(MB)は、主鎖又は側鎖に下記一般式(2)で表されるポリシロキサン繰り返し単位を含むことが好ましい。
一般式(2)
【0049】
【化6】

【0050】
式中、R及びRは、それぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基としては、炭素数1〜4が好ましく、置換基を有していてもよい。具体的には、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。
アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、置換基を有していてもよい。具体的には、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
及びRは、メチル基又はフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
pは2〜500の整数を表し、好ましくは5〜350であり、より好ましくは8〜250である。
【0051】
側鎖に一般式(2)で表されるポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えばJ.Appl.Polym.Sci.2000,78,1955、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、エポキシ基、水酸基、カルボキシル、酸無水物基等の反応性基を有するポリマーに対して、相対する反応性基(例えばエポキシ基、酸無水物基に対してアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)を片末端に有するポリシロキサン(例えばサイラプレーンシリーズ、チッソ株式会社製等)を高分子反応によって導入する方法や、ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができる。
【0052】
主鎖にポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド(市販のものでは、例えばVPS−0501、1001、和光純薬工業(株)社製)等のポリマー型開始剤を用いる方法、重合開始剤、連鎖移動剤由来の反応性基(例えばメルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)をポリマー末端に導入した後、片末端あるいは両末端反応性基(例えばエポキシ基、イソシアネート基等)含有ポリシロキサンと反応させる方法、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンオリゴマーをアニオン開環重合にて共重合させる方法等が挙げられる。中でもポリシロキサン部分構造を有する開始剤を利用する手法が容易であり好ましい。
【0053】
一般式(1)中、a〜e、及びgは、それぞれ各構成単位のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、0≦d≦50、0≦e≦50、0.1≦g≦30の関係を満たす値を表す。
(MF1)成分及び(MF2)成分のモル分率(%)a+bを高めることで該ポリマーの表面自由エネルギーが低下し、該ポリマーによって修飾された微粒子が上部偏析し易くなるが、無機微粒子への吸着性、汎用溶剤への溶解性などの点で高すぎるのは好ましくなく、30≦a+b≦70が好ましい。
【0054】
また、(MF3)の導入も無機微粒子の上部偏析性能に寄与する。前記のように(MF3)成分のモル分率cは0≦c≦50であり、好ましくは5≦c≦20である。
a〜cの含フッ素モノマー成分のモル分率の和は、40≦a+b+c≦90の範囲であることが好ましく、40≦a+b+c≦75であることがより好ましい。
【0055】
(MD)で表される塩基性基を少なくとも1つ有する構成単位は、該ポリマーの(B)成分の無機微粒子への相互作用が十分でありかつ(B)成分無機微粒子の上部偏析性に必要な含フッ素成分の量も確保できるという点で、そのモル分率は0.1≦g≦30の範囲であることが好ましく、更に好ましくは0.1≦g≦20、最も好ましくは0.2≦g≦10である。
【0056】
(MA)で表される架橋性基を有する構成単位は、塗膜の硬度上昇の点でポリマーに導入することが好ましい。本発明では特に、(MA)成分のモル分率は1≦d≦50の範囲であることが好ましく、5≦d≦40の範囲であることが好ましく、5≦d≦30の範囲であることが特に好ましい。
【0057】
(MB)で表される任意の構成単位のモル分率eは0≦e≦50の範囲であることが好ましく、0≦e≦20の範囲であることがより好ましく、0≦e≦10の範囲であることが更に好ましい。
【0058】
本発明において、無機微粒子への親和性の点から、前記含フッ素ポリマーは、分子内に極性の高い官能基を有することが好ましい。従って、前記(MB)として、分子内に極性の高い官能基を有することが好ましい。極性の高い官能基としては、アルキルエーテル基、シラノール基、グリシジル基、オキセタニル基、ポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基を有することが好ましく、更に好ましくは、アルキルエーテル基、ポリアルキレンオキシド基である。
これら官能基を有する重合単位は、モル分率として0.1〜15%が好ましく、更に好ましくは1〜10%である。
また、前述のように含フッ素ポリマー中には、ポリシロキサン構造を導入することが微粒子の上部偏析性及び塗膜面状改良の点で好ましい。含フッ素ポリマー中のポリシロキサン構造の含有率は全ポリマーに対する質量比で0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0059】
前記含フッ素ポリマーの質量平均分子量は、1000〜100000が好ましく、より好ましくは2000〜50000であり、更に好ましくは3000〜30000である。
【0060】
ここで、質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。
【0061】
<塩基性官能基を有するブロック又はグラフト型含フッ素ポリマー>
(A)成分のなかでも、塩基性官能基のポリマー中での位置の制御が容易であり、(B)成分の無機粒子との相互作用を強めかつ、(B)成分の粒子間架橋凝集などの弊害を低減できる観点からは、含フッ素ポリマーは、下記一般式(10)で表される構造を有するブロック又はグラフト型のポリマーであることが好ましい。
一般式(10):
[(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e]j−[(ME)]k
一般式(10)中、[ ]はそれぞれの( )の構成単位からなるプレポリマー又は連結可能な構造体を表し、j、kはそれらの質量比(wt%)を表す。70≦j≦99.8、0.2≦k≦30である。a〜eは、プレポリマー内での各構成単位のモル分率を表し、a+b+c+d+e=100、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、0≦d≦50、0≦e≦50の関係を満たす値を表す。
【0062】
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(ME):塩基性基を少なくとも2つ有する構成単位を表す。
【0063】
一般式(10)における(MF1)、(MF2)、(MF3)、(MA)、(MB)は、前記一般式(1)の頁で述べたものと同様である。
(ME)の構成単位は、前述の好ましい合成法2及び3で述べた塩基性官能基を2つ以上有し、重合体と結合可能な構成単位であることが好ましい。具体的には、(ウ)塩基性モノマーに由来する重合体成分からなる不飽和2重結合を含有するプレポリマーから形成される構成単位、(オ)塩基性化合物と多官能エポキシ化合物の反応物から形成される構成単位であることが好ましい。
【0064】
以下に、本願の(A)成分である前記一般式(1)で表わされる含フッ素共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、表1には、重合することにより一般式(1)のフッ素含有構成成分を形成する単量体((MF1)、(MF2)、(MF3)、(MB)、(MD))及び構成成分(MA)の組合せとして表記する。表中a〜gは、各成分の単量体のモル比(%)を表す。表中(MB)成分でwt%の記載があるものは、全重合体中の該成分の質量%を示す。表中「(MB)」の欄でEVE以外の成分については、全重合体中の該成分の含有率(質量%:wt%)を、「e」の欄にEVEのモル比につづいて左から順に記載した。なお、本明細書において、重合体の分子量は特に断りがない場合は質量平均分子量を意味する。
【0065】
【表1】

【0066】
上記表中の略号は、以下を表す。
(MF1)成分
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
(MF2)成分
FPVE:パーフルオロプロピルビニルエーテル
(MF3)成分
MF3−1:CH=CH−O−CHCH−O−CH(CF
【0067】
(MB)成分
EVE:エチルビニルエーテル
VPS―0501:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約5000、(株)和光純薬工業製
VPS―1001:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約1万、(株)和光純薬工業製
FM−0721:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
【0068】
(MD)成分
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート、(株)興人製
DMAPAA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、(株)興人製
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド、(株)興人製
*1)AOI‘:2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートのアクリロイルが主鎖に重合した構成成分であって、イソシアネート基を加水分解したもの。
*2)HEVE/IPDI‘:ヒドロキシエチルビニルエーテルのビニル基が主鎖に重合した構成成分であって、水酸基にイソホロンジイソシアネートの1つのイソシアネート基を反応させたもので、残る一つのイソシアネート基を加水分解したもの
【0069】
以下に、本願の(A)成分である前記一般式(10)で表わされるブロック又はグラフト型含フッ素共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、表2には、重合することにより一般式(10)のフッ素含有構成成分を形成する単量体((MF1)、(MF2)、(MF3)、(MB))及び構成成分(MA)(ME)の組合せとして表記する。
含フッ素ポリマー部の表中の組成比は、含フッ素ポリマー各成分の単量体のモル比(%)を表し、wt%の記載があるものは、含フッ素ポリマー部での該成分の質量%を示す。また、塩基性部(MD)の表中の組成当量比は、塩基性官能基とエポキシ基の当量比を表す
また、含フッ素ポリマー部と塩基性部の全重合体中の組成(j/k比)はそれぞれの質量比を表す。
【0070】
【表2】

【0071】
上記表中の略号は、以下を表す。含フッ素ポリマー部
+MAc:連鎖移動剤としてメルカプト酢酸を使用し、ポリマー末端にカルボキシル基を導入したもの。
+ABCPA:重合開始剤として、4,4‘−アゾビス(4−シアノペンタイック酸)を用いポリマー末端にカルボキシル基を導入したもの
【0072】
塩基性部(ME)
DMAEA/GMA:ジメチルアミノエチルアクリレートの重合体のアミノ基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1400)
DMAA/GMA:ジメチルアクリルアミドの重合体のアミド基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1100)
DMAPAA/GMA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドの重合体のアミノ基とグリジジルメタアクリレートのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1700)
DMAEA/4HBAGE:ジメチルアミノエチルアクリレートの重合体のアミノ基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1500)
DMAA/4HBAGE:ジメチルアクリルアミドの重合体のアミド基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1200)
DMAPAA/4HBAGE:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドの重合体のアミノ基と4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルのグリジジル基の(90/10当量比混合物の)反応したメタアクリレートプレポリマー(質量平均分子量1600)
DEA/EOCN104S:ジエチルアミンとEOCN−104S(平均7.5官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量約220)の45/55(当量比)反応物(分子量約1800)
DBA/EOCN104S:ジブチルアミンとEOCN−104S(平均7.5官能のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量約220)の40/60(当量比)反応物(分子量約1300)
DEA/(GMA/MMA=1/1):グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの1:1共重合体(重量平均分子量約1000)のグリシジル基とジエチルアミンの反応物(重量平均分子量約1300)。アミンとグリシジル基の当量比は40/60。
【0073】
本発明の(A)成分である分子内にポリシロキサン成分を有する樹脂は、以下の構造のポリシロキサン共重合体であることが好ましい。
〔ポリシロキサン共重合体〕
ポリシロキサン共重合体、下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(2):
(ポリシロキサン単位)α−(MA)β−(MB)γ−(MD)ε
一般式(2)中、α〜γ及びεは、それぞれ各構成成分の質量比表し、2≦α≦99、0≦β≦70、0≦γ≦70、0.1≦ε≦30の関係を満たす値が好ましい。
【0074】
(ポリシロキサン単位):他成分と共重合可能なポリシロキサン成分を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成成分を表す。
(MB):任意の構成成分を表す。
(MD):塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成成分を表す。
【0075】
ポリシロキサン共重合体中のポリシロキサン単位の質量比αは、前記(A)成分としてのポリシロキサン共重合体の上部偏在性を上げることと前記(B)成分の無機微粒子の上部偏在性を上げる観点から、2≦α≦99の範囲が好ましく、30≦α≦95がより好ましく、50≦α≦90が更に好ましい。
【0076】
ポリシロキサン共重合体中の架橋性基を少なくとも1つ有する構成成分の質量比βは、硬化後の耐擦傷性や密着性を上げる観点から、0≦β≦70の範囲が好ましく、0≦β≦50がより好ましく、0≦β≦30が更に好ましい。
【0077】
ポリシロキサン共重合体中の任意の構成成分の質量比γは、前記(A)成分と前記(B)成分の溶剤への溶解性、無機微粒子との親和性、無機微粒子の分散安定性などの観点から、0≦γ≦70が好ましく、0≦γ≦50がより好ましく、0≦γ≦30が更に好ましい。
【0078】
ポリシロキサン共重合体中の塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成成分の質量比εは、無機微粒子の上部偏在性の観点から0.1≦ε≦30が好ましく、0.1≦ε≦20がより好ましく、0.1≦ε≦10が更に好ましい。
【0079】
(ポリシロキサン単位)は、ポリシロキサンの片末端又は両末端が(メタ)アクリロイル基などで変性されたマクロモノマー、又はポリシロキサン部位を有する重合開始剤を用いて導入することができる。
ポリシロキサンマクロモノマーとしては、チッソ(株)製サイラプレーンシリーズや信越化学工業(株)の変性シリコーンオイル等を用いることができる。(メタ)アクリロイル基で変性されたものとしてはサイラプレーンFM−0711、FM−0721、FM−0725、FM−7711、FM−7721、FM−7725、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−2475等が挙げられる。
また、ポリシロキサン部位を有する重合開始剤としては、アゾ基含有ポリシロキサンアミド(例えば特開平6−93100号公報に記載のアゾ基含有ポリシロキサンアミド、市販のものでは、例えばVPS−0501、1001、和光純薬工業(株)社製)等を用いることができる。
(MA)の架橋性基は、好ましくは反応性不飽和2重結合を有する基又は開環重合反応性基であり、より好ましくは反応性不飽和2重結合を有する基である。(MA)の具体的構造は上述の一般式(1)の含フッ素ポリマーの頁で述べたものと同一である。
(MB)は、上述の一般式(1)の含フッ素ポリマーの頁で述べたものと同一である。
(MD)は分子内に不飽和2重結合を有する塩基性化合物が好ましく、上述の一般式(1)の含フッ素ポリマーの頁で述べたものと同一である。
【0080】
以下に、本願の(A)成分であるポリシロキサン成分を有する塩基性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、表2及び3には、反応させることにより(A)成分を形成する原材料の組合せとして表記する。
【0081】
【表3】

【0082】
上記表中の略号は、以下を表す。ポリシロキサン成分
FM−0721:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
FM−0725:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量10000、(株)チッソ製
FM−7721:両末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
FM−7725:両末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量10000、(株)チッソ製
VPS―0501:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約5000、(株)和光純薬工業製
VPS―1001:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約1万、(株)和光純薬工業製
【0083】
(MD)成分
DMAEA:ジメチルアミノエチルアクリレート、(株)興人製
DMAPAA:N−(ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、(株)興人製
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド、(株)興人製
【0084】
(MB)成分
MMA:メチルメタアクリレート
【0085】
また、本発明においては市販のアミノ変性ポリシロキサン化合物を使用することができる。チッソ(株)製サイラプレーンシリーズ アミノ基で変性されたものとしては両末端変性型(FM−3311、FM−3321、FM−3325等)が挙げられる。また、信越化学工業(株)製の変性シリコーンオイルとしては、アミノ基で変性されたものとしては片末端変性型(KF−864、KF−865、KF−868等)、ジアミン型(KF−859,KF−8004)、アミノポリエーテル型(X−22−3939A)、両末端アミノ変性型(X−22−161A、X−22−161B、KF−8012)、側鎖変性(KF−857,KF−9001,KF−862,X−22−9192)等が挙げられる。
【0086】
<塗布組成物の調製方法>
本発明の塗布組成物を調製する際には、各成分を溶剤に溶解又は分散したものを混合することができ、(A)成分の塩基性官能基を有する化合物と(B)成分の無機微粒子とを(D)成分の溶剤と共にあらかじめ混合した後に(C)成分のバインダーと混合することが好ましい。特に、(C)成分が塩基性官能基と相互作用し得る酸性の官能基(カルボキシル基、水酸基、メルカプト基、等)を有する場合には、意図せぬ副反応を防止するためにこの方法を採ることが好ましい。無機微粒子が酸性の金属酸化物粒子である場合、酸性金属酸化物の表面に露出している官能基と前記(A)成分の塩基性官能基が相互作用することが可能となる。
【0087】
<(B)成分:無機微粒子>
本発明に用いられる(B)成分の無機微粒子は、その平均粒径が1nm以上150nm以下の無機微粒子であることが好ましく、より好ましくは平均粒径が5nm以上100nm以下の無機微粒子であり、更に好ましくは10nm以上80nm以下の無機微粒子である。
無機微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると硬化層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので、上述の範囲内とするのが好ましい。無機微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、無機微粒子の平均粒径は電子顕微鏡による観察により測定することができる。
【0088】
本発明の無機微粒子の組成に特に制限はなく、例えばケイ素、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛、アンチモンなどの酸化物又はそれらの混合物を用いることができるが、本発明における(A)成分と共に塗膜内で上部偏在するためには、少なくとも粒子表面がケイ素を構成成分とする金属酸化物であることが好ましい。例えば表面が二酸化ケイ素からなるコアシェル粒子であっても、ケイ素とその他無機元素との混晶を形成していてもよい。特に低屈折率化の点からは二酸化ケイ素(シリカ)の粒子であることが好ましい。
また、(A)成分との相互作用の強さの観点から、二酸化ケイ素(シリカ)の粒子やアンチモンを構成成分とする無機微粒子等を用いることが好ましい。
【0089】
本発明における(B)成分の無機微粒子の屈折率は、1.46以下、より望ましくは屈折率1.15〜1.46、特に好ましくは1.15〜1.40、更に好ましくは1.15〜1.35、最も好ましくは1.17〜1.32が好ましい。(B)成分の無機微粒子は、硬化層の上部に偏在して、耐擦傷性の向上、屈折率の低下に寄与するため、低屈折率であることが望ましい。
【0090】
(B)成分の無機微粒子は、中空構造であるのが更に好ましい。中空構造の無機微粒子の場合に屈折率は外殻の無機質のみの屈折率を表すものではなく、粒子全体の平均の値を示す。この場合、粒子内の空孔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると空隙率xは下記数式(II)で表される。
(数式II): x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜60%、更に好ましくは30〜60%である。この空隙率の範囲にすることで、低屈折率性と粒子自身の強度を好適な範囲にすることができる。
【0091】
(B)成分の無機微粒子は(A)成分の塩基性官能基を有する化合物と相互作用していることが好ましい。好ましい態様によれば、前記(B)成分の無機微粒子は、前記(A)成分の塩基性官能基と前記(B)成分の酸性の無機微粒子の表面OH基が相互作用し無機微粒子の表面が被覆され、無機粒子の表面自由エネルギーが低下し、微粒子を上方偏在させることが可能となる。
また、前記塩基性官能基を含有している(A)成分と前記(B)成分の無機微粒子はあらかじめ本願塗布組成物の調液前に、前記(A)成分と前記(B)成分とを混合(相互作用)させておくことが好ましい。
【0092】
無機微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。中でもカップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。シランカップリング剤のなかでも、重合性の官能基を有するものが好ましく、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが好ましく、最も好ましくはアクリロイル基である。これら官能基導入により、無機微粒子の上部偏在層の塗膜強度が向上できる。
本発明においては、特に、(B)成分がオルガノシラン化合物、その部分加水分解物、及びその縮合物から選ばれる少なくとも一種で表面処理された無機微粒子であることが好ましい。
【0093】
(B)成分の無機微粒子と前記(A)成分の比率
前記(A)成分の(B)成分に対する量は、(A)成分が架橋性官能基を有さない場合には、10〜150質量%が好ましく、15〜100質量%がより好ましい。(A)成分が架橋性官能基を有する場合には、10〜200質量%が好ましく、15〜150質量%がより好ましく、更に好ましくは50〜150質量%である。この範囲にすることで、粒子の上部偏在性、塗膜強度の観点で好ましい。
【0094】
<(C)成分:分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー>
本発明の塗布組成物は、(C)成分として分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダーを含有する。(C)成分の好ましい一例としては、熱又は電離放射線により架橋する反応性基を有するモノマー又はオリゴマーが好ましく、2官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分がより好ましく、3官能基以上を有する多官能モノマーや多官能オリゴマーを有する樹脂成分が更に好ましい。
【0095】
前記(C)成分としては、前記(A)成分より表面自由エネルギーが大きいことが好ましい。30mN/m以上の表面自由エネルギーを有する硬化層を形成可能な樹脂であることが好ましく、35〜80mN/mの範囲がより好ましく、40〜60mN/mの範囲が特に好ましい。また、前記(A)成分と前記(C)成分の表面自由エネルギーの差が、5mN/m以上であることが好ましく、10mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。この範囲とすることにより、本発明の塗布組成物を用いた場合に層分離構造がより形成し易くなる。硬化後の表面自由エネルギーが高すぎても、低すぎても、反射率の低下、ムラなどが発生することがある。表面自由エネルギーは、強度、塗布性の観点から、上記の好ましい下限以上とすることが好ましい。
【0096】
前記(B)成分の無機微粒子が前記(A)成分の塩基性官能基を含有する化合物によって、表面を覆われ、塗膜の最表面(空気界面側)に偏在するためには、前記(A)成分と前記(C)成分の分離性が大きい方が好ましい。
前記(A)成分と前記(C)成分の分離性は熱力学的及び動力学的考察によって予測することができる。例えば、フローリー・ハギンスの格子理論で分離性の指標である混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)を求めると、重合度、体積分率(φ:文献では組成分率とも呼ばれる)、及び相互作用パラメーター(χ)の関数として予測することが知られている(たとえば、Batesの「Polymer−Polymer Phase Behavior」、Science、Vol.251 pp.898−905、1991、又は、ストローブルの「高分子の物理」シュプリンガー・フェアラーク東京、1998、参照)。
ΔGはゼロより大きいと、2成分は分離する方向に進み、ゼロより小さいとと、2成分は混合する方向に進むことを意味している。本発明において、前記(B)成分が前記(A)成分によって、表面を覆われ、塗膜の最表面に偏在するためには、前記(A)成分と前記(C)成分のΔGはゼロより大きいことがより好ましく、より分離を促進させ、層界面の乱れを軽減させるという観点で、ΔGは0.01以上が更に好ましい。
【0097】
前記(C)成分の硬化性バインダーが有する官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
耐擦傷性向上の観点から(C)成分の硬化性バインダーとしては、分子内に少なくとも複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有することが好ましい。
【0098】
光重合性官能基を有する硬化性バインダーの具体例としては、
ネオペンチルグリコールアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン、2−2−ビス{4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
等を挙げることができる。
【0099】
更にはエポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類も、光重合性多官能モノマーとして、好ましく用いられる。
【0100】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、1,2,4−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールトリアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールペンタアクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ジ)ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリアクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサトリアクリレート等が挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリロイル又はメタクリロイル」を表す。
【0101】
モノマーバインダーとしては、各層の屈折率を制御するために、屈折率の異なるモノマーを用いることが出来る。特に高屈折率モノマーの例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が含まれる。
また、例えば特開2005−76005号、同2005−36105号に記載されたデンドリマーや、例えば特開2005−60425号記載のようなノルボルネン環含有モノマーを用いることもできる。 多官能モノマーは、二種類以上を併用してもよい。
【0102】
本発明の塗布組成物においては、(A)成分と(B)成分と(C)成分との含有量は、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が、1度の塗布工程で、屈折率の異なる2層以上を形成させ、かつハードコート性を付与する観点から1/199〜60/40であり、好ましくは1/199〜50/50、より好ましくは1/99〜10/90である。
本発明の塗布組成物に用いられる前記(A)成分と前記(B)成分と(C)成分と後述する前記(E)成分の質量比は、
[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分]=1/199〜60/40が好ましく、1/199〜50/50がより好ましく、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分]=1/99〜10/90が更に好ましい。
【0103】
<(D)成分:溶剤>
本発明に用いられる(D)溶剤としては、各成分を溶解又は分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。
溶媒は1種類でも良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
(D)成分としては、以下の少なくとも2種の混合溶剤であることが好ましい。
(D−1):(A)成分と(C)成分のいずれか一方との相溶性パラメーターの差が1〜10である揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
更に、(D−3):沸点が100℃を超える揮発性溶剤を含有することがより好ましい。
【0104】
特に、乾燥負荷の観点から、常圧室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量(沸点が100℃以下の溶剤100質量部に対して沸点が100℃以上の溶剤1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部)含有させることが好ましい。2種の溶媒の沸点の差が25℃以上であることが好ましく、35℃以上が特に好ましく、50℃以上が更に好ましい。沸点の異なる有機溶剤を少なくとも2種併用することで、無機微粒子の上部偏在、バインダーの分離がし易くなる。更に前記(A)成分又は前記(C)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤を少量(沸点が100℃以下の溶剤100質量部に対して1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、特に好ましくは3〜30質量部)含有させることが好ましい。溶解性の悪い溶剤を添加することで、バインダーの分離性が促進される。
【0105】
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)、炭酸ジメチル(90.3℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、メチルエチルケトン、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中ではメチルエチルケトンが特に好ましい。
【0106】
沸点が100℃以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0107】
本発明においては、(A)成分と(C)成分のいずれか一方とのSP値(溶解性パラメータ)の差が1〜10である揮発性溶剤を用いることが好ましい。
(A)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤としては、溶解性パラメータの絶対値が20以上30以下の溶剤が好ましく、より好ましくは21以上27以下、更に好ましくは22以上26以下の溶剤である。例えば、プロピレングリコールモノエチルエーテル(溶解性パラメータ=23.05)、酢酸エチル(溶解性パラメータ=23.65)、メタノール(溶解性パラメータ=28.17)、エタノール(溶解性パラメータ=25.73)、2−ブタノール(溶解性パラメータ=22.73)、などがある。好ましくはプロピレングリコールモノエチルエーテルである。
塗布組成物を塗布し、乾燥が進んでいく過程において、溶解性パラメータの絶対値が20以上の溶剤は前記(A)成分との相溶性が低くなる傾向が強く、層分離性を高めるために溶解性パラメータ差が1.0以上の溶剤を用いることが適している。また塗布組成物の調液の際に、溶解性パラメータの絶対値が30以上の溶剤は前記(A)成分を溶解しにくい傾向が高いため溶解性パラメータ差が10以下の溶剤を用いることが適している。
【0108】
また、前記(C)成分と溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤としては、溶解性パラメータの絶対値が10以上20以下の溶剤が好ましく、より好ましくは12以上18以下の溶剤である。
これら溶剤として、例えば、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(溶解性パラメータ=14.54)トリフルオロメチルベンゼン(溶解性パラメータ=16.76)、パーフルオロヘプチルエチルアセテート(溶解性パラメータ=14.79)、1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−ドデカフルオロヘキシルエチルアセテート(溶解性パラメータ=16.72)、トリフルオロ酢酸メチル(溶解性パラメータ=15.73)などがある。好ましくは1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンである。溶解性パラメータ差が1.0以上10以下の溶剤を併用することにより、適度な層分離性を保ちつつ必要最低限の溶解性を満足することが容易である。
【0109】
(溶解性パラメータ)
溶解性パラメータとはどれだけ溶媒などに溶けやすいかということを数値化したものであり、有機化合物ではよく使われる極性と同様の概念で、この溶解性パラメーターが大きい程、極性が大きいことを表す。本発明で利用する前記(A)成分は、好ましくは含フッ素ポリマーであり、Fedorの推算法で計算した溶解性パラメーターは例えば19以下となる。前項に記載した前記(C)成分のDPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物の溶解性パラメーター21.4である。上記でいうSP値は例えばFedorの推算法(SP値基礎・応用と計算方法 p.66:山本秀樹著:情報機構(2005.3.31発行)で計算した値である。
【0110】
本発明の塗布組成物中の(D)成分である有機溶剤の配合割合は、塗布組成物の固形分濃度が2〜70質量%になるように添加するのが好ましく、3〜60質量%になるように添加するのがより好ましく、5〜50質量%になるように添加するのが特に好ましい。固形分濃度が低すぎると乾燥に時間がかかる、乾燥起因の膜厚ムラが出易いなどの懸念があり、固形分濃度が高すぎると粒子の偏在が十分に起こらない、塗布量が少なくなり、塗布ムラが出易いなどの懸念がある。
【0111】
<(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物>
本発明の塗布組成物には、(E)成分として、フッ素原子を含有する硬化性化合物を含有することが好ましい。(E)成分を含有することにより、(A)成分と(B)成分の上部偏在性が向上し面状故障の低減と共に、上部偏在層の低屈折率化の効果を有する。本発明における反射防止フィルムの耐擦傷性を向上させるためにも、(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物が上方偏在することによって最表層の硬度やスリップ性を上げることが好ましい。
(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物は、ポリマー、モノマーどちらであっても良いが、含フッ素ポリマーの場合には、含フッ素部位と架橋反応に関与しうる官能基を有する部位とを有する分子量1000以上のポリマーであることが好ましい。一方、含フッ素モノマーを用いた場合には、多官能フッ素モノマーの重合性基が、アクリロイル基、メタアクリロイル基及び、−C(O)OCH=CHから選ばれるいずれかの基を有することが好ましい。
また、(E)成分として含フッ素ポリマー、及び含フッ素モノマーを混合して用いることもできる。以下、それぞれについて詳述する。
【0112】
<含フッ素ポリマー>
(E)成分として用いることができる含フッ素ポリマーは、下記一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。
一般式(3):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e
一般式3中、a〜eは、それぞれ各構成成分のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、5≦d≦50、0≦e≦50の関係を満たす値を表す。
【0113】
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
【0114】
(MF1)〜(MF3)については、前述の一般式(1)の含フッ素ポリマーで述べたものと同様であり、好ましい構造等も同様である。
【0115】
(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物は、架橋性部位を有する繰り返し単位を含むことが必須であり、該架橋性部位が、水酸基、加水分解可能な基を有するシリル基、反応性不飽和二重結合を有する基、開環重合反応性基、活性水素原子を有する基、求核剤によって置換され得る基、及び酸無水物の少なくともいずれかであることがより好ましい。
一般式(3)の(MA)は、架橋性部位(架橋反応に関与しうる反応性部位)を少なくとも1つ含有する構成成分を表す。
架橋性部位としては、例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0116】
(MA)の架橋性基は、好ましくは反応性不飽和二重結合を有する基又は開環重合反応性基であり、より好ましくは反応性不飽和二重結合を有する基である。(MA)で表される構成成分の好ましい具体例は前述の一般式(1)におけるMA−1〜MA−70である。
【0117】
一般式(3)における(MB)は任意の構成単位を表す。(MB)は、(MF1)、(MF2)で表される構成単位を形成する単量体及び(MA)で表される構成単位を形成する単量体と共重合可能な単量体から得られる構成単位であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができる。
【0118】
(MB)を形成するための単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0119】
(MB)は、ポリシロキサン構造を有する構成成分を含むことが好ましい。(MB)としてポリシロキサン構造を含むことにより、塗膜中で上部偏在しやすくなり、得られる膜の低反射化、面状改良などの効果を有する。またポリシロキサン構造を有するため積層体の滑り性、防汚性を向上させることができる。
前記(A)成分と前記(E)成分が共に含フッ素共重合体であり、それぞれの共重合体を形成する構成単位の少なくとも2種が共通していることが好ましい。特に、(A)成分が前記一般式(1)で表される含フッ素ポリマーである場合には、構造の類似している(A)成分、(B)成分、(E)成分の各成分が共に上部偏在しやすくなる。この効果を顕著に発揮するためには、一般式(1)の化合物と一般式(3)の化合物が、それぞれ共重合体を形成する構成単位の少なくとも2種類が共通していることが好ましく、更に好ましくは3種類が共通していることである。
ポリシロキサン構造の導入方法は、一般式(1)の化合物で述べた方法と同様の方法を用いることができる。
【0120】
一般式(1)中、a〜eは、それぞれ各構成成分のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、5≦d≦50、0≦e≦50の関係を満たす値を表す。
低屈折率化のためには(MF1)成分及び(MF2)成分のモル分率(%)a+bを高めることが望まれるが、重合反応性の点で一般的な溶液系ラジカル重合反応では50〜70%程度の導入が限界でありこれ以上は一般に困難である。本発明においては、a+bの下限は40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましい。
【0121】
また、(MF3)の導入も低屈折率化に寄与する。前記のように(MF3)成分のモル分率cは0≦c≦50であり、好ましくは5≦c≦20である。
a〜cの含フッ素モノマー成分のモル分率の和は、40≦a+b+c≦90の範囲であることが好ましく、50≦a+b+c≦75であることがより好ましい。
【0122】
(MA)で表される重合体単位の割合が少なすぎると硬化膜の強度が弱くなる。本発明では特に、(MA)成分のモル分率は5≦d≦40の範囲であることが好ましく、15≦d≦30の範囲であることが特に好ましい。
【0123】
(MB)で表される任意の構成成分のモル分率eは0≦e≦50の範囲であることが好ましく、0≦e≦20の範囲であることがより好ましく、0≦e≦10の範囲であることが更に好ましい。
【0124】
本発明において、塗布面状改良、膜の耐擦傷性改良の点から、前記(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物は、分子内に極性の高い官能基を有することが好ましい。従って、前記(MB)として、分子内に極性の高い官能基を有することが好ましい。極性の高い官能基としては、水酸基、アルキルエーテル基、シラノール基、グリシジル基、オキサタニル基、ポリアルキレンオキシド基、カルボキシル基を有することが好ましく、更に好ましくは、水酸基、アルキルエーテル基、ポリアルキレンオキシド基である。
これら官能基を有する重合単位は、モル分率として0.1〜15%が好ましく、更に好ましくは1〜10%である。
また、前述のように含フッ素ポリマー中には、ポリシロキサン構造を導入することが塗膜面状及び耐擦傷性の点で好ましい。含フッ素ポリマー中のポリシロキサン構造の含有率は全ポリマーに対する質量比で0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0125】
前記含フッ素ポリマーの数平均分子量は、1,000〜1,000,000が好ましく、より好ましくは5,000〜500,000であり、更に好ましくは10,000〜100,000である。
【0126】
以下に、前記一般式(3)で表される共重合体の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記表4には、重合することにより一般式(3)のフッ素含有構成単位を形成する単量体(MF1)、(MF2)、(MF3)、及び構成成分(MA)、及び(MB)の組合せとして表記する。表中a〜eは、各成分の単量体のモル比(%)を表す。表中(MB)成分でwt%の記載があるものは、全重合体中の該成分の質量%を示す。表4中「(MB)」の欄でEVE以外の成分については、全重合体中の該成分の含有率(質量%:wt%)を、「e」の欄にEVEのモル比につづいて左から順に記載した。
【0127】
【表4】

【0128】
上記表中の略号は、以下を表す。(MF1)成分
HFP:ヘキサフルオロプロピレン(MF2)成分
FPVE:パーフルオロプロピルビニルエーテル(MF3)成分
MF3−1:CH=CH−O−CHCH−O−CH(CF
【0129】
(MB)成分
EVE:エチルビニルエーテル
VPS―1001:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約1万、(株)和光純薬工業製
FM−0721:メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量5000、(株)チッソ製
FM−0725:片末端メタクリロイル変性ジメチルシロキサン、平均分子量10000、(株)チッソ製
VPS−0501:アゾ基含有ポリジメチルシロキサン、ポリシロキサン部の分子量約5000、(株)和光純薬工業製
【0130】
なお、前記含フッ素ポリマー中、加水分解可能な基を有するシリル基(加水分解性シリル基)を架橋性基として含有する場合には、ゾルゲル反応の触媒として公知の酸あるいは塩基触媒を配合することができる。これらの硬化触媒の添加量は、触媒の種類、硬化反応性部位の違いによって任意であるが、一般的には塗布組成物全固形分に対して0.1〜15質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%程度である。
【0131】
また、前記含フッ素ポリマーが架橋性基として水酸基を含む場合、本発明における組成物には、この含フッ素ポリマー中の水酸基と反応し得る化合物(硬化剤)を含有することが好ましい。
この硬化剤は水酸基と反応する部位を2個以上有することが好ましく、4個以上有することが更に好ましい。
【0132】
硬化剤の構造は、水酸基と反応しうる官能基を前記個数有するものであれば特に限定はなく、例えばポリイソシアネート類、イソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物、アミノプラスト類、多塩基酸又はその無水物などを挙げることができる。
【0133】
硬化剤は、保存時の安定性と架橋反応の活性の両立の観点、及び形成される膜の強度の観点から、酸性条件下で水酸基含有化合物と架橋反応するアミノプラスト類が好ましい。アミノプラスト類は、含フッ素ポリマー中に存在する水酸基と反応可能なアミノ基、すなわちヒドロキシアルキルアミノ基若しくはアルコキシアルキルアミノ基、又は窒素原子に隣接し、かつアルコキシ基で置換された炭素原子を含有する化合物である。具体的には、例えばメラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物等を挙げることができる。
【0134】
上記メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているもので、具体的にはメラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができる。特に、メラミンとホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応して得られるメチロール化メラミン及びアルコキシ化メチルメラミン、並びにその誘導体が好ましく、特に保存安定性からアルコキシ化メチルメラミンが特に好ましい。またメチロール化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンについて特に制約はなく、例えば「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されているような方法で得られる、各種樹脂の使用も可能である。
【0135】
また上記尿素化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、更には環状尿素構造であるグリコールウリル骨格や2−イミダゾリジノン骨格を有する化合物も好ましい。前記尿素誘導体等のアミノ化合物についても前記「ユリア・メラミン樹脂」等に記載の各種樹脂の使用が可能である。
【0136】
硬化剤として好適に用いられる化合物としては、含フッ素ポリマーとの相溶性の点から、特にメラミン化合物又はグリコールウリル化合物が好ましく、その中でも反応性の観点から、硬化剤が分子中に窒素原子を含有し、かつ該窒素原子に隣接するアルコキシ基で置換された炭素原子を2個以上含有する化合物であることが好ましい。特に好ましい化合物は下記一般式H−1又はH−2で表される構造を有する化合物、及びそれらの部分縮合体である。
【0137】
【化7】

【0138】
式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基又は水酸基を表す。
含フッ素ポリマーに対するアミノプラストの添加量としては、含フッ素ポリマー100質量部当たり、1〜50質量部であることが好ましく、3〜40質量部であることが好ましく、5〜30質量部であることが更に好ましい。1質量部以上であれば、薄膜としての耐久性を十分に発揮することができ、50質量部以下であれば低屈折率を維持できるので好ましい。
【0139】
水酸基含有含フッ素ポリマーと前記硬化剤の反応には、硬化触媒を使用することが好ましい。この系では酸により硬化が促進される為、硬化触媒として酸性物質を使用することが望ましいが、通常の酸を添加すると塗布液中でも架橋反応が進行してしまい、故障(ムラ、ハジキなど)の原因となる。従って、熱硬化系で保存安定性と硬化活性を両立するために、加熱により酸を発生する化合物や、光により酸を発生する化合物を硬化触媒として添加することがより好ましい。具体的な化合物は、特開2007−298974号公報、段落[0220]〜[0230]に記載されている。
【0140】
〔含フッ素モノマー〕
(E)成分として用いることができる含フッ素モノマーは、主に複数のフッ素原子と炭素原子からなる(但し、一部に酸素原子及び/又は水素原子を含んでも良い)、実質的に重合に関与しない原子団(以下、「含フッ素コア部」とも言う)と、エステル結合やエーテル結合などの連結基を介してラジカル重合、イオン重合、又は縮合重合性などの重合性を有する化合物であって、2つ以上の重合性基を有していることが好ましい。
【0141】
含フッ素モノマーは、下記一般式(I)で表される化合物(重合性含フッ素化合物)が好ましい。
一般式(I) : Rf{−(L)−Y}(式中Rfは少なくとも炭素原子及びフッ素原子を含み、酸素原子及び水素原子のうち少なくとも一方を含んでも良い、鎖状又は環状のn価の基を表し、nは2以上の整数を表す。Lは単結合又は二価の連結基を表し、mは0又は1を表す。Yは重合性基を表す。)
【0142】
上記一般式(I)において、Yは重合性基を表す。Yは、ラジカル重合性、イオン重合性、又は縮合重合性の基であることが好ましく、重合性不飽和基又は開環重合性基であることがより好ましく、重合性不飽和基が更に好ましい。具体的には、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アルコキシシリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、及び−C(O)OCH=CHから選ばれるものが更に好ましい。これらの中でも、重合性の観点から、ラジカル重合性又はカチオン重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、エポキシ基、又は−C(O)OCH=CHが好ましく、特に好ましいのはラジカル重合性を有する(メタ)アクリロイル基、アリル基、α−フルオロアクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHであり、最も好ましいのは(メタ)アクリロイル基、又は−C(O)OCH=CHである。
【0143】
なお、重合性含フッ素化合物は重合性基を架橋性基とする架橋剤であってもよい。
架橋性基としては例えば、水酸基又は加水分解可能な基を有するシリル基(例えばアルコキシシリル基、アシルオキシシリル基等)、反応性不飽和二重結合を有する基((メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニルオキシ基等)、開環重合反応性基(エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基等)、活性水素原子を有する基(たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、メルカプト基、β―ケトエステル基、ヒドロシリル基、シラノール基等)、酸無水物、求核剤によって置換され得る基(活性ハロゲン原子、スルホン酸エステル等)等が挙げられる。
【0144】
Lは単結合又は二価の連結基を表し、炭素数1〜10のアルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基、−O−、−S−、−N(R)−、及びこれらを2種以上組み合わせて得られる二価の連結基が好ましい。ただし、前記Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。
Lがアルキレン基又はアリーレン基を表す場合、Lで表されるアルキレン基及びアリーレン基はハロゲン原子で置換されていることが好ましく、フッ素原子で置換されていることがより好ましい。
【0145】
ここで、架橋間分子量の計算値とは、重合性含フッ素化合物の重合性基が全て重合した重合体において、合わせて3個以上炭素原子及び/又はケイ素原子及び/又は酸素原子が置換した炭素原子を(a)、合わせて3個以上炭素原子及び/又は酸素原子が置換したケイ素原子を(b)とするときに、(a)と(a)、(b)と(b)、又は(a)と(b)で挟まれた原子団の原子量の合計をいう。架橋間分子量を大きくすると、含フッ素モノマー中のフッ素含量を高めることができ、低反射率化、導電性や防汚性能を向上させることが出来るが、一方、塗布膜の強度及び硬度が低下し、塗布膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が不足してしまう。一方、架橋間分子量を小さくすると、分子間架橋密度があがり、膜強度が向上するが、フッ素量低下し、反射率が上昇してしまうため、架橋密度とフッ素含率の観点から、含フッ素多官能モノマーの重合性基を全て重合させたとき、架橋間分子量の計算値が2000以下であることが好ましい。また1000より小さい事が更に好ましく、50より大きく800よりも小さいことが最も好ましい。また、重合性フッ素含有化合物は分子内に合わせて3個以上酸素原子及び/又は炭素原子及び/又はケイ素原子で置換された炭素原子を有する(ただし、カルボニルの酸素原子は除く)ことが好ましい。上記炭素原子を含有する事で硬化時に緻密な架橋網目構造を構築することができ、塗膜の硬度が上がる傾向にある。
【0146】
一般式(I)で表される重合性含フッ素化合物のより好ましい態様は下記一般式(I−1)、(I−2)及び(I−3)で表されるものである。
【0147】
【化8】

【0148】
式中、Rfは、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、d価の有機基を表す。Rfは、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、e価の有機基を表す。Lfは−CFCFCHO−又は−CFCHO−(いずれも炭素原子側で酸素原子と結合)を表し、L及びYは上記一般式(I)におけるL及びYと同義であり、d,eはそれぞれ独立に2以上の整数を表し、fは1以上の整数を表す。
【0149】
Rf及びRfの炭素数は好ましくは0〜30であり、より好ましくは0〜10である。
【0150】
上記記一般式(I−1)、(I−2)又は(I−3)で表される化合物の更に好ましい態様は、下記一般式(I−1’)、(I−2’)及び(I−3’)で表されるものである。
【0151】
【化9】

【0152】
式中、Rf’は、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、d’価の有機基を表す。Rf’は、酸素原子、実質的に炭素原子とフッ素原子のみから構成される基、又は炭素原子とフッ素原子と酸素原子のみから構成される基であって、e’価の有機基を表す。Rは水素原子、フッ素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜5のアルキル基)、フルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)のいずれかを表す。d’、e’はそれぞれ独立に2又は3の整数を表し、f’は1〜4の整数を表す。
【0153】
Rf’及びRf’の炭素数は好ましくは0〜30であり、より好ましくは0〜10である。
【0154】
以下に本発明の一般式(I)で表される重合性含フッ素化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0155】
【化10】

【0156】
【化11】

【0157】
【化12】

【0158】
【化13】

【0159】
【化14】

【0160】
本発明の一般式(I)で表される重合フッ素含有化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下のような公知の方法の組み合わせにより製造することができる。なお、以下の説明において、既出の記号については特に記載のない限り前記のものと同義である。
工程1:Rh(CO)a又はRh(CHOCOR)aで表される化合物を米国特許第5,093,432号明細書や国際公開第00/56694号に記載の液相フッ素化反応及び引き続くメタノールとの反応により、メチルエステルRf(COCH)aを得る工程。(式中、Rはメチル基やエチル基のような低級アルキル基を表し、Rはアルキル基、好ましくは含フッ素アルキル基、より好ましくはペルフルオロアルキル基を表し、Rhは液相フッ素化反応によりRfとなり得る基を表す。)
【0161】
工程2:Rf(COCH)aで表される化合物を水素化リチウムアルミニウムや水素化ホウ素ナトリウム等の還元剤で還元してアルコールRf(CHOH)aを得る工程。
工程3:Rf(CHOH)aで表される化合物に、エチレンカーボネート又はエチレンオキシド、及びグリシジルアルコールから選ばれる1種類以上をブロック状又はランダム状に付加させてRf(CHO−L−H)a得る工程。なお、b=c=0の場合、本工程は必要ない。
【0162】
工程4:Rf(CHO−L−H)aで表される化合物に重合性基を導入して一般式(I)で表される化合物Rf(CHO−L−Y)aを得る工程。
ここで、Yが−COC(R)=CHの場合、重合性基導入反応としては、アルコールRf(CHO−L−H)aと酸ハライドXCOC(R)=CH(Xはハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。)とのエステル化反応やカルボン酸HOCOC(R)=CHとの脱水縮合を利用することができる。また、Yがその他の重合性基の場合、Rf(CHO−L−H)aと対応するハライド化合物との求核置換反応等を利用することができる。
【0163】
含フッ素モノマーとして好ましいものの具体例を以下に示す。ただし、これらに限定されるものではない。
また、フッ素含有モノマーは、塗布面状改良、膜の耐擦傷性改良の点から、特開2006−28409号公報の段落番号〔0023〕から〔0027〕に記載のX−2〜4、X−6、X−8〜14、X−21〜32に加えて以下の化合物も好ましく用いることができる。
【0164】
【化15】

【0165】
【化16】

【0166】
【化17】

【0167】
また、下記化合物も好ましく用いることができる。
【0168】
【化18】

【0169】
【化19】

【0170】
【化20】

【0171】
【化21】

【0172】
【化22】

【0173】
【化23】

【0174】
【化24】

【0175】
【化25】

【0176】
また、含フッ素モノマーは、他のバインダーや非含フッ素モノマーとの相溶性の観点で、下記一般式(II)で表される、エーテル結合を介してフッ素で置換されたアルキル鎖の繰り返し単位を有するモノマーを用いることができる。
【0177】
一般式(II) : Y−(CF−CFX−O)n2−Y
(式中Xは−F又は−CFを表し、n2は1〜20の整数を表し、Yは重合性基を表す。)
【0178】
Yの好ましい範囲、及び具体例は前記一般式(I)におけるYと同様である。
以下に一般式(II)で表される多官能フッ素含有モノマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0179】
FP−1 : CH=CH−COOCH(CFCF−O)CHOCOCH=CH
FP−2 : CH=CH−COOCH(CFCF−O)CHOCOCH=CH
FP−3 : CH=C(CH)−COOCH(CFCF−O)CHOCOC(CH)=CH
FP−4 : CH=C(CH)−COOCH(CFC(CF)F−O)CHOCOC(CH)=CH
FP−5 : CH=C(CH)−COOCH(CFC(CF)F−O)CHOCOC(CH)=CH
【0180】
また、含フッ素モノマーは、架橋構造を形成でき、硬化した皮膜の強度や硬度が高い点から、下記多官能含フッ素含有(メタ)アクリル酸エステルも好ましく用いることができる。具体例としては、例えば1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,7,8−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5−テトラフルオロデカン、1,2,8,9−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,9,10−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,10,11−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,11,12−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,10−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9,10−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11,12−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等が挙げられる。
【0181】
これらのフッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法により製造することができる。例えば相当する含フッ素エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応や、相当する含フッ素多価アルコール又は前記開環反応で中間体として得られる水酸基(ヒドロキシル基)を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸クロライドとのエステル化反応により製造される。
【0182】
(含フッ素モノマーのフッ素含有率)
含フッ素モノマーのフッ素含有率は、前記(C)成分と相分離し、上方偏在させるために表面エネルギーを低下させる観点から、含フッ素モノマーの分子量の25.0質量%以上であることが好ましい。更に好ましくは、45.0〜80.0質量%であり、最も好ましくは50.0〜80.0質量%である。一方、80.0質量%を超える場合には硬化皮膜中のフッ素原子含有量が高いが、皮膜の強度及び硬度が低下し、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が不足してしまう。
【0183】
本発明の(E)フッ素原子を含有する硬化性化合物としては、膜面状の安定性からは、含フッ素ポリマーが好ましい。また、塗布組成物の溶解性向上、密着性向上の点からは、含フッ素硬化性モノマーが好ましい。含フッ素ポリマーと含フッ素硬化性モノマーを併用することは、これら性能を高いレベルで両立することができるため特に好ましい。
【0184】
[反射防止フィルムの構造]
本発明の反射防止フィルムは前記方法により得られた反射防止フィルムである。
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有することによって、実質的に二層の層構造を有する硬化膜が得られる。これらの分離して形成される二層は、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層とそれ以外の構成成分が存在している高屈折率層とから構成されている。本発明において、前記低屈折率層が前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分を主成分として構成され、前記高屈折率層が前記(C)成分由来の成分を主成分として構成されていることが好ましい。本発明において、前記低屈折率層には、(A)及び(B)成分が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.5倍以上の濃度で存在していることが好ましく、更に好ましくは2.0倍以上、最も好ましくは3.0〜200倍である。また、前記低屈折率層には、(B)成分は、20〜90体積%の密度で存在することが好ましく、更に好ましくは30〜80体積%以上、最も好ましくは40〜70体積%である。
前記組成物を塗布して得られる硬化膜の屈折率の異なる多層構造とは、前記(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層と、それ以外の構成成分が存在している高屈折率層の少なくとも二層で構成された構造のことであり、実質性能を落とさない範囲で、該2層の界面近傍で、構成成分が混合した層(前記(A)成分由来の成分と前記(C)成分由来の成分が混合している層、また前記(B)成分と前記(C)成分由来の成分が混合している層、前記(A)成分由来の成分と前記(B)成分と前記(C)成分由来の成分が混合している層等)があってもよい。
本発明の(E)成分に由来する成分は、(B)成分と(A)成分が偏在して構成された層に存在することが好ましい。
【0185】
本発明の反射防止フィルムの硬化膜の多層構造は、例えば、得られたフィルムの断面TEM、又は、C60スパッタリングESCAで観察することにより確認することができる。断面TEMからは前記(B)成分の膜内分布状態を観察することができ、また、C60スパッタリングESCAにて、深さ(膜厚)方向のフッ素原子、又は珪素原子の強度比を解析することで、(A)、(C)、(E)成分に由来する成分の膜厚方向の組成物分布を知ることができる。
例えば、断面TEMにより、前記(B)成分が空気界面側に多く存在していることが観察でき、C60スパッタリングESCAでは、空気界面側にフッ素、又は珪素原子が多く存在する層が存在し、空気界面側の表面から膜厚が10nm〜100nmの深さからフッ素、又は珪素原子が減少し、300nm以降はフッ素、又は珪素原子が実質検出されない領域の存在などが観察される。
本発明の塗布組成物を塗布し、乾燥させていったときに、前記(A)成分由来の成分と混合自由エネルギーがゼロ以上の前記(C)成分は相分離を起こし、分離が開始される。このとき表面エネルギーの低いフッ素成分、又はシリコーン成分を有するため、前記(A)成分由来の成分は疎水界面(空気界面)に偏在し、前記(A)成分由来の成分に被覆されている前記(B)成分も同時に上方偏在することで実質的に前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分が偏在している層が形成できる。前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分は共に低屈折率材料であるので、上層(空気界面側)に低屈折率層を形成することができる。同時に、前記(C)成分は下層(基材界面側)に偏在することになるので、実質的に前記(C)成分由来の成分が主成分として構成された層が形成することができる。前記(C)成分由来の成分は前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分に比べ、高屈折率材料であるために、高屈折率層が形成でき、屈折率差が生じることにより、反射防止能を得ることができる。
【0186】
また粒子を上方偏在させることにより、耐擦傷性を向上するとともに、使用量は少量で良いためにコスト面でも優れていると言える。
また、前記(A)成分同様表面エネルギーの低い前記(E)成分を用いると、前記(E)成分は上部偏在し、実質的に前記(B)成分と前記(A)成分由来の成分と前記(E)成分由来の成分が偏在している層が形成できる。前記(E)成分は硬化性のフッ素ポリマー若しくはモノマーであるために、耐擦傷性に優れ、更に面状改良効果も示す。
【0187】
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程によって作製した低屈折率層の膜厚とは、塗膜の断面のTEM写真において、(B)成分である無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.5倍以上の濃度で存在している領域のことで、40〜300nmであることが好ましく、50〜200nmであることがより好ましく、60〜150nmであることが更に好ましい。
【0188】
本発明の塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、塗膜から溶剤を揮発させ乾燥する工程、塗膜を硬化し硬化層を形成する工程によって作製した前記(C)成分を主成分とする高屈折率層の膜厚は断面TEMにより求められた全体の膜厚から前記低屈折率層の膜厚を差し引いた値として算出し、100〜20000nmであることが好ましく、300〜10000nmであることがより好ましく、500〜8000nmであることが更に好ましい。膜厚は鏡面反射率測定で計測した反射率を元にした光学フィッティングや断面TEM観察により求められたものである。前記(C)成分を主成分とする高屈折率層はハードコート性能を付与することが好ましい。例えば、前記(C)成分として多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。更に好ましくは、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0189】
本発明の反射防止フィルムの前記(B)成分が偏在している低屈折率層の屈折率は1.15〜1.48であることが好ましく、1.20〜1.45であることがより好ましく、1.30〜1.40の範囲であることが更に好ましい。屈折率が高すぎると反射防止能が低下する原因となり、また、低すぎると耐擦傷性が低下する原因となる。
【0190】
本発明の反射防止フィルムの前記(C)成分由来の成分を主成分とする高屈折率層の屈折率は1.48〜1.80であることが好ましく、1.48〜1.70であることがより好ましく、1.50〜1.60の範囲であることが更に好ましい。
【0191】
塗布組成物を基材上に塗布する際に、上記多層構造を有する層の屈折率、膜厚を最適となるよう設計することはもちろんであるが、反射率を更に低下させるための中間屈折率層、ゴミ付きを防止するための帯電防止機能層、物理的強度を付与するためのハードコート層、防眩性を付与するための防眩層等を目的に応じて設けることができる。
【0192】
本発明の製造方法を用いて反射防止フィルムを作製する場合は、基材を透明フィルム基材として本発明の塗布組成物を塗布すれば良い。その場合、光学特性、物理特性等が良好な好ましい態様としては、〔フィルム基材/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/下塗り層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/導電性層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/干渉ムラ防止層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/光拡散層/高屈折率層/低屈折率層〕、〔フィルム基材/密着性層/高屈折率層/低屈折率層〕の構成が例示できる。
【0193】
〔基材〕
本発明に用いることができる基材としては種々の層を積層可能なものであればどのようなものでも良いが、連続搬送による高生産性の観点からフィルム基材が好ましい。
フィルム基材は、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下)であれば特に制限はない。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムが挙げられる。また、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等のオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー等の透明ポリマーからなるフィルムも挙げられる。更に、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマーや前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマーからなるフィルム等も挙げられる。特に光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。
【0194】
フィルム基材の厚さ、巾については適宜に決定し得る。フィルム基材の厚さとしては、一般には強度や取り扱い性等の作業性、薄層性等の点を考慮し、10〜500μm程度である。特に20〜300μmが好ましく、30〜200μmがより好ましい。フィルム基材の巾としては、100〜5000mmのものが好適に用いられ、800〜3000mmであることが好ましく、1000〜2000mmであることが更に好ましい。更に、フィルム基材の屈折率としては特に制限されず、通常1.30〜1.80程度、特に1.40〜1.70であることが好ましい。
【0195】
基材の表面は平滑であることが好ましく、平均粗さRaの値が1μm以下であることが好ましく、0.0001〜0.5μmであることが好ましく、0.001〜0.1μmであることが更に好ましい。
【0196】
〔反射防止フィルムの製造方法〕
本発明の反射防止フィルムは、塗布組成物を塗布する工程、乾燥する工程、硬化する工程により製造することが可能であり、上述のようにフィルム基材を用いることで連続的に塗布、乾燥、硬化工程を行うことができ、高い生産性を実現できる。この際、得られる積層体はフィルム状の積層体、即ち反射防止フィルムが作製される。以下に各々の工程について説明する。なお、本発明の製造方法は前記工程以外にその他の工程を有していてもよい。
【0197】
(塗布工程)
本発明の製造方法における塗布方法としては、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(ダイコート法)(米国特許2681294号明細書参照)、マイクログラビアコート法等の公知の方法が用いられ、その中でもマイクログラビアコート法、ダイコート法が高い生産性、塗膜の均一性の観点で好ましく用いられる。
【0198】
[スロットダイを用いて支持体上に押し出す工程]
本発明のフィルムを高い生産性で供給するために、エクストルージョン法(ダイコート法)が好ましく用いられる。特に、ハードコート層や反射防止層のような、ウエット塗布量の少ない領域(20cc/m以下)で好ましく用いることができるダイコーターについては例えば特開2007−293313号公報などを参照することができ、本発明においても同様である。
【0199】
(乾燥工程)
本発明の製造方法において、本発明の塗布組成物を基材上に塗布した後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送する。その際の乾燥ゾーンの温度としては0℃〜140℃が好ましく、10℃〜120℃が更に好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温に、後半は比較的高温にする等の調整をすることも好適である。但し、塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下とすることは必須である。これらの好ましい乾燥条件以外に乾燥工程の制約はなく、通常の塗布後乾燥に使用できる方法を用いることができる。
【0200】
(硬化方法)
本発明において、塗布乾燥された積層体を紫外線照射及び/又は熱により硬化することができる。ここで紫外線照射による硬化とは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等、また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプ又はシンクロトロン放射光等の光源を用いて乾燥した膜に紫外線を照射して膜を硬化させることをいう。
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は20〜10000mJ/cmが好ましく、更に好ましくは、100〜2000mJ/cmであり、特に好ましくは、150〜1000mJ/cmである。
紫外線による硬化の場合、各層を1層ずつ照射してもよいし、積層後照射しても良い。紫外線照射の際に表面の硬化を促進させる目的で、窒素ガス等のパージをして酸素濃度を低下させることもできる。硬化させる環境の酸素濃度は5%以下が好ましい。本発明の反射防止フィルムのように最表層が低屈折率層を形成する場合には、酸素濃度は0.1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.02%以下が最も好ましい。
本発明の製造方法によって得られた積層体は粒子含有層を有することが好ましい。また、該積層体は反射防止機能を有することが好ましい。
【0201】
〔ハードコート層〕
本発明の反射防止フィルムは、物理的強度を付与するために基材の一方の面にハードコート層を設けることができる。
【0202】
ハードコート層の膜厚は、十分な耐久性又は耐衝撃性の付与、カール、生産性、コストの観点から、0.5μm〜50μm程度とするのが一般的である。好ましい膜厚としては1μm〜30μmであり、更に好ましくは2μm〜20μmであり、最も好ましくは3μm〜15μmである。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが更に好ましく、最も好ましくは5H以上である。
更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0203】
ハードコート層の屈折率は、光学設計、反射率、色味、ムラ、コストの点から、屈折率が1.48〜1.75の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.49〜1.65であり、更に好ましくは1.50〜1.55である。
【0204】
ハードコート層の表面散乱にて防眩機能を付与する場合は、表面ヘイズ(全ヘイズ値から内部ヘイズ値を引いた値。内部ヘイズ値はフィルム表面の凹凸をフィルム表面と同じ屈折率の物質により無くすことで測定可能である。)が0.1%〜20%が好ましく、0.2%〜5%がより好ましく、0.2%〜2%であることが特に好ましい。表面ヘイズが大きすぎると明室コントラストが悪化し、小さすぎると映り込みが悪化する。
【0205】
また、ハードコート層に透光性粒子を含有して内部散乱を付与する場合、内部ヘイズは目的により好ましい範囲が異なるが、内部散乱により液晶パネルの模様や色ムラ、輝度ムラ、ギラツキなどを見難くしたり、散乱により視野角を拡大する機能を付与する場合は、内部ヘイズ値は0%〜60%であることが好ましく、1%〜40%であることがより好ましく、10%〜35%であることが特に好ましい。内部ヘイズが大きすぎると正面コントラストが低下し、白茶け感が増す。小さすぎると使用できる素材の組合せが限定され、防眩性その他の特性値の合わせこみが困難となり、また、高コストとなる。一方、正面コントラストを重視する場合は、0%〜30%が好ましく、更に好ましくは1%〜20%であり、最も好ましくは1%〜10%である。
【0206】
また、ハードコート層の表面凹凸形状については、中心線平均粗さ(Ra)を0.30μm以下とすることが好ましい。Raは、より好ましくは0.01〜0.20μmであり、更に好ましくは0.01〜0.12μmである。Raが大きいと表面散乱起因の白ボケ感が出たり、ハードコート層上に形成する層の均一性が得難いなどの問題が起こる場合がある。
【0207】
〔導電性層〕
本発明の反射防止フィルムにおいては、帯電防止の目的で導電性層を設けることができ、それにより反射防止フィルム表面でのゴミつきを防止することができる。導電性層は各層と別の単独層として設けても良いし、積層した層のいずれかが導電性層を兼ねるような兼用層として設けることも可能である。
【0208】
導電性層の膜厚は、0.01μm〜10μmが好ましく、0.03μm〜7μmがより好ましく、0.05μm〜5μmが最も好ましい。導電性層の表面抵抗SR(Ω/sq)は、logSRとして、5〜12であることが好ましく、5〜11がより好ましく、6〜10であることが最も好ましい。導電性層の表面抵抗は公知の測定法で測定することができ、例えば四探針法により測定可能である。
【0209】
〔干渉ムラ防止層〕
本発明の反射防止フィルムにおいては、干渉ムラ防止の目的で干渉ムラ防止層を設けることができ、それにより反射防止フィルム表面での干渉ムラを防止することができる。干渉ムラは基材と基材上に塗布した層(例えばハードコート層)の屈折率差によって反射光が干渉し、膜厚ムラに対応して色味変化してしまうことであり、これを防止するために基材と基材上に塗布した層の間に屈折率を連続的に変化させることで、干渉ムラを防止する方法がある(特開2003−205563号公報、特開2003−131007号公報等参照)。このような干渉ムラ防止層を基材層の上に設けても良い。
【0210】
〔偏光板用保護フィルム〕
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合は、偏光板を作成するにあたり、反射防止フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いるために、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することが好ましい。
【0211】
反射防止フィルムにおけるフィルム基材としては、トリアセチルセルロースフィルムを用いることが特に好ましい。本発明における偏光板用保護フィルムを作製する手法としては、(1)予め鹸化処理した透明支持体の一方の面に上記の各層(例、ハードコート層、中屈折率層、表層2層など)を塗設する手法、(2)透明支持体の一方の面に上記の各層を塗設した後、偏光膜と貼り合わせる側を鹸化処理する手法、の2つが考えられるが、(1)はハードコート層を塗設するべき面まで親水化されるため、支持体とハードコート層との密着性の確保が困難となる場合があり、(2)の手法が好ましい。
【0212】
〔鹸化処理〕
(1)浸漬法
アルカリ液の中に上記のような反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3mol/lであり、特に好ましくは1〜2mol/lである。好ましいアルカリ液の液温は30〜70℃、特に好ましくは40〜60℃ である。
上記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0213】
鹸化処理することにより、透明支持体の反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に低屈折率層を有する表面までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反射防止構造層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち反射防止フィルムの貼り合わせ面の、水に対する接触角を用いた場合、特に支持体がトリアセチルセルロースであれば、20度〜50度、好ましくは30度〜50度、より好ましくは40度〜50度を上記接触角とするのが好ましい。50度以下であると偏光膜との接着性に優れるため好ましい。一方、20度以上であると反射防止層の受けるダメージが小さく物理強度や耐光性を損なわないため好ましい。
【0214】
(2)アルカリ液塗布法
上述の浸漬法における反射防止膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、この時、反射防止フィルムの貼り合わせ面の水に対する接触角が、10〜50度となるように鹸化処理を行なうことが好ましい。また、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
【0215】
上記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、例えばロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。更に、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏光板を作成することができる。
【0216】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の表側及び裏側の少なくとも一方を保護する保護フィルムとして前記反射防止フィルムを有する。本発明の偏光板は好ましくは前記偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムとを有する積層板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が前記反射防止フィルムである態様である。
偏光板は、偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方に、反射防止フィルムを有する。反射防止フィルムの透明支持体がポリビニルアルコールからなる接着剤層を介して偏光膜に接着しており、もう一方の偏光膜の保護フィルムが接着剤層を介して偏光膜の反射防止フィルムが接着している主面と反対側の主面と接着している。もう一方の保護フィルムの偏光膜と接着している主面と反対側の主面には粘着剤層を有している。
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右及び斜め方向の視野角を非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0217】
[画像表示装置]
本発明の反射防止フィルムを有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)や陰極管表示装置(CRT)、電界放出ディスプレイ(FED)、表面電界ディスプレイ(SED)等が挙げられる。中でも、本発明の反射防止フィルムは、液晶パネル画面の表面フィルムとして使用することが好ましい。本発明の反射防止フィルムを有する偏光板を有する画像表示装置としては、液晶表示装置(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OLED)のような画像表示装置が挙げられる。本発明の画像表示装置においては、本発明の反射防止フィルムを有する偏光板を、液晶表示装置の液晶セルのガラスに直接又は他の層を介して接着して用いる。
【0218】
本発明に係る反射防止フィルムを用いた偏光板は、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
また、透過型又は半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、更に視認性の高い表示装置を得ることができる。
また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、OLED用表面保護板として表面及び内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0219】
以下本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限りは、「部」及び「%」は質量基準の値である。
【0220】
<実施例1>
(下塗り層付き基材の作成)
[下塗り層用塗布液(Sub−1)の調製]
各成分を下記表5に示す組成で混合し、MEK(メチルエチルケトン)/MIBK(メチルイソブチルケトン)/シクロヘキサノン=45/45/10(質量比)の溶剤で固形分濃度が40質量%になるように調整し、孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して下塗り層用塗布液を調製した。
【0221】
【表5】

【0222】
上記で使用した化合物を以下に示す。
・DPCA−20:部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート[日本化薬(株)製]
・シリカゾル:MIBK−ST、MIBK溶剤使用の固形分濃度30%分散液、平均粒子サイズ約15nmのシリカ微粒子、屈折率1.45[日産化学工業(株)製]
・イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
【0223】
[下塗り層の形成]
膜厚80μm、幅1340mmのトリアセチルセルロースフィルム TAC−TD80U(富士フイルム(株)製)上に、下塗り層用塗布液(Sub−1)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.5%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量150mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が6μmになるように下塗り層を形成した。このようにして得られた下塗り層付きトリアセチルセルロースフィルム(TAC−1)を以降の塗布組成物の評価に用いる基材とした。
【0224】
[中空シリカ粒子分散液 S−1の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径40nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.30)500質量部に、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン10質量部及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部、メチルエチルケトン500質量部加えて混合した後に、イオン交換水3質量部を加えた。この混合液を60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加して分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度21.7%(シリカ濃度20%)の重合性官能基を有するオルガノシラン化合物で表面修飾した中空シリカ粒子分散液S−1を得た。
【0225】
[中空シリカ粒子分散液 S−2の調製]
中空シリカ微粒子ゾルA(イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径40nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子屈折率1.30)に、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、シリカ濃度20%の中空シリカ粒子分散液S−2を得た。
【0226】
[1液2層用塗布組成物の作製]
(A)成分としてEPF−1を2.0質量部をMEK/PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)の80/10(質量比)混合溶剤に20質量%になるよう溶解した。(B)成分としての中空シリカ分散液S−1を固形分量として2.0質量部(溶液として9.22質量部)と前記(A)成分とを混合し、MEK/PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)/シクロヘキサンの80/10/10(質量比)の溶剤で固形分濃度が5質量%溶液とした。その後に(C)成分であるDPHAを60質量部と光重合開始剤としてイルガキュア127を2.0質量部混合し、同じ溶媒組成で固形分濃度が13%になるように調節し、本発明の塗布組成物(Comp−1)とした。
【0227】
(Comp−1)と同様にして各成分を下記表6のように混合し、固形分13質量%の塗布組成物を作製した。下記表6における各成分の添加量は、「質量部」を表す。(B)成分の無機微粒子の添加量は溶剤を除く固形分の質量部である。
【0228】
【表6】

【0229】
上記で使用した化合物を以下に示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
イルガキュア−127:光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]MEK−ST−L:平均粒子サイズ約45nmのシリカ分散液、溶媒MEK(日産化学工業(株)製)シリカ粒子の屈折率=1.45
比較用A−1:含フッ素炭化水素構造及びポリシロキサン構造を含まない塩基性官能基を有する化合物((EPF−2)において、HFPモノマーに由来する構造単位をEVEモノマーに由来する構造単位に置き換えたポリマー、質量平均分子量2.5万)
P−14:本願(E)成分の含フッ素ポリマー例示化合物(分子内に塩基性官能基を含まない)
【0230】
[積層体の形成]
前述の基材TAC−1の下塗り層の上に、前記塗布組成物Comp−1をダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が1.6μmになるように積層体101を形成した。前記表のその他の塗布組成物(Comp−2〜Comp−12)についても同様にして積層体102〜112を作成した。この際に、後述の反射率の測定で反射率の極小波長が520〜560nmの範囲になるように塗設量を10%刻みでプラスマイナス40%の範囲で調節した。
また、比較用の積層体として、基材TAC−1の上にハードコート層用塗布液(HC−1)を、ダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が1.5μmになるようにハードコート層を形成した。その上に低屈折率層用塗布液Ln−1をダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が95nmになるように比較用積層体113を形成した。また、比較用積層体113において、低屈折率層用塗布液をLn−2に変更した試料114を作製した。
【0231】
[積層体の評価]
得られた積層体(反射防止フィルム)について、以下の項目の評価及び測定を行った。
【0232】
[粒子の偏在性]
硬化後の反射防止フィルム試料を厚み方向に垂直に切削し、断面を透過型電子顕微鏡で観察して、断面画像を幅方向5μmに渡り観察し、無機微粒子の存在状態を以下の5段階評価した。
◎ :無機微粒子含有層が上部に偏在しその厚みムラが5%未満である。
○ :無機微粒子含有層が上部に偏在しその厚みムラが5%以上10%未満である。
△ :無機微粒子含有層が上部に偏在しその厚みムラが10%以上30%未満であり、一部の無機粒子は下層にも存在している。
× :無機微粒子含有層の厚みムラが30%以上であるか、無機微粒子の偏在層と下層の界面が不明瞭である。
××:無機微粒子含有層の厚みムラが50%以上であるか、無機微粒子の偏在層が実質形成されていない。
【0233】
[面状故障]
反射防止フィルム試料の裏面(支持体側)に黒色PETフィルムを貼り付け、裏面反射を抑えた面状評価用試料を作成した。試料の表面側に3波長蛍光灯を表面が500ルックスになるように照射し、目視で5mだけ検査し、その値を5で割り1mあたりの無機粒子起因の面状故障の発生頻度について以下の基準で評価した。○△以上のレベルが好ましい。
◎ :0以上0.1個未満
○ :0.1以上0.2個未満
○△:0.2以上0.3未満
△ :0.3以上0.4未満
× :0.4以上1.0未満
××:1.0個以上
【0234】
[積分反射率]
反射防止フィルム試料の裏面(支持体側)をサンドペーパーで粗面化した後に黒色インクで処理し、裏面反射をなくした状態で、表面側を、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における積分分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分反射率の算術平均値を用いた。
【0235】
[スチールウール耐擦傷性]
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストを行った。
・評価環境条件:25℃、60%RH
・こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール{(株)日本スチールウール製、No.0000}を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
・移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、
・荷重:500g/cm、先端部接触面積:1cm×1cm、
・こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○△:非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
△:弱い傷が見える。
△×:中程度の傷が見える。
×:一目見ただけで分かる傷がある。
耐擦傷性は○△レベル以上が実用上の価値が高い。
【0236】
[密着性]
反射防止フィルム試料を温度25℃、60RH%の条件で2時間調湿した。各試料の低屈折率層を有する側の表面に、カッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて、合計100個の正方形の升目を刻み、その面に日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(No.31B)を貼りつけた。30分経時したあとに、垂直方向にテープを素早く引き剥がし、剥がれた升目の数を数えて、下記4段階の基準で評価した。同じ密着評価を3回行って平均をとった。
◎:100升において剥がれが全く認められなかった。
○:100升において1〜2升の剥がれが認められた。
△:100升において3〜10升の剥がれが認められた(許容範囲内)。
×:100升において11升以上の剥がれが認められた。
【0237】
[膜厚の算出方法]
硬化後の反射防止フィルム試料を厚み方向に垂直に切削し、断面を透過型電子顕微鏡で観察して、(B)成分である無機微粒子が本発明の塗布組成物から形成される塗膜全層の平均密度の1.5倍以上の濃度で存在している領域を算出した。また、前記(C)成分由来の成分を主成分とする高屈折率層の膜厚は断面TEMにより求められた全体の膜厚から前記低屈折率層の膜厚を差し引いた値として算出した。ただし、低屈折率層がない場合は硬化膜の膜厚を高屈折率層の膜厚として表記している。
低屈折率層と高屈折率層の屈折率は光学フィッティング(最小二乗法)により算出した。
【0238】
[混合自由エネルギーの算出方法]
(A)成分と(C)成分の混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)は、混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS、ΔH;エンタルピー、ΔS=エントロピー、T;絶対温度)をフローリー・ハギンスの格子理論で求めた。(A)成分と(C)成分の重合度、体積分率(φ:文献では組成分率とも呼ばれる)、及び(A)成分と(C)成分の相互作用パラメーター(χ)を使用し、算出した。
【0239】
以上の結果を表7に示す。
【0240】
【表7】

【0241】
上記の表7から分かるように、試料101〜109では、1回の塗布で微粒子含有層が上部に偏析し組成の異なる2層が同時に形成できているため、生産効率が高く、逐次塗布試料113と比較すると、粒子の偏在性が同等で、面状故障のレベルは○△以上、積分反射率1.7%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。また、試料101〜109では、(A)成分に含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物を用いると、粒子の偏在性は○以上、面状故障のレベルは○△以上、積分反射率1.7%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。(試料111、112との比較。試料111は屈折率界面がなく、均一層になっている)。
また、試料110では、空洞構造を有さないシリカ粒子においても、逐次塗布試料114と比較すると、粒子の偏在性は○以上、面状故障のレベルは○△以上、積分反射率2.7%以下及び耐擦傷性○以上であり、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
また、試料106、107では、本願(E)成分を用いると、粒子の偏在性と耐擦傷性の観点で更なる効果が得られ、粒子の偏在性は◎以上、面状故障のレベルは○以上、1.4%以下及び耐擦傷性○以上であり、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
【0242】
<実施例2>
各成分を表8のように混合し、下記表に記載の溶剤で希釈し固形分20質量%の低屈折層用塗布液を作製した。下記表8における各成分の添加量は、「質量部」を表す。
【0243】
【表8】

【0244】
上記で使用した化合物を以下に示す。
・A−TMMT:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株))
・U−4HA:ウレタンアクリレート(NK オリゴ U−4HA 新中村化学工業(株))
【0245】
[積層体の形成]
前述の基材TAC−1の下塗り層の上に、前記表の塗布組成物Comp−201をダイコーターで、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、窒素パージ(酸素濃度0.1%以下)しながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量400mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が2.4μmになるように積層体201を形成した。前記表のその他の塗布組成物(Comp−202〜Comp−215)についても同様にして積層体202〜215を作成した。この際に、反射率の測定で反射率の極小波長が520〜560nmの範囲になるように塗設量を10%刻みでプラスマイナス40%の範囲で調節した。
また、比較用の積層体として、基材TAC−1の上にハードコート層用塗布液(HC−2)を、硬化後の膜厚が2.3μmになるようにハードコート層を形成した。その上に低屈折率層用塗布液Ln−3をダイコーターで、硬化後の膜厚が95nmになるように比較用積層体216を形成した。硬化条件等は実施例1の試料101に準じて作製した。
得られた反射防止フィルムを実施例1に準じた評価を行った結果を下記表9に示す。
【0246】
【表9】

【0247】
上記表9からわかるように、試料201〜213では、1回の塗布で微粒子含有層が上部に偏析し組成の異なる2層が同時に形成できているため、生産効率が高く、逐次塗布試料216と比較すると、粒子の偏在性が同等で、面状故障のレベルは○以上、積分反射率1.4%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
また、試料201〜213では、塩基性成分を含む構成単位がグラフト重合されているため、粒子の吸着能が高くなり、上方偏在性が高くなったために、試料214と比較すると、粒子の偏在性が同等で、面状故障のレベルは○以上、積分反射率1.4%以下及び耐擦傷性○△以上であり、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
試料202、208、209のMEK、PGME、シクロヘキサノンの溶剤を併用すると、(A)成分とのSP値の差が(4.5程度)の貧溶媒が相分離性を良化させ(PGME)、相分離してから無機微粒子の移動が終了するまでの時間を沸点が100℃より高い溶剤で稼ぎ(シクロヘキサノン)、(A)成分とともに無機微粒子(B)が相分離する濃度までは生産性向上の観点で沸点が100℃以下の溶剤で速乾させる(MEK)ことができるので、偏在性を○以上、反射率積分反射率1.4%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。
試料202、210、211の本願の(A)成分との混合自由エネルギーがゼロ以上の本願の(C)成分は、化合物Aとのバインダーの分離性が良化し、偏在性を○以上、反射率積分反射率1.4%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。
また、試料212、213では、本願(E)成分を用いると、粒子の偏在性と耐擦傷性の観点で更なる効果が得られ、粒子の偏在性は◎以上、面状故障のレベルは○以上、1.2%以下及び耐擦傷性○以上であり、更に密着性は◎以上の優れた結果が得られた。
【0248】
<実施例3>
各成分を表10のように混合し、表10に記載の溶剤で希釈し固形分25質量%の低屈折層用塗布液を作製した。表10における各成分の添加量は、「質量部」を表す。
【0249】
【表10】

【0250】
[積層体の形成]
前述の基材TAC−1の下塗り層の上に、表10の塗布組成物Comp−301をダイコーターで、塗布・溶剤乾燥、紫外線照射により塗布層を硬化させ、硬化後の膜厚が1.6μmになるように積層体301を形成した。表10のその他の塗布組成物(Comp−302〜Comp−306)も同様にして積層体302〜306を作成した。この際に、反射率の測定で反射率の極小波長が520〜560の範囲になるように塗設量を10%刻みでプラスマイナス40%の範囲で調節した。
【0251】
このようにして得られた反射防止フィルム試料に対して、実施例1に準じた評価を行った結果を下記表11に示す。
【0252】
【表11】

【0253】
上記の表11から分かるように、試料301〜306では、本発明の(A)成分にシリコーン化合物を用いても、試料番号101同様に、偏在性を○以上、反射率積分反射率1.8%以下及び耐擦傷性○△以上、更に密着性は○以上の優れた結果が得られた。
【0254】
これらの実施例及び比較例の結果から、本発明の塗布組成物は無機微粒子を上部に偏在させることができるため、無機粒子含有層と無機粒子を含まない層とを1回の塗布工程で形成することができ、生産性が高いことが分かる。また、得られた積層体は低反射で、耐擦傷性、密着性に優れ、更にケン化後の耐擦傷性に優れた反射防止フィルムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物を基材上に塗布し塗膜を形成する工程、該塗膜から溶剤を揮発させ乾燥させる工程、該塗膜を硬化し硬化層を形成する工程をこの順に有し、前記塗布組成物から屈折率の異なる多層構造を形成させる、反射防止フィルムの製造方法。
(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。
【請求項2】
前記(A)成分が、一般式(1)で表される含フッ素ポリマーである、請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
一般式(1):
(MF1)a−(MF2)b−(MF3)c−(MA)d−(MB)e−(MD)g
一般式(1)中、a〜e、及びgは、それぞれ各構成単位のモル分率を表し、0≦a≦70、0≦b≦70、30≦a+b≦70、0≦c≦50、0≦d≦50、0≦e≦50、0.1≦g≦30の関係を満たす値を表す。
(MF1):CF=CF−Rfで表される単量体から重合される構成単位を示す。Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。
(MF2):CF=CF−ORf12で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf12は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MF3):CH=CH−ORf13で表される単量体から重合される構成単位を示す。Rf13は炭素数1〜30の含フッ素アルキル基を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(MD):塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
【請求項3】
前記(A)成分が、含フッ素炭化水素構造を有する重合単位を含有する重合体であって、塩基性成分を含む構成単位がグラフトされている、請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記(MD)が、塩基性官能基を含有する不飽和基含有プレポリマーを反応させて得られた構成単位である、請求項2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記(MD)が、塩基性官能基を含有する化合物を多官能エポキシ化合物を介して結合した成分を反応させて得られた構成単位である、請求項2に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分が、一般式(2)で表されるポリシロキサン化合物である、請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
一般式(2):
(ポリシロキサン単位)α−(MA)β−(MB)γ−(MD)ε
一般式(2)中、α〜γ、及びεは、それぞれ各構成単位の質量比表し、2≦α≦99、0≦β≦70、0≦γ≦70、0.1≦ε≦30の関係を満たす値を表す。
(ポリシロキサン単位):他成分と共重合可能なポリシロキサン単位を表す。
(MA):架橋性基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
(MB):任意の構成単位を表す。
(MD):塩基性官能基を少なくとも1つ有する構成単位を表す。
【請求項7】
前記(A)成分が、分子内に含フッ素炭化水素単位及びポリシロキサン単位の両方を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記(A)成分が、分子内に重合性の官能基を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記(B)成分が、平均粒径1〜150nm、かつ屈折率1.46以下の金属酸化物微粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記(B)成分がオルガノシラン化合物、その部分加水分解物、及びその縮合物から選ばれる少なくとも一種で表面処理された無機微粒子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記(B)成分が、無機微粒子の表面が少なくともケイ素を構成成分とする金属酸化物粒子である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記(C)成分の硬化性バインダーとして、分子内に少なくとも複数の不飽和二重結合を有する化合物を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記塗布組成物中に更に(E)成分として分子内にフッ素原子を含有する硬化性化合物を含有する請求項1〜12のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記(A)成分と前記(E)成分が共に含フッ素共重合体であり、それぞれの共重合体を形成する構成単位の少なくとも2種が共通している、請求項13に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記(C)成分の硬化性バインダーと前記(A)成分の化合物との混合自由エネルギー(ΔG=ΔH−T・ΔS)がゼロより大きい、請求項1〜14のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記塗布組成物中、[(A)成分+(B)成分+(E)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である請求項13又は14に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項17】
前記(D)成分が以下の少なくとも2種の混合溶剤である、請求項1〜16のいずれか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法。
(D−1):(A)成分と(C)成分のいずれか一方との相溶性パラメーターの差が1〜10である揮発性溶剤
(D−2):沸点が100℃以下の揮発性溶剤
【請求項18】
前記溶剤が更に(D−3)成分として、沸点が100℃を超える揮発性溶剤を含有する請求項17に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の製造方法により得られた反射防止フィルム。
【請求項20】
請求項19の反射防止フィルムであって、
請求項1に記載の塗布組成物から形成される硬化層の膜厚が0.1〜20μmであり、硬化層中には、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層を有し、
該低屈折率層の膜厚が40〜300nmである、反射防止フィルム。
【請求項21】
請求項20に記載の反射防止フィルムであって、(B)成分が空気界面側に偏在した低屈折率層の屈折率が1.15〜1.48である、反射防止フィルム。
【請求項22】
下記(A)〜(D)成分を混合してなる塗布組成物。
(A)含フッ素炭化水素構造又はポリシロキサン構造から選ばれる少なくとも1種の構造と、少なくとも1つの塩基性官能基を有する化合物
(B)無機微粒子
(C)分子内にフッ素原子を含有しない硬化性バインダー
(D)溶剤
但し、[(A)成分+(B)成分]/[(C)成分]の質量比率が1/199〜60/40である。

【公開番号】特開2012−185493(P2012−185493A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−29894(P2012−29894)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】