説明

反射防止フィルム及びその製造方法、偏光板、液晶等表示装置

【課題】膜厚均一性の高い反射防止フィルムを高い生産性で提供し、それを用いた偏光板および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明支持体と、該透明支持体より屈折率の低い低屈折率層とを有し、該透明支持体がポリマーと溶媒とを含むドープをドラムまたはベルト状の支持体上に流延し、乾燥して製造されたものであり、その際に、(a)該ドープの流延幅方向の最大応力値を1MPa以上200MPa以下とすること、および(b)乾燥の際の流延幅方向の応力Syと流延幅方向に直交する前記ドープの搬送方向の応力Sxとの比を2≦(Sy/Sx)≦50の範囲とすること、により延伸したこと特徴とする反射防止フィルム、この反射防止フィルムを用いた偏光板、および該偏光板を備えた液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関し、更に詳細には、平滑性を向上した透明支持体を基材として用いた反射防止フィルム、及びその製造方法、偏光板、液晶等表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような様々な画像表示装置に設けられている。眼鏡やカメラのレンズにも反射防止フィルムが設けられている。反射防止フィルムとしては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から普通に用いられている。複数の透明薄膜を用いるのは、可視域でなるべく広い波長領域での光の反射を防止するためである。金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により形成されている。金属酸化物の透明薄膜は、反射防止フィルムとして優れた光学的性質を有しているが、蒸着法やスパッタ法による製膜方法は、生産性が低く大量生産に適していない。
【0003】
蒸着法に代えて、無機微粒子の塗布により反射防止フィルムを形成する方法が提案されている。特許文献1は、微細空孔と微粒子状無機物とを有する反射防止層を開示している。反射防止層は、塗布により形成される。微細空孔は、層の塗布後に活性化ガス処理を行ない、ガスが層から離脱することによって形成される。特許文献2は、支持体、高屈折率層および低屈折率層の順に積層した反射防止フィルムを開示している。同公報は、支持体と高屈折率層の間に中屈折率層を設けた反射防止フィルムも開示している。低屈折率層は、ポリマーまたは無機微粒子の塗布により形成されている。
【0004】
反射防止フィルムの光干渉層では、可視光波長の1/2から1/4程度の非常に薄い領域の塗布となるため、数nmオーダーの膜厚ムラが大きな膜厚偏差となってしまう。さらに、各層のわずかな膜厚ムラが色ムラによって色味が大きくシフトし、目視でムラとして検出されてしまう問題があるため、膜厚を正確に制御する塗布方式が非常に重要となる。
反射防止フィルムの塗布方式としてはこれまでディップコート法、マイクログラビア法、リバースロールコート法などが主に用いられてきた。ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であり、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法、マイクログラビア法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。また、マイクログラビア法ではグラビアロールの製作精度や、ブレードとグラビアロールの当たりによるロールやブレードの経時変化により塗布量変動を発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が比較的困難である。そのためこれらの塗布方式ではある速度以上の塗布の高速化が困難であり、蒸着法などに比べれば生産性が高いものの、塗布本来の生産性の高さが活かし切れていない。
特許文献3において反射防止層をダイコート法により塗布する方法が提案されている。
ダイコート法は前計量塗布方式であるため、膜厚の安定性が高い利点がある。但し、通常一般的に用いられているダイの構成を用いて塗布を行うと、前記の各種塗布方式と同程度の高速性しか実現することが出来ない。具体的には、反射防止層のような薄層塗布では透明支持体の搬送方向と垂直及び並行な向きに発生する膜厚ムラが顕著に発生し、膜厚の安定性を保つことが難しい。前記特許においてはダイの構成として特に制限はなく、一般的なダイを想定しており、ダイの形状等においては特に提案を行っていない。一方、特許文献4ではダイの構成を工夫することによって精度良く薄層の塗布が行える事を示している。この方法を用いることで反射防止層のような薄層を精度良く塗布することが可能とな
る。
【0005】
一方、上記何れの塗布方式においても、支持体の平面性が各層の膜厚ムラに大きく影響することがわかっている。例えばダイコート法のような支持体と塗布液供給部とのクリアランスによって塗布量が変動する場合においては、支持体の凹部と凸部とでウエット塗布量が変動してしまう。また、マイクログラビア方式やワイヤーバー方式のような塗布部のメニスカスの大きさが塗布量に影響する場合においても、支持体の平滑性が不十分な場合にはメニスカスが乱れることで、塗布面状にムラが発生する。また、何れの塗布方式においても、塗布直後の乾燥初期において支持体の凹凸に従って液の流動が起こり、ムラが発生する。
【0006】
本発明の反射防止フィルムの基材として用いる、ウェブでハンドリング可能なロール形態の透明支持体フィルムは、原材料を溶剤に溶解したドープを流延する溶液製膜法と、加熱により溶融状態としたものを流延する溶融製膜法がある。液晶表示装置等に用いられるトリアセチルセルロースのような溶液製膜法で製造された透明支持体は、溶融製膜法で製造されたポリエチレンテレフタレートフィルム等と比較して、特にフィルムの製膜方向に伸びたスジ状の凹凸故障(チリメン故障と呼ぶ)が目立ち、特に反射防止層の膜厚ムラに悪影響を与えることがある。溶液製膜法においては、原材料を溶剤に溶解したドープをベルトまはたドラム状の支持体上に流延、乾燥させるときに、フィルム表面から大量の溶媒が揮発し、フィルムは大きく体積を減少させ、フィルム自身は収縮しようとする。自由に収縮するときは、フィルムは少なからず不均一に収縮してしまうため、フィルムの平面性が損なわれ、上述のスジ状の凹凸故障の発生原因となる。このため、乾燥過程において、主としてフィルムの平面性を確立するために、フィルムを流延幅方向(以下、幅方向と称する)に積極的に延伸するということが従来から知られている(例えば、特許文献5)。
【特許文献1】特公昭60-59250号公報
【特許文献2】特開昭59-50401号公報
【特許文献3】特開平7-151904号公報
【特許文献4】特開2003-200097号公報
【特許文献5】特開平11−048271号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウエット塗布による反射防止フィルムの製造において、上記何れの塗布方式においても、支持体の平面性が各層の膜厚ムラに大きく影響することは上述の通りであり、特に高速塗布適性に優れたダイコート法においてクリティカルな問題となり得ることが検討の結果明らかになった。
本発明は、このような問題を解決し、膜厚均一性の高い反射防止フィルムを高い生産性で提供すること、更にはそれを用いた偏光板、液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解消すべく鋭意検討した結果、透明支持体の製膜装置、条件を改良して平滑性を向上すること、生産性に優れるダイコート法にて反射防止層が塗布できるように塗布装置の塗布部先端形状を改良すること、特にそれらを組み合わせることにより、前記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の構成により、前記目的を達成したものである。
1.透明支持体と、該透明支持体より屈折率の低い低屈折率層とを有する反射防止フィルムにおいて、
該透明支持体が、ポリマーと溶媒とを含むドープをドラムまたはベルト状の支持体上に流延し、乾燥して製造されたものであり、その際に、
(a)該ドープの流延幅方向の最大応力値を1MPa以上200MPa以下とすること、および
(b)乾燥の際の流延幅方向の応力Syと流延幅方向に直交する前記ドープの搬送方向の応力Sxとの比を2≦(Sy/Sx)≦50の範囲とすること、
により延伸したこと特徴とする反射防止フィルム。
2.透明支持体を製造する際に、延伸の後に1秒以上30秒以下、処理温度50℃以上180℃以下で熱処理されることを特徴とする上記1に記載の反射防止フィルム。
3.透明支持体を流延幅方向に延伸するときの残留溶媒量が、3質量%以上45質量%以下であることを特徴とする上記1または2に記載の反射防止フィルム。
4.透明支持体が、厚さ40μm〜120μmのセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
5.低屈折率層が、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーから主としてなる硬化性組成物を少なくともを含有する組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であり、該含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体であり、そして該低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55の範囲にあることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
6.低屈折率層が、(A)含フッ素ポリマー、(B)平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上150%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.17〜1.40である無機微粒子、および(C)酸触媒又は金属キレート化合物の存在下で製造されてなる、下記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかを含有する硬化性組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であることを特徴とする上記5に記載の反射防止フィルム。
一般式(1):(R10mSi(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
7.低屈折率層が、下記一般式(2)で表される化合物の部分加水分解物および該部分加水分解物の脱水縮合物の少なくとも1種を含有する硬化性組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であり、該低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55の層であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(2):(R2nSi(Y)4-n
(式中、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、一部または全部フッ素原子置換のアル
キル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Yは水酸基または加水分解可能な基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
8.透明支持体と低屈折率層の間に、光散乱性を有さないハードコート層および光散乱性を有するハードコート層の少なくとも1層を設けたことを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム。
9.上記1〜8に記載の反射防止フィルムの製造方法であって、バックアップロールによって支持されて連続走行する透明支持体の表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する方法の、前記スロットダイの透明支持体進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さを30μm以上100μm以下とするスロットダイを使用し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブの隙間を、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、前記反射防止層の少なくとも1層が塗布されることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
10.偏光板を形成するための表面保護フィルムのうち少なくとも片側が、上記1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム又は上記9に記載の反射防止フィルムの製造方法により製造された反射防止フィルムであることを特徴とする偏光板。
11.偏光板を形成するための表面保護フィルムのうちの反射防止フィルム以外のフィルムが、該表面保護フィルムの偏光膜と貼り合せる面とは反対側の面に光学異方性層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物からなる層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化していることを特徴とする上記10に記載の偏光板。
12.上記10または11に記載の偏光板を少なくとも1枚有する液晶表示装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の反射防止フィルムは、基材となる透明支持体の平滑性が改良されるため、支持体の凹凸起因の反射防止層の塗布ムラが低減され、色ムラの抑制された反射防止フィルムが得られる。また、本発明のダイコート法による製造方法と組み合わせることで、塗布ムラの低減に加えて優れた生産性(高速塗布適性)を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、「(メタ)アクリロイル」との記載は、「アクリロイル及びメタクリロイルの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」等も同様である。また、水素原子が水素原子以外の原子で置換されている場合、該水素原子以外の原子も便宜上置換基として取り扱う。
【0011】
本発明の反射防止フィルムについて好適な一実施形態の基本的な構成を図面を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本発明の反射防止フィルムの好ましい1実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示す本実施形態の反射防止フィルム1は、透明支持体2と、透明支持体2上に形成されたハードコート層3と、そしてハードコート層3上に形成された低屈折率層4とからなる。
ハードコート層3は、防眩性の付与、表示装置のギラツキ改良、視野角特性改良の目的で、光散乱性を付与することが好ましい形態の一つとして挙げられる。光散乱性を付与するには、透光性樹脂中に透光性粒子5を分散するのが好ましい。
本発明における反射防止フィルムを構成する各層の屈折率は以下の関係を満たすことが好ましい。
ハードコート層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
本発明においては、本実施形態においては、ハードコート層は1層で形成されたものを例示しているが、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。また、本実施形態のように透明支持体上に直接設けてもよいが、帯電防止層や防湿層等の他の層を介して設けてもよい。
【0012】
本発明の反射防止フィルムにおいて、防眩性を付与する場合には、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計するのが、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成されるので、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99とするのが、反射光の色味がニュートラルとなるので、好ましい。またC光源下での透過光のb*値を0〜3とすると、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差を20以下とすると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0013】
また、本発明の反射防止フィルムは、その光学特性を、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とするのが、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため、好ましい。また、ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値0.3〜1、ハードコート層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度15%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とするのが、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成されるので、好ましい。
【0014】
図2は、本発明の反射防止フィルムの別の好ましい一実施形態を模式的に示す断面図である。本実施形態は、反射防止層として透明支持体およびハードコート層8より屈折率が高く、高屈折率層より屈折率が低い中屈折率9、全ての層の中で最も屈折率が高い高屈折率層10、全ての中で最も屈折率が低い低屈折率層11の3層からなる反射防止フィルムの好ましい例であり、平均反射率が0.5%以下まで低減されるため、特にテレビ、モニター用途に好ましく用いることができる。
【0015】
本実施形態の反射防止フィルムは、その光学特性を、鏡面反射率0.5%以下、透過率90%以上とするのが、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため、好ましい。
【0016】
次に、本発明の透明支持体について説明する。
[透明支持体]
<ポリマー>
本発明の透明支持体に用いられるポリマーは、特に限定されるものではない。具体的には、ポリアミド類, ポリオレフィン類, ノルボルネン類,ポリスチレン類,ポリカーボネート類,ポリスルホン類,ポリアクリル酸類,ポリメタクリル酸類,ポリエーテルエーテルケトン(PEEK;Polyetheretherketone)類,ポリビニルアルコール類,ポリビニルアセテート類,セルロース誘導体(例えば、セルロースの低級脂肪酸エステル,セルロースアシレートなど)などが挙げられる。
【0017】
なお、用いられるポリマーは、製膜されたフィルムの光学異方性が小さくなるセルロース誘導体、好ましくはセルロースアシレート,より好ましくはセルロースアセテート、さらに好ましくはセルローストリアセテート(TAC)、最も好ましくは酢化度59.5%〜62.5%のセルローストリアセテートを用いることである。
【0018】
<溶媒>
上記セルロースアシレートを溶解してドープを調製するための溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン,クロロホルムなど),エステル類(例えば、蟻酸メチル,酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸アミル,酢酸ブチルなど),エーテル類(例えば、ジオキサン,ジオキソラン,テトラヒドロフラン,ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど),芳香族炭化水素類(例えば,ベンゼン,トルエン,キシレンなど),脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン,ヘプタンなど),アルコール類(例えば、メタノール,エタノール,n−ブタノールなど),ケトン類(例えば、シクロペンタノン,アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノンなど)などが挙げられる。また、これら溶媒は、単独で用いても良いし、混合させた混合溶媒として用いても良い。
【0019】
なお、本発明においてポリマーにTACを用いた際には、ジクロロメタン等、ハロゲン
化炭化水素類や、酢酸メチルを主溶媒とした混合溶媒を用いることが好ましい。前者は、従来TACの流延製膜に一般的に用いられており、高速での製膜適性等に優れていることが知られている。一方、環境保全の観点からは、酢酸メチルは、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素類と異なり、環境保全に優れており、溶液製膜後の廃液の処理が容易であるため、好ましい。なお、混合溶媒中の酢酸メチルの組成比は、60質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。混合溶媒の副溶媒としては、酢酸メチルと親和性に優れた、ケトン類(例えば、シクロペンタノン,アセトンなど),アルコール類(例えば、メタノール,エタノール,n−ブタノールなど)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0020】
<添加剤>
製膜されたフィルムの特性を好ましいものとするために、ドープ中に添加剤を添加しても良い。添加剤としては、可塑剤(トリフェニルホスフェート,ビフェニルジフェニルホスフェート,ジペンタエリスリトールヘキサアセテート,ジトリメチロールプロパンテトラアセテートなど),紫外線吸収剤(例えば、オキシベンゾフェノン系化合物,ベンゾトリアゾール系化合物など),マット剤(例えば、二酸化ケイ素の微粒子など)増粘剤,オイルゲル化剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤は、ポリマーを溶媒に溶解させるときに添加しても良いし、溶液製膜を行っている際に、調製されたドープにインラインで混合させても良い。また、添加剤を添加する際に、添加剤のみを添加しても良いし、添加剤を溶媒に溶解させた添加剤溶液を添加しても良い。
【0021】
酸の性質を有する物質(以下、酸物質と称する)をドープ中に含有させて得られたフィルムは、剥離性に優れたものが得られる。酸物質としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸など)、有機酸(例えば、フェノールなど)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、乳酸など)、多価有機カルボン酸(例えば、クエン酸、酒石酸など)、多価有機カルボン酸誘導体、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。多価有機カルボン酸誘導体の基本骨格は、脂肪族炭化水素系(例えば、直鎖飽和、分岐飽和、直鎖不飽和、分岐不飽和、単環式、芳香族、縮合多環式、橋かけ環式、スピロ、環集合、テルペンなど)や、芳香族系炭化水素系(芳香族、縮合多環式など)や、複素環式(ヘテロ環)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、添加量は、特に限定されるものではないが、フィルムの光学特性に影響を及ぼさないように、ポリマーの質量に対して、質量比で200ppm〜800ppmの範囲とすることが好ましい。
【0022】
<ドープの調製>
ポリマー及び必要な添加剤を溶媒に入れた後に、公知のいずれかの溶解方法により溶解させ調製ドープを製造する。この調製ドープは濾過により異物を除去することが一般的である。濾過には濾紙,濾布,不織布,金属メッシュ,焼結金属,多孔板などの公知の各種濾材を用いることが可能である。濾過することにより、調製ドープ中の異物,未溶解物を除去することができ、フィルム中の異物による欠陥を軽減することができる。
【0023】
また、一度溶解した調製ドープを加熱して、さらに溶解度の向上を図ることもできる。
加熱には静置したタンク内で撹拌しながら加熱する方法、多管式、静止型混合器付きジャケット配管等の各種熱交換器を用いて調製ドープを移送しながら加熱する方法などがある。また、加熱工程の後に冷却工程を実施することも可能である。また、装置の内部を加圧することにより、調製ドープの沸点以上の温度に加熱することも可能である。これらの処理を施すことにより、溶解性の低い未溶解物を完全に溶解することができ、フィルムの異物の減少、濾過の負荷軽減を図ることができる。
【0024】
<溶液製膜方法>
図3に本発明の溶液製膜方法に用いられるフィルム製膜ライン10'の一実施態様を示
す。ドープ11'がミキシングタンク12に入れられる。なお、ドープ11'は、ポリマーにセルロースアシレートを用い,溶媒に酢酸メチルを主溶媒としたものを用いた例で説明する。ミキシングタンク12にはドープ11'を均一にする攪拌翼13が設けられ、図示しないモータにより回転することでドープ11'を攪拌する。ドープ11'は、送液ポンプ14により一定の流量で濾過装置15に送られ不純物が除去された後に流延ダイ16に送られる。
【0025】
流延ダイ16は、流延室20内に設けられている。流延ダイ16の下方には、回転ローラ21,22の回転に伴って無端で走行する流延バンド23が設けられている。また、流延室20内には、乾燥風供給装置24が設けられていることが好ましい。流延ダイ16から流延バンド23上にドープ11'を流延し、流延膜25を形成する。流延幅は、2000mm以上とすることが好ましく、また1400mm以上とすることがより好ましい。また、流延する際に乾燥後のフィルムの厚みが10μm以上300μm以下とすることが好ましく、40μm以上120μm以下とすることがより好ましい。流延膜25の乾燥を促進するために乾燥風供給装置24から乾燥風26を流延膜25表面に送風することが好ましい。なお、本発明において流延膜25が流延バンド23上を搬送している時間は、2分〜4分が好ましく、この場合に、乾燥風26は、温度30℃〜90℃、風速8m/s〜12m/sの範囲のものを送風すると、後述する残留溶媒量が好ましい範囲となりやすいが、本発明においては、それら数値範囲に限定されるものではない。
【0026】
乾燥が進行し自己支持性を有するものになった後に剥取ローラ27で支持しながら流延バンド23からフィルム28として剥ぎ取る。このとき流延バンド23の駆動速度(以下、流延速度と称する)V1(m/s)と剥ぎ取った後のフィルムの搬送速度V2(m/s)とをコントロールすることによってフィルム搬送方向(以下、搬送方向と称する)Xへ応力をフィルム28に付与することを可能とする。フィルム28の搬送方向Xの応力(以下、搬送方向応力と称する)Sx(Pa)は、張力計29を用いて計測する。搬送速度V2(m/s)と流延速度V(m/s)との比(V2/V1)を、
0.9<(V2/V1)<1.3
の範囲とすることで搬送方向応力Sxを好ましいものとすることができるが、その範囲に限定されるものではない。また、本発明において、フィルム28への搬送方向応力Sxの付与は、渡り部に設けられたローラ40によるものに限定されず、テンタ装置50やテンタ装置50の下流側に設けられているローラの搬送速度を変更する方法でも良い。
【0027】
フィルム28を流延室20からテンタ室50へと搬送する。通常、この間は渡り部と称され、この渡り部にはフィルム28を搬送するためのローラ40が設けられている。なお、ローラを1本のみ図示したが、複数本であっても良いし、渡り部にローラを設けない形態でも良い。
【0028】
テンタ室50には、テンタ装置51と乾燥風供給装置52,53とが備えられている。
フィルム28は、テンタ室50内を走行する間に、乾燥風供給装置52,53からの乾燥風54,55により乾燥される。また、テンタ装置51により幅方向に延伸が行われる。延伸を行うときの残留溶媒量(式(1)参照)は、流延室20での走行時間や乾燥風26の風速、温度などを変えて調節されている。また、テンタ室50内でも延伸を行うまでの間に送風される乾燥風54,55の風速、温度などを変えることによって調節できる。なお、テンタ装置51については、後に詳細に説明する。
【0029】
テンタ室50で延伸及び乾燥されたフィルム28は、乾燥室60に搬送される。乾燥室60には、多数のローラ61が備えられ、乾燥風を送風するための乾燥風供給装置62,63が備えられている。フィルム28は、ローラ61に巻き掛けられながら乾燥室60内を走行し、乾燥風供給装置62,63により風速,温度などが調整された乾燥風64,6
5が送風されることにより乾燥がさらに進行する。その後に、フィルム28は、巻取機66でロール状に巻き取られる。なお、乾燥室60から送り出されたフィルム28を冷却したり、ナーリングを付与したり、耳切処理を行なったりしても良い。
【0030】
テンタ装置51は、右レール71と左レール72と、これらレール71,72に案内される無端チェーン(エンドレスチェーン)73,74とチェーン駆動部75とから構成されている。また、テンタ装置51は、入口76から出口77へ順に、予熱部51a,延伸部51b,熱処理部51cとなっている。無端チェーン73,74にはフィルム28の両縁を把持するフィルムクリップ80が所定のピッチで多数取り付けられている(図4では、説明のためそれらの一部のみを図示している)。フィルムクリップ80は、フィルム28の側縁部を把持しながら、各レール71,72に沿って移動してフィルム28を幅方向Yに延伸する。
【0031】
無端チェーン73,74は原動スプロケット81,82及び従動スプロケット83,84との間に掛け渡されており、これらスプロケット81〜84の間では、無端チェーン73は右レール71、無端チェーン74は左レール72により案内される。原動スプロケット81,82は入口76側に設けられており、これらはチェーン駆動部75のモータ85及びギア列86により回転駆動される。また、従動スプロケット83,84は出口77側に設けられている。
【0032】
右レール71は、入口部71a,延伸部71b,出口部71cから構成され、各部は、連結軸90,91,92により回転変位可能に接続されている。また、左レール72も同様に、入口部72a,延伸部72b,出口部72cから構成され、連結軸93,94,95により回転変位可能に接続されている。各フィルムクリップ80にはひずみ計87が取り付けられている。ひずみ計87で測定された測定値は、コントローラ88に送信される。コントローラ88は、測定値に基づき、フィルム28に発生した応力を算出する。その応力に基づき延伸率を好ましいものとするためシフト機構89を駆動させて左レール72を移動させる。レールの移動は、右レール71と左レール72とのいずれか一方を移動させるものであっても良いし、一方のレールを移動させることで他方のレールも同調して移動させる機構を取り付けたものであっても良い。さらに、右レール71と左レール72との両方に独立して駆動するシフト機構を取り付けて、独立して移動させるものであっても良い。
【0033】
テンタ室50に搬送されたフィルム28は、テンタ装置51の入口76から送り込まれ、両縁はフィルムクリップ80に挟まれてテンタ装置51内を搬送される。フィルム28を予熱部51aで所望の温度とする。その後に、フィルムクリップ80が右レール71及び左レール72に案内されながら、延伸部51bにより下流側に拡がることで、フィルム28が幅方向Yに延伸される。この際に、ひずみ計87によりフィルム28のひずみ量を測定し、その結果をコントローラ88に送信する。コントローラ88は、ひずみ量からフィルム28に発生した応力(以下、幅方向応力と称する)Sy(Pa)を算出する。フィルム28にフィルム中のポリマーに配向が生じることに起因する光学異方性を生じさせないために、搬送方向応力Sxと幅方向応力Syとの応力比(Sy/Sx)を2≦(Sy/Sx)≦50の範囲とし、好ましくは5≦(Sy/Sx)≦30の範囲とする。なお、このときにフィルムの延伸率,延伸速度,フィルム温度は、特に限定されるものではなく、応力比を前記範囲とすることが本発明の透明支持体の特徴である。
【0034】
さらに、本発明では、幅方向Yの最大応力値(以下、幅方向最大応力値と称する)Symax(Pa)を1MPa以上200MPa以下とし、好ましくは5MPa以上80MPa以下とし、これも本発明の透明支持体の特徴である。1MPa未満であると、フィルム28を延伸する力が不足して所望の延伸を行えない。また、200MPaを超えると、フィルム28中のポリマー分子の配向が変化することによりフィルム28に光学異方性が生じて光学特性の悪化を招く。幅方向最大応力値Symax が1MPa以上200MPa以下であれば、フィルム28の延伸倍率,延伸速度,延伸時のフィルム表面温度,テンタ室50の雰囲気温度は、特に限定されるものでなく、適宜選択することができる。このときに応力比(Sy/Sx)を2≦(Sy/Sx)≦50、より好ましくは5≦(Sy/Sx)≦30の範囲とすることで、フィルムに光学異方性が生じることをより防止できる。なお、本発明において応力(Pa)とは、フィルム28に加えられている力(N)をフィルムの断面積(m2 )で割った値(N/m2 =Pa)と定義する。また、幅方向最大応力値Symax(Pa)とは、時間とともに変化していく延伸中に生じる幅方向応力Syの中での最
大値とする。
【0035】
コントローラ88は、各ひずみ計87で測定された測定値から最適延伸率を算出する。
その値に基づいてコントローラ88は、シフト機構89のシフト量を算出してシフト機構89を移動させることで、幅方向最大応力値Symaxを1MPa以上200MPa以下とすることが可能となる。また、コントローラ88には張力計29で測定された搬送方向応力Sxの測定値を送信することが好ましい。これにより、シフト量を応力比(Sy/Sx)が2以上50以下となるように算出し、シフト機構89をシフトさせることが可能となる。
【0036】
フィルム28の延伸は、残留溶媒量が3質量%以上45質量%以下の範囲で行うことが好ましく、より好ましくは7質量%以上35質量%以下である。残留溶媒量が上記範囲であれば、フィルム28は乾燥が十分進行しており、かつ可塑性が保持され、フィルム28の破損もなくスムーズに延伸が行われ、しかもフィルムクリップ80で挟み込むことが容易でありフィルム28の搬送中に破断するなどの搬送事故が生じない。なお、本発明における残留溶媒量とは以下の式(1)で表される値とする。
残留溶媒量(質量%)=((A−B)/A)×100・・(1)
A:試料フィルムの質量
B:試料フィルムAを110℃、1時間熱風乾燥した後の試料質量
なお、測定方法は公知の方法で行うことができるが、例えばフィルム28を10mm×40mmに切断してその試料の質量を測定し熱風乾燥を行う方法などが挙げられる。
【0037】
延伸されたフィルム28は、応力緩和を促進するために熱処理部51cで熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、50℃以上180℃以下で行うことが好ましく、より好ましくは80℃以上130℃以下で行うことである。また、熱処理時間は、1秒以上30秒以下で行うことが好ましく、より好ましくは3秒以上15秒以下で行うことである。熱処理温度が50℃以上180℃以下であると、急激な温度下降によるフィルム28の収縮が防止され、しかもフィルム28の可塑性による変形が防止される。熱処理時間が1秒以上30秒以下であると、フィルムの応力緩和が充分に行われるので、後工程で応力が減少することによるフィルム28の変形が生じることがなく、更にはフィルム28の乾燥が適度であり、フィルム28中のポリマー,添加剤などの溶質成分の分解が殆ど起こらない。
なお、本発明に用いられるテンタ装置は図4に示す形態に限定されるものではない。
【0038】
図3のフィルム製膜ライン10の支持体には、流延バンド23を用いていたが、本発明の支持体は、それに限定されるものではない。その一部を示すフィルム製膜ライン100(図5)では、流延ダイ101の下方に回転ドラム102が配置されている。流延ダイ101からドープを流延して回転ドラム102上で流延膜103を形成する。流延膜103が自己支持性を有するものとなったときに、剥取ローラ104で支持しながらフィルム105として剥ぎ取る。渡り部に設けられたローラ106でテンタ室50に搬送する。この場合でも、回転ドラム102の回転速度とローラ104の回転速度を調整することにより搬送方向応力Sx(Pa)の調整を行うことができる。搬送方向応力Sxの測定は、張力計107で行う。なお、テンタ室50での乾燥,延伸方法は前述した方法と同じものを適用できる。
【0039】
図では、単層流延のみを示しているが、本発明の透明支持体の溶液製膜方法は、重層流延法にも適用可能である。重層流延法としては、マルチマニホールド流延ダイを用いたり、流延ダイの上流側にフィードブロックを取り付けたものを用いたりする共流延法や、流延バンド上に複数の流延ダイを設けた逐次流延法や、それらを組合わせた逐次共流延法などが挙げられる。
【0040】
次に、前記ハードコート層について以下に説明する。
[ハードコート層]
ハードコート層は、プラスチックフィルムからなる透明支持体の押し込み弾性の低さを補い、鉛筆引掻き等で評価される耐擦傷性をフィルムに付与する目的で形成される。
【0041】
本発明のハードコート層は、電離放射線硬化型の樹脂を主成分とする。ハードコート層の膜厚は、3〜15μmの範囲内であることが好ましい。ハードコート層の膜厚が3〜15μmの範囲内であると、押し込み弾性の改善効果による数μmの粒径の異物等に起因するハードコート層表面の点欠陥数が減少し、ハードコートフィルム、或いは反射防止層を形成した後の反射防止フィルムのカール小さくなるため次工程でのハンドリング適性が良化し、更には可とう性、脆性が向上するため加工適性が良化する。
【0042】
偏光板、液晶表示装置に適用したときの得率の観点から、点欠陥の数として、ハードコート層表面において50μm以上の大きさの点欠陥が1平方メートル当り5個以下であることが好ましい。
【0043】
<透光性樹脂>
ハードコート層に含有する透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0044】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、プロピレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミド等が主成分として挙げられる。
【0045】
<光重合開始剤>
これらの透光性樹脂の重合は、以下の光ラジカル重合開始剤に電離放射線を照射することで開始される。光ラジカル重合開始剤の例として、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1
991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0046】
上記の透明樹脂に加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0047】
<透光性粒子>
ハードコート層に光散乱性を付与するために用いられる透光性粒子は、光拡散性及び防眩性付与の目的で用いられるものであり、その平均粒径が0.5〜5μm、好ましくは1.0〜4.0μmである。平均粒径が0.5μm未満であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がるため、ディスプレイの文字解像度の低下を引き起こしたり、表面凹凸が形成しにくくなるため防眩性が不足したりするため、好ましくない。一方、5μmを超えると、ハードコート層の膜厚を厚くする必要が生じ、カールが大きくなる、素材コストが上昇してしまう、等の問題が生じる。
前記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の
粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、メタクリル粒子、架橋メタクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0048】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、上述したようなギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0049】
さらに、前記透光性粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ透光性粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布とすることができる。
【0050】
前記透光性粒子は、形成されたハードコート層中に、ハードコート層全固形分中に3〜30質量%含有されるように配合される。好ましくは5〜20質量%である。3質量%未満であると、光散乱効果が不足し、30質量%を超えると、像の解像度の低下や表面の白濁やギラツキ等の問題が生じる。
また、透光性粒子の密度は、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは1
00〜700mg/m2である。
透光性粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0051】
ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、前記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、透光性粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率透光性粒子を用いたハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーを用いる場合、その添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このような無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞
う。
【0052】
また、ハードコート層には下記のオルガノシラン化合物を用いることができる。
(オルガノシラン化合物)
本発明の反射防止フィルムを構成する機能層のうちの少なくとも1層は、その層を形成する塗布液中に、オルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物の少なくとも一種の成分、いわゆるゾル成分(以降このように称する場合もある)を含有することが耐擦傷性の点で好ましい。反射防止能と耐擦傷性を両立させるために、低屈折率層と機能層の共にゾル成分を含有することが特に好ましい。このゾル成分は、塗布液を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成し上記層のバインダーの一部となる。また、該硬化物が重合性不飽和結合を有する場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
該オルガノシラン化合物のゾル成分は、下記一般式(1)で表される。
【0053】
【化1】

【0054】
上記一般式(1)において、R1は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合、または、*−COO−**、*−CONH−**もしくは*−O−**を表し、単結合、*−COO−**および*−CONH−**が好ましく、単結合および*−COO−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。*は=C(R1)−に結合する位置を、**はLに結合する位置を表す。
【0055】
Lは2価の連結鎖を表す。例えば、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
lはl=100−mの数式を満たす数を表し、mは0〜50の数を表す。mは0〜40の数がより好ましく、0〜30の数が特に好ましい。mが50より多いと、固形分が生じ
たり、液が濁ったり、ポットライフが悪化したり、分子量の制御が困難(分子量の増大)であったり、重合性基の含有量が少ないために重合処理を行った場合の性能(例えば反射防止膜の耐傷性)の向上が得られにくいために好ましくない。
【0056】
2〜R4は、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基、もしくは無置換のアルキル基を表す。R2〜R4は塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基がより好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基もしくはメトキシ基が特に好ましい。
5は水素原子、アルキル基を表す。R5は水素原子もしくは無置換のアルキル基がより好ましく、水素原子もしくは炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましく、水素原子もしくはメチル基が特に好ましい。
【0057】
6は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。R6に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。置換基としてビニル重合性基以外の重合性官能基、例えばエポキシ基、イソシアナート基なども好ましい。R6の置換基としては、水酸基もしくは無置換のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくは炭素数1〜3のアルキル基が更に好ましく、水酸基もしくはメチル基が特に好ましい。
【0058】
一般式(1)の化合物は1種もしくは複数種のシラン化合物を出発原料として合成される。以下に一般式(1)の出発原料となるシラン化合物の具体例を示すが、限定されるものではない。
【0059】
【化2】

【0060】
【化3】

【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

【0063】
【化6】

【0064】
【化7】

【0065】
【化8】

【0066】
M−48: CH3−Si(OCH3)3
M−49: C25−Si(OCH3)3
M−50: t−C49-Si(OCH3)3
【0067】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、(M−25)、(M−48)、(M−49)を出発原料とすることが特に好ましい。
【0068】
また、式(1)におけるR6としての基をフッ素原子を有する基とすることで、フッ化アルキル基含有シラン化合物の加水分解物或いは完全加水分解物を使用することも、本発明のオルガノシランの加水分解物/部分縮合物中にフッ化アルキル基を導入できるので好ましい。
フッ化アルキル基含有シラン化合物の部分加水分解物或いは完全加水分解物としては、下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
【0069】
【化9】

【0070】
式中、Rfは、Cn2n+1、または、下記の基を表す。
【0071】
【化10】

【0072】
(nは1〜20の整数、mは1以上、好ましくは1〜20、特に1〜10の整数)で表されるエーテル結合を1個以上含んでいてもよいポリフルオロアルキル基を示し、Xは−CH2−、−CH2O−、−NR2a−、−COO−、−CONR2a−、−S−、−SO3−又はSO2NR2a−(R2aは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基)の1種又は2種以上の結合基を示し、R1aは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基を示す。aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数である。)
【0073】
Rfは、Cn2n+1又はCF3CF2CF2O(CFCF3CF2O)mCFCF3−(n,mは上記の通り)であり、Cn2n+1としては、CF3−、C25−、C37−、C49−、C613−、C817−、C1021−、C1225−、C1429−、C1633−、C1837−、C2041−などが挙げられる。
【0074】
このような一般式(3)のシラン化合物としては、下記のものを例示することができる。
Rf(CH22Si(OH)3
Rf(CH22SiCH3(OH)2
Rf(CH22Si(OCH3)(OH)2
Rf(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
Rf(CH22Si(CH32(OH)
Rf(CH22Si(OCH32(OH)
Rf(CH22Si(OCH2CH32(OH)
Rf(CH23Si(OH)3
Rf(CH23SiCH3(OH)2
Rf(CH23Si(OCH3)(OH)2
Rf(CH23Si(OCH2CH3)(OH)2
Rf(CH23Si(CH32(OH)
Rf(CH23Si(OCH32(OH)
Rf(CH23Si(OCH2CH32(OH)
RfNH(CH22Si(OH)3
RfNH(CH22SiCH3(OH)2
RfNH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfNH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfNH(CH22Si(CH32(OH)
RfNH(CH22Si(OCH32(OH)
RfNH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OH)3
RfNH(CH22NH(CH22SiCH3(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(CH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OH)3
RfCONH(CH22SiCH3(OH)2
RfCONH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfCONH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfCONH(CH22Si(CH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OCH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
【0075】
好ましいものとして下記のものが挙げられる。
CF3(CH22Si(OH)3
CF3(CH22SiCH3(OH)2
CF3(CH22Si(OCH3)(OH)2
CF3(CH22Si(CH32(OH)
CF3(CH22Si(OCH32(OH)
817(CH22Si(OH)3
817(CH22SiCH3(OH)2
817(CH22Si(OCH3)(OH)2
817(CH22Si(CH32(OH)
817(CH22Si(OCH32(OH)
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OH)3
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23SiCH3(OH)2
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OCH3)(OH)2
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OCH32
(OH)
【0076】
これらの化合物はフッ化アルキル基含有ハロゲノシラン化合物やフッ化アルキル基含有アルコキシシラン化合物に加水分解相当量の水を加え、加水分解し、シラノール化することにより得られるものである。
【0077】
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかは塗布品性能の安定化のためには揮発性を抑えることが好ましく、具体的には、105℃における1時間当たりの揮発量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0078】
本発明に用いられるゾル成分は上記オルガノシランを加水分解および/または部分縮合することにより調製される。
【0079】
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかにおいて、ビニル重合性基を含有するオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物いずれかの質量平均分子量は、分子量が300未満の成分を除いた場合に、450〜20000が好ましく、500〜10000がより好ましく、550〜5000が更に好ましく、600〜3000が更に好ましい。
オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物における分子量が300以上の成分のうち、分子量が20000より大きい成分は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。10質量%より多く含有すると、そのようなオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する硬化性組成物を硬化させて得られる硬化皮膜は、透明性や基板との密着性が劣る場合がある。
【0080】
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
分散度(質量平均分子/数平均分子量)は3.0〜1.1が好ましく、2.5〜1.1がより好ましく、2.0〜1.1が更に好ましい。
【0081】
本発明のオルガノシランの加水分解物および部分縮合物の29Si−NMR分析により一般式(1)の加水分解性基が−OSiの形で縮合している状態を確認できる。
この時、Siの3つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T3)、Siの2つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T2)、Siの1つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T1)、Siが全く縮合していない場合を(T0)とした場合に縮合率αは数式(A):α=(T3×3+T2×2+T1×1)/3/(T3+T2+T1+T0)で表され、縮合率は0.2〜0.95が好ましく、0.3〜0.93がより好ましく、0.4〜0.9がとくに好ましい。
0.1より小さいと加水分解や縮合が十分でなく、モノマー成分が増えるため硬化が十分でなく、0.95より大きいと加水分解や縮合が進みすぎ、加水分解可能な基が消費されてしまうため、バインダーポリマー、樹脂基板、無機微粒子などの相互作用が低下してしまい、これらを用いても効果が得られにくくなる。
【0082】
本発明で用いるオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物について詳細を説明する。
オルガノシランの加水分解反応、それに引き続く縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、酪酸、マレイ
ン酸、クエン酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等;KF、NH4Fなどの含F化合物が挙げられる。
上記触媒は単独で使用しても良く、或いは複数種を併用しても良い。
【0083】
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0084】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0085】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜100%の範囲である。
【0086】
オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
本発明においては、一般式R7OH(式中、R7は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式R8COCH2COR9 (式中、R8は炭素数1〜10のアルキル基、R9は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、TiまたはAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより加水分解を行うことが好ましい。
もしくは触媒に含F化合物を使用する場合、含F化合物が完全に加水分解・縮合を進行させる能力が有るため、添加する水量を選択することにより重合度が決定でき、任意の分子量の設定が可能となるので好ましい。すなわち、平均重合度Mのオルガノシラン加水分解物/部分縮合物を調整するためには、Mモルの加水分解性オルガノシランに対して(M−1)モルの水を使用すれば良い。
【0087】
金属キレート化合物は、一般式R7OH(式中、R7は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR8COCH2COR9 (式中、R8は炭素数1〜10のアルキ
ル基、R9は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物は、一般式Zr(OR7p1(R8COCHCOR9p2、Ti(OR7q1(R8COCHCOR9q2、およびAl(OR7r1(R8COCHCOR9r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR7およびR8は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R9は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、 金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0088】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0089】
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いられる。金属キレート化合物が上記範囲で用いられることによりオルガノシラン化合物の縮合反応が早く、塗膜の耐久性が良好であり、オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物と金属キレート化合物を含有してなる組成物の保存安定性が良好である。
【0090】
ハードコート層へのオルガノシラン化合物の添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
【0091】
本発明における透光性樹脂と透光性粒子との混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を前記範囲とするには、透光性樹脂及び透光性粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。 どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
また、本発明においては、透光性樹脂と透光性粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折率−透光性樹脂の屈折率)が、0.02〜0.2であり、好ましくは0.05〜0.15である。この差が0.02未満であると、内部散乱の効果が不足するためギラツキが悪化し、0.2を超えると、フィルム表面の白濁の問題が生じる。
また、前記透光性樹脂の屈折率は、1.45〜2.00であるのが好ましく、1.48〜1.60であるのが更に好ましい。
また、前記透光性粒子の屈折率は、1.40〜1.80であるのが好ましく、1.50〜1.70であるのが更に好ましい。
ここで、前記透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0092】
<界面活性剤>
本発明のハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者をハードコート層形成用の塗布組成物中に含有してもよい。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量でも、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0093】
フッ素系の界面活性剤の好ましい例としては、フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)が挙げられ、該フッ素系ポリマーは、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらモノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。
【0094】
(i)下記一般式FFで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
【0095】
【化11】

【0096】
一般式FFにおいてR11は水素原子またはメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1〜3の整数を表す。R12は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは酸素原子が好ましい。
一般式FF中のmは1以上6以下の整数であって、2が特に好ましい。
一般式FFのnは1〜3の整数であって、1〜3の混合物を用いてもよい。
【0097】
(ii)前記(i)と共重合可能な下記一般式FAで示されるモノマー
【0098】
【化12】

【0099】
一般式FAにおいて、R13は水素原子またはメチル基を表し、Yは酸素原子、イオウ原子または‐N(R15)‐を表し、R15は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基を表し、好ましくは水素原子またはメチル基である。Yは酸素原子、−N(H)−、および−N(CH3)−が好ましい。
14は置換基を有しても良い炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基を表す。R14のアルキル基の置換基としては、水酸基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、カルボキシル基、アルキルエーテル基、アリールエーテル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等があげられるがこの限りではない。炭素数4以上20以下の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、直鎖及び分岐してもよいブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、エイコサニル基等、また、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の単環シクロアルキル基及びビシクロヘプチル基、ビシクロデシル基、トリシクロウンデシル基、テトラシクロドデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、テトラシクロデシル基、等の多環シクロアルキル基が好適に用いられる。
【0100】
一般式FFで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素系ポリマーの形成に用いられる全モノマー量に対する一般式FFで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの使用割合は、10モル%以上であり、好ましくは15〜70モル%であり、より好ましくは20〜60モル%の範囲である。
【0101】
一般式FFで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含有するフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、5,000〜80,000がより好ましい。ここで、質量平均分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
【0102】
一般式FFで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、効果の発現、塗膜の乾燥、塗膜性能(例えば反射率、耐擦傷性)などの観点から、塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0103】
以下、一般式FFで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお式中の数字は各モノマー重合成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0104】
【化13】

【0105】
【化14】

【0106】
或いは、上層を塗布する時には上層を形成する溶剤に抽出されるようなフッ素系ポリマーを選択することで、下層表面(=界面)に偏在することがなくなり上層と下層の密着性を持たせることで、高速塗布においても面状の均一性を保ち、かつ耐擦傷性の強い反射防止フィルムを提供できる。そのような素材の例は下記一般式FHで表されるモノマーからなるフッ素系ポリマーである。
【0107】
(iii)下記一般式FHで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
【0108】
【化15】

【0109】
一般式FHにおいてR21は水素原子またはハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。X2は酸素原子、イオウ原子または−N(R22)−を表し
、酸素原子または−N(R22)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。mは1以上6以下の整数、nは1以上18以下の整数を表す。R22は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Xは酸素原子が好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式FBで表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーが2種類以上構成成分として含まれていても良い。
【0110】
(iv)前記(iii)と共重合可能な下記一般式FBで示されるモノマー
【0111】
【化16】

【0112】
一般式FBにおいて、R23は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Y2は酸素原子、イオウ原子または‐N(R25)‐を表し、酸素原子または−N(R25)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R24は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
25は置換基を有しても良い炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、ポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基、置換基を有していても良い芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。炭素数1〜12の直鎖、分岐、または環状のアルキル基、または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐、または環状のアルキル基が更に好ましい。
【0113】
一般式FHで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素系ポリマーにおいて、フッ素系ポリマーの形成に用いられる全モノマー量に対する一般式FHで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの使用割合が50モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70〜100モル%であり、特に好ましくは80〜100モル%の範囲である。
【0114】
一般式FHで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を含むフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
【0115】
一般式FHで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、添加する層の塗布液に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0116】
以下、一般式FHで示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーからなるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお式中の数
字は各モノマー重合成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0117】
【化17】

【0118】
【化18】

【0119】
<溶剤>
本発明のハードコート層は、直接透明支持体上にウエット塗布されるケースがあるため、特に塗布組成物に用いる溶剤の選択は重要である。溶剤としての要件は、各種溶質を充分に溶解すること、塗布〜乾燥過程で塗布ムラ、乾燥ムラを発生しないこと、支持体を溶解しないこと(平面性悪化、白化等の故障防止に必要)、反対にある程度は支持体を膨潤させること(密着性に必要)等が挙げられる。
具体例としては、支持体にトリアセチルセルロースを用いる場合には、各種ケトン(メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、各種セロソルブ(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等)、膨潤性調整のために酢酸メチル、酢酸エチル等の溶解性の高いものや、トルエン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール等の膨潤させにくいもの等を、適宜、混合して用いることができる。特に、トリアセチルセルロース上に直接、防眩性を付与するために透光性粒子を添加したハードコート層を形成する場合には、防眩性の制御のために、メチルイソブチルケトン、トルエン等の溶解性の低いものを主体とし、少量成分としてシクロヘキサノン、メチルエチルケトン等を含有させることが好ましい。
【0120】
次に、前記低屈折率層について以下に説明する。
[低屈折率層]
本発明の反射防止フィルムにおける低屈折率層の屈折率は、反射防止性能および膜の機
械強度のバランスの観点から、1.30〜1.55が好ましく、より好ましくは1.35〜1.45の範囲である。
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(I):(m/4)×0.7<n1×d1<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、前記数式(I)を満たすとは、前記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0121】
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層は、バインダー成分、少量添加剤、溶剤からなる。バインダー成分は低屈折率を有するものが好ましく、後述する含フッ素ポリマー、無機微粒子、等が挙げられる。また、層の凝集力の向上のために、オルガノシラン化合物、その加水分解およびその縮合物の少なくともいずれか(ゾル成分)、硬化性化合物等をバインダー成分の一部として含有させることができる。また、ゾル成分を主成分としてゾルーゲル膜として用いることもできる。ゾルーゲル膜として用いる場合には、一部または全部フッ素原子置換のアルキル基を含有することが好ましい。少量添加剤としては、防汚、滑り剤、防塵、帯電防止剤、重合開始剤等が挙げられる。
【0122】
<含フッ素ポリマー>
本発明の低屈折率層の好ましい一つの例としては、低屈折率バインダーとして含フッ素ポリマーを含む。含フッ素ポリマーとしては、動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。屈折率の低下と凝集力、下層との密着性を付与するためには、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含有するのが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0123】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
前者の含フッ素ポリマーは、下記一般式(2)で表される化合物のゾル−ゲル反応により形成されるものが好ましい。
一般式(2):(R2nSi(Y)4-n
式中、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、一部または全部フッ素原子置換のアル
キル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Yは水酸基または加水分解可能な基を表す。nは0〜3の整数を表す。一般式(2)で表される化合物のゾル−ゲル反応により形成されるポリマーが含フッ素ポリマーとなるためには、R2が一部または全部フ
ッ素原子置換のアルキル基である一般式(2)で表される化合物を少なくとも1種類使用する必要がある。詳しくは、R2は炭素数1〜30の、置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数1〜30の、一部又は全部フッ素置換アルキル基、炭素数6〜30の、置換もしくは無置換のアリール基を表す。一部がフッ素置換されたアルキル基の場合には、フッ素原子以外の置換基を有してもよい。これらの基が有する置換基としては、後述する一般式(1)のR10で表される基の置換基として挙げたものが挙げられる。Yで表される加水分解可能な基としては、ハロゲン原子(塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ)、炭素数1〜5のアシルオキシ基(アセトキシ、プロパノイルオキシ)が挙げられ、メトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。R2は一部又は全部フッ素置換アルキル基が好ましい。一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、CF3(CH22Si(OCH33、CF3CF2(CH22Si(OCH33、CF3(CF22(CH22Si(OCH33、CF3(CF23(CH22Si(OCH33、CF3(CF24(CH22Si(OCH33、CF3(CF25(CH22Si(OCH33、CF3(CF26(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF28(CH22Si(OCH33、CF3(CF29(CH22Si(OCH33、CF3(CH22Si(OC253、CF3CF2(CH22Si(OC253、CF3(CF22(CH22Si(OC253、CF3(CF23(CH22Si(OC253、CF3(CF24(CH22Si(OC253、CF3(CF25(CH22Si(OC253、CF3(CF26(CH22Si(OC253、CF3(CF27(CH22Si(OC253、CF3(CF28(CH22Si(OC253、CF3(CF29(CH22Si(OC253等が挙げられ、特にCF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OC253を好ましく用いることができる。これらの化合物の加水分解、脱水縮合には、一般式(1)及び(3)で表される化合物の項で説明した方法が用いられる。
【0124】
含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体を形成する含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0125】
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0126】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマーには特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0127】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0128】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
【0129】
本発明に用いられる共重合体の好ましい形態として下記一般式1のものが挙げられる。
【0130】
【化19】

【0131】
式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましいLの例としては、*‐(CH22−O−**,*−(CH22−NH−**,*−(CH24−O−**,*−(CH26−O−**,*−(CH22−O−(CH2
2−O−**,*−CONH−(CH23−O−**,*−CH2CH(OH)CH2
O−**,*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(ここで、*はポリマー主鎖
側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。
m、は0または1を表す。
Xは、水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
Aは、任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0132】
上記ビニルモノマーの好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル
(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0133】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0134】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。
【0135】
【化20】

【0136】
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を単位を表し、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0137】
一般式1又は2で表される共重合体の好ましい具体例として、特開2004−45462号公報の[0043]〜[0047]に記載されたものが挙げられる。また、一般式1又は一般式2で表される共重合体の合成法も該公報に詳しく記載されている。
【0138】
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層は、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーから主としてなる硬化性組成物を少なくともを含有する組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であり、該含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体であり、そして該低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55の範囲にあることが、層の低屈折率及び透明性を長期間保持できる点で好ましい。
【0139】
<硬化性化合物>
低屈折率層のバインダー成分の一部として含有されることのある硬化性化合物としては
、(メタ)アクリレートモノマーが好ましく用いられる。(メタ)アクリレートモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。添加量は、中空粒子等、低屈折率を有する材量の含率によって調整すればよく、低屈折率層全体に対して質量で0〜70%が好ましい。この範囲の添加量であれば、層の屈折率が上昇することもなく、好ましい反射防止層の設計ができる。
【0140】
<無機微粒子>
本発明の低屈折率層は、少なくとも一種類の無機微粒子を含有していてもよい。
無機微粒子の塗設量は、耐擦傷性の改良効果を発現し、かつ低屈折率層表面に微細な凹凸の発生するのを抑制し黒の締まりなどの外観や積分反射率を良好に維持する観点から、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。
例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の平均粒径は、、耐擦傷性の改良効果を発現し、かつ低屈折率層表面に微細な凹凸の発生するのを抑制し黒の締まりなどの外観や積分反射率を良好に維持する観点から、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上100nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。以上シリカ微粒子について述べたことは、他の無機粒子についても適用される。
ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0141】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式(IV)で表される空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
数式(IV):x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定を
おこなった。
【0142】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用してもよい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0143】
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
【0144】
<オルガノシラン、ゾル成分>
本発明の反射防止フィルムを構成する低屈折率層は、その層を形成する塗布液中に前述の一般式(1)のオルガノシラン化合物、その加水分解物およびその部分縮合物の少なくとも1種、いわゆるゾル成分(以降このように称する)を含有することが耐擦傷性の点で好ましい。また、単一まはた複数のオルガノシラン化合物から得られるゾル成分を主成分として、ゾルーゲル膜を形成することで、耐擦傷性に優れた低屈折率層を得ることもできる。
【0145】
本発明に用いられる低屈折率層の塗布液には、ゾル成分および金属キレート化合物を含む組成物が添加され、さらに、β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物のいずれかあるいは両者が添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
【0146】
本発明で使用されるのは、一般式R4COCH2COR5で表されるβ−ジケトン化合物
およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかであり、本発明に用いられる組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよびアルミニウム化合物の少なくともいずれかの化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物のゾル成分の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物を構成するR4およびR5は、前記金属キレート化合物を構成するR4およびR5と同様である。
【0147】
このβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジ
オンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。
本発明において、β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、得られる組成物の保存安定性の観点から、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。
【0148】
上記オルガノシラン化合物のゾル成分の含有量は、比較的薄膜である表面層の場合は少なく、厚膜である下層の場合は多いことが好ましい。低屈折率層のような表面層の場合は含有層(添加層)の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
低屈折率層以外の層への添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
本発明においてはまず前記オルガノシラン化合物のゾル成分および金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかを添加した液をハードコートもしくは低屈折率層の少なくとも1層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
【0149】
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシラン化合物のゾル成分の使用量は、効果の発現、屈折率の増加防止及び膜の形状・面状維持の観点から、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
【0150】
低屈折率層が、(A)<含フッ素ポリマー>で説明した含フッ素ポリマー、(B)<無機微粒子>で説明した、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上150%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.17〜1.40である無機微粒子、および(C)<オルガノシラン、ゾル成分>で説明した、酸触媒又は金属キレート化合物の存在下で製造されてなる、前記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれか、を含有する硬化性組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であることが、層の低屈折率及び透明性を長期間保持できる点で好ましい。
【0151】
<防汚、滑り剤>
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好まし
くは0.1〜5質量%の場合である。
【0152】
シリコーン系化合物の好ましい例としては、ジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端および側鎖の少なくともいずれかに置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37
.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシリコーン系化合物の例 としては信越化学(株)製、X-22-174DX、X-22-2426、X-22-164B、X22-164C、X-22-170DX、X-22-176D
、X-22-1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM-0725、FM-7725、FM-4421、FM-5521、FM6621、FM-1121やGelest製DMS-U22、RMS-033、RMS-083、UMS-182、DMS-H21、DMS-H31、HMS-301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221 (以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0153】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば−CF2CF3,−CH2(CF24H,−CH2(CF28CF3,−CH2CH2(CF24H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF32,CH2CF(CF32,CH(CH3)CF2CF3,CH(CH3)(CF25CF2H等)であっても、脂環式
構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCH2OCH2CF2CF3,CH2CH2OCH248H,CH2CH2OCH2CH2817,CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該
フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R-2020、M-2020、R-3833、M-3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF-171、F-172、F-179A、ディフェンサMCF-300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0154】
<防塵、帯電防止剤>
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤あるいはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製、メガファックF-150(商品名)、東レダウコーニング(株)製、SH-3748(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0155】
<重合開始剤>
電離放射線によりラジカルを発生する重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1
991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の電離放射線開裂型の電離放射線ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
電離放射線重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
電離放射線重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0156】
熱によりラジカルを発生する重合開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0157】
<溶剤>
本発明の低屈折率層を形成するための塗布組成物に用いられる溶剤としては、各成分を溶解または分散可能であること、塗布工程、乾燥工程において均一な面状となり易いこと、液保存性が確保できること、適度な飽和蒸気圧を有すること、等の観点で選ばれる各種の溶剤が使用できる。乾燥負荷の観点からは、常圧、室温における沸点が100℃以下の溶剤を主成分とし、乾燥速度の調整のために沸点が100℃以上の溶剤を少量含有することが好ましい。
沸点が100℃以下の溶剤としては、例えば、ヘキサン(沸点68.7℃)、ヘプタン(98.4℃)、シクロヘキサン(80.7℃)、ベンゼン(80.1℃)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8℃)、クロロホルム(61.2℃)、四塩化炭素(76.8℃)、1,2−ジクロロエタン(83.5℃)、トリクロロエチレン(87.2℃)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6℃)、ジイソプロピルエーテル(68.5℃)、ジプロピルエーテル (90.5℃)、テトラヒドロフラン(66℃)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2℃)、酢酸メチル(57.8℃)、酢酸エチル(77.1℃)、酢酸イソプロピル(89℃)などのエステル類、アセトン(56.1℃)、2−ブタノン(メチルエチルケトンと同じ、79.6℃)などのケトン類、メタノール(64.5℃)、エタノール(78.3℃)、2−プロパノール(82.4℃)、1−プロパノール(97.2℃)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6℃)、プロピオニトリル(97.4℃)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2℃)などがある。このうちケトン類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中では2−ブタノンが特に好ましい。
沸点が100℃を以上の溶剤としては、例えば、オクタン(125.7℃)、トルエン(110.6℃)、キシレン(138℃)、テトラクロロエチレン(121.2℃)、クロロベンゼン(131.7℃)、ジオキサン(101.3℃)、ジブチルエーテル(142.4℃)、酢酸イソブチル(118℃)、シクロヘキサノン(155.7℃)、2−メチル−4−ペンタノン(MIBKと同じ、115.9℃)、1−ブタノール(117.7℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(153℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(166℃)、ジメチルスルホキシド(189℃)などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−メチル−4−ペンタノンである。
【0158】
[高屈折率層、中屈折率層]
本発明の反射防止フィルムでは、より良い反射防止能を付与するために、高屈折率層や中屈折率層を設けることができる。
前記高屈折率層の屈折率は屈折率1.55〜2.40であり、この範囲内の層があれば、本発明における高屈折率層が存在するといえる。この屈折率の範囲は、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれる範囲であるが、以下の本明細書では、これらの層を総称して高屈折率層と呼ぶことがある。
また、高屈折率層と中屈折率層とが混在する場合、屈折率が支持体、ハードコート層、中屈折率層よりも高い層を高屈折率層といい、屈折率が支持体、ハードコート層、中屈折率層よりも高く高屈折率層より低い層を中屈折率層という。屈折率は、添加する無機微粒子やバインダーの使用量などを調節することにより適宜調節できる。
【0159】
本発明の反射防止フィルムにおける中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.85であり、好ましくは1.60〜1.75の範囲である。
本発明の反射防止フィルムにおける高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.20であり、好ましくは1.80〜1.95の範囲である。
さらに、中屈折率層は下記数式(II)を、高屈折率層は下記数式(III)を満たすこと
が低反射率化の点で好ましい。
数式(II) :(l/4)×0.7<n2×d2<(l/4)×1.3
数式(III):(p/4)×0.7<n3×d3<(p/4)×1.3
式中、l、pはそれぞれ1または2であり、n2、n3はそれぞれ中、高屈折率層の屈折率であり、そしてd2、d3はそれぞれ中、高屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、前記数式(II)、(III)を満たすとは、前記波長の範囲において数式(II)、
(III)を満たすl、pが存在することを意味している。
【0160】
<二酸化チタンを主成分とする無機微粒子>
前記高屈折率層には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子が含有される。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好ましく、さらに好ましくは2〜100nm、特に好ましくは2〜80nmである。
【0161】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co、Al及びZrから選ばれる少なくとも1つの元素を含有させることで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、高屈折率層の耐候性を改良することができる。
本発明に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理してもよい。表面処理は、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3、Zr(OH)4のような無機化合物または、シランカップリング剤のような有機化合物を用いて実施する。本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
高屈折率層に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定
形状、紡錘形状である。
【0162】
<分散剤>
前記無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよいが、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。アニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。さらに、分散剤は架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。
【0163】
<高屈折率層及びその形成法>
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層の形成に使用する。
無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、アミド、エーテル、エーテルアルコールが含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンである。
【0164】
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子分散物は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
【0165】
本発明に用いる高屈折率層は、前記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(電離放射線硬化性化合物等)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0166】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤としては、前述のハードコート層と同様のものが用いられる。
【0167】
高屈折率層においてバインダーは、さらにシラノール基を有することが好ましい。バイ
ンダーがさらにシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば架橋又は重合性官能基を有する化合物を前記の高屈折率層形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して前記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー等を架橋反応、又は、重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0168】
高屈折率層においてバインダーは、アミノ基または四級アンモニウム基を有することも好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーは、高屈折率層における無機微粒子の良好な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することができる。
【0169】
架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
【0170】
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96mol%であることが好ましく、4〜94mol%であることがさらに好ましく、6〜92mol%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98mol%であることが好ましく、6〜96mol%であることがさらに好ましく、8〜94mol%であることが最も好ましい。
【0171】
高屈折率層は前述の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の他にも微細な無機微粒子を含むことができる。
高屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機微粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
【0172】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、防眩性付与粒子、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170
nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0173】
高屈折率層の形成において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下、好ましくは酸素濃度が6体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。
【0174】
[他の層について]
透明支持体と本発明のハードコート層の間に設けても良い他の層として、帯電防止層(ディスプレイ側からの表面抵抗値を下げる等の要求がある場合、表面等へのゴミつきが問題となる場合)、防湿層、密着改良層、虹ムラ(干渉ムラ)防止層等が挙げられる。
これらの層は、公知の方法にて形成することができる。
【0175】
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0176】
[塗布液の調整]
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。その際、溶剤の揮発量を最小限に抑制することにより、塗布液中の含水率の上昇を抑制できる。塗布液中の含水率は5%以下が好ましく、2%以下がより好ましい。溶剤の揮発量の抑制は、各素材をタンクに投入後の攪拌時の密閉性を向上すること、移液作業時の塗布液の空気接触面積を最小化すること等で達成される。また、塗布中、或いはその前後に塗布液中の含水率を低減する手段を設けてもよい。
【0177】
ハードコート層等を形成する塗布液中には、直接その上に形成される層(低屈折率層、中屈折率層等)の乾燥膜厚(50nm〜120nm程度)に相当する異物を概ね全て(90%以上を指す)除去できるろ過をすることが好ましい。光拡散性を付与する為の透光性粒子が低屈折率層や中屈折率層の膜厚と同等以上であるため、前記ろ過は、透光性粒子以外の全ての素材を添加した中間液に対して行うことが好ましい。また、前記のような粒径の小さな異物を除去可能なフィルターが入手できない場合には、少なくとも直接その上に形成される層のウエット膜厚(1〜10μm程度)に相当する異物を概ね全て除去できるろ過をすることが好ましい。このような手段により、直接その上に形成される層の点欠陥を減少することができる。
【0178】
[塗布]
次に、ハードコート層等、直接支持体上に塗布する層を形成するための塗布液を、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法やダイコート法により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。その後、光照射および/または加熱して、硬化する。これによりハードコート層等が形成される。
ここで、必要であればハードコート層を複数層とすることができる。複数層のハードコート層の少なくとも1層を光散乱性を有するものとし、残りの層の少なくとも1層を光散乱性を有さないものとすることもできる。
次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗布液をハードコート層上に塗布し、溶剤を乾燥した後に光照射および加熱の少なくともいずれかの硬化手段で低屈折率層が形成される。用途に応じて、上記ハードコート層に光散乱性を付与したり、上記ハードコート層と低屈折率層の間に、上記低屈折率層と同様の手段によって前記中屈折率層、前記高屈折率層をこの順序で設けてもよい。このようにして、本発明の反射防止フィルムが得られる。
【0179】
上記の各種塗布方式の中でも、幅方向、長手方向の塗布量均一性と生産性(高速塗布適
性)を兼ね備えたダイコート法は、特に本発明の平滑性を改良した透明支持体と組み合わせることで、生産性と塗布ムラのない面状を高次元で両立できるため、好ましく用いられる。特に、本発明の反射防止フィルムのような、ウエット塗布量の少ない領域(20cc/m2以下)で好ましく用いることができるダイコーターについて、以下に説明する。
【0180】
[ダイコーターの構成]
図6は、本発明の実施の際に使用したスロットダイを用いたコーターの断面図である。
コーター10"はバックアップローラ11"に支持されて連続走行するウェブWに対して、スロットダイ13"から塗布液14"をビード14a"にして塗布することにより、ウェブW上に塗膜14b"を形成する。
【0181】
スロットダイ13"の内部にはポケット15"、スロット16"が形成されている。ポケ
ット15"は、その断面が曲線及び直線で構成されており、たとえば、図9に示されるよ
うな略円形でもよいし、又は半円形でもよい。ポケット15"は、スロットダイ13"の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。
【0182】
ポケット15"への塗布液14"の供給は、スロットダイ13"の側面から、又はスロッ
ト開口部16a"とは反対側の面の中央から行う。また、ポケット15"には塗布液14"
が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0183】
スロット16"は、ポケット15"からウェブWへの塗布液14"の流路であり、ポケッ
ト15"と同様にスロットダイ13"の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16a"は、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16"のスロット先端における、バックアップローラ11"のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0184】
スロット16"の開口部16a"が位置するスロットダイ13"の先端リップ17"は、先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18"とされている。このランド18"であって、スロット16"に対してウェブWの走行方向の上流側を上流側リップランド18a"、下流側を下流側リップランド18b"と称する。
【0185】
図7は、スロットダイ13"の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は
、本発明のスロットダイ13"を示し、(B)は、従来のスロットダイ30"を示している。従来のスロットダイ30"では、上流側リップランド31a"と下流側リップランド31b"のウェブWとの距離は等しい。なお、(B)において、符号32"はポケット、33"はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13"では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度よく行うことができる。
【0186】
上流側リップランド18a"のランド長さIUPは特に限定はされないが、100μm
〜1mmの範囲が好ましく採用される。下流側リップランド18b"のランド長さILO
は30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0187】
下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い場合は、先端リップ17"のエ
ッジ又はランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を
意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。
【0188】
一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
【0189】
更に、下流側リップランド18b"は、上流側リップランド18a"よりもウェブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて、薄膜塗布に適したビード形成が可能となる。下流側リップランド18b"と上流側リップランド18a"のウェブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、更に好ましくは30μm以上100μm以下、最も好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0190】
スロットダイ13"がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17"とウェブWの隙間GLとは、下流側リップランド18b"とウェブWの隙間を示す。
【0191】
図8は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウェブWの走行方向側とは反対側に、ビード14a"に対して充分な減圧調整を
行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40"を設置する。減圧チャンバー40"は、その作動効率を保持するためのバックプレート40a"とサイドプレート40b"を備えており、バックプレート40a"とウェブWの間、サイドプレート40b"とウェブWの間にはそれぞれ隙間GB、GSが存在する。
【0192】
図9及び図10は、近接している減圧チャンバー40"とウェブWを示す断面図である
。サイドプレート40b"とバックプレート40a"は、図9のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図10のように適宜隙間を変えられるように、チャンバーにネジ40c"などで留められている構造でもよい。
【0193】
いかなる構造であっても、バックプレート40a"とウェブWの間、サイドプレート4
0b"とウェブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定義する。
減圧チャンバー40"のバックプレート40a"とウェブWとの隙間GBとは、減圧チャンバー40"を図8のようにウェブW及びスロットダイ13"の下方に設置した場合、バックプレート40a"の最上端からウェブWまでの隙間を示す。
【0194】
バックプレート40a"とウェブWとの隙間GBを、スロットダイ13"の先端リップ17"とウェブWとの隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましい。これにより、バックアップローラ11"の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。
【0195】
たとえば、スロットダイ13"の先端リップ17"とウェブWとの隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40a"とウェブWの間の隙間GBは100μm以上500μm以下とするのが好ましい。
【0196】
[材質、精度]
ウェブWの走行方向側の先端リップ17"のウェブ走行方向における長さは、長いほど
ビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
【0197】
また、スロットダイの先端リップ17"の材質については、ステンレス鋼などのような
材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップ17"のウェブ走行方向における長さを30〜100μmの範囲にしても、先端リップ17"の精度を満足できない。
【0198】
したがって、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップ17を、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。
【0199】
超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることもできる。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下が更に好ましい。
【0200】
高精度な塗布を実現するためには、先端リップ17"のウェブ走行方向側のランドの前
記長さ及びウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この二つの因子の組み合わせ、すなわち、隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17"とバックアップローラ11"との真直度を出す。
【0201】
<塗布速度>
上記の様なバックアップロール及び先端リップの精度を達成することにより、本発明で好ましく用いられる塗布方式は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、本発明の塗布方式は前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。
本発明の反射防止フィルムの様な低塗布量の塗布液に対して、本発明の塗布方式は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。他の塗布方式でも塗布は可能であるが、ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であり、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法、マイクログラビア法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。また、マイクログラビア法ではグラビアロールの製作精度や、ブレードとグラビアロールの当たりによるロールやブレードの経時変化により塗布量ムラを発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難である。本発明の製造方法を用いることで25m/分以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
【0202】
<ウエット塗布量>
ハードコート層を形成する際には、基材フィルム上に直接又は他の層を介してウエット塗布膜厚として6〜30μmの範囲で前記塗液を塗布するのが好ましい。ハードコート層に光散乱性を付与する場合には、乾燥ムラの検出感度が高くなるため、ウエット塗布膜厚は3〜20μmの範囲が好ましい。また、低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層を形成する際には、ハードコート層上に直接、或いは他の層を介してウエット塗布膜厚として1〜10μmの範囲で塗布組成物を塗布するのが好ましく、2〜5μmの範囲で塗布されるのがより好ましい。
【0203】
[乾燥]
ハードコート層および低屈折率層は、基材フィルム上に直接又は他の層を介して塗布された後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウェブで搬送される。その際の乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。但し、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
【0204】
また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後の乾燥風は、前記塗布組成物の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
また、各層の塗布組成物を基材フィルム上に塗布した後、乾燥ゾーン内で基材フィルムの塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと基材フィルムとの温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
【0205】
[硬化]
次に、本発明のハードコート層、低屈折率層、必要に応じて形成する中屈折率層、高屈折率層の硬化手段について説明する。
本発明のハードコート層、低屈折率層、必要に応じて形成する中屈折率層、高屈折率層は、溶剤の乾燥ゾーンの後に、ウェブで電離放射線および熱の少なくともいずれかの手段により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。例えば紫外線で硬化する場合には、紫外線ランプにより10mJ/cm2〜1000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して各層を硬化するのが好ましい。その際、ウェブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。本発明において、電離放射線とは、通常用いられている意味で用いており、物質中を通過するときに励起やイオン化を引き起こす放射線、すなわち単に放射線とも呼んでいる粒子線及び電磁波を指しており、具体的にはα線、β線、γ線、高エネルギー粒子、中性子、電子線、光線(紫外線及び可視光線)などである。特に本発明に好ましい電離放射線は、紫外線及び可視光線である。
【0206】
硬化時の酸素濃度は、15体積%以下が好ましく、より好ましくは1体積%以下であり、さらに好ましくは0.3体積%以下である。硬化時の酸素濃度が15体積%を超えると、本発明の各層の溶剤乾燥後の膜厚が0.1μm〜数十μm程度と薄い(体積あたりの表面積が大きい)等の理由から、酸素によるラジカルの失活が顕著となり、その結果、硬化後の膜の耐擦傷性、具体的には後述する耐擦傷性が致命的に劣ってしまう、上層を塗布した際に表面が一部膨潤、または溶解してしまうために界面混合が起こり、反射特性が悪化してしまう、等の問題が起こる。
硬化時の酸素濃度を上記のように制御するためには、窒素ガス等をパージして酸素濃度を低下するのが好ましい。
【0207】
また、ハードコート層の硬化率(100−残存官能基含率)が100%未満のある値となった場合、その上に本発明の低屈折率層を設けて電離放射線および熱の少なくともいずれかの手段により低屈折率層を硬化した際に下層のハードコート層の硬化率が低屈折率層を設ける前よりも高くなると、ハードコート層と低屈折率層との間の密着性が改良され、好ましい。
【0208】
前記のようにして製造された本発明の反射防止フィルムは、これを用いて偏光板を作成することにより液晶表示装置に用いることができる。この場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。本発明の反射防止フィルムは、偏光板における偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。
本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐擦傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0209】
本発明の反射防止フィルムを2枚の偏光膜の表面保護フィルムの内の一方として用いて偏光板を作成する際には、前記の反射防止フィルムを、反射防止構造を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化することで、接着面における接着性を改良することが好ましい。
【0210】
[鹸化処理]
(1)アルカリ液に浸漬する法
アルカリ液の中に反射防止フィルムを適切な条件で浸漬して、フィルム全表面のアルカリと反応性を有する全ての面を鹸化処理する手法であり、特別な設備を必要としないため、コストの観点で好ましい。一方、ゾルーゲル低屈折率層等、アルカリ耐性の弱い膜を有する場合には適用できない。アルカリ液は、水酸化ナトリウム水溶液であることが好ましい。好ましい濃度は0.5〜3規定であり、特に好ましくは1〜2規定である。好ましいアルカリ液の液温は30〜75℃、特に好ましくは40〜60℃である。
前記の鹸化条件の組合せは比較的穏和な条件同士の組合せであることが好ましいが、反射防止フィルムの素材や構成、目標とする接触角によって設定することができる。
アルカリ液に浸漬した後は、フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
【0211】
鹸化処理することにより、透明支持体の反射防止層を有する表面と反対の表面が親水化される。偏光板用保護フィルムは、透明支持体の親水化された表面を偏光膜と接着させて使用する。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする接着層との接着性を改良するのに有効である。
鹸化処理は、低屈折率層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が低いほど、偏光膜との接着性の観点では好ましいが、一方、浸漬法では同時に低屈折率層を有する表面から内部のハードコート層までアルカリによるダメージを受ける為、必要最小限の反応条件とすることが重要となる。アルカリによる反射防止層の受けるダメージの指標として、反対側の表面の透明支持体の水に対する接触角を用いた場合、特に透明支持体がトリアセチルセルロースであれば、好ましくは10度〜50度、より好ましくは30度〜50度、さらに好ましくは40度〜50度となる。50度以上では、偏光膜との接着性に問題が生じる為、好ましくない。一方、10度未満では、反射防止膜の受けるダメージが大きすぎる為、物理強度を損ない、好ましくない。
【0212】
(2)アルカリ液を塗布する方法
上述の浸漬法における反射防止膜へのダメージを回避する手段として、適切な条件でアルカリ液を反射防止膜を有する表面と反対側の表面のみに塗布、加熱、水洗、乾燥するアルカリ液塗布法が好ましく用いられる。なお、この場合の塗布とは、鹸化を行う面に対してのみアルカリ液などを接触させることを意味し、塗布以外にも噴霧、液を含んだベルト等に接触させる、などによって行われることも含む。これらの方法を採ることにより、別途、アルカリ液を塗布する設備、工程が必要となるため、コストの観点では(1)の浸漬法に劣る。一方で、鹸化処理を施す面にのみアルカリ液が接触するため、反対側の面にはアルカリ液に弱い素材を用いた層を有することができる。例えば、蒸着膜やゾル−ゲル膜では、アルカリ液によって、腐食、溶解、剥離など様々な影響が起こるため、浸漬法では設けることが望ましくないが、この塗布法では液と接触しないため問題なく使用することが可能である。
【0213】
前記(1)、(2)のどちらの鹸化方法においても、ロール状の支持体から巻き出して各層を形成後に行うことができるため、前述の反射防止フィルム製造工程の後に加えて一連の操作で行っても良い。さらに、同様に巻き出した支持体からなる偏光板との張り合わせ工程もあわせて連続で行うことにより、枚葉で同様の操作をするよりもより効率良く偏
光板を作成することができる。
【0214】
(3)反射防止膜をラミネートフィルムで保護して鹸化する方法
前記(2)と同様に、ハードコート層および/または低屈折率層がアルカリ液に対する耐性が不足している場合に、低屈折率層まで形成した後に低屈折率層を形成した面にラミネートフィルムを貼り合せてからアルカリ液に浸漬することで低屈折率層を形成した面とは反対側のトリアセチルセルロース面だけを親水化し、然る後にラミネートフィルムを剥離することができる。この方法でも、ハードコート層、低屈折率層へのダメージなしに偏光板保護フィルムとして必要なだけの親水化処理をトリアセチルセルロースフィルムの反射防止層を形成した面とは反対の面だけに施すことができる。前記(2)の方法と比較して、ラミネートフィルムが廃棄物として発生する半面、特別なアルカリ液を塗布する装置が不要である利点がある。
【0215】
(4)ハードコート層まで形成後にアルカリ液に浸漬する方法
ハードコート層まではアルカリ液に対する耐性があるが、低屈折率層がアルカリ液に対する耐性不足である場合には、ハードコート層まで形成後にアルカリ液に浸漬して両面を親水化処理し、然る後にハードコート層上に低屈折率層を形成することもできる。製造工程が煩雑になるが、特に低屈折率層がフッ素含有ゾル−ゲル膜等、親水基を有する場合にはハードコート層と低屈折率層との層間密着性が向上する利点がある。
【0216】
(5)予め鹸化済のトリアセチルセルロースフィルムに反射防止膜を形成する方法
トリアセチルセルロースフィルムを予めアルカリ液に浸漬するなどして鹸化し、何れか一方の面に直接または他の層を介してハードコート層、低屈折率層を形成してもよい。アルカリ液に浸漬して鹸化する場合には、ハードコート層または他の層と鹸化により親水化されたトリアセチルセルロース面との層間密着性が悪化することがある。そのような場合には、鹸化後、ハードコート層または他の層を形成する面だけにコロナ放電、グロー放電等の処理をすることで親水化面を除去してからハードコート層または他の層を形成することで対処できる。また、ハードコート層または他の層が親水性基を有する場合には層間密着が良好なこともある。
【0217】
以下に、本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板及び該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
【0218】
[偏光板]
本発明の好ましい偏光板は、偏光膜の保護フィルム(偏光板用保護フィルム)の少なくとも一方として、本発明の反射防止フィルムを有する。偏光板用保護フィルムは、前記のように、反射防止構造を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面の水に対する接触角が10度〜50度の範囲にあることが好ましい。
本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、耐光性に優れた反射防止機能を有する偏光板が作製でき、大幅なコスト削減、表示装置の薄手化が可能となる。
また、本発明の反射防止フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、後述する光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、さらに、液晶表示装置の明室でのコントラストを改良し、上下左右の視野角が非常に広げることができる偏光板を作製できる。
【0219】
[光学補償層]
偏光板には光学補償層(位相差層)を設けることにより、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償層としては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点で
は、ディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学異方性を有する層を有し、該ディスコティック化合物と透明支持体とのなす角度が透明支持体からの距離に伴って変化していることを特徴とする光学補償層が好ましい。
該角度は光学異方性層の透明支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
即ち、好ましい偏光板として、表面保護フィルムのうちの反射防止フィルム以外のフィルムが、該表面保護フィルムの偏光膜と貼り合せる面とは反対側の面に光学異方性層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物からなる層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化している偏光板が挙げられる。
光学補償層を偏光膜の保護フィルムとして用いる場合、偏光膜と貼り合わせる側の表面が鹸化処理されていることが好ましく、前記の鹸化処理に従って実施することが好ましい。
また、光学異方性層が更にセルロースエステルを含んでいる態様、光学異方性層と透明支持体との間に配向層が形成されている態様、該光学異方性層を有する光学補償層の透明支持体が、光学的に負の一軸性を有し、且つ該透明支持体面の法線方向に光軸を有する態様でもよい。
【0220】
[偏光膜]
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0221】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0222】
[液晶表示装置]
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0223】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0224】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2
−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0225】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0226】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0227】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001-10004
3号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0228】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0229】
(透明支持体1の作製)
<ドープの調整>
ドープ原料として下記に示す処方のものを用いた。
セルローストリアセテート(酢化度60.5%) 20質量部
酢酸メチル 58質量部
アセトン 5質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
n−ブタノール 5質量部
可塑剤A:ジトリメチロールプロパンテトラアセテート 1.2質量部
可塑剤B:トリフェニルホスフェート 1.2質量部
紫外線吸収剤a:(2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン
0.2質量部
紫外線吸収剤b:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.2質量部
紫外線吸収剤c:(2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.2質量部
剥離剤a:C1225OCH2CH2O−P(=O)−(OK)2
0.02質量部
剥離剤b:クエン酸 0.02質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm、モース硬度 約7) 0.05質量部
【0230】
混合溶媒をミキシングタンクに入れた後に、溶媒温度を35℃〜40℃の範囲に保持しながら、TACを入れて攪拌翼で30分間攪拌し粗溶解液を得た。その後に適宜添加剤を投入し60分攪拌を行った。なお、このときも液温度を30℃〜32℃の範囲に保持した。そして、目視で不溶解物が無いことを確認してドープ11'を得た。
【0231】
<流延>
ドープ11'をミキシングタンク12に入れて送液ポンプ14で流延ダイ16に送液し
た。乾燥後のフィルム厚みが80μmとなるように流延を行った。このときの流延幅は、1600mmとした。乾燥風26は、風速9m/sで温度35℃で流延膜25に送風した。流延バンド23の流延速度は、0.5m/sとし、剥取ローラ27で支持しながら流延バンド23からフィルム28として剥ぎ取った。ローラ40上でのフィルム28の搬送速度は、9.5m/sとした。このときの搬送方向応力Sxを張力計29で測定したところ、1.92MPaであった。
【0232】
フィルム28をテンタ室50に搬送し、テンタ装置51で延伸を行った。テンタ装置51内の平均温度が130℃となるように乾燥風供給装置52,53を用いて乾燥風54,55をテンタ室50内に送風した。延伸開始時(図4の延伸部51bの最上流側)のフィルム28の残留溶媒量は、21質量%であった。延伸は、延伸倍率を20%とし、延伸速度を100%/minとして行った。また、延伸時のフィルムの表面温度(以下、膜面温度と称する)を放射温度計で測定したところ、116℃であった。ひずみ計87で測定された値から算出された幅方向最大応力値Symax は、54MPaであり、搬送方向応力Sxと幅方向応力Syとの比(Sy/Sx)は、28であった。テンタ装置入口76から出口77へ搬送されていた時間は0.81分であった。延伸直後にフィルムの幅をそのまま維持した状態で、熱処理部51cで115℃、6秒間の熱緩和を行った。その後に、フィルム28を乾燥室60に搬送し、32分間乾燥させた。なお、乾燥室60内の平均温度が120℃となるように乾燥風供給装置62,63から乾燥風64,65を送風した。最後に、フィルム28をロール状で巻取機66で巻き取った。このようにして作製した透明支持体1は、平面性を目視で評価したところ、チリメン故障が従来品と比較して格段に改良され、殆ど目視できなかった。
【0233】
(透明支持体2の作製)
透明支持体1の作製において、値Symax を2MPa、搬送方向応力Sxと幅方向応力Syとの比(Sy/Sx)を1とした以外は同様にして、透明支持体2を作製した。このようにして作製された透明支持体2は、長手方向から直交する方向から、仰角45度近辺で蛍光灯を映り込ませて目視面検したところ、チリメン故障がはっきり確認できる程、平面性が悪いものであった。
【0234】
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0235】
【化21】

【0236】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N-ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
【0237】
(オルガノシランゾルA液の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、オルガノシランゾル液を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0238】
(オルガノシランゾルB液の調製)
上記オルガノシランゾルA液の調製において、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン100質量部の代わりに、テトラエトキシシシラン25質量部、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン75質量部を用いた以外は上記オルガノシランゾルA液と同様にして、オルガノシランゾルB液を調整した。
【0239】
(ハードコート層用塗布液Aの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(KAYARAD PET−30(商品名)、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.5gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。 この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3
.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、前記のフッ素系ポリマー(P−7)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液Aを調製した。本塗布液のウエット塗布量は19.5cc/m2とした。
【0240】
(ハードコート層用塗布液Bの調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤
含有)285g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)85gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学(株)製)28gを混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
さらにこの溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した分散液を35g加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスターKE-P150、日本触媒(株)製)の30%メチルエチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分分散した分散液を90g加え、混合攪拌し、完成液とした。
前記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過してハードコート層用塗布液Bを調製した。本塗布液のウエット塗布量は10.0cc/m2とした。
【0241】
(ハードコート層用塗布液Cの調製)
・KAYARAD DPCA−20、日本化薬(株)製
(部分カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、
平均2(ユニット/1分子)付加) 100質量部
・メチルエチルケトン 90質量部
・シクロヘキサノン 10質量部
・イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
3質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は20.0cc/m2とした。
【0242】
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
・MPT−129C、石原産業(株)製(TiO2:Co34:Al23:ZrO2=90.5:3.0:4.0:0.5質量比) 57.1質量部
・下記分散剤 38.6質量部
・シクロヘキサノン 704.3質量部
を添加し、ダイノミルにより質量平均径70nmになるまで分散した。
【0243】
分散剤
【0244】
【化22】

【0245】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
・上記の二酸化チタン分散液 88.9質量部
・KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製 58.4質量部
・イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
3.1質量部
・カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製 1.1質量部
・メチルエチルケトン 482.4質量部
・シクロヘキサノン 1869.8質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は3.5cc/m2とした。
【0246】
(高屈折率層用塗布液Aの調製)
・上記の二酸化チタン分散液 586.8質量部
・KAYARAD DPHA、日本化薬(株)製 47.9質量部
・イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
4.0質量部
・カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製 1.3質量部
・メチルエチルケトン 455.8質量部
・シクロヘキサノン 1427.8質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は3.5cc/m2とした。
【0247】
(中空シリカ分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30部、および、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、中空シリカ分散液を得た。得られた中空シリカ分散液の固形分濃度は18質量%、溶剤乾燥後の屈折率は1.31であった。
【0248】
(低屈折率層用塗布液Aの調整)
・JTA113(JSR(株)製、水酸基含有熱硬化性含フッ素ポリマー、6%MEK溶液) 13.0質量部
・MEK−ST−L(日産化学(株)製、シリカゾル、60%MEK分散液
1.2質量部
・ゾル液A 0.7質量部
・MEK 5.0質量部
・シクロヘキサノン 0.6質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は3.5cc/m2とした。
【0249】
(低屈折率層用塗布液Bの調整)
・KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製) 1.4質量部
・パーフルオロオレフィン共重合体(1) 5.6質量部
・中空シリカ分散液 20.0質量部
・RMS−033(GEKEST製) 0.7質量部
・イルガキュア907(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.2質量部
・ゾル液A 6.2質量部
・MEK 305.9質量部
・シクロヘキサノン 10.0質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は3.5cc/m2とした。
【0250】
(低屈折率層用塗布液Cの調整)
・オルガノシランゾルB液 10.0質量部
・X-22-164C 0.04質量部
・ジメチルアミノベンゼン 0.04質量部
・MEK 87.0質量部
・シクロヘキサノン 2.8質量部
を添加、攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過した。本塗布液のウエット塗布量は3.5cc/m2とした。
【0251】
[実施例1〜3および比較例1、2]
表1の層構成および塗布方式にて、実施例1〜3および比較例1、2の反射防止フィルムを作製した。また、MG(マイクログラビア方式)およびダイコート塗布方式のそれぞれの塗布条件、各層の乾燥、硬化条件、および、各フィルムの鹸化条件は以下の通りとした。
【0252】
【表1】

【0253】
(1)MG塗布条件
線数、深度の異なるそれぞれのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数を調整して目的のウエット塗布量になるよう調整し、ハードコート層:搬送速度20m/分、光学薄膜層(中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層):25m/分で塗布を行った。なお、塗布幅:1310mm、有効幅:1280mmとした。また、上記搬送速度は、塗布面状が安定する上限であり、それ以上の搬送速度では、塗布面状が不安定となった。
(2)ダイコート塗布条件
基本条件は、スロットダイ13"は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側
リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16"の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18a"とウェブ12"の隙間を、下流側リップランド18b"とウェブ12"の隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18b"とウェブWとの隙間GL を50μmに設定した。また、減圧チャンバー40"のサイドプレート40b"とウェブWとの隙間GS 、及びバックプレート40a"とウェブWとの隙間GB はともに200μmとした。それぞれの塗布液の液物性およびウエット塗布量設定に合わせて、上記の好ましい範囲内で適宜条件設定し、ハードコート層:50m/分、光学薄膜層:60m/分で塗布を行った。なお、塗布幅:1300mm、有効幅:1280mmとした。また、上記搬送速度は、塗布面状が安定する上限であり、それ以上の搬送速度では、塗布面状が不安定化した。
(3)乾燥
40℃の乾燥風を風速0.1m/秒〜0.5m/秒で40秒間、塗布面に吹き付け、初期の溶剤乾燥が徐々に起こるようにした。続いて、80℃の乾燥風を風速1m/秒〜2m/秒で、乾燥ゾーンの前半から後半にいく程速い風速で、150秒間、塗布面に吹き付け、残りの溶剤を乾燥させた。
(4)硬化
窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、ハードコート層:照射量50mJ/cm2、中屈折率層:300mJ/cm2、高屈折率層:100mJ/cm2、低屈折率層:800mJ/cm2で紫外線を照射して塗布層を硬化させた。なお、低屈折率層用塗布液Aを用いた場合のみ、紫外線照射後に、更に125℃の後乾ゾーンで10分間熱硬化を行った。
【0254】
(5)反射防止フィルムの鹸化
反射防止層の塗布後、上記のフィルムについて、以下の鹸化処理を行った。
1.5Nの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01Nの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。作製した反射防止フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。
次いで、前記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルムを作製した。これを実施例1〜実施例3および比較例1、2の試料とする。
【0255】
[実施例4]
実施例1、2、3のハードコート層を形成した後に、低屈折率層を設けないで実施例1と同様にして鹸化処理を施した後に、ハードコート層上に低屈折率層用塗布液Cを実施例1と同様にマイクログラビア法、ダイコート法でそれぞれ塗布、乾燥し、120℃の熱キュアーゾーンで8分間予備硬化してロール形態に巻き取った後に、ロールごと、120℃の雰囲気中で30分間本硬化して、光散乱性、防眩性を有する反射防止フィルム(実施例4−1〜4−3)を作製した。
【0256】
(反射防止フィルムの評価)
以上、実施例1〜4で得られた反射防止フィルムについて、以下の項目の評価を行った。合わせて、比較例1、2で得られた反射防止フィルムについても同様の評価を行った。
【0257】
(1)フィルムの平面性(チリメン状故障)
暗室において、点光源を点灯した状態で、反射防止フィルムの反射防止層の反対側の面に黒色フィルムを貼付けて裏面反射を無くした状態でフィルム全幅×1mの面積で反射防止層側にフィルムの長手方向と直交する方向から仰角45度前後の角度で反射面検して、反射防止フィルムの平面性を以下のように評価した。
強いチリメン状故障が見える ×
やや強いチリメン状故障が見える △×
僅かに見えるが、気にならない △
殆ど見えない ○
全く見えない ◎
このような評価を実施した結果、本発明の実施例1、2および4の試料は何れも◎、実施例3の試料は○であった。一方、比較例1および2の試料は△×であった。
(2)反射防止フィルムの干渉ムラ
暗室において、3波長型白色蛍光管(ナショナルFPL27EX−N)に散乱カバーを被せた散乱光源を点灯した状態で、反射防止フィルムの反射防止層の反対側の面に黒色フィルムを貼付けて裏面反射を無くした状態で有効幅内の1280mm幅×1mの面積で反射防止層側に各方向から仰角45度前後の角度で反射面検して、ハードコート層および光干渉層の膜厚ムラ起因の干渉ムラを以下のように評価した。
強い干渉ムラが見える ×
やや強い干渉ムラが見える △×
僅かに見えるが、気にならない △
殆ど見えない ○
全く見えない ◎
このような評価を実施した結果、本発明の実施例1、2および4の試料は何れも◎、実施例3の試料は○であった。一方、比較例の試料は何れもチリメン状故障に起因する長手方向に伸びるスジ状のムラが目視され、比較例1−1の試料は透明支持体の△×、比較例1−2、比較例2−1、および比較例2−2の試料は概ね△×、一部分×であった。
【0258】
[実施例5]
偏光板の保護フィルムとして、一方の面に実施例1〜4で作製した反射防止フィルムを、反射防止層を有する面とは反対側の面が偏光子と接するようにして、もう一方には塗布層を有さない鹸化済みのトリアセチルセルロースフィルムを用いて、何れも接着剤を介して貼り合せることによって、一方の面に反射防止層を有する偏光板を作製した。
【0259】
[実施例6]
偏光板の保護フィルムとして、一方の面に実施例1〜4で作製した反射防止フィルムを、反射防止層を有する面とは反対側の面が偏光子と接するようにして、もう一方の面に光学補償層を有する視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムSA 12B、富士写真フィルム(株)製)を、光学補償層を有する面とは反対側の面が偏光子と接するようにして、何れも接着剤を介して貼り合せることによって、一方の面に光学補償層を、もう一方の面に反射防止層を有する偏光板を作製した。
【0260】
[実施例7]
実施例6で作製した光学補償層を有する偏光板を、透過型TN液晶セルのバックライト側の偏光板の液晶セル側に光学補償層が液晶セル側に配置されるようにして用い、実施例5で作製した反射防止層を有する偏光板を、反射防止層が最表面(視認側)に配置されるようにして用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に
広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。また、光散乱性を有さないハードコート層を用いた場合に特に問題であった、チリメン状故障に起因する、斜め45度方向に見える表面平滑性不良が殆ど目視されない表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0261】
【図1】本発明の反射防止フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の多層反射防止フィルムの層構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の透明支持体の溶液製膜に用いられるフィルム製膜ラインの概略図である。
【図4】本発明の透明支持体の溶液製膜に用いられるテンタ装置の概略平面図である。
【図5】本発明の透明支持体の溶液製膜に用いられるフィルム製膜ラインの他の実施形態の概略図である。
【図6】本発明を実施したスロットダイを用いたコーターの断面図である。
【図7】(A)は本発明のスロットダイ13の断面形状を示し、(B)は従来のスロットダイ30の断面形状を示す図である。
【図8】本発明を実施した塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図9】本発明の好ましい塗布方式であるダイコート法の塗布装置における、近接している減圧チャンバー40とウェブ12を示す断面図の一例である。
【図10】本発明の好ましい塗布方式であるダイコート法の塗布装置における、近接している減圧チャンバー40とウェブ12を示す断面図の一例である。
【符号の説明】
【0262】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
4 低屈折率層
5 透光性粒子
6 多層反射防止フィルム
7 透明支持体
8 ハードコート層
9 中屈折率層
10 高屈折率層
11 低屈折率層
10' フィルム製膜ライン
11' ドープ
12 ミキシングタンク
13 攪拌翼
14 送液ポンプ
15 濾過装置
16 流延ダイ
20 流延室
21,22 回転ローラ
23 流延バンド
24 乾燥風供給装置
25 流延膜
26 乾燥風
27 剥取ローラ
28 フィルム
40 ローラ
50 テンタ室
51 テンタ装置
51a 予熱部
51b 延伸部
51c 熱処理部
52,53 乾燥風供給装置
54,55 乾燥風
60 乾燥室
61 ローラ
62,63 乾燥風供給装置
64,65 乾燥風
66 巻取機
71 右レール
71a 入口部
71b 延伸部
71c 出口部
72 左レール
72a 入口部
72b 延伸部
72c 出口部
73,74 無端チェーン(エンドレスチェーン)
75 チェーン駆動部
76 入口
77 出口
80 フィルムクリップ
81,82 原動スプロケット
83,84 従動スプロケット
85 モータ
86 ギア列
87 ひずみ計
88 コントローラ
89 シフト機構
90,91,92 連結軸
93,94,95 連結軸
100 フィルム製膜ライン
101 流延ダイ
102 回転ドラム
103 流延膜
104 剥取ローラ
105 フィルム
106 ローラ
107 張力計
10" コーター
11" バックアップローラ
13" スロットダイ
14" 塗布液
14a" ビード
14b" 塗膜
15" ポケット
16" スロット
16a" スロット開口部
17" 先端リップ
18" ランド
18a" 上流側リップランド
18b" 下流側リップランド
30" 従来のスロットダイ
31a" 上流側リップランド
31b" 下流側リップランド
32" ポケット
33" スロット
40" 減圧チャンバー
40a" バックプレート
40b" サイドプレート
40c" チャンバーにネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体と、該透明支持体より屈折率の低い低屈折率層とを有する反射防止フィルムにおいて、
該透明支持体が、ポリマーと溶媒とを含むドープをドラムまたはベルト状の支持体上に流延し、乾燥して製造されたものであり、その際に、
(a)該ドープの流延幅方向の最大応力値を1MPa以上200MPa以下とすること、および
(b)乾燥の際の流延幅方向の応力Syと流延幅方向に直交する前記ドープの搬送方向の応力Sxとの比を2≦(Sy/Sx)≦50の範囲とすること、
により延伸したこと特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
透明支持体を製造する際に、延伸の後に1秒以上30秒以下、処理温度50℃以上180℃以下で熱処理されることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
透明支持体を流延幅方向に延伸するときの残留溶媒量が、3質量%以上45質量%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
透明支持体が、厚さ40μm〜120μmのセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
低屈折率層が、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含み且つ架橋性若しくは重合性の官能基を含む含フッ素ポリマーから主としてなる硬化性組成物を少なくともを含有する組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であり、該含フッ素ポリマーが、含フッ素ビニルモノマー重合単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する重合単位を含み、主鎖が炭素原子のみからなる共重合体であり、そして該低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
低屈折率層が、(A)含フッ素ポリマー、(B)平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上150%以下で且つ中空構造からなる屈折率が1.17〜1.40である無機微粒子、および(C)酸触媒又は金属キレート化合物の存在下で製造されてなる、下記一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかを含有する硬化性組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(1):(R10mSi(X)4-m
(式中、R10は置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Xは水酸基または加水分解可能な基を表す。mは1〜3の整数を表す。)
【請求項7】
低屈折率層が、下記一般式(2)で表される化合物の部分加水分解物および該部分加水分解物の脱水縮合物の少なくとも1種を含有する硬化性組成物を塗布し硬化して形成される硬化膜であり、該低屈折率層の屈折率が1.30〜1.55の層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止フィルム。
一般式(2):(R2nSi(Y)4-n
(式中、R2は置換もしくは無置換のアルキル基、一部または全部フッ素原子置換のアル
キル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。Yは水酸基または加水分解可能な基を表す。nは0〜3の整数を表す。)
【請求項8】
前記透明支持体と前記低屈折率層の間に、光散乱性を有さないハードコート層および光散乱性を有するハードコート層の少なくとも1層を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の反射防止フィルムの製造方法であって、バックアップロールによって支持されて連続走行する透明支持体の表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する方法の、前記スロットダイの透明支持体進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さを30μm以上100μm以下とするスロットダイを使用し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブの隙間を、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて、前記反射防止層の少なくとも1層が塗布されることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【請求項10】
偏光板を形成するための表面保護フィルムのうち少なくとも片側が、請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルム又は請求項9の反射防止フィルムの製造方法によって製造された反射防止フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項11】
偏光板を形成するための表面保護フィルムのうちの反射防止フィルム以外のフィルムが、該表面保護フィルムの偏光膜と貼り合せる面とは反対側の面に光学異方性層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであり、該光学異方性層がディスコティック構造単位を有する化合物からなる層であり、該ディスコティック構造単位の円盤面が該表面保護フィルム面に対して傾いており、且つ該ディスコティック構造単位の円盤面と該表面保護フィルム面とのなす角度が、光学異方層の深さ方向において変化していることを特徴とする請求項10に記載の偏光板。
【請求項12】
請求項10または11に記載の偏光板を少なくとも1枚有する液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−72340(P2006−72340A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−224152(P2005−224152)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】