説明

反射防止フィルム用組成物

【課題】本発明は、本発明は、耐擦傷性および離型性に優れた反射防止層を形成可能な反射防止フィルム用組成物、および上記反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、上記反射防止層を形成する際に用いられ、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とする反射防止フィルム用組成物を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐擦傷性および離型性に優れた反射防止層を有する反射防止フィルムを容易に製造することを可能とする反射防止フィルム用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターの発達、特に携帯用パーソナルコンピューターの発達に伴って、フラットパネルディスプレイの需要が増加している。また、最近においては家庭用の薄型テレビの普及率も高まっており、益々フラットパネルディスプレイの市場は拡大する状況にある。さらに近年普及しているフラットパネルディスプレイは大画面化の傾向があり、特に家庭用の液晶テレビに関してはその傾向が強くなってきている。このようなフラットパネルディスプレイとしては、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、さらには有機ELディスプレイ等の種々の表示方式のものが採用されており、いずれの方式のディスプレイにおいても映像の表示品質を向上させることを目的とした研究が日々行われている。なかでも、表示品質の向上を目的とした光の反射防止技術の開発は、各方式のディスプレイにおいて共通する重要な技術的課題の一つになっている。
【0003】
従来、このような反射防止技術としては、例えば低屈折率の物質からなる薄膜を単層で表面に形成することにより、単一波長の光に対して有効な反射防止効果を得る技術や、低屈折率物質と高屈折率物質の薄膜を交互に積層した複数層を形成することにより、より広い波長範囲の光に対して反射防止効果を得る技術が用いられてきた。なかでも複数層を用いる技術は、その層数を増加させることによって、より広い波長域を有する光に対しても反射防止効果を得ることができる点において有用であったことから、種々の用途において実用化が図られてきた。
しかしながら、このような複数層を用いる技術においても幾つかの問題点があった。まず第1に、反射防止効果に優れた複数層を形成するには、通常、真空蒸着法などを用いて成膜する必要があるため、表示装置を製造するに際して真空設備を備えることが必要となってしまうという問題点があった。また、真空蒸着法では、成膜時間も長時間になるのが一般的であったことから製造効率の問題も指摘されていた。特に周囲光が非常に強い環境で使用されるディスプレイに対しては高い反射防止性能が要請されるため、複数層を構成する層数を増加させる必要があり、製造コストが著しく高くなってしまうという問題点があった。
第2に、技術的観点からしても複数層による反射防止技術は光の干渉現象を利用するものであるため、反射防止効果が光の入射角や波長に大きく影響してしまい、望みどおりの反射防止効果を得ることが困難であるという問題点があった。
【0004】
このような問題点に対し、特許文献1〜8には凹凸の周期が可視光の波長以下に制御された微細な凹凸パターンを表面に形成することによって反射防止を図る技術が開示されている。このような方法はいわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用したものであり、基板に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることによって光の反射を防止するものである。このようなモスアイ構造を用いた反射防止技術は、簡易な方法によって広い波長範囲の光の反射を防止できる点において有用なものであることから、ディスプレイの分野においてもその実用化が検討されている。
なお、上記モスアイ構造に用いられる凹凸パターンとしては、円錐形や四角錐形などの錐形体が一般的である。
【0005】
上記モスアイ構造が用いられた反射防止フィルムは、通常、光透過性基板と、光透過性基板上に形成され、表面に上記モスアイ構造を有する反射防止層とを有するものであり、上記反射防止層のモスアイ構造は、その微細な凹凸形状を反転させた形状を有する金型(スタンパあるいは鋳型)を用いて、その微細な凹凸形状を任意の樹脂層に転写することによって製造されるのが一般的である。したがって、モスアイ構造が用いられた反射防止フィルムを作製する方法としては、光透過性基板上に硬化性樹脂を含む反射防止フィルム用組成物を塗布して塗布膜を形成した後、上記のような金型を用いて上記塗布膜の表面に微細な凹凸形状を賦型し、さらに上記塗布膜を硬化させて上記反射防止層を形成する方法を用いることができる。このような製造方法は、簡易な方法で、かつ高い製造効率で反射防止フィルムを連続的に製造することができるという利点があるものである。
【0006】
しかしながら、上記の製造方法においては、上記反射防止層に用いられる反射防止フィルム用組成物によっては、上記反射防止層と上記金型とを剥離する工程において、上記反射防止層が上記金型から離型しにくく、上記金型の微細孔に上記反射防止層が詰まってしまう場合があるといった問題があった。
【0007】
また、上記の製造方法により製造された反射防止フィルムは、上記反射防止層の耐擦傷性が十分ではない場合があり、上記反射防止フィルムを用いて表示装置を組み立てる場合に、上記反射防止層が傷つき、所望の反射防止機能を発揮することが困難となる場合があるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2001−517319号公報
【特許文献2】特開2004−205990号公報
【特許文献3】特開2004−287238号公報
【特許文献4】特開2001−272505号公報
【特許文献5】特開2002−286906号公報
【特許文献6】国際公開第2006/059686号パンフレット
【特許文献7】特開平8−338912号公報
【特許文献8】国際公開第2007/040159号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐擦傷性および離型性に優れた反射防止層を形成可能な反射防止フィルム用組成物、および上記反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、上記反射防止層を形成する際に用いられ、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とする反射防止フィルム用組成物を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを潤滑剤として含有することにより、上記反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層の耐擦傷性を高いものとすることができる。
また、本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いることにより、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、上記反射防止フィルムを製造する際、表面に複数の微細孔を有する金型(以下、単に金型と称して説明する場合がある。)を用い、上記反射防止フィルム用組成物からなる反射防止層に微細凹凸を賦型し、上記金型および上記反射防止層を剥離する工程において、上記金型および反射防止層を容易に剥離することができるので、上記反射防止フィルムの製造工程を容易な工程とすることができる。
【0012】
本発明においては、上記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることがより好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることにより、上記反射防止層の離型性および耐擦傷性をより優れたものとすることができる。
【0013】
本発明においては、上記潤滑剤の含有量が、上記光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して0.3質量部〜1.0質量部の範囲内であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止層の耐擦傷性および離型性をより高いものとすることができる。
【0014】
本発明は、上述した反射防止フィルム用組成物を用いて形成されていることを特徴とする反射防止フィルムを提供する。
【0015】
本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いて上記反射防止層が形成されていることから、耐擦傷性の高い反射防止フィルムとすることができる。
また、本発明の反射防止フィルムは、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、容易な製造工程で製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを潤滑剤として用いることにより、上記反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止層の耐擦傷性および離型性を高いものとすることができるといった作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の反射防止フィルムの他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の反射防止フィルム用組成物、および反射防止フィルムについてそれぞれ説明する。
【0019】
A.反射防止フィルム用組成物
まず、本発明の反射防止フィルム用組成物について説明する。
本発明の反射防止フィルム用組成物は、光透過性基板と、上記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、上記反射防止層を形成する際に用いられ、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とするものである。
【0020】
ここで、本発明の反射防止フィルム用組成物は、光透過性基板および反射防止層からなる反射防止フィルムの反射防止層を形成する際に用いられるものである。また、上記反射防止層は、表面に複数の微細凹凸を有するものであり、上記微細凹凸は、その周期が可視光以下に制御されている、いわゆるモスアイ構造である。上記モスアイ構造を有する反射防止フィルムについては、後述する「2.反射防止フィルム」の項で詳しく説明するので、ここでの説明は省略する。
なお、以下の説明においては、上記モスアイ構造を有する反射防止フィルムを、単に反射防止フィルムと称して説明する場合がある。
【0021】
また、HLB値(Hydrophile-Lipophile-Balance)とは、親水性−新油性−バランスを指すものであり、化合物の親水性または新油性の大きさを示す値である。HLB値は、その値が小さいほど新油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなることを示すものである。
【0022】
上記HLB値は以下の計算式によって求めることができる。
HLB値=7+11.7Log(Mw/Mo)
式中、Mwは親水基の分子量、Moは新油基の分子量を表し、Mw+Mo=M(化合物の分子量)である。
【0023】
或いはグリフィン法によれば、HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(J.Soc.Cosmetic.Chem.,5(1954),294)を挙げることができる。
【0024】
ここで、従来から、上記反射防止フィルムの製造においては、表面に複数の微細孔を有する金型を用い、反射防止層に微細凹凸を賦型する方法が用いられていたが、上記反射防止層に用いられる反射防止フィルム用組成物によっては、上記金型から上記反射防止層を剥離しにくく、上記金型の微細孔に上記反射防止層が詰まってしまうといった問題があった。
また、上記反射防止フィルムは上記反射防止層の耐擦傷性が十分ではない場合が多く、上記反射防止フィルムを表示装置に用いた場合、上記反射防止フィルムの反射防止層に傷がつくことにより、所望の反射防止機能を発揮することが困難である場合があるといった問題があった。
【0025】
本発明者は、上記問題を解決すべく、鋭意検討を行った結果、上記反射防止層の形成に用いられる反射防止フィルム用組成物に、潤滑剤としてHLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを含有させることにより、反射防止フィルムの反射防止層に高い耐擦傷性および離型性を付与することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至ったのである。
【0026】
ここで、上記潤滑剤としてHLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを含有させた場合に、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層に高い耐擦傷性および離型性を付与することが可能となる理由については明らかではないが、次のように考えることができる。
ここで、変性シリコーンオイルの新油性および親水性は、変性シリコーンオイル中に含まれるエチレンオキサイド(EO)およびプロピレンオキサイド(PO)に影響されるものであり、EO比率が大きくなるほど親水性を示し、PO比率が大きくなるほど親油性を示すものである。また、上述したように、変性シリコーンオイルのHLB値は、変性シリコーンオイルの親水性または新油性の大きさを示す値であり、HLB値が小さいほど新油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなることを示すものであることから、HLB値が小さいほど変性シリコーンオイル中のPO比率が大きくなり、HLB値が大きくなるほど変性シリコーンオイル中のEO比率は大きくなる。
また、ここで変性シリコーンオイル中に含まれるプロピレンオキサイドは、重合しやすい性質があり、また銀、銅等の金属に触れた場合、よりその重合は促進されやすくなる。そのため、変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲に満たない場合は、変性シリコーン中のPO比率が大きくなることから、金属表面でプロピレンオキサイドが重合し、変性シリコーンオイルを含む樹脂が金属表面に残存するため、反射防止フィルムの離型性が低下することが考えられる。
一方、変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲を超える場合は、変性シリコーンオイル中のEO比率が高くなることから親水性は大きくなるが、新油性が消失し、反射防止フィルムのすべり性が低下するため、耐擦傷性が低下することが考えられる。
【0027】
よって、本発明によれば、上記HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを潤滑剤として含有することにより、上記反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層の耐擦傷性を高いものとすることができる。
また、本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いることにより、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、上記反射防止フィルムを製造する際、金型を用い、上記反射防止フィルム用組成物からなる反射防止層に微細凹凸を賦型し、上記金型および上記反射防止層を剥離する工程において、上記金型および反射防止層を容易に剥離することができるので、上記反射防止フィルムの製造工程を容易な工程とすることができる。
以下、本発明の反射防止フィルム用組成物に用いられる各成分について説明する。
【0028】
1.潤滑剤
本発明に用いられる潤滑剤は、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルである。また、上記潤滑剤は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層表面の潤滑性を向上させることによって、耐擦傷性を向上させるために用いられるものである。また、上記潤滑剤は、上記反射防止層表面の潤滑性を向上させることにより、上記反射防止層の離型性を向上させるためにも用いられる。
【0029】
本発明においては、上記変性シリコーンオイルのHLB値が7〜10の範囲内であれば、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムに高い耐擦傷性および離型性を付与することが可能である。上記変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲に満たない場合は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層の離型性を十分なものとすることが困難となることから、上記反射防止フィルムおよび金型を剥離する工程において、上記反射防止層が上記金型の微細孔に詰まってしまうおそれがある。また、この場合に、無理に上記反射防止層および金型を剥離しようとすると、上記反射防止層の一部が破損したり、上記破損した反射防止層が上記金型の微細孔に詰まることにより、上記金型が使用不可能となるおそれがある。また、上記変性シリコーンオイルのHLB値が上記範囲を超える場合は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いたとしても、耐擦傷性に優れた反射防止層を製造することが困難となるからである。
【0030】
上記変性シリコーンオイルの動粘度としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて、所望の耐擦傷性および離型性を有する反射防止層を製造することができる程度であれば特に限定されるものではなく、270mm・s−1〜1600mm・s−1の範囲内、であることが好ましい。上記変性シリコーンオイルの動粘度が上記範囲に満たない場合、および上記範囲を超える場合は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて、上記反射防止層を形成することが困難となるからである。
【0031】
また、本発明において、上記変性シリコーンオイルの動粘度としては、上記範囲内のうちより高いものを選択して用いることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止層の耐擦傷性をより高いものとすることができるからである。具体的には、上記変性シリコーンオイルの動粘度が、上記数値範囲のなかでも910mm・s−1〜1600mm・s−1の範囲内であることが好ましい。
【0032】
なお、上記変性シリコーンオイルの動粘度は、ASTM D 445―46T(JIS Z 8803でも可)によるウッベローデ粘度計を用いて測定することにより求められる値である。具体的には、第1法の毛細管粘計を用いた動粘度である平方ミリメートル毎秒(mm・s−1)を用いている。25℃条件下における対象液体の動粘度は、一定量の液体の毛細管流出時間を測定し、その時間と粘度計定数とから以下の式によって求めることができる。
動粘度(mm・s−1)=粘度計定数×流出時間(秒)
【0033】
上記潤滑剤の含有量としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて、所望の耐擦傷性および離型性を有する反射防止層を形成することができる程度であれば、特に限定されるものではないが、後述する光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して、0.2質量部〜10.0質量部の範囲内、なかでも0.3質量部〜2.0質量部の範囲内、特に0.3質量部〜1.0質量部の範囲内であることが好ましい。上記潤滑剤の含有量が上記範囲に満たない場合は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いたとしても、製造される反射防止層に所望の耐擦傷性および離型性を付与することが困難となるからである。また、上記潤滑剤の含有量が上記範囲を超える場合は、上記反射防止層を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0034】
上記潤滑剤としては、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであれば特に限定されるものではない。
本発明においては、なかでも、上記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることが好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンオイルを用いることにより、上記反射防止層の離型性および耐擦傷性をより優れたものとすることができる。
【0035】
また、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、反応性ポリエーテル変性シリコーンオイルと非反応性ポリエーテル変性シリコーンオイルに大別されるが、いずれも用いることが可能である。また、ポリエーテル変性シリコーンオイルは、有機基の位置により、側鎖型、片末端型、両末端型、側鎖両末端型の4種類に大きく分けることができるが、いずれも用いることが可能である。本発明においては、特に、上記反応性ポリエーテル変性シリコーンオイルであれば、両末端型のポリエーテル変性シリコーンオイルを、非反応性ポリエーテル変性シリコーンオイルであれば、側鎖型のポリエーテル変性シリコーンオイルを好適に用いることができる。上記反射防止層の離型性および耐擦傷性をより優れたものとすることができるからである。
【0036】
本発明に用いられるポリエーテル変性シリコーンオイルの具体例としては、製品名として、信越化学工業製のKF−353(HLB値 10)、KF−352A(HLB値 7)、KF−615A(HLB値 10)、KF−6012(HLB値 7)、X−22−4272(HLB値 7)、X−22−6266(HLB値 8)等を挙げることができる。
【0037】
本発明においては、上記潤滑剤として少なくともHLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルを含有しているものであれば、特に限定されるものではなく、上記変性シリコーンオイル以外の化合物を潤滑剤として併用してもよい。
【0038】
2.光硬化性アクリル樹脂
次に本発明に用いられる光硬化性アクリル樹脂について説明する。
【0039】
本発明に用いられる光硬化性アクリル樹脂としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて反射防止層を製造することができるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な反射防止フィルムの製造の際に用いられる光硬化性アクリル樹脂と同様とすることができる。
【0040】
このような光硬化性アクリル樹脂としては、分子内に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを重合させるか、又は、そのような(メタ)アクリロイル基含有モノマーの二種以上、或いは、そこにさらにビニルモノマーやアリルモノマー等のエチレン性不飽和結合を有するモノマーを加えて共重合又はグラフト重合させて得られるポリマーであれば、いずれも使用できる。
【0041】
なお、本明細書中において(メタ)アクリロイルはアクリロイル及びメタクリロイルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
【0042】
(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類、アルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状構造を有するモノマー、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート等のカルド構造を有するモノマー、(メタ)アクリロイル変性シリコーン等の離型性を有するモノマー等を挙げることができる。
【0043】
光硬化型アクリル樹脂を構成する共重合モノマーとして、硬化性を有するモノマー、例えば、エポキシ基を有するモノマー、オキセタン化合物、光二量化反応を起こす基を有するモノマー、イソシアネート基を有するモノマー等を使用すれば、ポリマーに反応性を付与することができる。
【0044】
光硬化型アクリル樹脂には、共重合の際のモノマーに光硬化性を持つ(メタ)アクリレートを使用するほかに、さらに側鎖に官能基を導入して硬化性を付与することもできる。官能基を導入する方法としては、例えば、ウレタン変性、エポキシ変性、エステル変性等の方法がある。
【0045】
3.光重合開始剤
次に、本発明に用いられる光重合開始剤について説明する。
本発明に用いられる光重合開始剤としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて反射防止層を製造することができるものであれば、特に限定されるものではなく、一般的な反射防止フィルムの製造の際に用いられる光重合開始剤と同様とすることができる。具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の分子開裂型や、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引き抜き型の光重合開始剤等が挙げられる。
【0046】
上記光重合開始剤の含有量としては、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて反射防止層を形成することができる程度であれば特に限定されない。具体的には、上記光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して、0.2質量部〜15質量部の範囲内、なかでも0.5質量部〜10質量部の範囲内、特に1質量部〜7質量部の範囲内であることが好ましい。上記光重合開始剤の含有量が上記範囲に満たない場合、もしくは上記範囲を超える場合は、本発明の反射防止フィルム用組成物を用いて反射防止層を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0047】
4.その他の成分
本発明の反射防止フィルム用組成物は、上述した潤滑剤、光硬化性アクリル樹脂、および光重合開始剤を含有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な成分を適宜追加することが可能である。このような成分としては、例えば、スリップ剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらの成分については、一般的な樹脂製部材に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0048】
B.反射防止フィルム
次に、本発明の反射防止フィルムについて説明する。
本発明の反射防止フィルムは、上記「A.反射防止フィルム用組成物」の項で説明した反射防止フィルム用組成物を用いて形成されていることを特徴とするものである。
【0049】
ここで、本発明の反射防止フィルムについて図を用いて説明する。図1は、本発明の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
図1に示すように、本発明の反射防止フィルム10は、光透過性基板1と、光透過性基板1上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層2とを有するものである。
【0050】
本発明によれば、上記反射防止フィルム用組成物を用いて上記反射防止層が形成されていることから、耐擦傷性の高い反射防止フィルムとすることができる。
また、本発明の反射防止フィルムは、上記反射防止層の離型性を高いものとすることができることから、容易な製造工程で製造することが可能となる。
以下、本発明の反射防止フィルムの各部材についてそれぞれ説明する。
【0051】
1.反射防止層
本発明に用いられる反射防止層は、後述する光透過性基板上に形成されるものであり、その表面に複数の微細凹凸を有するものである。
また、上記反射防止層は、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有し、上記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルである反射防止フィルム用組成物を用いて形成されるものである。
【0052】
本発明における反射防止層は、表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細凹凸を有するものである。ここで、上記微細凹凸としては、可視光領域の波長以下の周期で形成されたものであれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて、任意の形状を選択して用いることができる。なかでも本発明における微細凹凸は、円錐、四角錐等の錐形の構造物が周期的に形成されたものであることが好ましい。
【0053】
ここで、上記微細凹凸として錐形の構造物が周期的に形成されたものが用いられる場合、上記錐形の構造物としては、図2(a)に示すように、頂部が平坦に形成されたものであってもよく、あるいは、図2(b)に示すように、頂部が鋭角に形成されたものであってもよい。さらには、図1に示すように、頂部が円弧状に形成されたものであってもよい。
なお、図2は、本発明の反射防止フィルムの他の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0054】
本発明における上記微細凹凸として錐形の構造物が周期的に形成されたものが用いられる場合、本発明の反射防止フィルムが備える反射防止機能は主として上記錐形の構造物が形成された周期、高さ、間隔に依存することになる。
なお、錐形の構造物が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図1におけるP、Q、およびRで表される距離を指すものである。
【0055】
上記錐形の構造物の周期は、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本発明の反射防止フィルムの用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、本発明における反射防止層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本発明における上記周期は、70nm〜130nmの範囲内であることが好ましく、90nm〜110nmの範囲内であることがさらに好ましい。錐形の構造物が形成された周期が上記範囲よりも短いと、個々の構造物の形状が極微小になることから、高精度で構造物を形成することが困難になる場合があるからである。また、周期が上記範囲よりも長いと、本発明における反射防止層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
なお、上記周期の微細凹凸はすべて規則性があるのではなく、単位面積におけるピッチの平均値を指すものとする。
【0056】
上記錐形の構造物の高さについても、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記高さは高いほど反射防止層の反射率を低くすることができ、一方、低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから本発明における上記錐形の構造物の高さは、100nm〜600nmの範囲内であることが好ましく、150nm〜400nmの範囲内であることがより好ましく、200nm〜300nmの範囲内であることがさらに好ましい。構造物の高さが上記範囲よりも高いと個々の構造物が損壊しやすくなってしまう場合があり、また高さが上記範囲よりも低いと本発明における反射防止層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
【0057】
また上記錐形の構造物が形成された間隔は広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本発明における上記錐形の構造物が形成された間隔は、本発明における反射防止層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で、適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。具体的には、上記微細凹凸の間隔は、0nm〜30nmの範囲内であることが好ましく、10nm〜20nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上記間隔はすべての微細孔において均一ではない場合があるが、その場合における上記間隔は、単位面積あたりに形成された微細孔間の平均距離を指すものとする。
【0058】
上記反射防止層に用いられる反射防止フィルム用組成物については、上述した「A.反射防止フィルム用組成物」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0059】
2.光透過性基板
次に、本発明に用いられる光透過性基板について説明する。本発明に用いられる光透過性基板は上述した反射防止層を支持するものであり、上記反射防止層と相まって本発明の反射防止フィルムに所望の反射防止機能を付与するものである。
【0060】
本発明に用いられる光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、なかでも可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光透過率は、例えば株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
【0061】
本発明に用いられる光透過性基板は、屈折率が上記反射防止層に用いられる硬化性樹脂材料の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本発明の反射防止フィルムにおいて反射防止層と光透過性基板との界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面で光が反射されてしまうことにより、本発明の反射防止フィルムの反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。なかでも本発明に用いられる光透過性基板は、上記硬化性樹脂の屈折率との差が0〜0.05の範囲内であることが好ましく、0〜0.03の範囲内であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
なお、本発明に用いられる光透過性基板の屈折率の値は、上述した硬化性樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから特に好ましい値はないが、通常1.30〜1.70の範囲内とされる。
【0062】
本発明に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、上述した光透過性を示し、かつ所望の屈折率を有する光透過性基板を得ることができるものであれば特に限定されるものではない。本発明において光透過性基板に用いられる材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、或いは、ガラス(セラミックスを含む)等を挙げることができる。なかでも本発明に用いられる光透過性基板は上述したいずれかの樹脂からなる樹脂性フィルムであることが好ましい。光透過性基板として樹脂性フィルムが用いられることにより、光透過性基板と反射防止層とがより強固に接着することができるからである。
【0063】
3.その他の部材
本発明の反射防止フィルムは、上述した反射防止層および光透過性基板を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な反射防止フィルムを適宜選択して用いることが可能である。このような部材としては、例えば、上記反射防止層および光透過性基板を接着させるための接着剤層を挙げることができる。上記接着剤層については、一般的な反射防止フィルムに用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0064】
4.その他
本発明の反射防止フィルムを製造する方法としては、上述した「A.反射防止フィルム用組成物」を用い、モスアイ構造が用いられた反射防止フィルムの製造方法として公知の方法を用いることにより製造することが可能である。
【0065】
上記反射防止フィルムの製造方法について、具体例を挙げて説明する。
まず、上記光透過性基板上に上記反射防止フィルム用組成物を塗布して塗膜を形成し、表面に複数の微細孔を有する金型を上記塗膜に押し当てることで微細凹凸を賦型し、上記塗膜を硬化させて反射防止層を形成した後、上記金型と上記反射防止層とを剥離する方法を挙げることができる。
【0066】
また上記以外の方法としては、例えば、上記金型の上記微細孔形成側表面に、上記反射防止フィルム用組成物を塗布して塗膜を形成し、上記塗膜上に光透過性基板を配置した後、上記塗膜を硬化させて反射防止層を形成し、次いで、上記金型と上記反射防止層とを剥離する方法を挙げることができる。
【0067】
本発明の反射防止フィルムの用途としては、例えば、表示装置の反射防止フィルムとして用いられる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例を用いて本発明についてさらに詳しく説明する。
【0070】
[実施例1〜9、比較例1〜9]
(反射防止フィルム用組成物の調製)
固形分として、光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、潤滑剤、および添加剤を下記表1および表2に示すように配合する反射防止フィルム用組成物を調製した。なお、表1および表2中の数値は、配合の割合を質量部で表したものである。また、表1および表2中の空欄は0質量部を表すものである。
この際、光硬化性アクリル樹脂としては、アクリル樹脂A(ペンタエリスリトールトリアクリレート/HDIヌレート体、デスモジュールN3300、住化バイエルウレタン製、(「HDI」は、ヘキサメチレンジイソシアネートを示す))、アクリル樹脂B(ポリエチレングリコールジアクリレート)、アクリル樹脂C(1,4−ブタンジオールジアクリレート、SR213、サートマー社製)を用いた。また、光重合開始剤としては、光重合開始剤A(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルス(株)製)、光重合開始剤B(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、イルガキュア907,チバスペシャリティーケミカルス(株)製)を用いた。また、潤滑剤としては、変性シリコーンオイルとして、下記表3に示す変性シリコーンオイルを用いた。なお、下記表3に示す変性シリコーンオイルはいずれも、信越化学工業製のものである。
また、変性シリコーンオイル以外の潤滑剤としては、潤滑剤B−1(パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、メガファックF443,DIC製)を用いた。また、添加剤としては、添加剤(ヒンダードアミン系光安定化剤、TINUVIN765、チバ・ジャパン製)を用いた。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
(反射防止フィルムの製造方法)
複数の微細孔を有する反射防止フィルム製造用金型(以下、金型とする。)を準備し、上述した反射防止フィルム用組成物を上記金型表面に一定量塗布し、その上に厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム社製、フジタック「T80SZ」)を斜めから貼り合わせた後、貼り合わせられた貼合体をローラー(フジプラ製、ラミパッカー「LPA3301」)で圧着し、金型全体に均一な組成物が塗布されたことを確認して、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化樹脂組成物を光硬化させ、反射防止層を形成した。その後、上記反射防止層および金型を剥離して反射防止フィルムを得た。なお、比較例5および比較例9の反射防止フィルム用組成物を用いて形成された反射防止フィルムについては、上記金型に目詰まりを生じてしまった。
【0075】
[評価]
実施例1〜実施例9および比較例1〜比較例9の反射防止フィルム用組成物を用いて製造された反射防止フィルムに対して、耐スチールウール性評価を行うことにより、反射防止フィルムの耐擦傷性について評価を行った。
ここで、上記耐スチールウール性評価とは、以下のような手順により耐擦傷性を評価するものである。まず、先端径がφ11.3mmである耐スチールウール性評価用治具に、スチールウール#0000(ボンスターポンド製)を取り付ける。次に、反射防止フィルムの評価面(微細凹凸面)が上側を向くようにガラス板にサンプルを置き、エアーが入らないよう注意しながら、その四辺のテープ留めを行う。重量が100gとなるように調整した上記耐スチールウール性治具を用いて、走査速度が20〜30mm/secで、同一箇所を10往復するよう横方向にスライドさせながら、サンプル表面を擦る。評価したサンプル面とは反対側に黒テープを貼り付け、三波長管を用いて、サンプル表面の擦られたキズ本数を観察し、カウントする。
結果を表1および表2に示す。なお、上記反射防止フィルム上に形成されたキズが12本以下の場合は、反射防止フィルムの耐擦傷性が良好であるものとし、キズが12本を超える場合は、反射防止フィルムの耐擦傷性が劣るものとした。
【0076】
以上から、潤滑剤として、HLB値が7〜10である変性シリコーンオイルを用いた反射防止フィルム用組成物を用いた反射防止フィルムは、耐擦傷性および離型性に優れたものとすることができることが分かった。また、HLB値が5以下の変性シリコーンオイルを用いた反射防止フィルム用組成物を用いた反射防止フィルムについては、離型性に劣るものとなることが分かった。また、HLB値が12以上の変性シリコーンオイルを用いた反射防止フィルム用組成物を用いた反射防止フィルムについては、変性シリコーンオイルを含有しない反射防止フィルム用組成物を用いた反射防止フィルムと同様に耐擦傷性に劣るものとなることが分かった。
【符号の説明】
【0077】
1 … 光透過性基板
2 … 反射防止層
10 … 反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基板と、前記光透過性基板上に形成され、表面に複数の微細凹凸を有する反射防止層とを有する反射防止フィルムの、前記反射防止層を形成する際に用いられ、
光硬化性アクリル樹脂、光重合開始剤、および潤滑剤を含有する反射防止フィルム用組成物であって、
前記潤滑剤が、HLB値が7〜10の範囲内の変性シリコーンオイルであることを特徴とする反射防止フィルム用組成物。
【請求項2】
前記変性シリコーンオイルが、ポリエーテル変性シリコーンオイルであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム用組成物。
【請求項3】
前記潤滑剤の含有量が、前記光硬化性アクリル樹脂100質量部に対して0.3質量部〜1.0質量部の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム用組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の反射防止フィルム用組成物を用いて形成されていることを特徴とする反射防止フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78438(P2012−78438A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221576(P2010−221576)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】