説明

反射防止フィルム

【課題】表面が磨耗されても防汚染性が低下しにくくなると共に表面が傷つきにくく、耐磨耗性、耐久性に優れた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材2の表面に、透明樹脂層1が形成されて成る反射防止フィルムである。前記透明樹脂層1は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3を含有する少なくとも1種の透明樹脂4で形成される。前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3が前記透明樹脂層1の全質量に対して1〜40質量%含有される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等に使用される反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイの最表面に設置される反射防止フィルムには、高い透明性が要求されると共に傷の発生が防止できるような表面強度(すなわち耐擦傷性)や、指紋等の汚れが簡単に除去できるような表面撥水・撥油性(すなわち防汚染性)も要求される。
【0003】
従来、これらの要求性能を満たすためには、例えば、反射防止フィルム表面の透明樹脂に防汚染性の効果を有する添加剤を加えることで、反射防止フィルムに防汚染性を付与する手法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、透明樹脂の樹脂骨格に防汚染性能を有する化学構造を導入する手法も挙げられる(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−117902号公報
【特許文献2】特開2008−56789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1においては、反射防止フィルムの表面を擦った際に、防汚染性の効果を有する添加剤がフィルム表面から脱離しやすいものであったため、防汚染性が低下しやすいという問題があった。一方、特許文献2の方法では、樹脂の架橋密度が低下してしまうので、耐磨耗性の低下を引き起こしたり、耐久性の低下を招いたりする原因となっていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、表面が磨耗されても防汚染性が低下しにくくなると共に表面が傷つきにくく、耐磨耗性、耐久性に優れた反射防止フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る反射防止フィルムは、透明基材の表面に、透明樹脂層が形成されて成る反射防止フィルムであって、前記透明樹脂層は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を含有する少なくとも1種の透明樹脂で形成され、前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が前記透明樹脂層の全質量に対して1〜40質量%含有されていることを特徴とする。
【0008】
また、上記反射防止フィルムは、前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子のケイ素原子には炭化水素基が結合しており、前記炭化水素基が炭素数6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基及びフェニル基の群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0009】
また、上記反射防止フィルムは、前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径が10〜500nmであることが好ましい。
【0010】
また、上記反射防止フィルムは、ヘイズが1%以下、全光線透過率が90%以上であって、前記透明樹脂層に対する水の静止接触角が90°以上及びオレイン酸の静止接触角が40°以上であることが好ましい。
【0011】
また、上記反射防止フィルムは、前記透明樹脂層の表面で布を摺動した後の、該表面に対する水の静止接触角が90°以上であることが好ましい。
【0012】
また、上記反射防止フィルムは、前記透明樹脂層の平均膜厚が0.1〜10.0μmであることが好ましい。
【0013】
また、上記反射防止フィルムは、前記透明樹脂層を形成する前記透明樹脂が、加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物、あるいは、活性エネルギー線硬化型樹脂であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反射防止フィルムは、表面が磨耗されても防汚染性が低下しにくくなると共に表面が傷つきにくく、耐磨耗性、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の反射防止フィルムの実施の形態の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
本発明の反射防止フィルムAは、透明樹脂層1と透明基材2とを備えて構成されるものである。図1に示すように、透明基材2の表面には透明樹脂層1が形成されており、この透明樹脂層1は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3を含有する少なくとも1種の透明樹脂4で形成されている。
【0018】
本発明における透明基材2としては、特に限定されるものではなく、ディスプレイに使用できる程度の透明性や機械的剛性を有していれば、公知のプラスチックフィルムもしくはシートの中から適宜選択して用いることができる。尚、透明基材2としては溶剤により軟化するようなものであっても良い。具体例としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート等のフィルムが挙げられる。特に透明基材2としては、透明性及び機械的剛性に優れているという点で、ポリエステルフィルムが好ましい。
【0019】
本発明の反射防止フィルムAで使用されるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3は、一般式[RSiO3/2](Rはケイ素原子Siに結合している置換基を示す)で表される繰り返し単位により構成されるものである。
【0020】
本発明におけるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3のケイ素原子の置換基Rとしては、炭化水素基であることが好ましい。この炭化水素基の中でも特に、炭素数6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基、フェニル基の群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。置換基Rがこれらいずれかの炭化水素基であることによって、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子表面の表面エネルギーが低くなり、透明樹脂層に添加した際、透明樹脂層の表面エネルギーを下げることができ、滑り性や防汚性をより向上させることができる。
【0021】
上記炭素数6以下のアルキル基としては、直鎖状、分岐状いずれであっても良く、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基等の分岐状アルキル基等が挙げられる。
【0022】
上記置換プロピル基としては、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基等が挙げられる。
【0023】
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3は、透明樹脂層1の全質量に対して1〜40質量%含有される。1質量%以上であれば、反射防止フィルムAの防汚染性、耐摩耗性及び耐久性が損なわれるおそれはない。また、40質量%以下であれば、反射防止フィルムAの透明性が低下するおそれもないし、耐摩耗性も損なわれるおそれもない。より好ましいポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3の含有量は、透明樹脂層1の全質量に対して2質量%以上、10質量%以下である。2質量%以上、10質量%以下であることによって、防汚染性、耐摩耗性、耐久性、及び透明性をより高い性能で維持できる。
【0024】
さらに、本発明の反射防止フィルムAで使用されるポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3の平均粒子径は、10〜500nmであることが好ましい。10nm以上であることにより微粒子同士の凝集のおそれはなく、500nm未満であることにより透明性が低下するおそれはない。より好ましいポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3の平均粒子径は20〜100nmである。尚、ここでいう平均粒子径とは、動的光散乱法によって測定されたものをいう。
【0025】
透明樹脂層1を形成する透明樹脂4としては、透明性と硬度に優れる樹脂を使用することができ、例えば、加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物を使用することができる。加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物は、例えば、四官能性アルコキシシランや三官能性アルコキシシラン、あるいはシリケートオリゴマーの加水分解・縮合反応によって生成するシリコーンレジンである。尚、シリケートオリゴマーとは、加水分解性オルガノシランが加水分解してオリゴマーとなったものであり、それ自身も加水分解性を有する二官能性または三官能性の化合物である。
【0026】
上記加水分解性オルガノシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等の四官能性アルコキシシラン類、メチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン等の三官能性アルコキシシラン類等が挙げられる。
【0027】
また、上記シリケートオリゴマーとしては、例えば、エチルシリケートオリゴマー、メチルシリケートオリゴマー等が挙げられる。
【0028】
以上のような加水分解性オルガノシランあるいはその加水分解縮合物の中でも特に、反応等の容易性から、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルシリケートオリゴマー、エチルシリケートオリゴマーが好ましい。尚、これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0029】
上記のような加水分解性オルガノシランやシリケートオリゴマーは、酸又はアルカリ触媒による加水分解・縮合反応により硬化されて加水分解縮合物となり、これを透明樹脂層1の透明樹脂4として使用することができることができる。酸又はアルカリ触媒は特に限定されず、公知のものを使用することができる。加水分解の反応温度は常温でも良いし、必要に応じて、加熱しても良い。尚、加熱する場合は80℃〜200℃にすることができる。
【0030】
尚、上記加水分解反応によって、完全に加水分解反応がされていても良いし、あるいは反応基である水酸基が残存していても良い。
【0031】
一方、透明樹脂層1を形成する透明樹脂4としては、透明性と硬度に優れる樹脂という点で活性エネルギー線硬化型樹脂を使用することもできる。活性エネルギー線硬化型透明樹脂は、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するプレポリマーやオリゴマー等を、活性エネルギー線照射により硬化させて得られるものである。また、前記プレポリマーや前記オリゴマー中には、重合性不飽和結合又はエポキシ基を有するモノマーが含有されていても良いし、硬化時の反応性を高めるために、公知の光重合開始剤や光重合促進剤が配合されていても良い。
【0032】
上記活性エネルギー線硬化型透明樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂やアクリレート系官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等を挙げることができ、特にアクリル系樹脂が好ましい。
【0033】
上述のように、上記活性エネルギー線硬化型透明樹脂は、活性エネルギー線照射により硬化させて得られるものである。上記活性エネルギー線は、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合又は架橋し得るエネルギー量子を有するものであり、通常は紫外線又は電子線を用いることができる。
【0034】
上記のように、透明樹脂層1を形成する透明樹脂4としては、加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物や活性エネルギー線硬化型透明樹脂を使用することができるが、本発明の効果を阻害しない程度であれば、その他の樹脂が含有されていても良い。
【0035】
透明樹脂層1の平均膜厚は、0.1〜10.0μmが好ましい。0.1μm以上であれば透明樹脂層1に充分な硬度を与えることができるので、耐摩耗性が低下するおそれがない。10.0μm以下であれば反射防止フィルムAのカールやクラックの発生のおそれがない。
【0036】
透明樹脂層1は、透明樹脂4の原料を含む塗工液に上記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3を配合し、この塗工液を透明基材2の表面に塗工して硬化させることで形成することができる。尚、前記塗工液には必要に応じて溶剤などが添加されていても良い。
【0037】
例えば、透明樹脂4として、上記加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物を使用する場合、加水分解性オルガノシラン、あるいはシリケートオリゴマーに所定量のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3を配合して塗工液を調整する。塗工液には、必要に応じて酸又はアルカリ触媒や溶剤等を添加しても良い。そして、この塗工液を透明基材2の表面に塗工し、図1に示すように、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3が含まれた透明樹脂4を透明基材2の表面に形成することができる。尚、塗工方法は任意であるが、グラビアコータ、バーコータ等のいずれでも可能である。また、硬化する際には、例えば加熱しても良いし、常温でも良い。加熱する場合の温度は、80℃〜200℃が好ましい。
【0038】
一方、透明樹脂4として、上記活性エネルギー線硬化型透明樹脂を使用する場合も同様に行うことができる。すなわち、活性エネルギー線硬化型透明樹脂の原料に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3を配合し、必要に応じて溶剤を添加するなどして塗工液を調製する。そして、この塗工液を同様に透明基材2の表面に塗工して硬化させれば、図1に示すように、透明樹脂4を透明基材2の表面に形成することができる。この場合の硬化方法としては、例えば紫外線を使用する場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。
【0039】
本発明の反射防止フィルムAは、ヘイズが1%以下であって、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。ヘイズが1%以下、全光線透過率が90%以上であることによって、高い透明性を有することができ、ディスプレイ等に好適に使用することができる。さらに、反射防止フィルムAのヘイズが0.5%以下、全光線透過率が92%以上であれば、これによってより高い透明性を有することができ、ディスプレイ等の視認性をより向上することができるという点で特に好ましい。尚、ヘイズの下限は0%、全光線透過率の上限は100%である。
【0040】
また、本発明の反射防止フィルムAは、上記のように透明樹脂層1にポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3が含まれることで、高い撥水性・撥油性を発揮することができ、防汚染性に優れるものである。この撥水性・撥油性は、反射防止フィルムAの透明樹脂層1に対する水やオレイン酸の静止接触角の値で示すことができ、本発明の反射防止フィルムAでは、水の静止接触角は90°以上、オレイン酸の静止接触角は40°以上であることが好ましい。両者の静止接触角がこの範囲であれば、高い撥水性・撥油性を発揮することができ、所望の防汚染性を有することができる。尚、静止接触角は、最大で180°であるが、本発明では、水の静止接触角は120°以下、オレイン酸の静止接触角は90°以下であることが好ましい。
【0041】
さらに、本発明の反射防止フィルムAは、表面の透明樹脂層1にポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3が含まれているので、表面が摩擦されたとしても傷が付きにくく、耐摩耗性や耐久性に優れるものである。すなわち、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子3は、ケイ素原子と酸素原子の結合を主骨格とする架橋型の粒子であるので機械的負荷に強く、透明樹脂層1が磨耗されても摩耗等による透明樹脂層1からの脱離が起こりにくいものである。そのため、摩擦前後で反射防止フィルムAの撥水・撥油性が低下しにくいものである。
【0042】
透明樹脂層1表面をネル布、デニム布、タオル地、不織布、ガーゼ、トレシー等の布で摺動(磨耗)した後の、透明樹脂層1表面に対する水の静止接触角が、90°以上であることが好ましい。この範囲であれば、反射防止フィルムAの表面の透明樹脂層1が磨耗された後でも、優れた防汚染性を有することができる。
【0043】
以上のように、本発明の反射防止フィルムAは、表面が磨耗されても防汚染性が低下しにくくなると共に表面が傷つきにくく、耐磨耗性、耐久性に優れるものであるため、例えば、ディスプレイ等に使用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの作製)
温度計、還流器および撹拌機を備えた反応容器に水1080質量部を仕込み、酢酸0.2質量部を添加して均一な溶液とした。これを30℃で撹拌しつつ、メチルトリメトキシシラン1360質量部を添加して加水分解反応を進行させた。そのまま撹拌を4時間継続させた後、反応溶液の濾過により不溶分を取り除き、シラノール溶液を得た。
【0045】
次いで、温度計、還流器および撹拌機を備えた反応容器に水2000質量部と28%アンモニア水溶液50質量部を仕込み、攪拌しつつ温度を25℃に設定した。そこへ上記シラノール溶液488質量部を約10分間かけて滴下し、滴下終了後、さらに16時間撹拌を続けることで、反応液は乳白色のディスパージョンに変化した。次いで、これを遠心分離機にかけて沈殿物を分離し、この沈殿物を200℃の乾燥機で24時間乾燥させることで、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aを得た。
【0046】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの平均粒子径は50nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子bの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにエチルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0047】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子bの平均粒子径は60nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子cの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにイソプロピルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0048】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子cの平均粒子径は80nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子dの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにヘキシルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0049】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子dの平均粒子径は100nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子eの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにシクロヘキシルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0050】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子eの平均粒子径は200nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子fの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにビニルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0051】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子fの平均粒子径は200nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子gの作製)
メチルトリメトキシシランの代わりにフェニルトリメトキシシランを使用したこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0052】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子gの平均粒子径は500nmであった。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子hの作製)
平均粒子径が1000nmになるまで反応させたこと以外はポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aと同様の方法で作製した。
【0053】
得られたポリオルガノシルセスキオキサン微粒子hの平均粒子径は1000nmであった。
(実施例1)
まず、加水分解性オルガノシラン(三菱化学社製、MKCシリケート51)に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aを添加することで透明樹脂層用塗布液を調整した。この透明樹脂層用塗布液を、透明基材である厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製)上に、バーコータにより濡れ厚さ約5μmになるよう塗布し、120℃で5分間乾燥硬化させることで透明基材表面に透明樹脂層が形成されて成る反射防止フィルムを得た。表1に実施例1及び以下の実施例、比較例における配合条件と作製された透明樹脂層の平均膜厚を示す。
(実施例2)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子bを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例3)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子cを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例4)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子dを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例5)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子eを使用したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例6〜10)
透明樹脂相中のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの質量比率を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例11)
活性エネルギー線硬化型樹脂原料(HC202、アデカ製)に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aを添加することで透明樹脂層用塗布液を調整した。この透明樹脂層用塗布液を、透明基材である厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡社製)上に、バーコータにより濡れ厚さ約5μmになるよう塗布し、80℃で3分間乾燥後、紫外線を照射して硬化させることで、透明基材表面に透明樹脂層が形成されて成る反射防止フィルムを得た。
(実施例12)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子bを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例13)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子cを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例14)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子dを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例15)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子eを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例16〜18)
透明樹脂層の平均膜厚を表1のようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。尚、透明樹脂層の膜厚については、バーコータの番手(巻線の径)を調節することで調整した。
(実施例19〜21)
透明樹脂層の平均膜厚を表1のようにしたこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。尚、透明樹脂層の膜厚については、バーコータの番手(巻線の径)を調節することで調整した。
(実施例22)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子fを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例23)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子gを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例24)
ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの代わりに、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子hを使用したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(実施例25)
透明樹脂層の平均膜厚を表1のようにしたこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。尚、透明樹脂層の膜厚については、バーコータの番手(巻線の径)を調節することで調整した。
(比較例1)
透明樹脂相中のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの質量比率を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例2)
透明樹脂相中のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの質量比率を表1のように変更したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例3)
透明樹脂相中のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの質量比率を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例4)
透明樹脂相中のポリオルガノシルセスキオキサン微粒子aの質量比率を表1のように変更したこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例5)
透明樹脂層用塗布液に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の代わりに防汚剤としてパーフルオロアルキルシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSL8233)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例6)
透明樹脂層用塗布液に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の代わりに防汚剤としてシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、XR31−A7813)を加えたこと以外は実施例1と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例7)
透明樹脂層用塗布液に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の代わりに防汚剤としてパーフルオロアルキルシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、TSL8233)を加えたこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
(比較例8)
透明樹脂層用塗布液に、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の代わりに防汚剤としてシリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、XR31−A7813)を加えたこと以外は実施例11と同様の方法で反射防止フィルムを得た。
【0054】
上記のようにして得られた実施例及び比較例の反射防止フィルムのヘイズ、全光線透過率、水の静止接触角、オレイン酸の静止接触角、防汚染性、耐磨耗性、磨耗試験後の水の静止接触角(耐久性評価)の評価結果を表2に示す。
【0055】
尚、本発明における各評価については以下の方法で行った。
(ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径)
平均粒子径の測定は、動的光散乱法による測定し、測定機器は、大塚電子製FP‐AR1000を使用した。
(透明樹脂層の平均膜厚)
透明樹脂層の平均膜厚の測定は、マイクロメータを使用した。
(ヘイズ、全光線透過率)
反射防止フィルムのヘイズ及び全光線透過率はヘイズメーター(日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
(静止接触角)
反射防止フィルムの静止接触角は、協和界面科学製の自動接触角計DM‐501を用いて、JIS R3257の方法に準じて、水及びオレイン酸の接触角を測定した。
(防汚染性)
反射防止フィルムの防汚染性は、反射防止フィルムの透明樹脂層表面にマジックインキを付け、その透明樹脂層表面を布で拭き取った後の透明樹脂層表面を目視観察して、次のような基準で判定した。
○:数回拭き取ることでマジックインキを除去できる。
×:マジックインキを除去することができずに跡が残る。
(耐磨耗性)
反射防止フィルムの耐磨耗性は、ネル布によりフィルム表面を500g/cmの圧力で、500回擦った(摺動した)際のフィルム表面についた傷跡を目視で観察して評価した。測定機器は、新東科学株式会社製の表面性試験機Type14FWを使用した。
(耐久性)
上記のように磨耗試験を行った後の反射防止フィルムの水の静止接触角を測定し、撥水・撥油性能から反射防止フィルムの耐久性を評価した。尚、静止接触角は上記と同様の方法で行った。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
実施例1〜23はいずれも、防汚性、耐磨耗性及び耐久性に優れた反射防止フィルムであった。さらに、ヘイズ及び全光線透過率の値から透明性に優れる反射防止フィルムであった。また、実施例24、25も、耐磨耗性に優れるものであった
一方、比較例1及び2では、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有量が少ないために、反射防止フィルムの防汚染性、耐摩耗性並びに耐久性がいずれも悪いものであった。また、これらの反射防止フィルムは撥水・撥油性も低いものであった。
【0059】
また、比較例3及び4では、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有量が多いために、反射防止フィルムの耐磨耗性の悪化が見られた。これは、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の含有量が多くなりすぎたために、透明樹脂層が脆くなってしまったためと考えられる。また、ヘイズの増加も見られ、反射防止フィルムの透明性も低いものであった。
【0060】
また、比較例5〜8ではいずれも、反射防止フィルムの耐磨耗、耐久性共に悪化するものであった。これは、フィルム表面を擦った際にフィルム表面の防汚剤の脱離が起こって表面平滑性がしたためであると考えられる。
【符号の説明】
【0061】
A:反射防止フィルム
1:透明樹脂層
2:透明基材
3:ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子
4:透明樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の表面に、透明樹脂層が形成されて成る反射防止フィルムであって、
前記透明樹脂層は、ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子を含有する少なくとも1種の透明樹脂で形成され、
前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子が前記透明樹脂層の全質量に対して1〜40質量%含有されていることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子のケイ素原子には炭化水素基が結合しており、前記炭化水素基が炭素数6以下のアルキル基、シクロヘキシル基、ビニル基及びフェニル基の群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ポリオルガノシルセスキオキサン微粒子の平均粒子径が10〜500nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
ヘイズが1%以下、全光線透過率が90%以上であって、前記透明樹脂層に対する水の静止接触角が90°以上及びオレイン酸の静止接触角が40°以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記透明樹脂層の表面で布を摺動した後の、該表面に対する水の静止接触角が90°以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記透明樹脂層の平均膜厚が0.1〜10.0μmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記透明樹脂層を形成する前記透明樹脂が、加水分解性オルガノシランの加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記透明樹脂層を形成する前記透明樹脂が、活性エネルギー線硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。


【図1】
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【公開番号】特開2012−194502(P2012−194502A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60115(P2011−60115)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】