説明

反射防止フィルム

【課題】反射防止層の下層に位置するハードコート層表面の状態を最適化することで、耐擦傷性に優れ、色ムラが高いレベルで抑制され、かつ、反射防止層のハジキのない反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と反射防止層をこの順番で積層したフィルムであって、前記ハードコート層が電離放射線硬化型材料を含む塗液を前記透明基材上に塗布し電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、前記反射防止層が電離放射線硬化型材料とフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液を前記ハードコート層上に塗布し、電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機ELディスプレ、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電界ディスプレイ(SED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCDやCRT、プラズマディスプレイ等の光学表示装置においては、室内外での使用を問わず、外光等が入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することが多く、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
ディスプレイの中でもLCDはその機構上、パネル表面に偏光板を用いる必要があり、偏光板は一般的にポリビニルアルコール(PVA)が使用される。偏光板(PVA)は強度、耐水性が極めて弱いため、保護フィルムとしてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用するのが一般的である。しかしTACフィルムも、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に反射防止多層膜を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル樹脂の特性により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有する。
【0004】
一般に反射防止機能は、透明基材もしくは前記ハードコート層上にそれらより屈折率の低い反射防止層を形成することで得られる。さらに、反射防止性能を向上させるため、透明基材もしくは前記ハードコート層上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と反射防止層の繰り返し構造による多層構造を形成する場合もある。この多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といったドライコーティング法により形成することができる。
【0005】
ドライコーティング法を用いて反射防止層を形成するに当たっては、各層の膜厚を精密に制御できるという利点があるが、成膜を真空中で行わなければならないため大型の設備が必要であり、かつ生産性が低く大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として大面積化、連続生産、低コスト化が可能である塗液を用いたウェットコーティング法を用いた反射防止フィルムの生産が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−102206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェットコーティング法により製造された反射防止フィルムは、近年のLCD−TVの普及、大型化によって大量に用いられるようになったが、同時にさらなる高機能化、高品質化の要求が高まっている。中でも、反射防止フィルムはディスプレイの表面に設けられることから、表面への傷つきを防ぐための耐擦傷性の向上、色ムラを目立たなくするという要求は最も大きなものになっている。
【0008】
ここで色ムラとは画面上に見られる反射色の差であり、これは反射防止層の微小な膜厚変動による反射分光スペクトルの変化に起因するものである。この色ムラを改善するために、反射防止層を形成する塗液にフッ素含有基、シリコーン骨格を有する表面調整剤を添加することが知られている。これらの表面調整剤は反射防止層最表面に局在化し、ウェット状態の塗膜の表面を均一化すると共に反射防止層最表面に滑り性を付与し、色ムラの発生の防止だけでなく、耐擦傷性の向上にも効果を発揮する。
【0009】
しかしながら、反射防止層における表面調整剤の局在化は反射防止層を積層する下層の表面状態にも依存し、反射防止層に含まれる表面調整剤の調整のみによっては耐擦傷性や色ムラを十分に解消することができなかった。また、下層の表面状態によっては、反射防止層をウェットコーティング法で形成する際にハジキが発生するといった不具合も発生する。
【0010】
本発明にあっては、上記の問題点に鑑み、反射防止層の下層に位置するハードコート層表面の状態を最適化することで、耐擦傷性に優れ、色ムラが高いレベルで抑制され、かつ、反射防止層のハジキのない反射防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明としては、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と反射防止層をこの順番で積層したフィルムであって、前記ハードコート層が電離放射線硬化型材料を含む塗液を前記透明基材上に塗布し電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、前記反射防止層が電離放射線硬化型材料とフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液を前記ハードコート層上に塗布し、電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムとした。
また、請求項2記載の発明としては、前記JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が70°以上80°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルムとした。
また、請求項3記載の発明としては、前記ハードコート層がフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルムとした。
また、請求項4記載の発明としては、請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムと、該反射防止フィルムの透明基材の非形成面に該透明基材側から順に偏光層と透明基材フィルムとを備える偏光板とした。
また、請求項5記載の発明としては、観察者側から順に、請求項4記載の偏光板と、液晶セルと、第2の偏光板と、バックライトユニットをこの順に備え、かつ、前記反射防止層が観察者側の最表面に位置することを特徴とする透過型液晶ディスプレイとした。
また、請求項6記載の発明としては、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と反射防止層をこの順番で積層したフィルムの製造方法であって、電離放射線硬化型材料を含む塗液を前記透明基材上に塗布し電離放射線照射により硬化させハードコート層を形成する工程と、電離放射線硬化型材料とフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液を前記ハードコート層上に塗布し、電離放射線照射により硬化させ反射防止層を形成する工程とを備え、かつ、前記反射防止層を形成する前のJIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、ハードコート層表面の状態を最適化することで、耐擦傷性に優れ、色ムラが高いレベルで抑制され、かつ、反射防止層のハジキのない反射防止フィルムとすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例の反射防止フィルムを有する偏光板を示す概略断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の一実施例の反射防止フィルムを有する透過型液晶ディスプレイを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態において重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)を示す概略断面図である。
【0016】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)は、透明基材(11)、ハードコート層(12)、反射防止層(13)を備えており、透明基材(11)上に、ハードコート層(12)およびハードコート層(12)上に反射防止層(13)が積層されている。
【0017】
本発明にあっては、ハードコート層(12)は電離放射線硬化型材料を含む塗液を透明基材(11)上に塗布し電離放射線照射により硬化させて形成される。また、反射防止層(13)にあっても電離放射線硬化型材料を含む塗液をハードコート層(12)上に塗布し電離放射線照射により硬化させて形成される。このようにハードコート層(12)及び反射防止層(13)は塗液を用いたウェットコーティング法により形成される。ウェットコーティング法を用いてハードコート層、反射防止フィルムを形成することにより、ドライコーティング法でこれらの層を形成する場合と比較して、大面積化、連続生産、低コスト化を容易とすることができる。また、本発明の反射防止フィルムにあっては、電離放射線硬化型材料含む塗液を用い、塗液の塗布、電離放射線照射による硬化という工程により、ハードコート層及び反射防止層を形成する。電離放射線硬化型材料を用い、塗布・硬化によりハードコート層、反射防止層を形成することにより、ハードコート層および反射防止層を硬質の膜とすることができ、反射防止フィルム表面に耐擦傷性を付与することができる。
【0018】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止層が、フッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含むことを特徴とする。フッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含むことにより、これらの表面調整剤は反射防止層最表面に局在化し、ウェット状態の塗膜の表面を均一化すると共に反射防止層最表面に滑り性を付与し、色ムラの発生の防止だけでなく、耐擦傷性の向上にも効果を発揮する。
【0019】
本発明の反射防止フィルムにあっては、JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面(12)の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする。本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止フィルムが形成される前のハードコート層表面の純水接触角を60°以上90°以下とすることにより耐擦傷性に優れ、色ムラがなく、かつ、反射防止層のハジキのない反射防止フィルムとすることができた。
【0020】
本発明の反射防止フィルムにおいて、反射防止層(13)の膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長(λ)の1/4と等しくなるように設計される。反射防止層の光学膜厚をλ/4とすることにより、光学干渉により反射防止フィルム表面に反射防止機能を付与することができる。反射防止層の層厚はきわめて薄く、また、上述したように反射防止層は光学干渉により反射防止機能を付与することができるため、反射防止フィルムの膜厚変動による色ムラが発生しやすい。特に、反射防止層をウェットコーティング法で形成する場合にはドライコーティング法と比較して膜厚を一定に制御することが困難が伴う。本発明の反射防止フィルムにあっては、ハードコート層表面の純水接触角を60°以上90°以下とすることにより耐擦傷性に優れ、色ムラがなく、かつ、反射防止層のハジキのない反射防止フィルムとすることができた。
【0021】
本発明者らは、反射防止層の耐擦傷性を優れたものとし、色ムラを高いレベルで抑制するにあっては、反射防止層(塗液)を最適化するだけでなく、反射防止層の下層に位置するハードコート層の表面状態を最適化する必要があることを見出し、本発明にいたった。
【0022】
ハードコート層(12)表面の純水における接触角を60°以上90°以下の範囲内とすることで、反射防止層中に存在する表面調整剤が最適に局在化され、耐擦傷性および色ムラに優れた反射防止フィルムを提供することができる。ハードコート層(12)表面の純水における接触角が60°未満の場合、反射防止層に含有される表面調整剤の局在化が促進されないため、耐擦傷性の低下および色ムラの悪化を招いてしまう。一方、ハードコート層(12)表面の純水における接触角が90°を超える場合、ハードコート層(12)表面における反射防止層(13)の塗液の濡れ性が悪化してしまうために、反射防止層(13)の形成用塗液をハードコート層(12)上にウェットコーティング法により塗布する際にハジキ、ムラが発生してしまう場合がある。また、ハジキ、ムラが発生しなかった場合でもハードコート層(12)と反射防止層(13)の層間密着力が発現せず、簡単に反射防止層(13)が剥離してしまい、耐擦傷性が低下する。
【0023】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が70°以上80°以下の範囲内であることがさらに好ましい。るハードコート層表面の純水の接触角が70°以上80°以下の範囲内とすることにより、耐擦傷性をきわめて高いものとすることができ、また、色ムラを極めて高いレベルで抑制することができる。なお、JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角は、静滴法により測定される。
【0024】
ハードコート表面の状態を示す方法については、表面エネルギーを用いることができる。そして表面エネルギーの測定には複数の試薬を用いて接触角の測定しその値から算出する方法が知られているが、本発明における効果を表現するためには純水を用いた接触角の測定のみで十分である。
【0025】
また、本発明の反射防止フィルムにあっては、ハードコート層がフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含むことが好ましい。ハードコート層がフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含むことにより、ハードコート層表面の純水の接触角を容易に最適化することが可能となる。
【0026】
さらに詳細に本発明の反射防止フィルム及びその製造方法について説明する。
【0027】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)の透明基材(11)は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される透明基材(11)が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。中でも特にトリアセチルセルロースを透明基材として好適に用いることができる。さらに、これらの有機高分子に添加剤、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものを用いることができる。
【0028】
次に、透明基材(11)上には、ハードコート層(12)がウェットコーティング法により形成される。ハードコート層は、電離放射線硬化型材料を含む塗液を透明基材(11)上に塗布し電離放射線照射により硬化させて形成される。
【0029】
電離放射線硬化型材料として、不飽和結合を備える化合物を用いることができ、具体的には、(メタ)アクリル基を有する化合物を用いることができる。電離放射線硬化型材料としての(メタ)アクリル基を有する化合物としては、例えば多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0030】
なお、本発明において「(メタ)アクリル基」とは「アクリル基」と「メタクリル基」の両方を示している。同様に、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0031】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0034】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を用いることができるがこの限りではない。
【0035】
また、電離放射線硬化型材料にあっては、これら(メタ)アクリル基を有する化合物の変性物を用いることもできる。変性物としては、例えばエチレンオキサイド(EO)変性物、プロピレンオキサイド(PO)変性物が挙げられる。
【0036】
電離放射線硬化型材料としては、ハードコート層(12)表面及び反射防止層(13)表面のスチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆引っかき試験による表面硬度、粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性について、要求されるスペックを満足させるように材料を選択して使用することができる。
【0037】
また、ハードコート層を形成する塗液には、必要に応じて光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等を用いても良い。
【0038】
また、ハードコート層を形成する塗液には、必要に応じて溶媒が加えられる。溶媒を加えることにより、塗工適性を向上させることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類等の中から塗工適性等を考慮して適宜選択される。
【0039】
また、ハードコート層を形成する塗液には、フッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含むことが好ましい。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜の表面張力を低下させる働きを備える。この表面調整剤の添加によって、形成される塗膜においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止することができる。ハードコート層(12)表面の純水における接触角を調整するために、表面調整剤を好適に使用することができる。一般に、表面調整剤の添加量を増加させると接触角は大きくなり、添加量を減少させることで接触角は小さくなる。なお、他にもハードコート層(12)の形成用塗液を調整する際の組成等でも接触角の調整は可能であるが、いずれの方法を用いたとしても、本発明の効果は同様に発揮される。
【0040】
フッ素含有基を有する表面調整剤としては、パーフルオロアルキル基またはフッ素化アルケニル基を主鎖ないし側鎖に有する化合物を用いることができる。具体的には、ビックケミージャパン社製BYK−340、ネオス社製フタージェント222F、DIC社製 メガファックF−470、大阪有機化学工業社製 V−8FM等を用いることができるがこれらに限定されるものではない。
【0041】
また、シリコーン骨格を有する表面調整剤としては、具体的には、ビックケミージャパン社製BYK−300、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−UV3500、BYK−UV3510、BYK−UV3570、BYK−Silclean3700、BYK−Silclean3720や、モメンティブ社製TSF410、TSF411、TSF4700、TSF4701、XF42−B0970、TSF4730、YF3965、TSF4421、XF42−334、XF42−B3629、XF42−A3161、TSF4440、TSF4441、TSF4445、TSF4450、TSF4446、TSF4452、TSF4460等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、反射防止フィルムに帯電防止機能を付与するため、ハードコート層を形成する塗液に導電剤を添加することもできる。導電剤は特に限定されるものではなく、イオン伝導機構を有する4級アンモニウム塩、電子伝導機構を有する金属酸化物微粒子、π共役系導電性高分子等が挙げられる。これらの導電剤をハードコート層に添加することにより、反射防止フィルム表面に帯電防止機能を付与することができ、帯電による埃等の反射防止フィルム表面への付着を防止することができる。
【0043】
また、ハードコート層を形成する塗液には、表面調整剤や導電剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。また、ハードコート層を形成する塗液には熱可塑性樹脂を加えることもできる。
【0044】
上述した材料を調整して得られるハードコート層を形成する塗液をウェットコーティング法により透明基材(11)上に塗布し、必要に応じて塗膜の乾燥を行ったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、ハードコート層(12)が形成される。このとき、ウェットコーティング法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0045】
次に、ハードコート層(12)上には反射防止層(13)が形成される。反射防止層は、電離放射線硬化型材料と、フッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液をハードコート層(12)上に塗布し電離放射線照射により硬化させて形成される。
【0046】
反射防止層を形成する塗液に含まれる電離放射線硬化型材料としては、(メタ)アクリル基を有する化合物を用いることができる。具体的には、ハードコート層を形成する塗液に含まれる電離放射線硬化型材料の項で例示した材料を用いることができる。
【0047】
反射防止層を形成する塗液に含まれるフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤は、反射防止層最表面に局在化し、ウェット状態の塗膜の表面を均一化すると共に反射防止層最表面に滑り性を付与し、色ムラの発生の防止だけでなく、耐擦傷性の向上にも効果を発揮する。反射防止層を形成する塗液に含まれるフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤としては、具体的には、ハードコート層を形成する塗液に含まれる表面調整剤の項で例示した材料を用いることができる。
【0048】
ただし、耐擦傷性および色ムラの向上を目的として反射防止層を形成する塗液に多量の表面調整剤を添加した場合、反射防止層中の低屈折率成分が相対的に減少してしまうことによる反射率の上昇を招いてしまう。
【0049】
本発明の反射防止フィルムにあっては、反射防止層(13)表面の表面調整剤由来のフッ素およびケイ素含有量が、それぞれ0.01atom%以上10atom%以下の範囲内であることが好ましい。反射防止層表面における表面調整剤由来のフッ素およびケイ素含有量が0.01atom%以下である場合、十分な表面調整剤の効果が現れず、色ムラの悪化および耐擦傷性の悪化が発生する場合がある。一方、表面調整剤由来のフッ素およびケイ素含有量が10atom%以上である場合、反射防止層中の表面調整剤含有量が過剰となってしまい、反射防止層表面に油状に浮き上がってしまう不具合が発生したり、反射防止層中の低屈折率成分が相対的に減少してしまうことによって反射防止層の屈折率が上昇し、反射防止フィルムの反射防止機能が低下するといった不具合が発生することがある。
【0050】
反射防止層表面の表面調整剤由来のフッ素およびケイ素含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)により求めることができる。
【0051】
X線光電子分光分析装置(XPS)において、試料にエネルギー(hν)のX線を照射すると、光電効果により元素内の内核電子が放出される。この時の光電子の運動エネルギー(Ek)は、Ek=hν−Eb−φで表される。ここでEbは内核電子のエネルギーレベルであり、これは元素固有の値であり、その元素の化学状態によって変化する。φは装置や試料の仕事関数である。また、固体内で電子がエネルギーを保持したまま通過できる距離は数十Å程度である。X線光電子分光分析装置(XPS)により試料表面から放出された光電子のEkとその数量を測定することによって、試料表面から数十Åの深さまでに存在する元素の種類、含有量、および化学状態を分析することができる。
【0052】
また、反射防止層を形成する塗液には、必要に応じて光重合開始剤が加えられる。具体的には、ハードコート層を形成する塗液に含まれる光重合開始剤の項で例示した材料を用いることができる。
【0053】
また、反射防止層を形成する塗液には、必要に応じて溶媒が加えられる。具体的には、ハードコート層を形成する塗液に含まれる溶媒の項で例示した材料を用いることができる。
【0054】
反射防止層を形成する塗液には、必要に応じて低屈折粒子が加えられる。形成される反射防止層に低屈折率粒子を含有させることにより、反射防止層の屈折率を低下させることができ、反射防止層表面の反射率を低下させ、反射防止フィルムの反射防止機能を向上させることができる。
【0055】
低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができるが、よりよい反射防止性能(低屈折率)を得るためには、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、多孔質シリカ粒子、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0056】
反射防止層に用いられる低屈折率粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、粒径が30nm以上70nm以下である。粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、反射防止層が白化して反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による反射防止層における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0057】
また、反射防止層を形成する塗液には、表面調整剤や低屈折率粒子のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0058】
上述した材料を調整して得られる反射防止層を形成する塗液をウェットコーティング法により透明基材(11)上に塗布し、必要に応じて塗膜の乾燥を行ったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、ハードコート層(12)が形成される。このとき、ウェットコーティング法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0059】
次に本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板及び透過型液晶ディスプレイについて説明する。
【0060】
図2は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)を有する偏光板(20)を示す概略断面図である。
【0061】
本発明の実施の形態に係る偏光板(20)は、透明基材(11)の反射防止層(13)の形成面と反対側の面に偏光層(22)と透明基材(21)を順に備えている。
【0062】
図3(a)及び(b)は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(10)を有する透過型液晶ディスプレイ(60、70)を示す概略断面図である。図3(a)に示す透過型液晶ディスプレイ(60)においては、バックライトユニット(50)、偏光板(40)、液晶セル(30)、偏光板(20)、ハードコートフィルム(10)を順に備えている。このとき、反射防止フィルム(10)の形成面側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0063】
バックライトユニット(50)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(30)は、一方の基材にTFT電極を備え、もう一方の基材に電極及びカラーフィルタを備え、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(30)を挟むように設けられる偏光板(20)及び(40)にあっては、それぞれの基材(21、23、41、43)間に偏光層(22、42)を挟持した構造となっている。
【0064】
図3(a)に示す透過型液晶ディスプレイ(60)は、反射防止フィルム(10)の透明基材(11)と偏光板(20)の透明基材(21)及び透明基材(23)を別々に備える透過型液晶ディスプレイ(60)となっている。一方、図3(b)に示す透過型液晶ディスプレイ(70)は、図3に示す偏光板(20)を有する透過型液晶ディスプレイ(70)であり、反射防止フィルム(10)の透明基材(11)の反射防止層(13)の反対側の面に偏光層(22)が設けられており、透明基材(11)が反射防止フィルム(10)と偏光板(20)の透明基材(21)を兼ねる構造となっている。
【0065】
また、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ(60、70)においては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトユニット(50)から発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セル(30)や偏光板(20、40)の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の実施の形態に係る透過型液晶ディスプレイ(60、70)はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
以下に実施例を示す。
【0067】
まず、以下のようにハードコート層を形成するための塗液1〜6(ハードコート層形成用塗液1〜6)及び反射防止層を形成するための塗液1〜3(反射防止層形成用塗液1〜3)を調整した。
【0068】
(ハードコート層形成用塗液1)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(モメンティブ社製、TSF4460) 0.2重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・酢酸メチル 150重量部
を用いてハードコート層形成用塗液1を調整した。
【0069】
(ハードコート層形成用塗液2)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.2重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・酢酸メチル 150重量部
を用いてハードコート層の形成用塗液2を調整した。
【0070】
(ハードコート層形成用塗液3)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(モメンティブ社製、TSF4460) 0.1重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.1重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・酢酸メチル 150重量部
を用いてハードコート層の形成用塗液3を調整した。
【0071】
(ハードコート層形成用塗液4)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(モメンティブ社製、TSF4460) 4重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・酢酸メチル 150重量部
を用いてハードコート層の形成用塗液4を調整した。
【0072】
(ハードコート層形成用塗液5)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 4重量部
・メチルエチルケトン 50重量部
・酢酸メチル 150重量部
を用いてハードコート層の形成用塗液5を調整した。
【0073】
(ハードコート層形成用塗液6)
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製UA−306H) 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 10重量部
・メチルエチルケトン 100重量部
・酢酸メチル 300重量部
を用いてハードコート層の形成用塗液6を調整した。
【0074】
(反射防止層形成用塗液1)
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 15重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 2重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 0.1重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.1重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層形成用塗液1を調整した。
【0075】
(反射防止層形成用塗液2)
・多孔質シリカ微粒子分散液 (平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 15重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 2重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 0.1重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.5重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層形成用塗液2を調整した。
【0076】
(反射防止層形成用塗液3)
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 15重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 2重量部
・光重合開始剤
(チバ・ジャパン社製、イルガキュア184) 0.1重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層形成用塗液3を調整した。
【0077】
(実施例1)
(ハードコート層の形成)
まず、透明基材として、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム製)を用意した。次に、透明基材上にハードコート層形成用塗液1を塗布し、60℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層(12)を形成した。
【0078】
(反射防止層の形成)
形成されたハードコート層上に反射防止層形成用塗液1を塗布し、60℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、窒素雰囲気下にて紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚0.1μmの反射防止層を形成し、反射防止フィルムを作製した。
【0079】
(実施例2)
ハードコート層の形成用塗液2を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0080】
(実施例3)
ハードコート層の形成用塗液3を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0081】
(実施例4)
反射防止層の形成用塗液2を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0082】
(比較例1)
ハードコート層の形成用塗液4を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0083】
(比較例2)
ハードコート層の形成用塗液5を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0084】
(比較例3)
ハードコート層の形成用塗液6を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0085】
(比較例4)
ハードコート層の形成用塗液3を使用し、反射防止層の形成用塗液3を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0086】
(実施例1)〜(実施例3)、(比較例1)〜(比較例5)で得られた反射防止フィルムついて、以下の方法で評価を行った。
【0087】
(平均視感反射率)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。その結果を(表1)に示す。
【0088】
(耐擦傷性)
スチールウール「ボンスター#0000」(日本スチールウール製)により荷重200g/cm、500g/cm で各10回擦り、傷の有無を目視判定した。その結果を(表1)に示す。また、判定基準を下記に示す。
丸印 :傷を確認することが出来ない。
三角印:僅かに傷を確認できる。
バツ印:明確に傷を確認できる。
【0089】
(色ムラ)
得られた反射防止フィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった上で、3波長蛍光灯下で色ムラの観察を行った。その結果を(表1)に示す。また、判定基準を下記に示す。
丸印 :色ムラが見られない
三角印:僅かに色ムラが見られる
バツ印:明確に色ムラが見られる
【0090】
(ハジキ)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面について、ハジキの有無を目視判定した。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。その結果を(表1)に示す。
丸印 :ハジキを確認することが出来ない。
三角印:僅かにハジキを確認できる。
バツ印:明確にハジキを確認できる。
【0091】
(純水接触角)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面について、JIS R3257(1999)に記載の静滴法に準拠し、純水の接触角を測定した。その結果を(表1)に示す。
【0092】
(フッ素含有量)
得られた反射防止フィルムの反射防止層について、JEOL製X線電子分光分析装置JSP−90MXVを用いてフッ素含有量を測定した。なお、XPS測定におけるX線照射条件は、加速電圧10kV、エミッション電流10mAとした。その結果を(表1)に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
(表1)に示すように、(実施例1)〜(実施例4)では耐擦傷性が高く、色ムラが抑制されており、反射防止層のハジキが発生しない、反射防止フィルムが得られていることが確認された。なお、(実施例4)の反射防止フィルムにあっては、反射防止フィルム表面を目視で観察した結果、反射防止層表面に油状に表面調整剤が浮き上がっている様子が確認された。なお、反射防止層表面に油状に表面調整剤が浮き上がっている様子は、(実施例1)〜(実施例3)、(比較例1)〜(比較例4)の反射防止フィルムからは確認されなかった。
【符号の説明】
【0095】
10 ・・・反射防止フィルム
11、21、23、41、43・・・透明基材
12 ・・・ハードコート層
13 ・・・反射防止層
20、40 ・・・偏光板
22、42 ・・・偏光層
30 ・・・液晶セル
40 ・・・反射防止フィルム
50 ・・・バックライトユニット
60、70 ・・・透過型液晶ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と反射防止層をこの順番で積層したフィルムであって、
前記ハードコート層が電離放射線硬化型材料を含む塗液を前記透明基材上に塗布し電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、
前記反射防止層が電離放射線硬化型材料とフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液を前記ハードコート層上に塗布し、電離放射線照射により硬化させたものであり、かつ、
JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記JIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が70°以上80°以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層がフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の反射防止フィルムと、該反射防止フィルムの透明基材の非形成面に該透明基材側から順に偏光層と透明基材フィルムとを備える偏光板。
【請求項5】
観察者側から順に、請求項4記載の偏光板と、液晶セルと、第2の偏光板と、バックライトユニットをこの順に備え、かつ、前記反射防止層が観察者側の最表面に位置することを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。
【請求項6】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と反射防止層をこの順番で積層したフィルムの製造方法であって、
電離放射線硬化型材料を含む塗液を前記透明基材上に塗布し電離放射線照射により硬化させハードコート層を形成する工程と、
電離放射線硬化型材料とフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を有する表面調整剤を含む塗液を前記ハードコート層上に塗布し、電離放射線照射により硬化させ反射防止層を形成する工程とを備え、かつ、
前記反射防止層を形成する前のJIS R3257(1999)により測定されるハードコート層表面の純水の接触角が60°以上90°以下の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−78466(P2012−78466A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222086(P2010−222086)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】