説明

反射防止性光学構造体

【課題】反射光を充分に抑制することができると共に、表示装置における表示部の透明パネルとして用いた場合に、表示部の視認性を高めることができる反射防止性光学構造体を提供する。
【解決手段】透明基材2の少なくとも一方の面に、透明材料から成り且つ凸部3Aの頂点間のピッチが可視光線の波長よりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層3と、透明基材2と反射抑制層3の間に介在する防眩層4を備えた反射防止性光学構造体1とし、反射抑制層3及び防眩層4によって外光の反射光を充分に抑制し、表示装置に適用することで表示部の視認性の向上を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両の計器類を含む各種ディスプレイ等の表示装置において、その表示部を被う透明パネルに用いられる反射防止性光学構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、表示装置100と人の視野Aとの関係を示す図である。表示装置100は、表示部101とその外側を被う透明パネル102を備えている。このような表示装置100では、透明パネル102で外光が反射し、その反射光Lrが人の視野Aに入って表示部101が見難くなることがあるため、透明パネル102には反射率の低いものを用いることが望ましい。
【0003】
そこで、従来では、上記の透明パネル102等に用いられる反射防止性光学構造体として、例えば図8に示すようなものが提案されていた。図示の反射防止性光学構造体110は、透明素材で形成してあると共に、少なくとも外側(外光入射側)となる面に、可視光線の波長よりも小さいピッチの無数の微細凹凸111を形成したものであって、その微細凹凸111によって厚み方向に光の屈折率を変化させることで、反射光を抑制するものとなっている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−267815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したような従来の反射防止性光学構造体は、理論的には反射率を限りなくゼロに近づけることができ、その理論値が実現できれば、反射光を充分に抑制し得るものとなる。
【0005】
ところが、従来の反射防止性光学構造体は、実際には、可視光線の波長よりも小さいサブ波長サイズのピッチで微細凹凸を正確に成形することは非常に難しく、これにより反射光を完全に防ぐことが困難であるため、これを表示装置の透明パネルに用いた場合、僅かな反射光であっても、その反射像の輪郭が明確であると表示部の視認性が著しく低下することがあり、とくに屋外等において明るい外光を受けた場合には、表示部の視認性の低下が顕著になるという問題点があり、このような問題点を解決することが課題であった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題に着目して成されたもので、反射光を充分に抑制することができると共に、表示装置における表示部の透明パネルとして用いた場合に、表示部の視認性を高めることができる反射防止性光学構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の反射防止性光学構造体は、透明基材の少なくとも一方の面に、透明材料から成り且つ凸部の頂点間のピッチが可視光線の波長よりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層と、透明基材と反射抑制層の間に介在する防眩層を備えた構成とし、上記構成をもって従来の課題を解決するための手段としている。
【0008】
また、本発明の反射防止性光学構造体は、より好ましい実施形態として、反射抑制層における微細凹凸の凸部の頂点間隔が一定であることを特徴とし、さらに、防眩層が、透明材料から成る母材に、可視光線の波長よりも大きい粒子径の光散乱粒子を含有していることを特徴とし、さらに、防眩層における光散乱粒子の粒子径が、3μm〜30μmであることを特徴とし、さらに、防眩層における光散乱粒子の粒子径が、3μm〜5μmであることを特徴とし、さらに、防眩層における母材中の光散乱粒子の含有率が、0.1%〜10%であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の反射防止性光学構造体によれば、上記構成を採用したことにより、反射光を充分に抑制することができ、表示装置における表示部の透明パネルとして用いた場合には、屋外等で明るい外光を受けたとしても、表示部の視認性を著しく高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示す反射防止性光学構造体1は、透明基材2の一方の面(上面)に、透明材料から成り且つ凸部3Aの頂点間のピッチP1が可視光線の最小波長370nmよりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層3と、透明基材2と反射抑制層3の間に介在する防眩層4を備えると共に、透明基材2の他方の面(下面)に、同じく微細凹凸を有する反射抑制層3を備えたものであって、例えば、車両の計器等の表示装置において表示部を被う透明パネルに用いられる。
【0011】
反射抑制層3は、図2及び図3にも示すように、無数の凸部3Aを縦横に配列して微細凹凸を形成したものであって、微細凹凸により厚み方向に光の屈折率を変化させて、反射光を抑制する働きをし、より望ましくは、凸部3Aの頂点間隔すなわちピッチP1を一定にすることで、上記屈折率の変化の度合いを全面にわたって均一にする。
【0012】
反射抑制層3は、当該光学構造体1を表示装置の透明パネルとして用いる場合、透明基材2に対して、少なくとも外側の面すなわち外光の入射側の面に設ける。また、図には四角錐形状の凸部3Aを例示したが、その形状がとくに限定されることはなく、例えば、円錐形状や先端部を球面にした形状であっても良い。
【0013】
防眩層4は、反射抑制層3と同様に、透明基材2に対して少なくとも外側の面すなわち外光の入射側の面に設けられると共に、透明材料から成る母材に、可視光線の最大波長780nmよりも大きい粒子径の光散乱粒子を含有したものであり、反射抑制層3を通過した光を光散乱粒子によって散乱させる。
【0014】
つまり、当該光学構造体1では、反射抑制層3によって大部分の反射光を抑制することが可能であるが、理論値を実現しない限り反射光を完全に防ぐことは困難であり、これを表示装置の透明パネルに用いた場合には、僅かな反射光であっても、反射像の輪郭が明確であると表示部の視認性が低下することから、防眩層4によって光を散乱させることで反射像の輪郭を不明確にし、表示部の視認性を高めるようにしている。
【0015】
このように、当該光学構造体1は、反射抑制層3によって大部分の反射光を抑制し、且つ反射抑制層3を通過した光を防眩層4で散乱させることで、全体として反射光を充分に抑制し得るものとなっている。したがって、当該光学構造体1を透明パネルとして用いた表示装置では、表示部の視認性が著しく良好なものとなる。
【0016】
ここで、透明基材2の素材としては、透明性があり、熱成形または活性エネルギー線によって重合し硬化するものであれば良く、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニール、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ガラス強化ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド及び熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアミドビスマレイミド及びポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、並びにこれらの素材を2種以上ブレンドしたものを用いることが可能である。これらの素材は防眩層4の母材にも用いることができる。
【0017】
防眩層4における光散乱粒子の素材としては、シリカ、タルク、クレー、アルミナホワイト、炭酸カルシウム、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリスチレン及びメラミン樹脂のそれぞれ単独又は2種以上の混合物からなるものを使用することができる。
【0018】
光散乱粒子は、その形状がとくに限定されることはないが、例えば、球状、略球状、繊維状及び針状にすることができる。
【0019】
光散乱粒子の粒子径(平均粒子径)は、望ましくは3μm〜30μmの範囲であり、より望ましくは3μm〜5μmの範囲が良い。これは、光散乱粒子の粒子径を3μmよりも小さくすると、光を散乱させる機能が損なわれる恐れがあり、また、光散乱粒子の粒子径を30μmよりも大きくすると、目視可能な大きさになって当該光学構造体1の透明性が損なわれる恐れがあるからである。したがって、光散乱粒子の粒子径を上記範囲とすることで、光散乱の機能と透明性を良好に得ることができる。
【0020】
光散乱粒子の平均粒子径とは、体積平均粒子径すなわち同じ体積の球体に換算したときの球体直径のことである。また、体積平均粒子径の測定装置としては、ベックマンコールター社製のマルチサイザーIIがある。
【0021】
さらに、防眩層4における母材中の光散乱粒子の含有率は、0.1%〜10%の範囲が望ましい。これは、光散乱粒子の含有率を0.1%よりも小さくすると、光を散乱させる機能が損なわれる恐れがあり、また、光散乱粒子の含有率を10%よりも大きくすると、当該光学構造体1の透明性が損なわれる恐れがあるからである。したがって、光散乱粒子の含有率を上記範囲とすることで、光散乱の機能と透明性を良好に得ることができる。
【0022】
さらに、上記の反射防止性光学構造体1を成形する方法としては、例えば、微細凹凸構造を有する第1の型に、透明基材フィルム、光散乱粒子を含有した防眩フィルム及び透明基材フィルムを順番に積層し、その上から微細凹凸構造を有する第2の型を合わせて、全体を熱プレス成形する方法がある。
【0023】
なお、当該光学構造体1は、表示装置における透明パネルのパネル本体を透明基材2として、反射抑制層3及び防眩層4を形成するようにしても良いし、透明基材2、反射抑制層3及び防眩層4の全体を可撓性を有するフィルム状に成形して、別の透明板に貼り付ける構成にすることも可能である。
【0024】
図4は、自動車の計器パネルである表示装置50と、運転者の視野Aとの関係を示す図である。表示装置50は、表示部51とその外側を被う透明パネル52を備えており、メータフードの無い構成になっている。このような表示装置50において、図1に基づいて説明した反射防止性光学構造体1を透明パネル52に適用することにより、メータフードが無い構成であっても、透明パネル52の反射光を充分に抑制して表示部51の良好な視認性を得ることができる。
【0025】
しかし、自動車の計器パネルである表示装置50には、夜間等における表示部51の視認性を確保するために、表示部51自体を発光させる自発光方式のものや、表示部51に照明を当てる間接照明方式があることが周知であり、照明を点灯すると、表示装置50からの表示光LdがフロントウインドウFWで反射して虚像Viを形成し、これが運転者の視野Aに入ることがある。
【0026】
そこで、本発明の反射防止性光学構造体は、上記のような不具合をも解消し得るものとして、図5に示すように、透明基材2、反射抑制層3及び防眩層4を備えると共に、透明基材2中に、遮光板5Aを有する遮光層5を備えた構成としている。
【0027】
より具体的に説明すると、図示の反射防止性光学構造体11は、透明基材2の一方の面(外側の面)に、透明材料から成り且つ凸部の頂点間のピッチが可視光線の最小波長370nmよりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層3と、透明基材2と反射抑制層3の間に介在し且つ光散乱粒子を含有した防眩層4を備えると共に、透明基材2の他方の面(表示部側である内側の面)に、同じく微細凹凸を有する反射抑制層3を備えており、透明基材2の厚さ方向のほぼ中間に、可視光線の最大波長780nmよりも長い間隔P2で遮光板5Aを配列した遮光層5を備えている。
【0028】
図示の遮光層5は、図6にも示すように、遮光板5Aと透明部5Bとを交互に配置することにより、層の厚さ方向に対して垂直な断面においてルーバ形状を成しており、隣接する遮光板5A同士の間隔P2が可視光線の最大波長780nmよりも長いものとなっている。この遮光層5は、例えば、厚さ方向に二分割した透明基材2で挟み込むことで、透明基材2中に介在した状態となる。
【0029】
遮光層5において、遮光板5Aは、その素材がとくに限定されることはなく、遮光性を有するものであれば良い。また、遮光板5Aの形状は、図示例のほか、層の厚さ方向に対して垂直な断面において、ハニカム形状や長方形網目形状を成すものでも良い。さらに、透明部5Bは、その素材がとくに限定されることはなく、例えば透明なアクリル樹脂が用いられる。
【0030】
ここで、図5に示すように、自発光法式の表示部51からの表示光Ldと、反射防止性光学構造体11の表面の法線とが成す射出角をθとすると、遮光層5が無い場合には、射出角θの最大値は180°となるが、遮光層5を設けた場合には、遮光層5の遮光板5Aによって表示部51からの表示光Ldの射出角θが制限されるために、射出角θの最大値を180°未満に制御することができる。
【0031】
図4には、先述の通り、表示部51からの表示光LdがフロントウインドウFWで反射して虚像Viを形成し、これが運転者の視野Aに入ることを示している。
【0032】
このとき、表示部51のフロントウインドウFWに最も近い部分からの表示光Ldの軌跡を見ると、表示光Ldの射出角がθ1よりも小さい場合には、フロントウインドウFWでの反射光が運転者の視野Aに入ることはなく、表示部51のフロントウインドウFWに最も近い部分が同ウインドウFWに映り込まないことが判る。
【0033】
また、表示部51のフロントウインドウFWに最も遠い部分からの表示光Ldの軌跡を見ると、表示光Ldの射出角がθ2よりも小さい場合には、フロントウインドウFWでの反射光が運転者の視野Aに入ることはなく、表示部51のフロントウインドウFWに最も遠い部分が同ウインドウFWに映り込まないことが判る。
【0034】
さらに、上記の表示光Ldの射出角θ1及びθ2を臨界射出角とすると、表示部51の他の部分での臨界射出角はθ1又はθ2より大きいことが判る。したがって、表示部51の任意の位置での臨界射出角がθ1及びθ2より小さい場合には、表示部51の全てがフロントウインドウFWに映り込まないことになる。
【0035】
そこで、当該光学構造体11は、透明基材2、反射抑制層3及び防眩層4を備えると共に、透明基材2中に、可視光線の最大波長780nmよりも長い間隔P2で遮光板5Aを配列した遮光層5を備えた構成とし、表示光Ldの射出角θがθ1及びθ2より小さくなるように、遮光板5Aの配列間隔P2及び遮光層5の厚さを設定することにより、メーターフードが無い構成であっても、表示部51がフロントウインドウFWに映り込むのを防ぐことができ、運転者の視野を妨げとなる虚像Viの形成を解消して、良好な視野を得ることができる。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
透明基材(2)の一方の面に、透明材料から成り且つ凸部(3A)の頂点間のピッチ(P1)が可視光線の波長よりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層(3)と、透明基材(2)と反射抑制層(3)の間に介在する防眩層(4)を設けると共に、透明基材(2)の他方の面に、同じく微細凹凸を有する反射抑制層(3)を設け、さらに、透明基材(2)中に、可視光線の波長よりも長い間隔(P2)で遮光板(5A)を配列した遮光層(5)を設けて、図5に示す反射防止性光学構造体11を作製した。
【0037】
透明基材2は、透明なアクリル樹脂製であって、遮光層5の一方側(上側)の厚さt1を0.5mmとし、遮光層5の他方側の厚さt2を1.5mmとした。
【0038】
両側の反射抑制層3は、透明なアクリル樹脂製であって、図2及び図3に示すように、四角錘形状の凸部3Aを縦横に配列して微細凹部を形成したものであり、隣接する凸部3A間のピッチP1を可視光線の最小波長370nmよりも小さい250nmとし、凸部3Aの高さ(凹凸の高低差)Hを500nmとし、凸部3Aの底辺a×bを250nm×250nmとした。
【0039】
防眩層4は、透明なアクリル樹脂製の母材に、体積平均粒子径5μmのシリカ製の光散乱粒子を3%含有させたものであって、厚さt3を50μmとした。
【0040】
遮光層5は、図6に示すように、厚さt4が5μm、幅Wが170μmの不透明な遮光板5Aと、透明なアクリル樹脂製の透明部5Bとを交互に配列することで、層の厚さ方向に対して垂直な断面において遮光板5Aをルーバ形状に備えたものであり、遮光板5Aの間隔(透明部5Bの厚さ)P2を可視光線の最大波長780nmよりも大きい80μmとし、層の厚さt5を170μmとした。
【0041】
そして、図4に示す自動車の計器パネルである表示装置50において、反射防止性光学構造体11を透明パネル52として用い、晴天時に屋外走行する車内において、表示部51の視認性と前方視界の視認性を官能評価した。その結果を後記する表1に示す。
【0042】
表示部51の視認性に係わる官能評価は、8人のパネラーにより、透明パネル52における外光の反射防止性能を判断し、反射光が全く気にならないと判断した者が7人以上の場合には、表示部51の視認性が良好(○)であるとし、反射光が若干でも気になると判断した者が2人以上の場合には、表示部51の視認性が不充分(△)であるとした。
【0043】
前方視界の視認性に係わる官能評価は、同じく8人のパネラーにより、フロントウインドウFWにおける表示部51の映り込み防止性能を判断し、映り込みが全く気にならないと判断した者が7人以上の場合には、前方視界の視認性が良好(○)であるとし、映り込みが若干でも気になると判断した者が2人以上の場合には、前方視界の視認性が不充分(△)であるとした。
【0044】
ここで、視認性が不充分という評価は、若干でも気になると判断した者が2人以上の場合であるから、人によっては気になる程度であり、決して運転の妨げになるようなものではない。
【0045】
また、この実施例の反射防止性光学構造体11では、遮光層5において、遮光板5Aの間隔が80μmで、幅Wが170μmであるから、表示光Ldの射出角θは約39°になる。フロントウインドウFWの傾斜角は、殆どの市販車に適用されている30°であり、メーターフードは無いものとした。
【0046】
さらに、視認性に関わる物理量として、透明パネル52の反射像コントラスト比を輝度計で測定した。反射像コントラスト比は、反射像の明部の輝度を暗部の輝度で割った値であり、その値が約1.8以下であれば反射光は殆ど気にならない。
【0047】
さらに、表1において、ヘイズ値Thはその値が小さいほど透明性が高くなる透明性の目安であり、Rvは垂直反射率、Ttは垂直透過率である。
【0048】
(実施例2)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、透明基材2の他方の面における反射抑制層3が無いものとし、それ以外は実施例1と同様とした。
【0049】
(実施例3)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、透明基材2の他方の面における反射抑制層3を二層干渉反射防止膜とし、それ以外は実施例1と同様にした。二層干渉反射防止膜は、その外側から、膜厚10μmで、屈折率1.1の第1層と、膜厚10μmで、屈折率1.3の第2層を備えたものである。
【0050】
(実施例4)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、遮光層5が無いものとし、それ以外は実施例1と同様とした。
【0051】
(実施例5)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、透明基材2の他方の面における反射抑制層3と、遮光層5が無いものとし、それ以外は実施例1と同様とした。
【0052】
(実施例6)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、透明基材2の他方の面における反射抑制層3を、実施例3と同様の二層干渉反射防止膜とすると共に、遮光層5が無いものとし、それ以外は実施例1と同様にした。
【0053】
(比較例1)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、防眩層4と遮光層5が無いものとし、それ以外は実施例1と同様にした。
【0054】
(比較例2)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、防眩層4と遮光層5が無いものとすると共に、透明基材2の他方の面における反射抑制層3を、実施例3と同様の二層干渉反射防止膜とし、それ以外は実施例1と同様にした。
【0055】
(比較例3)
図5に示す反射防止性光学構造体11に対して、透明基材2の他方の面における反射抑制層3と、防眩層4と、遮光層5が無いものとし、それ以外は実施例1と同様にした。
【0056】
【表1】

【0057】
表1から明らかなように、比較例1〜3は、いずれも防眩層4及び遮光層5が無いことから、透明パネル52における外光の反射光やフロントウインドウFWにおける表示部51の映り込みが確認され、表示部51の視認性及び前方視界の視認性の両方の官能評価が不充分(△)となった。
【0058】
これに対して、本発明の実施例1〜6は、防眩層4を備えた構成とすることで、いずれも透明パネル52における外光の反射光は何ら確認されず、表示部51の視認性の官能評価は良好(○)であった。
【0059】
実施例2及び5では、透明基材2の他方の面における反射抑制層3が無いことから、当該光学構造体の裏面と空気との界面で光が反射される為に垂直反射率Rvが若干大きくなり、さらに、実施例4〜6では、遮光層5が無いことから、フロントウインドウFWにおける表示部51の映り込みが確認されたが、実施例1〜3のように遮光層5を備えた構成とすることで、フロントウインドウFWにおける表示部51の映り込みが全く確認されないものとなり、前方視界の視認性の官能評価は良好(○)であった。
【0060】
なお、本発明の反射防止性光学構造体は、上記の如く車両の計器パネルにきわめて好適なものとなるが、それ以外にも、パソコンや携帯電話等の各種表示装置の透明パネルに適用することができ、明るい屋外においても表示装置の表示部の良好な視認性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の反射防止性光学構造体の一実施例を説明する断面図である。
【図2】反射抑制層を説明する断面図である。
【図3】反射抑制層を説明する斜視図である。
【図4】自動車の計器パネルである表示装置と運転者の視野との関係を示す説明図である。
【図5】本発明の反射防止性光学構造体の他の実施例を説明する断面図である。
【図6】遮光層を説明する斜視図(a)、平面図(b)及び断面図(c)である。
【図7】表示装置と人の視野との関係を示す説明図である。
【図8】従来の反射防止性光学構造体を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 11 反射防止性光学構造体
2 透明基材
3 反射抑制層
3A 凸部
4 防眩層
5 遮光層
5A 遮光板
50 表示装置
51 表示部
52 透明パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面に、透明材料から成り且つ凸部の頂点間のピッチが可視光線の波長よりも小さい微細凹凸を有する反射抑制層と、透明基材と反射抑制層の間に介在する防眩層を備えたことを特徴とする反射防止性光学構造体。
【請求項2】
反射抑制層における微細凹凸の凸部の頂点間隔が一定であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止性光学構造体。
【請求項3】
防眩層が、透明材料から成る母材に、可視光線の波長よりも大きい粒子径の光散乱粒子を含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の反射防止性光学構造体。
【請求項4】
防眩層における光散乱粒子の粒子径が、3μm〜30μmであることを特徴とする請求項3に記載の反射防止性光学構造体。
【請求項5】
防眩層における光散乱粒子の粒子径が、3μm〜5μmであることを特徴とする請求項4に記載の反射防止性光学構造体。
【請求項6】
防眩層における母材中の光散乱粒子の含有率が、0.1%〜10%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止性光学構造体。
【請求項7】
透明基材中に、可視光線の波長よりも長い間隔で遮光板を配列した遮光層を備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止性光学構造体。
【請求項8】
遮光層における遮光板の形状が、層の厚さ方向に対して垂直な断面において、ハニカム形状、長方形網目形状及びルーバ形状のうちの少なくとも一つの形状であることを特徴とする請求項7に記載の反射防止性光学構造体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止性光学構造体を表示部の透明パネルに用いたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−65563(P2007−65563A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254701(P2005−254701)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】