説明

反射防止性物品およびその製造方法

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は、耐摩耗性、可染性、耐衝撃性、耐薬品性、可撓性、耐候性などに優れた反射防止性を有する光学物品に関するものであり、とくに光学用素子、たとえば眼鏡用レンズ、カメラ用レンズなどの光学用レンズなど、プラスチック製反射防止性物品およびその製造方法に関するものである。
[従来の技術]
透明材料を通して物を見る場合、反射光が強く反射像が明瞭であることは煩わしく、例えば、眼鏡用レンズではゴースト、フレアなどと呼ばれる反射像を生じて眼に不快感を与えたりする。また、ルッキンググラスなどではガラス面上の反射した光のために内容物が判然としない問題が生ずる。また、眼鏡レンズなど光学物品へのゴミやホコリの付着は、多くの場合静電気によるものであり、ただ拭くだけでは容易に除去できないという問題もあった。
従来より反射防止に関しては、すでに多くの提案がなされ、また実用化されている。特に液状組成物を透明基材に塗布し単層膜で反射防止効果を得ているものとして、USP1,361,598号、およびその他として、特開昭58-167448号公報、特開昭58-211701号公報、および特開昭58-43601号公報、特開昭59-49501号公報などがある。
[発明が解決しようとする問題点]
特開昭58-167448号公報および特開昭58-211701号公報は、基材がガラスであるため染色出来ないものであった。また反射防止物品の軽量化、可撓性、易加工性などの要求を満足するためには、プラスチック製基材の導入が必要である。
一方、プラスチック製基材へ適用した例として、USP4,590,117号、およびその他として、特開昭58-43601号公報、特開昭59-49501号公報などがあるが、いずれも2層以上の複層膜からなっており、生産性、再現性、面内均一性などに問題があった。
また、フッ素含有ポリシロキサン系薄膜を形成させて、反射防止加工することもすでに知られている(特開昭61-40845号公報)。
一方、ゴミやホコリの付着を防止する目的から最近、界面活性剤などを用いた、塗布用帯電防止剤が市販されているが、一時的な効用しかない。
また、プラスチック成型品の制電性に関しては、これまで、各種の方法が知られており、たとえば、特公昭55-15494号公報、特公昭60-21628号公報などに提案されている。
本発明は、耐摩耗性、可染性、耐衝撃性、耐薬品性、可撓性、耐候性などに優れた反射防止性を有する光学物品を提供するものである。
さらには、これらの特性を損なうことなく、帯電防止性に優れ、ゴミやホコリなどの付着を防止する反射防止性を有する光学物品を提供するものである。
さらに本発明は、高屈折率のハードコート被膜を有するプラスチック製透明基材の表面に、低屈折率でかつフッ素を含有する有機ポリシロキサン系化合物の薄膜を設けることにより、耐摩耗性、可染性、耐衝撃性などに優れた反射防止性物品を提供する。
また塗膜表面を活性化ガス処理することにより、帯電防止機能を付与することを目的とする。
本発明は、塗料の塗布により反射防止性物品を製造する発明を提供するもので、特にプラスチックレンズなどに好ましい性能を付与することを目的とする。
[問題点を解決するための手段]
上記目的を達成するため本発明は下記の構成からなる。
「(1)屈折率が1.52以上のハードコート被膜を有するプラスチック製透明基材の表面に膜厚が10〜500nm、屈折率が該被膜より少なくとも0.02以上低いフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜を有する物品であって、該薄膜全体のフッ素および:ケイ素含有率において、ケイ素に対するフッ素の重量比が、0.02以上、10以下であり、さらにその最表面層においては、該重量比が、該薄膜全体のケイ素に対するフッ素の重量比の80%未満であることを特徴とする反射防止性物品。
(2)屈折率が1.52以上のハードコート被膜を有するプラスチック製透明基材の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物を含む液状コーティング組成物を塗布し、さらに加熱によって屈折率が該被膜よりも少なくとも0.02以上低く、かつ、ケイ素に対するフッ素の重量比が、0.02以上、10以下である、膜厚10〜500nmの硬化薄膜を形成せしめたのち、該薄膜を活性化ガス処理することにより、該硬化薄膜の最表面層における該重量比を、該硬化薄膜全体のケイ素に対するフッ素の重量比の80%未満とすることを特徴とする反射防止性物品の製造方法。」
本発明におけるプラスチック製透明基材としては、各種プラスチック、例えばアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートポリマ、(ハロゲン化)ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレートポリマおよびその共重合体、(ハロゲン化)ビスフェノールAのウレタン変性(メタ)アクリレートポリマ、およびその共重合体などが好ましく使用される。
さらに本発明に使用されるハードコート被膜は、屈折率が1.52以上であることが必要であり、この以下では実質的に反射防止効果の発現を期待することができない。反射防止性をより一段と高めるためには、1.54以上の屈折率を有するものがさらに好ましく使用される。
また、本発明で言うところのハードコート被膜とは、JIS K5400に定められた鉛筆硬度で4H以上の硬度を有するものであり、かかる表面硬度を有する物であれば特に限定されるものではない。
このような屈折率が1.52以上で鉛筆硬度が4H以上の透明膜であれば、何ら限定されるものではないが、より高い表面硬度がフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜との接着性向上、さらには容易に高い屈折率を付与できるとの観点から屈折率の高い無機酸化物微粒子を樹脂被膜中に含有せしめてなるものが好ましく適用される。
かかる無機酸化物微粒子としては、透明性を低下させないという意味から平均粒子径が約1〜300nm、さらに好ましくは約5〜200nmのものが使用される。
粒子径のあまり小さいものは作製が困難であり、コストが高くて実用的でなく、また余り大きなものは一般に透明感が低下するので上記範囲内のものが主として用いられる。
これらの無機酸化物微粒子としては、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アンチモンの微粒子状物から選ばれる1種以上が好ましく用いられる。即ち、これらを含む被膜は高い屈折率を与えるという他に透明性と表面硬度に優れているからである。中でも酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化アンチモンが安定性などの点で好ましい。
またこれらの無機酸化物微粒子は単独のみならず、2種以上の併用も可能である。さらには前記の酸化物はケイ素などを含む混合酸化物であってもよい。
かかる無機酸化物微粒子は該ハードコート被膜中に10〜75重量%の範囲内で含まれることが好ましい。即ち、10重量%未満ではその添加効果がほとんど認められず、また75重量%を越えるものは塗膜のクラック発生などの問題が生ずるからである。
また、該ハードコート被膜の膜厚は適用プラスチック製透明基材によって異なり、鉛筆硬度が4H以上となるように設計されるべきものであるが、通常0.5μm以上、20μm以下に設計されることが好ましい。すなわち、0.5μm未満では十分な硬度が得難いばかりか、ハードコート被膜自身に十分な染色性を持たせることが困難となる。一方、20μmを越える場合には均一塗布が困難であるばかりでなく、耐衝撃性を低下させるなどの問題も発生してくる。
本発明の反射防止性とは、ゴーストおよびフレアーの除去という観点からは反射防止効果を必要とする面における反射率が2.7%以下、たとえば眼鏡レンズなどのような両面の反射防止が必要な場合には両面における反射率の合成が5.4%以下のものを示し、全光線透過率で表わせば94.6%以上のものをいう。
本発明は前記ハードコート被膜からなるプラスチック製透明基材の表面に膜厚が10〜500nm、屈折率が該ハードコート被膜より少なくとも0.02以上低いフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜を設けてなるものであるが、ここでフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜とは、下記一般式(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物を被覆、硬化させて得られる透明膜である。
(R1Q)SiXaY3-a (I)
(ここで、R1は炭素数1〜20個のフッ素含有アルキル基であってエーテル結合あるいはエステル結合を1個以上含んでいてもよい。Qは二価の有機基、Xは低級アルキル基、Yはハロゲン、アルコキシ基、又はRCOO-基(ただし、Rは水素原子又は低級アルキル基)、aは0または1の整数を示す。)
これらのフッ素含有有機化合物の具体的代表例としては、3,3,3−トリフロロプロピルトリアルコキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルメチルジアルコキシシラン、3−トリフロロアセトキシプロピルトリアルコキシシランなどがその例である。
これらのフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜において、前記一般式(I)に由来する成分は10重量%以上含まれることが低屈折率化に必要である。さらに前記ハードコート被膜が比較的屈折率が低い場合には、15重量%以上含まれることが好ましい。
また薄膜の膜厚は10〜500nm、好ましくは50〜300nmが適当であり、これより薄くしては反射防止効果、さらには表面硬度が充分に得られない。またこれ以上では反射防止性の効果を上げることが出来ない。
また上記フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜およびハードコート被膜からなる複合膜全体の耐摩耗性、耐すり傷性、耐衝撃性、耐薬品性、可撓性、耐光性、耐候性などを向上させる目的で1種または2種以上の他の有機ケイ素化合物を使用または併用することが好ましいものである。
代表的な有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物を式(II)に示す。
R3bR4cSiZ4-(b+c) (II)
(ここで、R3R4は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基またはハロゲン基、エポキシ基、グリシドキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基あるいはシアノ基を有する炭化水素基、Zは加水分解性基であり、bおよびcは0または1である。)
これらの有機ケイ素化合物の具体的な代表例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケートおよびt−ブチルシリケートなどのテトラアルコキシシラン類、およびその加水分解物さらにはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシランまたはトリフェノキシシラン類またはその加水分解物およびジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシランなどジアルコキシシラン、ジフェノキシシランまたはジアシルオキシシラン類またはその加水分解物がその例である。
とくに染色性付与の目的にはエポキシ基、グリシドキシ基を含む有機ケイ素化合物の使用が好適である。
前記のフッ素含有有機ケイ素化合物、あるいはこれらの有機ケイ素化合物との混合物はキュア温度を下げ、硬化をより進行させるためには加水分解して使用することが好ましい。
加水分解は純水または塩酸、酢酸、あるいは硫酸などの酸性水溶液を添加、攪拌することによって製造される。さらに純水、あるいは酸性水溶液の添加量を調節することによって加水分解の度合をコントロールすることも容易に可能である。加水分解に際しては、一般式(I)の−Y基および一般式(II)の−Z基と等モル以上、3倍モル以下の純水または酸性水溶液の添加が硬化促進の点で特に好ましい。
加水分解に際しては、アルコール等が生成してくるので、無溶媒で加水分解することが可能であるが、加水分解をさらに均一に行なう目的で有機ケイ素化合物と溶媒を混合した後、加水分解を行なうことも可能である。また目的に応じて加水分解後のアルコール等を加熱および/または減圧下に適当量除去して使用することも可能であるし、その後に適当な溶媒を添加することも可能である。
これらの溶媒としてはアルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素あるいはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの溶媒が挙げられる。またこれらの溶媒は必要に応じて2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。また、目的に応じて加水分解反応を促進し、さらに予備縮合等の反応を進めるために室温以上に加熱することも可能であるし、予備縮合を抑えるために加水分解温度を室温以下に下げて行なうことも可能であることは言うまでもない。
プラスチック製透明基材へのハードコート被膜塗布および該ハードコート被膜上へのフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜の塗布にあたっては、清浄化、接着性向上、耐水性向上などを目的として基材に各種の前処理を施すことが可能である。とくに本発明に有効な手段としては活性化ガス処理、薬品処理などが挙げられる。
かかる活性化ガス処理とは、常圧もしくは減圧下において生成するイオン、電子あるいは励起された気体である。これらの活性化ガスを生成する方法としては、例えばコロナ放電、減圧下での直流、低周波、高周波あるいはマイクロ波による高電圧放電などによるものである。特に減圧下での高周波放電によって得られる低温プラズマによる処理あるいはコロナ放電処理が好適である。
ここで使用されるガスは特に限定されるものではないが、具体例としては酸素、窒素、水素、炭酸ガス、二酸化硫黄、ヘリウム、ネオン、アルゴン、フレオン、水蒸気、アンモニア、一酸化炭素、塩素、一酸化窒素、二酸化窒素などが挙げられる。
これらは一種のみならず、二種以上混合しても使用可能である。前記の中で好ましいガスとしては、酸素を含んだものが挙げられ、空気などの自然界に存在するものであってもよい。さらに好ましくは、純粋な酸素ガスが接着性向上に有効である。さらには同様の目的で前記処理に際しては被処理基材の温度を上げることも可能である。
一方、薬品処理の具体例としては苛性ソーダなどのアルカリ処理、塩酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムなどの酸処理、芳香環を有する有機溶剤処理などが挙げられる。
以上の前処理は連続的、または段階的に併用して実施することも十分可能である。
本発明のハードコート被膜およびフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜のコーティング組成物の硬化にあたっては、硬化促進、低温硬化などを可能とする目的で各種の硬化剤が併用可能である。硬化剤としては各種エポキシ樹脂硬化剤、あるいは各種有機ケイ素樹脂硬化剤などが使用される。
これらの硬化剤の具体的な例としては、各種の有機酸およびそれらの酸無水物、窒素含有有機化合物、各種金属錯化合物あるいは金属アルコキシド、さらにはアルカリ金属の有機カルボン酸塩、炭酸塩などの各種塩が挙げられる。これらの硬化剤は2種以上混合して使用することも可能である。これら硬化剤の中でも本発明の目的には、塗料の安定性、コーティング後の被膜の着色の有無などの点から、特に下記に示すアルミニウムキレート化合物が有用である。
ここでいうアルミニウムキレート化合物とは、例えば一般式(III)で示されるアルミニウムキレート化合物である。
AlXnY3-n (III)
ただし式(III)中、XはOL(Lは低級アルキル基)であり、Yは一般式M1COCH2COM2(M1,M2はいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子および一般式M3COCH2COOM4(M3M4はいずれも低級アルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくとも1つであり、nは0、1または2である。
本発明の硬化剤として特に有用な一般式(III)AlXnY3-nで示されるアルミニウムキレート化合物としては、各種の化合物をあげ得るが、組成物への溶解性、安定性、硬化触媒としての効果などの観点から特に好ましいのは、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウム−ジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシド−モノメチルアセトアセテートなどである。これらは2種以上を混合して使用することも可能である。
本発明のそれぞれのコーティング用組成物には、塗布時におけるフローを向上させ、塗膜の平滑性を向上させて塗膜表面の摩擦係数を低下させる目的で各種の界面活性剤を使用することも可能であり、とくにジメチルシロキサンとアルキレンオキシドとのブロックまたはグラフト重合体、さらにはフッ素系界面活性剤などが有効である。また染顔料や充填材を分散させたり、有機ポリマーを溶解させて、塗膜を着色させたり、塗布性、基材との密着性、物性向上などコーティング剤としての実用性を改善させることも容易に可能である。
さらには耐候性を向上させる目的で紫外線吸収剤、また耐熱劣化向上法として酸化防止剤を添加することも容易に可能である。
さらには表面硬度をより一層向上させ、また帯電防止性の向上などの目的で高分子量無水ケイ酸の水および/またはアルコールなどの有機溶媒中にコロイド状分散体であるシリカゾルが好ましく使用される。特に、フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜中への添加はカーボランダム状の粉末による摩耗にも耐える表面硬度、すなわち、耐摩耗性に優れた被膜を与えるという点で好ましく使用されるものである。また染色性向上を目的として各種エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ナイロン樹脂などが好ましく使用される。
被膜の塗布にあたって作業性、被膜厚さ調節などから各種溶剤により、コーティング組成物を希釈して用いられるが、希釈溶剤としては、水、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
このようにして得られた反射防止性物品に帯電防止性を付与させる目的には、反射防止性物品のフッ素含有有機ポリシロキサン系硬化被膜中のフッ素およびケイ素の重量比を、ケイ素に対するフッ素の重量比(F/Si)で0.02以上、10以下の範囲にすべきものであり、0.02未満では反射防止効果がなく、また、10を越えると硬化被膜の硬度が十分高いものとならない。
さらに、上記フッ素含有有機ポリシロキサン系硬化被膜の最表面層において上記重量比が、該薄膜全体のF/Si重量比の80%未満にすることが必要である。80%を越えると制電性は得られない。
かかる、上記の構成からなる帯電防止性を有する反射防止性物品とする方法としては、フッ素含有有機ポリシロキサン系硬化被膜を前述の基材処理時に使用可能な活性化ガス処理が適用可能である。ただし、処理条件などに関しては要求される帯電防止性などの観点から決められるべきものである。
一方、反射防止性物品のフッ素含有有機ポリシロキサン系硬化被膜上に、あらかじめ、F/Siの重量比を該硬化被膜の80%未満に設計したフッ素含有有機ポリシロキサン系硬化極薄膜を付着させることも有効である。この極薄膜の膜厚は、1nm〜30nmが好ましい。1nmより薄いと塗膜形成が困難であり、30nmより厚いと、反射防止効果が充分ではなくなる。
この極薄膜を付着させるには、反射防止物品のフッ素含有有機ポリシロキサン系硬化被膜の薬品処理が有効である。
かかる、薬品処理の具体例としては苛性ソーダなどのアルカリ処理、塩酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムなどの酸処理、芳香環を有する有機溶剤処理などが挙げられる。
以上の前処理は、連続的、または、段階的に併用して実施することも十分可能である。
なお、本発明におけるフッ素/ケイ素の重量比分析の測定具体例としては、X線光電子分析法(ESCA)などが用いられる。
本発明によって得られる反射防止性物品は、耐久性のある高硬度表面を有し、染色性を有すること、さらには制電性を有することからサングラス、矯正用レンズはもとより、カメラ、双眼鏡等のレンズなどに好ましく使用できる。本発明の特徴を明瞭にするために次に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例]
実施例1、比較例1(1)プラスチック基材の調製テトラブロムビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体に1モルのアクリル酸をエステル化により結合させた水酸基含有化合物1モルに対し、ヘキサメチレンジイソシアネートを0.9モル付加させた多官能アクリレートモノマーを含むモノマ70部とスチレン30部をジイソプロピルパーオキサイドを重合開始剤としてキャスト重合して基材を得た。得られた樹脂の屈折率は1.61であった。
(2)コーティング組成物の調製(a)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分解物の調製回転子を備えた反応器中にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン95.3gを仕込み、液温を10℃に保ち、マグネチックスターラーで撹拌しながら0.01規定塩酸水溶液21.8gを徐々に滴下する。滴下終了後冷却をやめてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。
(b)塗料の調製前記シラン加水分解物にメタノール216g、ジメチルホルムアミド216g、フッ素系界面活性剤0.5g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シェル化学社製、商品名エピコート827)67.5gを添加混合し、さらにコロイド状五酸化アンチモンゾル(日産化学社製、商品名アンチモンゾルA−2550、平均粒子径60mμ)270g、アルミニウムアセチルアセトネート13.5gを添加し、さらに遷移金属化合物としてアセチルアセトンCu(II)1.1gを加え、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
(3)フッ素含有コーティング組成物の調製(a)加水分解物の調製回転子を備えた反応器中にメチルトリメトキシシラン4.9g、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン3.5gを仕込み、液温を10℃に保ち、マグネチックスターラーで撹拌しながら0.01規定塩酸水溶液2.8gを徐々に滴下、滴下終了後冷却をやめて加水分解物を得た。
(b)塗料の調製前記シラン加水分解物にn−プロピルアルコール56.0g、蒸留水24.0g、エチルセロソルブ7.5gをあらかじめn−プロピルアルコールで5%に調製したシリコーン系界面活性剤1.0gおよびアルミニウムアセチルアセトネート0.24gを添加し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
(4)反射防止性物品の作製前記(1)によって得られたプラスチック基材に、前記(2)で調製したコーティング組成物を下記条件でディップコーティングした。コーティングしたレンズは110℃/12分の予備硬化を行ない、さらに110℃/4時間加熱キュアした。得られた硬化被膜の屈折率は1.58であった。キュアされたレンズは前処理として表面処理用プラズマ装置(PR501Aヤマト科学(株)製)を用い、酸素流量100ml/分、出力50Wで1分間処理を行なった。
ついで前項(3),(b)で調製した塗料を用いて下記条件でスピンコーティングした。コーティング後は、82℃/12分の予備硬化を行ない、さらに93℃/4時間加熱キュアして反射防止性物品を得た。
スピンコート条件回転数:3500rpm回転時間:30秒得られた反射防止性物品の全光線透過率は96.1%であった。
なお、比較例として前項(2)のハードコート被膜を設けないものについても、他をまったく同様にして行なった。
得られた反射防止レンズの性能評価は下記(5)に示す方法に従って行ない、次の第1表の通りであった。


即ち、ハードコート被膜を設けた反射防止レンズは反射防止性、染色性、表面硬度のすべてにおいて満足できるものであったが、該被膜を設けないものについては染色性、表面硬度ともに不十分なもので、まったく実用性のないものであった。
(5)試験方法(5)−1 染色性分散染料(赤、青、黄の3色混合)に93℃15分間浸漬し、染色程度を全光線透過率で表わした。
(5)−2 染色後の外観(目視)
○:レンズ全体が均一に染色された×:染色むらがある(5)−3 スチールウール硬度#0000のスチールウールで塗膜面をこすり傷つき具合を判定する。判定基準はA:強く摩擦しても傷がつかないB:強く摩擦すると傷がつくC:弱い摩擦でも傷がつくなお、本実施例で用いたハードコート被膜の鉛筆硬度は8H、膜厚は2.8μmであった。また、フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜の膜厚は100nm、屈折率は1.39であった。
(6)さらに前記で得られた反射防止物品を以下に示す方法でそれぞれ処理した。
制電性発現処理表面処理用プラズマ装置(PR501Aヤマト科学(株)製)を用い、酸素流量100ml/分、出力50Wで3分間処理を行なった。
得られた物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.04/1であった。なお、被膜全体のフッ素/ケイ素の重量比は、0.08/1であった。
全光線透過率は、96.1%であった。また、制電性の評価において、いずれも帯電圧の半減期は1秒以下であり、パンチ屑テストでは、最初からパンチ屑は付着しなかった。
なお、それぞれの実施例における制電性発現処理を行なわなかった物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.08/1であった。また、帯電圧の半減期は121秒(未処理)であり、パンチ屑テストは、2530であり、制電性に乏しいことがわかった。
評価方法は、下記に基づくものである。
(A)帯電圧の半減期20℃、65%RHの条件下で、スタチックオネストメータを使用し、10kv、1000rpmの条件で帯電させた時の帯電圧の半減期を測定した。
(B)パンチ屑テスト20℃〜25℃、50〜70%RHにおいて、反射防止性物品を鹿皮で拭き静電気を発生させて、机の上にばらまいたパンチ屑上に約1〜2cmまで近付けてパンチ屑を付着させる。そのまま30秒間静止しておき、脱落しないで残っているパンチ屑を数えた。
実施例2、比較例2(1)実施例1でプラスチック製透明基材としてカセイソーダに浸漬後、洗浄した屈折率が1.50のジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体レンズ(直径71mm、厚み2.1mm、CR-39プラノレンズ)を用い、さらにフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜用のコーティング組成物として、メチルトリメトキシシランと3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシランおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの比率を変えたコーティング組成物を実施例1−(4)の方法でコーティング、加熱キュアして得た反射防止物品の性能結果を第2表に示す。
なお、比較例としてハードコート被膜を設けないで、他は実施例2とまったく同様に行なったところ、まったく表面硬度の低いものしか得られなかった。


(2)さらに、実施例2で得られた反射防止物品を、実施例1に示す方法で、制電性発現処理した。
得られた物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.04/1であった。なお、被膜全体のフッ素/ケイ素の重量比は、0.08/1であった。
全光線透過率は、96.4%であった。また、制電性の評価において、いずれも帯電圧の半減期は1秒以下であり、パンチ屑テストでは、最初からパンチ屑は付着しなかった。
なお、制電性発現処理を行なわなかった物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.08/1であった。また、帯電圧の半減期は360秒以上であり、パンチ屑テストは、30であり、制電性に乏しいことがわかった。
評価方法は、前記実施例1と同様に行った。
実施例3(1)フッ素含有コーティング組成物の調製(a)加水分解物の調製回転子を備えた反応器中にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.2g、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン3.1gを仕込み、液温を30℃に保ち、マグネチックスターラーで撹拌しながら0.01規定塩酸水溶液2.8gを徐々に滴下、滴下終了後室温で10分間撹拌して加水分解物を得た。
(b)塗料の調製前記シラン加水分解物にn−プロピルアルコール141.6g、蒸留水60.7g、エチルセロソルブ18.8gを加え撹拌後メタノールシリカゾル(固形分30%、平均粒子径13mμ)16.0g、あらかじめn−プロピルアルコールで5%に調製したシリコーン系界面活性剤2.2gおよびアルミニウムアセチルアセトネート0.6gを添加し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
(2)反射防止性物品の作製前記実施例1−(1),(2)で得られた基材およびコーティング組成物を実施例1−(4)と同様にコーティング、キュアを行ない、さらにプラズマ処理を酸素流量200ml/分、出力50Wで1分間処理を行なった。
ついで前項(1),(b)で調製した塗料を用いて下記条件でスピンコーティングした。コーティング後は、82℃/12分の予備硬化を行ない、さらに110℃/4時間加熱キュアして反射防止物品を得た。
スピンコート条件回転数:3500rpm回転時間:30秒得られた反射防止性物品の全光線透過率は95.2%であった。
得られた反射防止レンズの性能は実施例1−(4)に示す方法に従って行ない、次の通りであった。
染色性(%) 37.0染色後の外観 ○スチールウール硬度 Aなおフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜の屈折率は1.44、膜厚は100nmであった。
(3)制電性発現処理前記(2)で得られた反射防止物品を表面処理用プラズマ装置(PR501Aヤマト科学(株)製)を用い、酸素流量200ml/分、出力50Wで0.5分間処理を行なった。
全光線透過率は、95.2%であった。また、制電性の評価において、帯電圧の半減期は10秒以下であり、パンチ屑テストではすべて脱落した。
得られた物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.05/1であった。なお被膜全体のフッ素/ケイ素の重量比は0.07/1であった。また制電性発現処理をしない反射防止物品の表層におけるフッ素/ケイ素の元素含有量は、重量比で0.07/1であった。
実施例4(1)透明基材レンズの作製カセイソーダ水溶液に浸漬後、洗浄した屈折率が1.50のジエチレングリコールビスアリルカーボネート重合体レンズ(直径71mm、厚み2.1mm、CR-39プラノレンズ)を実施例1−(2)で調製した塗料を用いて実施例1−(4)と同様にコーティング,キュアを行なった。
(2)反射防止性物品の作製前記実施例5−(2)と同様に行ない、反射防止性物品を得た。
全光線透過率(%) 95.8染色性(%) 30染色後の外観 ○スチールウール硬度 A(3)制電性発現処理前記(2)で得られた反射防止性物品を表面処理用プラズマ装置(PR501Aヤマト科学(株)製)を用い、酸素流量200ml/分、出力50Wで0.5分間処理を行なった。
全光線透過率は、95.8%であった。また、制電性の評価において、帯電圧の半減期は10秒以下であり、パンチ屑テストでは、すべて脱落した。
得られた物品の表層におけるフッ素/ケイ素(F/Si)の元素含有量は、重量比で0.05/1であった。なお、被膜全体のフッ素/ケイ素の重量比は、0.07/1であった。また、制電性発現処理をしない反射防止性物品の表層におけるフッ素/ケイ素の元素含有量は、重量比で0.07/1であった。
[発明の効果]
本発明によって得られる反射防止性物品は以下に示す特徴がある。
(1)高い反射防止性、および均一な反射光色を付与することが出来る。
(2)高い表面硬度を有し、耐熱性、耐衝撃性、耐久性に優れている。
(3)染色速度が速く、染色後の外観も良好である。
(4)表面すべり性が良好であり、実質的に傷がつきにくい。
(5)汚れが目立ちにくく除去し易い。
(6)制電性を有し、ゴミやホコリが付着しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】屈折率が1.52以上のハードコート被膜を有するプラスチック製透明基材の表面に膜厚が10〜500nm、屈折率が該被膜より少なくとも0.02以上低いフッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜を有する物品であって、該薄膜全体のフッ素およびケイ素の元素含有率において、ケイ素に対するフッ素の重量比が、0.02以上、10以下であり、さらにその最表面層においては、該重量比が、該薄膜全体のケイ素に対するフッ素の重量比の80%未満であることを特徴とする反射防止性物品。
【請求項2】フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜が下記一般式(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物の重合体であることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の反射防止性物品。
(R1Q)SiXaY3-a (I)
(ここで、R1は炭素数1〜20個のフッ素含有アルキル基であってエーテル結合あるいはエステル結合を1個以上含んでいてもよい。Qは二価の有機基、Xは低級アルキル基、Yはハロゲン、アルコキシ基、又はRCOO-基(ただし、Rは水素原子又は低級アルキル基)、aは0または1の整数を示す。)
【請求項3】フッ素含有有機ポリシロキサンが、フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜中10重量%以上含まれることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の反射防止性物品。
【請求項4】ハードコート被膜が無機酸化物微粒子を含むことを特徴とする特許請求の範囲第(1)項記載の反射防止性物品。
【請求項5】無機酸化物微粒子がアンチモン、チタン、ジルコニウム、タンタルから選ばれる1種以上の金属を含む酸化物であることを特徴とする特許請求の範囲第(4)項記載の反射防止性物品。
【請求項6】フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜が、前記一般式(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物の加水分解物の重合体を含有することを特徴とする特許請求の範囲第(2)項記載の反射防止性物品。
【請求項7】屈折率が1.52以上のハードコート被膜を有するプラスチック製透明基材の表面にフッ素含有有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物を含む液状コーティング組成物を塗布し、さらに加熱によって屈折率が該被膜よりも少なくとも0.02以上低く、かつ、ケイ素に対するフッ素の重量比が、0.02以上、10以下である、膜厚10〜500nmの硬化薄膜を形成せしめたのち、該薄膜を活性化ガス処理することにより、該硬化薄膜の最表面層における該重量比を、該硬化薄膜全体のケイ素に対するフッ素の重量比の80%未満とすることを特徴とする反射防止性物品の製造方法。
【請求項8】硬化薄膜が下記一般式(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物から得られるものであることを特徴とする特許請求の範囲第(7)項記載の反射防止性物品の製造方法。
(R1Q)SiXaY3-a (I)
(ここで、R1は炭素数1〜20個のフッ素含有アルキル基であってエーテル結合あるいはエステル結合を1個以上含んでいてもよい。Qは二価の有機基、Xは低級アルキル基、Yはハロゲン、アルコキシ基、又はRCOO-基(ただし、Rは水素原子又は低級アルキル基)、aは0または1の整数を示す。)
【請求項9】前記一般式(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物が、フッ素含有有機ポリシロキサン系薄膜中に10重量%以上含まれることを特徴とする特許請求の範囲第(8)項記載の反射防止性物品の製造方法。
【請求項10】硬化薄膜を、上記一般式、(I)で表わされるフッ素含有有機ケイ素化合物の加水分解物の加熱硬化によって得ることを特徴とする特許請求の範囲第(8)項記載の反射防止性物品の製造方法。
【請求項11】活性化ガス処理が、プラズマ処理および/またはコロナ放電処理であることを特徴とする特許請求の範囲第(7)項記載の反射防止性物品の製造方法。

【公告番号】特公平6−98703
【公告日】平成6年(1994)12月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭62−272338
【出願日】昭和62年(1987)10月28日
【公開番号】特開昭64−1527
【公開日】昭和64年(1989)1月5日
【審判番号】平4−5202
【出願人】(999999999)東レ株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭60−88901(JP,A)
【文献】特開昭58−167448(JP,A)
【文献】特開昭58−211701(JP,A)
【文献】特開昭59−26944(JP,A)