説明

反射防止特性および防曇特性を有するコーティング組成物

【課題】反射防止特性および防曇特性を自己が塗布される支持体に付与する塗料を提供する。
【解決手段】本発明の塗料は、特定のアニオン界面活性剤と組み合わせて無機金属酸化物を使用する。本発明の塗料は、使い捨ての外科用マスクおよびフェイスシールドを製造する場合に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、コーティング組成物(「塗料」ともいう)と、非常に低い反射特性および卓抜な防曇特性を高湿度条件下でも有する光学的に明澄な物品を製造する方法とに関する。こうした特性は、個人を保護するために使用されるフェイスシールド、眼鏡レンズ、建築用透明板ガラス、窓、自動車用フロントガラスなどの物品に所望される。
【背景技術】
【0002】
光学的に透明な物品をまぶしく光らせたり、その物品の表面上に曇が生じることによって見えにくくなる傾向を抑制することができる場合、物品が改善される例は数多い。例えば、眼球保護着用物(ゴーグル、フェイスシールド、ヘルメットなど)、眼鏡レンズ、建築用透明板ガラス、化粧ガラスフレーム、自動車用窓および風防はすべて、不愉快で紛らわしいまぶしさを生じさせる方法で光を反射させる場合がある。こうした物品を使用すると、物品の表面が水蒸気によって曇ることで不利益な影響を受けることがある。
【0003】
まぶしさは、光が入射する表面から望ましくない光が反射することである。一般に、まぶしさは、物品を透過する光の量を増加させ、反射に用いられる光の量を減少させることによって低減することができる。あるいは、物品の表面を改質(荒加工、型押しなど)を行い、光をより任意に反射させることでまぶしさを低減させることができる。
【0004】
光の透過パーセントを有意に増加し、かつ、非常に低い反射率を有する物品提供する塗料(反射防止塗料)は、当該分野において知られている。例えば、Lange et al.による米国特許第4,816,333号(この特許は、3Mに譲渡されている)には、シリカ粒子から成る反射防止塗料を開示されている。塗料溶液は、その塗料溶液の湿潤性を改善するためのコロイドシリカ粒子および任意な界面活性剤(「TritonTMX−100」および「TergitolTMTMN−6」)を含む。米国特許第4,374,158号(Taniguchi et al.)には、気相処理技術を用いる反射防止塗料が開示されている。この塗料は、シリコーンタイプの界面活性剤などの界面調節剤を任意に含んでいても良い。さまざまなそのほかのタイプの反射防止塗料は、米国特許第2,366,516号、第3,301,701号、第3,833,368号、第4,190,321号、第4,271,210号、第4,273,826号、第4,346,131号および第4,409,285号、と、Cathro et al.著、「Silica Low−Reflection Coatings for Collector Covers by a Dye−Coating Process」、Solar Energy Vol.32、No.5、pp.573−579(1984)と、J.D.Masso著、「Evaluation of Scratch Resistant and Anti−Reflective Coatings for Plastic Lesnes」、Porceedings of the 32nd Annual Technical Conference of the Society of Vaccum Coaters、Vol.32p.237−240(1989)とに開示されている。ただし、これらの反射防止塗料で耐久性防曇コーティングを形成する塗料はない。
【0005】
一般に、曇は、高湿度および高温の条件下で、または、温度差および湿度差が大きい境界面に生じる。表面が「曇る」傾向を低減すると言われている塗料(すなわち防曇塗料)が知られている。例えば、Leighによる米国特許第3,212,909号には、硫酸化脂肪質またはスルホン化脂肪質である界面活性剤を混合したアルキルアンモニウムカルボキシレートなどのアンモニウム石鹸を用いて防曇組成物を製造する方法が開示されている。Eliasによる米国特許第3,075,228号には、硫酸化アルキルアリールオキシポリアルコキシアルコールの塩やアルキルベンゼンスルホネートを使用して、洗浄および各種表面に防曇特性を付与するのに有用な防曇物品を製造する方法が開示されている。米国特許Zmodaによる第3,819,522号には、デシンジオールから成る誘導体を含む界面活性剤化合物や、エトキシレート化アルキルスルフェートを防曇窓洗浄剤の界面活性剤混合物に含む界面活性剤混合物を使用する方法が開示されている。
【0006】
日本国特開平6[1994]−41335には、コロイドアルミナ、コロイドシリカおよびアニオン界面活性剤を含む防曇組成物が開示されている。
【0007】
米国特許第4,478,909号(Taniguchi et al.)には、ポリビニルアルコール、微細に分割されたシリカ、および有機珪素化合物を含を含む硬化防曇コーティングフィルムが開示されており、炭素/珪素重量比はこのフィルムに関して報告される防曇特性に重要であると思われる。フッ素含有界面活性剤を含むさまざまな界面活性剤を用いて、コーティングの表面平滑性を改善することができる。
【0008】
界面活性剤を取り入れたその他の防曇塗料は、米国特許第2,803,522号、第3,022,178号、および、第3,897,356号に記載されている。「Anti−fog Antistat Eases Processing Prblems」、Modern Plastics、1988年10月には、アルキルスルホネートを含む帯電防止剤およびプラスチックフィルムに使用される防曇剤が記載されている。さらに、American Cyanamid Industrial Chemical Devisionは、「AerosolTM界面活性剤」(ジオクチルナトリウム−スルホスクシネート)を販売しており、この界面活性剤は、直接ガラスに塗布する防曇組成物を調製するために有用であると宣伝されている。
【0009】
物品が曇る傾向を低減する上述の塗料には、反射防止特性がない。さらに、一般に、従来技術の防曇組成物は、界面活性剤の濃度が高くなければならず(例えば、0.2重量パーセントを超える濃度、一般には、5重量パーセントを超える濃度でなければならない)、その他に用いる有機添加剤によって防曇効果が異なる。こうした高濃度で使用する場合には、表面活性剤およびその他の有機添加剤は、金属酸化物などの多孔質塗層によって提供される反射防止特性の妨害となり、著しく反射防止特性を低減させてしまう。
【0010】
防曇特性およびまぶしさ防止特性を有するものとして記載されているフェイスマスクおよびフェイスシールドが知られている。例えば、IREMA U.S.A、Chicopee、M.A.による「SHIELDMATE」が、米国特許第4,944,294号(Borek)に記載されている。病院用フェイスマスクは、ジメチルシロキサンポリマーなどの適切に防曇まぶしさ防止シリコーンで塗布された透明プラスチック保護めがねを含むマスクとして記載されている。
【0011】
国際特許出願第89/10106号(Russell)には、一体型外科用マスク/フェイスシールドが開示されている。このフェイスシールドは、米国特許第4,467,073号に記載されたような防曇塗料で被覆されている。こうした塗料は、例えば、ポリビニルピロリドン、界面活性剤、および硬化性イソシアネート官能性プレポリマーを組み合わせることによって製造される。さらに、Infection Control Products, Inc.は、「AGAFARTMAdjustable Flip−up Face Shield」をまぶしさ防止、防曇および反射防止シールドとして宣伝し、販売している。ただし、これらの製品は、多孔質塗料を利用しておらず、被覆物品の中で、透過する可視光線の量が未被覆物品を透過する可視光線の量よりも2乃至3パーセント以上多い物品はない。試料が透明である場合(すなわち、非吸光性で曇らない場合)、透過パーセントの増加は、反射パーセントの減少に対応することは理解されよう。したがって、防曇特性を塗料を塗布した支持体に付与し、支持体を通過する入射光の透過パーセントを増加させ、それに対応させて反射パーセントを減少させ、支持体が実際に「反射防止」性であるようにする塗料が必要である。
【発明の概要】
【0012】
発明の大要
本発明は、反射防止特性および防曇特性を自己で被覆される基材(支持体)に付与するコーティング組成物(塗料)を提供する。用語「反射防止性」は、本発明によるコーティング組成物で塗布される光透過性基材の透過パーセントが、未被覆基材よりも少なくとも3%大きいことを意味する。本発明によるコーティング組成物は、無機金属酸化物を、耐久性防曇特性を被覆基材に付与するが、多孔質金属酸化物によって提供される反射防止特性を損なわない濃度で存在する特定のアニオンシランと組み合わせて利用する。
本発明は、
(a)多孔質無機金属酸化物と、
(b)少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの共有結合された親水性アニオン基からなる界面活性剤とを含み、
(i)前記親水性基は、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、-P(O-)2、-OP(O-)2、(-SO2)2N-、-SO2N(R)-、(-SO2)2C-H,および-N+(R)2(CH2)xL'から成る群から選択され、Rは水素、置換されていないアルキル基、酸素、窒素および硫黄から成る群から独立に選択される原子で置換されるアルキル基、または、アルキレンカルボキシル基であり、アルキル基またはアルキレンカルボキシル基は約1乃至10個の炭素原子を含み、xは1乃至4であり、L’は、-OSO2O-、-SO2O-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、 -P(O)(O-)2および-CO-2から成る群から選択され、各アニオン基は少なくとも1つのカチオンと会合または共有結合し、カチオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Al+3、およびR"Aから成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は、界面活性剤分子に共有結合され、1乃至10個の炭素原子から成るアルキル架橋基であり、Aは、N+R3、酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、またはN+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成させる炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される3乃至7個の原子を含み、R基またはR’基は置換されてなくても、酸素、窒素または硫黄から独立に選択される原子で置換されていても良く、前記カチオンは、前記界面活性剤分子の実効電荷が中性であり、
(ii)前記疎水性基は、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含み、
光透過性基材(支持体)の少なくとも1つの面に塗布された場合に、
1)本願明細書に記載の湿潤試験に従って試験した場合に、少なくとも4mmの液滴直径を呈し、
2)前記支持体に未被覆支持体の550nmにおける透過パーセントよりも3%大きい550nmにおける透過パーセントを提供する、コーティング組成物を提供する。
【0013】
光透過支持体の少なくとも1つの面に塗布される好ましいコーティング組成物(塗料)は、支持体の光透過パーセントを5%、好ましくは、10%増加し、「蒸気」すなわち水で飽和した温風に暴露した場合にさえ曇に耐性を示す。防曇特性は、以下に記載するように促進老化条件に暴露された場合、保存性であり非常に緩慢に劣化する。理想的には、好ましい態様では、被覆物品は、卓抜な防曇特性を有し、550nmの光に対して96%を超える光透過パーセントを有する。
【0014】
本発明の組成物は、様々な支持体に様々な塗布方法によって塗布することができる。従って、本発明は、反射防止特性および防曇特性を有する外科用マスクおよびフェイスシールドなどの眼球保護着用物の他、めがねレンズ、窓、風防を提供する。
【0015】
本発明は、反射防止特性および防曇特性を支持体に付与する方法にも関する。本発明による方法は、支持体を提供する工程、上述の配合を有する塗料を調製する工程、塗料を支持体に塗布する工程、および、塗料を乾燥させる工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
反射防止特性
本発明の反射防止特性は、多孔質無機金属酸化物ネットワーク(網)によって提供される。より具体的には、本発明の塗料が支持体に塗布し乾燥した場合に、金属酸化物粒子から成る連続的で高多孔質ネットワークを提供する。本文に使用されるように、用語「連続的」は、目視可能な不連続部分または間隙がないコーティングに用いる言葉である。用語「ネットワーク(網)」は(本文で用いるように)、好ましくは互いに結合したコロイド粒子によって形成される多孔質三次元構造を意味する。このネットワークは、粒子/粒子、粒子/結合剤もしくは粒子結合剤/粒子接着剤、によって互いに維持され、単純な屈曲および/または被覆物品の使用によってフレーキングしない結着性を有するコーティングを提供する。
【0017】
用語「多孔質」は、無機金属酸化物粒子が互いに密集した場合に形成される粒子間の気孔が存在することに関して用いる言葉である。単層コーティングの場合、光学的透過支持体を介する光透過性を最大にし、その支持体による反射性を最小にするためには、コーティングの屈折率を支持体の屈折率の平方根にできるだけ等しくなるようにし、コーティングの厚さを入射光の光波長の4分の1(1/4)にしなければならないことが知られている。コーティングの気孔は、屈折率(IR)が、空気の屈折率(IR=1)から金属酸化物の屈折率(例えば、シリカの場合には、IR=1.44)に急激に変化する場合、多数の二次波長間隙を金属酸化物粒子間に提供する。多孔度を調節することによって、支持体の屈折率の平方根に極めて近い値に算出された屈折率(米国特許第4,816,333号(Lange et al.))を有するコーティングが得られる。最適な屈折率を有するコーティングを、入射光の光波長の約1/4に等しいコーティング厚さで用いることによって、被覆支持体を通過する透過パーセントは最低限になる。
【0018】
コーティングの気孔は、実質的に全体に存在するが、コーティングは、密度が一定でなくても良く、例えば、コーティングは支持体から離れるにつれて密度勾配が上がり、徐々に多孔質になってもよい。このような密度勾配は、コーティングの反射特性を高める。好ましくは、網は、約25乃至45容量パーセントの多孔率、より好ましくは約30乃至40重量パーセントの多孔率を、乾燥時に有する。多孔率は、W.L.bragg, A.B.Pippard,Acta Crystallographica, vol.6, p.865(1953)などに記載された手続きに従って、コーティングの屈折率から算出することができる。金属酸化物が二酸化珪素である場合、この多孔率から1.2乃至1.4、好ましくは1.25乃至1.36の屈折率を有するコーティングが得られるが、この屈折率はポリエステル支持体、ポリカーボネート支持体、またはポリメチルメタクリレート支持体の屈折率の平方根にほぼ等しい。例えば、1.25乃至1.36の屈折率を有する多孔質シリカコーティングを、ポリエチレンテレフタレート支持体に1000−1200Åの厚さで被覆した場合に、反射防止率の高い面(IR=1.64)を提供することができる。
【0019】
本発明の金属酸化物成分は、好ましくは、シリカ(本質的には二酸化珪素であり、その他の添加剤または不純物を含んでも含まなくてもよい)であるが、その代わりに、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化ジルコニウムや、それらの混合物および組み合わせであっても良い。金属酸化物粒子の直径は、効果的な反射防止特性を提供するためには、約200nm未満であることが望ましい。好ましくは、平均的な粒子の直径は、70nm未満、より好ましくは20nm未満、最も好ましくは、4nm乃至8nmである。粒子は、好ましくは球状であるが、不規則な形状および繊維状の球状などが可能である。金属酸化物濃度は、好ましくは、塗料溶液の約0.1乃至15重量パーセント、より好ましくは0.5乃至5重量パーセントである。約15重量パーセントを超える場合、塗料溶液を所望の厚さの範囲に約0.1重量パーセント未満で塗布することが困難になり、塗料を支持体に塗布してから乾燥するまでに極端に長い時間がかかる。本文に使用されるような用語「溶液」には、液状媒体中で微細に分割された無機金属酸化物粒子の分散液または懸濁液が挙げられる。
【0020】
金属酸化物は、微細に分割された固体無機金属酸化物粒子を水性液または有機液体を含むコロイド分散系(本文では「ゾル」と呼ばれる)として支持体に塗布されるのが最も好都合である。このゾルは、酸安定化または塩基安定化することができる。pH9乃至11を有する水酸化ナトリウム塩基安定化ゾルは、最も好ましく、NALCO Chemical Co.から市販の「NALCO1115」および「NALCO1130」、Remet Corp.,から市販の「Remasol SP30」、E.I.Du Pont de Nemours Co., Incから市販の「LUDOX SM」が挙げられる。
【0021】
防曇特性
本発明の塗料は、反射防止特性に加え、防曇特性をその塗料が塗布された支持体に提供する。コーティングは、直接人間の息を繰り返し吹きかけた後および/または「蒸気」噴射上に物品を保持した後、被覆支持体が小型の凝縮水滴が被覆支持体の透明度を有意に低減するために十分な密度で形成し、十分に見通すことができなくなるような場合に、考慮された防曇塗装である。さらに、塗料は、均一の水膜または少数の大型水滴が被覆支持体上に形成される場合でも、被覆支持体が容易に見通せないほど被覆支持体の透明度が有意に低減しない限り、防曇特性があると見なすことができる。多くの場合、支持体の透明度を有意に低減しない水膜は、支持体が「蒸気」噴霧に暴露された後でも、残留する。
【0022】
本発明の組成物は、特定の界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを取り込むによって防曇特性を誘導する。本文に用いられるように、用語「界面活性剤」は、本文に使用されるように、親水性(極性)領域および疎水性(非極性)領域を同一分子上に含み、塗料溶液の表面張力を減少させ、かつ、本発明の塗料を塗布した支持体または物品に防曇特性を付与するコーティングを提供できるために十分な大きさである分子を説明する言葉である。本発明の特定の界面活性剤は、同じ分子上に複数の親水性領域または疎水性領域を含む。
【0023】
有用な界面活性剤は、少なくとも1つの親水性アニオン基を含む。このアニオン基は、−OSO2-、−SO2-、−CO2-、 (−O)2P(O)O-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、−P(O-2、−OP(O-2、(−SO22-、−SO2N(R)-、(−SO22-Hまたは−N+(R)2(CH2xL',であっても良く、式中、Rは、水素、非置換アルキル基、酸素、窒素および硫黄から成る群から独立に選択される原子で置換されたアルキル基またはアルキレンカルボキシル基であり、これらのアルキル基またはアルキレン基は、約1乃至10炭素原子を含み、xは、1乃至4であり、L’は、−OSO2-、−SO2-、(−O)2P(O)-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、および−CO-2から成る群から選択される。各アニオン基は、界面活性剤分子の全アニオン電荷と界面活性剤分子の全カチオン電荷の比が1に等しくなるように、少なくとも1つのカチオンに会合し、界面活性剤の実効電荷を中性にする。カチオンは、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、ストロンチウム、およびR’’A基から成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素、約1個乃至10個の炭素原子から成るアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、AはN+3、任意に酸素原子、窒素原子、硫黄原子で置換されたグアニジニジウムイオン、またはN+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子から成る群から選択される3乃至7個の原子を含む。当然、2以上の電荷を有するカチオンは、SO42CaまたはSO32Mgなどの1つ以上のアニオンと会合する。アニオン基は、単独親水基であっても良いし、エステル基、チオエステル基、エーテル基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、ヒドロキシル基、アミン基、および、これらの基を含み約5,000未満、好ましくは約2,000の分子量を有するポリマー(例、ポリエトキシ化界面活性剤)などのその他の親水性基に共有結合させても良い。
【0024】
発明者らは、親水性基としてカルボキシレート基を有する有用なアニオン界面活性剤は、イオン形態の界面活性剤を安定化させることができる別の極性置換基をさらに含むことを発見した。好ましくは、付加的な極性置換基は、カルボキシレート基の炭素から除去される4個以下の原子である。付加される極性置換基は、好ましくはエーテル基、アミド基、アルコール基、カルボキシル基、エステル基、ウレア基、またはウレタン基である。
【0025】
本発明の界面活性剤のアニオン特性は、重要な1つである。発明者らは、エチレン酸化物およびプロピレン酸化物の反復単位に基づく界面活性剤(「PluronicTMBlock Copolymer Surfactants」および「TetronicTMBlock Copolymer Surfactants」、両者ともにBASF Corp., Performance Chemicals、Parsippany、New Jersey)の他、テトラメチルデシンジオールに基づく界面活性剤(Air Products and Chemicals, Inc.,allentown, Pennsylvaniaから市販の「Surfynol 104」)は、多孔質金属酸化物網と併用した場合に耐久性のある防曇コーティングを形成しないことを発見した。さらに、Union Carbide Chemical and Plastics Co., Industrial Chemicals Division, Danbury Connecticutから市販の「TergitolTMTMN−6」ポリエトキシ化アルコール、同じくUnion Carbideから市販の「TRITONTMX−100」などのポリエトキシ化アルキルフェノール、および、Rhone−Poulenc,Surfactant and Speciality Division, Dalton, Georgiaから市販の「Rhodamox LO」などのアミン酸化物は、多孔質金属酸化物網と併用した場合には耐久性のある防曇コーティングを形成しない。3−ラウレンアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトスルフェート(「CyastatTM LS Antistatic Agent」としてCytec Industries, Stamford,Conn.から市販)やミリスチルトリメチルアンモニウム臭化物も多孔質金属酸化物網と併用した場合には耐久性のある防曇コーティングを形成しない。
【0026】
有用な界面活性剤には、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖を含む少なくとも1つの疎水性基または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含む。ペルフルオロ化基を含む界面活性剤は、好ましくは、少なくとも6個の炭素を含むペルフルオロ化遊離基、より、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含む。ペルフルオロ化基を含まない界面活性剤は、少なくとも8個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を含む。
【0027】
室温で支持体に固定すべき本発明の界面活性剤には、好ましくは以下の特性の少なくとも1つを有する。
1.界面活性剤は、室温すなわち20℃、好ましくは30℃、最も好ましくは40℃を超える融点を有する。
2.界面活性剤は、相対的に水に不溶性である。好ましくは、界面活性剤は、23℃では、約10重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満、最も好ましくは0.1重量パーセントの水への溶解度を有する。相対的に不溶性の界面活性剤は、再水和、溶解、および再配向を高湿度条件でさえもしそうにないために、好ましい。
3.界面活性剤は、金属酸化物に共有結合することができる。界面活性剤自体は、金属酸化物に反応しても良いし、カップリング剤を使用して金属酸化物に化学的に結合させても良いが、これについては、以下にさらに詳しく説明する。
【0028】
界面活性剤の化学的特性
本発明を実践するのに有用なアニオン界面活性剤は、以下の一般構造:
【0029】
【化1】

【0030】
を有し、式中、Rは約3乃至18個の炭素原子のペルフルオロ化アルキル基またはペルフルオロ化シクロアルキル基、約3乃至18個の炭素原子を含むペルフルオロ化炭素原子および約0乃至30個の非フルオロ化炭素原子を含むポリエトキシ化ペルフルオロアルキル置換アルコールまたはポリエトキシ化ペルフルオロシクロアルキル置換アルコール、アルキル基またはアルケニル基が任意に酸素原子、窒素原子、硫黄原子をアルキル鎖またはアルケニル鎖内に含むかアルキル鎖またはアルケニル鎖上で置換されて含む約3乃至18個のペルフルオロ化炭素原子および約0乃至30個の非フルオロ化炭素原子から成るペルフルオロアルキル置換アルキル基またはアルケニル基、アルキル基またはアルケニル基が任意に酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子をアルキル鎖またはアルケニル鎖内に含むかアルキル鎖またはアルケニル鎖上で置換されて含む、約4乃至36個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基(直鎖または枝分かれ鎖)、アラルキル基が酸素原子、窒素原子、硫黄原子によって可能な位置に任意に独立に置換される約7乃至36個の炭素原子を有するアラルキル基、あるいは、アルキル基またはアラルキル基が約7乃至36個の炭素原子を含むポリエトキシ化アルキルまたはポリプロポキシ化アルキル、であり、
Lは、スルフェート基(−OSO2-)、スルホネート基(−SO2-)、ホスフェート基((−O)2P(O)O- または−OP(O)(O-2)、ホスホネート基(−P(O)(O-2)、スルホンアミド基((−SO22-)、スルホンアミド基(−SO2N(R’)-)、 カルボキシレート基(−CO2-)、ホスホニト基(−P(O-2)、ホスファイト基(−OP(O-2)、またはジスルホニルメチド基((−SO22-H)である。上述の基の両性アルキル形態も有用であり、式−N+(R’’’)2(CH2xL’を有する基などが挙げられ、R’’’は、水素原子、窒素原子、酸素原子または硫黄原子で任意に置換されるアルキル基またはアルキレン基、あるいは、アルキルカルボキシル基またはアルキレンカルボキシル基が約1乃至10個の炭素原子を含むアルキレンカルボキシル基であり、x=1乃至4であり、L’は、−OSO2-、−SO2-、(−O)2P(O)O-、−OP(O)(O-2、−P(O)(O-2、−CO-2、−P(O-2、または−OP(O-2であり、Lがカルボキシレートである場合、Rはカルボキシレート基から除去される4個以下、好ましくは、3個以下、の原子である付加的な極性ヘテロ原子または付加的な極性置換基を含み、前述の極性置換基は、エーテル基、アミド基、アルコール基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、ウレア基、もしくはウレタン基またはこれらの極性基を含むオリゴマーを含むそれらの組み合わせである。
【0031】
Mは、水素(H+)、ナトリウム(Na+)、カリウム(K+)、リチウム(Li+)、アンモニウム(NH4+)、カルシウム(Ca+2)、マグネシウム(Mg+2)、ストロンチウム(Sr+2)、アルミニウム(AL+3)、またはR’’A+であり、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、約1乃至10個の炭素原子のアルキル架橋基であり、A+は、N+3(例えば、N+(CH34、HN+(CH2CH2OH)3、H2N(CH2CH2OH)2)、酸素原子、窒素原子、硫黄原子で任意に置換されたグアニジニウムイオン、または、複素環式N+Bから成る群から選択され、Bは炭素原子、窒素原子、硫黄原子から選択される群から成るから選択され、窒素含有複素環式環を完成する3個乃至7個の原子を含み、RまたはR’基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子で可能な位置で置換することができ、
aおよびcは、独立に1または2であり、
bおよびdは、独立に、1、2、または3であり、
eは、(c×d)/b、または両性界面活性剤の場合には0である。Rがポリエトキシ化置換基もしくはポリプロポキシ化置換基またはエチレン酸化物およびプロピレン酸化物のコポリマーである場合、これらのポリマーサブユニットは、好ましくは1乃至100モル、好ましくは、界面活性剤の1モルあたり1乃至20モルの量で存在する。
【0032】
以下のアニオン界面活性剤クラスおよびアニオン界面活性剤は、本発明の実践に個別または組み合わせて使用するのに特に有用である。
【0033】
1.ペルフルオロ脂肪族アニオン塩
このクラスに含まれる界面活性剤は、上述の一般式から成り、
R = CF3CnF2n-
であり、nは約2乃至17、好ましくは約3乃至12の範囲内である。
【0034】
このクラスの好ましい界面活性剤は、アニオンペルフルオロ脂肪族遊離基含有化合物から成るリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩である。特に好ましいリチウム塩には、
【0035】
【化2】

【0036】
有用なリチウム塩は、米国特許第2,732,398号(Brice et al)。米国特許第2,809,990号(Brown)などに開示されている技術に従って生成される。アニオンペルフルオロ脂肪族遊離基含有化合物から成る市販のリチウム塩の例は、3M Company、St.Paul、Minesotaから入手できる「FluoradTMFC−122」、「FluoradTMFC−123」および「FluoradTMFC−124Flyorochmiczal Surfactants」が挙げられる。
【0037】
好ましいカリウム塩には、
【化3】

【0038】
が挙げられ、nは約3乃至18であり、これらの塩の混合物も好ましい。
【0039】
有用なカリウム塩は、米国特許第2,809,990(Brown)などに開示される技術に従って生成される。市販のカリウム塩の例には、3Mから入手可能な「FluoradTMFC−127」、「FluoradTMFC−129」および「FluoraTMFC−95 Fluorochemical Surfactant」が挙げられる。
【0040】
2.ペルフルオロ化遊離基置換脂肪族アニオン塩
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で記載され、
式中、
R=(Cn2n+1z2
であり、nは約2乃至36、好ましくは6乃至12であり、
2は、約2乃至36個の炭素原子を有し、可能な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子で任意に独立に置換された枝分かれ鎖状または直鎖状のアルキレンまたはアラルキレンであり、R2基は、Rが少なくとも7個の炭素原子を含むように選択され、
zは約1乃至3であり、好ましくは約1または2である。
このクラスの市販の塩には、「ZonylTMFSA Fluorosurfactant」が(F(CF2CF23-8CH2CH2SCH2CH2CO2-Li+)および「ZonylTMFSE Fluorosurfactant」(DuPont de Meours and Co.から入手できるF(CF2CF23-8CH2CH2OP(O)(O-NH4+2 と[F(CF2CF23-8CH2CH2O]2P(O)(O-NH4+)との混合物が挙げられる。
【0041】
3.直鎖状または枝分かれ鎖状の脂肪族スルフェートおよびスルホネート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
R=Cn2n+1(R2m-
であり、この式中、
nは約4乃至36であり、
2は、炭素原子約1乃至36個を有する枝分かれ鎖状または直鎖状のアルキル基またはアラルキル基であり、可能な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子と任意に独立に交換され、
mは0または1であり、
Lは、SO3-またはSO4-である。このクラスの市販の界面活性剤の例には、ナトリウムドテシルスルフェートおよび「MackmamTMCS」
【0042】
【化4】

【0043】
が挙げられ、「coco」は、ヤシ脂肪酸残基油由来のアルキル鎖長分子と、McIntyre Group Ltd.から入手できる「MackamTMCBS−50Amphoteric」と、Hoechst Cleanse Corp.から入手可能な「Hostastat HS−1」(C10-1821-39SO3-Na+)との混合物を意味する。
【0044】
4.直鎖状または枝分かれ鎖状の脂肪族アルコールおよびカルボキシル酸のポリエトキシレート誘導体のスルフェート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式から成り、式中
R = CnH2n+1(CO)pO(CH2CH2O)yCH2CH2-、
nは、約4−36であり、
pは、0または1であり、
yは、約1−100であり、好ましくは、1乃至20であり、
LはSO4-である。
このクラスの市販の界面活性剤の例は、Stepan Co.から入手できる「Steol CA−460」(C1225O(CH2CH2O)12SO3-Na+)が挙げられる。
【0045】
5.アルキルベンゼンまたはアルキルナフタレンのスルホネートおよびホスフェート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式から成り、式中、
R = (CnH2n+1)qC6H5-q- または
(CnH2n+1)qC10H7-q-
であり、この式中、
nは約4乃至36、好ましくは、8乃至22であり、
qは、1乃至3、好ましくは1または2であり、
Lは、SO3-またはSO4-である。
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Rhone−Poulenc Co.から入手可能である「RhocalTMDS−10」(ナトリウムラウリルベンゼンスルホネート)、Stepan Co.から入手可能な「PolystepTMA−16」(C1223−C66−SO-3Na+)、Olin Corp.から入手可能な「PolystepTMA−15」、「Poly−TergentTM2EP」が挙げられる。
【0046】
6.エトキシレート化アルキルアルコールカルボキシレートおよびエトキシレート化アラルキルアルコールカルボキシレートならびにポリエトキシ化アルキルアルコールカルボキシレートおよびポリエトキシ化アラルキルアルコールカルボキシレート
このクラスの界面活性剤は、上述した一般式から成り、
R = (CnH2n+1)q(C6H5-q)mO(CH2CH2O)yCH2-であり、
式中、nは約4乃至36、好ましくは8乃至22であり、
mは0または1であり、
qは1または2好ましくは1であり、yは約1乃至100好ましくは1乃至20であり、
LはCO2-である。
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Sandoz Chemicals, Corp.から入手可能な「SandopanLS−24カルボキシレート界面活性剤」(C1225O(CH2CH2O)12CH2COO-Na+)、「SandopanLS−24カルボキシレート界面活性剤」、「SandopanL8−HCカルボキシレート界面活性剤」、「SandopanLA−8カルボキシレート界面活性剤」(C1225O(CH2CH2O)4CH2COO-Na+)が挙げられる。
【0047】
7.グリシネート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
R = R2-C(O)N(R3)CH2-
であり、
2は、4乃至36個、好ましくは8乃至22個の炭素原子から成る枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基または約7乃至36個、好ましくは、約12乃至22個の炭素原子から成るアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、任意に独立に可能な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子で置換され、
3は、水素原子または可能な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子によって任意に独立に置換される約1乃至10個の炭素原子から成るアルキル基であり、
LはCO2-である。
このクラスの好ましい界面活性剤の例は、アルキルサルコシネートおよびアルキルグリシネートである。このクラスの市販の界面活性剤の例には、HamsphireTMChemical Co.から入手可能なCo.「HamsphireTMC−30」(coco−C(O)N(CH3)CH2COO-Na+)、McIntyre Groupから入手可能な「MackanTMAmphoteric」(ジヒドロキシエチル獣脂グリシネート)などが挙げられる。
【0048】
8.スルホスクシネート
この種の界面活性剤は、上述の一般式から成り、
【化5】

【0049】
であり式中、R2は、枝分かれ鎖または直鎖状であり約4乃至36個、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含むアルキル基、または、約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、独立に可能な位置で酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子によって置換され、
LはSO3-である。
【0050】
このクラスの好ましい界面活性剤の例は、ジアルキルスルホコハク酸である。このクラスの市販の界面活性剤の例は、Cytec Industriesから入手可能な「AerosolTMOT Surface Active Agent」(C817OC(O)-CH(SO3-Na+)CH2C(O)O−C817)、「AerosolTMTR Surcace Active Agent」(C1327−OC(O)O−CH(SO3-Na+)CH2C(O)O−C1327)が挙げられる。
【0051】
9.イセチオネート誘導体
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、
R = R2-C(O)OCH2CH2-であり、
式中、R2は、約4乃至36個の炭素原子、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基でありまたは約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は酸素原子、窒素原子、硫黄原子で任意に独立に置換され、
Lは、SO-3である。
このクラスの市販の界面活性剤の例は、GAF Corp.、New York、New Yorkから入手可能な「IgeponTMAC−78」(ナトリウムイセチオネートを含むヤシ酸エステル)が挙げられる。
【0052】
10.N−アシルタウリン誘導体
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、
R = R2-C(O)-N(R3)CH2CH2-
であり、式中、R2は、約4乃至36個の炭素原子、好ましくは8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基または約8乃至22個の炭素原子、好ましくは約7乃至36個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、可能な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子で任意に独立に置換され、
3は、水素原子または可能な位置で酸素原子、窒素原子、硫黄原子によって任意に独立に置換され得る約1個乃至10個の炭素を含むアルキル基であり、
L = SO3-
このクラスの市販の界面活性剤の例には、GAF Corp.から「IgeponTMT−77」(ナトリウムN−メチル−N−オレイルタウレート)が挙げられる。
【0053】
11.両性アルキルカルボキシレート
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中、
Lは、
【0054】
【化6】

であり、R4は水素または
【0055】
約1乃至8個の炭素原子を含み、可能な位置で窒素原子、酸素原子、硫黄原子によって任意に置換されるアルキル基またはアルキレンカルボキシル基であり、xは1乃至4であり、
式中、Rは約4乃至36個の炭素原子を含む枝分かれ状または直鎖状のアルキル基または約7乃至36個の炭素原子を含むアラルキル基であり、アルキル基またはアラルキル基は、非置換基であるか、可能な位置で酸素原子、窒素原子、または硫黄原子で置換される。
【0056】
このクラスの好ましい例は、両性プロピオネート、アルキルベタイン、アリールベタインであり、任意に酸素原子、窒素原子、および/または硫黄原子で任意に置換される。このクラスの市販の界面活性剤の例には、Goldschmidt Chemical Corp.から入手可能な「TegoTMベタインF50(coco−C(O)NH−CH2CH2CH2-N+(CH32-CH2COO-)、McIntyre Group, Ltd.から入手可能な「MackamTMOB−30 Amphoteric」(C1834+(CH32CH2COO-)、「MackamTMHV Amphoteric」(C1834C(O)NHCH2CH2CH2+(CH32CH2COO-)、Rhone−Poulenc, CO.,から入手可能な「Miranol 2CIB」、Rhone−Poulenc Co.から入手可能な「MirataneTMAP−C」(coco2−N+H−CH2CH2COO-)が挙げられる。
【0057】
12.アルキルホスフェートモノエステルまたはアルキルホスフェートジエステル
このクラスの界面活性剤は、上述の一般式で示され、式中
R = R2O(CH2CH2O)vCH2CH2-であり、
2は、約4乃至36炭素原子、好ましくは、8乃至22個の炭素原子を含む枝分かれ状もしくは直鎖状のアルキル基、または約7乃至36個の炭素原子、好ましくは12乃至22個の炭素原子を含むアラルキル基であり、可能な位置で酸素原子、窒素原子、炭素原子で任意に置換されており、
vは0乃至100、好ましくは0−20であり、
Lは、PO4-2またはPO4-である。
このクラスの市販の界面活性剤の例には、Rhone−Poulencから入手可能な「RhodafacTMMC−470」(エトキシレート化ドデシルアルコールホスフェートエステル、ナトリウム塩)、Speciality Industrial Products, Inc,Spartanburg, South Carolinaから入手可能な「Sepostat0012」(C1225OP(O)(O-Na+2および「Sepostat0018」(C1837OP(O)(O-Na+2が挙げられる。
【0058】
発明者らは、本発明の界面活性剤を塗料に防曇特性を提供するのに効果的であり、しかも、無機金属酸化物によって得られる反射防止特性を損なわない濃度で使用することができることを発見した。コーティングの反射防止特性は、界面活性剤またはその他の添加剤の一方または両方の手段によって減少させることができる。第1に、多量に界面活性剤を添加しすぎた場合は、コーティングの気孔率は減少するので、光の最大透過率に所望される屈折率を超えてコーティングの屈折率が増加する。第2に、界面活性剤または添加剤の屈折率自体が塗料の屈折率に影響しうる。一般に、塗料またはコーティング品質に悪影響を与えない界面活性剤の最高濃度が好ましい。屈折率が低い界面活性剤は、重量を基準として高濃度で使用することができる。水中で被覆物品を洗浄または浸漬し、余分な界面活性剤またはその他の添加剤を除去することが望ましい。金属酸化物の一般的な濃度(例、約1乃至5重量パーセント)については、大部分の界面活性剤は、塗料の約0.15重量パーセント未満、好ましくは約0.003乃至0.05重量パーセント、最も好ましくは0.01乃至0.05重量パーセントを、コーティングの反射特性を保持するために含む。ある種の界面活性剤の場合、防曇特性を超える濃度では不均一なコーティングが形成されることに留意すべきである。
【0059】
界面活性剤は、金属酸化物塗料の一部として利用することもできるが、好ましくは、水性媒体またはヒドロアルコール媒体中に含めて、「保護被膜」として使用すること、すなわち、分離塗料溶液として予め付着させた金属酸化物コーティング上に塗布することができる。好ましくは、界面活性剤を直接金属酸化物ゾル塗料に添加し、コーティング処理を単純化して、金属酸化物層を引っ掻くあらゆるリスクを最小限にする。
【0060】
その他の添加剤
本発明の界面活性剤の多くは、防曇特性をフィルムに付与する他、溶液が均一に湿潤し、物品を被覆するように水性塗料溶液の表面張力を弱める。ただし、いくつかの例では、水性溶液またはヒドロアルコール溶液から得られた物品の均一なコーティングを確保するために、湿潤剤を添加することが有益であると思われ、こうした湿潤剤の例には、本文に記載される界面活性剤の多くの他、耐久性防曇特性を含まない界面活性剤が挙げられる。有用な湿潤剤の例には、ポリエトキシ化アルキルアルコール(ICI Amerias、Inc.から市販の「Brij30」および「Brij35」、Union Carbide Chemicals and Plastics Co.から市販の「TergitolTMTMN−6TMSpecialty Surfactant」など)、ポリエトキシ化アルキルフェノール(Union Carbide Chemical and Plastics Co.,から入手可能な「TritonTMX−100」およびBASF Corp.から入手可能な「Iconol NP−70」)、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(BASF,Corp.から市販の「TetronicTM1502 BlockCopolymer Surfactant」、「TetronicTM908 Block Copolymer Surfactant」、「PluronicTMF38block Copolymer Surfactant」)が挙げられる。当然、湿潤剤をコーティング反射防止特性または防曇特性を破壊しない程度に含めなければならない。一般に、湿潤剤は、塗料の約0.10重量パーセントまでの量で使用するが、無機金属酸化物の量によって異なる。好ましくは、湿潤剤は、塗料に対して0.05重量パーセント未満、より好ましくは0.03重量パーセント未満の量で存在する。あるいは、塗料溶液中に低級アルコール(C1−C8)を湿潤性を改善する際に有用であることがわかっている。
【0061】
本発明の塗料は、界面活性剤を金属酸化物に共有結合させることができるカップリング剤を含む。いくつかのカップリング剤は、特定の官能基と塗布すべき物品上で反応することができる。結果的に、カップリング剤は、塗料が支持体に接着するのを促進させることができる。カップリング剤は、少なくとも2つの反応性官能基を有する。1つ目の反応性官能基は、金属酸化物に共有結合することができ、2つ目の反応性官能基は、界面活性剤に共有結合することができる。例えば、ある化合物(界面活性剤、カップリング剤、または金属酸化物)に存在するアミノ基、ヒドロキシル基、メルカプタン、アクリレート、およびメタクリレートなどの反応性官能基は、もう一方の化合物(カップリング剤または界面活性剤)に存在するオキシラン、クロロ−、ブロモ−、ヨード−、アルキル基、アジリジン、無水物、アクリレート、メタクリレート、またはイソシアネト基などの相補的反応性官能基と反応することができる。2つ以上のカップリング剤を使用しても良い。例えば、互いに共有結合することができる2種類のカップリンク剤を、一方のカップリンク剤が金属酸化物に共有結合することができ、もう一方のカップリンク剤が界面活性剤に共有結合する場合に、使用することができる。
【0062】
有用なシランカップリンク剤には、以下の式を有するカップリンク剤を含み、
【0063】
【化7】

【0064】
が挙げられ、式中、
5は、約1乃至20個の炭素原子を有する置換または非置換の二価の炭化水素架橋基であり、任意に、−O−基、−C(O)−基、−S−基、−SO2−基および−NR62−基から成る群から選択される1乃至5個の部分を骨格内に含み、任意に−OH、−SH、または−NR62によって骨格上で置換されており、R6は、水素、アセチル基、1乃至6個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
Xは、−OR8であり、R8は、1乃至8個の炭素原子を含むアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアラルキル基であり、好ましくは、メチル基またはエチル基であり、あるいはXは、−N=C(R92であり、R9は、独立に1乃至8個の炭素原子を有し、
7は、独立に、酸素原子、窒素原子および/または硫黄原子によって可能な位置で任意に置換される1乃至8個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルコキシ基であり、
fは、0、1、または、2であり、
gは、2または3であり、
Qは、支持体または界面活性剤の表面で相補的官能基に反応することができる反応性官能基である。Qの例は、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプタン、オキシラン、クロロアルキル基、ヨードアルキル基、およびブロモアルキル基、アジリジン、環状カルボキシル無水物、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、アジド、およびイソシアナト基などが挙げられる。カップリンク剤が、本発明の塗料に(塩基安定化ゾルとともに)存在する場合、カップリンク剤が加水分解し、1つ以上の「X」基または「OR2」基が、シラノールまたはシラノレートに転化することは、理解されたい。
【0065】
好ましいシランは、次の構造:
(Q)f-R5-Si(OR8)3
を有し、式中、Qは好ましくは、一次エポキシ、二次エポキシ、または、アミノ基であり、R5およびR8は上述した通りである。
【0066】
両性官能性シランカップリング剤に関する別の情報は、欧州特許第0,372,756A2号に見受けられる。あるいは、カップリング剤は、Du Pontから市販の「TyzorTM Titanate」などのチタネート化合物またはジルコネート化合物であっても良い。
【0067】
塗料に含まれる化合物の量は、塗料のコーティングの反射防止特性または防曇特性の低下を防ぐために、制限すべきである。最適な量のカップリンク剤は、容易に実験的に決定され、カップリンク剤の素性、分子量、屈折率によって決まる。カップリンク剤は、存在する場合には、金属酸化物の重量パーセントで0.1乃至20重量パーセントの濃度で、より好ましくは金属酸化物の約1乃至10重量パーセントの組成物に添加する。テトラエチルオルトシリケート(TEOS)などのテトラアルコキシカップリンク剤や、アルキルシリケート(ポリ(ジエトキシシロキサン)など)も金属酸化物粒子を改善するために有用であろう。
【0068】
金属酸化物と結合し、かつ、本発明の防曇コーティングの耐久性を改善することができる別の材料は、それ自体が防曇特性を支持体または自己を用いて塗布される物品に提供することができる特定のアニオンシラン(後述)である。こうした好ましいアニオンシランは、本願明細書と同日に出願された代理人の整理番号第51197USA8Aの共通に譲渡された係属米国特許出願に記載されている。本願明細書で使用される用語アニオンシランは、オルガノシラノールに加水分解した後、有機官能性シロキサンオリゴマーに縮合することができる有機官能性シリコン含有化合物を説明する言葉である。
【0069】
本発明の溶液および組成物に有用な好ましいアニオンシラン化合物は、以下の一般式:
【0070】
【化8】

【0071】
を有し、式中、Qは、ヒドロキシル基、1乃至約4個の炭素原子を含むアルキル基、および、1乃至約4個の炭素原子を含むアルコキシ基から成る群から選択され、
Jは、水素、アルカリ金属、および、約150未満の平均分子量および約11を超えるpKaを有する強塩基から成る有機カチオンから成る群から誘導されるカチオンから選択され、
Xは、有機結合基であり、
Zは、−OSO2-、−SO2-、−CO2-、(−O)2P(O)O-、−P(O)(O-2、−OP(O)(O-2、−P(O-2、および−OP(O-2から成る群から選択され、
Yは、水素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、約200未満の平均分子量および約8乃至11pKaを有する弱塩基の有機カチオン(HN+(CH2CH2CH2OH)3やH2+(CH2CH2OH2)など)、約150未満の平均分子量および約11を超えるpKaを有する強塩基の有機カチオン、置換グアニジンおよび非置換グアジニン、四アンモニウムカチオン(N+(CH34、N+(CH2CH34やN+4など)から成る群から誘導され、Jが水素である場合に、アルカリ土類金属および前述の有機性の有機弱塩基から選択される場合に、Yが水素であるものとし、
rはYの原子価に等しく1乃至3であり、
hは1または2であり、
iは、1または2であり、
tは、1乃至3である。
【0072】
好ましくは、Zはスルホネート(−SO2-)またはホスホネート(−P(O)(O-2)またはカルボキシレート(−CO2-)であり、より好ましくはスルホネートおよびホスホネートであり、好ましいアニオンシランは、Beckによる米国特許第4,235,638に開示されるスルホナートオルガノシラノールなどのオルガノシラノールである。あるいは、アニオンシランは、米国特許第3,816,184号、第4,344,860号、または4,370,255号に開示されるアニオンシランであっても良い。有機結合基Xは、好ましくは、アルキレン基、シクロアルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、ヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基、モノオキサ骨格置換基を有する二価の炭化水素基、チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、モノオキサ−チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、ジオキサ−チア骨格置換基を有する二価の炭化水素基、アリーレン基、アルカリアルキレン基、アルキルアリーレン基、アルキルアリーレン基から選択されるが、これらすべての基は、窒素、酸素、および/または硫黄原子によって置換することができ、それらすべてのX基は、約1乃至20個、好ましくは1乃至6個のの炭素原子を含む。最も好ましいXは、アルキレン基、ヒドロキシ置換アルキレン基、およびヒドロキシ置換モノオキサアルキレン基である。
【0073】
最適な親水性を確保し、防曇特性の耐久性を最大限にするために、好ましいアニオンオルガノシラノールは、好ましくは、重量パーセントを基準として相対的に高いパーセントの酸素を有する。好ましくは、酸素の重量パーセントは、少なくとも約30重量%であり、より好ましくは、約40重量%であり、最も好ましくは44乃至55重量%である。一般に、これらの化合物に含まれるシリコンの重量パーセントは、15重量パーセント以下である。これらの各割合は、無水の酸の形態に含まれる化合物の重量に基づく。一般に、オルガノシラノールスルホン酸(すなわち、Zが−SO3-でありYが水素である)の水性液またはヒドロアルコール溶液は、酸性であり、pHが約5未満であるが、一般に、オルガノシラノレートスルホネート塩は塩基性であり、pHが約9.0より大きい。好ましい塩基安定化金属酸化物ゾルが不安定化することを防止するには、オルガノシラノレート塩の形態が好ましい。
【0074】
アニオンオルガノシラノールは、金属酸化物および/または界面活性剤含有塗料として利用するか、「保護被膜」として使用すること、すなわち、予め付着させた金属酸化物および/または界面活性剤含有塗料上に塗布された分離塗料溶液として利用することができる。好ましくは、アニオンオルガノシラノールを直接に金属酸化物ゾル塗料に添加し、コーティング処理を単純化し、金属酸化物層を引掻くリスクを最低限にする。
【0075】
好ましいアニオンオルガノシラノールは、水性液またはヒドロアルコール溶液から塗布されることが最も好都合であるため部分的または完全にシラノール/シラノレート形態に加水分解することができ、アニオンオルガノシラノールから成るオリゴマーシロキサン形態を含むことができる。オルガノシラノールの濃度を金属酸化物の濃度に関して相対的に低く維持し、反射防止特性が低減するのを防止しなければならない。反射防止特性は、2つの手段の一方または両方によって低下することがある。まず、過量のオルガノシラノールを添加した場合にコーティングの多孔率(気孔率)が減少することによって、コーティングの屈折率は最大透過率の光に所望される屈折率よりも大きくなってしまう。第2に、シラン自体の屈折率は、シランの量が超過した場合には、コーティングの屈折率に影響を与えかねない。一般に、反射防止特性およびコーティングの品質に悪影響を及ぼさない最高濃度のアニオンシランが好ましい。好ましくは、アニオンシランは、金属酸化物の約5乃至50重量パーセントの濃度で塗料に添加する。より好ましくは、アニオンシランは、金属酸化物の約10乃至30%の濃度で塗料に添加し、コーティングの反射防止特性を維持する。任意に、乾燥コーティングを水洗いするかまたは水に浸漬し、多孔質金属酸化物に付着してはいるが接着されていない余分なシランまたはシロキサンオリゴマーを除去することができる。
【0076】
好ましいオルガノシラノールは、水性溶液またはヒドロアルコール溶液から最も好都合に適用されるので、部分的または完全にシラノール/シラノレート形態に加水分解することができ、アニオンオルガノシラノールのオリゴマーシロキサン形態を含み得る。オルガノシラノールの濃度は、反射防止特性が低減しないように金属酸化物濃度に対して相対的に低く維持しなければならない。反射防止特性は、2つの手段のうちの一方または両方で減少させることができる第1に、オルガノシラノールを過剰に添加した場合に、コーティングの多孔率(気孔率)は減少するため、コーティングの屈折率は、光の最大透過率に対して所望される屈折率を超える。また、シラン自体の屈折率は、シランの量が過剰になる場合に、コーティングの屈折率に影響する場合がある。一般に、反射防止特性またはコーティング品質に悪影響を与えない最高濃度アニオンシランが好ましい。アニオンシランは、金属酸化物に対して好ましくは約5乃至50重量パーセントである。より好ましくは、アニオンシランは、金属酸化物の約10乃至30重量パーセントで、コーティングの反射防止特性を保存するように添加する。
【0077】
本発明の塗料は、任意にポリマー結合剤を含み、引掻耐性および/または支持体に対する塗料の接着性を改善しても良い。有用なポリマー結合剤は、好ましくは水溶性または水膨潤性であり、ポリビニルアルコール、ポリビニル−N−ビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、ポリアクリレート、メタクリレート、ポリウレタンなどのエテン不飽和モノマーから成るポリマー、ポリエステル、スターチ、ゼラチン、ガム、セルロース、デキストラン、タンパク質などの天然ポリマー、上述に記載したポリマーのいずれかを基剤とした誘導体(イオン性、非イオン性)およびコポリマーが挙げられる。さらに、アルコキシシラン官能基を含むポリマーも有用であると思われる。塗料は、無機金属酸化物の重量に基づいて、ポリマー結合剤の約5重量パーセントまで含むことができる。有用な量のポリマー結合剤は、一般に、約0.05乃至0.5重量パーセントの範囲であれば、引掻耐性および塗料接着性を改善する。
プライマー塗料を塗布して支持体に対する塗料の接着性を改善することもできる。特に好ましいプライマー材料は、塩化ポリビニリデン(PVDC)である。
【0078】
物品
本発明の塗料を塗布することができる支持体は、好ましくは可視光線に対して透明または半透明である。好ましい支持体は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチメタクリレートなどのポリアリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロースアセテートブチレート、ガラスなど、それらのブレンドおよび積層品を含む)。一般に、支持体は、フィルム、シート、パネル、窓ガラスの材料の形態であり、めがねレンズ、建築用板ガラス、装飾ガラスフレーム、自動車用窓ガラス、風防、外科用マスクやフェイスシールドなどの眼球保護用着用物である。塗料は、必要に応じて物品の一部のみを被覆してもよく、例えば、フェイスシールドの目に直接隣接する部分のみを被覆しても良い。支持体は、平坦であっても湾曲していても、造形されていても良い。被覆すべき物品は、ブロー成形、押出成形、または射出成形によって製造することができる。
【0079】
本発明の反射防止防曇組成物で被覆される使い捨て用外科用フェイスマスクやフェイスマスクなどの物品は、この市膜は防曇特性を結果的に低減し得る環境的暴露および汚染を低減する使い捨てのパッケージに保管される。再使用可能な物品は、好ましくは使用しない場合には環境的暴露から製品を保護するか、完全に密封するパッケージと組み合わせて使用する。パッケージを形成するのに使用する材料は、非汚染材料から成るベきである。ある種の材料は、防曇特性を一部または完全に除去することが知られている。理論に制約はされないが、可塑剤、触媒、老化時に揮発し得るその他の低分子量材料は、塗料に収着されるため、防曇特性が低下する。例えば、ポリウレタンフォーム、可塑性塩化ポリビニル、低密度ポリウレタンなどのパッケージ材料は、特に、直接塗料に接触した場合、本発明の物品の防曇特性を著しく低下させることがわかっている。現在好ましいパッケージング材料は、漂白白色ボンド紙、厚紙、クレー被覆固形白色漂白スルフェート箱用板紙、ポリエステル、高密度ポリエレチン、またはポリスチレンから形成されるフィルムおよび/または積層品などの紙製品および漂白紙製品などが挙げられる。
【0080】
工程
本発明の組成物は、好ましくはバー塗装、ロール塗り、カーテン塗装、グラビア塗装、吹き付け塗り、浸漬塗装などの従来の技術を用いて物品に被覆する。好ましい方法には、厚さを調節するためのバー塗装およびロール塗り、またはエアナイフ塗装が挙げられる。均一なコーティングおよびフィルムの湿潤化を確実に行うために、支持体表面を酸化してからコロナ放電または火炎処理によって塗布することが好都合である。これらの方法は、支持体に対するコーティングの接着性を改善することもできる。物品の表面エネルギーを増加することができるその他の方法には、塩化ポリビニリデン(PVDC)などのプライマーを使用する方法が挙げられる。本発明の塗料は、好ましくは約200オングストローム未満の範囲、好ましくは100オングストローム未満だけ異なる均一な平均厚さで塗布し、塗料の色の変化を肉眼で確認できないようにする。最適な平均乾燥コーティング厚さは、塗料によって異なるが、一般には、Gaertner Scientific Corp Model No.L115Cなどの楕円偏光測定器を用いて測定されるように、500乃至2500オングストロームであり、好ましくは750乃至2000オングストロームであり、より好ましくは1000乃至1500オングストロームである。この範囲を下回ったりこの範囲を超えると、塗料の反射防止特性は著しく低下する。ただし、平均コーティング厚さは、均一であることが好ましいが、実際のコーティング厚さは、コーティングのある特定の点と別の点では相当異なる。厚さのこのような変化は、目視可能な離れた領域で相関した場合に、実際には、塗料の広域反射防止特性を実現することによって有益となる。
【0081】
本発明の塗料は、好ましくは支持体の両面に塗布する。あるいは、本発明の塗料を支持体の片面に塗布してもよい。支持体の反対面は、
a.被覆されていないか、
b.米国特許第2,803,552号、第3,075,228号、第3,819,552号、4,467,073号、4,944,294号に開示されているような従来の界面活性剤またはポリマー防曇性組成物であるか、または、
c.米国特許第4,816,333号に開示されている反射防止性組成物またはJ.D.Masso「Evaluation of Scratch Resistant and Anti−reflective Coatings for Plastic Lenses」(上述)に記載されている多層コーティングで被覆されていても良い。好ましくは、防曇コーティング面は、高湿度の面の方向に向いていることが望ましく、例えば、フェイスシールドについては、防曇性コーティングを有する面は、着用者側に向いていることが望ましい。
【0082】
一旦塗布した後、物品は、再循環オーブンで20℃乃至150℃の温度で乾燥させる。この温度を上昇させて乾燥工程速度を上げることもできるが、支持体の崩壊を避けるように注意が必要である。好ましい塗料は、好ましくは50℃乃至150℃、最も好ましくは100℃乃至110℃で乾燥させる。塗料を支持体に塗布して乾燥させた後、塗料は好ましくは約85乃至99.7重量パーセント(より好ましくは約88乃至95重量パーセント)の金属酸化物、約0.25乃至5重量パーセント(より好ましくは約0.2乃至2重量パーセント)の界面活性剤、約25重量パーセントまで(好ましくは5乃至15重量パーセント)のカップリンク剤、および、約5重量パーセントまで(好ましくは2重量パーセントまで)の湿潤剤を含む。
【0083】
本発明の塗料は、支持体に塗布され、反射防止特性を提供する場合に、まぶしさを被覆支持体の光の透過率を増加させることによって低減させる。好ましくは、被覆支持体は、550nm(ヒトの眼で明所視反応がピークを示す波長)で未被覆支持体と比較した場合に、光の透過率の少なくとも3パーセント、最大10パーセント程度まで、光の透過率を上昇させる。透過パーセントは、光の入射角および波長によって異なるが、ASTM試験法D1003−92の「Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics」を利用して測定する。好ましくは、被覆支持体は、550nmの光を用いて未被覆支持体と比較した場合に、3パーセントより大きい、好ましくは5パーセントより大きい、最も好ましくは8パーセントより大きい透過パーセントの増加を示す。所望の使用方法が、相当「軸外」(すなわち非常態)の目視または望まない反射に関わる場合、視感度の利得は、反射が視界の対象物に達するかまたは視界の対象物の明度を超える場合、特に大きくなる。
【0084】
本発明の塗料は、上述したように、防曇特性の他に反射防止特性も、それを塗布した表面に提供する。防曇特性は、塗料が液滴を形成するのに抵抗し被覆支持体の清透度もしくは透明性を相当低減させる傾向があることによって証明される。例えば、ヒトの吐息に含まれる水蒸気は、水滴としてよりも、薄い均一の水膜の形態で被覆支持体に凝縮する傾向がある。こうした均等な膜は、支持体の透明性を有意に低減することはない。例えば、以下の例で説明する「湿潤試験」を用いて、3μlの水滴を本発明の塗料で被覆させた支持体の表面に配置した場合、水滴は少なくとも約6mm、好ましくは7mm、最も好ましくは約8mmの初期直径まで拡散する。
本発明の塗料は、耐久性があり、保存性が高く、例えば、23℃で50パーセントの相対湿度に6週間まで暴露した場合にも有意な劣化を生じない。好ましい塗料は、30℃で60パーセントの相対湿度に暴露した場合に、再循環環境室(再循環速度=1.67容量/分)に少なくとも14日間、より好ましくは少なくとも21日間、最も好ましくは少なくとも28日間、各例に記載の「湿潤試験」に従って、3μlの液滴直径が少なくとも4mm、より好ましくは少なくとも5mmである。
【0085】

1乃至63および比較例A乃至AHの防曇/反射防止組成物に存在する界面活性剤を以下の表1に記載する。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
【表6】

【0092】
【表7】

【0093】
【表8】

【0094】
【表9】

【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【0097】
例1乃至11および比較例A−C
例1乃至11の防曇/反射防止組成物および例A乃至Cの比較的な反射防止組成物を表2に示される量で表1に記載される各界面活性剤をRemet Corp., Chadwicks,NYから市販の「Remsol SP−30 sodium Stabilized Silica Sol」を30パーセント溶液、粒子サイズ70オングストローム、pH10として供給を脱イオン水に稀釈することによって調製される1.75重量パーセントのシリカを含有する分散系に添加することによって調製した。Union Carbide Chemical & Plastics Company, Danbury, CTから「A−187」として市販のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)カップリング剤を例11の分散系に0.18重量パーセントの濃度で添加した。この組成物を、エアナイフを有するロールコーターを用いて0.18mm(17mil)厚さの火炎処理ポリエチレンテレフタレートの両面に塗布し、乾燥コーティングの厚さを反射光(約1000乃至1200オングストローム)によって目視される場合に紫色乃至薄青色の色相を呈するように調節した。被覆フィルムを直ちに77℃で強制空気乾燥機を通過させた。オーブン内の滞留時間は、2分未満であった。試料は、被覆フィルム試料が製造された日に防曇耐性について評価した後(「初期曇」)、12日間貯蔵し約23℃および50パーセントの相対湿度の周囲条件に表面暴露して老化した後に、再度評価した。曇は、フィルムを口から約2.5cm離して維持しながら、フィルムに直接息を吹きかけることによって評価した。初期曇は、「優秀」、「良好」、「可」、および「不良」として、息をフィルムに吹きかけてからフィルムを通して見る相対能力によって主観的に測定した。以下の数値的等級を12日後の評価に使用した。「1」は、被覆フィルムが未被覆フィルムのように曇ることを意味し、「2」は、被覆フィルムが1乃至2回続けて息を吹きかけた後に曇ることを意味し、「3」は3回連続して息を吹きかけた後に被覆フィルムが軽度に曇ることを意味し、「4」は、4回直接息を吹きかけた後に極めて軽度に曇ることを意味し、「5」は、5回直接息を吹きかけた後には被覆フィルムが曇に耐性があることを意味する。結果は、表2に記録した。被覆フィルムのすべては、未被覆フィルムと視覚的に比較し表面模様付きのベージュ色の表面上に維持した場合に、有意により透明で反射防止性が高かった。
【0098】
【表12】

【0099】
結果についての考察: 比較例AおよびBの界面活性剤を含有する組成物で被覆されたフィルムは、初期には曇に耐性があったが、わずか12日間老化させただけで、容易に曇った。比較例Cに使用される界面活性剤を含む組成物で被覆されたフィルムは、初期および老化後に容易に曇った。例1乃至11の様々な界面活性剤を含む組成物で被覆された11枚のフィルムは、良好乃至優秀な耐性を初期および12日間の老化後に示した。
【0100】
例12乃至13および比較例D−I
例12および13の防曇/反射防止組成物ならびに比較例D乃至Iの比較的な反射防止組成物は、表3に示される量で表1に記載された種類の界面活性剤を、脱イオン水でNalco chemical Company, Naperville, ILから市販の「Nalco2326 Colloidal Silica as SiO2」(15重量パーセント、粒子サイズ50オングストローム)を稀釈することによって調製された1.25重量パーセントのシリカを含む分散系に添加することによって調製した。また、シランカップリング剤であり、Union Carbide Chemical & Plastics Companyから市販の「A−187」としてグリシドプロピルトリメトキシシラン(GPS)を比較例D−Iおよび例12の組成物に添加した。Union Carbide Chemical & Plastics Companyから「A1230」という有標非イオンシラン分散剤として市販の別のシランカップリング剤を例13の組成物に添加した。シランカップリング剤の量は、表3に記載した。組成物は、コーティング前に1時間に設置した。組成物は、第8番のMeyerバーを用いて0.18mm(7mil)厚さのPETフィルムの片面のみに人手によって塗布した。被覆フィルムは、オーブンで85℃で約5分間乾燥させた。フィルムの被覆面を、コーティング後約24時間してから曇について評価した。曇は、例1乃至11について12日老化後について記載された曇試験を用いて測定した。結果は表3に示す。
【0101】
【表13】

【0102】
結果の考察: 比較例D乃至Iの界面活性剤は、使用された比較的高濃度でさえ、防曇コーティングを形成することができなかった。
【0103】
例14乃至18
例14a乃至14c、15a乃至15c、16a乃至16c、17a乃至17c、および18a乃至18cは、表1に示される界面活性剤を表4に支持される濃度で、脱イオン水で「Remasol Sp−30 Sodium Stabilized Silica Sol」を稀釈することによって、調製された1.5重量パーセントのシリカを含有する50gの分散系に添加することによって製造した。組成物は、以下のように6番のMeyerバーを用いて火炎処理した20×30cm(7mil)厚さのPETフィルムの両面に被覆した。第一の面に塗布し、直ちに100℃で1乃至2分間乾燥させた。次に第2の面を被覆し、100℃で1乃至2分間乾燥させた。被覆フィルムは、例1乃至11の12日間後の曇について記載された試験を用いて塗布後約2日目に曇について評価した。結果は、表4に示す。
【0104】
【表14】

【0105】
結果の考察: 例14(a−c)および例18(a−c)には、不均一であった。例15および例16は、防曇特性があり、反射防止性であった。例14a−c、例15a−c、例16a−c、および例18a−cの塗料は、例1乃至11に記載される反射防止に関する視覚的比較を行い測定したように、反射防止面を提供した。計17Aのフィルムの反射防止特性の視覚的検査の結果は、不良であったが、例17bおよび例17cについては良好であり、おそらくは、界面活性剤の濃度が低かったためと思われる。
【0106】
例19乃至25
例19乃至25の防曇/反射防止組成物は、表1に示される界面活性剤を0.015重量パーセントの濃度で、「Remasol SP−30 Sodium Stabilized Silica Sol」とUnion Carbide Chemical & Plastics Companyから「A−187」として市販のカップリンク剤である0.25重量パーセントのGPSを稀釈することによって調製された2.5重量パーセントのシリカを含有する分散系に添加することによって製造した。この組成物は、例14乃至18に関して記載された火炎処理された20×30cm×0.18mm(7mil)厚さのPETフィルムの両面に塗布した。フィルムが曇る傾向に関する初期の測定は、以下のように行った。残りの試料は、再循環オーブンを49℃に維持して懸架した。フィルム試料は、6、10、16、20、26日の間隔で取り出し、以下の曇試験を行って曇る傾向について評価した。新しい試料を各期間毎に試験した。
【0107】
曇試験: 個々のフィルム試料を約5秒間蒸気上に保持した。「蒸気」(すなわち、飽和水蒸気)源は、倒立漏斗を備え、蒸気が直径約1.3cmの開口部を通じて液体面より約10乃至13cm上方に出るようにした沸騰脱イオン水の容器である。「蒸気」温度は、約55℃である。フィルム試料は、蒸気出口の約5−8cm上方に維持された。結果は、主観的に「良好」(フィルムが曇らなかった)、「微量」(若干量の曇を検出した)、「不良」(フィルムが曇った)として、試験中にフィルムを透かして見られる度合いによって、測定した。結果は、表5に示す。
【0108】
【表15】

【0109】
結果の考察: 被覆フィルムは、初期および老化してから少なくとも20日後に良好な防曇特性を示したが、例22の被覆フィルムは老化後16日目に若干曇った。すべての塗料は、例1乃至11に記載される反射防止特性に関する試験を用いて測定したように、反射防止面を提供した。
【0110】
例26
例26a乃至例26dの防曇/反射防止組成物は、Nalco Chmical Company Naperville,ILから市販の「Nalco1042 Colloidal silica as SiO2」の1.25重量パーセント分散系およびUnion Carbide Chemical & Plastics Companyから「A−187」として市販のシランカップリング剤である0.125重量パーセントのGPSに含めた例9の界面活性剤を用いて調製した。この界面活性剤を、表6に示す濃度でゾルの50gのアリコートに添加した。防曇/反射組成物を4時間放置してシランを加水分解させた。この残り時間は、コーティングの品質を結果的に改善したことが観察された。組成物は、例14乃至18に記載される20×30cm×0.18mm(7mil)厚さのPETフィルムの両面に被覆した。被覆フィルムをオーブンに入れて100℃約1乃至2分間乾燥させた。被覆フィルムの防曇特性は、例19乃至25に記載された曇試験を行って評価した。フィルムの防曇特性は、試料を光源に掲げて表面に模様のついたベージュ色の表面に対して暴露し、相対的な光透過性を未被覆フィルム上の有意な改善を意味する「良好」、未被覆フィルム上の若干の改善を意味する「並」、未被覆フィルムとほぼ同じであることを意味する「不良」として評価した。結果は、表6に記録した。
【0111】
【表16】

【0112】
結果の考察: 被覆フィルムは、優秀な防曇特性を有したが、界面活性剤の濃度が高くなれば、曇に対する耐性が良くなった。ただし、界面活性剤の濃度が増加するにつれて、反射防止特性は乏しくなり、この界面活性剤の最適な濃度は約0.03重量パーセントであることがわかった。
【0113】
例27−32
例27a乃至27c、28a乃至28c、29a乃至29c、30a乃至30cおよび31a乃至31cは、表1に示される界面活性剤を表7に示す量で、脱イオン水に含まれる「Remasol SP−30 Sodium Stavilized Silica Sol」の1.75重量パーセントの50gの分散系に添加することによって調製した。その組成物は、例14乃至18に関して記載されたようにコロナ放電処理された20cm×30cm×0.18mm(7mil)厚さのPETフィルムの両面に塗布された。初期曇は、例19−25に記載された曇試験を用いて評価したが、以下の等級を使用した。「0」は曇がないことを意味し、「1」は最低限の微量の曇を意味し、「2」は中程度の曇を意味し、「3」は重度の曇すなわち未被覆ポリエステルフィルムと同じ曇を意味する。コーティング品質は、視覚的に測定され、以下の等級を使用した。「非常に良好」は、視覚的にコーティングに欠陥がないことを意味し、「良好」はわずかながらコーティングが不均一であることを意味し、「むら」は、目視可能な非湿潤性のむらが観察されたことを意味し(界面活性剤の濃度または湿潤剤の濃度を変更する必要があることを示す)、「無湿潤」は、多くのコーティングむらがあることを意味する(界面活性剤を高濃度にするか、湿潤剤を塗料に添加しなければならないことを意味する)。結果は、表7に記録した。被覆フィルムの反射防止特性は、例26に記載されるように、視覚的観察によって定性的に測定した。
【0114】
【表17】

【0115】
結果の考察:
この結果は、この一連の界面活性剤については、より良好な湿潤性が高濃度の界面活性剤で達成されることを示す。例27(a)−(c)は、改善されたことを示し、例28(a)−(c)、29(a)−(c)、30(a)−(c)、31(a)−(c)および32(a9−(c)は、反射防止特性がかなり改善されたことを示した。すべての試料は、良好な初期防曇特性を有した。
【0116】
例33−41および比較例J−L
例33乃至42の防曇/反射防止組成物および比較例J乃至Lの反射防止組成物を以下のように調製した。コロイドシリカのマスターバッチを以下の量で「Remasol SP−30 Sodium Stabilized Silica Sol(30パーセント溶液)」と、Huls,Piscataway,NJから「G6720」として市販のGPSと、脱イオン水から調製した。
【0117】
材料 量(g)
脱イオン水 142,600
コロイドシリカ 8,840
GPS 265
【0118】
材料を記載した順番に、次の材料を添加するまでに最低限度の5分間混合しながら添加した。表1に記載の界面活性剤を表8に記載の量および濃度(脱イオン水)で18,900グラムのマスターバッチ溶液のアリコートに添加した。この組成物を30.5cm幅、0.18cm(7mil)厚さのコロナ放電処理PETフィルムに、例1および例11に記載のロールコーターおよびエアナイフを用いて塗布した。エアナイフは、約5乃至13cmの水の圧力で操作した。設定は、各組成物に従って変更し、乾燥後にコーティングが紫色乃至若干青色の色相を呈する所望の厚さを得るようにした。被覆フィルムは、直ちに強制空気オーブンに入れて77℃の温度に通した。オーブン内の滞留時間は、2分未満であった。第2の面は、同様の方法で、被覆した。塗料のすべてが、例26に記載された反射防止試験を行って測定されたように、反射防止面を提供した。コーティング品質は、視覚的に評価し、以下の等級を用いた。「優秀」は、視覚的にコーティングに欠陥がなく、均一な仕上げを意味し、「極めて良好」および「良好」は、わずかしかコーティングにむらがないことを意味し、「可」は、いくつかのコーティングむらがあることを意味し、「不良」は多数のコーティングむらがあることを意味する。結果は、表8に定性的に記録した。
【0119】
【表18】

【0120】
これらの被覆フィルムを、以下に述べる老化試験を行って老化させた。
【0121】
老化試験: 複数の被覆フィルム試料を5cm×5cmに切断した。細心の注意を払い、被覆フィルムが汚染されないように維持した。検査員は、綿製手袋を着用し、塗料を表面を汚染すると思われるパッケージ材料には置かなかった。マガジンは、ポリスチレンフォームコア/板紙から、板紙の1縁に切削された約1.3cmの深さおよび1.3cm離れたレザースリットによって形成される。被覆フィルム試料は、マガジン内に配置され、隣接試料に接触させず、実質的に試料の表面全体を環境に暴露した。試料を装填したマガジンを完全に空気を再循環しリサイクルすることができるオーブンに配置した。オーブンの条件は、1)1.67容量/分の再循環速度、2)30℃の温度、3)60パーセントの相対湿度である。試料によっては、曇の増加はオーブン内の空気の室によって表面が汚染される結果であることも考えられる。したがって、相対的な差は、実際の値よりも重要であると思われる。フィルム試料は、7日、14日、28日、56日および84日の一定の時間間隔で取り出し、以下の湿潤試験によって評価した。「初期」試料は、コーティング後24乃至48時間室温で放置した後評価した。
【0122】
湿潤試験: 各フィルム試料を試験前および試験時の最低8時間、23℃および50パーセントの相対湿度で、状態調節した。注意を払って、フィルム試料が確実に汚染されないようにし、かつ、確実に環境に対する暴露によって湿潤性が低下しないようにした。フィルム試料は、試験すべき面を上にして清潔で平坦な水平面に配置した。Pylam,Garden City, NYから市販の0.07重量パーセントの「Wool Fast Brilliant Red R.L. Dye」を含む脱イオン蒸留水の3μlの液滴を正確なシリンジから、シリンジを垂直に維持し、液滴を表面にわずかに接触させて、液滴が落下して表面に衝突しないようにすることによって、表面に静かに配置した。液滴を最大限に拡散させて、完全に乾燥させた。液滴の直径は、フィルムを予めさまざまな直径の円を正確に測った紙の上に配置することによって測定した。平均液滴直径を記録した。染料は、染料を用いない結果と比較することによって確認されたように、試験される界面活性剤系と相互作用しなかった。湿潤試験の結果は、表9に記録した。
【0123】
【表19】

【0124】
結果の考察: 未被覆のPETフィルムは、比較のために2.75mmの湿潤値を有した。例1乃至11に記載されたような実際に吐息をかける試験は、湿潤値が約4.1mmを下回ると、外科マスクとして使用するには許容できない曇が生じることを示した。本発明の界面活性剤は、この促進老化試験では、28日を超えても、また、複数の例で、56日を超えても、許容できる湿潤値を有する被覆フィルムを形成することを示した(曇に対する耐性を示した)。比較例K−Lは、14乃至28日の間に防曇特性を失い、比較例Jの被覆フィルムは14日までには防曇特性を失った。
【0125】
密封環境での老化
さまざまな界面活性剤の老化特性およびフィルムの汚染によってフィルムの特性を低下させるか否かについて、より詳しく理解するために、例33−35、38,40−41および比較例Jから得た被覆フィルムを、一晩(約12時間)かけて25℃/50パーセントの相対湿度で状態調節し、2組の密封ジャーに入れた。別個のジャーを異なる界面活性剤を含む被覆フィルムに使用した。セット1(乾燥)のジャーには、被覆フィルムのみを収容し、セット2のジャー(湿潤)には被覆フィルムおよび脱イオン水が完全に蒸発しないようにするのに十分な脱イオン水の小型バイアルを収容した。バイアル中の脱イオン水は、フィルムに直接接触しなかったが、高湿度の供給源として役立った。ジャーは、40℃のオーブンに入れて、フィルムを定期的に回収し、上述の湿潤試験を行った。結果は、乾燥老化については表10に湿潤老化については表11に記載した。本発明の界面活性剤を含む被覆フィルムは、密封室に維持した場合には、耐久性防曇剤として極めて優秀であった。曇特性は、56日後も有意には減少しなかった。比較例Jの湿潤性は、密封容器内では急速に低下した。理由にかかわらず、この結果は防曇特性が被覆フィルムの環境的な表面の汚染によるものであることを示すと考えられる。比較例の防曇特性の損失は、防曇特性が密封容器でも非常に急速に減少したことから考えて、その他の原因によるものと考えられる。
【0126】
【表20】

【0127】
【表21】

【0128】
比較例M−N
界面活性剤の調製
リチウムステアレートを、a)Fisher Scientific,Pitsburg, PA,から市販の2.2gの一水化水酸化リチウムを約60mlの水に溶解し、約80℃に加熱し、水酸化リチウムを完全に溶解させ、b)Fisher scientificから市販の142gのステアリン酸を、約80℃まで加熱し、そのステアリン酸を融解してから、Fisher Scientificから市販の約10mlのイソプロピルアルコールを添加して撹拌し、c)成分a)を成分b)に冷えないうちに添加し、撹拌して緩い分散系を生成し、引き続き撹拌しながら、分散系を冷却させた。生成塊を2度、約20mlの温水を添加し、濾紙で濾過し、これを繰り返すことによって洗浄した。洗浄した残分をフィルターに通過させて、余分な洗浄水を絞り出して、約45℃で風乾し、一定の重量にした。緩い微細な粉末が得られた。
【0129】
反射防止被覆フィルムの製造
2重量パーセントの界面活性剤溶液を1gの界面活性剤を49gの脱イオン水に溶解することによって製造した。1.75重量パーセントのシリカ固形分濃度を有するシリカゾルのマスターバッチを、46.67gの「remasol SP−30 Sodium Stabilized Silica Sol」(30パーセント溶液)を753.3gの脱イオン水に添加することによって調製した。比較例Mの反射防止組成物は、界面活性剤濃縮物を50gの稀釈シリカ分散系に混合することによって調製した。比較例Nの反射防止組成物は、例1に記載の界面活性剤を表12に示す量および濃度でリチウムステアレートの代わりに使用した以外では、同様に調製した。これらの組成物は、例14−18に記載したように塗布された。被覆フィルムを例33−42に記載したようにオーブンで老化し、例33−42に記載された湿潤試験を行い評価した。例34から得られた3枚の被覆フィルムを比較のために再評価した。結果は、表13に記録した。
【0130】
【表22】

【0131】
【表23】

【0132】
結果の考察: 結果は、ステアレート塩界面活性剤は、耐久性防曇コーティングを提供しなかったことを明確に示した。これらの結果は、例5のカルボキシレートと対称的であり、付加的な極性置換剤を界面活性剤がカルボキシレートである場合に含めることが重要であることを示した。
【0133】
例42
防曇/反射防止塗料は、以下を含むよう調製された。
【0134】
【表24】

【0135】
組成物は、一晩撹拌し、火炎処理された0.1mmポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、例1−11に記載の方法に従って塗布した。コーティング品質は、例33−41に記載のように評価され、「優秀」であることがわかった。被覆フィルムについても、例33−41に記載の湿潤試験を用いて防曇特性について評価した。被覆フィルムの両面は、7.2の平均液滴直径を、「初期」の時間間隔で評価した場合に示した。被覆フィルムおよび未被覆PETフィルムは、Coleman Instrument division, Oakbrook,IL.から市販の「Perkin−Elmer Spectraphotometer Model 552A」を用いて、反射防止特性について評価した。被覆フィルムおよび未被覆フィルムの透過パーセントは、表14に記録した。
【0136】
【表25】

【0137】
結果は、例42の被覆フィルムは、大型の平均液滴直径によって示されるように、卓抜の防曇特性と、未被覆フィルムを11−11.2%上回る光透過度とによって示されるように、卓抜の反射防止特性を有することを示した。
【0138】
例43乃至49および
比較例O乃至T
例43−49の防曇反射防止塗料および比較例O−Tの反射防止塗料は、3,437gの脱イオン水、2.0gの濃縮水酸化アンモニウム、326gの「Nalco 2326 Colloidal Silica」(Nalco chemical Co.)および4.24gの3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)カップリンク剤を含む原液を用いて調製した。表1に記載の0.1gの各種界面活性剤を200gの原液に添加し、各塗料を調製した。例45、46、および48の塗料ならびに比較例R、S、およびTに、湿潤剤であり、Union Carbide Chemicao &Co.,「Trition X−100」の0.6gの10%溶液も、後述の表15に示すように添加した。
【0139】
各塗料を、6番の線巻きロッド(Meyerバー)を用いて塩化ポリビニリデンを下塗りした0.1mm厚さのポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、約1,000オングストロームのコーティングを各面に提供した。被覆フィルムは、100℃で約1分間各面上で乾燥させ、室温まで冷却させた。次に、各被覆フィルムをその防曇特性について、以下の試験手続きを用いて評価した。すなわち、可変温度調節装置を有する実験室用撹拌熱盤と、500mlの水を含む1,000mlのガラスビーカーと、ビーカーのフレアーリムに倒立した状態で配置された10cm(4インチ)の直径のポリプロピレン漏斗と、漏斗の排水口の遠位端に固定された直径10cm(4インチ)のポリプロピレン管を含む装置を構成した。水を撹拌しながら沸騰するまで加熱することによって、「蒸気」を漏斗に固定した管から噴射させた。区度の遠位端の上7.6cm(3インチ)の「蒸気」温度は、約55℃であった。25.4cm×30.5cm(10×12インチ)の寸法の被覆フィルムを、管出口より7.6cm(3インチ)上方の「蒸気」噴射に合計約1秒間暴露した。次に、被覆支持体を観察し、凝縮した水蒸気の液滴が形成れ、有意に支持体の透明度を低下させ、容易に見通せなくなったかについて判定した。結果は、完全に曇らなかった試料が乾くまでにかかった時間も含めて表15に記録した。「透過率」(すなわち、未被覆支持体と比較した場合の被覆支持体の透過率のパーセント単位の増加)をASTNM試験方法D1003−61、ProdedureA(1988年に再認可)を用いて測定した。この結果についても、表15に記録した。
【0140】
【表26】

【0141】
表15のデータは、無機金属酸化物(シリカ)および本発明の界面活性剤(すなわち、ペルフルオロ脂肪族スルホンアミドカルボキシレート化合物のカリウム塩またはアニオンペルフルオロ脂肪族遊離基含有化合物のリチウム塩)を含む塗料は、それを塗布するフィルムに反射防止特性および防曇特性を提供する際に有益であることを示す。比較例O、P、Q、R、SおよびTの非イオンアルオロケミカル化合物を用いる塗料は、防曇特性を示さない。
【0142】
例50−52
比較例U−Y
例50−52に使用するための防曇/反射防止塗料および比較例U−Yに使用する反射防止塗料は、例43−49に記載されるように調製した。各組成物に使用される界面活性剤は、3M Companyから市販の「FluoradTMFC−95 fluorochemical Surfactant」であった。湿潤剤である「Triton X−100」の使用については、表16に示した。各組成物は、塩化ポリビニリデン(PVDC)を下塗りした0.1mm厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(例50および52ならびに比較例UおよびW)と下塗りしない0.1mm厚さのPETフィルム(例51および比較例V、X、Y)との両方に例43−49に記載の方法を用いて、6番(比較例U、V、W、X)および7番(例50−52および比較例Y)線巻きロッド(Meyerバー)を用いて、表16に示すように、塗布した。被覆フィルムを乾燥させ、例43−49に記載のように曇について評価した。結果は表16に示した。
【0143】
【表27】

【0144】
比較例U−Xは、6番のMeyerバーで被覆したフィルムが曇ったことを示す。比較例U−Xで再形成されたコーティングは、コーティングが金色の色相を示したことから薄いものと思われた。したがって、例50−52では、7番のMeyerバーを使用して、コーティングを厚くした。7番Meyerバーを用いる被覆フィルムは、良好な防曇フィルムであった。表16の結果は、PVDC下塗りPETまたは下塗り無しのPETでは、コーティング厚さが薄くなるにつれてもフィルムが示す曇は弱くなることを示す。この理由は、明らかではない。さらに、湿潤剤があるために、被覆フィルムの曇は、比較例Yと例51の曇りの結果を比較することによってわかるように、被覆フィルムの曇が増すように思われた。
【0145】
比較例UおよびVならびに例50および51を繰り返した(6番のMeyerバーを用いる)が、「Fluorad TM FC−95 Fluorochemical Surfactant」の濃度を0.05重量パーセント乃至0.04重量および0.02重量パーセントに調節した点では異なる。曇試験の結果は、比較例UおよびVならびに例50および51については表16に示す結果とまったく同じであり、界面活性剤の量を減少させても曇特性は変化しないことが証明された。
【0146】
例53−60
比較例Z−AC
塗料を例43−49に記載されたように調製した。あるバッチでは、シランカップリング剤であるアミノプロピルトリエトキシシラン(APS)を使用しなかった(例53−56)。別のバッチでは、シランカップリング剤APSの代わりに、「A−187」としてUnion carbide Chemical &Plastics Companyから市販のグリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用した(例57−60)。すべての組成物に使用される界面活性剤は、3M Companyから市販の「FluoradTM FC120 Fluorochemical Surfactant」であった。上述の組成物のバッチは、Union Carbide Chemical & Plastics Co.から市販の湿潤剤「TritionTMX−100」を用いた場合と用いない場合で行った。各塗料は、下塗りをしない0.1mm厚さのPETフィルムの両面に、6番(例53、55、57、および59ならびに比較例ZおよびAB)または7番(例54、56、58および6並びに比較例AAおよびCC)の線巻きロッドMayerバーを用いて塗布した。コーティングを乾燥し、曇特性を例43−49について記載されるように評価した。曇試験の結果は、表17に示した。
【0147】
【表28】

【0148】
シランカップリンク剤としてAPSを含む組成物(比較例Z、AA、ABおよびAC)を塗布したフィルムは、湿潤剤を添加する場合および添加しない場合に曇った。6番のMeyerバーを用いて塗布された被覆フィルム(比較例ZおよびAB)は、コーティングが金色の色相を示したことから薄いように思われ、7番Meyerバーで塗布した被覆フィルム(比較例AAおよびAC)を使用してよりコーティングを厚くして、紫色乃至青色の色相を示すようにした。コーティングの厚さに関わらず、APSを含む被覆フィルムは曇った。例50乃至52の「FluoradTMFC−95 Fluorochemical Surfactant」を含む被覆フィルムは、コーティング厚さは防曇特性に影響しなかった。「FluoradTMFC−120 Fluorochemical Surfactant」は、ペルフルオロ脂肪族スルホネートのアンモニウム塩である。理由に関わらず、APSなどの有機アミン塩基の存在下では、イオン交換は、アンモニアが除去され、かつ、ペルフルオロ化スルホネートのAPS塩が形成される加熱時に特に起こりやすい。APS塩は、効果的な防曇差性ではないように思われた。(APS)の不在下またはカップリンク剤GPSを用いる場合には、「FluoradTMFC−120 Fluorochemical Surfactant」は、湿潤剤を添加する添加しないに関わらず効果的な防曇剤であった(例53−60)。「TritionTMX−100」は、曇るのを防止する働きをせず、12日老化後の比較例Aに示される効果的な防曇界面ではなかった。
【0149】
例61−63
比較例AD−AH
塗料は、例43乃至49に記載されたように、調製した。理想的な塗料は、同一の塗料も調製したが、シランカップリンク剤であるAPSを用いなかった(例61−63および比較例AH)。湿潤剤を使用する場合には、「TritionTMX−100」を用いた。塗料は、下塗りのない火炎処理した0.1mm厚さのPETフィルムの両面に、7番の線巻きロッドMeyerバーを用いて塗布した。コーティングを乾燥させ、例43−49に記載のように曇について評価した。曇試験の結果は、表18に示した。
【0150】
【表29】

【0151】
界面活性剤C4F9SO3Hまたは「FluoradTM FC-93 Fluorochemical Surfactant」およびシランカップリンク剤としてAPSを塗布したフィルムは、湿潤剤の添加の有無に関係なく曇った(比較例AD、AE、AF、AG)。FC−93は、ペルフルオロ脂肪族スルホネートのアンモニウム塩であった。C4F9SO3Hは非常に強い酸である。これらの結果は、例53−60および比較例Z−ACの3M Companyから市販の「FluoradTM FC-120 Fluorochemical Surfactant」の結果と一致し、APSなどの有機塩基の存在下ではイオン交換が起こり、ペルフルオロ化スルホネートのAPS塩が形成されることが示されると思われる。ただし、付加的なアミン(APS)の不在下では、C4F9SO3Hまたは3M companyから市販の「FluoradTM FC-93 Fluorochemical Surfactant」は、極めて効果的な防曇剤であった。
【0152】
界面活性剤、C4F9SO3Hまたは「FluoradTM FC-93 Fluorochemical Surfactant」を含み、シランカップリング剤または湿潤剤を含むコーティング(例61および62)は、曇らなかった。湿潤剤をC4F9SO3Hを含む塗料(比較例AH)に添加すると、フィルムは曇るが、同じ湿潤剤を「FluoradTM FC-93 Fluorochemical Surfactant」を含む塗料に添加しても、曇らなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング組成物を塗布する表面を有する基材に反射防止特性および防曇特性を付与するコーティング組成物であって、
(a)多孔質無機金属酸化物を含み、
(b)少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性アニオン基を含む界面活性剤であって、
(i)前記親水性アニオン基は、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、-P(O-)2、-OP(O-)2、(-SO2)2N-、-SO2N(R)-、(-SO2)2C-H、および-N+(R)2(CH2)xL'から成る群から選択されるアニオンを含み、Rは水素、未置換のアルキル基または、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から成る群から独立に選択される原子で置換されたアルキル基、または、アルキレンカルボキシル基であり、アルキル基またはアルキレンカルボキシル基は、約1乃至10個の炭素原子を含み、xは1乃至4であり、L’は、-OSO2O-、-SO2O-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2および-CO-2から成る群から選択され、各アニオン基は、少なくとも1つのカチオンと会合または共有結合され、カチオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Al+3、およびR"A+から成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、かつ、炭素原子1乃至10個を含むアルキル架橋基であり、A+はN+3、酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、または、N+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から成る群から選択される3乃至7個の原子を含み、R基またはR’基は、いずれも置換されていなくても、酸素、窒素または硫黄から成る群から独立に選択される原子で置換されていても良く、前記カチオンは、前記界面活性剤分子の実効電荷が中性になるように選択され、
(ii)前記疎水性基は、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含む、界面活性剤を含む、コーティング組成物であって、
前記コーティング組成物は、光透過性基材の少なくとも1つの面に塗布し乾燥させた場合に、
1)本文記載の湿潤試験に従って試験した場合に少なくとも約4mmの液滴直径を示し、
2)前記基材に、未被覆基材の550nmにおける透過パーセントよりも少なくとも3%大きい550nmにおける透過パーセントを提供する、コーティング組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤が以下の式:
[(R)aL-c]d(M+b)e
を有し、Rは、約3乃至18個のペルフルオロ化炭素原子を含むペルフルオロ化アルキル基またはシクロアルキル基、約3乃至18個のペルフルオロ化炭素原子および0乃至30個の非フルオロ化炭素原子を含むポリエトキシ化ペルフルオロアルキルまたはペルフルオロシクロアルキル置換アルコール、約3乃至18個のペルフルオロ化原子および約0乃至30個の非フルオロ化炭素原子を含み、アルキル基またはアルケニル基が置換されていないか、または、アルキル鎖もしくはアルケニル鎖内に位置するか、アルキル鎖もしくはアルケニル鎖上で置換された酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含むペルフルオロアルキル置換アルキルまたはアルケニル基、約4個乃至36個の炭素原子を含み、アルキル基またはアルケニル基が置換されていないか、アルキル鎖もしくはアルケニル鎖内に位置するかまたはその上で置換された酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含むアルキル基またはアルケニル基、約7乃至36個の炭素原子を含むアラルキル基であって、置換されていないか、可能な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子によって独立に置換されたアラルキル基、および、約7乃至36個の炭素原子を含むポリエトキシ化またはポリプロポキシ化アルキルまたはアラルキル基から成る群から選択され、
Lは、スルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基、ホスホネート基、スルホンイミド基、スルホンアミド基、カルボキシレート基、ホスホニト基、ホスファイト基およびジスルホニルメチド基ならびにそれらの両性アルキル形態から成る群から選択され、ただし、Lがカルボキシレートである場合に、前記界面活性剤分子が更なる極性ヘテロ原子または置換基を前記カルボキシレート基から4原子よりも遠くない位置に含むことを条件とし、前記極性置換基は、エーテル基、アミド基、アルコール基、カルボキシル基、エステル基、チオエステル基、ウレア基、およびウレタン基ならびにそれらの組み合わせから成る群から選択され、
Mは、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウムおよびR’’A+から成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキルまたはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、かつ、置換されていないか、可能な位置で酸素原子、窒素原子または硫黄原子で置換された約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル架橋基であり、A+は、N+3、酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、または、複素環式N+Bから成る群から選択され、Bは、窒素含有複素環式環を完成させる炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から成る群から選択された3乃至7個の原子を含み、
aおよびcは、独立に1または2であり、
bおよびdは、独立に1、2、または3であり、
eは、(c×d)/b、または0である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤は、アニオン性ペルフルオロ含有化合物のリチウム塩、ナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤は、0.15重量パーセント未満の濃度で存在する、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記無機金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化アンチモン、シリカ、酸化ジルコニウム、およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1記載のコーティング組成物。
【請求項6】
コーティング組成物を塗布する表面を有する基材に反射防止特性および防曇特性を付与するコーティング組成物であって、
(a)多孔質無機金属酸化物、および
(b)少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性アニオン基を含む界面活性剤であって、
(i)前記親水性アニオン基は、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、-P(O-)2、-OP(O-)2、(-SO2)2N-、-SO2N(R)-、(-SO2)2C-H、および-N+(R)2(CH2)xL'から成る群から選択され、Rは水素、置換されていないか、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子から成る群から選択される原子で独立に置換されたアルキル基、またはアルキレンカルボキシル基であり、アルキル基またはアルキレンカルボキシル基は、約1乃至10個の炭素原子を含み、xは1乃至4であり、L’は、-OSO2O-、-SO2O-、-O2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、および-CO-2、から成る群から選択され、各アニオン基は、少なくとも1つのカチオンと会合または共有結合し、カチオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Al+3、およびR"A+から成る群から選択され、R’’は、RまたはR’であり、Rは、水素、約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は前記界面活性剤分子に共有結合され、かつ、1乃至10個の炭素原子を含むアルキル架橋基であり、A+はN+3、酸素原子、窒素原子もしくは硫黄原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、または、N+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選択された3乃至7個の原子を含み、R基またはR’基は、置換されていないか、もしくは、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から成る群から選択される原子で独立に置換されており、前記カチオンは、前記界面活性剤分子の実効電荷が、中性であるように選択され、
(ii)前記疎水性基は、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖、または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含み、前記界面活性剤は、
(1)20℃より高い融点を有するか、
(2)10重量パーセント未満の水中溶解度を有するか、または、
(3)金属酸化物と共有結合することができる、界面活性剤を含み、
前記界面活性剤は、防曇特性を前記コーティング組成物を被覆する基材に提供するのに必要な量ではあるが、前記無機金属酸化物によって提供される反射防止特性を、550nmの光の透過パーセント単位で測定して、未被覆基材よりも3%未満でしか大きくない程度まで低下させるためには十分ではない量で存在する、コーティング組成物。
【請求項7】
表面を有する基材、および、前記基材の前記表面上に請求項1記載のコーティング組成物から成る層を含み、前記コーティング組成物が乾燥している物品。
【請求項8】
前記コーティング組成物から成る層は、約500乃至2500オングストロームの範囲の厚さを有する、請求項7記載の物品。
【請求項9】
可視光線に対して透明または半透明である基材を含む防護めがねであって、
(a)反射防止特性を基材に提供する均一な平均厚さの多孔質無機金属酸化物ネットワークを被覆した、基材であって、
前記基材は、
(b)少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性アニオン基を含む界面活性剤でも被覆されており、
(i)前記親水性アニオン基は、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、-P(O-)2、-OP(O-)2、(-SO2)2N-、-SO2N(R)-、(-SO2)2C-H、および-N+(R)2(CH2)xL'から成る群から選択されるアニオンを含み、Rは水素、置換されていないか、もしくは、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から成る群から独立に選択される原子で置換されたアルキル基、または、アルキレンカルボキシル基であり、アルキル基またはアルキレンカルボキシル基は、約1乃至10個の炭素原子を含み、xは1乃至4であり、L’は、-OSO2O-、-SO2O-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2および-CO-2;から成る群から選択され、各アニオン基は、少なくとも1つのカチオンと会合または共有結合され、カチオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Al+3、およびR"A+から成る群から選択され、R’’は、RまたはR’であり、Rは水素、約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、かつ、1乃至10個の炭素原子を含むアルキル架橋基であり、A+はN+3、酸素原子、窒素原子または硫黄原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、または、N+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成させる炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から成る群から選択される3乃至7個の原子を含み、R基またはR’基は、置換されてなくても、酸素原子、窒素原子または硫黄原子から成る群から独立に選択される原子で置換されてもよく、前記カチオンは、前記界面活性剤分子の実効電荷が中性であるように選択され、
(ii)前記疎水性基は、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含み、
前記被覆した基材は、
(1)本文に記載の湿潤試験に従って試験した場合に、少なくとも4mmの液滴直径、および、
(2)未被覆基材の550nmにおける透過パーセントよりも少なくとも3パーセント大きい透過パーセントを示す、
防護めがね。
【請求項10】
前記無機金属酸化物はシリカであり、かつ、前記界面活性剤はペルフルオロ化スルホネートである、請求項9記載の防護めがね。
【請求項11】
フェイスマスクおよび請求項9記載の防護めがねを含む外科用マスク。
【請求項12】
反射防止特性および防曇特性を基材に付与する方法であって、
(a)基材を提供する工程、
(b)コーティング組成物を調製する工程、
(c)前記コーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの面に塗布する工程、および、
(d)前記コーティング組成物を乾燥させる工程、を含み、前記コーティング組成物は請求項1記載のコーティング組成物であることを特徴とする、方法。
【請求項13】
反射防止特性および防曇特性を基材に付与する方法であって、
(a)基材を提供する工程、
(b)多孔質金属酸化物を含む第1のコーティング組成物を調製する工程、
(c)第2のコーティング組成物を調製する工程、
(d)前記第1または第2のコーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの面に塗布する工程、
(e)工程(d)で塗布される該コーティング組成物を乾燥させる工程、
(f)工程(d)で塗布されない該コーティング組成物を前記基材の少なくとも1つの面に塗布する工程、
(g)工程(f)で塗布される該コーティング組成物を乾燥させる工程を含み、
前記第2のコーティング組成物は、少なくとも1つの疎水性基および少なくとも1つの親水性アニオン基を含み、
(i)前記親水性アニオン基は、-OSO2O-、-SO2O-、-CO2-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2、-P(O-)2、-OP(O-)2、(-SO2)2N-、-SO2N(R)-、(-SO2)2C-H、および-N+(R)2(CH2)xL'から成る群から選択されるアニオンを含み、Rは水素、未置換のアルキル基または、酸素原子、窒素原子および硫黄原子から成る群から独立に選択される原子で置換されたアルキル基、または、アルキレンカルボキシル基であり、アルキル基またはアルキレンカルボキシル基は、約1乃至10個の炭素原子を含み、xは1乃至4であり、L’は、-OSO2O-、-SO2O-、(-O)2P(O)O-、-OP(O)(O-)2、-P(O)(O-)2および-CO-2から成る群から選択され、各アニオン基は、少なくとも1つのカチオンと会合または共有結合され、カチオンは、H+、Na+、K+、Li+、Ca+2、Mg+2、Sr+2、Al+3、およびR"A+から成る群から選択され、R’’はRまたはR’であり、Rは水素または約1乃至10個の炭素原子を含むアルキル基またはシクロアルキル基であり、R’は界面活性剤分子に共有結合され、かつ、炭素原子1乃至10個を含むアルキル架橋基であり、A+はN+3、酸素原子、硫黄原子もしくは窒素原子で置換されていてよいグアニジニウムイオン、または、N+Bであり、Bは、窒素含有複素環式環を完成する炭素原子、窒素原子、硫黄原子および酸素原子から成る群から選択される3乃至7個の原子を含み、R基またはR’基は、いずれも置換されていなくても、酸素、窒素または硫黄から成る群から独立に選択される原子で置換されていても良く、前記カチオンは、前記界面活性剤分子の実効電荷が中性になるように選択され、
(ii)前記疎水性基は、少なくとも4個の炭素原子を含む炭化水素鎖または少なくとも3個の炭素原子を含むペルフルオロ化基を含む、界面活性剤を含む、方法。

【公開番号】特開2010−202881(P2010−202881A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−127226(P2010−127226)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【分割の表示】特願2006−316109(P2006−316109)の分割
【原出願日】平成7年11月30日(1995.11.30)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】