説明

反射防止膜を含む透明基板

【課題】グレージングの良好な美、および熱処理(焼きなまし、強靭化、曲げ、折り畳み)に対する良好な耐性を有する高い機械的および化学的耐久性の両方を保証する膜を提供する。
【解決手段】積層が、連続的に、1.8〜2.3の屈折率n1および5〜50nmの幾何学的厚さの第1層(1)、1.35〜1.65の屈折率n2および5〜50nmの幾何学的厚さe2の第2層(2)、1.8〜2.3の屈折率n3および40〜150nmの幾何学的厚さe3の第3層(3)、1.35〜1.65の屈折率n4および40〜150nmの幾何学的厚さe4を有する第4層(4)を含む薄層の積層(A)からなる透明基板(6)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、ガラス製で、グレージング中に組み込むことを意図され、その面の少なくとも一つの上に反射防止膜が与えられる透明基板に関する。
【0002】
本発明の他の態様により、膜は日射遮蔽および/または低放射率タイプであることが可能である。
【背景技術】
【0003】
反射防止膜は、通常、干渉薄層、一般に、高屈折率の誘電体および低屈折率の誘電体に基づく交互層を含む多層からなる。透明基板上に堆積する場合に、こうした膜の機能は、その光反射を減じ、それによってその光透過を増大させることである。このように被覆された基板は、従って、その透過光/反射光比を増大させ、それによって、その後に置かれた対象物の可視性を改善する。最大の反射防止効果を達成することが求められる場合、次に、このタイプの膜を基板の両面に提供することが好ましい。
【0004】
このタイプの製品には多くの用途がある:それは、建物のウィンドウ用に、内部照明が外部照明に較べて低い時でさえ、ウィンドウ中にあるものをより良く展示するために、例えば、ショーウィンドウとしてのおよび建築上の湾曲ガラスとしての販売備品中のグレージング用に用いることが可能である。それは、また、カウンタ用のガラスとして用いることも可能である。
【0005】
反射防止膜の例は、特許EP第0728712号、およびWO第97/43224号に記載されている。
【0006】
これまでに開発された大部分の反射防止膜は、斜め入射で見られるグレージングの光学的および美的外観、多層の機械的耐久性、および製品の熱処理(強靭化、焼きなましおよび曲げタイプの)に対する耐性を考慮することなしで、垂直入射での光反射を最小化するために最適化されてきた。従って、垂直入射で、極めて低い光反射値RLが高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層交互を有する4層を含む多層により得ることが可能であることは、公知である。高屈折率層は、一般に、それぞれ約2.45および2.35の高い有効な屈折率を有するTiO2またはNb25から構成され、低屈折率層は、通常、約1.45の屈折率を有するSiO2から作製される。
【0007】
多層が、熱処理(曲げおよび/または強靭化)の間、その光学的性質、機械的性質(硬度、引っかき抵抗性および耐磨耗性)、および耐薬品特性を留保することが望まれる場合に、Si34系層を高屈折率層として用いることは公知である。しかし、実質的に2.0に近い550nmでのその屈折率は、光学的最適化の可能性を限定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP 0728712
【0009】
【特許文献2】WO 97/43224
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、入射角がどうであれ、グレージングの良好な美、および熱処理(焼きなまし、強靭化、曲げ、折り畳み)に対する良好な耐性を有する高い機械的および化学的耐久性の両方を保証する膜を開発することを追及することにより、上記欠点を改善すると共に、その製造の経済的および/または工業的実行可能性に妥協することなくそうすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、第1に、透明基板、特に、その少なくとも一つの面上に、高屈折率層の少なくとも一つが混合シリコン・ジルコニウム窒化物を含むことを特徴とする、高屈折率および/または低屈折率の誘電体に基づく薄膜多層を有するガラス基板である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による4層反射防止多層膜を、その二つの面の一つの上に与えられる基板を示す。
【図2】本発明による4層反射防止多層膜を、そのそれぞれの面上に与えられる基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の意味において、用語「層」は、単一層か、またはそれらそれぞれが指示された屈折率を満足させ、それらの幾何学的厚さの合計がまた当該層に対して指示された値を保持する層の重ね合わせかのいずれかを意味すると理解される。
【0014】
本発明の意味において、層は、誘電体、特に、後に詳しく説明される金属酸化物、窒化物または酸窒化物タイプにより構成される。しかし、それらの少なくとも一つが、例えば反射防止多層にまた帯電防止機能を与えるために、例えば、金属酸化物をドープすることにより、少なくともわずかに導電性であるように修正されることは除外されない。
【0015】
本発明は、好ましくは、ガラス基板に適用されるが、しかし、それは、また、ポリマー、例えばポリカーボネートに基づく透明基板にも適用される。
【0016】
従って、本発明は、4交互層、すなわち、高屈折率および低屈折率の層の少なくとも一つの系列を有する反射防止多層に関する。
【0017】
本発明において採用される厚さおよび屈折率の基準は、こうして被覆される基板が観察されるどのような入射角であろうとも、透過中間色および反射の魅力的な外見を有する広い低光反射帯域にわたり反射防止効果を得ることを可能とする。
【0018】
本発明の別の態様により、日射制御または低放射率(低E)機能を有する少なくとも一つの薄膜多層を与えられるあらゆる基板が目標とされる。
【0019】
実際、本発明は、透明基板、好ましくは、グレージング構築のため、長波長の太陽放射および/または赤外放射に作用することができる少なくとも一つの金属層を含む薄膜多層を与えられるガラスタイプの硬い基板に関する。
【0020】
本発明は、金属層、特に銀に基づくもの、および金属酸化物または窒化物タイプの誘電体層の交互層を含み、グレージングに日射遮蔽または低放射率特性を与えることを可能とする多層に関する(建物用の二重ガラス、自動車用の積層ウィンドウ、など)。それは、さらに詳細には、こうした多層を与えられると共に、少なくとも500℃の温度での熱処理を含む転換操作(これは特に強靭化、焼きなましおよび曲げ操作であることが可能である)を行わなければならないガラス基板に関する。
【0021】
その熱処理(これはかなりの技術的問題を引き起こす)後、ガラス上に層を堆積することよりもむしろ、それらがなお本質的にそれらの熱的特性を保持しながらこうした処理を行うことができるように、多層を適応させることが、第1に求められてきている。狙いは、従って、機能層、特に銀層の劣化を防止することであってきた。特許EP第506,507号に開示される一つの解決策は、銀層を保護する金属層でそれらの側面を護ることにより銀層を保護することに存する。こうした多層は、従って、それが曲げまたは強靭化処理後の赤外または太陽放射の反射において、少なくとも前と同じく有効である範囲で、曲げるかまたは強靭化することができる。しかし、熱影響下で銀層を保護してきた層の酸化/変性は、特に光透過を増大させると共に反射の比色反応を修正することにより、実質的に修正されてしまう多層の光学的性質をもたらす。この加熱は、また、光学的欠陥、すなわち、有意なレベルの曇りをもたらす点食および/または種々の小斑点を造りだす傾向がある(表現「小斑点」は、一般に、5ミクロン未満のサイズの欠陥を意味すると理解され、一方、「点食」は、50ミクロンを超える、特に50〜100ミクロンの間のサイズを有する欠陥を意味すると理解されるが、勿論、中間サイズ、すなわち、5〜50ミクロンの間の欠陥も有する可能性はある)。
【0022】
第2に、従って、光学的欠陥のあらゆる出現を最小化することにより、熱処理後それらの熱特性およびそれらの光学的性質を保持することができるような薄膜多層を開発することが求められる。従って、課題は、それらが熱処理を行う必要があろうがなかろうが一定の光学的/熱的性能の薄膜多層を有することである。
【0023】
第1の解決策は、上記タイプの多層(二つの銀層を有する)を目指したものであり、銀層の上部のバリア層および前記銀層に隣接する吸収性または安定化層両方の使用、およびそれらが安定することを可能とすることを記載している特許EP第847965号に提案された。
【0024】
それは以下のタイプの多層を説明している:
Si34/ZnO/Ag/Ti/ZnO/Si34ZnO/Ag/Ti/Zno/Si34
【0025】
第2の解決策は、赤外および/または太陽放射における反射特性を有するn個の機能層A、特に金属層と、n+1個の膜B(n≧1である)の交互層を含む薄膜多層の使用を薦める特許FR第2827855号に提案された。前記膜Bは誘電体製の層または重層を含み、そこで各機能層Aは二つの膜Bの間に置かれる。機能層(複数を含む)は銀に基づき、酸素拡散バリア層(層B)は特に窒化シリコンに基づく。この多層は、また、機能層Aの少なくとも一つが、その上部に置かれる誘電体膜Bに直接接触し、少なくとも可視領域で吸収性であり、所望により窒化金属タイプの層Cを介してそれらのすぐ下に置かれる誘電体膜Bに接触するという態様を有する。それは、以下のタイプの多層を提案している:
Si34/Ti/Ag/Si34/Ag/Si34
【0026】
これらの解決策は大抵の場合に満足の行くものである。しかし、極めて目立つ曲面および/または複雑な形状(二重曲面、S型曲面、など)のガラスを有することに対しての増大する必要性が存在する。これは、特に、自動車前面ガラスまたはショーウィンドウに用いられるガラス用の場合である。この場合において、特許FR第2599357号、US第6158247号、US第4915722号およびUS第4764196号に詳細に記載されているように、ガラスには、熱的および/または機械的観点から局部的に差別化した処理をしなければならない。これは薄膜多層に特別の制約を押し付け−次には、局部的な光学的欠陥およびグレージング上の1点から他点への反射の出現での僅かなばらつきが見られることが可能である。
【0027】
本発明の一つの目的は、熱処理(強靭化、曲げまたは焼きなまし)後なおそれらの性質を保持しながら、多層のエネルギーおよび光学的性能特性の改善を追求することである。
【0028】
多層のタイプがどうであれ(反射防止、低放射率または日射遮蔽多層)、本発明者らは、製品の工業的実行可能性、および種々の入射角値用の可視領域または赤外領域における最適化された光学的性質を得ると共に、多層の機械的耐久性および熱処理耐性特性に妥協することなくそうすることの能力を考慮してきたので、基準の選択は手のこんだものである。
【0029】
特に反射防止多層に対して、本発明者らは、特に垂直入射で少なくとも3または4%分可視領域でのRL値(一つの面上に堆積される単一多層を与えられる基板用に計算される)を低下させることにより、これを達成してきた。
【0030】
少なくともその面の一つの上に本発明の多層を有する基板に対して、本発明者らは、反射において、a*およびb*に対して絶対値で15未満である(L*、a*、b*)熱量測定システムにおける負のb*値を得てきた。
【0031】
これは、反射の有意な減少、および多くの用途、特に建物分野で現在魅力的であると見なされる反射における緑−青色(黄系または赤系外観をさける)をもたらす。本発明者らは、また、これらの同じ多層がそれらの光学的性質を保持しながら強靭化するかまたは曲げることができることを見出してきた。
【0032】
特に、2を超える屈折率を有する誘電体の使用は、機能層の全体厚さが増大することを可能とし、それによって、製品のエネルギー性能および/または美しさを改善することに役立つ。
【0033】
特に日射制御を提供しなければならない機能層を含む多層に対して、本発明者らは、特に、美的観点および機械的、化学的両方の耐久性観点からの性能を劣化させることなくエネルギー性能を改善することによりこれを達成してきたし、本発明の多層は、また、熱処理(焼きなまし、強靭化または曲げ操作)を行うために適している。
【0034】
本発明の二つの最も顕著(striking)な特徴は、以下の通りである:
−窒化ジルコニウムが特に可視領域において吸収性であるという事実に反して、その吸光度は、それが混合シリコン・ジルコニウム窒化物内に存在する場合にもはや顕著でないこと、および、前記層がその全体屈折率値の実質的な増加から恩恵を受けることが、見出されてきた;および
−混合Si34系材料の使用が、純粋Si34系多層のそれらと較べて劣化しない多層の機械的抵抗特性(耐磨耗性、引っかき抵抗性および洗浄抵抗性)および熱処理(焼きなまし、強靭化、曲げ)抵抗特性を有する多層を得ることを可能とすることが、また、示されてきた。
【0035】
以下に、本発明による反射防止多層4層の幾何学的厚さおよび屈折率の好ましい範囲を示すが、これらの多層はAと称される:
−n1および/またはn3は、2.00〜2.30の間、特に2.15〜2.25の間、好ましくは2.20に近くあり、
−n2および/またはn4は1.35〜1.65の間にあり、
−e1は5〜50nmの間、特に10〜30nmの間または15〜25nmの間にあり、
−e2は5〜50nmの間、特に35nm以下または30nm以下であり、特に10〜35nmの間にあり、
−e3は40〜120nmの間、好ましくは45〜80nmの間にあり、および
−e4は45〜110nmの間、好ましくは70〜100nmの間にある。
【0036】
高屈折率を有する、反射防止型多層Aの第1および/または第3層を形成するための最も適切な材料は、混合シリコン・ジルコニウム窒化物またはこれらの混合窒化物の混合物に基づく。変形として、これらの高屈折率層は混合シリコン・タンタル窒化物またはそれらの混合物に基づく。すべてのこれらの材料は、所望により、それらの耐薬品性および/または機械的および/または電気的性質を改善するためにドープすることが可能である。
【0037】
低屈折率の、多層Aの第2および/または第4層を形成するための最も適切な材料は、酸化シリコン、酸窒化シリコンおよび/または混合シリコン・アルミニウム酸化物に基づく酸窒化シリコンまたは他に基づく。こうした混合酸化物は、純粋SiO2よりも優れた耐久性、特に化学的耐久性を有する傾向がある(この例は特許EP第791562号に与えられる)。層の屈折率を過度に増大させることなく期待される耐久性を改善するために二つの酸化物のそれぞれの割合を調整することも、また、可能である。
【0038】
従って、こうした層をそれらの多層中に組み込む基板は、焼きなまし、強靭化、曲げまたはさらに折り畳み操作などの熱処理を、いかなる損傷もなく行うことが可能である。これらの熱処理は、このように被覆される基板が見られる入射角がどうであれ、光学的性質を損なわないし、この機能性は建物用のウィンドウの場合において、特に、重要である。
【0039】
従って、担体ガラスが熱処理を行うように意図されようがそうでなかろうが、単一の多層構造体を有することは可能である。たとえ、それが加熱することを意図されない場合でも、これがその全体における多層の機械的および化学的耐久性を改善するので、少なくとも一つの窒化物層を用いることは有利な状態を保つ。
【0040】
一つの特定態様において、高屈折率の第1および/または第3層は、実際、いくつかの重ね合わせた高屈折率層からなることが可能であり、これらの層の一つはジルコニウム・ドープ化窒化シリコン、すなわち、Zr:Si34に基づく。
【0041】
本発明による多層Aを被覆した基板、またはグレージング・ユニットを形成するためにそれと共に結合される他の基板用に選択されるガラスは、特に、例えば、特別透明な「ダイアモンド」型、または透明な「透明フロートガラス」型または淡い色合いの「パーソル」型であることが可能であり、これら3製品はサンゴバン・ヴィトラージュ(Saint−Gobain Vitrage)により市販されているか、あるいは、それらは特許EP第616883号に記載されているような「TSA」または「TSA++」型であることが可能である。ガラスは、また、特許WO第94/14716号、WO第96/00194号、EP第0644164号およびWO第96/28394号に記載されているように、所望により淡く色づけすることが可能である。それは、また、紫外線型の放射を濾過するガラスであることが可能である。
【0042】
本発明の主題は、また、上に定義される多層Aを与えられる基板を組み込むグレージングである。当該グレージングは「モノリス型」であり、すなわち、その面の一つの上に多層を被覆した単一基板からなることが可能である。その反対側の面は、いかなる膜もなく、裸であるか、または多層Aのそれとは異なるかまたは同一の機能を有する別の膜Bにより被覆することが可能である。
【0043】
これは、日射遮蔽機能を提供し(例えば、誘電体層、またはさらにTiNまたはZrNなどの窒化物を含む層、または金属酸化物、鋼またはNi−Cr合金製の層により囲まれる1以上の銀層を用いて)、低放射率機能を提供し(例えば、F:SnO2などのドープ化金属酸化物、またはスズドープ化酸化インジウムITOまたは1以上の銀層から構成される膜)、または電磁気遮断機能、帯電防止機能(ドープ化金属酸化物または酸素化学量論不足酸化物)、または加熱層(例えば、CuまたはAg製のドープ化金属酸化物)または加熱ワイヤー配列(銅またはタングステンワイヤーまたは導電性銀ペーストを用いてスクリーン印刷されたバンド)、ミスト防止機能(親水性層を用いる)、抗雨機能(例えばフルオロポリマーに基づく疎水性層を用いる)または汚染防止機能(少なくとも部分的にアナタース形態に結晶化したTiO2を含む光触媒性膜)を提供する膜であることが可能である。
【0044】
本発明により被覆される基板を組み込む他の有用なグレージングは、ポリビニル・ブチラール(PVB)などの1枚以上の熱可塑性物質シートにより一緒に接合される二つのガラス基板を含む積層構造体を有する。この場合に、2枚の基板の内一つには、外部表面上(ガラスが熱可塑性物質シートを合わせる面の反対側面上)に本発明による反射防止多層が与えられる。他のガラスは、再度外部表面上で、前述のように、できれば裸であるか、別の機能を有する膜により被覆されるか、同じ反射防止多層または別の多層型(B)、あるいは前の場合におけるように別の機能を有する膜により被覆される(この他の膜は、また、接合面の反対側の面上ではなく熱可塑性物質接合シートに面する剛性基板の一つの面の一つの上に堆積させることが可能である)。積層グレージングには、従って、加熱ワイヤー配列、加熱層、または積層「内」の日射遮蔽膜を提供することが可能である。
【0045】
本発明は、また、多重グレージング・ユニット、すなわち、中間ガス層により分離される少なくとも二つの基板を用いるもの(二重または三重ガラス)である本発明の反射防止多層を与えられるグレージング・ユニットを含む。ここで再度、グレージング・ユニットの他の面は、また、反射防止処理をすることが可能であるか、または別の機能を有することが可能である。
【0046】
この他の機能は、また、一つのおよび同じ面上に反射防止多層を有することに存することが可能であり、多層は別の機能を有し(例えば、極めて薄い抗汚染膜層を反射防止膜の上に置くことにより)、このさらなる機能の追加は、勿論、光学的性質を損ねるほどのものでないことは、留意されるべきである。
【0047】
従って、本発明の一つの有利な態様により、本発明による反射防止多層に付加されるこの他の機能は、DLC(ダイアモンド様炭素)層からなることが可能である。
【0048】
本発明の有利な態様により、本発明による反射防止多層に付加されるこの他の機能は、従って、水素化4面体非晶質炭素ta−C:H(DLCとも称される)型の機械的保護として機能する層(および/または傷のつきにくい層)からなることが可能である。炭素および水素原子からなるこれらの層は、層に、それらの高硬度(ナノ圧子により測定されるこの硬度は、おそらく80Gpa以下である)、低摩擦係数(それは肉眼検査的におよびナノ引っかき傷により測定することができる)および化学攻撃に対する良好な耐性を与える高濃度(できれば80%まで)のsp3炭素結合を特徴とする。
【0049】
sp3結合の形成がエネルギー的には不利であるという理由により、それはイオン衝撃および/または高温により提供することが可能である大きなエネルギー流入を必要とする。従って、こうした層は、特に水素および炭素(CH4、C26、C24、C22、など)を含有する前駆体の解離により製造することが可能であるが、しかし、また、イオン源(これは直流または交流またはマイクロ波放射により励起されるイオンを加速するためのグリッドありまたはなしで「陽極層源」原理に基づくことが可能であるかまたは可能でない)における、例えば、シリコンまたはアルミニウムなどの他の原子を含有するHMDSOまたはTEOSから誘導することが可能であり、こうして造りだされるイオン流束は、100〜2000eVの間のエネルギーにより(加熱することが可能であるかまたは可能でない)基板上に向けられる。光学的性質(層の屈折率および吸収係数、および多層の全体透過率)を最適化するため、およびこうして造りだされる層における歪みを減少させるために、例えば層中への水素ガスの添加により、層中の水素含量を制御し増大させる(できれば40at%までの原子濃度に)ことは必要であることが可能である。
【0050】
本発明の主題は、また、本発明による膜を有するガラス基板を製造するための方法である。一つの方法は、真空技術により、特に磁気強化スパッタリングまたはグロー放電スパッタリングにより、次から次へと連続してすべての層を堆積することに存する。従って、酸化物層は、酸素存在下で当該金属の反応性スパッタリングにより堆積することが可能であり、窒素存在下で窒化物層が可能である。SiO2またはZr:Si34を得るために、それを充分に導電性とするためにアルミニウムなどの金属により軽くドープ化されるシリコン・ターゲットまたはジルコニウム・ターゲットにより開始することが可能である。
【0051】
本発明のなお別の主題は、ターゲットでのSi/Zr比が0.1〜0.5の差を有して層のそれと僅かに異なることを特徴とする、SixZryAlzを含む少なくとも一つの層を得るための平坦なまたは管状のマグネトロンスパッタリング・ターゲットである。
【0052】
このターゲットは、HIP(熱間等静圧圧縮成形)またはCIP(冷間等静圧圧縮成形)により、アルミニウム/ジルコニウム/シリコン粉末混合物を圧縮成形/焼結するための方法によるプラズマ溶射法を用いて得ることが可能である。
【0053】
本発明の主題は、また、前述の大部分のもの、すなわち、ショーウィンドウ、陳列ケースまたはカウンタ、建物用、または、コンピュータまたはテレビ画面などのあらゆるディスプレイ装置用のウィンドウ、あらゆるガラス備品、あらゆる装飾ガラス、または自動車のサンルーフを含む、このグレージングの用途である。こうしたグレージングは、層の堆積後、曲げ/強靭化することが可能である。
【0054】
本発明の詳細と有利な態様は、添付図面を参照しつつ、以下の非限定な実施例から明白となる。
【実施例】
【0055】
すべての実施例1〜4は、4層反射防止多層膜に関する。層は、すべて、従来から、SiO2または金属酸化物層を生成するためにSiまたは金属ターゲットを用いて酸化雰囲気中で、および窒化物を生成するために窒化雰囲気中ならびに酸窒化物を生成するために酸化/窒化混合雰囲気中でSiまたは金属ターゲットを用いて、電磁強化反応性スパッタリングにより堆積された。Siターゲットは、特にそれらをさらに導電性とするように別の金属、特にZrまたはアルミニウムを少量含有することが可能である。
【0056】
以下の実施例において用いられたジルコニウム・ドープ化Si34層の組成物を以下に示す:
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1
(6):ガラス
(1):Si34 (屈折率n1=2)
(2):SiO2 (屈折率n2=1.46)
(3):Zr:Si34 (屈折率n3=2.2)
(4):SiO2 (屈折率n4=1.46)
【0059】
図1のガラス6は、サンゴバン・ヴィトラージュにより商品名PLANILUXで市販されている厚さ4mmの透明シリカ・ソーダ石灰ガラスであった。
【0060】
このガラスはモノリスグレージングを構成し、本発明による反射防止多層をその両面上に備えた:
SiO2/Zr:Si34/SiO2/Si34/ガラス/Si34/SiO2/Zr:Si34/SiO2
(一つの層はZr:Si34からなる)
【0061】
以下の表は各層に対する屈折率niおよびナノメートルでの幾何学的厚さeiを与える。
【0062】
【表2】

【0063】
以下の表は、種々の入射角に対する(L*、a*、b*)プロットにおける光学的パラメータを与える。
【表3】

【0064】
この多層は、反射色が中性(グレーがかった青に近い)である建物用途に特に適し、光反射率は極めて実質的に2%未満であり、a*およびb*値は実質的に絶対値で10未満であり、0°〜70°の間の入射角に対してこの反射の色中性は保持される。
【0065】
実施例2
(6):ガラス
(1):Zr:Si34 (屈折率n1=2.2)
(2):SiO2 (屈折率n2=1.46)
(3):Zr:Si34 (屈折率n3=2.2)
(4):SiO2 (屈折率n4=1.46)
【0066】
図1のガラス6は、以下のタイプの本発明による反射防止膜をその両面上に備えた:
SiO2/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/ガラス/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/SiO2
【0067】
以下の表は各層に対する屈折率niおよびナノメートルでの幾何学的厚さeiを与える。
【0068】
【表4】

【0069】
以下の表は、種々の入射角に対する(L*、a*、b*)プロットにおける光学パラメータを与える。
【0070】
【表5】

【0071】
この多層は、反射色が中性(グレーがかった青に近い)である建物用途に特に適し、光反射率は極めて実質的に2%未満であり、a*およびb*値は実質的に絶対値で10未満であり、0°〜70°の間の入射角に対してこの反射の色中性は保持される。
【0072】
実施例1および2は、実施例3および4の主題を形成する先行技術の公知の多層と比較することができる。
【0073】
実施例3および4
(6):ガラス
(1):Si34 (屈折率n1=2.0)
(2):SiO2 (屈折率n2=1.46)
(3):Si34 (屈折率n3=2.0)
(4):SiO2 (屈折率n1=1.46)
【0074】
図1のガラス6は、サンゴバン・ヴィトラージュにより商品名PLANILUXで市販されている厚さ4mmの透明シリカ・ソーダ石灰ガラスであった。
【0075】
このガラスは以下の反射防止多層をその両面上に備えた:
SiO2/Si34/SiO2/Si34/ガラス/Si34/SiO2/Si34/SiO2
【0076】
以下の表は各層に対する屈折率niおよびナノメートルでの幾何学的厚さeiを与える。
【0077】
【表6】

【0078】
以下の表は、種々の入射角に対する(L*、a*、b*)プロットにおける光学的パラメータを与える:
【0079】
【表7】

【0080】
実施例3の多層は、また、建物用途に適するが、しかし、0°〜70°の間で変動する入射角に対して、(L*、a*、b*)プロットで表される反射色は赤−すみれ色のままであった。この色はこうした用途に対しては薦められなく、魅力的でないと見なされる。光学的性質は、0°〜70°の間の入射角にわたり一定のままであったが、しかし、それらは建築業界において許容可能と見なされる美的基準に適合しなかった。
【0081】
実施例4の多層の反射色は、灰色(入射角0°に対して)から青(入射角30〜40°の間に対して)に、さらに最終的に赤(入射角70°に対して)に変わって行った。
【0082】
この実施例において、光学的性質は保持されなかった。
【0083】
結論として、高屈折率層(Si34)の少なくとも一つのジルコニウムドーピングは、入射角が変わっても反射色がそれほど大きく変動しないように予防する。
【0084】
加えて、本発明の一つの有利な態様により、本発明による多層(例えば、実施例1および2のそれら)は、光学的性質を害することなく熱処理を行うことが可能である。
【0085】
当該多層の構造は以下に繰り返される:
【0086】
実施例5
(6):ガラス
(1):Zr:Si34 (屈折率n1=2.2)
(2):SiO2 (屈折率n2=1.46)
(3):Zr:Si34 (屈折率n3=2.2)
(4):SiO2 (屈折率n4=1.46)
【0087】
図1のガラス6は、以下のタイプの本発明による反射防止膜をその両面上に備えた:
SiO2/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/ガラス/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/SiO2
【0088】
幾何学的厚さは以下の通りであった:
【0089】
【表8】

【0090】
この多層(これは実施例2の主題を形成する反射防止多層と同一であった)に焼きなまし型熱処理を施した。
【0091】
焼きなまし前および焼きなまし後のその性質は、(L*、a*、b*)プロットにおける色変化を示す以下の表が実証するように、実質的に変更または損傷されない。
【0092】
【表9】

【0093】
次の実施例6および7の主題を形成する多層は、日射制御タイプのものであり、これらは、特に、自動車用途用に設計される。
【0094】
曲げる際の良好な光学的性質と限定された光学的変化の組合せが、異なる金属層の慎重な選択により達成される。誘電体の第1層(a)は、酸素拡散バリア層を含む。この層は、所望によりアルミニウムなどの少なくとも一つの他の金属を含む混合シリコン・ジルコニウム窒化物からなる。それは、化学量論不足酸素での酸化亜鉛または亜鉛および別の金属の混合酸化物に基づく層を含むことが可能である。
【0095】
この誘電体層の機能は、本質的に、高温も含んで、多層内部中への酸素の拡散を遮断することである。混合窒化物が酸化攻撃に対して実質的に不活性であるので、それは、強靭化型の熱処理の間感知できる化学的(酸化的)または構造的変化を全く受けない。それは、従って、熱処理の結果として、特に光透過レベルの観点から、多層のほとんど何の光学的変化も含まない。この層は、また、ガラスから移動する化学種、特にアルカリ金属の拡散に対するバリアとして機能することが可能である。さらに、2.2に近いその屈折率のお陰で、それは日射制御型の多層中に容易に組み込まれる。
【0096】
この層は、一般に、少なくとも10nm、例えば、15〜70nmの間の厚さで堆積することが可能である。
【0097】
上で見られるように、この第1誘電体層は、酸化亜鉛(ZnO)などの別の誘電体層により、および5〜15nmの間の厚さを有して被覆することが可能である。
【0098】
「バリア」として機能する下部金属層(b)は、チタン、ニッケル、クロム、ニオブおよびジルコニウムから、またはこれら金属の少なくとも一つを含有する金属合金から選択される金属Xからなることが可能である。
【0099】
有利には、層(b)の厚さは、強靭化などの熱処理の間金属層が部分的にのみ酸化するために充分な値を有するように選択される。好ましくは、この厚さは6nm以下であり、想定される多層系列に応じて、0.2〜6nmの間、好ましくは少なくとも0.4nmまたは少なくとも1nmである。
【0100】
酸素に対する高い親和性を有する金属から選択される下部金属は、機能層を通しての残留酸素の拡散を限定すると共に、曇りまたは点食タイプの欠陥の出現を防止するために役立つ。下部金属が熱処理の間ほとんど酸化されないので、その厚さは、それが熱処理後光吸収に寄与しないようなやり方で有利に選択される。
【0101】
機能層(c)は一般的に銀層であるが、しかし、本発明は、特にチタンまたはパラジウムを含有する銀合金層、または金または銅に基づく層などの他の反射金属層にも同じやり方で適用できる。その厚さは特に5〜20nm、好ましくは約7〜15nmである。
【0102】
変形として、上部金属層(d)(上部バリアとして機能する)は、層(b)の金属または合金Xとは異なる、チタン、ニッケル、クロム、ニオブ、ジルコニウムおよびこれら金属の少なくとも一つを含有する金属合金から選択される金属Yからなることが可能である。有利には、金属Yはチタン、ニオブおよびジルコニウムから選択され、好ましくはチタンである。
【0103】
層(d)の厚さは、有利には、強靭化などの熱処理の間金属層が部分的にだけ酸化するために充分であるように選択される。好ましくは、この厚さは6nm以下であり、想定される多層系列に応じて0.2〜6nmの間、好ましくは少なくとも0.4nmまたは少なくとも1nmである。
【0104】
酸素に対する高い親和性を有する金属から選択される上部金属は、また、多層を通しての酸素の拡散を遮断し、従って、機能銀層を効果的に保護する。しかし、この上部金属の酸化は光透過の変化をもたらし、上部金属層(d)の最大厚さはΔTLを限定するように選択することが可能である。
【0105】
代わりの態様により、一般的に銀製の機能層(c)は、その下またはその上に置かれる金属膜(b)または(d)と直接接触し、(b)または(d)は、酸化亜鉛または亜鉛および別の金属の混合酸化物に基づく。
【0106】
上述の態様により、層(b)および(d)は多層中に同時に存在しない−層(b)が機能層(c)のすぐ下に組み込まれ、層(d)は存在しないか、または、層(d)が機能層(c)の上に組み込まれ、この場合に層(b)は省略されるかのいずれかである。
【0107】
対照的に、代替的な態様により、層(b)または(d)は同時に存在する。
【0108】
所望によりジルコニウムを含有する誘電体(e)の第2層は、層(a)に類似の機能を有する。それは、さらに、所望によりアルミニウムなどの少なくとも一つの他の金属を含有する混合シリコン・ジルコニウム窒化物から選択される酸素拡散バリア層を含む。層(a)の場合におけるように、層(e)は、例えば酸化亜鉛などのZnOタイプの別の誘電体に基づく別の層により、および5〜20nmの間の厚さを有して補足することが可能である(Zr:Si34/ZnO)。
【0109】
層(e)は、一般に、少なくとも10nm、例えば15〜70nmの間の厚さで堆積することが可能である。それは、特に、第1誘電体層(a)のそれより大きい厚さを有することが可能である。
【0110】
勿論、本発明の脈絡の中で、上述の少なくとも二つ、またはなお三つの標準多層系列を組み込む多層を考え出すことは可能である。勿論、厚さは、必然的に、光学的およびエネルギー的特性を保存するように適応される。
【0111】
従って、例えば、以下の多層を有することが可能である:
−(a)/例えばZnO/X/例えばAg/例えばZnO/(e);
−(a)/例えばZnO/例えばAg/Y/例えばZnO/(e);
−(a)/例えばZnO/X/例えばAg/Y/例えばZnO/(e);
−(a)/例えばZnO/X/例えばAg/例えばZnO/(e)/例えばZnO/X/例えばAg/例えばZnO/(e);
−(a)/例えばZnO/例えばAg/例えばZnO/(e)/例えばZnO/例えばAg/例えばZnO/(e);
−(a)/例えばZnO/例えばAg/例えばZnO/(e)/例えばZnO/例えばAg/例えばZnO/(e)/例えばZnO/例えばAg/例えばZnO/(e);
−およびまた上記系列の組合せ。
【0112】
機能性単層(すなわち、単一機能層c)用の厚さを以下に一例として与える:
層(a)の厚さは実質的に層(e)の厚さに等しく、10〜40nmの間にある。
【0113】
二重層(すなわち、二つの機能層c)に対して:
層(a)の厚さは、実質的に層(e)の厚さに等しく、10〜40nmの間にあり、中間層(a’またはe’)は5〜70nmの間の厚さを有する。
【0114】
三重層(すなわち、三つの機能層c)に対して;
層(a)の厚さは、実質的に層(e)の厚さに等しく、10〜40nmの間にあり、中間層(a’およびa’’またはe’およびe’’)は5〜70nmの間の厚さを有する。
【0115】
有利には、誘電体膜の少なくとも一つは、1以上の金属酸化物に基づく層を含むことが可能である。詳細には、上部の誘電体層(e)は、その外表面上に、多層の引っかき抵抗性を改善する、化学量論的に酸素不足/超の層および/または窒化層(f)を含むことが可能であり、その結果、保護膜層と称されるものを形成する。これは、酸化亜鉛または亜鉛および別の金属(Alタイプの)の混合酸化物に基づく層であることが可能である。それは、また、以下の金属の少なくとも一つを含む酸化物に基づくことが可能である:Al、Ti、Sn、Zr、Nb、W、Ta。本発明による薄膜として堆積することができる混合酸化亜鉛の例には、WO第00/24686号に記載されているように、アンチモンなどの追加の元素を含有する混合亜鉛スズ酸化物がある。この酸化物層の厚さは0.5〜7nmであることが可能である。
【0116】
別の変形により、後者の層はDLCタイプ製であることが可能である。このタイプの多層により、光学的性質を保持しながらエネルギー・ゲインを改善するか、または両方を同時に改善することが可能である。
【0117】
この改善は、層(a)または(e)、または同時に両方において、慎重に混合シリコン・ジルコニウム窒化物の代わりに窒化シリコンを使うことを選択するか、または所望により別の金属(例えばアルミニウム)を組み込むことにより、想定される用途に応じて最適化される。
【0118】
【表10】

【0119】
エネルギー・ゲインは全体銀厚さの約10%の増加、およびREの約1.5%の増加において反映されている。光学パラメータa*、b*、TL(%)およびRL(%)は変わりがない。
【0120】
実施例8は低い日射係数を有する強化断熱(低E)型の多層の例である。
【0121】
この型の多層を含むグレージング・ユニットの光学的性質a*、b*、TL(%)、RL(%)およびTE(%)は、本発明の態様を組み込むものと比較される。
【0122】
当該グレージングは、出願者により商標名PLANISTARで市販されているものである。
光学パラメータは以下の通りである(FILMSTARシミュレーション):
L=69.9% Rext=10.5% TE=38.2%
L*=82.6 L*=38.8%
a*=−5.0 a*=−2.2
b*=2.7 b*=−2.1
【0123】
Zr:Si34が多層内で用いられる場合に(FILMSTARシミュレーション)、光学パラメータは以下のようになる:
【0124】
実施例8
L=70.2% Rext=10.0% TE=37.0%
L*=83.0 L*=38.1%
a*=−4.1 a*=−2.1
b*=1.2 b*=−1.8
【0125】
結論的に、Zrドープ化窒化シリコンの使用が、製品の反射レベルを下げながら(−0.5%)、製品の日射遮蔽性能を改善すること(銀の厚さの増加のせいでTEまたは日射係数に関して約1%分)を可能とすることは、留意することが可能である。
【0126】
実施例9および10は、光学的性質を維持しながら、機械抵抗(引っかき抵抗性および機械的および化学的攻撃に対する抵抗性)を改善するための対策がなされる本発明の変形を説明する。
【0127】
この実施例は、DLC製の保護層が付加される実施例2の主題を形成する多層(反射防止膜)を繰り返す。
【0128】
実施例9および10
(6):ガラス
(1):Zr:Si34 (屈折率n1=2.2)
(2):SiO2 (屈折率n2=1.46)
(3):Zr:Si34 (屈折率n3=2.2)
(4):SiO2 (屈折率n4=1.46)
(5):DLC (屈折率n5=1.85)
【0129】
図1のガラス6は、以下のタイプの本発明による反射防止膜をその両面上に備えた:
DLC/SiO2/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/ガラス/Zr:Si34/SiO2/Zr:Si34/SiO2/DLC。
【0130】
以下の表は各層に対する屈折率niおよびナノメートルでの幾何学的厚さeiを与える:
【0131】
【表11】

【0132】
これらの実施例9および10に対して以下に与えられるものは、実施例2からとった参照性質と比較した光学的性質である:
【表12】

【0133】
テーバ試験(650回転、500g;CS−10Fホイール)後、実質的に1〜4%の間の曇りが観察された。
【0134】
実施例11として以下に与えられるものは、日射制御タイプの多層である。
【0135】
多層のタイプ:ガラス/Zr:Si34/ZnO/NiCr/Ag/ZnO/Zr:Si34/SnZnOx
【0136】
Ag、ZnO、NiCr下部バリアおよびSnZnOx保護層厚さは一定である。
【0137】
【表13】

【0138】
a*値がジルコニウムを組み込む窒化シリコンの場合に減少することは留意することが可能であり、同様に、6.5オームから5.6オームへのRsquare(carre)値の減少および垂直放射率の減少があることは留意されるべきである。
【0139】
実施例12として以下に与えられるものは、銀二重層に基づく自動車用の日射遮蔽多層構造体である:
内部/ガラス/Zr:Si34/ZnO/Ag/ZnO/Zr:Si34/ZnO/Ag/ZnO/Zr:Si34/PVB/ガラス/外部。
【0140】
【表14】

【0141】
ここで再度、実質的に同一の光学的性質に対するRsquareの減少があることは留意されるべきである。
【0142】
実施例13として以下に与えられるものは、銀三重層に基づく自動車用の日射遮蔽多層構造体である(加熱ウィンドウ):
内部/ガラス/(Al、Zr)Si34/ZnO/Ag/Ti/ZnO/(Al、Zr):Si34/ZnO/Ag/Ti/ZnO/(Al、Zr):Si34/ZnO/Ag/Ti/Zn/(Al、Zr):Si34/PVB/ガラス/外部。
【0143】
【表15】

【0144】
ここで再度、ジルコニウム・ドープ化窒化シリコンを組み込む多層に対するRsquareの減少があることは留意されるべきである(1.13から約1.00へ)。光透過率もまたより高く、色は一層魅力的である(外側での反射において)。
【0145】
最後に、最終実施例14は4個の機能銀層に基づく多層構造体である。
【0146】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
その面の少なくとも一つの上に交互に高屈折率および低屈折率を有する誘電体の薄膜多層(A)から構成される(made of)反射防止膜を含む透明基板、特にガラス基板であって;
該高屈折率層の少なくとも一つが混合シリコン・ジルコニウム窒化物を含み、少なくとも一つの高屈折率層の屈折率が2.10〜2.30の間、好ましくは2.15〜2.25の間にあることを特徴とする透明基板。
【請求項2】
高屈折率層内のジルコニウムの原子割合が、Si/Zrが4.6〜5の間にあるものであることを特徴とする、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
高屈折率層が金属、特にアルミニウムを用いてドープ化されることを特徴とする、請求項1または2に記載の基板。
【請求項4】
それが、連続的に、
・2.1〜2.3の間の屈折率n1および5〜50nmの間の幾何学的厚さe1を有する高屈折率の第1層(1)、
・1.35〜1.65の間の屈折率n2および5〜50nmの間の幾何学的厚さe2を有する低屈折率の第2層(2)、
・2.1〜2.3の間の屈折率n3および40〜120nmの間の幾何学的厚さe3を有する高屈折率の第3層(3)、および
・1.35〜1.65の間の屈折率n4および40〜120nmの間の幾何学的厚さe4を有する低屈折率の第4層(4)、
を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板。
【請求項5】
低屈折率第2層(2)および/または低屈折率第4層(4)が、酸化シリコン、酸窒化シリコン、および/またはシリコン・オキシカーバイド、または混合シリコン・アルミニウム酸化物に基づくことを特徴とする、請求項4に記載の基板。
【請求項6】
高屈折率第1層(1)および/または高屈折率第3層(3)が、少なくとも一つの層が混合シリコン・ジルコニウム窒化物を含むいくつかの高屈折率層の重ね合わせからなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の基板。
【請求項7】
それが薄膜多層を与えられる側上のその光反射率が垂直入射で3または4%の最小量だけ低下することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の基板。
【請求項8】
それが薄膜多層を与えられる側上のその光反射の熱量反応が、(L*、a*、b*)熱量測定システムにおいて対応するb*値が入射角0°に対して負であり、絶対値で15未満であるものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板。
【請求項9】
それが薄膜多層を与えられる側上のその光反射の熱量反応が、0°〜70°の間で変わる入射角での(L*、a*、b*)熱量測定システムにおいて表されるパラメータの変動が絶対値で10までに限定されるようなものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の基板。
【請求項10】
それがテーバ試験でのΔHが650回転後4%未満である極めて高い機械耐久力を有するように、混合シリコン・ジルコニウム窒化物に基づく少なくとも一つの高屈折率層を多層が用いることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の基板。
【請求項11】
二つのガラス基板(6)が熱可塑性材料のシート(7)によって、または二重ガラスユニットの場合に中間密封材によって一緒に結合されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の少なくとも二つの基板を含む、多重グレージング、特に二重ガラス、または積層構造を有するグレージングであって、該基板(6)は、結合部の反対側上に、
・反射防止多層か、
・または、日射遮蔽、低放射率、抗汚染、抗曇り、抗雨、加熱または電磁遮蔽タイプの別の機能を有する膜、
のいずれかを与えられ、別の機能を有する該膜が、熱可塑性結合シートの方に向き直った基板の面の一つの上にあることを可能とし、
該基板は、電磁波遮蔽特性を有する膜を結合側上に与えられる。
【請求項12】
少なくとも一つの誘電体層が混合シリコン・ジルコニウム窒化物に基づき、Si/Zr原子割合比が4.6〜5の間にあり、その屈折率が2.0〜2.3の間、好ましくは2.15〜2.25の間にあることを特徴とする、各機能層が二つの膜の間に置かれるようなやり方での、赤外および/または太陽放射における反射特性を有するn個の機能層、および1以上の誘電体層からなるn+1個の膜の交互層を含む薄膜多層を与えられる透明基板、特にガラス基板。
【請求項13】
多層が二つの膜の間に置かれる単一機能層を含むことを特徴とする、請求項12に記載の基板。
【請求項14】
多層が3膜と交互する2機能層を含むことを特徴とする、請求項12に記載の基板。
【請求項15】
多層が4膜と交互する3機能層を含むことを特徴とする、請求項12に記載の基板。
【請求項16】
機能層が、銀、銀混合物、または金またはパラジウムに基づくことを特徴とする、請求項12〜15のいずれか1項に記載の基板。
【請求項17】
それが、
・2.1〜2.3の間の屈折率および10〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第1高屈折率誘電体層、
・第1機能層、および
・2.1〜2.3の間の屈折率および15〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第2高屈折率誘電体層、
を含むことを特徴とする、請求項12または13に記載の基板。
【請求項18】
それが、
・2.1〜2.3の間の屈折率および10〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第1高屈折率誘電体層、
・第1機能層、
・2.1〜2.3の間の屈折率および5〜70nmの間の幾何学的厚さを有する第2高屈折率誘電体、
・第2機能層、および
・2.1〜2.3の間の屈折率および10〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第3高屈折率誘電体層、
を含むことを特徴とする、請求項12または14に記載の基板。
【請求項19】
それが、
・2.1〜2.3の間の屈折率および10〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第1高屈折率誘電体層、
・第1機能層、
・2.1〜2.3の間の屈折率および5〜70nmの間の幾何学的厚さを有する第2高屈折率誘電体層、
・第2機能層、
・2.1〜2.3の間の屈折率および5〜70nmの間の幾何学的厚さを有する第3高屈折率誘電体層、
・第3機能層、および
・2.1〜2.3の間の屈折率および10〜40nmの間の幾何学的厚さを有する第4高屈折率誘電体層、
を含むことを特徴とする、請求項12または15に記載の基板。
【請求項20】
少なくとも一つの機能層のすぐ下に位置し、可視領域で吸収性の層(複数を含む)が、少なくとも1nmの厚さを有するTi、Nb、ZrまたはNiCrなどの金属または金属合金に基づくように選択されることを特徴とする、請求項12〜19のいずれか1項に記載の基板。
【請求項21】
少なくとも一つの機能層の上部に位置し、可視領域で吸収性の層(複数を含む)が、少なくとも1nmの厚さを有するTi、Nb、ZrまたはNiCrなどの金属または金属合金に基づくように選択されることを特徴とする、請求項12〜19のいずれか1項に記載の基板。
【請求項22】
それが、特に混合スズ・亜鉛酸化物または酸化チタンなどの酸化物、できれば(possibly)化学量論不足または化学量論超の酸素のおよび/または窒化される酸化物に基づくカバー層または「保護膜」と称されるものを含むことを特徴とする、請求項12〜21のいずれか1項に記載の基板。
【請求項23】
それがDLC系保護膜を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の基板。
【請求項24】
保護膜の厚さが5〜10nmの間にあることを特徴とする、請求項23に記載の基板。
【請求項25】
機能層または各機能層が、その最後の層が酸化亜鉛または亜鉛と別の金属の混合酸化物に基づく多層膜の上部にあることを特徴とする、請求項12〜24のいずれか1項に記載の基板。
【請求項26】
機能層または各機能層が、その第1層が酸化亜鉛または亜鉛と別の金属の混合酸化物に基づく多層膜のすぐ下にあることを特徴とする、請求項12〜24のいずれか1項に記載の基板。
【請求項27】
酸化亜鉛または亜鉛と別の金属の混合酸化物に基づく層が化学量論不足の酸素状態にあることを特徴とする、請求項25または26に記載の基板。
【請求項28】
それが、熱処理、特に曲げ、強靭化または焼きなまし操作を行うことができることを特徴とする、請求項1〜10および12〜27のいずれか1項に記載の基板。
【請求項29】
多層が以下の通りであることを特徴とする、請求項12〜28のいずれか1項に記載の基板:
所望により少なくともそれぞれの銀層の面の一つの上に置かれる部分的または完全に酸化された金属の薄層を有する、
Zr:Si34/ZnO/Ti/Ag/ZnO/Zr:Si34/ZnO/Ti/Ag/ZnO/Zr:Si34またはZr:Si34/ZnO/Ag/NiCr/ZnO/Zr:Si34
【請求項30】
それが二重ガラスタイプの積層グレージング、対称グレージングまたは多重グレージングの形態をとることを特徴とする、請求項1〜10および12〜29のいずれか1項に記載の少なくとも一つの基板を組み込むグレージング。
【請求項31】
建物用の内部または外部の、日射制御、低放射率、反射防止のグレージングとしての請求項30に記載のグレージングの用途。
【請求項32】
この日射遮蔽、低放射率グレージングが所望により熱したウィンドウであることが可能である、自動車用グレージングとしての請求項31に記載のグレージングの用途。
【請求項33】
ターゲットでのSi/Zr比が0.1〜0.5の差を有して層のそれとはわずかに異なることを特徴とする、請求項1〜10および12〜29のいずれか1項に記載の基板の表面の一部上にSixZryAlzを含む少なくとも一つの層を得るための平らなまたは管状のマグネトロンスパッタリング・ターゲット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−62244(P2012−62244A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−250884(P2011−250884)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2006−523037(P2006−523037)の分割
【原出願日】平成16年7月27日(2004.7.27)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】