説明

反射電磁波画像化システム

【課題】航空機など立体構造の対象物を画像化する場合、焦点が外れても画像がぼけないようにする。
【解決手段】対象物に中心部のエネルギー強度の強い平行ビームの電磁波を送信し、その反射波を平行ビームを受信するアンテナで受信し、その送信部及び受信部を一体にして上下、左右に移動させることにより反射電磁波の画像化を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等凹凸のある対象物からの電磁波の反射特性を画像化することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、たとえば服の下に隠されているピストルを電磁波の反射で発見する場合、ピストルに焦点を合わせて電磁波を収束させる。これにより解像度を向上させることができる。しかし、このようにして焦点深度を超えてしまった場合、画像はぼける。したがって、対象が航空機のようにアンテナから遠距離にある場合は、焦点距離を長くするか、焦点距離を自動的に変化させなければならないという問題がある。
【発明の開示】

【発明が解決しようとしている課題】
【0003】
このように従来技術では、焦点を外れると画像がぼけてしまうという問題を含んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような従来技術の背景の中で、中心部のエネルギー強度が強くなるアンテナを用いてビーム直径を細くする。このようにすれば距離に関係なく、一定のビームが対象物に照射できる。この反射波を同じタイプのアンテナの焦点に配置したホーンアンテナ等で受信すれば解像度が向上し、しかも画像がぼけない。
【実施例】
【0005】
実施例1 アンテナに誘電体レンズを用いる。
【0006】
誘電体レンズによる平行ビームの形成
波長が短いミリ波帯に幾何光学的な考えを適用すると、光と同様に電波レンズを実現することができる。
代表的な電波レンズには誘電体レンズや金属プレートレンズなどがある。ここで、図1に示すように、誘電体レンズをホーンアンテナなどの前面に設置すると、二次位相誤差を補正でき、平面波に近い状態(ここでは、平行ビームと呼ぶ)を有する電磁波を得ることができる。なお、ホーンアンテナを用いた場合、誘電体レンズ端部に向けて振幅テーパができるため、サイドローブが小さくなっていることが分かる。
このような誘電体レンズを用いると次に示す利点がある。
・エネルギーが中央に集中する。
・ホーンアンテナと誘電体レンズの間の進行方向上に障害物がないので、この原因によるサイドローブが発生しにくい。
・レンズ面に反射防止膜を設けることにより、レンズによる反射の低減が容易に行える。
【0007】
曲率半径
誘電体レンズとして、両球面で、かつ、双方の曲率半径が同じ場合について検討する。
誘電体レンズの曲率半径rの設計には、厚レンズの公式(ガウス光学)を用いる。厚レンズの公式を以下に示す。

ただし、

εr:レンズの比誘電率
f:レンズの有効焦点距離[mm]
D:レンズの直径[mm]
E:レンズのエッジの厚さ[mm]
H:主点
また、厚みxの計算は次式により行う。

一方、主点とレンズ表面との距離OHは次の計算による。

【0008】
誘電体レンズの概要
以上により、誘電体としてフッ素樹脂PTFEを用いて設計し、測定に使用した誘電体レンズの概要を示す。
・直径120mm フッ素樹脂PTFE製
焦点距離 120mm
・表面の平滑度 ±100μm
・誘電体レンズから試料までの距離 250mm
【0009】
試料面におけるビーム径および位相分布
図3に試料面におけるビーム径および位相分布の35GHzと50GHzの場合について示した。
ここに、受信プローブとして、導波管開口を用いている。
図より、中心から外側に向け位相ずれが大きくなっているが、同時に振幅も小さくなっていくことがわかる。レンズ端では振幅が6dBで電力は中心部の4分の1であるから、レンズ端部の位相ずれの影響はほとんど無視できることがわかる。この結果から、ビーム長径は、
35GHz:60mm
50GHz:40mm
と考えられる。
なお、中心部のエネルギー密度を大きくするアンテナとして、例えばスロットアレーアンテナなどがある。このアレーへ電磁波を分配するとき中央部へ多く、端部へは少なくすると良い。
この場合、密度分布を自由に可変できる。
【0010】
実施例2 システム構成
XYステージのX:1.8m、Y:1.0mのシステム構成を図4に示す。なお、このとき対象物の大きさは1.5m以内である。
航空機の模型に電波吸収材を貼って、このシステムによって電磁波の反射特性を調べる。図5に反射特性を示した。これらの実験によって、電波吸収材料の改善や機体形状の改善を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】誘電体レンズによる電磁波放射
【図2】両球面レンズの構成
【図3】対象物面における振幅と位相
【図4】システムの系統図
【図5】航空機からの反射波の画像
【符号の説明】
〔図2〕
f:レンズの有効焦点距離
D:レンズの直径
H:主点
r:曲率半径
x:レンズの厚み
OH:主点とレンズ表面との距離
〔図4〕
1:送信用、受信用カセグレンアンテナ
2:送信、受信用ミリ波モジュール
X:横方向移動ステージ
Y:縦方向移動ステージ
3:ポジショナーコントローラ
4:XYステージコントローラ
5:ベクトルネットワークアナライザ
6:パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に中心部のエネルギー強度の強い平行ビームの電磁波を送信し、その反射波を平行ビームを受信するアンテナで受信し、その送信部及び受信部を一体にして上下、左右に移動させることにより反射波を画像化するシステム。
【請求項2】
平行ビームの中心部にエネルギーが集中するタイプのアンテナを用いて平行ビーム送信及びまたは受信する請求項1記載のシステム。
【請求項3】
送信部と受信部が同一アンテナに配設して成る請求項1,2記載のシステム。
【請求項4】
送信部と受信部が異なるアンテナから構成する請求項1,2記載のシステム。
【請求項5】
少なくとも1つのアンテナが誘電体レンズである請求項1,2,3,4記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つのアンテナが平面アンテナである請求項1,2,3,4記載のシステム。
【請求項7】
対象物から反射してくる時間範囲のみの反射波を受信することを特徴とする請求項1,2,3,4記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−276331(P2009−276331A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152215(P2008−152215)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(502383889)キーコム株式会社 (28)
【Fターム(参考)】