説明

反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体、方法および使用

反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む、生体分子結合体を提供する。他の態様はこれらの製造法、ならびにさまざまな産業および消費者用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反復配列タンパク質ポリマーとさまざまな活性剤から形成された結合体、製造法、およびさらに詳細にはこれらを含む施用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質は、さまざまな機能を果たし、製品配合物に望ましい特性を与えるために、広くさまざまな製品に使用されている。タンパク質は、ホームケア、ヘルスケア、および多くの他の消費者および産業市場区分の多くの製品に、機能、外観、テクスチャーおよび耐久性に関する特に望ましい性質を与えるフィルムおよび支持体を提供するためにも使用されている。
【0003】
しかしながら、天然タンパク質は、製品配合物中に使用すると、全ての望ましい特性および機能を示すことはできない。例えば、天然シルクタンパク質は耐久性を与えることができるが、フィルム形成に適さない、堅い、硬質の繊維を形成する可能性がある。多くの天然タンパク質は低い等電点を有し、その低い等電点は、負に帯電した基質に関するタンパク質の親和性を低下させる。皮膚および髪の毛などの標的基質が典型的には負に帯電しており、タンパク質が髪の毛または皮膚上に経時的に蓄積する可能性があり、パーソナルケア配合物においてこれは非常に問題である。さらに、2つ以上のタンパク質が、あらゆる望ましい特性を所与の配合物に与えるために必要とされる可能性があり、2つ以上のタンパク質を使用する必要性が、所与の製品に関するコストおよび生成時間を増大させる可能性がある。タンパク質を化学的に改変または四元化して、それらを所望の施用品に封入するのにより適したものにすることができる。しかしながら、さらに化学的に改変されたタンパク質は、あらゆる望ましい特性を有さない可能性がある。
【0004】
芳香剤、染料、陰影剤、UV活性剤、日焼け止め剤、ラノリン、ビタミン、漂白剤、増粘剤、シリコーン、タンパク質/ペプチド、酵素、抗菌剤および防腐剤などの活性剤が、幾つかの望ましい特性または機能を与えるために、さまざまな製品に加えられている。例えば具体的には、パーソナルケア製品では、保護および湿潤を与えるためにシリコーンが使用されている。アミノ官能シリコーンは空気中で重合し、髪の毛に関する改善された適合性、静電気の減少、および柔らかい触感を与えることができる。シリコーンは、髪の毛、皮膚、または爪に関する潤滑性および光沢を与えることもできる。所望の香気を与えるための仕上げ成分として、芳香剤が使用されている。パーソナルケア、衣料品およびホームケア製品を含めたUV感受性の施用を対象とするさまざまな製品中に、放射線防護物質が使用されている。
【0005】
多くの活性剤は能力を経時的に失い、優れた充填活性または優れたフィルム形成特性を示すことができない。多くの活性剤は水に不溶である可能性があるので、したがって活性剤は、水溶性乳濁液として施用しなければならない可能性がある。例えばタンパク質およびペプチドは、特にタンパク質システムの施用に望ましい活性剤であってよいが、配合物中への取り込みが、それらの一般的に高レベルの疎水性のために問題となる可能性があり、物質基質中への取り込みが、それらにラウンドリーまたは他のクリーニング効果をもたらし、経時的に活性剤の損失ならびに機能効率の消失を引き起こす可能性がある。したがって、活性剤が全ての施用に適している可能性はなく、幾つかの施用におけるそれらの封入は、それらの疎水性などの相互作用性、および/または結合および構造制限のために困難である可能性がある。
【非特許文献1】L.Andersson他、Large-scale synthesis of peptides、Biopolymers 55 (3)、227〜50(2000)
【非特許文献2】J.Cappello、Genetically Engineered Protein Polymers、Handbook of Biodegradable Polymers、Domb、A.T.; Kost、J.; Wiseman、D.(Eds.)、Harvard Academic Publishers、Amsterdam ; 387〜414ページ
【非特許文献3】C.H.Wong & K.T.Wang、New Developments in Enzymatic Peptide Synthesis、Experientia 47(11〜12)、1123〜9(1991)
【特許文献1】米国特許第5,243,038号
【特許文献2】米国特許第6,355,776号
【非特許文献4】H.V.Dohren他、Multifunctional Peptide Synthase、Chem.Rev 97、2675〜2705(1997)
【非特許文献5】K.H.Dittrnann、N.Gueven、C.Mayer、およびH-P.Rodemann、Protein Engineering、14、2001、157〜160
【非特許文献6】Bioconjugation、Eds.、Aslant & Dent、Macmillan Publications、ロンドン、1998、第6章
【非特許文献7】Gough、M.他、Infect Immun.1996 Dec; 64(12): 4922〜7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、タンパク質および活性剤の望ましい特性を有する調製物、ならびにタンパク質および活性剤を独特の製品および特定の用途の送達需要に慎重に適合させる方法に関する必要性が、当分野では依然として存在する。このような調製物を取り込んだ製品に関する必要性も、当分野では依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明は、多くの特定の用途に適したさまざまな製品配合物において使用する、生体分子組換え反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体を提供することによって、その必要性を満たす。反復配列タンパク質ポリマーは、活性剤が結合することができる足場を与える改変タンパク質である。特にそれらは、活性剤としてタンパク質およびペプチドを利用する能力を増大させる。生体分子結合体は、多くの疎水性、溶解性、および結合制限を克服し、それらの機能適性を増大させる、反復配列タンパク質ポリマーとタンパク質/ペプチド活性剤の間で形成され得る。特に、本発明の生体分子結合体は、完全なタンパク質環境が望ましい適用例における、タンパク質/ペプチド活性剤の使用を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を定義し記載する目的で、「反復配列タンパク質ポリマー」(RSPP)は、その反復単位が天然または合成タンパク質に由来する、反復アミノ酸配列単位を含むポリマーを指す。例えば反復配列単位は、シルク、エラスチン、およびコラーゲンなどの天然の構造支持物質に由来してよい。あるいは反復配列単位は、合成構造に由来することができる。
【0009】
本発明を定義し記載する目的で、「パーソナルケア組成物」は、これらの表面および膜を改善、清掃、美化、療法治療、ケアする目的で、皮膚、髪の毛、爪、口腔、および関連膜に施用するための製品を指す。
【0010】
本発明を定義し記載する目的で、「有効量」は、パーソナルケア組成物に加えて望ましい1つまたは複数の特性を組成物に与える、反復配列タンパク質ポリマーの量を指す。
【0011】
本発明の技術を定義し記載する目的で、用語「分散相」は、乳濁液技術の当業者によく知られている用語であり、連続相中およびその周囲に懸濁した小粒子または小滴として相が存在することを意味する。分散相は、内部または不連続相としても知られている。
【0012】
本発明を定義し記載する目的で、「活性剤」は、シリコーン、芳香剤、染料、陰影剤、UV活性剤、日焼け止め剤、ラノリン、ビタミン、漂白剤、増粘剤、タンパク質、ペプチド、酵素、抗菌剤および防腐剤だけには限られないが、これらを含めた適切な製品の成分を指すと理解されたい。
【0013】
本発明を定義し記載する目的で、本明細書で使用する用語「タンパク質」は、50を超えるアミノ酸を含むとして理解し、一方本明細書で使用する用語「ペプチド」は、50以下のアミノ酸を含むとして理解されたい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、生体分子結合体は、反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む。特定の実施形態は、反復配列タンパク質ポリマーがシルクエラスチン様ポリマー(SELP)であり、より詳細にはそれがSELP47Kを含むような生体分子結合体を対象とする。他の特定の実施形態は、少なくとも1つの活性剤がシリコーン、芳香剤、染料、陰影剤、UV活性剤、ラノリン、ビタミン、漂白剤、増粘剤、タンパク質、ペプチド、酵素、防腐剤である生体分子結合体を対象とするものであり、幾つかの実施形態では、2つ以上の活性剤から結合体が形成される。
【0015】
本発明の他の態様は、パーソナルケア製品組成物に配合した反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体、および生体分子結合体を使用するパーソナルケア製品組成物の作製法に関する。本発明の他の態様によれば、パーソナルケア製品配合物は皮膚保護用クリームである。他の実施形態は、さまざまな用途において有用な生体分子結合体を含む、乳濁液および界面活性剤システムに関する。
【0016】
本発明の他のさらに特定の実施形態は、SELPとタンパク質が融合タンパク質として結合する、タンパク質またはペプチドを含むSELPと少なくとも1つの活性剤を含む生物学的結合体に関する。この実施形態の非常に特定の態様は、抗菌性ペプチド、緑色蛍光タンパク質、放射防護P4ペプチド、および/またはコットン結合ペプチドを含めた活性剤から形成された融合タンパク質結合体を含む。一実施形態では、2つ以上のタンパク質またはペプチド活性剤がSELPと結合する。
【0017】
他の実施形態は、タンパク質またはペプチドを含む反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物とを含む、融合タンパク質結合体を含む生体分子結合体を生成する方法に関する。この方法の実施形態は、反復配列タンパク質ポリマー、および所望の適用例に適したタンパク質活性剤を選択すること、反復配列タンパク質ポリマーをコードする遺伝子、およびタンパク質またはペプチドを含む少なくとも1つの活性剤をコードする遺伝子を得ること、反復配列タンパク質ポリマーをコードする遺伝子、および少なくとも1つの活性剤をコードする遺伝子から結合体遺伝子を構築すること、結合体遺伝子を発現させて融合タンパク質結合体を含む発現産物を形成すること、融合タンパク質結合体を含む発現産物を発酵させること、および融合タンパク質結合体を精製することを含む。他の特定の実施形態は、活性剤として特定のタンパク質、および/または2つ以上のタンパク質またはペプチド活性剤を使用する方法を対象とする。
【0018】
本発明の他の実施形態は、少なくとも1つの所定の望ましい機能に適合した生体適合物質を提供する方法であって、反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む生体分子結合体を選択することであって、反復配列タンパク質ポリマーがシルクエラスチンポリマーを含み、少なくとも1つの活性剤がタンパク質またはペプチドを含み、さらに結合生成物が所定の望ましい機能に従う融合タンパク質を含むこと、および生体分子結合体を物質中に取り込ませることを含む方法を対象とする。他の態様では、少なくとも1つの所定の望ましい機能に適合した生体適合物質を提供する。非常に特定の実施形態は、個々の生体分子結合体に関する適用例を提供する。
【0019】
したがって、本発明の1つの特徴は、反復タンパク質ポリマー活性剤結合体、それらの生成法、および幾つかの利点を与えるためにそれらを取り込んだ製品組成物および物質を提供することである。
【0020】
本発明は、少なくとも1つの活性剤と結合してさまざまなパーソナルケア、ヘルスケア、ホームケア、および他の消費者製品中の成分として働く、反復単位を含む組換え反復配列タンパク質ポリマーを使用する。反復配列タンパク質ポリマーの反復単位は、シルク、エラスチン、およびコラーゲンなどの物質を支持する天然構造であってよく、あるいは反復単位は合成構造であってよい。典型的には本発明は、反復配列タンパク質ポリマーを合成すること、反復配列タンパク質ポリマー活性剤生体分子結合体を形成すること、および製品配合物に、あるいは生体分子結合体によって与えられる特異的機能または特性が望まれる物質に直接、反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体を加えることに関する。
【0021】
本発明の組換え反復配列タンパク質ポリマーは、天然または非天然の反復単位から構成される。本出願のファイリングと同様に、生物システムに存在することが知られている600を超える反復タンパク質配列が存在する。例えば、反復タンパク質配列を含むよく知られているタンパク質には、アブダクチン、エラスチン、バイサス、鞭毛状絹糸、しおり絹糸、グルテン高分子量(HMW)サブユニット、チチン、フィブロネクチン、レミニン、およびコラーゲンがある。さらに、合成反復単位を使用することができる。個々の反復単位は一般に3〜50個のアミノ酸を含み、通常同じ単位中に少なくとも2回現れる同じアミノ酸を有するであろう。典型的には、個々の単位は約3〜35個のアミノ酸を含むであろう。したがって、それぞれ個々の単位は、典型的には約3〜35個のアミノ酸で形成されるであろう。異なる単位の組合せを1つに合わせて、1つのブロックポリマーまたは他のブロックポリマーを形成することができる。典型的にはポリマーは、次式:
Ty[(An)x(B)b(A'n')x'(B')b'(A"n")x"]iT'y'
を有し、上式でTが約1〜約100アミノ酸、通常1〜60アミノ酸のアミノ酸配列であり、これは任意の配列であってよく、一般に反復タンパク質ポリマー
中のアミノ酸全数の20%未満であり、
yが0または1であり、
T'およびy'がそれぞれTおよびyと同じであるか異なっており、類似の記号はそれらの相当物と同じ定義を有し、
Aが反復アミノ酸配列の個別の単位であり、
nが少なくとも2であり、かつ250を超えない整数であり、
xが0または少なくとも1の整数であり、A中の異なるアミノ酸の数と共に変化して、それぞれのA反復配列中に少なくとも30のアミノ酸を与え、
A'、n'、およびx'がそれぞれA、n、およびxと同じであるか異なっており、少なくとも1つが異なっており、類似の記号はそれらの相当物と同じ定義を有し、
A"、n"、およびx"がそれぞれA、n、およびxと同じであるか異なっており、少なくとも1つが異なっており、類似の記号はそれらの相当物と同じ定義を有し、
Bが4〜50アミノ酸のアミノ酸配列であり、通常は生物学的または化学的機能または活性をもたらす機能配列であり、
bが0〜3であり、
B'およびb'がそれぞれBおよびbと同じであるか異なっており、類似の記号はそれらの相当物と同じ定義を有し、かつ
iが1〜100、通常は1〜50、さらに通常は1〜35である。
【0022】
さらに、タンパク質ポリマーは、反復A、A'およびA"単位と連結したアミノ酸配列、または個々のA、A'またはA"単位の間で連結したアミノ酸配列を有することができる。これらの連結配列は典型的には1〜10個のアミノ酸であり、反復単位と連結するために働く。これらの反復ポリマーは、化学合成(例えば、L.Andersson他、Large-scale synthesis of peptides、Biopolymers 55 (3)、227〜50(2000))、遺伝的操作(例えば、J.Cappello、Genetically Engineered Protein Polymers、Handbook of Biodegradable Polymers、Domb、A.T.; Kost、J.; Wiseman、D.(Eds.)、Harvard Academic Publishers、Amsterdam ; 387〜414ページ)、および酵素合成(例えば、C.H.Wong & K.T.Wang、New Developments in Enzymatic Peptide Synthesis、Experientia 47(11〜12)、1123〜9(1991))の一般に認められている方法によって合成することができる。例えば、本発明の反復配列タンパク質ポリマーは、その開示が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,243,038号および米国特許第6,355,776号中に記載された方法を使用して合成することができる。他の例では、反復配列タンパク質ポリマーは、非リボソームペプチド合成酵素(例えば、H.V.Dohren他、Multifunctional Peptide Synthase、Chem.Rev 97、2675〜2705(1997))を使用して合成することができる。
【0023】
特に興味深い個々の反復アミノ酸配列単位には、シルク、エラスチン、コラーゲン、アブダクチン、バイサス、グルテン、チチン、エクステンシン、およびフィブロネクチン様タンパク質中に見られる単位がある。シルク様タンパク質は、SGAGAG(G=グリシン;A=アラニン;S=セリン)(配列番号1)の反復単位を有する。この反復単位は、GAGAG(SGAGAG)8SGAAGY(Y=チロシン)(配列番号2)として表すことができる、天然に存在するシルクフィブロインタンパク質中に見られる。エラスチン様タンパク質は、GVGVP(V=バリン;P=プロリン)(配列番号3)の塩基反復単位を有する。この反復単位は、天然に存在するエラスチン中に見ることができる。コラーゲン様タンパク質は、G-x-y(x=任意のアミノ酸、しばしばアラニンまたはプロリン;y=任意のアミノ酸、しばしばプロリンまたはヒドロキシ-プロリン)の反復単位を有する。アブダクチン様タンパク質は、GGFGGMGGGx(F=フェニルアラニン;M=メチオニン、x=任意のアミノ酸)(配列番号4)の塩基反復単位を有する。バイサス様タンパク質は、(GPGGG)(配列番号5)の反復単位を有する。高分子量サブユニットのグルテン様タンパク質は、PGQGQQ(配列番号6)、GYYPTSPQQ(配列番号7)、およびGQQ(Q=グルタミン;Y=チロシン;T=スレオニン)配列番号8)の反復単位を有する。チチン様タンパク質はPPAKVPEVPKKPVPEEKVPVPVPKKPEA(K=リシン、E=グルタミン酸)(配列番号9)の反復単位を有しており、心筋、腰筋、およびヒラメ筋中に見られる。エクステンシン様タンパク質は、SPPPPSPKYVYK(配列番号10)の反復単位を有する。フィブロネクチン様タンパク質は、RGDS(R=アルギニン;D=アスパラギン酸)(配列番号11)
の反復単位を有する。
【0024】
当該の他の反復単位は、グリアジン、膠様ポリポリペプチド、氷核活性タンパク質、ケラチン、ムシン、RNAポリメラーゼII、およびレザリン中に見られる。グリアジンは、PQQPY(配列番号12)の反復単位を有する。膠様ポリペプチドは、PTTTK(配列番号13)の反復単位を有する。氷核活性タンパク質は、AGYGSTGT(配列番号14)の反復単位を有する。ケラチンは、YGGSSGGG(配列番号15)またはFGGGS(配列番号16)の反復単位を有する。ムシンは、TTTPDV(配列番号17)の反復単位を有する。RNAポリメラーゼIIは、YSPTSPS(配列番号18)の反復単位を有する。さらに、ゴム様タンパク質のレザリンは反復単位を含む。
【0025】
本発明の反復配列タンパク質ポリマーを改変して、適切な反復単位を含ませて望ましい特性を与えることができることは、当業者によって理解されよう。例えば、湿潤性を有し、硬度または強度に関する高いガラス転移温度を有し、熱感受性用途に関する高いくもり温度を有し、あるいは個々の活性剤の物質中への送達を増大させる、反復配列タンパク質ポリマーを生成することができる。同様に、タンパク質と幾つかの基質の親和性を増大させるための高い等電点を有する、タンパク質を生成することができる。タンパク質の分子量を選択して、望むならば水溶性を増大または低下することができる。
【0026】
天然または合成反復単位を使用する反復配列タンパク質ポリマーは、異なる単位、それぞれのマルチマー中の単位数、単位間の間隔、およびマルチマー組合せ構築体の反復数を適切に選択することによって、それらの性質を変えることができる。マルチマーとは、上記の式でTy[(An)x(B)b(A'n')x'(B')b'(A"n")x"]iT'y'によって表されるポリマーの一部分を指す。単位間の間隔とは、前式でBまたはB'によって表される他のアミノ酸配列を指す。好ましいポリマーは、同じモノマー単位のみを有するポリマーと異なる性質を有するシルク-エラスチンポリマーを与えるための、シルク単位とエラスチン単位の組合せである。
【0027】
望ましい特性の組合せを有する、本発明の反復配列タンパク質ポリマーを生成することができることは、当業者によって理解されよう。例えば、シルク反復単位およびエラスチン反復単位を有するポリマーを生成して、シルク反復単位による耐久性を与え、エラスチン反復単位による柔軟性を与えることができる。さらに、シルク-エラスチンポリマーは、個々のモノマー単位が示すことができない、優れた透明フィルムおよびヒドロゲル形成などの他の望ましい性質を示すことができる。シルク-エラスチンポリマーは、親水性および水溶性であってよい。シルク-エラスチンポリマーは、熱感受性用途において望ましい高いくもり温度を示すこともできる。シルク-エラスチンポリマーは、ポリマーを皮膚および髪の毛に対してより直接的なものにすることができる高い等電点を有してよい。シルク-エラスチンポリマーは繊維およびフィルムへの自己集合をさらに示すことができ、これは幾つかの適用例において望ましい可能性がある。
【0028】
本発明の反復配列タンパク質ポリマーが単分散または多分散であってよいことは、当業者によってさらに理解されよう。本発明を定義し記載する目的で、「単分散」ポリマーは、1つの明確な分子量を有するポリマーである。本発明を定義し記載する目的で、「多分散」ポリマーは、タンパク質分解に施され分子量の分布があるポリマーである。
【0029】
ひとたび適切な反復タンパク質を合成および精製した後、それを1つまたは複数の適切な活性剤と結合させて、反復配列タンパク質ポリマー活性剤生体分子結合体を形成することができる。本発明を定義し記載する目的で、「反復配列タンパク質ポリマー活性剤生体分子結合体」は、少なくとも1つの活性剤部分と共有結合した少なくとも1つの反復配列タンパク質ポリマー部分を有する化合物を指すと理解されよう。本発明を定義し記載する目的で、「活性剤」は、シリコーン、芳香剤、染料、陰影剤、UV活性剤、日焼け止め剤、ラノリン、ビタミン、漂白剤、増粘剤、タンパク質、ペプチド、酵素、抗菌剤および防腐剤だけには限られないが、これらを含めた適切な生成物の成分を指すと理解されたい。本発明の生体分子結合体は任意の適切な方法で形成することができ、本発明の結合体は任意の結合形であってよい。例えば、結合体はブロックポリマーであってよい。
【0030】
任意の適切なシリコーンを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。適切なシリコーンには、エポキシ官能基を含むシリコーンがある。このようなエポキシ官能シリコーンを使用して、エポキシ官能基とリシンなどのアミン含有基を適切な反復配列タンパク質ポリマー上で連結させることによって、反復配列タンパク質ポリマーシリコーン結合体を形成することができる。他の適切なシリコーンには、(3-グリシドキシプロピル)ジエトキシメチルシランおよび3-クロロプロピルメチルジメトキシシランなどのポリジメチルシロキサンがあり、これらを使用して本発明の結合体を形成することができる。さらに、トリメチルシロキシケイ酸およびPEG(G.E.Silicones、Waterford、ニューヨークからのPEG/PPG-20/15およびPEG-12)などのシリコーン樹脂を使用して、メイクアップおよびスキンケア配合物に使用するための、生体分子結合体を形成することができる。
【0031】
ジメチコンコポリオール、セチルジメチコンポリオール、およびカプリルジメチコンエトキシグルコシドなどのシリコーン界面活性剤を使用して、皮膚用およびサンケア配合物に使用するための結合体を形成することができる。ステリルメチコン、ラウリルメチコン、およびステアロキシジメチコンなどのアルキル変性シリコーンは、スキンケア製品配合物に使用するための結合体に適している可能性がある。ゴム流体混合物、フェニル流体、およびジメチル流体は、ヘアケア配合物に取り込ませることができる結合体に適している可能性がある。適切なシリコーンの第四級アンモニウム塩を使用して、髪の毛用およびスキンケア製品配合物に充分なコンディショニング性を与えることができる結合体を形成することができる。例えば、塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。シリコーンは1つまたは複数のアミノ官能基を含み、充分な嵩を与えることができる。例えばシリコーンは、アミノジメチコンまたはトリメチルシルオキシアモジメチコンであってよい。
【0032】
任意の適切な芳香剤分子を使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。例えば、桂皮酸アリルを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。他の芳香剤分子には、アジピン酸、フェニル酢酸、吉草酸シトロネリル、およびバニリン酸があるが、これらだけには限られない。任意の適切なビタミンを使用して、本発明の結合体を形成することができる。例えば、ビタミンCを使用することができる。さらに、B、D、Kなどの他のビタミン、およびそれらの誘導体を使用することができる。
【0033】
任意の適切なUVまたは放射線防護活性剤を使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。例えば、p-ヒドロキシ桂皮酸は活性剤として使用することができる。さらに、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、メトキシ桂皮酸オクチル、ベンゾフェノン-3、二酸化チタン、およびサリチル酸オクチル、ブチルメトキシジベンゾイメタン、メトキシ桂皮酸アミル、およびメンチルアンスラニレートなどの他のUV活性剤、およびそれらの誘導体を使用することができる。天然由来のペプチドシステムUV物質(例えば、K.H.Dittrnann、N.Gueven、C.Mayer、およびH-P.Rodemann、Protein Engineering、14、2001、157〜160を参照)生体分子結合体は、望むときにuv線に対してさまざまな表面を保護する適用例において使用することができる。非制限的な例には、織物用繊維、損傷包帯、皮膚用クリーム、およびUV感受性表面に施すコーティングがある。UV感受性用途における特定の有用性を有する特異的な結合体は、P4-SELP47Kである。
【0034】
任意の適切な染料を使用して、本発明の結合体を形成することができる。例えば、フルオレセイン5(6)イソチオシアネート(FITC)を使用することができる。任意の適切な防腐剤を使用して、本発明の結合体を形成することができる。例えば、メチルおよびプロピルパラベン、イミダジリジニル尿素、およびソルビン酸を、本発明の活性剤として使用することができる。任意の適切な酵素を使用して、本発明の結合体を形成することができる。例えば、ヒドロラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アミラーゼ、カルボヒドラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ、およびQ10またはPQQコエンザイムを使用することができる。
【0035】
反復配列タンパク質ポリマーと融合タンパク質を形成することができる、多くのタンパク質およびペプチドを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。このようなタンパク質には、抗菌性ペプチド(AMP)、コットン結合ペプチド(CBP)、ペプチドシステムUV防護物質、および緑色蛍光タンパク質(GFP)があるが、これらだけには限られない。当業者は、望ましい官能基を含むか、あるいは反復配列タンパク質ポリマーと融合することが可能な取り込まれる基質に望ましい特性を与えるタンパク質またはペプチドを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができることを即座に理解するであろう。
【0036】
本発明の生体分子結合体は、任意の適切な方法で形成することができる。一般には、化学的または生化学的方法を選択して、反復配列タンパク質ポリマーと活性剤の結合物質を作製するためにはどの官能基が利用可能であるかに基づいて、結合体を形成するであろう。例えば、熱反応、化学支援型結合体、例えばグルタルアルデヒド、ジイソシアネート、カルボジイミド、リビングラジカル重合を使用する結合体など、および酵素支援型結合体、例えばリパーゼおよびトランスグルタミナーゼを使用する結合体などを使用して、本発明の生体分子結合体を形成することができる。一般に活性剤は、エポキシ、クロロアルキル、アミノ、カルボキシ、スルフヒドリル、ビニルスルホンなどだけには限られないが、これらを含めた官能基を有することができる。Bioconjugation、Eds.、Aslant & Dent、Macmillan Publications、ロンドン、1998、第6章中に概説された方法を使用して、本発明の結合体を形成することができる。
【0037】
反復配列タンパク質ポリマーとタンパク質、ペプチドまたは酵素活性剤との融合体から形成される生体分子結合体は、当分野でよく知られている生物学的生成法、例えばDNA合成、ポリメラーゼ連鎖反応、組換えDNA技術、微生物発酵、および最新のタンパク質回収技法によって形成することができる。これらの技法によって、生体適合物質が所定の物理的、機能的および生物学的性質を示すように生体適合物質の成分として取り込まれることができる、特異的に設計された、配列を調節した反復配列タンパク質ポリマー-タンパク質/ペプチド/酵素結合体を生成することができる。
【0038】
本発明の反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体は、任意の適切なパーソナルケア製品配合物に加えることができる。例えば、本発明の結合体はヘアリンス配合物に加えることができる。本発明の結合体は、シャンプー、ジェル、ムース、および他のヘアケア製品中に使用することができる。本発明の結合体は、モイスチャライザー、トーナー、およびメーキャップなどのスキンケア製品に使用するのに適している可能性がある。本発明の結合体は、マニキュアおよびマニキュア除光液などのネイル製品に使用するのに適している可能性もある。
【0039】
生体分子結合体は、製品配合物中に任意の適切な量で存在することができる。例えば、反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体は、組成物の約0.001重量%〜約10重量%を構成することができる。より一般的には、反復タンパク質は組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成することができ、より好ましくは組成物の約0.01重量%〜約1重量%を構成することができる。
【0040】
本発明の一実施形態によれば、反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体は、さまざまな乳濁液に配合することができる。乳濁液は、湿潤、軟化性、フィルム形成、触感改善、光学的効果、強化性、堅実性、およびコンディショニング性を与えることができる。乳濁液は、
水 適量
乳化剤 1〜5%
増粘剤/安定剤 0.1〜3%
皮膚軟化薬 2〜10%
乳白剤 0〜10%
湿潤剤 0〜10%
反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体 0.001〜10%
機能成分 0.001〜25%
防腐剤 適量
仕上げ成分 適量
を含むことができる。
【0041】
乳濁液が他の適切な成分をさらに含むことができることは理解されよう。
【0042】
適切な乳濁液の性質は、アニオン性、カチオン性、または非イオン性であってよい。例えば、適切な乳濁液にはステアリン酸TEA、エトキシル化脂肪酸、またはアルコールがあるが、これらだけには限られない。適切な増粘剤は、生成物の粘度またはレオロジーを改変するために使用する成分の任意の組合せであってよい。増粘剤は天然のものであってよく、天然の増粘剤はシリカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、キサンタンガム、およびアルギン酸塩を含むことができる。増粘剤はあるいはポリマーであってよく、ポリマー増粘剤はアクリル酸架橋ポリマー、ポリアクリル酸、および改変セルロースを含むことができる。増粘剤は脂肪酸およびアルコールなどの結晶物質を含むこともでき、適切な結晶物質にはステアリルアルコールまたはステアリン酸がある。
【0043】
皮膚軟化薬は、製品の触感および美的特徴を改変するために使用する1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。適切な皮膚軟化薬には:ミリスチン酸イソプロピルおよびステアリン酸オクチルドデシルステアロイルなどの単純および複合エステル;カプリン/カプリルトリグリセリドなどのトリグリセリド;カルナウバおよびシェアバターなどのワックス;ヒマシ、ココナッツ、および米ぬか油などの植物または動物油;ステアリル、ミリスチル、セチルおよびベヘニルアルコールなどの脂肪アルコール;およびステアリン酸、ラウリン酸およびオレイン酸などの脂肪酸がある。
【0044】
乳白剤は、製品の外観を改変するために使用する1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。適切な乳白剤には、ステアリル、ミリスチル、セチルおよびベヘニルアルコールなどの脂肪アルコール、ならびにステアリン酸、ラウリン酸およびオレイン酸)などの脂肪酸があるが、これらだけには限られない。適切な湿潤剤は、配合物中の湿気を保持しユーザーに水和作用を与えるために使用する1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。適切な湿潤剤には、グリセリン、プロピレングリコール、およびソルビトールがあるが、これらだけには限られない。
【0045】
機能成分は、使用時に特定の影響を与えるために加える、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。これらはメトキシ桂皮酸オクチル、ベンゾフェノン-3、二酸化チタン、およびサリチル酸オクチルなどのUV吸収剤;VP/エイコセンポリマーなどのフィルム形成物質;ペプチドおよびタンパク質、αヒドロキシ酸、ならびにレチノールおよびレチノイン酸誘導体などの薬用化粧品;トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにアスコルビン酸およびそれらの誘導体などの抗酸化剤;B、D、Kなどのビタミンおよびそれらの誘導体;水酸化アルミニウムおよび水酸化ジルコニウムなどの制汗薬;チオグリコール塩などの脱毛剤;サリチル酸および過酸化ベンゾイルなどの抗アクネ剤;シリケート、軽石、およびポリエチレンなどの研磨材および皮膚摩擦材;および植物、果物、野菜および海洋供給源の抽出物を含むことができる。
【0046】
適切な防腐剤は、統制機関によって承認され化粧品用途における使用が認められている成分の任意の組合せであってよい。例えば、メチルおよびプロピルパラベン、イミダジリジニル尿素、ならびにソルビン酸を防腐剤として使用することができる。仕上げ成分は、配合物の特性を調節するために加える、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。仕上げ成分は、芳香剤;着色剤;四ナトリウムEDTAなどのキレート剤;およびクエン酸およびリン酸および塩などのpH緩衝剤を含むことができる。
【0047】
当業者は、さまざまなパーソナルケア用途用に、例示的な乳濁液配合物を改変することができる。乳濁液配合物を使用して、クリーム、ローション、モイスチャライザー、フェイシャルクレンザー、脱毛剤、マスク、サンケア製品、制汗薬、アクネ製品、ファンデーション、ヘアコンディショナー、縮毛緩和剤、ヘアトリートメント、マスカラ、ネイル製品、リップ製品、シェービング製品、および練り歯磨きなどを形成することができる。活性剤が反復配列タンパク質ポリマーと結合する場合、一般にその活性剤は乳濁液配合物中に別々に含まれないことは理解されよう。しかしながら、シリコーンなどの幾つかの活性剤は、必要に応じて配合物中に結合形または非結合形で含ませることができる。
【0048】
本発明の他の実施形態によれば、反復配列タンパク質ポリマー活性剤生体分子結合体は、さまざまな界面活性剤システムに配合することができる。界面活性剤システムは、湿潤、軟化性、フィルム形成、触感改善、光学的効果、強化性、堅実性、およびコンディショニング性を含めた幾つかの性質をパーソナルケア製品に与えることができる。典型的な界面活性剤システムは、以下の成分だけには限られないが、これらを含むことができる:
水 適量
一次界面活性剤 0.1〜15%
二次界面活性剤 0.1〜10%
レオロジー改変剤 0.1〜5%
アルコール 0〜25%
機能成分 0〜10%
コンディショニング成分 0〜5%
防腐剤 適量
仕上げ成分 適量
反復配列タンパク質ポリマー活性剤結合体 0.001〜10%。
【0049】
界面活性剤システム中に他の適切な成分を含むことができることは理解されよう。
【0050】
一次界面活性剤は、表面張力を低下させるか気泡を生成させるために使用する、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。界面活性剤は、硫酸アルキル、硫酸エーテル、αオレフィンスルホン酸、および石鹸などのアニオン性界面活性剤;グルコシド、グルタメート、カルボキシレート、イセチオネート、カルボキシレート、グリシネート、およびラウラムホアセテートなどの両性界面活性剤;ベタインおよびサルタンなどの両性イオン性界面活性剤;または脂肪アルコールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、およびアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤を含むことができる。
【0051】
二次界面活性剤は、気泡の特性および性質を変え、気泡を安定化させ、または炎症を低下させるために使用する、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。これらは例えば、ココアミドプロピルベタイン、モノエタノールアミド、およびジエタノールアミドを含むことができる。適切なレオロジー改変剤は、生成物の外見、粘度またはレオロジーを改変するために使用する、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。レオロジー改変剤は、塩、シリカ、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、キサンタンガム、グアール誘導体、およびアルギン酸塩を含めた天然のレオロジー改変剤であってよい。レオロジー改変剤は、アクリル酸架橋ポリマー、改変セルロース、およびポリアクリル酸を含めたポリマーレオロジー改変剤であってよい。レオロジー改変剤は乳白剤および結晶物質、例えば脂肪酸およびステアリルアルコールを含めたアルコールまたはステアリン酸などを含むことができる。適切なアルコールは、収斂性、冷却性、揮発性、または可溶性を与えるために加えられる、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。例えば適切なアルコールには、エタノールおよびイソプロパノールがある。
【0052】
機能成分は、使用時に特定の影響を与えるために加える、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。これらはメトキシ桂皮酸オクチルおよびベンゾフェノン-3などのUV吸収剤;ポリビニルピロリドン(PVP)およびPVP/ポリビニルアルコール(PVA)ポリマーなどのスタイリングおよびフィルム形成物質;ペプチド、タンパク質、αヒドロキシ酸、ならびにレチノールおよびレチノイン酸誘導体などの薬用化粧品;トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにアスコルビン酸およびそれらの誘導体などの抗酸化剤;ビタミンB、D、Kなどのビタミンおよびそれらの誘導体;サリチル酸および過酸化ベンゾイルなどの抗アクネ剤;ジンクピリチオンおよび硫化セレンなどのフケ防止剤;およびカチオン性物質などのコンディショニング剤、ならびに植物、果物、野菜および海洋供給源の抽出物を含むことができる。
【0053】
コンディショニング剤は、湿潤、触感、滑らかさ、静電気防止効果または輝きを与えるために加える、1つまたは複数の成分の任意の組合せであってよい。適切なコンディショニング剤は、ポリクアテルニウム-10およびポリクアテルニウム-11などのカチオン性ポリマー;塩化セチルトリメチルアンモニウムなどの第四級脂肪酸;動物性または植物性タンパク質およびそれらの誘導体、例えば加水分解された小麦タンパク質および加水分解されたコラーゲンなど;ジメチコンン、アモジメチコンン、フェニルトリメチコン、および揮発性シリコーンなどのシリコーン誘導体;ミリスチン酸イソプロピルおよびカプリン/カプリルトリグリセリドなどの皮膚軟化油;ならびにグリセリンおよびプロピレングリコールなどの湿潤剤を含むことができる。
【0054】
当業者は、さまざまなパーソナルケア用途用に、この例示的な界面活性剤システム配合物を改変することができる。例えば、界面活性剤配合物を改変して、シャンプー、ボディクレンザー、フェイシャルクレンザー、ヘアコンディショナー、ヘアゲル、ヘアトリートメント、フェイシャルトーナー、芳香製品、およびうがい薬などを形成することができる。活性剤が反復配列タンパク質ポリマーと結合する場合、一般にその活性剤は界面活性剤配合物中に別々に含まれないことは理解されよう。しかしながら、シリコーンなどの幾つかの活性剤は、必要に応じて配合物中に結合形または非結合形で含ませることができる。
【0055】
本発明の反復配列タンパク質ポリマー活性剤生体分子結合体を工学処理して、多くの望ましい性質をパーソナルケア製品に与えることができる。例えば、本発明の結合体は、改善された皮膚および髪の毛の触感、濡れた髪の毛または乾燥した髪の毛に対する潤滑性、改善された寿命、ならびに優れたフィルム形成および架橋をもたらすことができる。本発明の反復配列タンパク質ポリマー成分は、湿潤性の低下を引き起こさずに髪の毛、皮膚および爪を実質的に改善することができる。本発明の結合体はさらに、界面活性剤を使用せずに、シリコーンなどの活性剤をパーソナルケア配合物中に取り込ませることができる。さらに本発明の結合体が、髪の毛に対する感知できるレベルのタンパク質蓄積を引き起こす可能性はない。何故ならそれらは、洗髪によって除去することができるからである。
【0056】
本発明の結合体の反復配列タンパク質ポリマー部分および活性剤部分を選択して、望ましい性質を与えることができることは、当業者によって理解されよう。例えば、湿潤性を与える活性剤を選択しながら、高い等電点を有する反復配列タンパク質ポリマーを選択して、髪の毛および皮膚に対する親和性を増大させることができる。本発明の結合体の反復配列タンパク質ポリマーおよび/または活性剤部分を選択して、1つまたは複数の望ましい性質を結合体に与えることができることがさらに理解されよう。
【0057】
本発明の他の実施形態によれば活性剤は、タンパク質融合法によって、反復配列タンパク質ポリマーと生体分子結合体を形成することができる、タンパク質、ペプチドまたは酵素を含む。本発明を定義する目的で、本明細書で使用する用語「融合タンパク質」は、化学結合を含めたカップリングによって2つの別個のタンパク質/ペプチドを組み合わせた、生成物を意味すると理解される。化学、酵素、物理、または遺伝子工学手段を使用して、融合タンパク質を作製することができる。これらの結合体の形成において特に有用な、具体的な反復配列タンパク質ポリマーはSELP47K(配列番号19)である。個々の結合体の実施形態の例には、抗菌性ペプチド(AMP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、コットン結合ペプチド(CBP)および放射防護P4とのSELP47K結合体から構成されるものがある。これらの工学処理したバイオポリマーは天然ポリマーと非常に似ているが、他の望ましい機能を与える。一態様は、タンパク質またはペプチド活性剤を取り込んでいる反復配列タンパク質ポリマーを与える方法に関するものであり、以下の実施例で詳細に述べる他の態様は、当分野でよく知られている生物学的生成法、例えばDNA合成、ポリメラーゼ連鎖反応、組換えDNA技術、微生物発酵、および最新のタンパク質回収技法を使用する方法を与えるものであり、これらの技法は、所定の性質を有する、特異的に設計された、配列を調節した反復配列タンパク質ポリマーを与える。他の態様は、これらの結合体を取り込む生体適合物質および施用物を対象とする。
【0058】
本発明の特定の実施形態は、AMP物質を取り込む新規の生物工学処理した生体適合物質に関する。抗菌性ペプチド(AMP)は、微生物感染に対するヒトおよび植物を含めたすべての生物の第一の非特異的な防御システムである。これらのリボソーム合成ペプチドは、微生物に対する強力な防御物質である。それらの最も顕著な性質がそれらに対する微生物耐性の増大であることは一般的ではない。この理由のために、抗菌物質を作製する際にAMPを使用することによって、微生物感染に対する長期の有効性および安定性が与えられる。このような用途の非制限的な例には、UV防御織物用繊維を含めた織物用繊維;空気フィルターおよび外科手術用マスクを含めたフィルター;外科手術用ガウン、および生物戦防御用に設計された衣類を含めた保護衣類;損傷用包帯;皮膚用クリーム;ならびに例えば微生物、胞子およびウイルスに対して防御すると思われる衛生関連表面を与えることを目的とするコーティング中への取り込みがある。
【0059】
他の特定の実施形態は、反復配列タンパク質ポリマーおよび緑色蛍光タンパク質(GFP)から形成される結合体を与える。さらに特定の実施形態は、SELP47K-GFP結合体を与える。これらの結合体は、調査ツール、例えば遺伝子発現のリアルタイムレポーターとしての、GFPの有用性を広げる可能性を与える。さらに、GFP成分を含む結合体は、それらを含む生体適合物質を特定の波長の光に曝すと蛍光性を与えることによって、調査および/または同定手段を与えることができる。例えば、徘徊する傾向があるアルツハイマーの患者または子供は、これらの結合体を含む衣服を着用することができ、あるいは軍人は、軍の監督者が味方と敵を区別することができるような衣服を着用することができる。GFP遺伝子はClonetech、Inc.から得ることができる。反復配列タンパク質ポリマーGFP結合体は、以下に与える実施例に従い構築される。
【0060】
他の特定のタンパク質融合生体分子結合体の実施形態は、反復配列タンパク質ポリマーおよびコットン結合ペプチド(CBP)から形成される結合体を与える。例えば織物および織物用繊維またはコットンゲージ包帯中に、CBPを取り込ませることによって、これらの物質を望ましい生体適合物質とさらに接触しやすくなる。他の適用例は織物のケア、およびコットンシステム衣類の改善されたクリーニングに適した洗剤配合物を与えるための、結合体を含む生体適合物質の使用に関する。本発明で使用したCBPは、典型的な洗濯洗浄条件下における、ペプチドのライブラリーのスクリーニングから誘導した。反復配列タンパク質ポリマーCBP結合体は、コットン基質に分子を向けるのに有用であるとして当分野で知られている、セルロース結合単位(CBM)の使用に優る利点を与える。CPBはCBMと異なり、用途特異的にすることができる。例えばCPBを調節して、pH、伝導度、洗剤、溶媒の存在などに関する適用例の要件に適合させることができる。他方でCBMの使用は、反応条件がCBMの結合要件と同じである適用例に限られる。この結合体を形成するために使用する、非常に特異的な反復配列タンパク質ポリマーはSELP47Kであり、SELP47Kとの結合体を形成するために使用するCPBは、欧州製洗剤標準の下でコットンと結合するCPBである。したがって、SELP47K-CPB結合体を使用して、洗浄サイクル中に保持されるように、広くさまざまな多量の物質とコットン材料を結合させることができる。CBMは洗浄条件下では結合せず、したがって洗濯用途において限られた有用性を有する。
【0061】
本発明の他の特定の態様は、放射防護P4-反復配列タンパク質ポリマー結合体を与え、非常に特異的な実施形態はSELP47K-P4を含む。他の態様は、これらの天然由来のペプチドシステムUV物質(例えば、K.H.Dittrnann、N.Gueven、C.Mayer、およびH.P.Rodemann、Protein Engineering、14、2001、157〜160を参照)を取り込んだ生体適合物質を与える。このような結合体は、望むときにUV線に対して表面を保護する適用例において使用することができる。幾つかの非制限的な例には、織物用繊維、損傷包帯、皮膚用クリーム、およびUV感受性表面に施すコーティング中への取り込みがある。これらの工学処理したバイオポリマーは天然ポリマーと非常に似ているが、結合体と同様に、UV線への露出から表面を保護し、それによって物質の価値の消失を防ぐこともできる。
【0062】
他の態様は、設計および/または簡単な混合によって1つに結合した結合体を与える。例えば、前に記載し以下の実施例で詳細に述べる、AMP-反復配列タンパク質ポリマー結合体、P4-反復配列タンパク質ポリマー結合体、CBP-反復配列タンパク質ポリマー結合体、およびGFP-反復配列タンパク質ポリマー結合体は、de novo設計および/または簡単な混合によって1つに結合させて、ホームケア、パーソナルケア、生物戦防御用、ヘルスケア、および他の消費者および産業市場区分における、さまざまな用途に望ましい多機能の生体適合物質を作製することができる。
【0063】
特異的な結合をした結合体の実施形態では、抗菌性/UV耐性皮膚結合タンパク質を、非修飾SELP47KのN末端および/またはC末端領域にセクロピンA-メレチンおよび/またはMBI-28ヘキサマーを加えるための以下の実施例で開示した方法を使用して、AMPヘキサマーを加えるための骨格タンパク質として、P4-SELP47kタンパク質を使用して構築する。さらに特定の実施形態は、コットンS2E1-SELP47Kタンパク質をAMPヘキサマーを加えるための骨格タンパク質として使用する、抗菌性/コットン結合タンパク質を含み、一方他の特定の実施形態は、AMPヘキサマーを非修飾SELP47KのC末端またはN末端領域に加え、一方コットン結合ヘキサマーを、コットン結合ヘキサマーの非修飾SELP47Kへの添加を例示する、実施例で開示した方法を使用して生成するAMP-SELP47K結合体の他端に加える、抗菌性/コットン結合タンパク質を含む。他の結合をした実施形態は、N末端および/またはC末端領域にコットン結合ヘキサマーを加えるための骨格タンパク質としてP4-SELP47Kタンパク質を使用する、コットン結合/UV耐性皮膚結合タンパク質を含む。他の結合をした結合体の実施形態は、非修飾SELP47Kへのコットン結合ヘキサマーの添加に関して開示した方法を使用して、N末端またはC末端領域にコットン結合ヘキサマーを加えるための骨格タンパク質としてP4-SELP47Kタンパク質を使用する、コットン結合/抗菌性/UV耐性皮膚結合タンパク質を含む。AMPヘキサマーは、非修飾SELP47KへのAMPヘキサマーの添加に関して前の実施例で開示した方法を使用して、生成するコットンP4-SELP47K結合体の他端に加える。
【0064】
本発明をさらに容易に理解することができるようにするため、本発明を例示することを目的とするが、本発明の範囲を制限することは目的としない、次の実施例を言及する。
【0065】
(実施例1)
遺伝子工学処理したシルク-エラスチンポリマー(SELP47K)を、大腸菌細菌から単離し精製した。SELP47K組換えDNAを含む大腸菌は、サンディエゴ、カリフォルニアのProtein Polymer Technologies、Inc.から得た。米国特許第5,243,038号および米国特許第6,355,776号中に記載された方法に従い、この大腸菌を調製することができる。シルク-エラスチンポリマーSELP47Kは、頭部-[(GAGAGS)2(GVGVP)3GKGVP(GVGP)4(GAGAGS)2]13-尾部(配列番号19)の一般構造を有していた。このポリマーは886個のアミノ酸を含んでおり、780個のアミノ酸は反復単位であった。
【0066】
単分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマーSELP47Kを、以下の方法で適用試験用に生成した。大腸菌発酵を行って、単分散SELP47Kを含む細胞-ペーストを生成した。細胞-ペーストは氷冷水中に置き、均質にして細胞抽出物を作製した。細胞抽出物をポリエチレンイミンと混合させ、濾過助剤を7℃で1時間攪拌状態にした。ポリエチレンイミンは、細胞残骸および相当量の大腸菌タンパク質の沈殿を引き起こした。このSELP47K含有反応混合物は、次いでRVDFを使用して濾過した。次いで濾過したSELP47K溶液を、硫酸アンモニウムと混合させて25%の飽和状態にした。これによって、SELP47Kの沈殿がもたらされた。沈殿したSELP47Kと母液を濾過助剤を用いて混合させ、RVDFを使用して再度濾過した。SELP47Kおよび濾過助剤を含むRVDF塊を冷水と混合させて、SELP47Kを溶かした。この沈殿および可溶化ステップを繰り返して、SELP47Kの純度の概略を改善した。次いで精製した単分散SELP47Kは、SELP溶液の電導率が50μS/cm2に達するまで水交換した。次いで単分散SELP溶液を10%wt/volまで濃縮し、次いで凍結乾燥させて粉末状単分散SELP47Kタンパク質ポリマーを作製した。適用試験に必要となるまで、この物質は-70℃で保存した。
【0067】
(実施例2)
適用試験用の多分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマーの精製および調製を、以下のステップで行った。発酵ブロスからの細胞分離は、マイクロ濾過を使用して行った。細胞抽出物を作製するための細胞破壊は、フレンチプレスを使用して行った。細胞抽出物は、ポリエチレンイミンおよび濾過助剤を使用して細胞残骸から分離した。細胞抽出物は硫酸アンモニウムと混合させ25%の飽和状態にして、シルク-エラスチンタンパク質ポリマーを沈殿させた。沈殿したシルク-エラスチンタンパク質ポリマーは、それを水中に溶かし硫酸アンモニウムを用いてそれを沈殿させることによってさらに精製した。
【0068】
多分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマーを調製するために、沈殿したシルク-エラスチンタンパク質ポリマーを再度水中に溶かし、微量の市販のプロテアーゼと混合させた。市販のプロテアーゼを次いで失活させ、酸処理によって破壊した。次いで多分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマーを、シルク-エラスチンタンパク質ポリマー溶液が、電気電導率が50μS/cm2に達するまで限外濾過した。
【0069】
多分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマー溶液は、10wt%に濃縮し凍結乾燥させた。凍結乾燥させた多分散シルク-エラスチンタンパク質ポリマー粉末は、使用するまで-70℃で保存した。
【0070】
(実施例3)
SELP47K-エポキシシラン結合体を次の方法で調製した。実施例1に従い、SELP47Kの1〜10%溶液を100mM重炭酸塩緩衝液、pH9.7中で調製した。この溶液を攪拌して、全てのタンパク質ポリマーを溶かした。このタンパク質ポリマー溶液を、次いで13モル当量を超える(3-グリシドキシプロピル)ジエトキシ-メチルシランまたは3-グリシドキシプロピル)ジメチル-エトキシシランと混合させ反応させた。このエポキシはSELP47Kのアミノ基と反応して、CH2-NH連結を形成する。反応は25〜65℃で行い、好ましい反応温度は40〜60℃であった。反応は5〜15時間で行い、好ましい反応時間は10〜15時間であった。
【0071】
反応生成混合物を水で希釈し、緩衝液を水と交換し、過剰な未反応シランは膜透析器を使用して除去した。シランとSELPの結合または重合は、SDS-PAGE分析および全アミン含量分析によって確認した。シリル化SELP結合体は1%溶液に濃縮した。
【0072】
(実施例4)
SELP47K-クロロアルキルシラン結合体を次の方法で調製した。実施例1に従い調製したSELP47KのSELP47K1〜10%溶液はpH9.7を有する100mM重炭酸塩緩衝液中に置き、攪拌してタンパク質ポリマーを溶かした。3-クロロプロピルメチルジメトキシシランをpH3.5の水溶液中に置き、30分間室温で攪拌してメトキシ基を加水分解した。このタンパク質ポリマー溶液を、次いで13モル当量を超える3-クロロプロピルメチルジメトキシシランの水溶液と混合させ反応させた。反応は25〜55℃の温度で行った。好ましい反応温度は40〜55℃であった。反応は5〜15時間で行い、シリル化を終了させるのに好ましい反応時間は10〜15時間であった。反応生成混合物を水で希釈し、緩衝液を水と交換し、過剰な未反応シランは膜透析器を使用して除去した。シランとSELP47Kの重合は、SDS-PAGE分析および全アミン含量分析によって確認した。シリル化SELP47Kは1%溶液に濃縮した。
【0073】
(実施例5)
UV活性p-ヒドロキシ桂皮酸をSELP47Kと結合させた。SELP47Kのリシンとp-ヒドロキシ桂皮酸のカルボキシル基の間のアミド結合形成を触媒することによって、この結合を行った。アミド結合形成は、いずれもPierce Biotechnology、Rockford、ILから入手可能な、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびNHS(製品番号24500)を使用することによって行った。SELP47Kは1mg/mlで活性緩衝液(0.1MのMES、0.5MのNaCl、pH6.0)に溶かした。0.4mgのEDCおよび0.6mgのNHSを1mlのSELP47K溶液に加え、室温で15分間反応させた。1.4μlの2-メルカプトエタノールを加えてEDCをクエンチした。
【0074】
p-ヒドロキシ桂皮酸を、SELP47Kと等しいモル-モル比で反応混合物に加えた。反応混合物は、室温で2時間反応させた。10mMの最終濃度までヒドロキシアミンを加えることによって、反応を失活させた。ゲル濾過によって過剰な失活試薬を除去した。濾過生成物のUVスペクトル分析によって、p-ヒドロキシ桂皮酸とSELP47Kの重合を確認した。
【0075】
(実施例6)
Quat188-SELP47K結合体の調製および確認は以下のように進めた。Quat188-SELP47K物質を、24時間の反応時間でのpH10.7におけるQuat188(Dow Chemicals)とSELP47Kの結合によって作製した。50gのSELP47Kを900mlの水に溶かし、100mlの炭酸ナトリウムpH11(1M)と混合させ、0.22ミクロンのフィルターを使用して濾過滅菌した。平行して、エポキシド形のQuat188を、60mlのQuat188を240mlの水に溶かしたものを使用し、次いで11.5の最終pHを有する13mlの25%NaOHを加えて作製した。ひとたびpH11.5に達した後、混合することによってQuatを室温で15分間反応させた。エポキシquatとSELP47Kの反応は、300mlのquat調製物とそれを混合させることによって行った。生じたpHは10.7であった。反応混合物は2Lのローラーボトル中に置き、ゆっくりと回転するローラーボトルミキサーにおいて37℃で一晩混合させた。SELP47Kと第四級アンモニウム塩の結合の確認は、LysC(市販のペプチダーゼ、Sigma chemical company)によって行い、反応の約20時間後に消化(2時間)をこの物質に行った。次いで反応混合物を透析して(15Kカットオフ膜)、全ての非結合quat188を除去しpHを低下させた。結合体は、30〜60mg/mlの濃度にYM30膜を使用して濃縮した。次いでSELP-Quatを凍結乾燥させた。SELP47k-Quat結合体の確認は、SELP47KのエンドプロテイナーゼLysC消化によって行った。エンドプロテイナーゼLysCは、リシンを切断する酵素である。SELP47Kは、タンパク質中に一定間隔で配置する13個のリシンを有する。したがって、元のSELPのエンドプロテイナーゼLysC処理は、4.5〜6.3KDaの分子量の範囲のペプチドにタンパク質を縮小させる。しかしながら、Quat188がSELP上のリシンと首尾よく結合している場合、それらはもはやエンドプロテイナーゼLysCによる加水分解を受けない。結合の程度は、ゲル上に生じるバンドのパターンによって定量的に測定することができる。lys-C処理したSELP47K(対照)およびSELP47K-Quat結合体のSDS-PAGEゲル分析によって、SELP47KのQuat188結合体はLys-C消化に耐性があるらしいことが確認され、大部分のリシンはQuat188で修飾され、元のSELP47KのLys-C処理によって全リシンにおけるモノマーへの完全な加水分解がもたらされることが示される。
【0076】
(実施例7)
蛍光染料をSELP47と結合させた。SELP47Kのリシンとフルオレセイン5(6)イソチオシアネート(FITC)の間で、アミド結合の形成を行った。4mgのFITC(Sigma Chemicalから入手可能)を、アルミニウム箔で覆った試験管中の2mlの100mM炭酸ナトリウム緩衝液、pH9に溶かした。1mlのこの溶液を、90分間磁気攪拌機を使用してゆっくり混合しながら(50rpm)5℃において、同じ炭酸ナトリウム緩衝液中で3mlのSELP47Kの0.01%溶液と反応させた。さらに0.5mlのFITC試薬を加え、30分間さらに攪拌しながら反応させた。未反応物質からFITC重合SELP47Kを精製するために、PD-10(BioRaD)脱塩カラムを使用した。使用前に同じ炭酸ナトリウム緩衝液を用いて、PD-10カラムを平衡状態にした。反応混合物(それぞれ2ml)はカラムに充填した。排除容量を、SELP47K-FITC結合体を含むカラムから回収した。10μlのこのSELP47K-FITC結合体を、蛍光プレートリーダー(Molecular Devices、Fmaxモデル)中でウシ血清アルブミンタンパク質対照に対するRFU(相対蛍光単位)を調べることによって、およびBCAタンパク質アッセイキット(Pierce Biotechnologyから入手可能)によって、この結合体の比放射能(効率)を推定するためにアッセイした。結合体の効率を計算し、95%を超えることを見出した。
【0077】
(実施例8)
この実施例は、代表的な抗菌性第四級シリコーン、DC5700(Dow Corning)とSELP47Kを結合させて、これによって、抗菌保護用の望ましい表面物質中に次いで取り込ませることができる、シリコーンシステム抗菌性反復配列タンパク質ポリマー結合体を作製する方法を与える。DC5700とSELP47Kの結合は、エポキシシラン(ES)リンカーを介してDC5700をSELP47Kと結合させる2ステップの方法によって行った。エポキシシランは、シラン上のエポキシ基を介して、SELP47K(50mg)上のリシンと最初に結合させた。この反応で使用したエポキシシランは、(3-グリシドキシプロピル)メチルジメチオキシシラン(4〜8μl)(Aldrich Chemical Company)である。この反応は、1mlの0.1モル炭酸ナトリウム/重炭酸ナトリウム緩衝液、pH9.5を使用して37℃で一晩行った。次いで反応混合物を、400μlのSELP47K-ES結合体を末端に含むNAP5脱塩カラムを使用して水中に脱塩した。エポキシシランとSELP47Kのリシンのβアミノ基の結合は、エンドペプチダーゼlysCおよびSDS PAGEゲル電気泳動分析を使用して確認した。次のステップは、ES上のヒドロキシシラン基とDC5700上の基の間の、シリコーン縮合反応に関するものであった。400μlの脱塩SELP47K-ESサンプルを、室温で一晩1モルのNaOHを使用して、pH8において4μlのDC700(Ageis Chemicals)と反応させた。反応混合物を再度脱塩して、非結合DC5700を分離したことを確認した。SELP47KとのDC5700結合の確認は、エンドペプチダーゼlysC、SDS-PAGEゲルおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して行った。次いでこの結合物質を、微生物枯草菌を使用してその抗菌効率に関して試験した。これらの結果は、この結合物質がDC5700単独の抗菌効率と同等の抗菌効率を示すことを示唆する。
【0078】
(実施例9)
SELP47K-カルボキシシロキサン結合体は、次のステップに従い調製することができる。SELP47Kの1〜10%溶液は100mMリン酸緩衝液、pH7.0中に置き、攪拌して全てのタンパク質ポリマーを溶かすことができる。次いでこのタンパク質ポリマー溶液は、13モル当量を超えるモノカルボキシデシル末端ポリジメチルシロキサンおよびリパーゼ酵素と混合することができる。反応は約37℃で行うことができる。反応は5〜15時間で行うことができる。好ましい反応時間は10〜15時間であることができる。反応後、反応生成混合物を水で希釈することができ、緩衝液は水と交換することができ、過剰な未反応シランは除去することができる。シロキサンとSELP47Kの重合は、SDS-PAGE分析および全アミン含量分析によって確認することができる。シリル化-SELP47K結合体は1%溶液に濃縮し、保存することができる。
【0079】
(実施例10)
桂皮酸アリル芳香剤分子SELP47K結合体は、以下のステップに従い調製することができる。SELP47Kのリシンと桂皮酸アリルのカルボキシル基の間のアミド結合形成を触媒することによって、この結合を行うことができる。アミド結合形成は、いずれもPierce Biotechnology、Rockford、ILから入手可能な、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびNHS(製品番号24500)を使用することによって行うことができる。SELP47Kは1mg/mlで活性緩衝液(0.1MのMES、0.5MのNaCl、pH6.0)に溶かすことができる。0.4mgのEDCおよび0.6mgのNHSを1mlのSELP47K溶液に加え、室温で15分間反応させることができる。1.4μlの2-メルカプトエタノールを加えてEDCをクエンチすることができる。桂皮酸アリルは、SELP47Kと等しいモル-モル比で反応混合物に加えることができる。反応混合物は、室温で2時間反応させることができる。10mMの最終濃度までヒドロキシアミンを加えることによって、反応を失活させることができる。ゲル濾過によって過剰な失活試薬を除去することができる。結合物質は、未反応桂皮酸アリルのUVスペクトルの痕跡と比較して赤色または青色に変化した、UVスペクトルの痕跡を有することができる。
【0080】
(実施例11)
アスコルビン酸(ビタミンC)分子SELP47K結合体は、次のステップに従い調製することができる。SELP47Kのリシンとアスコルビン酸のカルボキシル基の間のアミド結合形成を触媒することによって、この結合を行うことができる。アミド結合形成は、いずれもPierce Biotechnology、Rockford、ILから入手可能な、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびNHS(製品番号24500)を使用することによって行うことができる。SELP47Kは1mg/mlで活性緩衝液(0.1MのMES、0.5MのNaCl、pH6.0)に溶かすことができる。0.4mgのEDCおよび0.6mgのNHSを1mlのSELP47K溶液に加え、室温で15分間反応させることができる。1.4μlの2-メルカプトエタノールを加えてEDCを失活することができる。アスコルビン酸は、SELP47Kと等しいモル-モル比で反応混合物に加えることができる。反応混合物は、室温で2時間反応させることができる。10mMの最終濃度までヒドロキシアミンを加えることによって、反応を失活させることができる。ゲル濾過によって過剰な失活試薬を除去することができる。結合物質は、未反応アスコルビン酸のUVスペクトルの痕跡と比較して赤色または青色に変化した、UVスペクトルの痕跡を有することができる。
【0081】
(実施例12)
AMP-SELP47K結合体の構築、分析、および確認は、次のように進行した。2つの以前に記載されたAMP、MBI-28 WKLFKKIGIGAVLKVLTTGLPALKLTK(Gough、M.他、Infect Immun.1996 Dec; 64(12): 4922〜7)およびセクロピンA-メレチンハイブリッドKWKLFKKIGAVLKVLを選択した。AMPペプチド配列は、ベクターNTIソフトウェア(Informax)を使用して大腸菌DNAコード配列に逆翻訳した。ヘキサマータンデム反復配列を、個々のAMPがグリシン残基ヘキサマーによって連結しているそれぞれのAMP用に設計した。大腸菌中のコドンの重複を利用して、稀なコドンを避けながらヘキサマー配列の反復性を最小限にした。5'および3'DNA配列をヘキサマーに加えて、このヘキサマーがSELP47Kコード配列のN末端またはC末端へのサブクローニングおよびインフレーム発現の影響を受けやすくした。さらに、トロンビンプロテアーゼ認識部位のコード配列は、C末端融合体からin vitroでAMPを切断することができるように、ヘキサマーの5プライマー領域中に含まれていた。それぞれのAMPヘキサマー構築体は、その配列内に含まれる特有の制限酵素切断部位を有しており、正確な構築体のスクリーニング、同定を容易にした。AMPヘキサマー構築体は、人工的遺伝子合成技術を使用してBlue Heron Biotechnology(Bothell、WA)によって製造されたものであり、pUCシステムプラスミド中に与えられた。
【0082】
SELP47Kは、熱誘導性ラムダPrプロモーターの制御下でpUCシステムプラスミド上に存在する、2652塩基対の配列によってコードされている。カナマイシン抗生物質耐性用の選択可能マーカーが、このプラスミド上に存在する。特有のBglII制限部位は、Quick Change(商標)法(Stratagene)を使用してSELP47Kコード配列の3'「尾部」中に工学処理した。Blue Heron Biotechnologyによって与えられたAMPヘキサマー構築体プラスミドに、BglII酵素(Roche)を使用して制限酵素による消化を施し、生成したヘキサマーカセットを切除し、市販のキット(Qiagen)を使用してアガロースゲルから精製した。SELP47KプラスミドはBglII酵素で切断し、アガロースゲルから精製し、ウシ小腸ホスファターゼ(New England Biolabs)を使用して脱リン酸化した。ヘキサマーカセットは、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用してSELP47Kの3'BglII部位中にサブクローニングした。大腸菌TOP10の化学反応性細胞(Invitrogen)を使用して、サブクローニングを行った。組換えSELP47Kプラスミドは、プラスミド単離および制限酵素分析/ゲル電気泳動を使用して、ヘキサマーカセットの存在に関してスクリーニングした。DNAの塩基配列決定を使用して、正確な方向のAMPヘキサマーの存在を確認した。
【0083】
SELP47Kの5'「頭部」中へのAMPヘキサマーの挿入は、前に記載したのと同様に行った。ただし特有のBamHI部位を使用した。AMPヘキサマー構築体は、主としてC末端挿入用に設計したので、3'TAA停止コドンを含む。SELP47K中へのサブクローニングの前に、Quick Changeを使用して停止コドンからT残基を除去した。T残基の除去は、後のSELP47Kコード領域をインフレームにする付随効果があった。正確性に関して優れた構築体を、制限酵素/ゲル電気泳動分析を使用してさらに確認した。50ppmのカナマイシンを含むLBプレートを使用することによって、プラスミドを使用して大腸菌MM294を形質転換した。一種のコロニーを採取し、60mlのTM2(recipe)+2%グルコース、50ppmカナマイシン、500mlの溝付きエルレンマイヤーフラスコ中、30℃、250rpm、16時間で増殖させた。細胞培養物にグリセロール(10%v/v)を補い、1.5mlの等分試料を冷凍用バイアル中に置き、-80℃で保存した。ランダムなバイアルを、37℃で16時間、LA+1.6%スキムミルクプレート上で10μlの接種ループフル(loopful)をインキュベートすることによって汚染に関して試験した。プラスミドの完全性も、制限酵素による消化/ゲル電気泳動を使用するプラスミド精製および分析、ならびにDNAの塩基配列決定を使用して確認した。後の培養、タンパク質生成用の接種用ストックとして、凍結させた冷凍用バイアルを使用した。
【0084】
接種用バイアルは、AMP-SELP47Kタンパク質ポリマーの発酵用に使用した。発酵に関して試験した二種の菌株は、MM294/pSELP0888(CAM-SELP47K、配列番号32)およびMM294/pSELP1064(MBI-SELP47K、配列番号33)であった。両方の菌株は、明確なTM2培地および1回分グルコースに接種した。大腸菌発酵は、発酵槽中の細胞が60のODに増殖するまで、1回分グルコースの消費時に2g/分のグルコースの供給で続けた。AMP-SELP47Kタンパク質ポリマーの発現は、40Cまで発酵温度を上昇させることによる温度誘導によって開始させた。2回の発酵は同様の挙動を示した。増殖率はほぼ同じであった。CER低下後に発酵ブロスを遠心分離することによって、細胞ペーストを採取した。
【0085】
AMP-SELP47K融合タンパク質の精製は、最初に細胞ペーストを1:2の比でDI水中に採取し、次に8000PSIでフレンチプレスを使用して細胞を均質化することによって行った。均質化した細胞は0.1〜10%のPEI(ポリエチレンイミン)と混合させて、細胞残骸を排除した。細胞残骸は遠心分離によって除去した。遠心分離から生成させた細胞抽出物を、硫酸アンモニウム(10〜25%飽和)と混合させて、AMP-SELP融合タンパク質ポリマーを沈殿させた。沈殿したAMP-SELP融合ポリマーは母液の残りから分離し、MQ水中に溶かした。AMP-SELP47K融合ポリマーは、透析によってその塩含量に関して精製し、次いで保存用の固形粉末として凍結乾燥させた。精製したAMP-SELP47Kの分析は、SDSゲル電気泳動および質量分析法を使用して行った。
【0086】
培養物上清および精製サンプルの抗菌活性を、次のようにアッセイした。当該サンプル、ならびにAMP陽性対照および精製SELP47K陰性対照を使用した。陽性対照はLuriaブロス(LB培地)中において200μg/ml〜1.56μg/mlで1:2で連続的に希釈し、セクロピンA(Sigma)、およびMBI-28(室内で合成)からなっていた。大腸菌MGT655および枯草菌168を、グラム陰性およびグラム陽性微生物標的として使用した。LB中で一種のコロニーから増殖させた5mlの一晩培養物を、Terrificブロス(TB)に1:250で希釈し、100μlの等分試料を、滅菌済み平底96ウエルマイクロタイタープレートのウエル中に二連で置いた。非接種TBも対照として等分した。周辺ウエルは使用しなかったが、その代わりに培地を充填して、「エッジ効果」を最小限にした。100μlの対照とサンプルの前述の希釈液を、希釈した細菌の等分試料、および陰性対照/ブランクとしての100μlの滅菌済みTBと混合させた。37C、250rpmでプレートをインキュベートし、湿気を与えた。プレートリーダーを使用して、それぞれのウエルのOD600を1時間毎に測定した。
【0087】
誘導後の時間地点から、SELP47KのN末端と融合したセクロピンA-メレチン(CAM)の発酵からの培養物上清サンプルを、大腸菌および枯草菌の増殖阻害に関して試験した。これらの結果は、両方の菌株の増殖の阻害は誘導後に劇的に増大することを示した。精製したCAM-SELP47K(配列番号32)およびMBI-SELP47K(配列番号33)生体適合物質を、それらの抗菌活性に関して同様に試験した。凍結乾燥させた物質を1.25mg/mlで水中に溶かし、次のように行った試験管システムアッセイにおいて使用した:枯草菌168および大腸菌MG1655を、試験管中の5ml体積のLB中において、37℃、250rpm、16時間で一種のコロニーからそれぞれ増殖させた。培養物はTerrificブロス中において1:500で希釈した。等体積の前に記載した希釈培養物と精製したAMP-SELP融合体を、滅菌済みガラス試験管(5ml試験管中全容量1ml)中で組合せ、二連で37℃、250rpmにおいてインキュベートした。精製したSELP47Kは陰性対照として使用した。4時間後、SELP47Kを含む試験管中では増殖は明らかに目に見える状態であり、一方AMP-SELP融合体を含む試験管では著しく低い増殖があり、この融合タンパク質の増殖阻害および抗菌性が示された。
【0088】
(実施例13)
SELP47K-GFP(配列番号34)結合体の構築、分析、および確認は、次のように進行した。緑色蛍光タンパク質(GFP)と大腸菌中のシルクエラスチンタンパク質ポリマー(SELP47K)のタンパク質融合体を、分子生物学および発酵技法を使用して生成した。簡潔には、GFPをコードする遺伝子を、インフレーム翻訳用に、SELP47Kをコードする遺伝子の5プライマー端(N末端)にクローニングした。この遺伝子構築体は、振とうフラスコ規模で大腸菌MM294中において、ラムダPr発現ベクターを用いて発現させた。プラスミドpGFPおよびそのDNA配列は、Clontechから入手した。前の実施例で論じた方法と類似の方法の後、生じた接種用バイアルを微生物汚染に関して調べ、-80℃で保存し、GFP-SELP47Kタンパク質ポリマーの発酵用に使用した。GFP-SELP47K融合タンパク質の精製は、実施例13と同様に行った。精製したGFP-SELP47Kの分析は、SDSゲル電気泳動および質量分析法を使用して行って、融合ポリマーの形成を確認した。GFP-SELP47K結合タンパク質ポリマーは、GFP-SELP47Kタンパク質ポリマー生体適合物質の蛍光励起および発光スペクトル、およびその表面皮膜性用に次のようにプローブ処理した:精製したGFP-SELP47Kの発光スペクトルを記録し、蛍光分光光度計(Spectromax Gemini、Molecular Devices)を使用して同じタンパク質濃度レベルで精製したSELP47Kと比較した。この測定に関する励起波長は395nmであり、発光スペクトルを記録した(450〜600nn)。GFP-SELP47Kの緑色の蛍光発光は、509nmにおけるクラゲの本来の野生型GFP(Clonetech)のそれと類似していた。
【0089】
(実施例14)
SELP47K-CPB(配列番号37)結合体の構築、分析、および確認は、前の実施例12および13で論じたのと同じ一般的技法を使用して進行させた。セルロース結合ペプチド(CBP)配列は、PCR誘導型ファージディスプレーを使用して実験室内で得た。使用した配列はTTHPQMLWQMSTであった。CBPペプチド配列は、ベクターNTIソフトウェア(Informax)を使用して大腸菌DNAコード配列に逆翻訳した。ヘキサマータンデム反復配列を、個々のCBPがグリシン残基クウォータマーによって連結しているCBPのDNA配列を使用して設計した。大腸菌中のコドンの重複を利用して、稀なコドンを避けながらヘキサマー配列の反復性を最小限にした。5'および3'DNA配列をヘキサマーに加えて、このヘキサマーがSELP47Kコード配列のN末端またはC末端へのサブクローニングおよびインフレーム発現の影響を受けやすくした。CBPヘキサマー構築体は、その配列内に含まれる特有の制限酵素切断部位を有しており、正確な構築体のスクリーニング、同定を容易にした。CBPヘキサマー構築体は、人工的遺伝子合成技術を使用してBlue Heron Biotechnology(Bothell、WA)によって製造されたものであり、pUCシステムプラスミド中に与えられた。SELP47Kは、熱誘導性ラムダPrプロモーターの制御下でpUCシステムプラスミド上に存在する、2652塩基対の配列によってコードされている。カナマイシン抗生物質耐性用の選択可能マーカーが、このプラスミド上に存在する。特有のBglII制限部位は、Quick Change(商標)法(Stratagene)を使用してSELP47Kコード配列の3'「尾部」中に工学処理した。Blue Heron Biotechnologyから提供されたCBPヘキサマー構築体プラスミドに、BglII酵素(Roche)を使用して制限酵素による消化を施し、生成したヘキサマーカセットを切除し、市販のキット(Qiagen)を使用してアガロースゲルから精製した。SELP47KプラスミドはBglII酵素で切断し、アガロースゲルから精製し、ウシ小腸ホスファターゼ(New England Biolabs)を使用して脱リン酸化した。ヘキサマーカセットは、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用してSELP47Kの3'BglII部位中にサブクローニングした。大腸菌TOP10の化学反応性細胞(Invitrogen)を使用して、サブクローニングを行った。組換えSELP47Kプラスミドは、プラスミド単離および制限酵素分析/ゲル電気泳動を使用して、ヘキサマーカセットの存在に関してスクリーニングした。DNAの塩基配列決定を使用して、正確な方向のCBPヘキサマーの存在を確認した。SELP47Kの5'「頭部」中へのCBPヘキサマーの挿入は、前に記載したのと同様に行った。ただし特有のBamHI部位を使用した。CBPヘキサマー構築体は、主としてC末端挿入用に設計したので、3'TAA停止コドンを含む。SELP47K中へのサブクローニングの前に、Quick Changeを使用して停止コドンからT残基を除去した。T残基の除去は、後のSELP47Kコード領域をインフレームにする付随効果があった。正確性に関して優れた構築体を、制限酵素/ゲル電気泳動分析を使用してさらに確認した。50ppmのカナマイシンを含むLBプレートを使用することによって、プラスミドを使用して大腸菌MM294を形質転換した。一種のコロニーを採取し、60mlのTM2(recipe)+2%グルコース、50ppmカナマイシン、500mlの溝付きエルレンマイヤーフラスコ中、30℃、250rpm、16時間で増殖させた。細胞培養物にグリセロール(10%v/v)を補い、1.5mlの等分試料を冷凍用バイアル中に置き、-80℃で保存した。ランダムなバイアルを、37℃で16時間、LA+1.6%スキムミルクプレート上で10μlの接種ループフルをインキュベートすることによって汚染に関して試験した。プラスミドの完全性も、制限酵素による消化/ゲル電気泳動を使用するプラスミド精製および分析、ならびにDNAの塩基配列決定を使用して確認した。後の培養、タンパク質生成用の接種用ストックとして、凍結させた冷凍用クリオバイアルを使用した。
【0090】
(実施例15)
全ポリマーサブユニットが1つのコットン結合ペプチド配列を含む、SELP47K結合構築体CBP-SELP47K-S2E1を以下のように作製した:人工遺伝子の合成を使用して、それぞれの同一のサブユニットが特有の非パリンドローム制限部位を含む、2サブユニット型の所望の構築体を作製した。詳細には、SELP47Kサブユニットは、シルク領域のC末端とエラスチン領域(領域S2E1)のN末端の間に取り込まれた、直鎖状コットン結合ペプチド(TTHPQMLWQMST)を含んでいた。BsgI制限酵素切断部位を、それぞれのサブユニット内に設計した。遺伝子の構築は、Blue Heron Biotechnology(Bothell、WA)によって行われた。DNAをBsgIによって消化し、これによって1分子当たり1つのサブユニットの放出がもたらされた。生じた修飾SELPモノマーおよびプラスミドベクターは、アガロースゲルから精製し、Spin Vacを使用して濃縮した。16Cで一晩製造者の教示書に従い(図3)T4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、モノマーを自己連結させた。元の精製ベクターを、他の新たなリガーゼとの連結混合物に加え、さらに24時間16Cでインキュベートした。連結混合物を使用して、製造者の教示書に従い大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)を形質転換した。生成した形質転換体を使用して、5mlのLuriaブロスおよび適切な抗生物質を含む培養試験管に接種した。試験管は16時間、37C、250rpmでインキュベートした。プラスミドMiniprepキット(Qiagen)を使用して生じた培養物から、プラスミドを精製した。完全なSELP47K-CBP結合挿入体は、EcoRVおよびBamHI制限酵素を用いた消化によってベクターから切除し、アガロースゲル電気泳動を使用して大きさを分けて、合計13個の望ましいサブユニットを含む構築体を同定した。適切なSELP47K-CBP結合遺伝子構築体を、ラムダPrプロモーターを含むベクターにサブクローニングし、生成宿主大腸菌MM294に形質転換した。調製した接種用バイアルは-80℃で保存した。接種用バイアルは、CBP-SELP47Kタンパク質ポリマーの発酵用に使用した。発酵測定20031115および20031211に関して試験した菌株は、MM294/pSELP0845(CBP{L12}-SELP47K)であった。大腸菌菌株は、明確なTM2培地および1回分グルコースに接種した。大腸菌発酵は、発酵槽中の細胞が60のODに増殖するまで、1回分グルコースの消費時に2g/分のグルコースの供給で続けた。CBP-SELP47Kタンパク質ポリマーの発現は、40Cまで発酵温度を上昇させることによる温度誘導によって開始させた。2回の発酵は同様の挙動を示した。増殖率はほぼ同じであった。細胞ペーストはCERの20%の低下後に発酵ブロスを遠心分離することによって採取し、ODのさらなる上昇はなかった。CBP-SELP47K融合タンパク質の精製は、最初に細胞ペーストを1:2の比でDI水中に採取し、次に8000PSIでフレンチプレスを使用して細胞を均質化することによって行った。均質化した細胞は0.1〜10%のPEI(ポリエチレンイミン)と混合させて、細胞残骸を排除した。細胞残骸は遠心分離によって除去した。遠心分離から生成させた細胞抽出物を、硫酸アンモニウム(10〜25%飽和)と混合させて、CBP-SELP融合タンパク質ポリマーを沈殿させた。沈殿したCBP-SELP47K融合ポリマーは母液の残りから分離し、MQ水中に溶かすか、あるいは尿素、グアニジウム塩酸塩などのチオトロープ剤と共に使用した。CBP-SELP47K融合ポリマーは、透析によってその塩含量に関して精製し、次いで保存用の固形粉末として凍結乾燥させた。精製したCBP-SELP47Kの分析は、SDSゲル電気泳動および質量分析法を使用して行い、融合ポリマーの形成を確認した。CBP-SELP47K融合タンパク質は、次のようにセルロース結合性に関してアッセイした:CBP-SELP47Kのコットン結合性を、2つの異なるアッセイでSELP47Kと比較した。1つのアッセイは、コットン(基質)濃度を一定に保ちSELP47K濃度を変える用量応答アッセイであった。第二の実験は、コットン濃度を変えSELP47K濃度を一定に保つ実験であった。全ての結合試験は欧州製洗濯洗剤で行った。その手順および結果は以下の通りである:それぞれの実験は3つの部分からなっていた1)コットンスワッチおよび洗剤の調製、2)欧州製洗剤中でのコットンとSELP47Kのインキュベーション、3)布地と結合したSELP4
7Kの量の測定。1)円形1/4インチのダイを使用して、EMPA221の汚れていないコットン織物(Testfabrics)からコットンミクロスワッチを打ち抜いた。28のミクロスワッチを、15グレイン/ガロン(gpg)硬度(1.85mMのCaCl2.0.54mMのMgCl2)を含む10mlの濾過したWFK-1欧州製洗濯洗剤(3.5g/L、AATCC-American Association of Textile Chemists and Colorists)中において、37Cで15分間洗浄した。サンプルはDYNAL回転ミキサー(40RPM)を使用して洗浄した。次いでスワッチを3gpg硬度の水(0.37mMのCaCl2、0.108mMのMgCl2)中において37Cで5分間すすぎ(40RPM)、次いでペーパータオル上で吸い取り乾燥させた。2)3つの濃度のSELPタンパク質(CBP-SELP47K:1.25、0.84、0.45&0mg/ml:SELP47K 1.35、1.0、&0.58mg/ml)を、濾過したWFK-1洗剤中に作製した(3.5g/l、15gpg硬度)。次いで900ulの希釈SELPタンパク質を、4つの予め洗浄したコットンミクロスワッチを含む1.5mlのエッペンドルフチューブに加えた。試験管はDYNAL回転ミキサー(30分、40C、400RPM)上で混合させた。次いでスワッチは3gpg硬度を含む1mlの水中で3回すすいだ。(5分間、室温、振とう)。3)スワッチ、上清、およびすすぎ液全てを、BCAタンパク質アッセイ(Pierce)を使用してSEL47Kの存在に関して分析した。BCAアッセイをわずかに改変して、固形コットンスワッチを分析した。反応は次のように行った:300ulのBCAアッセイ試薬を、それぞれの反応からの1つのコットンスワッチと共にインキュベートした。BSA標準曲線を同時に行い、これを使用して布地と結合したタンパク質の量を定量化した。スワッチとBSAは、エッペンドルフチューブ中において30分までBCA試薬と共にインキュベートした。30分の終わりに、スワッチを充分に混合させ、次いで上清の200μlの等分試料を562nmで読み取った。スワッチと結合したタンパク質の濃度は、BSA標準曲線に基づいて測定した。CBP-SELP47Kのコットン結合活性を元のSELP47Kのそれと比較し、CBP-SELP47Kは元のSELP47Kよりもはるかに高い程度で、SELP47Kをコットンに向け結合させることが明らかになった。布地と結合したタンパク質がCBP-SELP47Kであったことを確認するために、結合したタンパク質をコットンから溶出させ、SDSゲル上に施した。結合スワッチをNuPageLDSサンプル緩衝液4X(Invitrogen)中において95Cで10分間煮沸し、上清をSDSゲル(invitrogen、4〜12%bis- tris NuPageゲル上)に施すことによって、これを行った。
【0091】
異なる基質濃度におけるヘキサマーCBP-SELP47Kのコットン結合を利用する、第二の結合実験を行った。前の実験に記載したのと同じ方法で、スワッチを調製した。今回は40のスワッチを洗浄した。洗浄したスワッチは、2ウエルがそれぞれ0、1、2、3、4、および5スワッチを含むように、48ウエルのマイクロタイタープレート中に置いた。SELP47Kのストック溶液(SELP47K:1mg/ml、CBP-SELP47K、0.75mg/ml)を、濾過したWFK-1欧州製洗濯洗剤中に作製した(3.5g/l、15gpg硬度)。200μlのSELPストック溶液を、洗浄したスワッチを含んでいたマイクロタイタープレートのウエルに加えた。次いでSELPタンパク質を、スワッチと共にインキュベートした(40C、30分間、240RPM)。次いで上清をウエルから除去し、スワッチは3gpgの水中で3回すすいだ(600μl、5分間、振とう)。前の結合実験に記載したのと同じ方法で、スワッチを分析した。コットンと結合したCBP-SELP47Kの量は、コットン濃度の増大と共に増大した。同じ量のCBP-SELP47kが、反応中に存在するスワッチの数とは無関係にそれぞれのスワッチと結合する。これは、CBP-SELP47Kがコットンスワッチ上の利用可能な全ての結合部位を飽和状態にしたことを示す。いずれの場合も、コットンと結合したCBP-SELP47Kの量は、元のSELP47Kのそれよりはるかに多い。CBP-SELP47K-S2E1(配列番号35)結合体は、コットンとの優れた改善型の結合を示す。何故なら、コットン結合ペプチドを結合体中に周期的に与えることができるからである。前に記載したプロトコルを使用して試験したのと同様に、10%を超えるこのコットンS2E1-SELP47K(CBP-SELP47K-S2E1)(配列番号35)結合体がコットンと結合した。
【0092】
(実施例16)
SELP47K-P4(配列番号36)結合体の構築、分析、および確認は、以下のように進行した。全ポリマーサブユニットが追加的なP4(ALSYP)ペプチド配列を含む、SELP構築体を次のように作製した:人工遺伝子の合成を使用して、それぞれの同一のサブユニットが特有の非パリンドローム制限部位を含む、2サブユニット型の所望の構築体を作製した。詳細には、SELPサブユニットは、シルク領域側面の1つのサブユニット当たり2箇所に取り込まれた、シルク領域のC末端とエラスチン領域のN末端の間に取り込まれた、いずれかのBBI由来のP4配列(SeqALSYP)を含んでいた。BsgI制限酵素切断部位を、それぞれのサブユニット内に設計した。遺伝子の構築は、Blue Heron Biotechnology(Bothell、WA)によって行われた。DNAをBsgIによって消化し、これによって1分子当たり1つのサブユニットの放出がもたらされた。生じた修飾SELPモノマーおよびプラスミドベクターは、アガロースゲルから精製し、Spin Vacを使用して濃縮した。16Cで一晩製造者の教示書に従い、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、モノマーを自己連結させた。元の精製ベクターを、他の新たなリガーゼとの連結混合物に加え、さらに24時間16Cでインキュベートした。連結混合物を使用して、製造者の教示書に従い大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)を形質転換した。生成した形質転換体を使用して、5mlのLuriaブロスおよび適切な抗生物質を含む培養試験管に接種した。試験管は16時間、37C、250rpmでインキュベートした。プラスミドMiniprepキット(Qiagen)を使用して生じた培養物から、プラスミドを精製した。完全なSELP挿入体は、EcoRVおよびBamHI制限酵素を用いた消化によってベクターから切除し、アガロースゲル電気泳動を使用して大きさを分けて、合計13の望ましいサブユニットを含む構築体を同定した。適切なSELP遺伝子構築体を、ラムダPrプロモーターを含むベクターにサブクローニングし、生成宿主大腸菌MM294に形質転換した。調製した接種用バイアルは-80Cで保存した。接種用バイアルは、P4-SELP47Kタンパク質ポリマーの発酵用に使用した。発酵測定200
40236に関して試験した菌株は、MM294/pSELP01472(P4-SELP47K)であった。大腸菌菌株は、明確なTM2培地および1回分グルコースに接種した。大腸菌発酵は、発酵槽中の細胞が60のODに増殖するまで、1回分グルコースの消費時に2g/分のグルコースの供給で続けた。P4-SELP47Kタンパク質ポリマーの発現は、40Cまで発酵温度を上昇させることによる温度誘導によって開始させた。2回の発酵はSELP47K発酵のそれと同様の挙動を示し、増殖率はほぼ同じであった。誘導の前後で細胞は充分に増殖した。細胞ペーストはCERの20%の低下後に発酵ブロスを遠心分離することによって採取し、ODのさらなる上昇はなかった。P4-SELP47K融合タンパク質の精製は、最初に細胞ペーストを1:2の比でDI水中に採取し、次に8000PSIでフレンチプレスを使用して細胞を均質化することによって行った。均質化した細胞は0.1〜10%のPEI(ポリエチレンイミン)と混合させて、細胞残骸を排除した。細胞残骸は遠心分離によって除去した。遠心分離から生成させた細胞抽出物を、硫酸アンモニウム(10〜25%飽和)と混合させて、P4-SELP融合タンパク質ポリマーを沈殿させた。沈殿したP4-SELP47K融合ポリマーは母液の残りから分離し、MQ水中に溶かすか、あるいは尿素、グアニジウム塩酸塩などのチオトロープ剤と共に使用した。P4-SELP47K融合ポリマーは、透析によってその塩含量に関して精製し、次いで保存用の固形粉末として凍結乾燥させた。精製したP4-SELP47Kの分析は、SDSゲル電気泳動および質量分析法を使用して行い、融合ポリマーの形成を確認した。P4-SELP47K融合タンパク質は、次の性質に関してアッセイした:繊維芽細胞培養モデルを使用して、UVB露光後に細胞の生存を助長することによって防御効果を発揮する試験物質の能力を評価した。P4-SELP47K生体適合物質を、三連で3つの濃度において試験した。ヒトの皮膚繊維芽細胞を一定線量のUVB光(約50mj/cm2)に曝し、これによってUV露光後48時間で生命力のある細胞の数が50%減少することが示された。UVB露光の直後に、細胞をいずれかのP4-SELP結合物質、20μMのTrolox(抗酸化剤、陽性対照として使用した)で処理し、ある
いは未処理状態にした(未処理対照)。次いで細胞の生命力の変化を、MTTアッセイによって48時間後に測定する。MTTアッセイは、細胞の生命力を反映する細胞の代謝活性の比色定量分析である。生命力のある細胞はMTTを取り込むことができ、それは次いでミトコンドリアによって減少し、不溶性で紫色のホルマジン結晶の形成がもたらされる。次いでこれらの結晶をイソプロパノールを用いて細胞から抽出し、分光測光法によって定量化した。紫色の強度は生命力のある細胞の数に正比例し、試験物質の毒性に反比例する。繊維芽細胞は100μlの繊維芽細胞増殖培地(FGM)中の96ウエルプレートの個々のウエルに接種し、37±2℃および5±1%CO2で一晩インキュベートした。翌日、培地を吸引によって除去し任意の非接着性細胞を排除して、100μlの新たなFGMと交換した。細胞は集合状態になるまで増殖させ、48〜72時間毎に培地を交換した。UVLM-26ランプをUVB光の源として使用した。UV光の強度はUVBセンサープローブ(UV Products)と結び付けたUVX放射計を使用して測定して、約50mj/cm2の線量を送達するのに必要な時間を決定した。UVB露光の前に、FGMを100μlのPBSと交換した。露光後PBSを除去し、P4-SELP結合体、20μMのTroloxのいずれかを補ったか、あるいは非補充状態にしたFGMと交換した。二組の細胞も調製し、それらをUVB光に曝したこと以外は、前に記載したのと同様に処理した。この第二組を使用して、試験物質のみによって誘導される細胞の生命力の任意の変化を評価した。非補充状態のFGMで処理した非UVB露光細胞を使用して、100%の細胞の生命力を表した。48時間のインキュベーション期間の最後に、細胞を写真撮影して細胞形態の任意の変化を記録した。さらに、48時間のインキュベーション後に、細胞培養培地を除去し、繊維芽細胞をPBSで洗浄して、任意の残りの試験物質を除去した。最後の洗浄の後、0.5mg/mlのMTTを補った100μlのDMEMをそれぞれのウエルに加え、細胞を約37±2℃および5±1%CO2で1〜2時間インキュベートした。インキュベーションの後、DMEM/MTT溶液を除去し、細胞をPBSで1回再度洗浄し、次いで50μlのイソプロピルアルコールをウエルに加えて、紫色のホル
マジン結晶を抽出した。次いで96ウエルプレートを、対照としてイソプロピルアルコールを使用して540nmで読み取った。陰性対照細胞に関する平均MTT吸光度値を計算し、これを使用して細胞数に関する100%の値を表した。次いでさまざまな処理を施した細胞からの個々のMTT値を、陰性対照細胞に関する平均値で割って、それぞれの処理によって生じた細胞数の変化を決定する割合として表した。SELP47K-P4結合体は、UV処理したヒト繊維芽細胞の100%の生命力改善をもたらす。
【0093】
(実施例17)
P4および直鎖状CBP-SELP結合体の構築は、次のように進行した。全ポリマーサブユニットが追加的なペプチド配列を含む、SELP構築体を以下のように作製した:人工遺伝子の合成を使用して、それぞれの同一のサブユニットが特有の非パリンドローム制限部位を含む、2サブユニット型の所望の構築体を作製した。詳細には、SELPサブユニットは、シルク領域側面の1つのサブユニット当たり2箇所に取り込まれた、シルク領域のC末端とエラスチン領域(領域S2E1)のN末端の間に取り込まれた、いずれかのBBIP4配列を含んでいた。BsgI制限酵素切断部位を、それぞれのサブユニット内に設計した。遺伝子の構築は、Blue Heron Biotechnology(Bothell、WA)によって行われた。DNAをBsgIによって消化し、これによって1分子当たり1つのサブユニットの放出がもたらされた。生じた修飾SELPモノマーおよびプラスミドベクターは、アガロースゲルから精製し、Spin Vacを使用して濃縮した。16Cで一晩製造者の教示書に従い、T4DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、モノマーを自己連結させた(図1)。元の精製ベクターを、他の新たなリガーゼとの連結混合物に加え、さらに24時間16Cでインキュベートした。連結混合物を使用して、製造者の教示書に従い大腸菌TOP10細胞(Invitrogen)を形質転換した。生成した形質転換体を使用して、5mlのLuriaブロスおよび適切な抗生物質を含む培養試験管に接種した。試験管は16時間、37C、250rpmでインキュベートした。プラスミドMiniprepキット(Qiagen)を使用して生じた培養物から、プラスミドを精製した。完全なSELP挿入体は、EcoRVおよびBamHI制限酵素を用いた消化によってベクターから切除し、アガロースゲル電気泳動を使用して大きさを分けて、合計13の望ましいサブユニットを含む構築体を同定した。適切なSELP遺伝子構築体を、ラムダPrプロモーターを含むベクターにサブクローニングし、生成宿主大腸菌MM294に形質転換した。調製した接種用バイアルは-80Cで保存した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む生体分子結合体。
【請求項2】
反復配列タンパク質ポリマーが、エラスチン、コラーゲン、アブダクチン、バイサス、鞭毛状絹糸、しおり絹糸、グルテン高分子量サブユニット、チチン、フィブロネクチン、レミニン、グリアジン、膠様ポリポリペプチド、氷核活性タンパク質、ケラチン、ムシン、RNAポリメラーゼII、レザリンまたはこれらの混合物由来の反復アミノ酸配列単位を含む、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項3】
反復配列タンパク質ポリマー式が、
Ty[(An)x(B)b(A'n')x'(B')b'(A"n")x"]iT'y'
からなり、上式でTおよびT'がそれぞれ約1〜約100アミノ酸のアミノ酸配列を含み、T'のアミノ酸配列がTのアミノ酸配列と同じであるか異なっており、
yおよびy'がそれぞれ0〜1の整数であり、y'の整数がyの整数と同じであるか異なっており、
A、A'およびA"が約3〜約30アミノ酸を含むそれぞれ個別の反復配列単位であり、A'のアミノ酸配列およびA"のアミノ酸配列がAのアミノ酸配列と同じであるか異なっており、
n、n'、およびn"が少なくとも2であり、かつ250を超えない整数であり、
x、x'およびx"がそれぞれ0または少なくとも1の整数であり、それぞれの整数が変化してA'、A'およびA"の個別の反復配列単位において少なくとも30アミノ酸を与え、x'の整数およびx"の整数がxの整数と同じであるか異なっており、
BおよびB'がそれぞれ約4〜約50アミノ酸のアミノ酸配列を含み、B'のアミノ配列がBのアミノ酸配列と同じであるか異なっており、
bおよびb'がそれぞれ0〜3の整数であり、b'の整数がbの整数と同じであるか異なっており、
iが1〜100の整数である、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項4】
TおよびT'が約1〜約60アミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項5】
TおよびT'が反復配列タンパク質ポリマー中のアミノ酸の合計数の20%未満を構成するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項6】
Bが生物学的または化学的機能または活性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項7】
B'が生物学的または化学的機能または活性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項8】
iが1〜50の整数である、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項9】
iが1〜約30の整数である、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項10】
A、A'およびA"が配列番号1、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号20、またはこれらの組合せを含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項11】
A、A'およびA"が配列番号1、配列番号3、またはこれらの組合せを含む、請求項3に記載の生体分子結合体。
【請求項12】
反復配列タンパク質ポリマーが配列番号19を含む、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項13】
少なくとも1つの活性剤が、シリコーン、芳香剤、染料、陰影剤、UV活性剤、日焼け止め剤、ラノリン、ビタミン、漂白剤、増粘剤、タンパク質、ペプチド、酵素、抗菌剤、防腐剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項14】
少なくとも1つの活性剤がシリコーンを含む、請求項13に記載の生体分子結合体。
【請求項15】
シリコーンが、エポキシ官能基を含むシリコーン、ポリジメチルシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーン界面活性剤、アルキル変性シリコーン、ゴム-シリコーン流体混合物、フェニルシリコーン流体、ジメチルシリコーン流体、適切なシリコーンの第四級アンモニウム塩、1つまたは複数のアミノ官能基を含むシリコーン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項14に記載の生体分子結合体。
【請求項16】
請求項1に記載の生体分子結合体を含むパーソナルケア組成物。
【請求項17】
ヘアケア組成物、スキンケア組成物、ネイルケア組成物、化粧品組成物、オーラルケア組成物、または処方箋不要の医薬組成物を含む、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項18】
生体分子結合体が組成物の約0.001重量%〜約10重量%を構成する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項19】
生体分子結合体が組成物の約0.01重量%〜約5重量%を構成する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項20】
生体分子結合体が組成物の約0.01重量%〜約1重量%を構成する、請求項16に記載のパーソナルケア組成物。
【請求項21】
パーソナルケア組成物を作製するための方法であって、生体分子結合体と許容可能な担体または賦形剤を組み合わせてパーソナルケア組成物を得ることを含み、生体分子結合体が反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む方法。
【請求項22】
水 適量
乳化剤 1〜5%
増粘剤/安定剤 0.1〜3%
皮膚軟化薬 2〜10%
乳白剤 0〜10%
湿潤剤 0〜10%
システム 0.001〜10%
機能成分 0.001〜25%
防腐剤 適量
仕上げ成分 適量
の重量%の乳濁液組成を含む乳濁液に配合する、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項23】
請求項22に記載の乳濁液を含むパーソナルケア製品組成物。
【請求項24】
水 適量
一次界面活性剤 0.1〜15%
二次界面活性剤 0.1〜10%
レオロジー改変剤 0.1〜5%
アルコール 0〜25%
システム 0.001〜10%
機能成分 0〜10%
コンディショニング成分 0〜5%
防腐剤 適量
仕上げ成分 適量
の重量%の界面活性剤システム組成を含む界面活性剤システムに配合する、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項25】
請求項24に記載の界面活性剤システムを含むパーソナルケア製品組成物。
【請求項26】
反復配列タンパク質ポリマーがシルクエラスチンポリマーを含み、少なくとも1つの活性剤がタンパク質またはペプチドを含み、さらに結合生成物が融合タンパク質を含む、請求項1に記載の生体分子結合体。
【請求項27】
シルクエラスチンポリマーがSELP47K(配列番号19)を含み、タンパク質またはペプチドが所望の適用例に適した任意のタンパク質またはペプチドを含み、SELP47K(配列番号19)との融合タンパク質を含む結合生成物を形成することができる、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項28】
ペプチドが抗菌性ペプチドを含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項29】
CAM-SELP47K(配列番号32)を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項30】
MBI-SELP47K(配列番号33)を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項31】
タンパク質が緑色蛍光タンパク質を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項32】
GFP-SELP47K(配列番号34)を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項33】
ペプチドがコットン結合ペプチドを含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項34】
CBP-SELP47K-S2E1(配列番号35)を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項35】
ペプチドがP4を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項36】
P4-SELP47K(配列番号36)を含む、請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項37】
少なくとも2つの活性剤を含み、前記少なくとも2つの活性剤が異なる、
請求項26に記載の生体分子結合体。
【請求項38】
反復配列タンパク質ポリマーとタンパク質またはペプチドを含む少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む、融合タンパク質結合体を含む生体分子結合体を生成する方法であって、反復配列タンパク質ポリマー、および所望の適用例に活性でかつ適したタンパク質またはペプチドを選択すること、反復配列タンパク質ポリマーをコードする遺伝子、およびタンパク質またはペプチドを含む少なくとも1つの活性剤をコードする遺伝子を得ること、反復配列タンパク質ポリマーをコードする遺伝子、およびタンパク質またはペプチドを含む少なくとも1つの活性剤をコードする遺伝子から結合体遺伝子を構築すること、結合体遺伝子を発現させて融合タンパク質結合体を含む発現産物を形成すること、融合タンパク質結合体を含む発現産物を発酵させること、および融合タンパク質結合体を精製することを含む方法。
【請求項39】
少なくとも2つの活性剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの活性剤が、抗菌性ペプチド、P4、コットン結合ペプチド、緑色蛍光タンパク質、またはこれらの組合せを含むタンパク質またはペプチドを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
少なくとも1つの所定の望ましい機能に適合した生体適合物質を提供する方法であって、反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む生体分子結合体を選択すること(ここで、反復配列タンパク質ポリマーはシルクエラスチンポリマーを含み、少なくとも1つの活性剤はタンパク質またはペプチドを含み、さらに結合生成物は所定の望ましい機能に従う融合タンパク質を含む)、および生体分子結合体を物質中に取り込ませることを含む方法。
【請求項42】
2つ以上の所定の望ましい機能に適合した生体適合物質を提供し、生体分子結合体が所定の望ましい機能に従う少なくとも2つの活性剤を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
反復配列タンパク質ポリマーと少なくとも1つの活性剤との結合生成物を含む少なくとも1つの生体分子結合体を含む少なくとも1つの所定の望ましい機能に適合した生体適合物質であって、反復配列タンパク質ポリマーがシルクエラスチンポリマーを含み、活性剤がタンパク質またはペプチドを含み、さらに結合生成物が融合タンパク質を含む、生体適合物質。
【請求項44】
少なくとも1つの生体分子結合体が、AMP-SELP47K、GFP-SELP47K、P4-SELP47K、CBP-SELP47K、またはこれらのある組合せを含む、請求項43に記載の生体適合物質。
【請求項45】
生体分子結合体がAMP-SELP47Kを含み、生体適合物質が織物用繊維、フィルター、クリームまたはコーティングを含む、請求項44に記載の生体適合物質。
【請求項46】
織物用繊維が保護衣類を含む、請求項45に記載の生体適合物質。
【請求項47】
保護衣類が外科手術用ガウンまたは生物戦防御用に設計された衣類を含む、請求項46に記載の生体適合物質。
【請求項48】
生体分子結合体がGFP-SELP47Kを含み、生体適合物質が所定の刺激に応答して検出可能な出力を誘発する、請求項43に記載の生体適合物質。
【請求項49】
生体適合物質が遺伝研究ツールあるいは調査ツールおよび/または同定ツールを含む、請求項48に記載の生体適合物質。
【請求項50】
生体分子結合体がP4-SELP47Kを含み、生体適合物質が紫外線感受性表面を保護するための織物用繊維、包帯、クリームまたはコーティングを含む、請求項43に記載の生体適合物質。
【請求項51】
請求項1に記載の生体分子結合体を含む、反復配列タンパク質ポリマー。

【公表番号】特表2007−507495(P2007−507495A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533118(P2006−533118)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/015317
【国際公開番号】WO2004/104020
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【出願人】(503358709)ジェネンコー インターナショナル インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】