説明

反応カード、反応カード製造方法及び反応カードを用いた自動分析装置

【課題】反応カードの各反応容器が密閉されているか否かを、目視または自動分析装置で容易に確認することのできる反応カードおよび反応カードの製造方法を提供すること。
【解決手段】開口部を有する1つ以上の反応容器11と、開口部を封止し、前記反応容器の内部と外部との圧力差に応じて変形する封止部材15とを備えた反応カード1において、封止部材15によって封止された反応容器11内の密閉空間は、常気圧と比して陰圧または陽圧状態に設定され、封止部材15は、密閉空間が陽圧状態の場合、凸状に変形し、密閉空間が陰圧状態の場合、凹状に変形することによって密閉状態を目視でも容易に確認することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的凝集反応を行う反応カード、反応カード製造方法及び反応カードを用いた自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血漿、血球または血清などの検体を免疫学的に分析する分析方法においては、検査内容に対応した試薬を専用の反応カード内の反応容器で検体と混和して反応させ、必要に応じてインキュベーションを行った後、その反応カードを遠心器で遠心することによって生じる反応像から凝集の有無を確認し、検体と試薬との凝集反応パターンをもとに検体が抗体または抗原に対して陰性であるか陽性であるかを判定する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上述した反応カードは、抗原または抗体による凝集反応パターンから陰性または陽性の判定を行ってABO式血液型判定を行う他、抗A抗体及び抗B抗体のような規則抗体以外の抗体(不規則抗体)であって、赤血球膜抗原による凝集反応パターンからRh式血液型の判定、および赤血球抗原による不規則抗体の有無を判定することができる。特に、輸血においては、輸血後の血液凝集または溶血を防ぐために検査の精度が重要となる。検査精度の向上のため、検査容器を密閉室内で検査容器内を陰圧にして、膨張度合いを測定して密閉性を検査して、検査容器内の内容物の保存性を向上させる容器の検査方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特公平8−7215号公報
【特許文献2】特開2006−8161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示す反応カードは、各反応容器が密閉されているか否かを確認できる機構がないため、反応容器が密閉されていないことによる内容物の蒸発等によって、試験結果に影響を及ぼすおそれがあった。また、特許文献2に示す容器の検査方法では、専用の密閉性検査装置が必要であり、簡易に密閉性を確認することができず、実際に検査容器を使用する使用者が密閉性を確認することに困難を要していた。さらに、自動分析装置に密閉性検査装置を組み込む場合、コストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応カードの各反応容器が密閉されているか否かを、目視または自動分析装置で容易に確認することのできる反応カードおよび反応カードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる反応カードは、開口部を有する1つ以上の反応容器と、前記開口部を封止し、前記反応容器の内部と外部との圧力差に応じて変形する封止部材と、を備え、前記封止部材によって封止された前記反応容器内の密閉空間は、常気圧と比して陽圧または陰圧状態に設定され、前記封止部材は、前記密閉空間が陽圧状態の場合、凸状に変形し、前記密閉空間が陰圧状態の場合、凹状に変形することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記封止部材は、金属または樹脂であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記封止部材は、前記開口部を覆う部分の少なくとも一部が前記圧力差に応じて変形することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記金属は、アルミニウムであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記反応容器は、検体と試薬とを収容し、該検体と該試薬との凝集反応を行なわせる反応部と、前記凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体を収容し、検体の分析を行う分析部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、反応容器の上部に設けられた開口部を密閉する封止部材によって前記反応容器内が密閉状態に保持される反応カードと、前記反応容器内が前記封止部材によって密閉状態であるか否かを判定する密閉判定手段と、前記密閉判定手段が、前記反応容器内が密閉状態でないと判定した場合に、密閉状態でない旨を報知する報知手段と、を備えたことを特徴する。
【0013】
また、本発明にかかる反応カード製造方法は、上記の発明において、検体と試薬とが分注されて免疫学的凝集反応を行わせる1つ以上の反応容器を有する反応カードの反応カード製造方法において、前記反応容器内に収容する担体を投入する投入ステップと、陰圧または陽圧下で前記担体を収容した前記反応容器を封止部材によって封止する封止ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反応カードの各反応容器が密閉されているか否かを密閉部材の形状によって確認できるようにしたので、各反応容器が密閉状態にあるか否かを容易に確認できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である反応カードについて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0016】
図1は、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を模式的に示す斜視図である。反応カード1は、カード状をなす本体部10と、本体部10の上端平面部に開口を有する反応容器11と、本体部10に貼付され、識別用のバーコードやロット番号、有効年月日等が印刷されているとともに、検体の情報や反応結果の記載欄を有するシール14とを有する。反応容器11は、略円筒形状をなし、検体と試薬とを反応させる反応部12と、反応部12の底部に連通して設けられ、反応の結果に応じた凝集の有無を判定するための反応像を生じさせる担体Cとしてゲル、ガラスビーズまたはプラスチックビーズが充填されて、検体と試薬との抗原抗体反応による反応液を遠心器によって遠心したものを保持する分析部13とを有する。反応カード1は、半透明の樹脂を用いて形成されている。分析部13における凝集像は、目視または撮像によって確認される。また、本体部10の上部平面は、封止部材15によって各反応容器11の上部開口部を封止され、各反応容器11内部の密閉性が保たれている。反応カード1を使用する場合は、封止部材15を剥がすか、若しくは開口部分を穿孔することによって、反応容器11内に検体及び試薬を分注して使用する。
【0017】
ここで、封止部材15によって密閉されている反応容器11内は、外部気圧と比して陽圧状態に保たれている。そのため、封止部材15は、反応容器11内部からの圧力によって外部方向の略球状に変形している。また、封止部材15と反応容器11上部開口部との間が開放され、反応容器11内部の密閉性を失った場合、封止部材15の変形領域は、反応容器11内部と外部気圧との圧力差に対応して、反応容器11の開口部が形成する円平面と封止部材15の頭頂部との鉛直距離が変化し、反応容器11内部と外部気圧との圧力が等しくなった場合、封止部材15の変形領域は、円平面の形状に戻る。変形の有無を確認することによって、目視でも反応容器11内部の密閉状態を確認することが可能となる。ここで、各反応容器11内部にかかる圧力は、同等の圧力に設定されることが好ましい。同等の圧力に設定することによって、同一反応カード1の一部の反応容器11の密閉性が失われた場合でも、容易に判断することができる。
【0018】
なお、封止部材15は、弾性材または金属によって構成される。弾性材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等の樹脂が挙げられる。また、金属は、アルミニウムが挙げられ、その他、反応容器11内部と外部との圧力差によって、変形可能な金属であれば適用できる。
【0019】
また、図2は、図1に示す反応カード1の反応容器11の断面を示す断面図である。本体部10の上部には、反応容器11の開口部に沿った凸部10aを有し、封止部材15は、凸部10aの上部平面に貼付されることによって反応容器11を密閉する。凸部10aは、各反応容器11毎に設けられ、封止部材15によって密閉されている。図2に示すように、封止部材15は、反応部12及び分析部13が形成する内部空間の圧力が外部気圧と比して陽圧状態となっているため、外部方向の略球状に変形している。この封止部材15の変形によって、目視でも容易に反応容器11内部が密閉されていることを確認することが可能となる。
【0020】
つぎに、反応カード1の製造における各反応容器11の密閉を行なう反応カード1のカード密閉処理について、図3を参照して説明する。図3は、カード密閉処理を示す模式図である。まず、各反応容器11に担体Cを所定量分注し、分析部13に収容する(図3(a))。担体Cの分注が終了すると、反応カード1を内部が加圧状態に設定された密閉容器100内に収容し、陽圧下で封止部材15を反応カード1の凸部10a上部平面に貼付して、反応容器11を密閉する(図3(b))。その後、反応カード1を密閉容器100から外部に開放すると、反応カード1の反応容器11内と外部との圧力差によって、封止部材15は、各反応容器11の凸部10aを基端とする上方に凸となる略球状に変形する(図3(c))。
【0021】
上述した封止部材15を用いて、各反応容器11上部の封止部材15が変形しているか否かを目視によって確認することで、各反応容器11が密閉されているか否かを容易に確認することが可能となる。また、検査装置を用いることなく、密閉性が確認できるため、コストをかけずに、精度の高い分析を継続することができる。
【0022】
ここで、反応カード1を自動分析装置で用いる場合の密閉確認について、図4を参照して説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を用いた自動分析装置2の概略構成を示す平面図である。自動分析装置2は、検体および試薬を反応容器11にそれぞれ分注し、分注した反応容器11内で生じる反応を光学的に測定する測定機構3と、測定機構3を含む自動分析装置2全体の制御を行うとともに測定機構3における測定結果の分析を行う制御機構4とを備える。
【0023】
検体搬送機構30は、検体容器30bを配置する検体ラック30cを保持して、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメントを有するキャタピラ30aと、図4右の搬入レーンから測定機構3、図4左の搬出レーンへ検体ラック30cを搬送する搬送レーン30dと、搬送レーン30d上に配置され、搬送レーン30d上を移動して検体ラック30cを搬送するラック歩進ツメ30eとを有し、図示しない駆動機構によって図中矢印方向に検体ラック30cを搬送する。また、検体容器30bには、バーコードが貼付され、図示しないバーコードリーダーによって読み取ることで、検体の情報を管理できる。
【0024】
測定機構3は、大別して試薬庫31、試薬分注機構32、反応テーブル33、カード移送機構34,38、カード取出口35、検体分注機構36、希釈液ボトル37および撮像部39を備える。また、制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44、出力部45および判定部46を備える。測定機構3および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0025】
試薬庫31は、反応容器11内に分注される試薬が収容された試薬容器31aを複数収納できる。試薬庫31には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器31aが着脱自在に収納される。試薬庫31は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、試薬庫31の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器31aを試薬分注機構32による試薬吸引位置まで移送する。試薬庫31の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、試薬の蒸発や変性、コンタミネーションを抑制することができる。
【0026】
試薬分注機構32は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、試薬の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。試薬分注機構32は、試薬庫31上の所定位置に移動された試薬容器31a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを図中矢印回りに旋回させ、反応テーブル33上の所定位置に搬送された反応容器11に分注する。
【0027】
反応テーブル33は、反応容器11への検体や試薬の分注を行うための反応カード1を所定の位置に設けられたカード保持部に配置する。反応テーブル33は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル33の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル33の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽とがそれぞれ設けられている。また、反応テーブル33では、検体と試薬とを分注して、所定温度及び所定時間でインキュベーションすることで検体と試薬とを反応させた後、図示しない駆動機構によって反応テーブル33を回転させることで反応カード1が従動して回転し、遠心力が付加されることで、反応容器11に収容された検体と試薬とが反応した反応液を分離する。ここで、反応テーブル33のカード保持部は、反応テーブル33の径方向に延びる柱状部材であって、上端平面に開口部を有し、開口部から鉛直方向に形成された内部空間に反応カード1を保持する。また、カード保持部側面であって反応テーブル33の径方向と略平行な側面には、カード保持部の回転軸を取り付ける穴部が設けられ、反応テーブル33とカード保持部とは回転軸によって接触している。カード保持部は、反応テーブル33の回転によってかかる遠心力により、回転軸回りに回動する。反応カード1は、反応テーブル33の回転による遠心力がカード保持部から伝達され、反応カード下方に向かう力を受け、反応容器に収容された反応液がカード下方へ引きつけられるようになる。
【0028】
カード移送機構34は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、反応カード1を把持するカード把持アームを有し、カード取出口35に用意される反応カード1を反応テーブル33に移送する。
【0029】
カード取出口35は、取出口下方にカード格納庫を有し、制御部41の制御によって分析に必要な反応カード1をカード取出口35に配置する。また、カード取出口35近傍には、密閉検査部35aが設けられ、反応カード1の各反応容器11が封止部材によって封止されているか否かを判断するための情報を、センサを用いて得た情報を判定部46に送信する。
【0030】
検体分注機構36は、試薬分注機構32と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。また、検体分注機構36近傍には、洗浄ポッド36aと希釈ポッド36bとが設けられている。希釈ポッド36bでは、上述した検体搬送機構30上の所定位置に搬送された検体容器30bの中からプローブによって検体を吸引し、アームを旋回させて希釈ポッド36b内に検体を吐出し、希釈液ボトル37に収容されている希釈液によって希釈される。希釈液ボトル37は、上方から外部に延びるチューブを有し、希釈ポッド36bに連通され、図示しないポンプまたはシリンジによって希釈液を希釈ポッド36b内に送る。検体分注機構36は、検体または希釈ポッド36bで希釈された検体を吸引し、反応容器11に検体を吐出して分注を行う。また、適宜洗浄ポッド36aでプローブの洗浄を行う。
【0031】
撮像部39は、カード移送機構38によって所定の撮像位置に搬送された反応カード1の反応容器11内の試料の測定を行う。この撮像部39による測定結果は、制御部41に出力され、分析部43において分析される。また、分析が終了した反応カード1は、カード廃棄部39aに廃棄される。
【0032】
つぎに、制御機構4について説明する。制御部41は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置1の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0033】
入力部42は、キーボード、マウス、通信機能等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、撮像部39から取得した画像データに基づいて処理を行い、検体の分析を行う。記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置1が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部44は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部45は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。
【0034】
また、判定部46は、密閉検査部35aが取得した情報をもとに、反応カード1の各反応容器11が密閉されているか否かを判定し、判定の結果を制御部41に出力する。制御部41は、判定結果をもとに、当該反応カード1若しくは当該反応容器11の使用を中止する。
【0035】
以上のように構成された自動分析装置1では、複数の反応カード1に対して、検体分注機構36が検体または希釈ポッド36b中の希釈された検体を分注し、試薬分注機構32が試薬容器31a中の試薬を分注した後、撮像部39が、検体と試薬とが反応した反応液を遠心によって分離された状態の撮像処理を行い、この撮像データを分析部43が分析することで、検体の分析が自動的に行われる。
【0036】
なお、密閉検査部35aに用いられるセンサは、反射型センサ、透過型センサ、接触型センサ等の接触型または非接触型センサを用いることが好ましい。また、CCDイメージセンサを用いて封止部材の変形を撮像して、判定部46が密閉状態を判定してもよい。
【0037】
また、図3に示す密閉容器100内が陰圧状態に設定されている場合の封止部材15の変形を、図5を参照して説明する。図5は反応カードの反応容器11の断面を示す断面図である。図5に示すように、密閉容器100内が陰圧状態に設定されている場合、密閉容器100内で密閉された反応容器11内は、外部と比して陰圧状態となっているため、封止部材15は、凸部10aを基端とした反応容器11に対して内部方向の略球状に変形する。なお、封止部材15と反応容器11上部開口部との間が開放され、反応容器11内部の密閉性を失った場合、封止部材15の変形領域は、反応容器11内部と外部気圧との圧力差に対応して、反応容器11の開口部が形成する円平面と封止部材15の頭頂部との鉛直距離が変化し、反応容器11内部と外部気圧との圧力が等しくなった場合、封止部材15の変形領域は、円平面の形状に戻る。
【0038】
ここで、図6を参照して、図1に示す反応カード1の変形例1を説明する。図6は、図1に示す反応カード1の変形例1を示す斜視図である。図6に示すように、本体部10の上部平面の凸部10aに封止部材16が貼付され、反応容器11内が密閉されている。封止部材16の凸部10a内に位置する領域に変形部16aを有し、この変形部16aは、上述した弾性材または金属によって形成されている。図6に示す反応容器11内部は、外部気圧と比して陽圧状態になっているため、変形部16aは、変形部16aの端部を基端とする外部方向の略球状に変形する。
【0039】
なお、変形部16aの配置は、凸部10aによって閉ざされた領域であれば如何なる位置でもよく、変形部16aの面積は、図4に示す自動分析装置2における各プローブが挿入可能であって、変形部16aの変形が確認できる面積以上であればよい。ここで、自動分析装置2で用いる場合、変形部16aは、各プローブがとり得る軌跡上に配置されることが好ましい。
【0040】
また、図7,8を参照して、図1に示す反応カード1の変形例2を説明する。図7は、図1に示す反応カード1の変形例2を示す斜視図であり、図8は、図1に示す反応カード1の変形例2を示す断面図である。図7,8に示すように、本体部10の上部平面の凸部10aに封止部材17が貼付され、反応容器11内が密閉されている。ここで、凸部10aによって閉ざされた領域において、各封止材17aの間に上述した弾性部材で形成された変形部17bが配置されている。図7,8は、反応容器11内部が陽圧状態となっているため、内部圧力によって変形部17bが外部方向に向かって変形し、封止部材17が段差状に形成される。ここで、封止材17aは、硬度の高い金属、樹脂を用いてもよく、変形部材17bと比して、延伸性が低く、変形し難い材質であることが好ましい。また、この反応カード1を図4に示す自動分析装置2で使用する場合、分注は、封止部材17の上部平面に配置された変形部17bを穿孔してプローブを挿入する。
【0041】
ここで、変形例1,2に示す反応カードにおいて、反応容器11内部は、陰圧状態でもよい。陰圧状態の場合、変形部16a,17bは、反応容器11の内部方向に変形される。また、変形部の形状は、変形が確認可能であれば如何なる形状でもよい。なお、変形例2を用いる場合には、封止材17aと変形部17bとの配置は、反応容器11開口平面に対して対称に配置されることが好ましい。
【0042】
本実施の形態にかかる反応カードにおいては、反応カードを封止する封止部材を変形可能な材質を用いて構成し、反応容器内を陽圧または陰圧状態にして外部との圧力差を生じさせることで封止部材を変形させるため、目視においても密閉状態を容易に確認することを可能とする。また、変形例1,2に示したように、一部のみを変形可能な材質で形成することで、封止部材の外的に付加される物理力に対する耐性を強化するとともに、密閉の確認を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態にかかる反応カードを模式的に示す斜視図である。
【図2】図1の反応カードの反応容器の断面を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかるカード密閉処理を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる反応カードを用いた自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる反応カードの反応容器の断面を示す断面図である。
【図6】図1の反応カードの変形例1を示す斜視図である。
【図7】図1の反応カードの変形例2を示す斜視図である。
【図8】図1の反応カードの変形例2を示す断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 反応カード
2 自動分析装置
3 測定機構
4 制御機構
10 本体部
11 反応容器
12 反応部
13 分析部
14 シール
15,16,17 封止部材
16a,17b 変形部
17a 封止材
30 検体搬送機構
30a キャタピラ
30b 検体容器
30c 検体ラック
30d 搬送レーン
30e ラック歩進ツメ
31 試薬庫
31a 試薬容器
32 試薬分注機構
33 反応テーブル
34,38 カード移送機構
35 カード取出口
35a 密閉検査部
36 検体分注機構
36a 洗浄ポッド
36b 希釈ポッド
37 希釈液ボトル
39 撮像部
39a カード廃棄部
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部
46 判定部
100 密閉容器
C 担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する1つ以上の反応容器と、
前記開口部を封止し、前記反応容器の内部と外部との圧力差に応じて変形する封止部材と、
を備え、
前記封止部材によって封止された前記反応容器内の密閉空間は、常気圧と比して陽圧または陰圧状態に設定され、前記封止部材は、前記密閉空間が陽圧状態の場合、凸状に変形し、前記密閉空間が陰圧状態の場合、凹状に変形することを特徴とする反応カード。
【請求項2】
前記封止部材は、金属または樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の反応カード。
【請求項3】
前記封止部材は、前記開口部を覆う部分の少なくとも一部が前記圧力差に応じて変形することを特徴とする請求項1または2に記載の反応カード。
【請求項4】
前記金属は、アルミニウムであることを特徴とする請求項2または3に記載の反応カード。
【請求項5】
前記反応容器は、
検体と試薬とを収容し、該検体と該試薬との凝集反応を行なわせる反応部と、
前記凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体を収容し、検体の分析を行う分析部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の反応カード。
【請求項6】
反応容器の上部に設けられた開口部を封止する封止部材によって前記反応容器内が密閉状態に保持される反応カードと、
前記反応容器内が前記封止部材によって密閉状態であるか否かを判定する密閉判定手段と、
前記密閉判定手段が、前記反応容器内が密閉状態でないと判定した場合に、密閉状態でない旨を報知する報知手段と、
を備えたことを特徴する自動分析装置。
【請求項7】
検体と試薬とが分注されて免疫学的凝集反応を行わせる1つ以上の反応容器を有する反応カードの反応カード製造方法において、
前記反応容器内に収容する担体を投入する投入ステップと、
陰圧または陽圧下で前記担体を収容した前記反応容器を封止部材によって封止する封止ステップと、
を含むことを特徴とする反応カード製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−169620(P2010−169620A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14127(P2009−14127)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】