説明

反応カード、反応像安定化方法、および反応カードを用いた自動分析装置

【課題】反応カードを横に倒しても、長期的に保存する場合でも、安定して分析直後の結果を保持することができる反応カード、反応像安定化方法、および反応カードを用いた自動分析装置を提供すること。
【解決手段】開口部を有し、検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて凝集塊を保持する担体Cを収容する反応容器11A〜11Fと、各反応容器11A〜11Fを支持する本体部10とを備えた反応カード1において、反応容器11A〜11Fに収容された重合剤によって凝集塊Gを保持した担体C上部を固定することで、反応カード1を横に倒した場合でも、長期的に保存した場合においても、分析直後の状態の反応像を維持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学的凝集反応を行う反応カード、反応像安定化方法、および反応カードを用いた自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血漿、血球または血清などの検体を免疫学的に分析する分析方法においては、検査内容に対応した試薬を専用の反応カード内の反応容器で検体と混和して反応させ、必要に応じてインキュベーションを行った後、その反応カードを遠心器で遠心することによって生じる反応像から凝集の有無を確認し、検体と試薬との凝集反応パターンをもとに検体が抗体または抗原に対して陰性であるか陽性であるかを判定する(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、上述した反応カードを用いた分析は、各反応容器が担体を収容し、上述した凝集塊が遠心力によって担体の各分子間の隙間を通過するとともに、凝集塊の大きさに応じて担体に捕捉される位置が異なることを利用して凝集反応結果を判定する。なお、分析結果は、担体における凝集塊の位置によって4+〜1+(陽性)、−(陰性)、不明(陽性と陰性の間であってどちらとも判定できない場合)のいずれかに判定される。
【0004】
【特許文献1】特公平8−7215号公報
【特許文献2】特許第3299768号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に示す反応カードは、担体が固定されていないため、複写機等で反応カードを横に倒すと担体の上部が崩れ、凝集像が変化してしまうという問題があった。また、長期保存をする場合においても、時間が経過すると凝集塊が下方に沈殿してしまい、凝集塊を分析直後のまま安定して保存できないという問題があった。更に、乾燥により、担体の透明性が失われて反応像が見られなくなる不具合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、反応カードを横に倒しても、長期的に保存する場合でも、安定して分析直後の結果を保持することができる反応カード、反応像安定化方法、および反応カードを用いた自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードにおいて、前記反応容器は、前記担体間を固定する重合剤を含有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記重合剤は、重合用分子および該重合用分子の重合を開始させる重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記重合用分子は、モノマーまたはオリゴマーであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記重合開始剤は、感光または感熱することによって活性化することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる反応カードは、上記の発明において、前記重合用分子は、前記検体と前記試薬との反応処理後に前記反応容器に収容されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる反応像安定化方法は、上記の発明において、検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードの各反応容器に、前記検体と前記試薬との反応処理後に重合用分子および重合開始剤を前記反応容器に分注する分注ステップと、前記重合開始剤に光、熱またはマイクロ波を照射して、該重合開始剤を活性化させる活性化ステップと、を含むこと特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードと、前記検体を搬送する検体搬送機構と、前記検体を前記反応容器に分注する検体分注手段と、前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注手段と、複数の前記反応カードを収容し、前記試薬および検体が分注された反応カードの免疫学的凝集反応を行う反応手段と、前記反応手段によって前記免疫学的凝集反応が行われた結果をもとに前記検体の分析を行う分析手段と、前記検体と前記試薬との反応処理後に重合剤および重合開始剤を前記反応容器に分注する重合剤分注手段と、前記重合開始剤を感光または感熱させて、該重合開始剤を活性化させる活性化手段と、を備えたこと特徴とする。
【0014】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記重合剤は、重合用分子および該重合短鎖の重合を開始させる重合開始剤を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記重合用分子は、モノマーまたはオリゴマーであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記重合剤分注手段は、前記試薬分注手段であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる自動分析装置は、上記の発明において、前記活性化手段は、光、熱またはマイクロ波を前記反応容器に照射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、反応カードを倒した場合でも、長期的に保存した場合でも、分析直後の凝集塊を安定して保持できるようにしたので、反応カードを横にした場合でも経時変化に対しても分析直後の結果を確認できる、また、乾燥を防止し、経時変化に対しても分析直後の結果を確認できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態である反応カードについて説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。なお、以下の説明で参照する図面は模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を模式的に示す斜視図である。反応カード1は、半透明の樹脂を用いて形成され、カード状をなす本体部10と、本体部10の上端平面部に開口を有する反応容器11A〜11Fと、本体部10に貼付され、識別用のバーコードやロット番号、有効年月日等が印刷されているとともに、検体の情報や反応結果の記載欄を有するシール14とを有する。反応容器11Aは、略円筒形状をなし、検体と試薬とを反応させる反応部12Aと、反応部12Aの底部に連通して設けられ、反応の結果に応じた凝集の有無を判定するための反応像を生じさせる担体Cとしてゲル、ガラスビーズまたはプラスチックビーズと担体Cを安定化させる緩衝液とが充填され、検体と試薬との抗原抗体反応による凝集塊Gを遠心器によって遠心したものを保持する分析部13Aとを有する。なお、反応容器11B〜11Fの構成においても、反応容器11Aの構成と同様である。分析部13Aにおける凝集像は、目視または撮像によって確認される。
【0021】
また、本体部10の上部平面は、図示しない封止部材によって各反応容器11A〜11Fの上部開口部が封止され、各反応容器11A〜11F内部の密閉性が保たれている。反応カード1を使用する場合は、封止部材を剥がすか、若しくは開口部分を穿孔することによって、反応容器11A〜11F内に検体及び試薬を分注して使用する。なお、封止部材は、弾性材または金属箔によって構成される。弾性材としては、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等の樹脂が挙げられる。また、金属箔は、アルミニウム箔が挙げられ、その他、穿孔可能な金属であれば適用できる。
【0022】
ここで、分析部13Aには、担体Cの各分子間を固定する重合剤が充填されている。重合剤は、重合用分子と重合開始剤とであって、重合用分子は、モノマーまたはオリゴマーが挙げられる。また、モノマーに関しては、エチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシメチル、メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸メチル、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸などが挙げられる。また、重合開始剤は、熱によって重合を開始させるものとして2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、ペルオキソ二硫酸カリウムなどが挙げられ、光によって重合を開始させるものとしてベンゾイルパーオキシドが挙げられる。
【0023】
なお、重合用分子は、担体Cの各分子間を通過できる大きさであって、液状であることが好ましく、検体および試薬に影響を与えなければよい。また、モノマーとオリゴマーとを分析部13Aに収容し、担体Cの分子間距離の差異に対応させてもよい。
【0024】
分析終了後、反応カード1の各反応容器11A〜11Fに光または熱を照射して重合開始剤を活性化させてモノマーまたはオリゴマーをポリマー化させ、担体Cの各分子間を固定する。光または熱の照射は、重合開始剤の種類に応じて決定され、照射時間もまた重合開始剤の種類に応じて決定される。上述した重合剤を用いて担体Cの各分子間を固定することによって担体Cに保持された凝集塊Gを固定し、反応カード1が倒れた場合でも反応像が変化しない。また、凝集塊Gの固定によって経時変化による凝集塊Gの沈降を防止することが可能となり、分析直後の結果を安定して長期保存することができる。
【0025】
ここで、反応カード1を用いた分析について、図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を用いた分析処理を示す模式図である。まず、反応カード1の各反応容器11A〜11Fに検体Mを分注する(図2(a))。なお、図2(a)において、検体Mは、担体C上部と反応容器11内部の空間で形成されるエアギャップAの張力によって保持され、検体Mが担体Cと接触することはない。検体Mの分注終了後、試薬Rを分注する(図2(b))。試薬R分注後、所定温度、例えば37℃において所定時間反応処理を行う(図2(c))。なお、図2(c)における反応処理では、図2(a)と同様、検体Mと試薬Rとが反応した反応液Sは、担体C上部と反応容器11内部の空間で形成されるエアギャップAによって保持され、反応処理中に反応液Sが担体Cと接触することはない。所定時間経過後、遠心処理(図2(d))により図2(d)の矢印F方向の遠心力を付加して反応液Sを担体C内に送り込む。このとき、遠心力の付加によって、反応液Sが、エアギャップAを押圧して矢印F方向に流動し、反応液S中の凝集塊Gが担体Cに入り込み、凝集塊Gの大きさに応じた保持位置に保持される。反応液S中の凝集塊Gが担体Cに保持された後、反応カード1の各反応容器11A〜11Fに重合用分子、続いて重合開始剤を分注する(図2(e))。重合剤の分注終了後、各反応容器11A〜11Fに光または熱を照射して重合用分子をポリマー化させて、担体Cの上清部分を固定する(図2(f))。上述した処理によって、反応容器11A〜11F中の液層部分を固定することで反応像を変化させることなく、分析後の反応カード1を扱うことができる。なお、遠心処理後または重合用分子のポリマー化処理の後に、撮像等の記録処理を行う。
【0026】
なお、検体および試薬の分注処理は、試薬の分注を先に行ってもよく、重合剤の分注処理は、試薬血球の溶血等の不具合を起こさないもので有れば、検体および試薬の分注前に行ってもよく、重合用分子を検体および試薬の分注前に分注し、反応処理後に重合開始剤を分注してもよい。また、重合開始剤の活性化処理は、マイクロ波の誘導加熱によって行なってもよい。
【0027】
本発明の実施の形態にかかる反応カード1を用いることによって、分析直後の反応像のまま安定して扱うことが可能となる。特に、図1の反応容器11A,11Dのような強い陽性の反応像が、反応カード1が倒れた場合の担体C上部の崩れによる反応像の変化を防止することができる。また、担体C上部を固定することによって担体の乾燥を防止し、経時的な変化を抑制することができる。
【0028】
ここで、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を自動分析装置で用いる場合について、図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる反応カード1を用いた自動分析装置2の概略構成を示す平面図である。自動分析装置2は、検体および試薬を反応容器11にそれぞれ分注し、分注した反応容器11内で生じる反応を光学的に測定する測定機構3と、測定機構3を含む自動分析装置2全体の制御を行うとともに測定機構3における測定結果の分析を行う制御機構4とを備える。
【0029】
検体搬送機構20は、検体容器20bを配置する検体ラック20cを保持して、搬送方向に対して直交するL字状のアタッチメントを有するキャタピラ20aと、図3右の搬入レーンから測定機構3、図3左の搬出レーンへ検体ラック20cを搬送する搬送レーン20dと、搬送レーン20d上に配置され、搬送レーン20d上を移動して検体ラック20cを搬送するラック歩進ツメ20eとを有し、図示しない駆動機構によって図中矢印方向に検体ラック20cを搬送する。また、検体容器20bには、バーコードが貼付され、図示しないバーコードリーダーによって読み取ることで、検体の情報を管理できる。
【0030】
測定機構3は、大別して第1試薬庫30、試薬分注機構31、反応テーブル32、カード移送機構33,38、カード取出口34、検体分注機構35、重合剤分注機構36、第2試薬庫37および撮像部39を備える。また、制御機構4は、制御部41、入力部42、分析部43、記憶部44および出力部45を備える。測定機構3および制御機構4が備えるこれらの各部は、制御部41に電気的に接続されている。
【0031】
第1試薬庫30は、反応容器11内に分注される試薬が収容された試薬容器30aを複数収納できる。第1試薬庫30には、複数の収納室が等間隔で配置されており、各収納室には試薬容器30aが着脱自在に収納される。第1試薬庫30は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第1試薬庫30の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の試薬容器30aを試薬分注機構31による試薬吸引位置まで移送する。第1試薬庫30の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、試薬の蒸発や変性、コンタミネーションを抑制することができる。
【0032】
試薬分注機構31は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、検体の吸引および吐出を行うプローブが取り付けられている。試薬分注機構31は、第1試薬庫30上の所定位置に移動された試薬容器30a内の試薬をプローブによって吸引し、アームを図中矢印回りに旋回させ、反応テーブル32上の所定位置に搬送された反応容器11に分注する。
【0033】
反応テーブル32は、反応容器11への検体や試薬の分注を行うための反応カード1を所定の位置に設けられたカード保持部に配置する。反応テーブル32は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、反応テーブル32の中心を通る鉛直線を回転軸として回動自在である。反応テーブル32の上方と下方には、図示しない開閉自在な蓋と恒温槽とがそれぞれ設けられている。また、反応テーブル32では、検体と試薬とを分注して、所定温度及び所定時間でインキュベーションすることで検体と試薬とを反応させた後、図示しない駆動機構によって反応テーブル32を回転させることで反応カード1が従動して回転し、遠心力が付加されることで、反応容器11に収容された検体と試薬とが反応した反応液を分離する。ここで、反応テーブル32のカード保持部は、反応テーブル32の径方向に延びる柱状部材であって、上端平面に開口部を有し、開口部から鉛直方向に形成された内部空間に反応カード1を保持する。また、カード保持部側面であって反応テーブル32の径方向と略平行な側面には、カード保持部の回転軸を取り付ける穴部が設けられ、反応テーブル32とカード保持部とは回転軸によって接触している。カード保持部は、反応テーブル32の回転によってかかる遠心力により、回転軸回りに回動する。反応カード1は、反応テーブル32の回転による遠心力がカード保持部から伝達され、反応カード下方に向かう力を受け、反応容器に収容された反応液がカード下方へ引きつけられるようになる。
【0034】
カード移送機構33は、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行うアームを備える。このアームの先端部には、反応カード1を把持するカード把持アームを有し、カード取出口34に用意される反応カード1を反応テーブル32に移送する。
【0035】
カード取出口34は、取出口下方にカード格納庫を有し、制御部41の制御によって分析に必要な反応カード1をカード取出口34に配置する。
【0036】
検体分注機構35は、試薬分注機構31と同様に、検体の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。また、検体分注機構35近傍には、洗浄ポッド35aと希釈ポッド35bとが設けられている。希釈ポッド35bでは、上述した検体搬送機構35上の所定位置に搬送された検体容器20bの中からプローブによって検体を吸引し、アームを旋回させて希釈ポッド35b内に検体を吐出し、希釈液ボトル35cに収容されている希釈液によって希釈される。希釈液ボトル35cは、上方から外部に延びるチューブを有し、希釈ポッド35bに連通され、図示しないポンプまたはシリンジによって希釈液を希釈ポッド35b内に送る。検体分注機構35は、検体または希釈ポッド35bで希釈された検体を吸引し、反応容器11に検体を吐出して分注を行う。また、適宜洗浄ポッド35aでプローブの洗浄を行う。
【0037】
重合剤分注機構36は、試薬分注機構31と同様に、重合剤の吸引および吐出を行うプローブが先端部に取り付けられたアームを備える。アームは、鉛直方向への昇降および自身の基端部を通過する鉛直線を中心軸とする回転を自在に行う。また、第2試薬庫37は、反応容器11内に分注される重合用分子または重合開始剤が収容された重合剤容器37aを複数収納できる。第2試薬庫37は、制御部41の制御のもと、図示しない駆動機構が駆動することによって、第2試薬庫37の中心を通る鉛直線を回転軸として時計回りまたは反時計回りに回動自在であり、所望の重合剤容器37aを重合剤分注機構36による吸引位置まで移送する。第2試薬庫37の上方には、開閉自在な蓋(図示せず)が設けられ、試薬の蒸発や変性、コンタミネーションを抑制することができる。
【0038】
撮像部39は、カード移送機構38によって所定の撮像位置に搬送された反応カード1の反応容器11内の試料の測定を行う。この撮像部39による測定結果は、制御部41に出力され、分析部43において分析される。また、撮像部39は、撮像が終了した反応カード1に対して各反応容器11に光、熱またはマイクロ波を照射する照射部を有し、分析が終了した反応カード1の各反応容器11に収容された担体を固定させる。なお、分析が終了した反応カード1は、カード廃棄部39aに廃棄され、分析の終了した反応カード1を保存する場合は、カード廃棄部39a下部に保管部を連結して反応カード1を保管するようにしてもよい。
【0039】
つぎに、制御機構4について説明する。制御部41は、CPU等を用いて構成され、自動分析装置2の各部の処理および動作を制御する。制御部41は、これらの各構成部位に入出力される情報について所定の入出力制御を行い、かつ、この情報に対して所定の情報処理を行う。
【0040】
入力部42は、キーボード、マウス、通信機能等を用いて構成され、検体の分析に必要な諸情報や分析動作の指示情報等を外部から取得する。分析部43は、撮像部39から取得した画像データに基づいて処理を行い、検体の分析を行う。記憶部44は、情報を磁気的に記憶するハードディスクと、自動分析装置2が処理を実行する際にその処理にかかわる各種プログラムをハードディスクからロードして電気的に記憶するメモリとを用いて構成され、検体の分析結果等を含む諸情報を記憶する。記憶部44は、CD−ROM、DVD−ROM、PCカード等の記憶媒体に記憶された情報を読み取ることができる補助記憶装置を備えてもよい。出力部45は、プリンタ、通信機構等を用いて構成され、検体の分析結果を含む諸情報を出力する。
【0041】
以上のように構成された自動分析装置2では、複数の反応カード1に対して、検体分注機構35が検体または希釈ポッド35b中の希釈された検体を分注し、試薬分注機構31が試薬容器30a中の試薬を分注した後、撮像部39が、検体と試薬とが反応した反応液を遠心によって分離された状態の撮像処理を行い、この撮像データを分析部43が分析することで、検体の分析が自動的に行われる。また、反応処理または分析処理の終了した反応カード1に対し、重合剤分注機構36が重合剤を分注して、撮像部39において反応カード1に光、熱またはマイクロ波を照射することによって反応容器11内の担体の固定化処理を行う。
【0042】
なお、重合剤の分注を試薬分注機構31が行なってもよい。図4は、図3に示す自動分析装置2の変形例を示す平面図である。図4において、第1試薬庫30に重合剤容器37aを収容して、試薬分注機構31が各反応容器11に重合用分子および重合開始剤を分注することで、簡易な構成で担体の固定化処理を行うことが可能となる。
【0043】
本実施の形態にかかる反応カードにおいては、重合剤によって担体上部の液層部分を固定化することで反応カードを倒した場合でも分析直後の反応像を維持させることができ、また、経時変化を抑制し、安定して保存することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態にかかる反応カードを模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる反応カードを用いた分析処理を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる反応カードを用いた自動分析装置の概略構成を示す平面図である。
【図4】図3に示す自動分析装置の変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 反応カード
2 自動分析装置
3 測定機構
4 制御機構
10 本体部
11A〜11F 反応容器
12A 反応部
13A 分析部
14 シール
20 検体搬送機構
20a キャタピラ
20b 検体容器
20c 検体ラック
20d 搬送レーン
20e ラック歩進ツメ
30 第1試薬庫
30a 試薬容器
31 試薬分注機構
32 反応テーブル
33,38 カード移送機構
34 カード取出口
35 検体分注機構
35a 洗浄ポッド
35b 希釈ポッド
35c 希釈液ボトル
36 重合剤分注機構
37 第2試薬庫
37a 重合剤容器
39 撮像部
39a カード廃棄部
41 制御部
42 入力部
43 分析部
44 記憶部
45 出力部
A エアギャップ
C 担体
G 凝集塊
M 検体
R 試薬
S 反応液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードにおいて、
前記反応容器は、前記担体間を固定する重合剤を含有することを特徴とする反応カード。
【請求項2】
前記重合剤は、重合用分子および該重合用分子の重合を開始させる重合開始剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の反応カード。
【請求項3】
前記重合用分子は、モノマーまたはオリゴマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の反応カード。
【請求項4】
前記重合開始剤は、感光または感熱することによって活性化することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の反応カード。
【請求項5】
前記重合用分子は、前記検体と前記試薬との反応処理後に前記反応容器に収容されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の反応カード。
【請求項6】
検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードの各反応容器に、前記検体と前記試薬との反応処理後に重合用分子および重合開始剤を前記反応容器に分注する分注ステップと、
前記重合開始剤に光、熱またはマイクロ波を照射して、該重合開始剤を活性化させる活性化ステップと、
を含むこと特徴とする反応像安定化方法。
【請求項7】
検体と試薬との凝集反応による凝集塊の大きさによって移動度を変化させて該凝集塊を保持する担体と、該担体を安定化させる緩衝液とを収容する1つ以上の反応容器を有する反応カードと、
前記検体を搬送する検体搬送機構と、
前記検体を前記反応容器に分注する検体分注手段と、
前記試薬を前記反応容器に分注する試薬分注手段と、
複数の前記反応カードを収容し、前記試薬および検体が分注された反応カードの免疫学的凝集反応を行う反応手段と、
前記反応手段によって前記免疫学的凝集反応が行われた結果をもとに前記検体の分析を行う分析手段と、
前記検体と前記試薬との反応処理後に重合剤および重合開始剤を前記反応容器に分注する重合剤分注手段と、
前記重合開始剤を感光または感熱させて、該重合開始剤を活性化させる活性化手段と、
を備えたこと特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
前記重合剤は、重合用分子および該重合短鎖の重合を開始させる重合開始剤を含むことを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記重合用分子は、モノマーまたはオリゴマーであることを特徴とする請求項7または8に記載の自動分析装置。
【請求項10】
前記重合剤分注手段は、前記試薬分注手段であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項11】
前記活性化手段は、光、熱またはマイクロ波を前記反応容器に照射することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一つに記載の自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−217115(P2010−217115A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66849(P2009−66849)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(510005889)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (174)
【Fターム(参考)】