説明

反応可変要素の特徴付け

【課題】特異的なアフィニティー結合および固相への捕捉に基づくアッセイ方法を用いることにより、複数の試料中の被検体の量を定量する、改良されたマイクロスケール法を提供する。
【解決手段】(a)流動が共通の流動制御下にある2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造を含んでなるマイクロ流体デバイスを利用すること、ならびに(b)少なくとも2つのマイクロチャンネル構造において流動条件下でアフィニティー複合体を形成させること、および使用された個々のマイクロチャンネル構造中の反応微小空洞において流動条件下で形成された、固定化形態のアフィニティー複合体を保持すること、により改善され得ることを認めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リガンドおよびバインダーを含むアフィニティー複合体の形成または解離に影響する少なくとも1つの反応可変要素の特徴付けのマイクロスケール法に関するものである。リガンドおよびバインダーは互いに親和性を有し、そしてアフィニティー対応物である。
【背景技術】
【0002】
マイクロスケール法は、従来から、
(a)レセプター−リガンド相互作用に基づく新規医薬候補物質、および
(b)アフィニティーアッセイ、アフィニティークロマトグラフィーなどのための新規リガンド候補物質、
の化合物のスクリーニングライブラリーのためのリガンドおよびバインダーの新規組合せを見出すために使用されてきた。
マイクロスケール法は、また、特定のアフィニティー複合体の形成または解離の条件を最適化するため、あるいは、他の理由でアフィニティー対応物を選択する場合に、示唆されてきた。
【0003】
マイクロスケール法は、また、試料中の特定化合物(被検体)の量を測定するために使用されてきた。
【0004】
固相に固定された、または固定可能なアフィニティー対応物によりバインダーまたは被検体のアフィニティー捕捉(affinity capture)に基づく方法が使用されてきた。
【0005】
典型的には、固相上での複合体の形成は、非流動条件(non-flow-condition)で行われる。例えば、Eteshola et al, Sensors and Actuators B 72 (2001) 129-133; Sato et al, Anal. Chem. 72 (2000) 1144-1147; および WO 9721090 (Gamera, Mian et al)参照。
【0006】
非流動条件は該方法を単純化するが、流動条件下で行われる実験からのみ得られ得る情報が失われる。小分子に関して、非流動条件は許容される。何故なら、それらの拡散速度は、しばしば、比較的高く、そして結合のためのそれらの結合部位の方向付けが複雑でないからである。このことは、通常、より大きな分子には当てはまらない。液流を制御することなく、大分子に関する正確な情報を得ることは困難である。
【0007】
近年、逆相マトリックスへのアフィニティー結合に基づくMALDI MS統合マイクロ流体アフィニティーシステムが開発された。このシステムにおいて、タンパク消化物が逆相マトリックスに吸収され、そしてその後、脱離し、そしてMALDI MSターゲットとして機能する引出しポートに輸送される。(マイクロ流体コンパクトディスク(改良された感度を有するCD)上での、統合サンプルの調製およびMALDI MS(Magnus Gustavsson et al) ASMS 2001)。結合における再現性、液体の流速の制御、および滞留時間に対する要求は低かった。
【0008】
WO 0138865(Univ. of Alberta, Harrison et al)は、流動条件およびアフィニティー結合を用いる単一のマイクロチャンネル構造における固相抽出方法を記載している。別の実施例において、該刊行物は、テオフィリンでの、固相結合抗テオフィリン抗体の飽和を示す。
【0009】
定義
反応可変要素は、主に次の2種:すなわち1)a)存在および/または非存在を含む量、およびb)親和性を含むアフィニティー反応物質の性質、のサブグループを有するアフィニティー反応物質に関連する可変要素、ならびに2)反応条件である。
【0010】
グループ1a)は、質量単位、モル単位、相対量、活性/質量単位、活性/体積単位、相対活性などの量を含む。活性は、(i)生物学的活性、(ii)アフィニティー対応物の結合活性などを意味する。生物学的活性には、酵素活性、天然または合成アフィニティー対応物に対する結合活性、細胞活性などが含まれる。
【0011】
グループ1bは、アフィニティー反応物質(リガンドおよび/またはバインダー)の特性を含む。
【0012】
典型的には、このグループは、アフィニティー複合体、酵素、基質、コファクター、補助基質、補酵素、受容体、ホルモン、抗体およびその抗原/ハプテン結合フラグメント、抗原/ハプテンなどの形成または解離のインヒビターおよびプロモーターの特性を含む。合成および組換えの形態が含まれる。
【0013】
グループ1bの可変要素が試料、マイクロチャンネル構造物、反応微小空洞(reaction microcavities)、液体のアリコートなどの間で変動するかまたは異なる場合、このことは主として異なる分子がそれぞれのユニットに存在することを意味する。
【0014】
グループ1bに関連する特性は、親和性定数(および解離のための対応する定数)、形成および解離の速度、バインダーが親和性を有する対応物(複数も可)およびその逆(特異性、選択性など)などに関する知識を含む親和性を含む。親和性には、また、異なる複合体の相対的な親和性、例えば共通リガンド 対 ある範囲のバインダー、およびその逆、共通複合体 対 反応条件の変化などが含まれる。
【0015】
この文脈における反応条件は、アフィニティー反応物質の性質に関連しない反応可変要素を意味する。反応条件には、pH、温度、イオン強度(塩の種類を含む)、水素結合破壊剤(変性剤、量および種類)、洗剤(量および種類)、液流、固定技術、固相などが含まれる。
【0016】
グループ1の可変要素に関して特徴付けられるべきアフィニティー反応物質(リガンドおよびバインダー)は、「被検体(analyte)」と呼ばれる。「被検体」なる用語は、また、工程(ii)のためにマイクロ流体デバイスにおいて使用される試料へと処理されるオリジナルの試料中のオリジナルの被検体から生じた被検体由来物質を含む。この処理は、マイクロ流体デバイスの外側、および/または、マイクロ流体デバイス中の個別の下位構造において起こり得る。処理された試料中の被検体由来物質の量は、オリジナルの試料のオリジナルの被検体の存在の関数である。
【0017】
「類似体(analogues)」なる用語は、共通のアフィニティー対応物へのアフィニティー結合に関して、互いに阻害または競合できる2またはそれ以上のバインダーまたはリガンドに使用される。
【0018】
マイクロ流体デバイスは、液流が反応物質の輸送のために使用される少なくとも1つのマイクロチャンネル構造を含んでなる。
【0019】
「マイクロフォーマット」、「マイクロチャンネル」などの用語は、マイクロチャンネル構造が≦10μm、好ましくは≦10μmの深度および/または幅を有する1またはそれ以上の空洞および/またはチャンネルを含むことを意味する。微小空洞/マイクロチャンバーの容積は、典型的には、≦1000nl(ナノリットルの範囲)、例えば≦500nlまたは≦100nlまたは≦50nlであるが、また、さらに大きくても、すなわち1〜1000μl、例えば1〜100μlまたは1〜10μlの間であってもよい。
【0020】
「マイクロ流動方法(microfluidic method)」なる用語は、(a)マイクロ流体デバイスにおいて実施される方法、および(b)液体容積がマイクロフォーマットであることを意味する。
【0021】
「ライブラリー」は、2、3、4またはそれ以上、例えば≧10、例えば≧100または≧1000または≧10000の化合物または物質の集合である。典型例は、組換え、合成または天然の、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、脂質、他の有機および無機化合物、炭水化物、細菌、ファージ、ポリマー、バイオポリマーなどである。個々のライブラリーには、異なるクラスのメンバー、例えばポリペプチドとポリヌクレオチド、炭水化物とタンパク質などが含まれてもよい。ライブラリーは、また、個々のタンパク質が翻訳後修飾、イソ酵素のようなイソタンパク質などにより互いに関係する天然由来の集合、例えば天然のタンパク質の集合を含み得る。ライブラリーをもたらし得る翻訳後修飾の例は、リン酸化、活性化開裂(activating cleavage)、グリコシル化、ユビキチン化などである。
【0022】
「ライブラリー」なる用語は、また、他の反応可変要素、例えば種々のpH値、種々の固定基(immobilization group)、種々のイオン強度、種々の濃度、種々の塩、種々の固相、種々のスペーサーの集合を含む。
【0023】
「ライブラリー」は、また、少なくとも1つの反応可変要素に関して異なる試料(液体のアリコート)のコレクションを含む。
【0024】
本発明の目的
第1の目的は、特異的なアフィニティー結合および固相への捕捉に基づくアッセイ方法を用いることにより、複数の試料中の被検体の量を定量する、改良されたマイクロスケール法を提供することである。
【0025】
第2の目的は、マイクロ流体デバイスのマイクロチャンネル構造に組み込まれた場合、マイクロ流体デバイス中の個々のマイクロチャンネル構造における流速を標準化する流動機能(fluidic function)を提供すること、すなわち、チャンネル間の変動が許容レベルまで減少するように流速を制御することである。
【0026】
本発明の第3の目的は、新規かつ最適のバインダーとリガンドの組合せを見出すため、および/または、ある範囲のアフィニティー複合体、リガンドおよびバインダーの親和性を等級付けするため、および/または、流動条件下で固定されたアフィニティー複合体の形成または解離に関する工程を最適化するために、反応可変要素の平行スクリーニング(parallel screening)に使用され得る堅固なマイクロ流体システムおよび方法を提供することである。
【0027】
これらの目的は、主として、比較的大きく、そして/または、窒素、酸素、硫黄およびリンから選択されるヘテロ原子を含んでなる1またはそれ以上の官能基を含む、少なくとも1つのアフィニティー反応物質に関与する相互作用を利用する方法に関する。この文脈における「比較的大きい」は、アフィニティー反応物質が同時に2つのアフィニティー対応物と結合でき、そして/または、≧1000ダルトン、例えば≧2000もしくは10000ダルトンの分子量を有することを意味する。典型的には、アフィニティー反応物質の1つは、ポリマー、例えば炭水化物構造および/またはペプチド構造および/またはヌクレオチド構造および/または脂質構造を含んでなるバイオポリマーである。大きくない分子は、小分子と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1a】図1aおよび1bは、有意な圧力差を生み出す狭い微小導管を有する好適なマイクロチャンネル構造の態様を示す。本態様は、実験の部において示されたモデル研究で使用された。図1aが大きさ(dimension)を与え、そして図1bが疎水性表面ブレークおよびそれらの大きさを与えること以外は、図1aおよび1bは同じである。
【図1b】図1aおよび1bは、有意な圧力差を生み出す狭い微小導管を有する好適なマイクロチャンネル構造の態様を示す。本態様は、実験の部において示されたモデル研究で使用された。図1aが大きさ(dimension)を与え、そして図1bが疎水性表面ブレークおよびそれらの大きさを与えること以外は、図1aおよび1bは同じである。
【図2】図2は、実験の部において使用されたのと同一の種類のマイクロチャンネル構造の集合を示す。該構造は、共通分配チャンネルおよび共通廃棄チャンネルによりともにつながれている。
【図3】図3は、反応微小空洞および圧力差を生み出す手段を含む下位構造の主要部を示す。
【図4】図4は、実験の部において得られた結果を表す。 図1〜2に示された構造は、対称軸(回転軸)のまわりの円板上に配置されることが意図されている。矢印は、ディスクの中心の方向を示す。また、弓形の配置にも注意。
【0029】
発明の要約
本発明者らは、上の「技術分野」に記載した方法が、
(a)流動が共通の流動制御下にある2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造を含んでなるマイクロ流体デバイスを利用すること、ならびに
(b)少なくとも2つのマイクロチャンネル構造において流動条件下でアフィニティー複合体を形成させること、および使用された個々のマイクロチャンネル構造中の反応微小空洞において流動条件下で形成された、固定化形態のアフィニティー複合体を保持すること、
により改善され得ることを認めた。
【0030】
同様の方法で、共通の流動制御および流動条件の原理が、解離反応に影響する反応可変要素の特徴付けに関して、反応微小空洞において保持されるアフィニティー複合体の解離に適用される。
【0031】
本発明者らは、また、同一のデバイス内の異なるマイクロチャンネル構造間の、流動のバラツキの効果(チャンネル間変動)を低減化し得る、多くのさらなる特徴:
(a)有意な圧力差を生み出す個々のマイクロチャンネル構造における反応微小空洞の下流の、流動制限手段、
(b)有意な圧力差を生み出すための個々のマイクロチャンネル構造の、所望の部分、例えば、反応微小空洞または反応微小空洞の下流付近に配置された、多孔性マトリックス、
(c)反応微小空洞における不均一粒子(polysized particle)の代わりの均一粒子(monosized particle)の充填床、
(d)特に流動開始時、ならびに/または、液体が分岐および湾曲部を通過するとき、流動抵抗におけるチャンネル間変動を克服するために流れを増加させるパルス、
(e)反応微小空洞から排液を引き入れる引出し微小導管の引出し口の下流かつ近位の、内部エッジにおける抗排出手段、
(f)反応微小空洞における過剰の固相アフィニティー反応物質(例えば、バインダー(固定された反応物質))、
(g)反応微小空洞における複合体の形成のために、0.010秒以上の滞留時間を達成する流速を選択すること、
を認めた。
有意な圧力差は、流動抵抗におけるチャンネル間変動と関連している。
【0032】
発明の詳細な記載
本発明は、少なくとも1つの反応可変要素を特徴付けるためのマイクロスケール法である。本方法は、最初のパラグラフにおいて一般的に定義されている。特徴付けの特徴は、4つの工程:
工程(i):共通の流動制御下にある複数のマイクロチャンネル構造を含んでなるマイクロ流体デバイスを提供すること。個々の構造は、アフィニティー複合体を保持するための反応微小空洞を含んでなる。
工程(ii):個々の2またはそれ以上の複数のマイクロチャンネル構造において本質的に平行に実験を行うこと。個々の実験は:
(a)固定された形態の複合体を形成させること、および流動条件下にて反応微小空洞内でこの形態を保持すること、または
(b)反応微小空洞内で固定された形態の複合体を解離させること、
を含んでなる。
言及された反応可変要素は、2またはそれ以上の実験に関して、異なり、そして/または特徴付けされていない。他の反応可変要素は、本質的に一定に維持される。解離は、典型的には、流動条件下で行われる。(b)における固定化形態は、工程(ii)の前に導入される。保持された複合体の形成は、リガンドおよびバインダーの導入の関数である。
工程(iii):個々の当該2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造中の反応微小空洞における複合体の提示を測定すること、
工程(iv):工程(iii)において測定された提示値に基づく少なくとも1つの反応可変要素を特徴付けすること、
を含んでなる。
【0033】
該実験は、該デバイスの引入れポートに適当な液体アリコートを導入すること、および液流のために適当な駆動力を適用すること、により開始される。
【0034】
同一のマイクロ流体デバイスにおいて、また、他の類似または非類似の実験が、上で定義されたものと平行して行われ得る。
【0035】
この文脈における「本質的に一定」なる用語は、他の可変要素が、実験の結果が本質的に同一である範囲内に維持されていることを意味する。
【0036】
好適な可変要素において、該方法において使用されそして工程(i)において提供される反応微小空洞は、工程(ii)において固定化複合体へと組み込まれるアフィニティー反応物質(アフィニティーバインダー)を含んでなる。
【0037】
工程(工程(i)および工程(ii))のための、共通の流動制御および液流条件
「共通の流動制御」なる用語は、液流のための駆動力がマイクロチャンネル構造(構造1)の一部分に適用された場合、該デバイスの個々の他のマイクロチャンネル構造の対応部分における液流のための駆動力も適用され得ることを意味する。個々のチャンネルにおける駆動力は、同一の発生源、例えば、遠心力が駆動力である場合には、回転、に由来する。さらに、1つのマイクロチャンネル構造における駆動力の増加または減少は、他のマイクロチャンネル構造における増加または減少と平行である。その力のサイズ(および液体の流速)は、共通の流動制御が適用された異なるマイクロチャンネル構造間で異なり得る。例えば、遠心力に基づくシステムにおいては、マイクロチャンネル構造の設計は異なり得、そして/または、マイクロチャンネル構造は異なる半径距離に配置され得る。
【0038】
共通の流動制御は、主として、固定化複合体が形成されそして保持されている場合の、反応微小空洞(固相)を通過する流動を意味する。流動制御は、該構造の他の部分において、および/または該方法の他の工程に関して、あまり重要でなくてもよい。
【0039】
液流は、該デバイスの内部または外部のどちらかに存在する別個の手段により駆動され得る。したがって、液流は、電気浸透、マイクロポンプ、膨張ガスなどにより生じ得る。もう一つの変法は、液体を駆動するための毛管力ならびに重力および遠心力を含む慣性力などの力、すなわちマイクロ流体デバイス上で手段を必要としない力、を使用することである。
【0040】
反応微小空洞(工程(ii))を通過する適当な流速は、多くの要因、例えば固定化複合体を形成するために使用されるアフィニティー対(affinity pair)、反応微小空洞の容積、微小空洞の固相などに依存する。典型的には、流速は、典型的には2時間以下、例えば1時間以下という上限を有する、0.010秒以上、例えば0.050秒以上または0.1秒以上の滞留時間を与える。例示的な流速は、0.01〜100nl/秒、典型的には0.1〜10nl/秒の範囲内である。滞留時間は、液体アリコートが反応微小空洞(すなわち、固相)を通過するのに要する時間を意味する。
【0041】
許容される流動制御は、反応物質の濃度、それらの拡散特性および反応速度などを含む特定の適用に依存する。多くの場合において、十分な流動制御は、滞留時間のチャンネル間変動が、平均滞留時間±90%、例えば±75%または±50%または±25%の範囲内であることを意味する。
【0042】
本発明の好ましい態様において、共通の流動制御は、マイクロチャンネル構造が基板(substrate)の対称軸に関して内側の位置から外側の位置へと方向付けられたマイクロ流体デバイスを回転させること、および液体を駆動するために遠心力を利用すること、により達成される。共通の流動制御は、また、遠心力が、マイクロチャンネル構造の外向(下向)および/または内向(上向)湾曲を通って液体アリコートを駆動するために、構造内の十分な局所的流体静力学的圧力を生じさせるために使用されることを含む。例えば、WO 0146465(Gyros AB)参照。
【0043】
典型的な回転速度は、50〜25000rpm、例えば50〜15000rpmの間である。所定のプロトコールにおける回転速度は変動し得、例えば連続的な個々の勾配の加速、減速および一定の回転を含み得る。一定の位置での増加した回転のパルスを含むことが有益であり得る。上記を参照。
【0044】
マイクロ流体デバイス(工程(i))
本発明は、主として、マイクロチャンネル構造が、対称軸を有する基板(マイクロ流体デバイス)中に存在する幾何学的配置を意図する。次いで、個々のマイクロチャンネル構造は、対称軸に対して外側に方向付けられる、すなわち、
(a)反応微小空洞が、該反応微小空洞へと液体を送達する構造ユニットも含む下位構造の一部であり、そして
(b)後者のユニットは、反応微小空洞よりも短い半径距離に位置し、そして引入れポートと連絡している。
【0045】
引入れポートは、典型的には、反応微小空洞よりも短い半径距離に位置する。反応微小空洞の下流に、引出しポートが存在し得、典型的には、それは反応微小空洞よりも大きい半径距離に位置し得る。液体をマイクロチャンネル構造に導入するために、毛管力および/または非遠心力を利用することにより、引入れポートは、原則的に、任意の半径距離、例えば引出しポートおよび/または反応微小空洞よりも対称軸から離れて、位置し得る。
【0046】
マイクロチャンネル構造は、対称軸に垂直な平面内に方向付けられても、方向付けられなくてもよい。
【0047】
遠心力に基づくシステムにおいて、「高部」または「上部」レベル/位置は、「下部」レベル/位置(外側位置)と比較して、より短い半径距離(内側位置)にある。同様に、「上」、「上方」、「内方」および「下」、「下方」、「外方」などの用語は、それぞれ、回転軸への向きおよび回転軸からの向きを意味する。この用語の用法を特に断りのない限り適用する。他の配置/基板および通常の駆動力、すなわち重力、外から適用された圧力、電気浸透的駆動力などに関して、これらの用語は、通常の意味を有する。
【0048】
対称軸にはnの番号(C)を付すが、この場合、nは2と∞との間の整数、好ましくは6、7、8およびそれ以上、例えば∞である。好適な例において、基板(マイクロ流体デバイス)そのものは、円状、円筒状、球状または円錐状の対称性(C)を有する。
【0049】
好適なデバイスは、典型的には、慣用的CDフォーマットに類似した、例えば慣用的CD半径の10%〜300%の間の、サイズおよび形態を有するディスク形態である。
【0050】
適当なマイクロ流体デバイスは、後の工程において別の平面基板(蓋)により覆われる複数の非被覆マイクロチャンネル構造を含んでなる平面基板表面から製造され得る。WO 9116966(Pharmacia Biotech AB)およびWO 0154810(Gyros AB)参照。少なくとも1つの基板、例えば第2の基板(蓋)は、透明であり得る。両方の基板は、好ましくは、プラスチックの材料、例えばプラスチックポリマー材料から作製される。
【0051】
異なる適用は、異なる表面特性を必要とする。このことは、水性の液体がマイクロチャンネル構造内を輸送されるべき場合には、親水性化が必要とされ得ることを意味する。例えば、WO 0056808(Gyros AB)およびWO 0147637(Gyros AB)参照。水性の液体に関して、内部表面の必須部分は、使用時の温度で、≦90°、例えば、≦40°または≦30°または≦20°の水接触角を有するべきである。チャンネルを囲む少なくとも2または3の内壁は、この範囲にしたがうべきである。受動バルブの表面、抗排出手段などは、これらの一般則から除外される。
【0052】
非湿潤性表面ブレークは、非被覆マイクロチャンネル構造を覆う前に、マイクロチャンネル構造の内壁において予め決められた位置に導入され得る(WO 9958245、Amersham Pharmacia Biotech ABおよびWO 0185602、Åmic AB & Gyros AB)。水性の液体に関して、これは疎水性表面ブレークを意味する。表面ブレークは、該構造、例えば抗排出、受動バルブ、導液(directing liquid)などの内部の液流を制御するために使用され得る。下記参照。図1aにおいて、表面ブレークは直交平行線で陰影をつけた箇所であり、そして被覆用基板(蓋)の開口部(引入れ口、引出し口、湾曲部)は、平行線を付けた円で表される。
【0053】
図1a−bおよび2は、本発明において使用され得るマイクロチャンネル構造(101)を示す。該構造は、1またはそれ以上の引入れ微小導管(102および103)および引出し口(106)を有する引出し微小導管(105)と連結した反応微小空洞(104)を含んでなる。該構造が使用される場合、固定化複合体は反応微小空洞(104)に保持される。代わりに、反応微小空洞は、最初からアフィニティー複合体を含み、そして該方法は複合体の解離を意味する。
【0054】
2またはそれ以上の引入れ微小導管(102および103)が存在する場合、それらは、典型的には、反応微小空洞(104)に到達する前に合流している。反応微小空洞が粒子の形態の固相を含む場合、引出し微小導管(105)への侵入は、典型的には、粒子が引出し微小空洞に入るのを防止する断面領域における鋭い斜面である。
【0055】
遠心力に基づくシステムに関して、2つの引入れ微小導管(102および103)は、典型的には、その引入れ微小導管(102および103)に対応する軸部を有する下向湾曲(107)を形成する。引出し微小導管(105)は、反応微小空洞(104)を介して、該湾曲の下部に連結している。
【0056】
引入れ微小導管(102、103)は、機能ユニットを介して引入れポート(108、208ならびに209および210)に連結され得る。該ユニットは、1つの引入れ微小導管(102)に連結した計量用空洞(112)、および計量用空洞(112)と引入れユニット(114)との間の狭い導管部分に始まり、そして例えば、共通廃棄リザーバー/チャンネル(115、215)を含んでなる廃棄機能で終わるオーバーフローチャンネル(113)を含んでなる、容積規定ユニット(111)であり得る。該廃棄機能は、1またはそれ以上の引出しポート(116216)を有し得る。容積規定ユニット(111)は、オーバーフローチャンネル(113)と、および計量用微小空洞(112)の引出し口と、結合したバルブ機能(117、118)を含んでなる。
【0057】
遠心力に基づくシステムに関して、これらのバルブ機能は、典型的には、受動的であり、そして好ましくは表面特性の局所的変化に基づく。バルブ機能(118)は、バルブ機能(117)よりも大きい半径距離に位置する。このことは、これらのバルブの位置は、オーバーフローチャンネル(113)中の液体が、計測用微小空洞(112)中の液体が引入れ微小導管(102)に入るよりも低い回転速度で廃棄機能に入ることを支持するように選択されること意味する。この種の容積規定ユニット(111)は、主として、容積に関して高い正確性で導入されるべき液体アリコートを意図している。これは、
(a)被検体、および/または
(b)マイクロチャンネル間で変動するグループ2の反応可変要素、および/または
(c)高い正確性で送達されなければならない他の任意の試薬
を含む液体アリコートを意味する。
タイプ(a)および(b)のアリコートを、アリコート1と呼ぶ。
【0058】
1つの引入れ微小導管(102、103)に連結された別の機能ユニットは、個別のマイクロチャンネル構造に液体アリコートを分配するためのユニットである。該ユニットは、いくつかのマイクロチャンネル構造(101、201)に共通する分配チャンネル(119、219)の形態であり得る。遠心力に基づくシステムに関して、チャンネルは、個々の上部(120)において周囲大気へとつながる引入れ湾曲部(122、222)を有する別の上部および下部(それぞれ、120、220および121、221)を有し、そして個々の下部(121)において、バルブ機能(123)を介して、個々のマイクロチャンネル構造(101、201)の1つの引入れ導管(103、203)に流動的に連絡している。該湾曲部(122、222)は、共通の湾曲部チャンネル(124、224)を介して周囲大気と連絡している。分配チャンネルは、1またはそれ以上の引入れポート(209、210)および1またはそれ以上の引出しポート(125、225)を有し得る(1つだけ示した。)。
【0059】
図において示したように、引出し口(106)は、(マイクロチャンネル構造に属する)廃棄導管チャンバー(126)へと注ぎ得る。次に、このチャンバーは、共通の廃棄導管または共通の廃棄リザーバー(115)に注ぎ得る。好ましくはないけれども、別の態様において、引出し導管(105)は、共通の廃棄チャンバーまたは周囲大気へと直接的に注ぎ得る。受動バルブを利用する遠心力に基づくシステムに関して、引出し微小導管(105)の引出し口(106)は、典型的には、反応微小空洞(104)と同じかまたはそれより高いレベル(好ましくはその頂部)に位置する。本発明の1つの発明的観点にしたがって、反応微小空洞(104)における固相と組み合せた引出し微小導管(105)は、マイクロチャンネル構造を通過する液流に対して圧力差を生み出すことができ、これは反応微小空洞(104)の上流を流動に対する抵抗よりも有意に大きい。微小導管における圧力差は、その長さに比例し、そしてその流体力学的断面積に反比例する。
【0060】
本発明において、反応微小空洞(104)と廃棄チャンバー(126)との間の引出し微小導管(105)にわたる圧力差は、(a)反応微小空洞の上流の内部表面特性および(b)使用された固相(例えば、パッキング・ジオメトリーは異なり得る)に主として依存する流動抵抗におけるチャンネル間の差異(バラツキ)を一様にするのに十分なほど高くあるべきである。
【0061】
概説した原理から、実験の部において使用されたマイクロチャンネル構造の設計:
(a)100μmの深度および250μmの幅を有する反応微小空洞(104)、
(b)10μmの深度、20μmの幅および4.56mmの長さを有する引出し微小導管(105)、
が導かれる(図1−2)。
マイクロチャンネル構造の他の部分は、100μmの深度を有する。
【0062】
周囲大気への通気口(vent)は、
(a)液体がマイクロチャンネル構造中へと導入されたときに「デッドエンド」において生じ得る過剰圧力を一様にするか、または
(b)一定の位置で流れを遮る
のに適した位置に存在し得る。
【0063】
図1−2に示した態様において、第2の種類が引入れポート(108、208)に存在する。液流を中断する通気機能(122、222および127、227)は、また、共通分配チャンネルおよび廃棄チャンバー(それぞれ、119、219および126、226)に存在する。
【0064】
引入れポート(108、208ならびに209および210)は、好ましくは、微小空洞(128)に連結され、これは、典型的には、マイクロチャンネル構造の内部が狭くなっており、そして流れの方向に縦の突起(リッジ)(129)を有する。これらのリッジは、分散された液体アリコートの、引入れユニットの内部への迅速な輸送を促進する。引入れポートは、また、引入れユニット(114)へと分散液を指向させる(典型的には、疎水性化された)非湿潤領域(130、直交平行線)を有してもよい。
【0065】
不所望の損失および毛管作用による液体の輸送を防止するために、マイクロチャンネル構造は、表面特性が変化した形態の、選択された位置に抗排出手段を備えていてもよい。該変化は典型的には局所的であり、そして幾何学的表面特性(131)および/または化学的表面特性(132、133)(直交平行線で陰影をつけた領域)に関係し得る。WO 9958245(Amersham Pharmacia Biotech AB)ならびにU.S. S.N. 60/315,471および対応する国際特許出願参照。水性の液体に関して、これは、該変化が親水性から疎水性への変化であることを意味する。また、抗排出機能(134、135、123、117)(直交平行線)は、内部通気口(127、122)および受動バルブ(123、117)にも存在する。
【0066】
バルブは、好ましくは受動的である。すなわち、液体の通過は、適用された駆動力ならびにバルブ位置での液体と内部表面との間の物理化学的釣合い(physicochemical match)に依存する。可動性の機械的部分は必要ない。例は、純粋に幾何学的特性における変化に基づいたキャピラリーバルブである(WO 9615576(David Sarnoff Res. Inst.)およびWO 9807019(Gamera)。好適な受動バルブは、化学表面特性、すなわち非湿潤性表面ブレークにおける変化に基づくものである。水性の液体に関して、これは、疎水性表面ブレークを意味する(WO 9958245、Amersham Pharmacia Biotech AB)。バルブは、また、化学的および幾何学的表面特性の両方における変化の組合せに基づき得る。該変化は、典型的には、局所的である。また、U.S. S.N. 60/315,471および対応する国際特許出願参照。他の種類のバルブもまた使用され得る。
【0067】
引入れユニット、分配ユニット、容積規定ユニット、廃棄導管、抗排出手段およびバルブ、特に遠心力に基づくシステムのためのバルブについてのさらなる詳細は、U.S. S.N. 60/315,417および対応する国際特許出願に記載されている。
【0068】
反応微小空洞および固相
反応微小空洞(104)の外形は、好ましくは、連続的に広くおよび/または狭くなっていてもよい直線型マイクロチャンネルである。反応微小空洞の壁の少なくとも一部は、複合体の提示の測定のために使用される原理に関して、透明である。
【0069】
反応微小空洞は、好ましくは、固相に固定化されたキャッチング・アフィニティー反応物質(catching affinity reactant)を含んでなり、これは反応微小空洞内に維持される。
【0070】
固相は、工程(ii)において固定化された形態に形成されたアフィニテー複合体へと親和性により組み込まれ得る反応物質(捕捉用反応物質)で誘導体化される。捕捉用反応物質は、固定化された形態のリガンドまたはバインダーであり得る。
【0071】
固相は、微小空洞(104)の内壁の表面、該反応微小空洞の内部を全体的または部分的に占める多孔性モノリスの内部表面、あるいは、床に充填された多孔性または非多孔性粒子の集まりであり得る。固相が粒子を含む場合には、反応微小空洞の下流末端に結合した保持手段が存在すべきである。この手段は、好ましくは、粒子が微小空洞を離れることを防止する狭窄形態、例えば仕切りの形態である。粒子の直径/サイズは、少なくとも、狭窄した部分の開口部の大きさと同じであるかそれより小さくするべきである。別の種類の保持手段は、外部から適用された磁場と組み合せられた磁気粒子である。
【0072】
多孔性モノリスは、1つの材料で作製されてもよいし、または互いに付着した粒子を含んでもよい。
【0073】
「多孔性粒子」なる用語は、粒子が、アフィニティー複合体へと組み込まれるべき可溶性反応物質により浸透され得ることを意味する。これは、典型的には、Kav値がこれらの反応物質に関して0.4〜0.95の間であることを意味する。非多孔性粒子は、同一の反応物質に関して0.4より低いKav値を有する。多孔性モノリスは、適用された液流により、マトリックスを通過する反応物質の大規模輸送が可能になるぐらいに十分に大きい孔を有する。
【0074】
粒子は、球状または非球状であり得る。非球状粒子に関して、直径およびサイズは、「流体力学的」直径を意味する。
【0075】
粒子は、好ましくは、単分散(単一サイズ)であり、該用語は、反応微小空洞に配置された粒子の集団中の、95%以上の粒子が、平均粒子サイズ±5%の範囲内であるサイズ分布を有することを意味する。この範囲外の粒子の集団は、多分散(多サイズ)である。
【0076】
固相は、複合体の測定に使用される原理のために、透明であってもなくてもよい。
【0077】
固相中の物質、例えば粒子は、典型的にはポリマー性であり、例えば合成ポリマーまたはバイオポリマーである。「バイオポリマー」なる用語には、天然バイオポリマーに由来するポリマー鎖を含んでなる半合成ポリマーが含まれる。液流が水性である場合には、粒子および他の形態の固相は、典型的には、親水性である。この文脈において、「親水性」なる用語は、多孔性固相、例えば充填されたビーズに水が浸透することを包含する。該用語は、また、粒子の表面が複数の極性官能基(ここで、酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子が存在する。)を露出していることを示す。適当な官能基は、ヒドロキシ基、直鎖エチレンオキシド基([−CHCHO−]、nは0より大きい整数である。)、アミノ基、カルボキシ基、スルホン基などから選択され得、pHに関係なく中性である基が好ましい。疎水性粒子は、例えば親水性基を導入することにより、親水性化され得る。例えば、実験の部参照。コーティング技術は、WO 9800709(Pharmacia Biotech AB、ArvidssonおよびEkstroem)に示された技術と同様である。
【0078】
固定化のための技術は、当分野において一般に知られたものの中から選択され得、例えば固相への結合は、単に、共有結合、アフィニティー結合(例えば生体特異的なアフィニティー結合)、物理的吸着(主に疎水性相互作用)などを介するものであり得る。使用され得る生体特異的アフィニティー結合の例は、ストレプトアビジンとビオチニル化アフィニティー反応物質との間、高アフィニティー抗体とハプテン化アフィニティー反応物質との間などの、結合である。
【0079】
マイクロチャンネル構造における他の機能ユニット
マイクロチャンネル構造は、また、
(1)引入れポートを介して導入された液体アリコートからの、粒状物質の分離、
(2)例えば、反応微小空洞の上流での、アフィニティー複合体の形成のために混合すること、および
(3)(a)反応微小空洞を通過した反応物質、または(b)反応微小空洞において形成された複合体から遊離した成分、の検出
を可能にする、個別または組合せユニットを含み得る。
【0080】
ユニット3を例外として、これらの機能ユニットが存在する場合には、反応微小空洞の上流に位置し得る。
【0081】
粒状物質の分離のためのユニットは、典型的には、容積規定ユニットの上流に位置するか、またはこれら2つのユニットは共通のユニットにおいて組み合わせられる。
【0082】
好適な分離ユニット、容積規定ユニットおよび混合ユニットは、U.S. S.N. 60/315,417および対応する国際出願において与えられる。
【0083】
追加的なユニットも存在し得る。
【0084】
ユニット1〜2の存在は、工程(ii)のために使用されるプロトコールが、
(ii.a)分離工程、および
(ii.b)反応微小空洞において固定化された形態で保持されたアフィニティー複合体の形成を含み得る混合工程
から選択される少なくとも1つの下位工程を含み得ることを意味する。
【0085】
分離工程は、もし使用される個々のマイクロチャンネル構造が組合せの、分離/容積規定ユニットを利用できるならば、容積規定工程と同時に行われ得る。別の場合には、特に分離工程が試料を掃除するために使用されるならば、分離工程は、典型的には、容積規定工程の上流である。混合工程が存在する場合には、それは、典型的には、容積規定工程の下流である。
【0086】
分離検出微小空洞は、
・工程(ii)において保持された複合体から遊離した分析的に検出可能な物質、
・該複合体が酵素活性を有し、そして基質が工程(ii)のあとに反応微小空洞を通過した場合の、酵素産物、
・機能制御として反応微小空洞を通過する化合物、
・工程(ii)において保持された複合体と異なる固定化形態の複合体を保持することよる第2の被検体、
・工程(ii)および(iii)と干渉することなく反応微小空洞を通過する標準化合物(キャリブレーター)
の測定を可能にし得る。
最初の2つの選択物は、また、工程(iii)の部分であってもよい。
【0087】
反応微小空洞における固定化された複合体の形成または解離を含んでなるプロトコール(工程(ii))
A.特徴付けされていない量の被検体の測定
これらのプロトコールは、試料中の被検体の測定のために使用される生体特異的アフィニティーアッセイの中から選択される。該原理は、当分野において周知である。該プロトコールは、被検体に対する1またはそれ以上のアフィニティー対応物が、アフィニティー複合体の形成のために使用され、次いでこれが測定され、そして試料中の被検体の量と関連付けられることを包含する。アッセイ条件は、複合体の量が試料中の被検体の量の関数になるように選択される。
【0088】
本発明において使用される態様において、測定されるべき複合体は、工程(ii)において反応微小空洞中に保持された固定化複合体に対応する。使用されたプロトコールに依存して、この複合体は、マイクロ流体デバイスに導入されたオリジナルの試料のオリジナルの被検体を含んでも含まなくてもよい。被検体の量以外の反応可変要素は、原則として、異なるマイクロチャンネル構造における実験において本質的に一定に維持される。
【0089】
工程(ii)は、保持された複合体へと組み込まれる1またはそれ以上の追加的な反応物質の導入を含み得るが、これは工程(iii)におけるその測定を容易にするためである。同様に、工程(iii)は、工程(ii)において形成された複合体の測定に必要とされ得る1またはそれ以上の反応物質の導入を含み得る。
【0090】
工程(iii)において測定されるべき固相と固定化複合体との間の結合を規定するアフィニティー反応物質は、製造業者により導入され、それゆえ工程(i)において提供され得る。被検体を含む他の反応物質は、後の工程において導入される。これは、逐次的に、平行的に、および/またはそれらの混合として、行われ得る。1またはそれ以上の追加的な引入れポートが使用され得る。必要ならば、アフィニティー反応物質および液体の混合は、反応微小空洞の上流に位置する個別的混合ユニット内で起こり得る。
【0091】
本発明にしたがって、もし適切に注意されているならば、量は、拡散限定および非拡散限定条件の両方で測定され得る。流速は、原則として、意図された条件がすぐ使えることを保証するために使用され得、一般的なガイドラインは、流速の減少(滞留時間の増加)は、非拡散限定条件に好ましく、そして逆のことが拡散限定条件に好ましい。これらの法則は、主に、大分子に適用される。
【0092】
競合/阻害プロトコール
これらのプロトコールにおいて、被検体および被検体類似体は、被検体に対する制限量のアフィニティー対応物に結合するために、互いに競合している。この対応物は、
(a)もし被検体類似体が可溶性でありそして分析的に検出可能であるならば、固定化されているかまたは固定化可能であり得、そして
(b)もし被検体類似体が固定化されているかまたは固定化可能であるならば、分析的に検出可能であり得る。
【0093】
出願日において、態様(b)は、本発明に関して大変興味深い。この態様は、被検体およびアフィニティー対応物を、反応微小空洞に達する前に、例えばマイクロ流体デバイスの外側、または反応微小空洞の上流の個別的混合微小空洞において、プレインキュベートすることを含む。該混合物は、遊離の(=複合体でない)アフィニティー対応物が固定化被検体類似体とともにアフィニティー複合体を形成する、反応微小空洞を通って輸送される。この複合体は、続いて、工程(iii)において測定される。
【0094】
競合の態様は、また、2つのアフィニティー対応物を含んでなる固定化されたまたは固定化可能なアフィニティー複合体が被検体を含有する試料でインキュベートされる、置換アッセイ(displacement assay)を含む。アフィニティー対応物の1つが分析的に検出可能な被検体類似体であるならば、該被検体は複合体中の被検体類似体を置換し、このことは、また、複合体からのシグナルが変化することを意味する。
【0095】
好適な置換アッセイは、工程(i)における反応微小空洞中の固定化された形態のこの種の複合体を提供する。工程(ii)において、被検体は、固定化複合体の被検体類似体を置換する。工程(iii)において、被検体を含む複合体の量は、反応微小空洞において直接的に、または反応微小空洞の下流の個別的検出微小空洞において遊離した分析的に検出可能な被検体類似体から間接的に、測定される。
【0096】
競合の態様は、特に、2またはそれ以上のアフィニティー対応物を同時に結合させることが困難な被検体、すなわち比較的小さい分子に適用される。
【0097】
非競合プロトコール
これらのプロトコールは、典型的には、被検体に対する非限定量の1またはそれ以上のアフィニティー対応物を利用する。
【0098】
最も重要な非競合プロトコールは、被検体が2つのアフィニティー対応物の間に挟まれる、固定化されたまたは固定化可能な複合体の形成を含んでなるサンドイッチ・プロトコールである。1つの対応物は分析的に検出可能であり、そして他方の対応物は固定化されるかまたは固定化可能であり、そしてまた、できる限り、分析的に検出可能である。該サンドイッチ複合体は、工程(iii)において測定される。
【0099】
別の非競合の態様は、固定化されたまたは固定化可能な形態の、被検体に対する単独のアフィニティー対応物を利用する。この場合において、複合体形成は、固定化された複合体、またはその後に固定化される可溶性複合体をもたらす。固定化複合体自体は、工程(iii)において測定され得る。1つの態様において、固定化されたまたは固定化可能なアフィニティー対応物は、被検体がアフィニティー対応物に結合したときに、シグナルが変化する分析的に検出可能な基で標識される。
【0100】
非競合プロトコールは、2またはそれ以上のアフィニティー対応物に同時に結合できる分子、すなわち大分子に関して最も大きい可能性を有する。
【0101】
分析的に検出可能な反応物質
「分析的に検出可能な」なる語は、アフィニティー反応物質が、工程(iii)において測定されるべき複合体の形成に関与する他のアフィニティー反応物質から分析的に区別され得ることを意図する。検出能は、反応物質の固有の性質、例えば固有の生物学的機能、例えば酵素の酵素活性、またはさまざまなIgクラスもしくはサブクラスのFcレセプター結合活性、または、例えば分析的に検出可能なタグまたは標識、例えばビオチン(=アフィニティー・ラベル)、酵素、クロモゲン、フルオロゲン(fluorogen)、フルオロフォア、化学発光基、放射性基などで標識することにより個別的に導入された官能性に由来し得る。検出能には、また、形成された複合体がそれ自体で、例えば溶液の光学的性質を変化させることなどにより、検出可能であることも含まれる。
【0102】
検出可能な標識は、複合体が形成または解離した場合に、標識が適当なシグナルを与えるように選択される第2の標識と組み合わせられ得る。この態様は、トリチウムで標識された可溶性アフィニティー反応物質が、シンチレーション物質を含んでなる固相とともに使用される、シンチレーション近接アッセイ(SPA)を用いて例示され得る。トリチウム標識がこの種の固相に結合した複合体に組み込まれた場合、シグナルが現れる。相互作用性標識の原理は、また、同一または異なっていてもよいフルオロフォアの対を用いて、および蛍光−クエンチャーの対を用いても例示され得る。
【0103】
平行して稼動するいくつかの試料の例示的態様
工程(i):マイクロ流体デバイスは上で議論した通りであり、そしてk個のマイクロチャンネル構造(kは、2またはそれ以上の整数である。)を含んでなり、これらはそれぞれ、被検体に対する固定化されたアフィニティー対応物またはこのような対応物の組合せを含んでなる。アフィニティー対応物は、マイクロチャンネル構造間で異なっていても、異なっていなくてもよい。アフィニティー対応物は、好ましくは、アフィニティー複合体が保持されるべき反応微小空洞に位置する。
【0104】
工程(ii):未知の量の被検体を含む液体アリコート(アリコート1)を、アフィニティー対応物を含むk個のマイクロチャンネル構造のうちのn個に、すなわち、アリコート1をマイクロチャンネル構造1に、アリコート1をマイクロチャンネル構造2に・・・そして、アリコート1をマイクロチャンネル構造n(ここで、nは、kと等しいかまたはそれより小さい整数である。)に、導入する。可能であれば、既知の量の被検体を含むアリコートも、もしあれば、残りのマイクロチャンネル構造のうちの少なくともm個に、すなわち、アリコート1n+1をマイクロチャンネル構造n+1に、アリコート1n+2をマイクロチャンネル構造n+2に・・・そしてアリコート1n+mをマイクロチャンネル構造n+m(ここで、mは、n+mがkと等しいかまたはそれより小さくなるような整数である。)に、導入する。それらの可能性のある含有量の被検体を有するアリコートは、次いで、固定化複合体が個々のマイクロチャンネル構造の反応微小空洞において流動条件下で保持されるように、マイクロチャンネル構造を通して輸送される。被検体を含まないアリコートに関して、複合体は形成されない。
【0105】
工程(iii)および(iv):個々の反応微小空洞における固定化複合体の量を測定し、そして対応する出発アリコート/試料中の被検体の量と関連付ける。
【0106】
反応物質およびそれらの添加に関して、上で議論したのと同様のプロトコールが下記のB〜Fの態様のために使用され得る。これらの態様において、限定量および非限定量を使用することに対する要求は、比較的重要でなくてもよい。B〜Dの変法に関して、使用されたアフィニティー反応物質の濃度および/または相対量は、典型的には、本発明にしたがういくつかの平行的実験に関して、本質的に一定である。B〜Fの態様は、主として、非拡散限定条件下で実施される。
【0107】
B.可能性のあるバインダー候補物質のライブラリーからのバインダー(被検体)の選択
2つの好適な態様は:
A)ライブラリーからの異なるバインダー候補物質および/またはバインダー候補物質の組合せが、工程(i)において提供されたマイクロ流体デバイスの2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造において固定された形態で使用される。可溶化形態の既知の共通リガンドが、工程(ii)において固定化複合体を形成するために使用される。
B)同じ既知の固定化リガンドが、工程(i)において提供されたマイクロ流体デバイスの2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造中に存在する。個々のマイクロチャンネル構造に対して、単一のバインダー候補物質または異なるバインダー候補物質の組合せが、工程(ii)において、個々のマイクロチャンネル構造に導入され得る。
【0108】
特定のマイクロチャンネル構造の反応微小空洞における、比較的程度の大きい複合体形成は、そのマイクロチャンネル構造において使用されたバインダーが、別のマイクロチャンネル構造において比較的程度の小さい複合体形成を与えるバインダーよりも、アフィニティー複合体を形成する傾向が強いことを示唆する。これは、他の反応可変要素が本質的に一定に保たれていることを前提とする。
【0109】
他の態様に関して、反応微小空洞中のより多いまたはより少ない量の保持複合体の意義は、使用された特定のプロトコールに依存する。一定のプロトコールに関して、より多い量は、より少ない量をもたらすバインダーと比較した場合に、より効率的なバインダーを示唆する。他のプロトコールに関しては、反対のことが当てはまる。
【0110】
(a)および(b)の両方の態様において、反応条件は、個々のマイクロチャンネル構造の間で異なっていても、異なっていなくてもよい。
【0111】
好適なプロトコールは、下記の変法Fと同一である。
【0112】
形成されたアフィニティー複合体は、さらに、複合体中のバインダーの性質、例えば構造、結合特性、生物学的機能などに関して、特徴付けされ得る。
【0113】
C.所定のアフィニティー対に適した固定化技術および/または固相の決定
この場合において、少なくとも固相に結合したアフィニティー反応物質のための固定化技術および/または固相自体は、2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造間で異なる。この相違は、物理的吸着、共有結合的架橋の種類を含む共有結合、アフィニティー固定化に使用されたアフィニティー反応物質、固相の種類などの条件に関連し得る。
【0114】
反応微小空洞中のより多いまたはより少ない量の保持複合体の意義は、使用されたプロトコールに依存する。一定のプロトコールに関して、より多い量は、より少ない量を与える技術と比較した場合に、結合に好ましい固定化技術および/または固相を示唆する。他のプロトコールに関しては、反対のことが当てはまる。
【0115】
D.液体に関連した適当な反応条件の決定
この場合において、液体に関連した少なくとも1つの反応可変要素は、マイクロ流体デバイス中の2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造間で変動する。典型的な反応可変要素は、pH、温度、イオン強度、複合体形成のインヒビターまたはプロモーターの量、水素結合破壊剤(hydrogen-bond breaking agent)、洗浄剤、およびマイクロチャンネル構造中の流速などである。
【0116】
より多いまたはより少ない量の保持複合体の意義は、使用されたプロトコールに依存する。一定のプロトコールに関して、より多い量は、より少ない量を与える技術と比較した場合に、結合に好ましい固定化技術を示唆する。他のプロトコールに関しては、反対のことが当てはまる。
【0117】
E.アフィニティー複合体の解離への適合性に関しての、リガンドおよび/またはバインダーの測定
これらのプロトコールは、典型的には、リガンドとバインダーとの複合体が前分散され、そして反応微小空洞中で固定化形態に前形成される、マイクロチャンネル構造から開始する。該複合体は、分析的に検出可能な反応物質を含有し得る。複合体が解離すると、分析的に検出可能な反応物質が複合体から遊離し、そして複合体の残りの量が、反応微小空洞において直接的に、または反応微小空洞の下流に位置する個別的検出微小空洞中に遊離した反応物質の量として間接的に、測定され得る。代わりに、固相と結合を形成するアフィニティー対応物は、他の対応物の遊離の関数として変化する標識を含んでなる。
【0118】
変動し得る適当な反応可変要素は、上の「定義」で与えられる。
【0119】
F.複合体形成の定性面の測定
本発明は、反応微小空洞に保持された固相上のアフィニティー複合体の形成または解離中の流動条件に適用される。流れの方向に沿った固相(反応微小空洞)における複合体の分配が、アフィニティー定数および使用された条件下での会合および解離の速度などを反映すること、ならびに該分布は、バインダーとリガンドの種類およびそれらの濃度、および固相上の置換の程度および有用性、固相の種類、pH、イオン強度、流速などのようなさまざまな要因に依存することが認識され得る。
【0120】
したがって、結合の定性面の正確な情報は、この分配を、例えば流れの方向に沿って、固相(反応微小空洞)の位置の関数としての複合体の局所量として、測定することにより達成され得ることが認識され得る。
【0121】
滞留時間のチャンネル間変動に対する要求は厳格であり、例えば該変動は、平均滞留時間±75%、例えば±50%または±25%または±10%または±5%の範囲内であるべきである。
【0122】
単純な場合は、個々のメンバーが類似のサイズである化合物(=バインダー)のライブラリーで開始される。次いで、ライブラリーは、2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造が反応微小空洞において固定化されたリガンドを有するマイクロ流体デバイスにおいて、本発明にしたがって試験される。化合物は同一のサイズであるので、分散はライブラリーのメンバーに関して本質的に同一である。したがって、固相の流れの方向の位置の関数としての複合体の局所量は、特定のマイクロチャンネル構造において複合体を形成した、化合物とリガンドとの間のアフィニティーを反映する。急斜面領域(sharp zone)、例えば固相(反応微小空洞)の最初の部分におけるものは、さらに下流に位置するより広くより拡散した領域よりも、より強い親和性を示し得る。
【0123】
固相(反応微小空洞)における複合体の分配は、また、例えば上の変法Aで議論した種類のアッセイに関する機能試験としても使用され得る。
【0124】
この革新的変法は、固定化リガンドとバインダーとの間の結合反応が反応微小空洞において起こること、ならびに形成された複合体が工程(iii)において測定されることを要求する。固定化リガンドは、複合体の形成前に導入され得る。リガンドおよびバインダーは、形成された複合体が反応微小空洞において十分な量で保持され得ることを条件として、ライブラリーのメンバーに関して上で与えた任意のアフィニティー対応物であり得る。
【0125】
典型的には、固定化リガンドは、無制限の量で存在する。工程(iii)における測定を容易にするため、適切に選択された検出可能な反応物質には、工程(i)〜(iii)のうちの1つまたはそれ以上、例えば、a)固定化リガンドは、固定化複合体の形成後にそのシグナルが変化する標識を有し得、b)バインダーは、工程(ii)において形成された複合体が標識を含んでなる標識手段を有し得、c)バインダーに対する可溶性分析的検出可能なアフィニティー対応物が、サンドイッチプロトコールにおいて使用される、などが含まれ得る。
【0126】
可能性のある興味深い態様には、極めて近接した場合に互いに相互作用する2つの標識を使用することが含まれる。典型例は、リガンドがトリチウムで標識されたシンチレーション近接アッセイ(SPA)であり、そして固相はシンチレーション物質を含んでなる。SPAは、相互作用特性に関して、医薬候補物質、アフィニティーリガンドのスクリーニングなどに広範な使用が見出される。
【0127】
他の興味深い態様には、サンドイッチプロトコール、および本発明のこの態様におけるバインダーが被検体に置換されることを条件として、変法Aに関して上に記載した置換プロトコールが含まれる。
【0128】
バインダーに対する可溶性分析的検出可能なアフィニティー対応物は、好ましくは、バインダーが大きくそして、典型的にはサンドイッチプロトコールにおいて2つのアフィニティー対応物に同時に結合できる場合に、使用される。上で述べた他の標識反応物質は、小さいバインダーに関して大きな利点を有する。
【0129】
本発明のこの観点の文脈において、上記「定義」で定義したライブラリーのさまざまなメンバーに関連して、複合体、バインダーおよび/またはリガンドの相対親和性を測定することは、興味深いことであり得る。
【0130】
拡散制限されていない機械的反応に流速を適用することにより、研究される主要な特徴は、アフィニティー定数である。これは、特に、大きい場合のアフィニティー反応物質に当てはまる。
【0131】
形成されたアフィニティー複合体それ自体が測定されることを意味する態様は、また、この変法(F)において使用することもできる。
【0132】
試料
本革新的方法の1つの実験において使用される試料は、試料のコレクション(ライブラリー)に相当する。コレクションの少なくとも2つのメンバーは、特徴付けされるべき反応可変要素(複数も可)に関して異なる。
【0133】
可溶性分子により定義される反応可変要素に関して異なる試料は、工程(ii)または工程(iii)においてマイクロチャンネル構造の引入れポートへと導入され得る。反応可変要素が不溶性物質(固相、固定化技術など)により定義される場合には、ライブラリーは、好ましくは、マイクロ流体デバイスとともに工程(ii)において提供される。
【0134】
異なるプロトコールは、異なる種類の試料を必要とし得、その逆もあり得る。
【0135】
上記の変法AおよびBに関して、試料は、典型的には、アリコート1を提供するためにさまざまな方法で処理された全血、血漿、血清、軟膜、血球、精液、髄液、リンパ液、涙液、腹水、組織、細胞溶解物からの上清、細胞培養物などのような生物学的物質に由来する。また、合成的に製造されたオリゴ−およびポリペプチド、オリゴ−およびポリヌクレオチド、生物学的分子または相互作用を潜在的に模倣している化合物などのような、合成的に製造された生物学的物質も含まれる。
【0136】
他の変法に関して、試料は、典型的には、多少合成的である。
【0137】
特定のプロトコールに依存して、変法Fは任意の上記の種類の試料を利用し得る。
【0138】
測定および特徴付け(工程(iii)および工程(iv))
工程(iii)における測定は、a)流れの方向に沿って反応微小空洞(固相)におけるアフィニティー複合体の分配、またはb)反応微小空洞中の複合体の総量を測定することを含んでなる。後者は、この量が総量を代表する限りは、測定が反応微小空洞の一定の部分においてのみ行われることを含む。変法(a)は、特に、上記の変法(F)に当てはまる。
【0139】
分析的に検出可能なアフィニティー反応物質を利用することにより固相に固定化された免疫複合体を測定する数多くのさまざまな方法は、当分野において既知である。原則として、それらのほとんどは、本発明において使用され得る。
【0140】
典型例は、化学ルミネセンス、バイオルミネセンス、レーザー誘起蛍光法(LIF)の特定の強調を有する蛍光などに基づく分光学的方法である。本明細書において別途記載したように、これらの分光学的原理は、対応する分析的に検出可能な基(標識)で標識された反応物質をしばしば利用する。他の原理は、複合体自体からの放射されるシグナル、例えば濁度測定に基づく。
【0141】
既に議論したように、工程(iii)は、分析的に検出可能なアフィニティー反応物質が測定を促進するために導入される下位工程を含み得る。
【0142】
特徴付け工程(工程(iv))は、工程(iii)において測定された値が試料中の特徴付けされていない反応可変要素を特徴付けするために使用されることを意味する。これは当分野においてよくあることであり、さらなるコメントを必要としない。本発明の方法が未知の物質の結合能をもたらす場合には、該物質を同定するための特徴付けは本発明の方法的観点において導入され得る。
【0143】
ベストモード(best mode)は、実験の部において提示された実験に相当する。
【0144】
本発明の分離的観点
本発明の分離的観点は、流動におけるチャンネル間変動を減少させるための構造ユニット(下位構造)である。該ユニットを図3に示す。該ユニットは、(a)引入れ微小導管(302)、(b)反応が制御された流動条件下で起こる微小空洞(304)、および(c)引出し微小導管(305)を含んでなる。このデバイスは、微小空洞(304)におけるおよび/または微小空洞(304)の下流の引出し微小導管(305)における圧力差を生み出すための手段が存在し、その結果、引入れ微小導管(302)を介して導入された試料のためのマイクロ流体デバイス内の滞留時間のチャンネル間変動が、上で議論した範囲内になる。微小空洞を通過する適当な流速は、典型的には、上で与えた範囲内である。圧力差を生み出す手段は、本明細書の前の方で概説した通りである。
【0145】
この革新的観点の好適な態様において、また、図1aおよびbにおいて示されたような引入れ微小導管と合流している追加的な微小導管(図1aにおける103、306)が存在する。この追加的な微小導管は、さまざまな機能(通気、引き入れなど)を有し得、そして典型的には、反応微小空洞(304)との接合部の極めて近くで、引入れ微小導管(302)と交差する。
【0146】
図1aおよびb、ならびに図2に関して議論したように、この好適な下位構造を含んでなるマイクロチャンネル構造は、対称軸を有する基板上に存在し得、そして引入れ微小導管(302)および追加的導管(図1aにおける103)が引出し導管(305)よりも大きい半径距離に位置するように、かつ、反応微小空洞が中間の半径距離(304)に位置するように、配列され得る。基板は、対称軸(回転軸)から放射状に外側に方向付けされ、そして回転軸のまわりの2またはそれ以上の環状ゾーン(リング)、またはそのようなゾーンのセクターを規定するために配置された、複数のこの種類のマイクロチャンネル構造/下位構造を含み得る。この観点にしたがって、同一の環状ゾーン中のマイクロチャンネル構造は、同一の半径距離に位置し、一方、他の環状ゾーンの下位構造は、異なる半径距離に位置する。外側の位置での遠心力は内側の位置よりも大きいことが知られているので、もし流体力学的断面積が一定に保たれ、そして同一の液流が基板上でこの種のすべてのマイクロチャンネル構造に望まれるのであれば、外側の環状ゾーン中の引出し微小導管(105、305)は、内側の環状ゾーンにおけるものよりも長いべきである。
【0147】
したがって、設計(流体力学的断面積および/または長さ)を変更することにより、反応微小空洞を通過する同一の流速を維持しながら、異なる半径距離に既に記載した下位構造を含んでなるいくつかのマイクロチャンネル構造を設置することが可能である。逆に、この概念は、反応微小空洞を通過する流速が十分に規定された方法において相違するマイクロチャンネル構造が存在するマイクロ流体デバイスを構築することを可能にする。
【0148】
本発明のこの観点は、本発明の方法的観点(反応可変要素を特徴付ける方法)において有用である。この観点は、また、制御された液流が有益である、例えばマイクロフォーマットにおけるマイクロタイタレーション(microtitration)および化学合成において有益である、他のマイクロ流体応用法に、ならびに試薬の制御された混合または制御された添加が必要とされる他の状況にも有用であり得る。
【0149】
下記の特許出願は、本明細書において議論される。これらのすべて、特に米国を指定国とするWO出願を、引用により本明細書の一部とする。
WO 9116966、9615576、WO 9721090、WO 9800709、9807019、WO 9958245、WO 0056808、WO 0146465、WO 0147637、WO 0154810、WO 0185602、US 60/315,471および対応する国際特許出願、U.S. S.N. 60/322,622および2002年1月31日に出願されたその一部継続出願。
【0150】
実験の部
図1〜2は、本実験において使用された構造を示す。
完全ミオグロビンアッセイを、コンパクトディスク(CD)と同じ大きさのディスクにおいて行った。使用されたディスクにおいて、24の類似の構造(101、201)が平行して存在し、そして該構造は、それぞれ、12の構造を含む2つのセットに分けられた(図2において1つのセットのみを示す。)。共通の分配チャンネル(119、219)を該12の構造につなぎ、これを通って、緩衝液および試薬は、引入れポート(209)または引入れポート(210)のいずれかを経由して該12の反応構造に分配される。すべての構造は、また、試料受取り構造(111)を有するように設計された個別的引入れユニット(108、114)を有し、これは容積規定機能を有する。チャンネルの大きさは、図1a〜bにおいて示される。
【0151】
反応構造における毛管作用を達成するために、CDの表面をO−プラズマで処理し、続いて、プラスチックの蓋をCDにラミネーティングする。標準的手順にしたがって、すべての構造をPEG−PEIでインキュベートした。WO 0056808(Gryos AB)およびWO 0147637(Gryos AB)。PEG−PEI分子は、表面に結合し、そして、低いタンパク質吸着の層を確立する。PEG−PEIインキュベーションの後、該構造を水で徹底的に洗浄した。
【0152】
イムノアッセイは、自動化されたシステムにおいて行われた。該システム(プロトタイプ装置、Gyros AB、ウプサラ、スウェーデン)に、CD−スピナー、マイクロタイタープレート(MTP)用ホルダーおよびシリンジポンプおよび8スリットピンにつながったキャピラリーのためのホルダーを有するロボットアームを備え付けた。キャピラリーは、すべての試薬および緩衝液を、MTPからディスク中の共通分配チャンネル(119)の2つの引入れユニット(209、210)のいずれかに、移動させた。スリットピンは、個々の試料を、MTPからディスク中の個々の試料引入れユニット(108)へと移動させた。
【0153】
プロトタイプ装置は、アプリケーション特異的なソウフトウェアにより制御された十分に自動化されたロボットシステムである。試料または試薬を含むマイクロプレートは、システム内の回転トレー(carousel)に蓄えられる。高精度ロボットが、サンプルを、マイクロプレートまたは容器からCDのミクロ世界(microworld)へと移動させる。CDは、試料および試薬の添加のために、回転ステーション(spinning station)へと動かされる。ソフトウェア内でのアプリケーション特異的方法は、正確に制御された速度で回転を制御し、添加が進行するにつれてマイクロ構造を通過する液体の動きを制御する。
【0154】
ポリスチレン粒子(15μm、Dynal Particles AS、ノルウェー)を、固相のために選択した。ビーズを、疎水性表面を作成するためにフェニル−デキストランの受動的吸着により修飾し、そして続いて、CDAP化学を用いてモノクローナル抗ミオグロビン8E.11.1(LabAs、Tartu、エストニア)で共有結合させた(Kohn & Wilchek, Biochem. Biophys Res. Comm. 107 (1982) 878-884)。
【0155】
抗体との結合後、該粒子の懸濁液を、引入れユニット(109)を介して共通分配チャンネル(119)中に分散させ、そして、遠心力により該構造中を移動させた。通気口(122)と組み合わせられた遠心力は、それぞれが引出し導管(105)の前の二重の深度(dual depth)に反して反応微小空洞(104)において充填された粒子の床(カラム)を形成する、チャンネル中で懸濁液を等しい割合で分割する。カラムのおおよその容積は10nlであった。カラムを、共通分配チャンネル(119)を介して0.15M NaCl含有0.01M リン酸緩衝液(pH7.5)で1回洗浄した。溶液のすべての添加により、個々のカラムに200nlの液体が送達される。1回の添加の洗浄液は、カラムの容積の20倍であり、これにより非常に効率的な洗浄が保証される。
【0156】
該システムにおけるミオグロビンアッセイを例示するために、6点標準曲線を作成した。0〜1620ng/mlの範囲の濃度を有するミオグロビン試料(PBS中で希釈、1%BSA)を、スリットピンにより個々の引入れユニットへと分配させた。100nlの試料容積は、試料受取り構造(111)において(スピンフロー法における最初の2つの工程の間に)規定された。(ミオグロビンが結合する)捕捉工程での好適な動的条件を達成するために、試料の流速は1nl/秒を超えるべきではない。試料の流速は、回転速度(スピンフロー1)により制御された。試料の捕捉後、カラムをPBS、0.01%Tweenの添加により2回洗浄し、共通分配チャンネル、続いて回転工程へと移行した。次に、過剰の検出抗体を、共通分配チャンネルを介して加えた。これらは、モノクローナル抗ミオグロビン2F9.1(LabAs、Tartu)であり、そして、同様の遅い流速(スピンフロー2)が使用された。検出抗体を、フルオロフォアAlexa633(Molecular Probes、Eugene、USA)で標識した。過剰の標識抗体を、PBS−Tを4回添加することにより洗浄した。
【0157】
完全アッセイをレーザー誘起蛍光(LIF)検出器で分析した。ディスクを回転させながら、検出器をカラムに沿って放射状に動かした。結果を図4に示す。シグナル強度は、典型的には、カラムの頂部に集中した。
【0158】
レーザー誘起蛍光(LIF)モジュールの設計は、実験において使用されたマイクロ流体デバイス(CD規格のディスク)における蛍光の定量的測定のために構築された。
【0159】
ディスクを、回転可能な軸上でモーターにより回転させた;速度は、60から3000rpmへと変動し得た。エンコーダーおよびCD上に固定されたホームポジションにより、目的の個々の構造の位置を、ファイル中に保存し得た。
【0160】
ピックアップヘッドを作成した。これは、ビームがダイクロイックミラー(dichroic mirror)で反射し、そして5倍の対物レンズを通してディスク中の目的の構造に焦点が合わせられたレーザーからなる。エピ蛍光は、ダイクロイックミラーおよび帯域フィルターを通過し、すぐに蛍光色素を最適化した。これは、非球面レンズによりPMT上に焦点を合わせられた。
【0161】
構造を横切るシグナルを測定しながらディスクを回転させることにより、構造中の蛍光に対応する痕跡が得られた。ディスクを回転させながら放射方向のモーターのピックアップ手段を動かすことにより、構造中の総蛍光が測定された。
【0162】
検出器は、U.S. S.N. 60/322,622、SE0103118−6、SE010446−9および2002年1月31日に出願された米国特許出願(回転マイクロ流体デバイスにおける測定のための配置および方法 "Arrangement and method for measurement in spinning microfluidic devices")に記載されている。
【0163】
本システムにおける実験方法の概説は、表2に示される。
【表1】

【0164】
本発明の一定の革新的観点は、添付の特許請求の範囲においてさらに詳細に定義される。本発明およびその効果を詳細に記載したが、さまざまな変更、置換および改変が、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく成し得ると理解されるべきである。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載した製法、機器、製造、合成物、手段、方法、および工程の特定の態様に限定しようとするものではない。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、本明細書に記載の対応する態様と実質的に同じ機能を発揮し、同じ結果を達成する既存のまたは将来開発されるであろう製法、機器、製造、合成物、手段、方法、または工程は、本発明によって利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲はかかる製法、機器、製造、合成物、手段、方法、または工程をその範囲内に包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに親和性を有するリガンドおよびバインダーを含んでなるアフィニティー複合体の形成または解離に影響する少なくとも1つの反応可変要素の測定のためのマイクロスケール法であって:
(i):共通の流動制御下の複数のマイクロチャンネル構造を含んでなるマイクロ流体デバイスを提供すること、ここで、個々のマイクロチャンネル構造は反応微小空洞を含んでなり、反応微小空洞は、工程(ii)において保持されるアフィニティー複合体に組み込まれ得るアフィニティー反応物質が結合した固相を含んでなり;
(ii):個々の2またはそれ以上の複数のマイクロチャンネル構造において本質的に平行に実験を行うこと、ここで、これら2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造における実験は、
(a)固定された形態の複合体を流動条件下にて反応微小空洞内で形成すること、および流動条件下にて同じ反応微小空洞内でこの形態を保持すること、または
(b)工程(ii)の前に導入された固定化された形態の複合体を、好ましくは流動条件下で、解離させること、
のいずれかを含んでなり;
該少なくとも1つの反応可変要素は、該2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造に関して、異なるかまたは特徴付けされておらず;
(iii):個々の当該2またはそれ以上のマイクロチャンネル構造中の当該反応微小空洞における複合体の提示を測定すること;および
(iv):工程(iii)において得られた提示値に基づく少なくとも1つの反応可変要素を測定すること、
の工程を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
固相が、該反応微小空洞の内部を全体的または部分的に占める多孔性モノリスの内部表面、あるいは、床に充填された多孔性または非多孔性粒子を含む
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の方法であって、
(a)マイクロ流体デバイスが対称軸を有する基板を含んでなり、
(b)個々のマイクロチャンネル構造が、対称軸に対して、反応微小空洞よりも短い半径距離に引入れポートを有するように方向付けされ、そして
(c)基板が、マイクロチャンネル構造内で液体を駆動するために、対称軸のまわりを回転する
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載の方法であって、
(a)マイクロ流体デバイスが対称軸を有する基板を含んでなり、
(b)個々のマイクロチャンネル構造が、対称軸に対して、反応微小空洞に液体を送達する下位構造よりも長い半径距離に反応微小空洞を有するように放射状に方向付けされ、そして
(c)基板が、マイクロチャンネル構造内で液体を駆動するために、対称軸のまわりを回転する
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の方法であって、
個々のマイクロチャンネル構造が反応微小空洞の下流に流動制限を含んでなり、これが反応微小空洞を通る流れを制限する圧力差を生み出すことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法であって、工程(iii)が、反応微小空洞における複合体の総量を測定することを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法であって、個々の実験が反応微小空洞内での固定化形態の複合体の形成を含んでなることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法であって、実験が、工程(i)において提供されたマイクロ流体デバイス中に含まれる固定化形態の複合体を流動条件下で解離させることを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法であって、マイクロチャンネル構造間で変動する少なくとも1つの反応可変要素がグループ1またはグループ2の反応可変要素の中から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の方法であって、反応微小空洞中に保持される複合体の形成が競合/阻害プロトコールまたは非競合プロトコールの一部であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、少なくとも1つの反応可変要素がアフィニティー反応物質に関することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、少なくとも1つの反応可変要素がアフィニティー反応物質の量に関することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、少なくとも1つの反応可変要素がアフィニティー反応物質の親和性に関することを特徴とする方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−63590(P2009−63590A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295621(P2008−295621)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【分割の表示】特願2002−573674(P2002−573674)の分割
【原出願日】平成14年3月19日(2002.3.19)
【出願人】(505358004)ユィロス・パテント・アクチボラグ (22)
【氏名又は名称原語表記】Gyros Patent AB
【Fターム(参考)】