説明

反応器の給電を行うための電極および方法

【課題】反応器の給電において、封止部を破壊する漏れ電流ないしはアークを検出して早期に遮断できるようにすると同時に、導電性の汚染物があっても、次の分解および洗浄を行うまでの反応器の動作時間を可能な限り長く維持できるようにすること。
【解決手段】電気エネルギー網の絶縁不良を監視し、所定の絶縁抵抗値を下回ることにより、電気エネルギー供給の遮断がトリガされる、ただし、前記電気エネルギー供給の遮断を行うスイッチング閾値は、前記封止部の幾何学的形状と、該封止部の材料と、給電電圧と、該封止部に流れる最大可能なクリープ電流によってトリガされ前記遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーとから成る群のうち、少なくとも1つのパラメータを考慮して求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応器に給電するための電極の監視と封止と電気的絶縁とを同時に行うための装置と、反応器への給電方法とに関する。
【0002】
特に本発明は、内部にて加熱素子を用いて反応ガスが所定の温度まで加熱される反応チャンバを含む化学反応器への給電に関し、該加熱素子は、電流を直接流すことによって加熱される。こうするために、前記加熱素子は導電性材料から作製され、電流供給部に接続される。また本発明は、いわゆるシーメンスリアクタへの給電にも関する。
【背景技術】
【0003】
シーメンス法によってポリシリコンを析出させる場合、気相から高純度のケイ素原子が棒状シリコンの表面に析出される。その場合には析出反応器において、900〜1200℃にまで加熱されたシリコン細棒の表面に、水とハロゲン化シラン(たとえばトリクロロシラン等)との気相の混合物から、または気相の水素含有シリコン化合物から、ケイ素元素を析出させる。
【0004】
その際には前記シリコンロッドは、反応器内において特別な電極によって保持される。この電極は通常、高純度の導電性グラファイトから成る。電極保持部において異なる電圧極性を有する細棒がそれぞれ2つずつ、他方の細棒端部においてブリッジに接続されることにより、閉じた電流回路を形成する。電極及びその電極保持部を介して、電気エネルギーが細棒の加熱のために供給される。析出反応器の底板の入口ノズルを介して、水素とハロゲン化シランとの混合物が供給され、その際に、ハロゲン化シランは細棒の表面において分解する。このようにして細棒の直径は増大していき、シリコンロッドが所望の目標直径に達すると、この析出プロセスは終了され、非常に高温となったシリコンロッドは冷却されて取り出される。
【0005】
その際には、電極の保護と、電極保持部を包囲する封止部とが特に重要になる。より短時間の析出サイクルでより長くより高質量のロッドが得られる傾向になってきているため、電極封止保護体の配置および形状と、保護すべき封止部の材料こそが重要になる。というのも、最適な配置により、ポリシリコン析出工程中に、歩留まりまたは品質に影響を与える、発生する可能性のある障害を回避できるからである。このような発生する可能性のある障害には、析出中のたとえば地絡等による電気的な不具合や、給電用電極をCVD反応器の反応器底部に貫通させることによる反応器の封止漏れが含まれる。
【0006】
そのようにして生成されるシリコンロッドを後にどのように使用するかに応じて、該シリコンロッドおよび析出工程に課される要求は大きく異なり、よって、電極および該電極の保護に課される要求も大きく異なる。たとえば多結晶シリコンを後でシリコン片でソーラーセル用や電子回路用に使用する場合、析出反応器内で析出プロセス中または析出プロセス後にシリコンロッドを倒してはならず、また、たとえば製品に接触する封止材料から漏れ出た不純物によってシリコンロッドが汚染されることがあってはならない。
【0007】
WO2010/083899A1に、従来技術の電極保護装置が記載されている。この文献では、グラファイトクランプリングに係合されたグラファイトアダプタ内の細棒について記載されており、グラファイトクランプリング自体は水晶リングを介して、モノシラン法によって多結晶シリコンを製造するためにCVD反応器の底板と協働する。
【0008】
ポリシリコン析出工程時に、実現可能な歩留まりおよび品質に影響を与える障害には、析出中の地絡による電気的な不具合が含まれる。このような障害により、実現可能な最大精錬量と実際の精錬量との間に差が生じる。
【0009】
従来技術では、上述の問題を電極保持部の封止および絶縁によって解決する試みがなされている。
【0010】
WO2010/083899A1から、水晶から成る保護リングを用いて電極保持部の封止部を熱負荷から遮蔽することが公知となっている。
【0011】
DE2328303A1に、加熱された細長い支持体の周面に気相から該当の半導体材料を析出させることによりシリコン製のロッドおよび管を製造するための装置が記載されている。前記支持体はとりわけシリコンまたはグラファイトから成り、金属から成る基板を有する反応容器から構成され、該反応容器には、前記細長い支持体の端部を保持し該支持体を加熱するのに使用される少なくとも1つの電極が備えられており、該電極は電気的に絶縁され該基板を貫通し封止されている。この装置の特徴は、不活性の絶縁性材料から成る封止層を一時接合することにより、金属から成る第1の電極部分が前記基板に固定され、該第1の電極部分は、反応室内に突出する突起部を有し、該突起部に、金属または炭素から成る別の電極部分が交換可能に装着されており、該別の電極部分は自由表面において、前記支持体を固定および保持するための嵌合面を有することである。前記不活性の絶縁性材料は、とりわけテトラフルオロポリエチレンである。
【0012】
すなわち、前記電極保持部の金属製の第1の部分は、不活性絶縁材料から成る封止層を一時接合することにより前記基板に固定される。
【0013】
JP2009−221058A2に、特別なジルコニウムセラミックとフレキシブルグラファイトとを使用し、コーティングされたOリングを封止部として使用して、封止および絶縁を実施することが記載されている。このような材料は耐高温性を有し、これらの材料により、電極と底板との間の空隙を封止することができる。
【0014】
WO2010/068849A1に、底板に電極保持部が貫通された領域において、絶縁性の表面コーティングが施された金属体を使用することにより、熱絶縁を改善することが記載されている。
【0015】
しかし、従来公知の装置では、電極保持部の封止部は十分には保護されなかった。このことにより、腐食作用および地絡に起因して不具合の確率が上昇してしまう。さらに、従来は封止部の腐食防止が不十分であり、ひいては、製品品質に影響する物質(とりわけドープ物質)の排出物から封止部を十分に保護することは従来は不可能であった。
【0016】
DE3024320A1に、ガスの高温処理装置が記載されている。この高温処理装置は、ガス流入口およびガス流出口を有し熱絶縁されたケーシングと、両開口の間に配置され直接通電により加熱される不活性の抵抗加熱器とから構成される。上述の導電性の抵抗体の加熱は有利には、平衡がとれた多相交流電流網において、スター結線を用いて行われる。その際には、個々の加熱器群を相互に異なって制御することができる。すなわち、通電によって異なって加熱することができる。
【0017】
このような装置の一例に、四塩化ケイ素をトリクロロシランに転化するための反応器がある。
【0018】
トリクロロシランは多結晶シリコンを製造するためのシーメンス法において使用される。その際には、シリコンが反応器内で、加熱された細棒に析出して付着する。プロセスガスとして、トリクロロシランと水素とを混合して使用する。トリクロロシランをシリコン析出物に変換する際には(不均化)、大量の四塩化ケイ素が生じる。
【0019】
四塩化ケイ素から、たとえば燃焼室内において高温での水素および酸素との反応により、高分散度のケイ酸を製造することができる。
【0020】
しかし、経済上最も重要な四塩化ケイ素の用途は、トリクロロシランへの転化である。この転化は、四塩化ケイ素と水素との反応により行われ、トリクロロシランと塩化水素とに転化される。このことにより、析出時に生じた副生成物である四塩化ケイ素からトリクロロシランを生成し、このトリクロロシランを再び析出プロセスに供給して、ケイ素元素を生成することができる。
【0021】
通常、水素を用いたトリクロロシランへの四塩化ケイ素の転化は、反応器内において高温で、たとえば少なくとも600℃で、理想的には少なくとも850℃で、かつ0〜30バールの圧力で実施される。
【0022】
こうするためには、導電性の加熱素子に電流を直接流し、抵抗によって該加熱素子内の電気エネルギーを熱に変換する。
【0023】
加熱素子は通常、炭素を含有する材料から成る。この材料はたとえば、グラファイト、CFC、炭化シリコン、またはこれらに類似する材料である。
【0024】
水素と混合させて行われる四塩化ケイ素の転化時には、炭素を含有する反応器部品が化学的な攻撃にさらされることが知られている。
【0025】
このような炭素含有部品の化学的攻撃により、導電性の炭素が堆積し、この堆積物は、電気エネルギー網の地絡が発生する原因となる。さらに、このような化学的攻撃により内部構造の部品の不具合が生じてしまい、ここでは細かい断片が剥離または粉砕して、この細かい断片も地絡の原因となる。このような地絡で問題となるのは、この地絡と電極封止部の損傷とを区別できないことである。電極封止部が損傷した場合には、給電部および反応器を作動停止しなければならない。というのも、作動を継続すると封止漏れないしは反応ガス流出に繋がるため、これを阻止しなければならないからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】WO2010/083899A1
【特許文献2】DE2328303A1
【特許文献3】JP2009−221058A2
【特許文献4】WO2010/068849A1
【特許文献5】DE3024320A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
通常、電極には非金属ないしは非導電性の封止部を使用する。というのも、このような封止部によって電極を反応器の壁から電気的に絶縁し、かつ封止機能も果たすという二重機能が実現されるからである。しかし、このような反応器内の温度は非常に高く、電気絶縁性かつ化学的な耐性を有し電気絶縁機能と耐圧封止機能とを果たす材料はほとんど存在しない。
【0028】
また、反応器内にさらに付加的な組み付け部材を設けることにより、封止部が過度な高温から保護されるようにすることもできる。
【0029】
しかし、上述のような手段では、一方の電極から反応器の壁を介して他方の電極へ不所望の電流が流れることに起因する封止部の損傷を排除することはできない。
【0030】
この問題から、本発明の課題が生まれた。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記課題は、接地に対して電気的に絶縁された電気エネルギー網の1つまたは複数の電極であって、反応器の壁を貫通するように設けられた1つまたは複数の電極がそれぞれ導電性部材に接続されることにより、前記少なくとも1つの導電性部材に動作電圧が印加され該少なくとも1つの導電性部材に電流が流れ、該反応器の壁と前記電極との間にそれぞれ、電気絶縁性材料から成る封止部が設けられている、反応器への給電方法において、前記電気エネルギー網の絶縁不良を監視し、所定の絶縁抵抗値を下回ることにより、電気エネルギー供給の遮断がトリガされる、なお、このスイッチング閾値は、封止部の幾何学的形状と、封止部の材料と、給電電圧と、該封止部に流れる理論的に最大可能な漏れ電流によってトリガされる遮断直前に封止部に入力可能な最大電気エネルギーとから成る群のうち少なくとも1つのパラメータを考慮して求める、反応器への給電方法によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】容器壁を貫通して電気エネルギーを供給する貫通電流供給システム(電極)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この方法は有利には、シーメンス法において使用される。その際には前記導電性部材は、加熱されて表面にシリコンが析出される細棒である。この場合、前記反応器の壁は該反応器の底板である。前記絶縁性封止部は有利には、前記底板と電極ないしは電極保持部との間に設けられる。
【0034】
また有利には、前記方法をガスの熱処理において、特に有利にはガスの高温処理において使用する。この場合には、前記導電性部材は有利には、処理対象であるガスまたは混合気を少なくとも300℃の所定の温度まで加熱するために設けられ炭素を含有する加熱素子ないしは抵抗加熱器である。
【0035】
処理されるガスには有利には、シリコンを含有する少なくとも1つの成分が含まれる。前記シリコンを含むガスは特に有利には、四塩化ケイ素または別のハロゲン化シランである。有利には、処理チャンバ内には水素も含まれる。
【0036】
ここで、本発明の一般的な思想を何らかの形で制限することなく、一例として四塩化ケイ素の上述の転化を挙げる。
【0037】
この転化では、水素が第2の抽出ガスとして必要とされる。この転化は有利には、800〜1500℃の温度と、0〜30バール以上の圧力とで実施される。特に有利なのは、抽出ガスの超臨界圧力以上の圧力を選択することである。HとSTC(四塩化ケイ素)とのモル比は、有利には1:1〜10:1である。
【0038】
前記給電部の電極は絶縁性の封止部を有する。その際には、使用される封止部に適合した絶縁監視を適用する。
【0039】
本願の発明者は、封止部を破壊する漏れ電流ないしはアークを検出して早期に遮断する必要があることを見出した。
【0040】
またそれと同時に、導電性の汚染物があっても、次の分解および洗浄を行うまでの反応器の動作時間を可能な限り長く維持しなければならない。
【0041】
反応器内の一方の電位から他方の電位までのアークが封止部の近傍で発生した場合のみ、該アークは該封止部を破壊することができる。
【0042】
加熱素子が他の部品に接触することなく電極から大きく離れている場合には、前記反応器の構造が頑強であることにより、このことは通常は問題にならない。
【0043】
電気エネルギー網が接地されている場合には、アーク放電または漏れ電流が、電極から、絶縁部でもある封止部を介して反応器壁に達する場合にのみ、該アークまたは漏れ電流が封止部を破壊する原因となる。そうでない場合には、電極から該電極用の電極封止部を介して反応器壁までアーク放電または漏れ電流が発生した後に別の第2の電極の電極封止部を介して該第2の電極まで発生した場合にのみ、アークまたは漏れ電流は封止部を破壊することができる。
【0044】
いずれの場合にも、反応器壁がアーク電流回路の一部となる。
【0045】
接地された電力網(反応器壁が接地されておりかつ給電電源の電位に接続されている電力網)では、故障電流検出により、電極から封止部を介して接地までの故障電流を検出して遮断することができる。このような構成の欠点は、封止部における故障電流だけでも、強制遮断を行う条件として十分であることだ。それゆえ、このような構成は比較的好ましくない。
【0046】
有利なのは、接地から電気的に分離された電源として給電電源を構成することである。
【0047】
このような電気的に分離された電源は、有利には市販されている絶縁監視装置によって監視される。この絶縁監視装置は技術的には、接地に対する各種の電圧重畳の公知の原理をベースとする。
【0048】
ここで、汚染や熱的損傷により電極絶縁部の絶縁不良が生じた場合、漏れ電流またはアークによって封止部が損傷されることなく、早期に遮断することができる。
【0049】
試験では、10Ωを大きく下回る絶縁不良が生じることによって初めて実際に封止部が損傷するという結果が得られたが、実際の動作では、最低で10Ωまでの絶縁不良でも封止部が損傷することもある。
【0050】
それゆえ、封止部を監視するためには、0Ωからの測定領域を有する装置が有利である。
【0051】
スイッチング閾値は有利には0〜1000Ωの間の抵抗領域内にあり、特に有利には0〜100Ωの間の抵抗領域内にあり、さらに有利には0〜10Ωの間の抵抗領域内にある。
【0052】
封止部の構成を考慮して、絶縁不良時の最大許容可能な損失電力を規定することができる。
【0053】
最大損失電力は、封止部の実際の材料の種類と構造とにおいて破壊が生じることがない最大許容入力エネルギーによって規定される。有利には、さらに安全マージンも考慮する。
【0054】
この最大許容可能な損失電力と加熱素子の動作電圧とから、封止部の損傷が生じない許容可能な最小絶縁不良抵抗値を動的に計算することができる。
【0055】
その際には、損失電力が変わらない場合には、電極動作電圧が低いほど絶縁不良が発生することがなくなる。
【0056】
計算された値を適切に上昇させることにより、遮断前に早期アラームを生成することができ、この早期アラームにより、設備を所期のように作動停止させることができる。
【0057】
したがって本発明の方法では、電気的に分離されたネットワークとして構成された電気加熱器ネットワークの絶縁抵抗を介して、生じる可能性のある封止部の損傷を間接的に識別することができる。
【0058】
有利には、スイッチング閾値に達した場合に設備の遮断を行う。このことにより、漏れ電流ないしはアークによる封止部の損傷が阻止され、ひいてはガス流出が阻止される。
【0059】
設備の可動率を最大限にするためには、動作電圧に依存して遮断限界を適合することができる。
【0060】
有利には、封止部の幾何的形状を用いて、および/または動作電圧を用いて、および/または、該封止部に理論的に流れる可能性のある漏れ電流に起因して生じる、遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーを用いて、スイッチング閾値を1回だけ求める。
【0061】
また有利には、封止部の幾何的形状を用いて、および/または動作電圧を用いて、および/または該封止部に理論的に流れる可能性のある漏れ電流に起因して生じる、遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーを用いて、スイッチング閾値を動作中に連続的に求める。
【0062】
本発明の課題はまた、反応器の壁を貫通するように設けられた、電気エネルギー網の1つまたは複数の電極がそれぞれ導電性部材に接続されていることにより該少なくとも1つの導電性部材に動作電圧が印加され該少なくとも1つの導電性部材に電流が流れ、該反応器の壁と電極との間にそれぞれ絶縁性材料から成る封止部が設けられており、該封止部のうち少なくとも1つに導電性の封止部コアが埋め込まれており、該導電性の封止部コアは絶縁監視装置または補助電圧網に接続されている反応器への給電方法であって、該封止部コアの絶縁抵抗を監視するかまたは該補助電圧網内の電流を監視することにより、封止部の損傷によって生じうる漏れ電流を検出する、反応器への給電方法によって解決される。
【0063】
このような方法により、導電性コアを埋め込み、該コアの絶縁不良を監視することにより、生じる可能性のある封止部の損傷を識別することができる。
【0064】
その際には、反応器のすべての電極ないしは電極封止部を共に監視することができる。
【0065】
しかし特に有利なのは、反応器の電極の監視を個々に行うことである。
【0066】
警報レベルの異なる2つ以上の相互間で絶縁された封止部コアの監視を行うことも可能である。
【実施例】
【0067】
通常動作時には、封止部6は電極13と容器壁2との間の電気絶縁部として機能する。
【0068】
内部に導電性の汚染物ないしは導電性の堆積物がある電気化学反応器では、電極から容器壁へ漏れ電流が発生したり、一方の電極から容器壁を介して他方の電極へ漏れ電流が発生する可能性がある。
【0069】
このような漏れ電流は、電気エネルギー入力により封止部6の封止機能が阻害されるほど大きくなる場合がある。このことはたとえば、封止部材料の熱分解または封止部材料の機械的耐性の低下に起因して生じる。
【0070】
このことにより、反応器の用途によっては流出ガスにより危険になる場合があるが、どのような場合でも、封止部材料の熱分解や機械的耐性の低下は望ましくない。
【0071】
通常はこの漏れ電流は、接地された給電網では故障電流を監視することにより検出され、接地されていない給電網では絶縁監視を行うことにより検出される。
【0072】
このようなシステムの欠点は、システムが大抵非常に高感度で応答し、すべての漏れ電流に対して応答してしまうことである。それゆえ、反応器内において2つの加熱素子間に生じ危険でない漏れ電流と、封止部を破壊する漏れ電流とを区別することはできない。したがって、反応器を不必要に早期に停止させなければならない事態になることが多い。
【0073】
本発明の方法により、封止部を破壊する漏れ電流と他の漏れ電流とを区別することができ、このことにより、電気化学反応器の可用性を向上させることができる。
【0074】
こうするためには、電気絶縁部でもある封止部に導電層(金属コア)を埋め込む。この導電層は、市販の絶縁監視装置によって電気的に監視することができる。
【0075】
封止部8上に漏れ電流が流れると、封止部面自体に損傷が生じる前に絶縁性埋込部10が破損する。
【0076】
導電性の封止部コア5は周辺との電気的コンタクトを含む。このことにより、本来は高抵抗に埋め込まれた金属コアの絶縁抵抗値の顕著な低下が観察されやすくなる。
【0077】
絶縁抵抗値のこのような低下は、市販の絶縁監視装置11によって検出することができ、早期警報または反応器の電気エネルギー供給部の遮断にこの検出された低下を使用することができる。
【0078】
このようにして、反応器の遮断が行われるのは、危険ないしは不所望の漏れ電流の場合のみとなる。
【0079】
電気化学反応器内に生じた漏れ電流が危険でない場合、この漏れ電流が検出されることはなくなり、また、遮断が行われることもない。
【0080】
反応器1つあたり複数の電極が設けられている場合、該反応器外部または該反応器内部において該反応器のすべての封止部導電性コアを電気的に接続し、反応器容器に対する絶縁抵抗値を1度に監視することができる。
【0081】
しかし、各電極を個々に監視するかまたはグループごとに監視し、各封止部または各グループごとに絶縁監視部を設置すると、監視はより選択分離可能になる。
【0082】
導電性コアの電気伝導度は、非常に幅広い領域において選択することができるが、有利には、封止部材料の電気伝導度の少なくとも100倍以上とすべきである。
【0083】
このコア材料は通常、たとえば金属、グラファイト、炭素、導電性プラスチック等である導電性固体の群から選択され、種々の形態をとることができる(薄板、グリッド、繊維マット等)。有利には、グリッドまたは繊維マットが使用される。というのもこの場合には、製造時に外側を囲むように封止部材料をプレスするかまたはキャスティングすることができ、このことによってコンパクトな部品が形成され、しばしば封止面を安定化することもでき、たいてい使用される炭化水素ベースおよび/またはフッ化水素ベースのプラスチックを押し付けることにより流動特性が改善されるからである。
【0084】
また、上述の複数の異なる材料を組み合わせて成る固定されていない複合層システムも使用することができ、また、導電性コアを他の電位(電極ないしは反応器カバー)から電気的に分離する、多重に相互に入れ子にされたスリーブを使用することもできる。
【0085】
故障検出は、絶縁監視装置を用いずに補助電圧網と任意の電流監視装置とを用いて、たとえばヒューズを用いるかまたはスイッチング閾値を有する任意の電流測定手段を用いて、早期警報および/または遮断を行うこともできる。
【0086】
こうするためには、金属コアと、接地された補助電位とを電気的に接続する。そうすれば、電流が流れると、故障が生じたことを知らせてくれる。
【0087】
こうするためには、複数の電極に対して補助電圧網を使用することができる。
【0088】
要求に応じて、複数の個々の電極コンタクトの電流監視を個別に行うか、またはすべての電極でともに行うことができる。
【0089】
さらに、本発明において発明者は、大抵は冷却される電極に封止部を収縮被着させ、電気的および機械的に必要な程度まで封止部の壁厚を低減することにより、電極封止部の熱負荷を低減できるとの認識を得ることができた。
【0090】
前記封止部は通常はポリマーを含み、有利にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を使用する。
【0091】
電極は通常、水を用いて冷却される。PTFEは熱で膨張する。このようにして封止部は、水冷された電極との接触部を失い、ひいては冷却されなくなってしまう。
【0092】
このことは、封止部の収縮被着によって阻止することができる。
【0093】
こうするためには封止部を加熱し、この加熱によって該封止部を膨張させた後、該封止部を迅速に電極に引き寄せる。封止部を冷却すると該封止部は収縮して戻り、電極に押さえつけられ、該電極にしっかり固定的に結合された状態に維持される。このようにして、封止部は電極との接触部を常に維持することができ、封止部は該電極によって内部から冷却される。
【0094】
約200〜350℃の分解温度を僅かに下回る温度で電極にPTFE封止部を収縮被着させるのが有利であるが、より低い温度でも収縮被着させることができる。
【0095】
前記封止部の最小壁厚は、該封止部の電気的要件および機械的要件により決定される。有利には、壁厚は0.1〜3mmの間であり、特に有利には約0.5〜2mmの間である。
【0096】
上述のようにして、封止部の熱負荷は格段に低下する。封止部の壁厚が通常の5mmより小さくても、封止部の損傷が生じることは少なくなり、この損傷に続く反応器の遮断が行われることも少なくなる。
【符号の説明】
【0097】
1 上方電極コンタクト
2 容器壁
3 ワッシャー
4 雌ねじ
5 導電性の封止部コア
6 電気絶縁性の封止部
7 封止部コアと絶縁監視部との間の電気接続部
8 導電性の封止部コアと故障電流とのコンタクト場所
9 封止部が完全に未損傷状態である場合の漏れ区間ないしは漏れ電流路
10 封止部の破損
11 絶縁監視装置
12 絶縁不良が生じた場合の、封止面の領域において封止部の損傷が生じる直前の電流の矢印
13 電極
14 封止面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器への給電方法であって、
接地に対して電気的に絶縁された電気エネルギー網の、前記反応器の壁を貫通するように設けられた1つまたは複数の電極がそれぞれ導電性部材に接続されることにより、前記少なくとも1つの導電性部材に動作電圧が印加され該少なくとも1つの導電性部材に電流が流れ、
前記反応器の壁と前記電極との間にそれぞれ、電気絶縁性材料から成る封止部が設けられている、反応器への給電方法において、
前記電気エネルギー網の絶縁不良を監視し、所定の絶縁抵抗値を下回ることにより、電気エネルギー供給の遮断がトリガされる、
ただし、前記電気エネルギー供給の遮断を行うスイッチング閾値を、前記封止部の幾何学的形状と、該封止部の材料と、給電電圧と、該封止部に流れる最大可能な漏れ電流によってトリガされ前記遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーとから成る群のうちの、少なくとも1つのパラメータを考慮して求める
ことを特徴とする、反応器への給電方法。
【請求項2】
前記封止部の幾何学的形状と、該封止部の材料と、前記給電電圧と、該封止部に流れる最大可能な漏れ電流によってトリガされ前記遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーとから成る群から少なくとも1つのパラメータを考慮して、前記スイッチング閾値を1回だけ求める、
請求項1記載の給電方法。
【請求項3】
前記封止部の幾何学的形状と、該封止部の材料と、前記給電電圧と、該封止部に流れる最大可能な漏れ電流によってトリガされ前記遮断直前に該封止部に入力可能な最大電気エネルギーとから成る群から少なくとも1つのパラメータを考慮して、前記スイッチング閾値を動作中に連続的に求める、
請求項1記載の給電方法。
【請求項4】
前記スイッチング閾値は0.1〜1000Ωの抵抗領域内にある、
請求項1から3までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項5】
前記スイッチング閾値は0.1〜100Ωの抵抗領域内にある、
請求項1から3までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項6】
前記スイッチング閾値は0.1〜10Ωの抵抗領域内にある、
請求項1から3までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項7】
前記導電性部材は、シリコンを析出して付着させるための細棒である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項8】
前記導電性部材は、前記反応器内で処理すべきガスまたは混合気を加熱するために設けられた、炭素を含有する加熱素子ないしは抵抗加熱器である、
請求項1から6までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項9】
反応器への給電方法であって、
前記反応器の壁を貫通するように設けられた、電気エネルギー網の1つまたは複数の電極がそれぞれ導電性部材に接続されていることにより、該少なくとも1つの導電性部材に動作電圧が印加され、該少なくとも1つの導電性部材に電流が流れ、
前記反応器の壁と前記電極との間にそれぞれ、絶縁性材料から成る封止部が設けられており、
前記封止部のうち少なくとも1つに導電性の封止部コアが埋め込まれており、
前記導電性の封止部コアは絶縁監視装置または補助電圧網に接続されている、反応器への給電方法において、
前記封止部コアの絶縁抵抗値を監視するかまたは前記補助電圧網内の電流値を監視することにより、前記封止部の損傷によって生じうる漏れ電流を検出する
ことを特徴とする、反応器への給電方法。
【請求項10】
前記反応器に複数の電極が設けられている場合、該反応器の外部または内部において複数の前記封止部コアを電気的に接続し、該反応器の容器に対する絶縁抵抗値を一度に監視する、
請求項9記載の給電方法。
【請求項11】
前記反応器に複数の電極が設けられている場合、各個々の電極の封止部の絶縁抵抗値を監視するか、または複数のグループ毎に前記絶縁抵抗値を監視する、
請求項9記載の給電方法。
【請求項12】
前記封止部コアの材料は、金属とグラファイトと炭素と導電性プラスチックとから成る群から選択される、
請求項9から11までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項13】
前記封止部コアの比抵抗は、前記封止部の材料の比抵抗の1/100より小さい、
請求項9から12までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項14】
前記封止部コアは、リングまたはグリッドまたは繊維マットの形態を有し、各封止部コアにはそれぞれ電気的接続手段が備えられている、
請求項9から13までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項15】
前記補助電圧網は、ヒューズまたはスイッチング閾値を備えた任意の電流測定手段により監視される、
請求項9から14までのいずれか1項記載の給電方法。
【請求項16】
複数の電極に対し1つの補助電圧網を使用する、
請求項15記載の給電方法。
【請求項17】
個々の電極コンタクトの電流監視を個別に行うか、またはすべての電極に対して一緒に行う、請求項15または16記載の給電方法。
【請求項18】
電極の監視、封止および電気的絶縁を同時に行うための装置であって、
封止部は、電気的接続手段を有する導電性のコアを含む、
ことを特徴とする、装置。
【請求項19】
電気絶縁性の封止部を有し化学反応器の給電に使用するための電極において、
前記封止部はポリマーから成り、前記電極に収縮被着されている
ことを特徴とする、電極。
【請求項20】
前記封止部はPTFEから成る、
請求項19記載の電極。
【請求項21】
前記収縮被着の領域における壁厚は0.1〜3mmである、
請求項19または20記載の電極。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6175(P2013−6175A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−141406(P2012−141406)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】