説明

反応型ホットメルトシーリング剤組成物

【課題】透湿度が低く、かつ十分な耐熱性を有するシーラントを形成可能な反応型ホットメルトシーリング剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも第1液と、第2液とを反応させて用いる反応型ホットメルトシーリング剤組成物であって、4〜30重量%の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと、0.1〜3.0重量%のエポキシ樹脂と、7〜25重量%のワックスと、硬化促進剤とを含み、第1液は無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを含み、第2液はエポキシ樹脂を含み、反応型ホットメルトシーリング剤組成物を硬化させて形成した厚さ300μmのシーラントについて、温度40℃、相対湿度90%の条件下でのJIS Z 0208に準じて測定した透湿度が10(g/m・day)以下である、反応型ホットメルトシーリング剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応型ホットメルトシーリング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気、自動車、建築などの各産業分野において、たとえば自動車のヘッドランプなどの灯具、照明器具、電子機器、信号機等の製造または自動車のサイドガラス、窓ガラス等の取り付け、太陽電池パネルのフレーム内への取り付けにおいて、シールを目的としてホットメルト型のシーラント剤組成物が用いられている。
【0003】
加熱溶融して塗布し、冷却して固化することにより接着力を発揮するホットメルト型のシーリング剤組成物は、揮発物がなく高速接着が可能であり、さらに作業性がよいという利点を有する。
【0004】
ホットメルトシーリング剤組成物としては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン系ブロック共重合体、ブチル系ゴムなどのベースポリマーに粘着付与剤等を配合したものが用いられる。
【0005】
ホットメルトシーリング剤組成物は、その用途に応じて求められる性質は異なる。たとえば、自動車のヘッドランプなどの灯具に適用される場合、衝撃や振動を受け易いため、衝撃や振動を受けても接着性が維持される性能が求められる。
【0006】
たとえば、太陽電池は、屋外に配置して用いられることが多く、直射日光等の高温環境下に晒されたり、高湿度の環境下に晒されたりすることの影響により、シーラントの性能が劣化することがある。シーラントの性能が劣化すると、外観が損なわれたり電池性能が阻害されたりするという問題がある。
【0007】
特許文献1には、水分捕捉剤及びワックスを含む有機薄膜太陽電池用ホットメルト型部材を用いることにより、長期にわたって水分や酸素の影響がなく安定した太陽電池特性を維持できることが記載されている。特許文献2には、ブチルゴムと、シリル化したアモルファスポリ−α−オレフィン重合体とを含有する太陽電池用反応型ホットメルトシーリング剤組成物を用いることにより、高温下でのせん断強度が良好であり、雨水等の浸入も抑制することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−99805号公報
【特許文献2】特開2010−166032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
たとえば太陽電池のように、高温・高湿度の環境下で使用される可能性がある用途においては、透湿度が低く、かつ耐熱性に優れているシーリング剤組成物が好ましい。透湿度が高いと、シーリング剤組成物中を水蒸気が拡散移動し、太陽電池モジュール中のセルまたは配線に到達し、腐食などの問題を引き起こし、故障や発電効率の低下を招く恐れがある。また、耐熱性に劣ると、設置可能な環境が限定されることになる。さらに、塗布範囲が広いことこともあり、作業特性が良好であることが好ましい。
【0010】
特許文献1,2に記載のホットメルトシーリング剤組成物では、透湿度および耐熱性の点で十分ではない場合があった。
【0011】
本発明は、透湿度が低く、十分な耐熱性を有するシーラントを形成することができ、かつ作業時の良好な反応型ホットメルトシーリング剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、少なくとも第1液と、第2液とを反応させて用いる反応型ホットメルトシーリング剤組成物であって、4〜30重量%の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと、0.1〜3.0重量%のエポキシ樹脂と、7〜25重量%のワックスと、硬化促進剤とを含み、第1液は無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを含み、第2液はエポキシ樹脂を含み、反応型ホットメルトシーリング剤組成物を硬化させて形成した厚さ300μmのシーラントについて、温度40℃、相対湿度90%の条件下でのJIS Z 0208に準じて測定した透湿度が10(g/m・day)以下である、反応型ホットメルトシーリング剤組成物を提供する。
【0013】
上記反応型ホットメルトシーリング剤組成物において、上記硬化促進剤は、好ましくは第1液に含まれる。また、上記ワックスは、好ましくは、融点が100℃以上のワックスである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物によると、透湿度が低く、かつ十分な荷重耐久性および耐熱性を有するシーラントを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[反応型ホットメルトシーリング剤組成物]
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物は、少なくとも第1液と、第2液とを反応させて用いられるものであり、4〜30重量%の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A)、0.1〜3.0重量%のエポキシ樹脂(B)、7〜25重量%のワックス(C)、および硬化促進剤(D)を含む。第1液は無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A)を含み、第2液はエポキシ樹脂(B)を含む。ワックス(C)および硬化促進剤(D)は、第1液および第2液のいずれに配合されてもよく、両方に配合されてもよく、さらには第1液および第2液とは異なる第3液に配合されてもよい。本発明の反応型ホットメルト樹脂組成物を硬化して形成した厚さ300μmのシーラントについて、温度40℃、相対湿度90%の条件下でのJIS Z 0208に準じて測定した透湿度が10(g/m・day)以下である。透湿度が10(g/m・day)以下の場合、十分な水蒸気バリア性を備える。透湿度は、さらに好ましくは9.0(g/m・day)以下である。
【0016】
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物は、硬化促進剤の存在下で、無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A)とエポキシ樹脂(B)とが反応して硬化し、耐熱性が発現される。さらにワックスの添加により低い透湿度が発現される。本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物は、少なくとも第1液と第2液とを混合して用いるものであり、第1液と第2液を混合した後に被着物に塗布して用いても良いし、第1液と第2液とを噴霧して、混合および塗布が同時になされるようにして用いても良い。
【0017】
(無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A))
無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーは、無水マレイン酸を付与したスチレン系熱可塑性エラストマーである。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレンから誘導されるポリスチレンブロックと、ゴム弾性を付与できるゴム中間ブロックとを有するものが好ましく、たとえば、スチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体(SIS)、SBSに水素添加したもの(SEBS)、SISに水素添加したもの(SEPS)等が挙げられる。
【0018】
スチレン系熱可塑性エラストマーに付与される無水マレイン酸は0.5〜5重量%であることが好ましい。無水マレイン酸の付加量が0.5重量%未満であると、反応性が低く十分な耐熱性が得られない傾向があり、5重量%を超える無水マレイン酸をスチレンブ系熱可塑性エラストマーに付加させるのは難しく高コストになってしまう。これらは、1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。耐熱性・耐候性・熱安定性の点から、SEBS・SEPSに無水マレイン酸を付加した無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく用いられる。
【0019】
無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの具体例として、クレイトンポリマージャパン株式会社製の無水マレイン酸変性SEBS(商品名:クレイトンFG1901X、クレイトンFG1924)、旭化成株式会社製の無水マレイン酸変性SEBS(商品名:タフテックM1943)などが挙げられる。
【0020】
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物に配合される無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの配合量は、組成物全体に対して4〜30重量%とする。4重量%未満であると耐熱性が十分でない場合があり、30重量%を超えると反応速度が速くなりすぎて、塗工時の取り扱いが非常に難しくなる。
【0021】
(エポキシ樹脂(B))
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマーまたはポリマーであり、1分子中に好ましくは2個〜10個のエポキシ基を有する。1分子中のエポキシ基が2個未満であると反応性が低く十分な耐熱性が得られない傾向がある。また1分子中のエポキシ基が10個を超えると反応速度が速くなりすぎて、塗工時の取り扱いが非常に難しくなる。エポキシ樹脂として、たとえば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、およびこれらの変性樹脂、エポキシ化ポリブテン等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いてもよい。エポキシ樹脂は、エポキシ当量が好ましくは100〜5,000g/当量、より好ましくは150〜1,000g/当量である。エポキシ樹脂の具体例として、ジャパンエポキシレジン株式会社製のエピコート825、エピコート828、エピコート1001、エピコート1004、ダイセル化学工業株式会社製のセロキサイド2021(以上、商品名)などが挙げられる。
【0022】
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物に配合されるエポキシ樹脂の配合量は、組成物全体に対して0.1〜3.0重量%とする。0.1重量%未満であると、耐熱性が十分でない場合があり、3.0重量%を超えると反応速度が速くなりすぎて、塗工時の取り扱いが非常に難しくなる。
【0023】
(ワックス(C))
ワックスは、加熱溶融時の流動性を増大させ、かつ反応型ホットメルトシーリング剤組成物を用いて形成する硬化物の好適な耐熱性、透湿性に寄与する。本発明において使用し得るワックスとしては、パラフィンワックス、フィシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸変性ワックス、さらに植物油の水添品(カスターワックス等)などが挙げられる。これらは1種単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。本発明におけるワックスとして、透湿度が低くなることから、融点が100℃以上のワックスが好ましく用いられる。
【0024】
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物に配合されるワックスの配合量は、組成物全体に対して7〜25重量%である。7重量%未満であると、十分な耐熱性、低い透湿性が得られない場合があり、25重量%を超えると弾性率が高くなりすぎて、接着性、密着性が低下し、十分な耐熱性が得られない場合がある。
【0025】
ワックスとしては、たとえば、市販品のハイワックス400P(商品名、ポリエチレン(PE)ワックス、融点:129℃、三井化学(株)製)、ハイワックス110P(商品名、ポリエチレン(PE)ワックス、融点:110℃、三井化学(株)製)、FT−105(商品名、フィッシャートロプシュワックス、融点:115℃、SHELL MDS (MALAYSIA) SDN. BHD.製)を使用することができる。
【0026】
本明細書におけるワックスの融点は、次の測定方法(DSC法)により測定した値である。ワックスのDSC法による吸熱ピーク温度(融点℃)は、Q100型示差操作熱量計(ティー・エイ・インスツルメンツ社製)を使用し、パージガス(N2)流量を50ml/minで、電源投入後、測定セル内の温度を30℃に設定し、その状態で1時間放置した後、純正のアルミニウム製のパンに被測定試料をサンプル量として8mg±2mg入れ、試料が入ったアルミニウム製のパンを測定機器内に投入する。その後30℃で5min間保持し、試料の熱履歴を消すために一旦150℃まで昇温した後30℃まで冷却を10℃/minで実施する。30℃で5min間保持したのちに、再度昇温を行い昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した時のヒートフロー曲線を測定する。ヒートフロー曲線の高温側のピーク温度を、ワックスの融点として読み取る。
【0027】
(硬化促進剤(D))
硬化促進剤は、無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A)のカルボキシル基と、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基の反応に対して触媒作用を持つものであり、たとえば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ポリオキシエチレンココナットアルキルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物及びこれらの誘導体、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン、及びこれらの有機ホスフィンに無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物等の有機リン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中ではポリオキシエチレンココナットアルキルアミンが毒性の点で好ましい。
【0028】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではなく、また硬化促進剤の種類により好適な量は異なるが、組成物全体に対して0.01〜10重量%で配合することが耐熱性の点で好ましい。0.01質量部未満であると十分な耐熱性が得られない場合がある。10重量%を超えると界面にブリードアウトしてべた付きもしくは接着力が低下する問題が生じる場合がある。たとえば、硬化促進剤として市販品のアミート105(商品名、非イオン性界面活性剤、化成花王株式会社製)を用いる場合、硬化促進剤は、組成物全体に対して0.01〜0.2重量%で配合することが好ましい。0.2重量%を超えて配合すると、第1液と第2液の混合後、塗工が難しくなる程度まで増粘する速度が速く、作業特性に劣る場合がある。
【0029】
硬化促進剤は、上述の通り、第1液、第2液いずれに配合されてもよく、両方に配合されていてもよく、さらには第1液および第2液とは異なる第3液に配合されていてもよい。なお、第1液に硬化促進剤を配合すると、無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーの無水マレイン酸が開環してイオン化するため、第1液を第2液と混合した際にエポキシ樹脂との反応が進行しやすくなり、好ましい。
【0030】
硬化促進剤が配合されている第3液を用いる場合は、必要量を微量塗布するために適切な濃度の水または良溶媒で希釈して被着体表面に適用することが好ましい。二つの被着体がある場合は、一方の被着体表面に硬化促進剤を塗布し、その後に第1液と第2液とを塗布した他方の被着体と貼り合せて、第1液、第2液および第3液を接触させてもよい。あるいは、被着体に予め第3液を塗布しておき、その後に第1液および第2液を塗工してもよい。
【0031】
硬化促進剤が組成物の内部に拡散し、組成物全体の硬化反応が進むことが好ましい。硬化の度合いは、たとえば無水マレイン酸のC=Oの特性赤外吸収帯の強度減少により測定することができる。また、端部での硬化が進み、最終的には無水マレイン酸のC=Oの特性赤外吸収帯の強度が硬化前の10分の1以下になることが最も好ましい。少なくとも3分の1以下になることが好ましい。
【0032】
(その他の成分)
本発明の反応型ホットメルトシーリング剤組成物には、シール性を向上させるためにブチル系ゴムおよび/またはポリブテンを配合してもよく、硬化反応後のホットメルトシーリング剤組成物の粘着性を向上させるために非反応性ブロックコポリマーを配合してもよく、その他必要に応じて粘着付与剤、可塑剤、シランカップリング剤、充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を配合してもよい。これらは、第1液、第2液いずれに配合してもよく、また両方に配合してもよい。
【0033】
ブチル系ゴムとしては、たとえば、市販品のブチルゴム268(JSR(株)製)を使用することができる。ゴム原料はブチル系ゴムのみに限定されることはなく、他のゴムを併用してもよい。ブチル系ゴムと他のゴムを併用する場合、他のゴムとしては、スチレン系ブロック共重合体が好ましく用いられる。具体的には、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、α−メチルスチレン−ブタジエン−α−メチルスチレンブロック共重合体や、これらの水素添加変性物、たとえばスチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられる。
【0034】
ブチル系ゴムとしては、イソブチレンに数%のイソプレンを共重合した合成ゴムが好ましく用いられる。このような合成ゴムは、ガスバリア性、耐オゾン性、耐老化性、電気絶縁性、耐候性、衝撃吸収性に優れている。
【0035】
ポリブテンは、イソブテンの重合による長鎖状炭化水素によって構成された合成樹脂であり、低い透湿度とするためには、好ましくは数平均分子量が2500以上のものが用いられる。数平均分子量が2500以上のポリブテンは、通常の条件下では極めて安定な物質であり、透明で不純物を含まない、無毒な高稠性を有する半固体状のポリマーである。
【0036】
非反応性ブロックコポリマーとしては、ホットメルトシーリング剤組成物に粘着性を保持させるために添加するもので、たとえば、スチレンブロックコポリマー、オレフィン系ブロックコポリマーおよびそれらの誘導体などがある。非反応性ブロックコポリマーとしては、たとえば、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトンG−1726(商品名)、JSR株式会社製のダイナロン6200P(商品名)などがある。
【0037】
粘着付与樹脂としては、たとえば、粘着付与剤としては、天然ロジン、重合ロジン、水添ロジン、ロジンエステル及び水添ロジンエステル等のロジン系粘着付与剤;ポリテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂及び水添テルペン樹脂等のテルペン系粘着付与剤;芳香族系石油樹脂、脂肪族系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂及び水添石油樹脂等の石油樹脂系粘着付与剤;クマロン・インデン系粘着付与剤;スチレン系粘着付与剤が挙げられる。粘着付与剤の具体例としては、ヤスハラケミカル株式会社製のクリアロンP−125(商品名)がある。
【0038】
可塑剤としては、流動パラフィン、パラフィン系、ナフテン系、アロマ系等のプロセスオイル、液状ポリイソプレン等の液状ゴム、エステル系可塑剤、植物性油、低分子量液状ポリブテン、酸無水物変性ポリブテン、酸無水物変性液状ポリイソプレン等が挙げられる。これらの中でも、流動性の向上効果が大きい流動パラフィン、プロセスオイル、液状ポリブテンから選ばれた少なくとも1種が特に好ましい。また、ホットメルトシーリング剤組成物の接着強度を向上させる場合に酸無水物変性ポリブテン、酸無水物変性液状ポリイソプレンから選ばれた少なくとも1種を添加するとさらに好ましい。このような可塑剤としては、具体的には、出光興産(株)製のプロセスオイルPW32(商品名)、日JX日鉱日石エネルギー(株)製の日石ポリブテンHV−300(商品名)などがある。
【0039】
シランカップリング剤としては、ビニル系としてビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、エポキシ系として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、スチリル系としてp−スチリルトリメトキシシラン、メタクリル系として3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリル系として3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アミノ系としてN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、ウレイド系として3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、メルカプト系として3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、スルフィド系としてビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、イソシアネート系として3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどがある。これらは単独または2種以上の混合物として用いることができる。このようなシランカップリング剤としては、具体的には、東レ・ダウコーニング(株)製のZ−6040、Z6210(いずれも商品名)などがある。
【0040】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノールなど、液状紫外線吸収剤としてメチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールの反応性生物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、トリアジン系紫外線吸収剤として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としてオクタベンゾン、ベンゾエート系光安定剤として2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヒンダードアミン系光安定剤としてジブチルアミン1,3,5−トリアジンN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−ピペリジルセバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートなどがある。このような紫外線吸収剤としては、具体的には、三共(株)製のサノールLS−770(商品名)などがある。
【0041】
充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、ホワイトカーボン、シリカ、カーボンブラック等が例示される。老化防止剤としては、フェノール系、アミン系、アルデヒド系のものが使用される。その他に、各種の酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤等を配合してもよい。
【0042】
(ホットメルトシーリング剤組成物の調製方法、塗布方法)
本発明のホットメルトシーリング剤組成物は、第1液および第2液それぞれについて、構成成分を順次添加し、混合および混練して調製することができるが、種々の成分を同時にまたは段階的に配合し、混合および混練して調製することもできる。第1液および第2液の混合および混練は、バンバリーミキサー、加熱ニーダー、一軸または二軸エクストルーダーなどを用いて行なうことができる。
【0043】
第1液および第2液は塗布直前に混合して用いることが好ましい。そして、混合したものを一方の被着体に塗工する。完全に冷却固化する前にもう一方の被着体を塗工層上に押し当てて密着させて、塗工層を冷却固化させて接着工程を終了する。接着後時間経過と共に反応が進行し、耐熱性が発現する。
【0044】
また、剥離紙上に成形シーラントを形成し、さらに剥離紙を貼付して剥離紙に挟まれた状態のシーラントとして長期間保管することができる。これらのシーラントは、常温で密着性を有するため、加熱等の煩雑な工程を有することなく被着体に密着させることができる。
【0045】
上記のように、ホットメルトシーリング剤組成物は、接着のための加熱が必要ないため、加熱により被着体が劣化したり、加熱に耐えうる基材の使用に限定されたり、加熱時に余計な時間やエネルギーを必要としたり、という問題が生じない。また、シーリング剤組成物の塗布および成形工程と、接着工程とを独立して行なうことができるため、長い寸法や広い面積、複雑な形状をも容易にシーリングすることができる。
【0046】
(ホットメルトシーリング剤組成物の用途)
本発明のホットメルトシーリング剤組成物は、従来のホットメルトシーリング剤組成物が用いられていた電気、自動車、建築などの各産業分野のあらゆる用途に用いることができる。本発明のホットメルトシーリング剤組成物は、透湿度が低く、耐熱性に優れるため、たとえば屋外に設置される用途にも好適であり、たとえば太陽電池パネルを枠材に固定するために用いられる。この場合、まずは枠材の溝の中に第1液と第2液とを混合したホットメルトシーリング剤組成物を塗工する。そして、その溝の中に太陽電池パネルを差し込む。その状態で放置することにより、ホットメルトシーリング剤組成物が冷却され、太陽電池パネルと枠材とが固定される。その後の養生により反応が進行し耐熱性が発現する。本発明のホットメルトシーリング剤組成物を用いることにより、長期間継続して使用しても、シーリング部分の劣化に起因する電気性能の低下が抑制された太陽電池モジュールを提供することができる。
【実施例】
【0047】
以下、具体例に基づき、本発明を説明する。本発明は、以下に限定されない。
[ホットメルトシーリング剤組成物の調製]
実施例1〜14、比較例1〜11のホットメルトシーリング剤組成物の第1液および第2液について、それぞれ表1および表2に示す成分を表1および表2に示す質量部でニーダーにて混練し調製した。その後、それぞれ温度160℃に加熱し溶融した第1液および第2液を1:1の比率で混合して手混ぜで攪拌して均一にし、ホットメルトシーリング剤組成物を得た。第1液と第2を混合した後の各実施例および各比較例のホットメルトシーリング剤組成物の成分組成を表3に示す。
【0048】
表1〜表3に示す各成分の詳細を以下に示す。
無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマー(A):クレイトンFG1924X(商品名、クレイトンポリマージャパン株式会社製)、
エポキシ樹脂(B):エピコート825(商品名、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、
ワックス(C):ハイワックス400P(商品名、ポリエチレンワックス、融点:129℃、三井化学株式会社製)、FT−105(商品名、フィッシャートロプシュワックス、融点:115℃、SHELL MDS (MALAYSIA) SDN. BHD.製)、ハイワックス110P(商品名、ポリエチレン(PE)ワックス、融点:110℃、三井化学(株)製)
硬化促進剤(D):アミート105(商品名、非イオン性界面活性剤、化成花王株式会社製)、
ブチル系ゴム:ブチル268(商品名、ブチルゴム、JSR(株)製)
ポリブテン:ポリブテンHV1900(商品名、高粘度なポリブテン、JX日鉱日石エネルギー(株)製)
可塑剤:ポリブテンHV300(商品名、液状ポリブテン、JX日鉱日石エネルギー(株)製)
非反応性ブロックコポリマー:クレイトンG1726(商品名、SEBS、クレイトンポリマージャパン株式会社製)
シランカップリング剤:Z−6210(商品名、アルコキシシラン、東レ・ダウコーニング(株)製)
紫外線吸収剤:サノールLS−770(商品名、ヒンダードアミン系光安定剤、三共(株)製)
酸化防止剤:ソンノックス1010F(商品名、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)製)
粘着付与剤:クリアロンP125(商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)。
【0049】
[測定・評価]
上記のようにして得た実施例1〜14、比較例1〜11のホットメルトシーリング剤組成物を用いて、それぞれ下記の測定方法または評価方法にしたがい、透湿度、耐熱性、増粘時間、硬化完了程度を測定または評価した。測定または評価結果を表3に示す。
【0050】
<透湿度測定>
温度160℃で溶融した第1液と、温度160℃で溶融した第2液とを混合・攪拌して均一に調製したホットメルトシーリング剤組成物を用いて、厚さ300μmのシーラントフィルムを形成し、かかるシーラントについてJIS Z 0208(カップ法、温度40℃、相対湿度90%)に準じて水蒸気透湿度を測定した。
【0051】
<耐熱性評価>
温度160℃で溶融した第1液と、温度160℃で溶融した第2液とを混合・攪拌して均一に調製したホットメルトシーリング剤組成物を、アルミニウム基材(厚み2mm)上に、12.5mm×25mm×2mm厚に塗布し、そのホットメルトシーラント組成物上にさらにガラス基材(厚み3mm)を貼合せした。その後、100℃で12時間放置し、ホットメルトシーラント組成物を十分に硬化させて、基材−シーラント−基材からなる積層体サンプルを作成した。この積層体サンプルのホットメルトシーラント組成物にせん断方向に100gの荷重をかけて、100℃の雰囲気下に1ヶ月間放置し、ズレの発生を下記のように評価した。
【0052】
○:ズレが発生しなかった、
×:ズレが発生した。もしくは接着破壊した。
【0053】
<増粘時間測定>
温度160℃で溶融した第1液と、温度160℃で溶融した第2液とを混合した後、160℃下で手混ぜで攪拌し続けた際に流動性が低下し混ぜることができなくなるまでの時間を測定した。増粘時間が十分長い場合、第1液と第2液とを混合して塗布液を調製した後に塗布しても作業性が低下しない。このように測定した増粘時間は3分以上であることが好ましい。
【0054】
<硬化完了程度評価>
温度160℃で溶融した第1液と、温度160℃で溶融した第2液とを混合・攪拌して均一に調製したホットメルトシーリング剤組成物を、アルミニウム基材(厚み2mm)上に、12.5mm×25mm×2mm厚に塗布し、そのホットメルトシーリング剤組成物上にさらにガラス基材(厚み3mm)を貼合せした。その後、温度23℃で5日間放置し、基材−シーラント−基材からなる積層体サンプルを作成した。この積層体サンプルのホットメルトシーラント組成物にせん断方向に100gの荷重をかけて、温度100℃の雰囲気下に1ヶ月間放置し、ズレの発生を下記のように評価した。ズレの発生は硬化完了の程度と相関があり、ズレが発生した場合は温度23℃、5日間の放置では硬化していない樹脂がかなり残っていることになり、ズレが発生しない場合は温度23℃、5日間の放置で完全に硬化が完了していることを示す。硬化していない樹脂がかなり残っている場合、耐熱性を有する反応型ホットメルトシーラントとして十分な性能を発揮するまでに時間を要し、有用性に欠ける。
【0055】
○:ズレが発生しなかった(完全に硬化が完了していた)、
×:ズレが発生した。もしくは接着破壊した。(硬化していない樹脂がかなり残っていた)。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
表3に示されるように、実施例1〜14のホットメルトシーリング剤組成物は、透湿度が10.0g/m・day以下であり、十分な水蒸気バリア性を有し、耐熱性、測定した増粘時間も3分以上であり作業性に優れているものであることがわかった。
【0060】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1液と、第2液とを反応させて用いる反応型ホットメルトシーリング剤組成物であって、
4〜30重量%の無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーと、0.1〜3.0重量%のエポキシ樹脂と、7〜25重量%のワックスと、硬化促進剤とを含み、
前記第1液は無水マレイン酸変性スチレン系熱可塑性エラストマーを含み、
前記第2液はエポキシ樹脂を含み、
前記反応型ホットメルトシーリング剤組成物を硬化させて形成した厚さ300μmのシーラントについて、温度40℃、相対湿度90%の条件下でのJIS Z 0208に準じて測定した透湿度が10(g/m・day)以下である、
反応型ホットメルトシーリング剤組成物。
【請求項2】
前記硬化促進剤は前記第1液に含まれる、請求項1に記載の反応型ホットメルトシーリング剤組成物。
【請求項3】
前記ワックスは、融点が100℃以上のワックスである、請求項1または2に記載の反応型ホットメルトシーリング剤組成物。

【公開番号】特開2012−233090(P2012−233090A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102771(P2011−102771)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】