説明

反応容器、および反応制御装置

【課題】本発明は、反応容器、および反応制御装置に関し、高い精度でかつ忠実な応答性で該容器内に収容した液体の温度制御を行うことを可能とすることを目的とする。
【解決手段】液体を収容可能な1または複数の反応室と、前記反応室を囲む壁とを有し、前記壁の全体または一部は、外部に設けた指示部からの信号に応じてその温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成されるように反応容器および反応制御装置を構成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器、および反応制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特定のDNA断片を、迅速かつ容易に増幅するDNA増幅方法として、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)法が、生物関連のあらゆる分野で用いられている。PCR法は、鋳型DNAに相補的な2本のプライマーを設計し、そのプライマーに挟まれた領域を試験管内(in vitro)で複製する方法である。該方法は、鋳型DNA、プライマー、ヌクレオチド、耐熱性DNAポリメラーゼを含む反応溶液を各種温度でインキュベートするという温度サイクルを繰り返すことで指数関数的にDNAを増幅してPCR産物を得るものである。
【0003】
1回のサイクルは、鋳型DNA、プライマー、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド及び反応バッファ液が入った容器について、2本鎖のDNAを1本鎖に変性し、1本鎖のDNAにプライマーがアニールし、前記1本鎖に相補的なDNA鎖を合成するそれぞれの温度条件でインキュベートすることからなり、1分子のDNA断片を2分子にする。次のサイクルでは前のサイクルで合成されたDNA断片も鋳型となるので、nサイクル後に合成されるDNA断片は、2分子となる。
【0004】
従来、温度の制御は、鋳型DNA、プライマー、DNAポリメラーゼ、ヌクレオチド及び反応バッファ液が入ったガラス等で形成された容器を、アルミニウム等の素材で形成されたブロック状の恒温装置の収容部内に収容して、該金属製のブロック状の収容部を加熱または冷却し、液温が均等な温度分布となるまで待つことによって、次の温度の加熱または冷却を行うようにしていた(特許文献1)。
【0005】
そのために、前記容器内の反応液が加熱または冷却されるまでには、容器の容量が大きいために均等な液温の温度分布になるまでに時間がかかるとともに、前記収容部および容器の熱容量や比熱の差により複雑な温度変化が生じ、高い精度でDNAの増幅を行うには、複雑な温度指示を行う必要があるという問題点を有していた。
【0006】
ところで、PCR法では温度の制御は重要であり、温度サイクルを変えることによって最終的に得られるPCR産物の質や量を変えることができる。
【0007】
特に、リアルタイムPCRではPCRでの増幅産物の生成過程をリアルタイムで検出し、解析することによって、より正確な定量を行うものであり、より正確で迅速な温度制御を必要とするものである。そのために、種々の装置が提案されている(特許文献2〜特許文献5)。しかし、これらの装置は、複雑な流路を設けたり、大規模な遠心装置等を用いたり、大規模で複雑な装置であった。
【0008】
それに対して、本発明者は、反応液を収容する反応室を具備した反応容器本体と、反応室の開口部を封止しうる蓋材とを供え、該蓋材が反応液を押圧する押圧部を有する反応容器を開示し、遠心力を必要とせずに、簡単な装置規模で迅速な温度制御を行うことを可能とした(特許文献6)。
【0009】
しかしながら、本発明者は、熱効率の高い液体の薄層化または毛細化と、その容器の特殊な形状に基づく合理的な遠心処理または吸引吐出処理とを結合することにより、大規模な装置を用いることなく、PCR等についての一貫した処理の短縮化と自動化とを同時に行い得ることに思い至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2622327号公報
【特許文献2】特表2000−511435公報
【特許文献3】特表2003−500674公報
【特許文献4】特表2003−502656公報
【特許文献5】米国特許5,958,349号公報
【特許文献6】特開2002−10777公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、その第1の目的は、高い精度でかつ忠実な応答性で該容器内に収容した液体の温度制御を行うことができる反応容器、および反応制御装置を提供することである。
【0012】
第2の目的は、加熱または冷却の指示を与えてから液体の温度が均等に分布するまでの時間を短縮して、迅速に処理を行うことができる反応容器、および反応制御装置を提供することである。
【0013】
第3の目的は、液体内から気泡や気体領域を除去した状態で液体を薄層化または毛細化することによって、均質な反応および精度の高い光情報を得ることができる反応容器、および反応制御装置を提供することである。
【0014】
第4の目的は、処理対象となる液体について、簡単な構造で、効率的に一貫した処理を自動的に行うことができる反応容器、および、反応制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、液体を収容可能な1または複数の反応室と、前記各反応室を囲む壁とを有し、前記壁の全体または一部は、外部からの信号に応じてその温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成された反応容器である。
【0016】
ここで、「反応室」は、温度制御の対象となる液体が収容されるべき空間部分である。「壁」は側壁のみならず、底壁等を含む反応室を囲んでいる部分をいう。該「温度昇降体」とは、外部からの信号に応じてその温度を上昇させまたは下降することが可能な部材をいう。
【0017】
「信号」とは、前記温度昇降体が導電性部材の場合には、電磁気的信号、すなわち電気または磁気による信号である。温度昇降体による温度を検知して、該温度に基づいて信号を発生することも可能である。
【0018】
「反応容器」とは、液体を収容可能な部分(ここでは、反応室)を有するものであって、そこに液体を導入するための少なくとも1の開口部を有する。そのようなものをもてば、1の開口部が上側に設けられた通常の容器状の場合のみならず、1の開口部の他に1の液体の吸引吐出口をその下側にもつような分注チップ状のものであっても良い。また、反応容器の材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル等の樹脂、ガラス、金属、金属化合物等がある。サイズは、例えば、数μリットルから数100μリットルの液体を収容可能であるとともに、ピペットチップの先端が挿入可能な大きさである。例えば、円筒状の場合には、例えば、1の反応室の大きさの径が数ミリ〜数10ミリ、深さが数ミリ〜数10ミリである。
【0019】
第2の発明は、前記壁は、その内壁面が反応室内に面し、その外壁面が反応室外にあって、その内外壁面間が一体的に形成された反応容器である。すなわち、反応室の内壁面と外壁面とで挟まれた壁の部分は、例えば、金属、樹脂等またはこれらを結合した固体の状態で分割自在ではないように壁として形成されている。したがって、壁全体または壁の一部として形成された温度昇降体としては、壁から分離自在な温度昇降体を有する場合、例えば、単に壁に接触しているだけに過ぎない温度昇降体や、壁に螺子等によって着脱自在に取り付けられた温度昇降体、壁に溶接等で取り付けた別部材に対して着脱自在に取付けた温度昇降体、壁から完全に離れている温度昇降体は分割可能であるので除外される。そのために、反応容器が、反応室の壁として要求される厚さ程度になるように温度昇降体を設けるようにすれば、反応容器のサイズや装置全体の規模を抑制し、加熱手段の存在を意識することなく取り扱うことができる。
【0020】
第3の発明は、前記温度昇降体は所定電気抵抗をもつ導電性部材を有し、前記信号は電磁気的信号である反応容器である。
【0021】
ここで、「所定電気抵抗」としては、所定の電流を前記導電性部材内に流すことによって、該導電性部材が目的に応じた温度を達成するのに必要な発熱を行うことができる値である。例えば、表面抵抗値でいうと、単位面積あたり例えば、数百Ωから数Ω程度、また、誘導加熱を可能とする抵抗値は、例えば、数Ωcm以上である。導電性部材としては、例えば、所定電気抵抗値をもつ1種類の物質からなる場合、または、異なる抵抗値をもつ2種類以上の物質が接合、溶着、蒸着、溶融、溶接、接着、付着、貼着しているような場合がある。前者の場合には、電磁気的信号としての電流値の大きさに温度が依存し、後者の場合には電流値のみならず、ペルティエ効果により、電流の向きにも温度が依存し加熱のみならず冷却も可能とする。
【0022】
「導電性部材」としては、例えば、金属、金属酸化物等の金属化合物、合金、半導体、半金属、導電性樹脂等の導電性物質、これらの導電性物質と非導電性物質、例えばセラミックス、ガラス、合成樹脂等とを組み合わせたもの、または、導電性物質同士を組み合わせたものあっても良い。例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化スズ、鉄、鉄合金、ニクロム合金、2種類の異なる導電性物質で形成した部材を接着、溶接、接合することによって結合した場合がある。これらの部材に電流を流すことによってまたは鉄、鉄合金の場合には、時間的に変動する磁場を印加することによって、これらの部材を誘導加熱することができる。2種類の金属を接合した場合には、電流の方向によって加熱および冷却を行うことができる。
【0023】
導電性部材の形状としては、線状、薄膜状、箔状、膜状、薄板状、板状、細長形状、層状等がある。導電性部材の補強のために該導電性部材を非導電性部材に接着、溶着、蒸着した物であっても良い。「電磁気的信号」とは、電流による電気的信号または磁場による磁気的信号であって、所定温度の熱や冷気を加えることによる熱力学的信号を除く。
【0024】
第4の発明は、前記反応容器は、複数の前記反応室が、所定間隔で平面状に配列して設けられた反応容器である。
【0025】
ここで、「所定間隔」とは、例えば、一定間隔でマトリクス状に配列する場合がある。反応容器は、反応室の部分と、反応室を囲む壁間を連結する部分または反応室を囲む壁を支える部分である基板、基台、支持板、支持台、または支持部をもっている。
【0026】
第5の発明は、前記反応容器には外部に設けた電磁気供給部の端子と接触することによって電気的信号を受ける接触部が設けられた反応容器である。
【0027】
ここで、接触部としては、前記導電性部材そのもの、または、導電性部材と電気的に接続した電極であっても良い。また、接触部は、前記反応容器の前記壁または該反応容器の他の部位、例えば、開口部に、外側に向かって設けられた鍔、フランジ、前記反応室が複数配列された反応容器である場合には、前記基板、基台、支持板、支持台または支持部である。接触部を設けることによって、外部端子との電気的接続と容器の支持との両方を兼ね備えることができるので、構造上、コンパクトとなりかつ扱いやすい。
【0028】
なお、前記導電部材が金属部材であって、外部に設けた電磁気供給部から時間的に変動する磁気的信号である磁力線を照射しまたは照射しないことによってその温度の上昇または下降することもできる。この場合、金属部材としては、鉄、ステンレス鋼等の鉄合金によるものがある。前記温度昇降体の温度は、磁気的信号である前記磁力線の時間的変動、または磁力線の強さに依存して変化させることができる。
【0029】
第6の発明は、前記導電性部材は、前記反応室の壁を形成し、または、前記壁を被覆し、該壁に内蔵され、若しくは該壁に付着した反応装置である。
ここで、「反応室の壁を形成し」とは、壁自体を導電性部材で形成し、「前記壁を被覆し」とは、壁面の全体を覆うように設けたものであり、「前記壁面に付着し」とは、壁面の一部に設けたものをいう。
【0030】
第7の発明は、前記壁または/および温度昇降体の全体または一部は、透光性または半透光性をもつ反応容器である。
【0031】
ここで、「一部を透光性または半透光性の反応室」としたのは、反応室内の光情報を得るためであり、例えば、リアルタイムPCRによって、蛍光等で標識化したDNA等の遺伝物質の量や濃度を測定するためである。
【0032】
ここで、「リアルタイムPCR」とは、DNAの増幅量をリアルタイムで測定しながらPCRを行う方法をいう。リアルタイムPCRは、電気泳動が不要であり、温度サイクルの途中で増幅を観測可能であること、および定量的な結果が得られるという利点をもつものである。通常蛍光試薬を用いて行う方法として、サイクリングプローブ法、インターカレータ法、TaqManプローブ法やMolecularBacon法がある。
【0033】
ここで、透光性または半透光性の素材には、ガラス、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等がある。温度昇降体を透光性または半透光性に形成するには、例えば、前記透光性または半透光性の素材に、前記導電性部材を光が透過しうる程度に薄く箔膜状に形成して、前記素材で形成した壁に貼着させまたは内蔵させることによって形成することができる。
【0034】
第8の発明は、前記反応室を囲む壁は複数の壁面を有し、該壁面の内の少なくとも1は軟質材の膜状部材で形成された反応容器である。ここで、1の壁面とは、折れ、屈曲等による非連続的な傾きをもたずに傾きが連続的に変化しまたは傾きが一定となる面、すなわち、1の平面または1の曲面である。例えば、円柱状反応室は3つの壁面、四角柱状反応室は6つの壁面をもつ。
【0035】
ここで、「軟質材」としては、例えば、ゴム、シリコーン、ポリ塩化ビニル、ビニルアセタール樹脂、ポリエチレン等がある。
【0036】
第9の発明は、前記膜状部材には、前記温度昇降体として所定電気抵抗をもつ導電性部材が被覆され、内蔵されまたは付着された反応容器である。
膜状部材が透光性または半透光性であり、かつ前記温度昇降体が透光性または半透光性であれば、光情報の測定と、温度制御とを前記壁面の同じ側で行うことができる。前記導電性部材は、例えば、薄膜状、線状、細長状、箔状、縞状若しくは樹状等の模様、薄板状、突条状、ブロック状等である。前記膜状部材を最大面積の大壁面に設けることによって、温度制御を効率良く行うことができる。
【0037】
第10の発明は、前記反応室と連通し、開口部を有し液体を貯留可能な貯留室をさらに有し、該反応室は、該貯留室よりも薄くまたは細く形成された反応容器である。
【0038】
ここで、「貯留室」は、液体を貯留することが可能な空間部分であって、該貯留室よりも薄くまたは細く形成した前記反応室への液体の導入を容易化するために設けたものである。該貯留室への液体の導入は前記開口部から、または流路を介して容易に行われる。
【0039】
前記貯留室の大きさまたは厚さは、前記貯留室への開口部からの液体の導入が基本的に重力のみで容易に行うことができるか、または開口部への回転体の装着を可能とするような大きさまたは厚さである。
【0040】
ここでの「反応室」は、気体の混入を排除した状態で液体の導入が重力のみでは容易に行うことができない程度の薄さ(細さ)である。反応室の厚さまたは太さは、例えば、0.1ミリメートル〜3ミリメートルである。それに伴って扱う液量は例えば数μリットルから300μリットルに相当する。この量に応じて、PCR法の処理時間は約数分から数10分程度に相当する。
【0041】
前記反応室の形状としては、例えば略円筒状に形成されたものがある。その場合、該反応室の側面が、両底面よりも面積が小さくかつ両底面間の高さが、前記貯留室の厚さよりも薄く形成されるようにしても良い。
【0042】
「連通」は、例えば、貯留室または外部と反応室との間について、専ら液の通過が行われる流路によって行われるようにしても良い。ここで、「流路」は、例えば、貯留室に比較して細くまたは薄く形成された部分、または、例えば、薄層化された反応室との間では、その幅が狭く形成され、または、毛細化された反応室との間では、例えば、反応室と異なる太さをもつ部分である。流路を用いて連通することによって、液の導入を確実に行うことができ、容器をコンパクトに形成し、または、反応室の密閉を容易化し、後述する回転体の回転軸線に対して、反応室を貯留室よりも遠くに位置させることが容易である。反応室に気体の混入を排除した状態で液体を導入するためには、例えば、遠心力や吸引力を利用して行う。
【0043】
前記貯留室よりも、薄いまたは細い「反応室」を設けた理由は、反応室に液体を導入することによって、液体について、少なくともその厚み方向の熱伝導時間を短縮化して、短時間に液体に熱または温度を伝えて、いち早く液温が均等となるような温度分布が達成できるようにして熱処理を効率化するためである。ここで、熱処理は、該反応室を囲む壁の全体または一部を形成する温度昇降体の温度の上昇または下降することによって行う。なお、該温度昇降体の他に、前記反応室を冷却するために、前記反応室に向かって空気を送風する送風機や、該反応室に固体または液体の冷却媒体を接触または接近させ、または、ドライヤーによって冷風を吹き付けることによって行うことができる。なお、反応室を囲む壁面の内、面積の最も大きい壁面について、または、面積の最も大きい壁面において、加熱または冷却するようにすれば、効率的に温度制御を行うことができる。なお、蛍光物質で目的物質等を標識化した場合に、その蛍光による光情報を得るためには、例えば、この大壁面に励起用光を照射して、同じ大壁面または小壁面から受光する。
【0044】
第11の発明は、前記反応室の壁は、溝または孔を有する平板状のフレームを有し、膜状部材又は薄板が、該フレームの片面側をまたは両面側を覆うように設けた反応容器である。
【0045】
ここで、「膜状部材」または「薄板」は、可撓性のある軟質材の場合と非可撓性の硬質材の場合がある。フレームを金属部材で形成して、外部からフレームに向けて前記磁力線を照射し、または照射しないことによって温度の上昇または下降を行うことも可能である。
【0046】
第12の発明は、前記反応容器の開口部に、着脱自在に接続可能なキャップを有する反応容器である。ここで、該キャップは、前記開口部を密閉することが可能なものであって、開口部とキャップとは、例えば、装着、嵌合、螺合、嵌装、嵌着、嵌挿、連結、密接、密着等の取付け、接触方法によって接続される。また、該キャップは、例えば、前記液導入装置の回転体の下端部との間で装着等により取付け可能に設けるようにしても良い。
【0047】
第13の発明は、前記反応容器は、外部に設けた液導入機構と着脱可能に接続可能な接続部を有し、該接続部を前記液導入機構に接続することによって前記反応室内に液を導入可能である反応容器である。
【0048】
ここで、「液導入機構」は、例えば、前記反応容器に装着可能な回転体および該回転体を移動する回転移動部、または、前記反応容器に接続するノズルおよび該ノズルに対して気体を吸引または吐出する吸引吐出部である。また、前記回転体が同時にノズルであっても良い。
【0049】
液導入機構は、例えば、貯留室から反応室にまたは外部から反応室に液体を導入し、または貯留室から反応室を通って外部にまたは外部から反応室を通って貯留室に液体を導入する機能をもち、前記容器と接続可能に設けられている。液体の導入には、例えば、液体に遠心力を加えることによって反応室に導入する容器の回転機構、または反応室に液体を吸引吐出することによって行う吸引吐出機構を設けたノズルを用いる。
【0050】
「接続」には、前記反応容器を液導入機構に装着し、嵌合し、嵌挿し、嵌着し、嵌装し、連結し、螺合し、密接し、または密着し、または、前記反応容器全体を液導入機構に収容しもしくは取付け、または、発明の主旨を考慮したこれらと同程度のその他の取り付け、接触または収容方法を含む。前記回転体は、前記反応容器の上側で接続される場合と、該反応容器の下側で接続される場合とがある。
【0051】
「着脱自在に接続可能」とするには、例えば、予め反応容器を配列しておいて、前記液導入機構の装着部分を移動して嵌合、螺合等によって接続し、脱着は、例えば、前記反応容器を前記接続部分からこそぎ落とすためのプレートを動かすことによって行ったり、螺合の方向と逆方向に回転することによって行う。
【0052】
第14の発明は、前記液導入機構は、回転可能な回転体を有し、該反応容器は、前記接続部において該回転体に装着可能であって、該反応容器は該回転体に装着されて該回転体とともに回転可能である反応容器。
【0053】
ここで、該反応容器は、貯留室または反応室に開口部をもつものであるから、容器としての機能を果たすには、前記液導入機構が回転体であって該容器を該回転体に装着する場合には、前記開口部から液体が外にでないように装着される必要がある。すなわち開口部が回転体やその他の蓋材で閉塞されることなく下向きや横向きに装着されることはない。したがって、開口部がキャップ等で閉塞されない場合には、開口部は容器としての使用時または回転体への装着時において液体が貯留可能なように上方に向かって開いている必要があり、該容器の回転体への装着時においては、その開口部の開いている方向と、その回転体の回転軸線とは上下方向に沿うことになる。該開口部には該開口部を閉塞するキャップを設けても良い。
【0054】
また、反応容器が該回転体に装着された際には、前記回転体の回転軸線は前記容器を貫き前記反応室は前記貯留室よりも前記回転軸線から遠くに位置するように形成されるのが好ましい。前記容器は、前記回転体によって自転可能であることになる。「回転軸線」は、具体的な回転軸とは異なり、抽象的な回転の中心ラインを意味する。なお、反応容器を前記回転体に装着した際に、該回転体の回転軸線が該容器を貫く場合には、該回転軸線に沿って容器の下方に突出する回転支持軸を、外部に設けた軸受に取り付けて、前記回転体を回転させることによって、反応容器が回転軸線に対して安定した状態で回転することができる。
【0055】
なお、「物が自転する」とは、該物を貫くような回転軸線の周りに該物が回転することをいい、その物の外部に設けた回転軸線のまわりに物が回転する公転に対する概念である。前記貯留室に貯留されていた液体は、回転体の高速回転によって、前記貯留室よりも回転軸線に対して遠い位置に装着された反応室に遠心力によって移動し、気体は液体よりも比重が小さいので、液体よりも軸心に近い方に移動し、反応室には気体が混入しない状態で液体を導入することができる。さらに前記反応室を前記貯留室の下方に置けば、重力をも利用することができるので、反応室への液体の導入がさらに容易となる。ここで、「高速回転」とは、例えば、数百rpm〜数千rpmである。
【0056】
また、前記反応室は前記貯留室よりも前記回転軸線から遠くに位置させると、例えば、図8に示すように、開口部を有する貯留室と、該貯留室と連通し該貯留室よりも薄くまたは細く形成された反応室とを有するような場合、または、上側に開口部を有する太管状の貯留室の下側から斜め下方に延びる細管状または薄層状の反応室を有するような場合がある。「遠くに位置する」については、例えば、対象となる部分の重心または中心と回転軸線との間の距離が長い方が遠いと判断する。
【0057】
「容器が回転体へ装着可能」であるので、該容器には、回転体との装着が可能な部分、接続部としては、装着部をもつことになる。該装着部は、例えば、前記開口部やその他の容器の一部または容器全体の場合がある。このような装着部自体も容器の一部または容器全体であるので、回転軸線は該容器を貫いていることになる。「装着」には、容器の一部または容器全体について、嵌合、螺合、嵌装、嵌着、嵌挿、または前記容器全体の収容、またはその他の取り付け方法を含む。前記回転体は、前記反応容器の上側で装着される場合と、該反応容器の下側で装着される場合とがある。なお、液導入機構への前記反応容器の装着は、前記キャップを介して行うようにしても良い。すなわち、前記回転体の下端部に着脱可能なキャップによって着脱自在に装着可能とするような場合がある。
【0058】
ここで、開口部と回転体とを嵌合または螺合によって装着する場合には、その開口部と回転体との装着部分の形状が合致する必要がある。例えば円筒に対しては、円筒状内面をもつ必要がある。また、開口部と回転体とを螺合により装着する場合には、前記回転体による回転方向は、前記回転体が開口部に対し螺合により前進する方向である。この場合、該開口部の軸線と回転軸線が一致することになる。
【0059】
また、該回転軸線に沿って、例えば、該容器の下側に突出する回転支持軸を設けるようにし、該回転支持軸を軸支下状態で回転すれば、回転軸がぶれない安定した回転を加えることができる。ここで、「回転支持軸」は、前記回転体の回転に伴って該反応容器の円滑な回転を可能とするように設けた軸である。該回転支持軸は、例えば、反応容器が前記貯留室の開口部で回転体に装着されるような場合には、反応容器の下方に突出するように設けたり、または、下方に突出する回転支持軸を、情報にも突出させて、該回転支持軸の上端が前記回転体に接続するように設けても良い。なお、回転支持軸も反応容器の一部であるので、この場合には、前記回転体の回転軸線は容器を貫くことになり、自転に相当する。
【0060】
前記反応容器が自転可能である場合には、大きな遠心装置によって遠心力を加える必要がなく装置規模を縮小化することができる。また、後述する回転可能なノズルを利用すれば、該容器を用いた処理を一貫して自動化することができることになる。
【0061】
前記反応容器に流路を設ける場合、例えば、前記貯留室から前記反応室に液を導入するための液導入用流路と、前記反応室から気体を排気するための排気用流路とを設け、前記液導入機構は回転可能な回転体を有し、前記反応容器は該回転体に装着可能であり、装着された際には、前記反応室が前記貯留室よりも前記回転軸線から遠くに位置するように形成され、かつ該回転体とともに回転可能であるようにしても良い。
【0062】
この場合、反応室には2本の流路が設けられているので、反応室は、液体または気体を導入または排気する2つの口部を有することになる。ここで、液導入用流路と排気用流路の2本の流路を設けた理由は、反応室に気体と混入しない状態で液体を導入するために、気体を確実にかつ効率良く除去するためである。排気用流路によって排気すべき気体は、貯留室に戻す場合と外部に排出する場合がある。これによって、液体の導入と気体の排除を迅速、効率的かつ滑らかに行うことができる。
【0063】
また、この回転体の回転軸線は、前記容器を貫く場合と、容器を貫かない場合とがありうる。容器を貫く場合には、反応容器の自転であるが、貫かない場合には反応容器は前記回転軸線の周りに公転することになる。
【0064】
前記液導入用流路が、前記排気用流路よりも、前記回転体が装着された場合の前記回転軸線から遠くに位置するように形成することによって、排気用流路は、液導入用流路よりも遠心力の影響が小さいので滑らかに排気を行うことができる。この場合、前記排気用流路の少なくとも一部が前記回転体が装着された場合の前記回転軸線に沿って設けるようにすれば、排気用流路への遠心力の影響をより小さくすることができる。なお、「装着」については、既に説明したので省略する。
【0065】
前記反応室は、例えば、略円筒状に形成され、該反応室の側面は、両底面よりも面積が小さくかつ前記貯留室よりも薄く形成される。
【0066】
第15の発明は、前記反応容器の少なくとも一部に変形可能な軟質部材を設け、前記反応室は、該軟質部材を変形することによって密閉可能である反応容器である。
【0067】
ここで、「軟質部材」とは、押圧力を加えることによって変形可能な軟質材で形成された部材である。「軟質材」とは、例えば、前述したようにゴム等の弾性体、ポリエチレンまたはシリコーン等である。軟質部材は、例えば、前記流路または反応室を囲む膜状部材、または、流路または反応室に設けた後述するブロック状部材である。
【0068】
軟質部材を変形するには、例えば、軟質材で形成した反応室または流路の壁部を押圧することによって行う。軟質部材を、ゴム等の弾性体で形成した場合には、変形を保つために、外部から該弾性体への押圧を維持する必要がある。
【0069】
なお、前記軟質部材として、押圧によって変形可能な弾性ブロック部材であって、内部に液体および気体が通過可能な空隙を有するものを設けることができる。ここで、前記「空隙」には貫通孔を含む。「弾性ブロック部材」であって内部に空隙を有するものとして、例えば、後述する弾性弁体がある。反応室を密閉するには、該弾性ブロック部材に押圧を加えつづける必要がある。
【0070】
これによって、確実かつ容易に液体を前記反応室に密封することができる。また、これによって、導入した液体を反応室内からの流出を防止するので、効率的かつ迅速な液体の導入及び液体の温度制御を図ることができる。
【0071】
第16の発明は、前記回転体は気体の吸引吐出が可能なノズルであって、該ノズルは、その軸方向にまたはそれに平行な回転軸線を有し、前記接続部は、前記貯留室または反応室の開口部である反応容器である。
【0072】
ここで、該「ノズル」は、該容器のみならず、分注チップを装着可能なように形成するのが好ましい。分注チップを介して、液体の分注移送等も行なうことができるのでより一層多様性のある処理を行うことができる。また、該ノズルは、分注装置に設けられ、当業者であれば明らかな技術によって上下移動および水平移動も可能するのが好ましい。
【0073】
この場合、流路としては、外部から前記反応室に液を導入するための液導入用流路と、前記反応室から気体を排気するための排気用流路とを設け、前記液導入用流路は、反応室から下方に延びる流路であって、該流路を細径に形成することによって、外部に設けた種々の容器に挿入可能である。また、前記排気用流路は、前記反応室と、その上方に設けた貯留室との間を連通するものであって、前記ノズルは、例えば、前記貯留室の上側の開口部に装着されるようにする。上方に前記排気用流路を介して連通することになる。
【0074】
該発明によれば、後者の組合せの場合には、前記ノズルによる流体の吸引により、前記液導入用流路を通って、前記反応室に液体を導入し、該反応室にあった気体は、前記排気用流路を介して前記貯留室を通ってノズル内に吸引されることになる。その際、前記液体の一部は前記貯留室内に吸引されても良い。
【0075】
第17の発明は、前記反応室と外部とを連通する流路を有し、前記液導入機構は、ノズルおよび該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出部を有するものであり、前記接続部は、前記反応室または該反応室と連通する貯留室の開口部であって、該開口部は前記ノズルの下端部または該ノズル下端部に装着可能なキャップを介してノズルに接続可能である反応容器である。
ここで、「接続」には、装着、嵌合、螺合、嵌装、嵌着、嵌挿、接触、または密接等の接触または取付方法がある。
【0076】
また、前記反応室は、例えば前記貯留室と上部において連通し、前記吸引吐出口は、例えば、反応室の下部において連通する流路の下端に設けるようにする。ここで、該流路を細径に形成することによって、外部に設けた種々の容器に対応することができる。貯留室の大きさは、流体の吸引によって反応室に流体を導入することができる大きさまたは前記ノズルによる吸引吐出を可能とする大きさである。これによって前記ノズルによる流体の吸引により、前記吸引吐出口から流体を前記反応室内に導入することによって行う。
【0077】
なお、該ノズルは、水平移動および上下移動が可能な分注装置に設けられているのが好ましい。これによって、種々の位置に設けた容器に前記ノズルを移動する事によってさらに種々の処理を行うことが可能となる。該ノズルは必ずしも自転を含む回転移動は可能としないが、回転移動を可能とした場合には、液体の均質化にも利することになる。
【0078】
前記貯留室と前記反応室との間は、流路を介して連通する場合、または貯留室と反応室との間で直接的に連通する場合がある。
【0079】
第18の発明は、前記反応室は、太径部、および該太径部よりも細い細径部とからなるピペットチップ内に、該ピペットチップの内面との間にスペーサを介在させて収容したコアの外面と該ピペットチップの内面との間に形成された隙間であり、前記反応室と外部とを連通する流路は、前記細径部であり、前記太径部の開口部は、前記ノズルに接続可能であり、前記ピペットチップの壁または/及び前記コアの全体または一部に前記温度昇降体が設けられた反応容器である。
【0080】
前記スペーサとしては、例えば、コアの外面から外方向に突出する複数の突部であったり、またはピペットチップの内面から内方に突出する突部である。この隙間は、前記細径部および太径部の上方と連通する必要がある。
【0081】
この場合前記液導入機構であるノズルは、回転可能であって、該ノズルはその軸方向に沿った回転軸線を有するものであっても良い。この場合、ノズルの回転によって、前記反応室への液の導入を容易化するとともに、液体の均質化をも行うことができる。
【0082】
第19の発明は、前記コアの外面には、予め定めた位置に、予め定めた種々の生体物質が、予め定めた関係で前記位置と対応付けて配列された反応容器である。
【0083】
これによって、例えば、蛍光物質等の発光物質で標識化した生体物質と結合の可能性がある種々の予め定めた生体物質を配列しておき、標識化した生体物質が懸濁する液体を前記反応室に導入して前記温度昇降体を制御して反応させ、その発光位置を測定することによって生体物質の存在、構造または性質の解析をすることが可能である。
【0084】
コアの外面に予め定めた位置に、予め定めた生体物質を配列するには、コアの外面上の予め定めた位置に直接予め定めた生体物質を固定する場合の他、紐状、糸状等の細長形状の媒体上の予め定めた位置に、予め定めた生体物質を固定したものをコアの外面に巻装することによって配列する場合がある。この場合には、媒体上への生体物質の配列し、配列した媒体をコアに巻装することによって、生体物質を容易に集積して配列することができる。また、該媒体を辿ることによって容易に発光位置等を検出することができる。なお、「位置」は、前記コア上の二次元位置座標として、または、前記媒体上の一次元位置座標として定める。
【0085】
第20の発明は、前記ノズルまたは前記貯留室と前記反応室との間、および、前記反応室と外部との間を閉塞することによって前記反応室が密閉可能である反応容器である。
【0086】
ここで、該「密閉手段」としては、例えば、前記ノズルと前記反応室との間については、前記太径部の貯留室の上部に第1のキャップを着脱自在かつ嵌挿可能に設け、該キャップ自体については、前記ノズルに着脱自在に装着可能に設ける。該太径部の上部に装着した該キャップを、さらにピペットチップの上部において下方向に移動させることによって、前記ピペットチップ内に収容したコアの上端と接触させることによって、前記反応室を上側から閉塞する。また、反応室の下側については、前記細径部の先端を第2のキャップに嵌挿させて装着することによって閉塞する。すなわち、前記ノズルの下端部によって前記第1のキャップを移動させる場合には、該ノズルの昇降移動手段および前記第2のキャップを配置した位置にまで前記ノズルを移動させる水平移動手段である。
【0087】
ノズルと前記反応室との間を閉塞するには、例えば、該太径部の貯留室の上部に第1のキャップを着脱自在に嵌挿可能に設け、該キャップ自体については、前記ノズルに着脱自在に装着可能に設ける。該太径部の上部に装着した該キャップを、さらにピペットチップの上部において下方向に移動可能とし、該キャップを下方向に移動させて、前記ピペットチップ内に収納したコアの上端と接触させることによって、前記反応室を上側から閉塞する。また、反応室の下側については、前記細径部の先端を第2のキャップに嵌挿させて装着することによって反応室を上下から閉塞する。
【0088】
一方、貯留室と反応室との間、および反応室と外部との間を閉塞するには、前記流路または反応室の一部または全部は、変形可能な軟質材で形成され、前記反応室は、該軟質材を変形することによって行う。これらのキャップ、移動手段、または、変形を行うための押圧手段が密閉手段に相当する。
【0089】
第21の発明は、1または2以上の反応容器と、前記反応容器に対して外部から温度の上昇または下降を指示する信号を発生する指示部とを有し、前記反応容器は、液体を収容可能な1または複数の反応室と、前記各反応室を囲む壁とを有し、前記壁の全体または一部は、前記指示部からの信号により温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成された反応制御装置である。
【0090】
第22の発明は、前記反応容器の前記壁は、その内壁面が反応室内に面し、その外壁面が反応室外にあって、その内外壁面間が反一体的に形成された反応制御装置である。
【0091】
第23の発明は、前記温度昇降体は所定電気抵抗をもつ導電性部材を有し、前記指示部は、前記温度昇降体に電磁気的信号を与える電磁気供給部を有する反応制御装置である。
【0092】
第24の発明は、前記反応容器は、複数の前記反応室が、所定間隔で平面状に配列して設けられた反応制御装置である。
【0093】
第25の発明は、前記電磁気供給部は、前記反応室の壁と接触し、若しくは近接し、または、前記反応室の壁に対して接離可能に設けた一または複数の端子を有する反応制御装置である。
【0094】
ここで、「端子」は、電気または電流を供給する場合と磁気または磁場を供給する場合がある。前記「電磁気供給部」は、例えば、前記反応容器を着脱自在に支持する支持部と、前記支持部に支持された状態で前記反応室の壁と接触または近接可能に設けた複数の端子と、を有するように形成する。その際、複数の反応室がその壁またはプレート状の基板を介して連結するように複数配列された反応容器の場合には、前記支持部に、前記各反応室ごとに収容可能な複数の穴部を所定間隔に設けて、該穴部に反応室を収容することで前記各穴部に設けた端子と前記反応室の壁とを接触等をするように設けても良い。
前記導電部材は金属部材であり、前記電磁気供給部は、時間的に変動する磁力線を照射しまたは照射しないことによってその温度の上昇又は下降が可能であるようにしても良い。
【0095】
第26の発明は、前記反応室を冷却するために、前記指示部からの信号に応じて前記反応室に向かって空気を送風する送風機または該反応室に接触しまたは近接する経路を通り、信号に応じて冷媒が循環する冷媒循環路をさらに設けた反応制御装置である。
【0096】
該送風機によって空気を送り込むことによって反応室の放熱を促進し、熱の制御を効率良く行うことができる。
【0097】
第27の発明は、前記導電性部材は、前記反応室の壁を形成し、または、前記壁の壁面を被覆し、該壁に内蔵され、若しくは該壁に付着した反応制御装置である。
【0098】
第28の発明は、前記壁または温度昇降体の全体または一部は、透光性または半透光性をもつ反応制御装置である。
【0099】
第29の発明は、前記反応室を囲む壁は複数の壁面を有し、該壁面の内の少なくとも1は軟質材の膜状部材で形成された反応制御装置である。
【0100】
第30の発明は、該膜状部材には、前記温度昇降体として電気抵抗性のある導電性薄膜が被覆されまたは内蔵された反応制御装置である。
【0101】
第31の発明は、前記反応容器は、前記反応室と連通し、開口部を有し液体を貯留可能な貯留室をさらに有し、該反応室は、該貯留室よりも薄くまたは細く形成された反応制御装置である。
【0102】
第32の発明は、前記反応容器の開口部に、着脱自在に接続可能なキャップを有する反応制御装置である。
【0103】
第33の発明は、前記反応容器と接続することによって前記反応室に液を導入可能な液導入機構をさらに有し、前記反応容器は、該液導入機構と接続する接続部を有する反応制御装置である。
【0104】
第34の発明は、前記液導入機構は、回転可能な回転体と、該回転体を回転駆動する回転駆動部を有し、前記反応容器の前記接続部において、該反応容器が該回転体に装着されて該回転体とともに回転可能である反応制御装置である。
【0105】
ここで、前記反応容器が貯留室を有する場合には、前記反応室は、前記貯留室よりも前記回転体の回転軸線から遠くに位置するように形成され、前記反応容器は前記回転体の回転によって回転して前記貯留室に収容された液を前記反応室に導入する。
【0106】
本装置によれば、前記反応容器の前記貯留室内にある液体に遠心力を加えて、該貯留室よりも回転軸線から遠くに位置する反応室内に、気体を混入しない状態で液体を確実に導入することができる。該反応容器は、第1の発明ないし第15の発明に係る反応容器を用いることができる。
【0107】
ここで、前記回転軸線は、該容器を貫通して自転する場合と、該容器外を通って公転する場合がある。自転する場合には、装置規模を縮小することができるとともに、ノズル自体を回転体として用いることによって、種々の処理をコンパクトな装置で行うことができる。また、公転の場合には、低い回転数で、大きな遠心力を加えることができる。
【0108】
「装着」については、第5の発明で説明した通りである。
ここで、自転を行うには、前記容器に装着された前記回転体の回転軸線は、該容器を貫くように形成される必要がある。なお、前記回転体の回転軸線は、前記貯留室の開口部を貫くようにして、該開口部に装着可能とするのが好ましい。
【0109】
これによって、開口部が回転体によって覆われるので、該開口部をキャップ等で覆うことなく、前記開口部からの液体の漏れを防止することができる。また、本来液体の導入に用いる開口部を、回転の装着にも用いているので、新たに回転体の取付部を容器に設ける必要がなく、構造が簡単化される。
【0110】
また、回転体と該反応容器との間を螺合や嵌合により確実かつ容易に装着することができ、特に螺合によって回転体を取付ける場合には、回転体の回転を利用することができるので、効率的である。
【0111】
第35の発明は、前記反応室の壁の少なくとも一部に変形可能な軟質部材を設け、反応容器の外部に、該軟質部材の所定部分を押圧することによって前記反応室を密閉する押圧部を設けた反応制御装置である。(該端子および前記押圧部は、前記反応室に対して接離可能に設けられたプレートに設けられた)
【0112】
ここで、軟質部材を設ける場所としては、前記反応室の他には、流路であっても良い。流路は例えば、前記貯留室または外部から前記反応室に液を導入するための液導入用流路と、前記反応室から気体を排気するための排気用流路とを有する。ここで、前記液導入機構は、前者の組合せの場合には、回転体であり、後者の組合せの場合には、ノズルおよび吸引吐出部である。後者の場合には、前記反応室は、例えば、前記貯留室と上部において連通し、前記液導入用流路は、反応室から下方に延びる流路であって、該流路を細径に形成することによって、外部に設けた種々の容器に挿入可能である。また、前記排気用流路は、前記反応室と、その上方に設けた貯留室との間を連通するものであって、前記ノズルは、例えば、前記貯留室の上側の開口部に装着されるようにする。上方に前記排気用流路を介して連通することになる。
【0113】
該発明によれば、後者の組合せの場合には、前記ノズルによる流体の吸引により、前記液導入用流路を通って、前記反応室に液体を導入し、該反応室にあった気体は、前記排気用流路を介して前記貯留室を通ってノズル内に吸引されることになる。その際、前記液体の一部は前記貯留室内に吸引されても良い。
【0114】
第36の発明は、前記回転体は気体の吸引吐出が可能なノズルであって、該ノズルは、その軸方向にまたはそれに平行な回転軸線を有し、前記接続部は、前記貯留室または反応室の開口部である反応制御装置である。
【0115】
ノズルが回転体を兼ねることによって、分注チップを装着して液体の吸引吐出や、懸濁液の均質化処理等の種々の多様な処理を一貫して行うことを可能にする。また、回転体は上下方向に移動可能な移動部を有する必要があるが、水平方向にも移動可能であれば、種々の位置に設けられた容器に前記回転体を移動することによって、さらに種々の処理を行うことが可能となる。
【0116】
第37の発明は、前記反応室は、太径部、および該太径部よりも細い細径部とからなるピペットチップ内に、該ピペットチップの内面との間にスペーサを介在させて収容したコアの外面と該ピペットチップの内面との間に形成された隙間であり、前記反応室と外部とを連通する流路は、前記細径部であり、前記太径部の開口部は、前記ノズルに接続可能である反応制御装置である。
【0117】
第38の発明は、前記コアの外面には、予め定めた位置に、予め定めた種々の生体物質が、予め定めた関係で前記位置と対応付けて配列された反応制御装置である。
【0118】
第39の発明は、前記ノズルまたは前記貯留室と前記反応室との間、および、前記反応室と外部との間を流体的に閉塞する密閉手段を有する反応制御装置である。
【0119】
ここで、該「密閉手段」としては、例えば、前記反応容器の前記流路または反応室の一部または全部は、変形可能な軟質部材で形成された場合には、該軟質部材を変形することによって前記反応室を密閉する押圧部であり、例えば、前記ノズルと前記反応室との間については、前記太径部の貯留室の上部に第1のキャップを着脱自在かつ嵌挿可能に設け、該キャップ自体については、前記ノズルに着脱自在に装着可能に設ける。該太径部の上部に装着した該キャップを、さらにピペットチップの上部において下方向に移動させることによって、前記ピペットチップ内に収容したコアの上端と接触させることによって、前記反応室を上側から閉塞する。また、反応室の下側については、前記細径部の先端を第2のキャップに嵌挿させて装着することによって閉塞する。すなわち、前記ノズルの下端部によって前記第1のキャップを移動させる場合には、該ノズルの昇降移動手段および前記第2のキャップを配置した位置にまで前記ノズルを移動させる水平移動手段である。また、前記押圧部としては、後述する加熱冷却用端部に設けた突部であったり、または、前記光情報測定の前記照射端部の端面に設けた突部がある。
【0120】
第40の発明は、1または2以上の前記反応室内の光情報を得る光情報測定部を有する反応制御装置である。
【0121】
ここで、前記反応室に対して加熱または冷却を行う反応室の面と、前記反応室からの光を受光する面と、反応室へ光を照射する面とは、同一の場合と異なる場合とがありうる。
前記光情報測定部は、少なくとも、前記反応室からの光を受光するための1または2以上の受光端部を前記反応室に接触させまたは接近して設ける。発光物質が蛍光物質等の場合には、蛍光を発生させるための励起用光を照射する1または2以上の照射端部を有する。
【0122】
なお、前記反応容器の反応室を円筒状に形成し、2枚の円板状の大壁と側面の小壁とで囲まれ、前記円筒の半径方向に進む光を受光する1または2以上の受光端部を設けるようにしても良い。これによって、側面に対して光を照射しまたは受光することで、均等な光情報を得ることができる。
なお、照射端面を前記反応室に設ける場合には、前記半径方向に光を照射するように設ける。
【0123】
第41の発明は、前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、前記照射端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内、少なくとも1の最大面積をもつ大壁面に接触または近接して設け、前記受光端部は、最大壁面を除いた少なくとも1の前記壁面に接触または近接して、または接離可能に設けた反応制御装置である。
【0124】
なお、前記光情報測定部は、2以上の前記反応容器の前記反応室の各照射位置に設けた2以上の照射端部と、複数種類の波長をもつ光を各々発生する複数種類の光源と、前記光源からの光の内の1種類の光を時間的に切り換えて選択して、前記各照射端部に一斉に導光する光源選択部と、2以上の前記反応容器の前記反応室の各受光位置に設けた2以上の受光端部と、該各受光端部からの光を時間的に切り換えて選択する受光位置選択部と、選択された受光位置からの光が通過すべき複数種類の光学フィルタを時間的に切り換えて選択する光学フィルタ選択部と、選択された受光位置からの光であって選択された光学フィルタを通過した光を順次入力する光電素子とを有するものであっても良い。これによって、2以上の反応容器に対して、2以上の標識物質を用いたような場合であっても、時間的に、反応室および標識物質の対象となる標識物質の種類を切り換えるようにして、少数の光電素子を用いて処理を行うことができるので、全体としての装置規模を縮小または簡単化することができる。
【0125】
ここで、複数種類の光学フィルタを設けるようにしたのは、例えば、前記反応室内のリアルタイムPCR等で、量または濃度を測定しようとするDNA断片等を標識化するために複数種類の光の波長を出力する標識物質を用いるような場合である。これによって、各波長をもつ光を、光学フィルタを透過させることによって該当する標識物質の存在またはその量を測定することができる。
【0126】
「光電素子」には、光電効果を利用した電子素子であって、光電管、光電子増倍管、光導電セル、フォトトランジスタ、フォトダイオード等を含む。
なお、光の照射は、前記反応室内に存在し得る蛍光物質等に励起用光を照射して発光させるために必要となる。
【0127】
さらに、前記光情報測定部は、2以上の前記反応容器の前記反応室の各照射位置に設けた2以上の照射端部と、複数種類の波長をもつ光を各々発生する複数種類の光源と、前記光源からの光の内の1種類の光を時間的に切り換えて選択し、選択された光を時間的に切り換えて各受光端部に導光する光源照射位置選択部と、2以上の前記反応容器の前記反応室の各受光位置に設けた2以上の受光端部と、前記受光位置からの光が通過すべき複数種類の光学フィルタを時間的に切り換えて選択する光学フィルタ選択部と、選択された光学フィルタを通過した光を順次入力する光電素子とを有するようにしても良い。これによって、2以上の反応容器に対して、2以上の標識物質を用いたような場合であっても、時間的に、反応室および標識物質の対象となる標識物質の種類を切り換えるようにして、少数の光電素子を用いて処理を行うことができるので、全体としての装置規模を縮小または簡単化することができる。
【0128】
なお、照射端部は例えばロッドレンズによって形成する。なお、ロッドレンズは、前記反応室に対して接離可能に設けるようにして、焦点距離を調節可能にして、効率の良い光の照射を行うことが可能である。
【0129】
第42の発明は、前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、前記照射端部および受光端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内の1の壁面に接触しまたは近接して、または接離可能に設けた反応制御装置である。
【0130】
第43の発明は、前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、前記光情報測定部の前記照射端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内の1の壁面であって、前記温度昇降体である導電性膜が被覆されまたは内蔵された部分に接触しまたは近接し、または接離可能に設けた反応制御装置である。
【発明の効果】
【0131】
第1の発明に係る反応容器または第21の発明に係る反応制御装置によれば、反応容器の反応室を形成する壁の全体または一部を外部からの信号に応じてその温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成している。
【0132】
したがって、反応容器の壁の外側にヒータ等の温度昇降体を設ける場合に比較して、反応室内と直接接触しているので、壁による熱の反射を防ぎ、反応室内に対して熱をより一層効率的に伝達することができ、熱効率が高く、正確な温度制御を行うことができる。
【0133】
反応室の壁を温度昇降体で形成しているので、熱効率が高く、金属ブロック等の必要以上に大きな温度昇降体を反応容器の外側に設ける必要がなく、外部には、その駆動装置を設けるだけで足りている。したがって、外部の構造が単純化され、全体の装置規模を縮小することができる。
【0134】
予め各反応容器に最適な温度昇降体を設けることができるので、外部に、種々の条件を満足する温度昇降体を設ける必要がなく、汎用性、多様性がある。
【0135】
直接温度昇降体が反応室内と接触しているので、高い精度かつ忠実な応答性をもって、該液体の温度制御を行うことができる。
【0136】
該反応容器または該反応制御装置により、前記液体に対する加熱または冷却の信号を与えてから液温が均等な温度分布になるまでの時間を短縮化して、迅速にかつ効率的に処理を行うことができる。
【0137】
第2の発明または第22の発明によれば、壁が一体的に形成され、したがって、壁の全体または一部を形成している温度昇降体も壁と一体的に設けられているので、前述した効果を奏する他、より一層熱効率が高く、温度制御を高い精度で行うことができる。また、反応容器または装置をコンパクトかつ構造を簡単化し、簡単にかつ安価に製造することができる。さらに、加熱手段の存在を意識せずに取り扱うことができるので、取り扱いやすい。
【0138】
第3の発明、第5の発明、第23の発明または第25の発明によれば、前記温度昇降体として、所定電気抵抗をもつ導電性部材を有している。したがって、電磁気供給部からの電気的または磁気的信号によって、容易、かつ確実に加熱または冷却を行うことができる。また、装置構造を簡単化し、全体として装置規模を縮小し、安価に製造することができる。
【0139】
本発明によれば、温度昇降体が前記反応容器自体に設けられているので、反応容器の形状に拘らず、接触部等の位置さえ共通すれば、種々の反応容器に使用することができるので、電磁気供給部及び反応容器の規格化を可能にする。また、導電性部材は、抵抗値および電流値を適当に設定することによって少量の材料で発熱が可能であるため、温度昇降体したがって反応容器のサイズまたは量を小さくしかつ軽量化することができる。
【0140】
反応容器が存在しないのに加熱装置だけ駆動されるような事故を未然に防止し、また、各々反応容器に応じた温度制御がされることになって、信頼性の高い反応制御を行うことができる。
【0141】
第5の発明によれば、接触部との接触によって電気的信号を供給することができるので、接触部が反応容器の支持部を兼ねることによって構造を簡単化しまた扱いやすい。また、所定の構造をもつ反応容器を所定の位置に設置して接触部と接触させることによって初めて温度制御が行われるので、より一層操作ミスや誤動作による発熱を防止しやすい。
【0142】
第4の発明または第24の発明によれば、複数の反応室が所定間隔で平面状に配列して設けている。したがって、複数の反応処理を同時に行うことができるので作業効率が高い。
【0143】
外部からの信号を同時に温度昇降体に対して与えることによって、ほぼ同一の条件で、処理を行うことができるので、複数の検体に対し、信頼性の高い並行処理を行うことが可能である。
【0144】
第26の発明によれば、反応室に温度昇降体を設ける他に、外部に送風機等の冷却装置を設けることによって、加熱のみならず冷却を確実に行うことができる。これによって、反応室を冷却する場合には、該送風機によって空気を送り込むことによって反応室の放熱を促進し、熱の制御を効率良く行うことができる。
【0145】
第6の発明または第27の発明によれば、温度昇降体として導電性部材で壁を形成し、壁に被覆しまたは内蔵等しているので、電気的な信号によって容易に温度の制御を行うことができる。また、壁自体に導電性部材を設けて発熱等を行うので効率が高い。装置全体をコンパクトに形成することができる。反応容器のみならず反応容器外においても、加熱手段の存在を意識しないで取り扱うことができるので扱いやすい。
【0146】
第7の発明または第28の発明によれば、前記壁または温度昇降体の全体または一部は、透光性または半透光性をもつように形成している。したがって、反応容器の開口部からではなく、壁を通して内部の光学的情報を得ることができるので、開口部からの処理が必要となる分注処理や装着等の接続処理を妨害することなく、反応容器の側面から反応処理の結果を確実かつ明瞭に得ることができる。
【0147】
また、リアルタイムPCR等において、反応室内の光情報を容易に得ることができる。なお、反応室が透光性または半透光性でない場合には、反応室内に、光導波路を設けるようにして光情報を得る
【0148】
第8の発明または第29の発明によれば、反応室を囲む壁の内の少なくとも1は軟質材の膜状部材で形成しているので、該膜状部材を押圧することで、反応室を密閉しやすくなる。密閉によって、液体を反応室に確実に収容し、また、温度制御を確実かつ効率的に行うことができる。また、温度の上昇や下降に伴う液体、気体の膨張収縮を吸収することによって、容器の破壊や損傷を防止することができる。
【0149】
さらに、膜状部材が、反応室と連通する流路部分を覆う場合には、該流路部分にある膜状部材を押圧することによって容易に反応室を密閉化しやすい。
【0150】
第9の発明または第30の発明によると、温度昇降体として、前記膜状部材に導電性薄膜又は導電性線状部材を用いている。これによって、温度の上昇や下降が行われる部分が軟質材の膜状部材であるので、液体、気体の膨張収縮をより一層吸収しやすくなる。また、膜状部材に温度昇降体を設けているので、硬質材に設けるよりも熱が伝導によって逃げにくいので、反応室に効率良く伝えることができる。また、膜状部材の張り合わせと温度昇降体の取り付けを同時に行うことができるので加工しやすい。ここで、温度昇降体を軟質材の膜状部材に設けることによって、押圧による反応室の密閉と、電磁気供給部による接触または近接をまとめて行うことが可能である。さらに、該膜状部材が透光性または半透光性であれば、反応室内の光情報の測定にも用いることができるので、装置構造をコンパクトに形成することができる。該膜状部材を、最大面積の第壁面に設けることによって、効率的に、一様に反応室を加熱することができる。
なお、前記膜状部材を、前記反応室を囲む壁面のうち最大面積の大壁面に設けることによって、反応室の温度の昇降制御を効率的に行うことができる。
【0151】
第10の発明または第31の発明によると、反応容器に貯留室を設け、該貯留室に液体を一時貯留可能にすることによって、それよりも薄くまたは細く形成した反応室への液体の導入を容易化することができる。また、気体または気泡の混入がない状態で薄層化または毛細化した液体を加熱または冷却することによって、加熱または冷却の信号を与えてから液温が均等に分布するまでの時間を短縮して迅速に処理を進めることができる。特に、厚み方向に沿って両側から壁に設けた前記温度昇降体を挟むようにして、前記液体を加熱しまたは冷却するようにすれば、より一層、前記液体を迅速かつ効率良く加熱または冷却することができる。前記反応容器の前記反応室を形成する温度昇降体によって加熱および冷却を行うようにしている。したがって、外部に設けた金属ブロック等を必要としないので、気体または気泡の混入がない状態で薄層化または毛細化した液体について高い精度でかつ忠実な応答性で該容器内に収容した液体の温度制御を行うことができることになる。
【0152】
第11の発明によると、溝または孔を有する平板状のフレームを片側からまたは両側から覆う軟質材の膜で形成することによって、反応容器が複雑な構造であっても、容易にかつ安価に、密閉可能な反応室を持つ反応容器を製造することができる。
【0153】
第12の発明または第32の発明によると、前記反応容器の開口部に着脱自在に接続可能なキャップを設けることによって、たとえば、前記開口部から貯留室に収容した液体が外部へ漏れることを防止することができる。さらに、該キャップに前記液導入機構のノズル等を着脱自在に装着することができる場合には、前記液体と前記ノズル等との接触をも防止することができる。
【0154】
特に、前記液導入機構が前記回転体である場合に、該回転体の下端部にそれを覆うキャップを着脱自在に設け、該キャップを介して容器の開口部が装着されるようにすれば、回転体を高速回転する場合に、液体が飛散して、回転体が直接に容器内の液体と接触することをしてクロスコンタミネーションを確実に避けることができる。また、液体の上方への飛散を防止することによって、液体を下方に押し戻しより効率的に前記反応室への液体の導入を図ることができる。
【0155】
第13の発明または第33の発明によれば、液導入機構を設けることによって、例えば、遠心力等を利用することによって、液体内から気泡や気体の混入を除去した状態で薄層化または毛細化することができる。したがって、温度制御の際には、均質な温度分布が得られ、また、高精度の光情報を測定することができる。
【0156】
また、該反応容器によれば、貯留室または外部と反応室との間を1の流路を設けることによって連通すれば、前記反応室と貯留室との間を距離的に離すことができる。したがって、遠心力に基づく場合には、導入すべき液体に大きな遠心力を加えることができる。また、吸引吐出力に基づく場合には、外部と反応室との間を細い流路を介して連通することによって、流路の先端部が種々の容器に挿入することが可能となる。また少量の液体でも吸引しやすくなり扱い易くなる。また、流路を閉塞することによって反応室を密閉しやすくできる。
【0157】
さらに反応容器を外部に設けた回転体等の液導入機構に対して着脱自在に設けることによって、反応容器を使い捨て可能に形成することができるので安価に処理を行うことができる。
【0158】
第14の発明または第34の発明によれば、液導入機構として、回転可能な回転体を設けている。
その際、反応室を該回転軸線から離してまたは貯留室よりも該回転軸線から遠くに位置するように形成することにより、反応容器が接続する回転体による回転によって、反応容器は自転または公転し、この自転または公転によって、液に遠心力を加えて、遠心分離によって、気体や気泡を除去した状態で液体または液体に懸濁する固体を前記反応室内に確実に導入することができる。
【0159】
その際、前記回転体の回転軸線は該容器を貫き、反応室は貯留室よりも該回転軸線から遠くに位置するように形成すれば、反応容器が接続する回転体による回転によって、反応容器は自転し、この自転によって、液に遠心力を加えて、遠心分離によって、気体や気泡を除去した状態で液体または液体に懸濁する固体を前記反応室内に確実に導入することができる。また、該反応容器の自転によって液を導入するので、場所をとらず、確実に導入を行うことができる。
【0160】
すなわち、容器の自転によって液体を反応室に導入することができるので、反応容器をその外部に設けた回転軸線の周りを公転させるような大きなスペースを必要とせず、基本的に1つの容器サイズの小規模な回転装置を利用して液体の導入を図ることができる。一方、なお、前記回転軸線が前記容器を貫かない場合には、公転することになる。公転を行う場合には、低い回転数で、大きな遠心力を得ることができることになる。
【0161】
なお、前記回転体の回転軸線が前記貯留室の開口部を貫くように、該開口部に装着した場合には、本来液体の導入に用いる開口部を、回転体の装着にも用いているので、新たに回転体の取付部を容器に設ける必要がなく構造が簡単化される。
【0162】
また、回転体と該反応容器との間を螺合や嵌合により確実かつ容易に装着することができ、特に螺合によって回転体を取付ける場合には、回転体の回転を利用することができるので、効率的である。
【0163】
第15の発明または第35の発明は、反応容器の少なくとも一部に変形可能な軟質部材を設けることによって、反応室を密閉可能としたものである。これによって、導入した液体の反応室からの流出を防止して液体を前記反応室に確実かつ効率的に収容し、かつ、温度制御を確実かつ効率的に行うことができる。反応室を密閉することによって、気体を排除した状態で、信頼性の高い反応およびその測定を行うことができる。また、迅速で効率的な液体の導入を図ることができる。
【0164】
第16の発明または第36の発明によると、前記回転体としてノズルを用いるようにしている。したがって、液体の反応室への導入による液体の薄層化または毛細化の他に、液体の反応容器への分注にも利用することができて多様な処理に適用することができるので種々の処理を一貫して自動化することができる。また、回転軸線がノズルの軸線と一致させれば、自転可能となり、回転半径が小さく、装置規模を抑制することができる。また、回転軸線をノズルの軸方向と平行に設けることによって、ノズルが装着される反応容器の開口部が上向きとなるので、開口部からの液体の洩れを防止することができる。
【0165】
第17の発明によると、液導入機構として前記ノズルを用いて前記吸引吐出部によって液体を反応室を通って前記貯留室にまで吸引するようにして、前記反応室に液体を導入するようにしている。したがって、気体や気泡を混入させないで液体を反応室に確実に導入することができる。この場合には、ノズルを回転する必要がないので、前記反応室へ液体を導入する機構が簡単化される。
【0166】
第18の発明または第37の発明によれば、ピペットチップにコアを収容して、コアの外面とピペットチップの内面との間に形成した隙間を反応室として用い、その反応室の上方の太径部内の空間部分を貯留室とし、貯留室すなわち太径部の開口部にノズルを装着可能としている。したがって、ノズルによって細径部から外部に設けた容器内に収容した液体を、反応室から貯留室に向けて吸引することによって、前記反応室に液体を導入することができる。
【0167】
また、該反応室内で反応によって生成した生成物を、前記ノズルから気体を吐出することによって、前記反応室から細径部を通って容器内に生成物を吐き出させて容易に生成物を得ることができる。
【0168】
第19の発明または第38の発明によれば、前記コアの外面の予め定めた位置に、予め定めた種々の生体物質を固定することによって、該生体物質と反応した標識化された目的物質の発光位置を測定することで、目的物質の解析を行うことができる。
【0169】
第20の発明または第39の発明によれば、反応室を密閉することによって、迅速かつ容易に反応室への導入した液体の反応室からの流出を防止することによって、効率的かつ迅速な液の導入を行うことができる。
【0170】
第40の発明によれば、光情報測定部を設けることによって、液の反応室への導入から、反応、測定までを一貫して自動化することができる。さらに、気体や気泡の混入がない状態で反応室内の光情報を測定するようにしているので、精度の高い光情報を得ることができる。
【0171】
第41の発明によれば、面積の最も大きな壁面に光を照射することによって、十分な光量を反応室全体に照射することができるので、効率的に光情報を得ることができる。
【0172】
第42の発明によると、反応室の1の壁面において、照射端部および受光端部を設けているので、コンパクトに構成することができると共に、部品点数を削減することができる。
【0173】
第43の発明によると、温度昇降体および照射端部を1の壁面に設けることによって、装置規模を削減し、かつ、効率的に配置することができる。
【0174】
以上、第1から第43の発明によれば、反応容器の反応室の壁に温度昇降体を形成し、該温度昇降体に外部から信号を送ることによって、簡単な構造で安価に製造することが可能で、前記液体の温度制御の精度および応答性を高め、例えば、リアルタイムPCRにおける量の測定等の処理を迅速化かつ効率化させた。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の第1の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図5】本発明の第5の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図6】本発明の第6の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図7】本発明の第7の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図8】本発明の第8の実施例に係る反応容器および装着されたキャップを示す図である。
【図9】本発明の第9の実施例に係る反応容器を示す図である。
【図10】本発明の第10の実施例に係る反応容器、装着されたキャップおよびノズルを示す図である。
【図11】図10に示した反応容器の断面図である。
【図12】本発明の第11の実施例に係る反応容器および反応測定が行われている図である。
【図13】図12に示した反応容器を他の光情報測定装置を用いて反応測定が行われている図である。
【図14】本発明の第12の実施例に係る反応容器および反応測定が行われている図である。
【図15】本発明の実施例に係る装置全体を示す図である。
【図16】本発明の実施例に係る液導入装置を示す図である。
【図17】本発明の実施例に係る光情報測定装置を示す図である。
【図18】本発明の実施例に係る光情報測定装置を示す図である。
【図19】本発明の実施例に係る回転機構を示す図である。
【図20】本発明の実施例に係る処理流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0176】
続いて、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態は特に指定のない限り本発明を制限するものと解釈してはならない。また、各実施例において同一のものは同一の符号で表わし説明を省略した。
【0177】
図1(a)から(e)は、本発明の第1の実施例に係る反応容器11および該反応容器11を収容して支持する支持台17を示す上方及び下方からの斜視図、平面図、側面断面図及び正面断面図である。図1(a)(b)において、反応容器11は、液体を収容可能で、円筒状の壁15で囲まれた反応室12を有する。また、該反応室12の上部の開口部13には、円板状のフランジ14が壁15の側方に突出するように設けられている。また、前記壁15の外側面には、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜16によって被覆され、該壁15の外側面に、該反応容器11の軸方向に沿いかつその反応容器11の底面側にまで達するような前記接触部としての2つの細膜状の電極膜16a,16bが、該反応容器11の中心軸を挟むように対向する位置で前記導電性薄膜16と電気的に接続した状態で設けられている。
【0178】
該反応容器11を支持する前記支持台17は、前記反応室12の外径よりも大きく、前記フランジ14の外径よりも小さい内径をもちかつ該反応室12の高さよりも深い長さをもつ前記反応室12を収容するための縦穴18が設けられている。該縦穴18の底部には貫通孔17a,17bが設けられている。
【0179】
図1(c)に、該反応容器11が前記支持台17に収容した状態の平面図を示し、図1(d)および図1(e)には、各々AA線視断面図およびBB線視断面図を示す。該図に示すように、該貫通孔17a,17bの上側には、前記縦穴18の該内底部から上方に突出するように端子18a,18bが設けられ、前記貫通孔17a,17bの下側を通って外部に設けた電気的信号である所定電流を供給する前記指示部または前記電磁気的供給部に相当する情報処理装置、電源回路と導線を介して接続されている。前記反応容器11の前記反応室12が該縦穴18に収容された場合には、該端子18a,18bは、前記電極膜16a,16bと接触可能である。
【0180】
図1(f)に、該反応容器11を形成する温度昇降体としての前記導電性薄膜16を模式的に表す。該導電性薄膜は、アルミ製薄膜2と、該アルミ製薄膜2に被覆された酸化アルミニウム箔3と、前記アルミ製薄膜2の反対面側を被覆したポリプロピレン被膜4とを有し、該ポリプロピレン被膜4が前記反応室12の壁15の外側面に溶着している。また、前記酸化アルミニウム箔3の外表面には、高い導電性をもつ金属膜で形成された前記電極膜16a,16bが電気的に接続して設けられている。なお、該酸化アルミニウム箔3の外表面には、温度センサの電極5が設けられている。該温度センサによって得られたデータは、図示しない指示部に相当する情報処理装置に入力して、温度制御の電気的信号である電流の大きさ、向き等の決定に用いられる。前記電極膜16a,16b間に電流を流すことによって、前記導電性薄膜16を発熱させることができる。
【0181】
図2(a)(b)(c)(d)は本発明の第2の実施例に係る反応容器21および該反応容器21を収容して支持する支持台27を示す上方および下方からの斜視図、平面図および断面図を示す。図2(a)および図2(b)において、該反応容器21は、液体を収容可能で、円筒状の壁25で囲まれた反応室22を有する。また、該反応室22の上部の開口部23には、円板状のフランジ24が壁25の側方に突出するように設けられている。また、前記壁25の外側面には、温度昇降体として、所定の抵抗値をもつ導電性薄膜26によって被覆されている。該導電性薄膜26は、その上部で前記フランジ24の下側面に設けられた円板状の電極膜26aと電気的に接続し、その下部において、前記反応容器21の外底部を被覆する電極膜26bと電気的に接続している。この電極膜26a,26bは前記接触部に相当する。該導電性薄膜26の例としては、例えば図1(f)に示した導電性薄膜を用いる。
【0182】
該反応容器21を支持する前記支持台27は、前記反応室22の外径よりも大きく、前記フランジ24の外径よりも小さい内径をもつ前記反応室22を収容する縦穴28が設けられている。また、該支持台27の外底部には、2つの貫通孔27a,27bが該支持台27の軸方向に沿って設けられている。
【0183】
図2の(c)(d)に示すように、前記貫通孔27a,27bの上側には、前記支持台27の上側から上方に突出するように設けられた棒状の端子28a,28bが設けられ、前記貫通孔27a,27bの下側を通って外部に設けた指示部または電磁気供給部である情報処理装置や電源回路と導線を介して接続されている。また、前記縦穴28の底には、ばね29で上方に付勢された端子ブロック27cが設けられ、前記反応容器21を該縦穴28に挿入した場合には、該反応容器21の外底部を被覆する前記電極膜26bと接触し、前記電極膜26aは、前記端子28a,28bと接触するように載置される。これによって前記電極膜26aと電極膜26bとの間に所定の電流を流すことによって、前記導電性薄膜26が発熱する。ここで、該電極膜26a,26bは前記接触部に相当する。
【0184】
図3(a)から(d)は、本発明の第3の実施例に係る反応容器31および支持台37を示す斜視図、平面図、側面図および断面図である。図3(a)において、反応容器31は、液体を収容可能で、略円筒状の壁35で囲まれた反応室32を有する。また、該反応室32の上部の開口部33には、円板状のフランジ34が壁35の側方に突出するように設けられている。また、該壁35の外側面には、温度昇降体として所定の抵抗値を持つ導電性薄膜36によって被覆され、該壁35の外側面に、該反応容器31の軸方向に沿い、かつ反応容器31の中心軸を挟むように対向する位置で突条が設けられ前記導電性薄膜36と電気的に接続した電極膜36a,36bによって被覆されている。これらの電極膜36a,36bが前記接触部に相当する。該導電性薄膜36としては、例えば図1(f)に示した導電性薄膜である。該電極膜36a,36bに電気的信号である所定値の電流を流すことによって導電性薄膜36の発熱が可能である。
【0185】
前記反応容器31を支持する前記支持台37は、前記反応室32の外径よりも大きく、前記フランジ34の外径よりも小さい間隔で、前記電極膜36a,36bが被覆された前記突条が挿入可能な軸方向に沿った溝37c、37dが穿設されたプレート状端子37a,37bが相互に向かい合った位置に並行に設けられている。該プレート状端子37a,37bの高さは、前記反応室32の高さと等しいかまたはやや高く設ける。
【0186】
図4には、本発明の第4の実施例に係る反応容器41および該反応容器41を支持する支持台47を示す上方および下方から見た斜視図、平面図、側面断面図である。図4(a)(b)において、前記反応容器41は、液体を収容可能で、円筒状の壁45で囲まれた複数の(この例では、4列×8行)のマトリクス状に基板44に配列して設けられた反応室42を有する。該基板44には、前記各反応室42の上部の開口部43が設けられている。また、前記壁45の外側面には、温度昇降体として所定の抵抗値をもつ導電性薄膜46によって被覆されている。すなわち、該導電性薄膜46は壁45に一体的に設けられている。該導電性薄膜46としては、例えば図1(f)に示した導電性薄膜である。
【0187】
該反応容器41を支持する支持台47は、前記反応室42が嵌合可能な大きさをもち、前記各反応室42に対応する位置に配列された複数の縦穴48(この例では、4列×8行)がマトリクス状に配列されている。該各縦穴48には、該縦穴48に嵌合した前記反応容器41の前記反応室42の壁45の外側面を被覆する導電性薄膜46と接触可能であって、その軸方向に沿って細長い膜状端子48aおよび、図4(d)に示すように前記膜状端子48aと電気的に離間した状態で設けられた他の膜状端子48bが、前記縦穴48の内壁面に設けられている。該膜状端子48a,48bが前記導電性薄膜46と接触して、端子間に前記指示部または電磁供給部である情報処理装置や電源回路からの所定電流値の電流を流すことにより発熱可能である。ここでは前記接触部は、導電性薄膜46自体である。
【0188】
図5には、本発明の第5の実施例に係る反応容器51および該反応容器51を支持する支持台57を示す上方および下方から見た斜視図、平面図、および断面図である。図5(a)(b)において、前記反応容器51は、液体を収容可能で、円筒状の壁55で囲まれた複数の(この例では、4列×8行)のマトリクス状に基板54に配列して設けられた反応室52を有する。該基板54には、前記反応室52の上部の開口部53が設けられている。また、前記壁55の外側面には、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜56によって被覆されている。すなわち、該壁55には導電性薄膜56が一体的に形成されている。また、前記反応容器51の基板54の下側(裏側)には、前記導電性薄膜56と電気的に接続した電極膜56aが被覆され、前記反応室52の外底部には、該導電性薄膜56と電気的に接続した電極膜56bが被覆されている。
【0189】
該反応容器51を支持する支持台57は、前記反応室52が挿入可能な大きさをもち、前記反応室52に対応する位置に配列された複数の縦穴58(この例では、4列×8行)がマトリクス状に配列されている。該各縦穴58には、該縦穴58に嵌合した前記反応容器51の前記電極膜56aと接触可能な膜状端子58aが、前記縦穴58の開口部に設けられ、また、該反応室52の該縦穴58への挿入の際において、前記反応室52の外底部を被覆する電極膜56bと接触可能な端子ブロック58bが該縦穴58の底に設けられている。また、該端子ブロック58bは、ばね59によって上方に付勢され、前記反応容器51の前記反応室52の電極膜56bと前記端子ブロック58bとの接続を確実にしている。前記膜状端子58aと前記端子ブロック58bは前記指示部または電磁供給部である情報処理装置や電源回路と電気的に接続され、前記電極膜56a,56bが前記接触部に相当する。
【0190】
図6には、本発明の第6の実施例に係る反応容器61および該反応容器61を支持する支持台67を示す上方および下方から見た斜視図、平面図および該断面図を示す。
【0191】
図6(a)(b)において、該反応容器61は、液体を収容可能で、円筒状の壁65で囲まれた複数の(この例では、4列×8行)のマトリクス状に基板64に配列して設けられた反応室62を有する。該基板64には、前記反応室62の上部の開口部63が設けられている。また、図6(c)に拡大して示すように、前記壁65の外側面には、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜66によって被覆されている。また、前記反応室62の前記壁65の外側面には、該反応室62の軸方向に沿いかつその反応室62の底面側にまで達するように2つの細膜状の電極膜66a,66bが、該反応室62の中心軸を挟んで対向する位置で設けられ、前記導電性薄膜66と電気的に接続している。ここで、前記電極膜66a,66bが前記接触部に相当する。
【0192】
該反応容器61を支持する前記支持台67は、前記反応室62と嵌合する大きさをもち、前記各反応室62に対応する位置に配列された複数の縦穴68(この例では、4列×8行)がマトリクス状に配列されている。また、各縦穴68に対応する前記支持台67の底面には、各々2対の貫通孔67a,67bが設けられている。
【0193】
また、図6(d)(e)(f)に示すように、前記貫通孔67a,67bの上側には、該各縦穴68の内底部から上方に突出するように端子68a,68bが設けられ、前記貫通孔67a,67bの下側を通って外部に設けた指示部または電磁気供給部である情報処理装置や電源回路と導線を介して接続されている。前記反応容器61の各反応室62が前記縦穴68に嵌合した場合には、該端子68a,68bは、前記各反応室62に設けられた前記電極膜66a,66bと接触可能である。
【0194】
さらに、図7には、本発明の第7の実施例に係る反応容器71および該反応容器71を支持する支持台77を示す上方および下方から見た斜視図、平面図及び断面図を示す。
【0195】
図7(a)(b)において、該反応容器71は、液体を収容可能で、円筒状の壁75で囲まれた複数(この例では、4列×8行)のマトリクス状に基板74に配列して設けられた反応室72を有する。該基板74には、前記反応室72の上部の開口部73が設けられている。また、前記反応容器71の外側面には、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜76によって被覆されている。また、前記反応容器71の基板74の下側(裏側)には、前記電極膜76aが、前記反応室72の外底面には電極膜76bが設けられ、各々前記導電性薄膜76と電気的に接続している。
【0196】
前記反応容器71を支持する支持台77は、前記反応室72と嵌合する大きさをもち、前記各反応室72に対応する位置に配列された複数の縦孔78(この例では、4列×8行)がマトリクス状に配列された位置決め用プレート770が、前記支持台77の両側縁から延設された両側壁によって支えられて該支持台77の上底面との間に一定間隔を開けて位置している。
【0197】
前記両側壁の上側面の4隅には、指示部または電磁気供給部である情報処理装置や電源回路と電気的に接続した4本の棒状の端子771から端子774が上方に突出するように設けられ、前記電極膜76aの4隅に張り出すように設けられた4つの接触部761から接触部764と接触可能である。
【0198】
また、前記支持台77には、前記位置決め用プレート770の各縦孔78に対応する位置に、ばね79aによって付勢され前記電源回路と電気的に接続した端子ブロック79が設けられ、該支持台77に支持された前記各反応室72の外底面にある電極膜76bと接触可能に設けられている。
【0199】
続いて、図8に基づいて、本発明の第8の実施例に係る反応容器81を説明する。図8(a)は、該反応容器81にキャップ87を装着した状値の側面図であり、図8(b)は、該キャップ87が装着された状態の反応容器81の正面図である。また、図8(c)は、図8(a)の一部拡大断面図であり、図8(d)は、前記反応容器81から前記キャップ87を脱着した状態を示す斜視図である。
【0200】
図8(a)および図8(b)に示すように、該反応容器81は、上部に開口部82aを有し、液を貯留可能な円筒状の貯留室82と、該貯留室82と液導入用流路83および排気用流路88を介して連通し該貯留室82よりも薄く形成された反応室85と、前記液導入用流路83および前記排気用流路88とを有し、前記液導入用流路83、前記排気用流路88および前記反応室85は、全体が薄板状に形成され、その全体が透光性をもつ反応部84に設けられている。前記開口部82aは、キャップ87が嵌挿されて装着可能であり、該キャップ87はさらに回転体としての後述するノズル222に螺合によって装着可能である。すなわち、該開口部82aは該キャップ87を介して該ノズル222に装着可能である。すなわち、該反応容器81は、前記反応室85に液体を導入する液導入機構として、回転体を用いて遠心力を加えて液体を導入する。
【0201】
該反応室85は、前記貯留室82の下方で、かつ、前記開口部82aまたは貯留室82の軸線に対して、貯留室82よりも各室の重心の位置座標として遠い位置に設けられている。前記開口部82aまたは貯留室82の軸線は、後述する回転体としてのノズル222に該反応容器81が装着された際には、該回転体の回転軸線と一致する。
【0202】
したがって、該回転体を回転させた場合に、前記貯留室82内の液体に遠心力が加えられ、前記回転軸線よりも遠い位置にある前記反応室85内に前記流路83を介して液体が導入され、前記反応室85内に収容されていた空気または導入された液体の一部は前記排気用流路88を介して貯留室82に戻る。該反応室85および前記液導入用流路83、および排気用流路88は、有底の溝が形成された平面状のフレーム84aに設けられ、該フレーム84aの片面側は後述する可撓性の膜状部材84dによって塞がれているとともに、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜86で被覆されている。前記液導入用流路83は、前記貯留室82のない底面に入口をもち該反応室85の上部に出口をもち、前記排気用流路88は、該反応室85の上側に入口をもち前記貯留室82の内側面に出口をもち、前記反応室85と前記貯留室82とを連通している。ここで、可撓性の膜状部材としては、例えば、押圧によって変形しやすいポリエチレンまたはシリコーン等が用いられる。
【0203】
前記液導入用流路83は、反応室85に近い下側において、幅が最も短くなり、その位置で、前記膜状部材84dの外部から押圧して該流路83を閉塞する閉塞部83aを設けている。また、図8(c)に示すように、前記排気用流路88の中間には、前記反応室85からの流路88dと連通し前記フレーム84aと膜状部材84dとの間の空間内で前記膜状部材84d方向に突出する穴部88eが前記膜状部材84dとの間に間隔88cを空けて設けられ、前記貯留室82からの流路88bと前記間隔88cをのみ通して連通している。該部分は、該膜状部材84dをその外部から押圧することによって前記排気用流路88を遮断することができる閉塞部88aに相当する。
【0204】
さらに、前記膜状部材84dの外表面に、ほぼ前記反応室85を被覆するように、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ導電性薄膜86が接着、貼着、溶着、または蒸着等で被覆されている。該導電性薄膜86の対向する2つの縁部には、電極膜86a,86bが設けられ、図示しない指示部または電磁気供給部である情報処理装置や電源回路等と電気的に接続された端子と接触可能である。該端子は前記電極膜86a,86bに対して接離可能に設けられる。該電極膜86a,86bは前記接触部に相当する。
【0205】
図8(d)に示すように、前記反応容器81は、その開口部82aにおいて、前記キャップ87と着脱自在に嵌合によって装着されている。該キャップ87は、その下端にある前記開口部82aと嵌合可能な嵌合部87cを有し、該嵌合部87cの先端近傍には、ロック用リム87eおよびOリング87dが設けられている。また、該キャップ87の上端部の開口部はノズル222に嵌合するノズル嵌合部87bである。また、キャップ87の外側面の上側には、複数条の突条87aが設けられ、後述するキャップ係合部247a,247bと係合可能であり、これによって、キャップ87の自動的な脱着が可能となる。
【0206】
なお、図8(a)において、符号84bは、回転支持軸であって、前記開口部82aの軸線に沿った位置に設けられ、前記反応容器81を回転させる際に、該回転支持軸を軸支して、回転時の芯ふれを防止して回転を円滑に行われるためのものである。符号84cは、前記フレーム84aに設けた窪みである。
【0207】
なお、図8(a)に示すように、前記反応室85は薄型の円筒状に形成され、該反応室85は、2つの底面と1つの側面に囲まれ、底面積は側面積よりも大きく形成されている。反応時においては、この膜状部材84dが形成されている大壁面の外部には、前記閉塞部83aおよび前記閉塞部88aにおいて、前記膜状部材84dの外部から押圧する移動可能な押圧部が設けられる必要があり、その反対側の壁面には、励起用の光を発生するトリガー光源からの光を照射する光ファイバの先端部またはレンズ等の照射端部が配置される。これらの押圧部および照射端部は、前記反応室85の大壁面に対して接離可能に設けられている。なお、前記閉塞部83aにおいて、弾性体で形成され、液体または気体が通過可能な孔部と、該孔部と連通する空隙とから形成し、前記空隙を押圧することによって、該空隙を塞いで、閉塞可能とする弾性弁体(例えば、図9(c)の符号95,96)を設けても良い。
【0208】
続いて、ノズルの吸引吐出によって液体を導入する部類に属する反応容器について図9乃至図11に基づいて説明する。
【0209】
図9は、第9の実施例に係る反応容器91を示すものである。図9(d)は、該反応容器91の斜視図を示すものであり、図9(a)は、その正面図、図9(b)はその断面側面図であり、図9(c)は、図9(c)で示した領域Fの拡大断面図である。
【0210】
該反応容器91は、太径の円筒状の貯留室92と、該貯留室92よりも薄く形成された両底面が菱形の角柱状の反応室93と、該反応室93の下側に設けられた前記円筒よりも細く形成された細径部94とを有するものである。
【0211】
前記貯留室92と前記反応室93との間、および前記反応室93と外部との間は、各々流路92cと細径部94とによって結ばれている。また、前記流路92cおよび細径部94には、押圧によって閉塞可能な閉塞部95,96として前記弾性弁体が設けられている。
【0212】
前記貯留室92には、図示しないノズルがその開口部92aにおいて嵌合して装着可能であり、該貯留室92の内部であって、前記ノズルの装着部分の下側に、例えば、該貯留室92を仕切るように断熱用フィルタ92bが設けられている。これによって、反応室93への加熱冷却効果を高めることができる。また、前記貯留室92の下側は、先細りに形成され流路92cと連通する。また、該貯留室92の外面には複数本の突条92dが設けられ、該突条92dにより後述するチップ除去板93aにより自動的に除去可能となる。
【0213】
前記反応室93の大壁面の一方は、押圧によって変形可能な軟質材で形成された膜97が張られ、該大壁面の他方は、前記反応容器91のフレームによって形成されるとともに、熱伝導性を高めるために、該反応室93を覆う該フレームに窪み98を設けて、肉薄状に形成している。また、該膜97の外側には、温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ菱形状の導電性薄膜100を接着、貼着、溶着、蒸着して設け、該導電性薄膜100の対向する両縁には、細長状の電極膜100a,100bを設けるようにする。これによって、前記電極膜100a,100b間に所定の電流を流すことによって発熱させて、前記反応室93内を効率的に加熱することができる。
【0214】
前記閉塞部95,96は、例えば、前述したように孔部と、押圧によって閉塞可能な空隙とを有する弾性弁体を設けても良い。
【0215】
図10は、第10の実施例に係るチップ状反応容器101あって、流体の通過可能なキャップ102、および、回転、上下動および水平動可能な反応容器液導入装置を兼ねる液導入装置250のノズル222に前記チップ状反応容器101が装着された反応容器装着部分を示す。
【0216】
図10(a)は、前記液導入装置250の反応容器装着部分の分解斜視図であり、図10(b)は、該液導入装置250の反応容器装着部分を示す。
【0217】
図10(a)に示すように、前記チップ状反応容器101は、円筒状の太径部105と、該太径部105の下側に設け、該太径部105よりも細く形成した細径部106と、前記太径部105の上側に設けられ前記太径部105よりもさらに太い外径をもち、前記キャップ102の先端部102aを嵌挿可能な開口部105aと、前記太径部105から前記細径部106にかけて、収容された円筒状のコア103とを有している。該コア103の外周面には、収容された前記太径部105または細径部106の内周面との間で隙間を形成するためのスペーサとしての複数の突起部103aが外方向に突出するように設けられている。このコア103の外周面と前記太径部105の内周面との間の前記隙間が前記反応室に相当する。また、前記太径部105の上側でコア103の上方の空間が前記貯留室に相当する。
【0218】
また、該コア103の下端は、前記細径部106の形状に合わせて先細りに形成され、該コア103の上端には、前記キャップ102の先端部102aを閉塞させて、流体の通過を不能にすることができる閉塞部103bを有する。この例では、該閉塞部103bは、前記キャップ102の先端部102aに設けた外方に拡開する孔部102f(図8参照)に対応して円錐状に形成されている。
【0219】
さらに、前記キャップ102は、全体が中空の略円筒状であって、基部102aと、該基部102aの外径よりも細く形成した外径をもつ先端部102bと、前記基部102aの外径よりも太い外径をもち前記ノズル222の先端が嵌合可能な嵌合部102eとを有している。前記先端部102bには、前記反応容器101の開口部105aの内面に密着するリム102cおよび環状の溝102dが設けられている。
【0220】
また、前記太径部105の外側面には、前記温度昇降体としての導電性薄膜105bが接着、貼着、溶着、蒸着等によって被覆されている。これによって、該太径部105内に設けた反応室を加熱可能となる。
【0221】
図10(c)(d)(e)は、チップ状反応容器101の外側面に被覆された前記温度昇降体としての導電性薄膜105bと電気的に接触して該導電性薄膜105bを発熱させるために電流を供給する情報処理装置や電源回路等と接続された端子ブロック109,110を示す。ここでは、前記接触部は、該導電性薄膜105bである。加熱冷却は、該端子ブロック109,110が設けられた領域にまで前記チップ状反応容器101を前記ノズル222に装着した状態で、前記液導入装置250を用いて移動して、前記チップ状反応容器101に対する前記液導入装置250からの脱着および装着がなされる。
【0222】
なお、該液導入装置250には、前記チップ状反応容器101をこそぎ落とすために、前記開口部105aの外径よりもやや小さくかつ、前記キャップ102の基部102aの外径よりは大きく穿設された半円状の切欠きのあるチップ除去板223aを有する。該チップ除去板223aは、上下方向の移動および前記反応容器101したがってノズル222の軸線に対し接近離間可能に設けられている。さらに、該液導入装置250には、前記キャップ102の前記嵌合部102eを上下から挟むようにして該キャップ102の前記嵌合部102eの段差部分と係合可能なキャップ係合部247a,247bが設けられている。下側の前記キャップ係合部247aは、前記キャップ102の基部102aの外径よりも大きく前記嵌合部102eの外径よりも小さい半円状の切欠きを有し、上側の前記キャップ係合部107bは、前記ノズル222の外径よりも大きく前記嵌合部102eの外径よりも小さい半円状の切欠きを有する。また、該上側のキャップ係合部247aと、下側のキャップ係合部247bの間の距離は固定され、これらのキャップ係合部247a,247bは、上下動のみならず、前記ノズル222の軸線に対して接近離間可能に設けられている。
【0223】
図10(c)は、前記キャップ係合部247a、47b、およびチップ除去板223aを、同時に下側に下げることによって、前記ノズル222から、キャップ102が装着されたチップ状反応容器101を外し、該反応容器101の太径部105が、前記端子ブロック249a,249bに挟まれた位置に支持されて、前記導電性薄膜105bに電流が供給されている状態を示している。
【0224】
図10(d)は、前記ノズル222に前記キャップ102を装着した状態で前記チップ除去板223aだけを降下させて、前記反応容器101を前記キャップ102から外した状態を表す。
【0225】
図10(e)は、前記ノズル222に前記キャップ102を介して前記反応容器101を装着した状態で、該反応容器101を前記端子ブロック249a、249bに挟まれた状態を示している。なお、前記コア103の外周面上の、予め定めた位置座標に、予め定めた種々の生体物質が、予め定めた関係で前記位置と対応付けて配列しておき、該ノズル222の吸引機能を用いて、標識化した生体物質が懸濁する溶液を前記太径部105内に導入し、前記温度昇降体によって反応を促進し、外部から標識物質の発光状態を測定することで、生体物質の存在、構造、性質の解析に用いることができる。
【0226】
図11(a)に、前記反応容器101の断面図を示すように、前記コア103の外面と前記太径部105の壁105cの内面で囲まれた隙間部101aが前記反応室に相当し、該太径部105の上側で前記コア103の上部に形成された空間部101bが前記貯留室に相当する。なお、前記導電性薄膜105bは、該壁105cの外面を被覆するように設けられている。また、前記キャップ102の先端部102bには、前記コア103の閉塞部103bによって閉塞可能な形状をもつ孔部102fが穿設されている。前記先端部102bが前記反応容器101の開口部105aに最も深く挿入した状態で、前記孔部102fは前記閉塞部103bによって閉塞される。先端部102bの内部の上側には断熱用フィルタ102gが設けられて、前記反応室からの熱がノズル222に伝達することから防止する。
【0227】
図11(b)は、前記キャップ102の前記先端部102bを前記キャップ係合部247a,247bを上方向に移動させることによって、前記キャップ102の嵌合部102eに引っ掛けて該キャップ102を上方向にやや移動させる。すると、前記孔部102fから前記コア103の閉塞部103bが外れ、前記ノズル222は、前記キャップ102の断熱用フィルタ102gを介して前記反応容器101と連通する。したがって、該反応容器101の細径部106を液が収容されている容器内に挿入し、前記キャップ102の位置が、前記孔部102fを開放した状態で該ノズル222によって気体の吸引を行うことで、液を前記反応容器101の細径部106および前記隙間部101aを通って空間部101bにまで導入する。その後、前記キャップ102の先端部102bを前記反応容器の開口部105aに最も深く挿入した状態にして、前記孔部102fを前記閉塞部103bによって閉塞するとともに、前記細径部106の先端を図示しない他のキャップに挿入して嵌合することで、前記隙間部101a内に液を密封することができる。
【0228】
続いて、図12に基づいて、第11の実施例に係る反応容器111を、液導入装置250が有する回転体としての前記ノズル222の下端部にキャップ120を介して装着して、前記液導入装置250によって、反応測定位置にまで移送された場合の光情報測定部の照射端部としてのレンズ122および励起用のトリガー光源123と、レンズ、光分配手段、フィルタ等の光学系を有する受光端部を含む受光光学系124並びに前記反応容器111に対し、前記照射端部からの光を照射させ、前記反応容器111からの光を前記受光端部へ導くためのハーフミラー121とを有する。
【0229】
図12(a)は、前記反応容器111を示す側面図であり、該反応容器111は、開口部を有し液の貯留が可能な貯留室112と、該貯留室112と連通し、前記貯留室112よりも薄く形成された略薄形の円筒状の反応室115と、前記貯留室112と前記反応室115との間を連通する導入用流路113とを有するものである。前記反応室115は、したがって、円形の2つの大面積の大底面と小面積の1つの側壁面とに囲まれることになる。前記導入用流路113および反応室115は、それらを挟むように層状に形成され、その全体が透光性の反応部114に設けられている。この例では、前記導入用流路113および反応部114は有底の平面状フレーム114aに形成され、フレーム114aの開口側には、可撓性の薄膜114bによって覆われている。また、該反応室115の2つの大底面側に、前記温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ2枚の長方形状で、前記反応室115を覆う大きさの所定抵抗値をもつ導電性薄膜116,117が接着、貼着、溶着または蒸着して設けられ、各導電性薄膜116,117の対向する2つの縁には前記接触部としての電極膜116a,116b,117a,117bが設けられている。なお、図中、符号113aは、押圧によって前記導入用流路113を閉塞することができる閉塞部である。
【0230】
図12(b)に示すように、前記導電性薄膜116,117の外部には、前記電極膜116a,116b,117a,117bと各々接触可能な端子118a,118b,119a,119bが突出して設けられるとともに、これらの端子は前記指示部または電磁気供給部としての情報処理装置や電源回路と電気的に接続されている。該反応容器111に対して接離可能に設けられた移動用プレート118,119に設けられている。また、該移動用プレート118には、前記閉塞部113aを閉塞するために、該移動用プレート118に対してさらに移動可能な押圧部118cを有している。また、前記移動用プレート119は、前記反応室115に対する光の照射および受光を可能にするために、中央部分119cが透明であり、または孔が設けられている。
【0231】
該反応容器111は、前記液導入装置250の回転体として、流体の吸引および吐出が可能であり、かつその軸心について回転可能なノズル222の下端部を覆うようにして、前記キャップ120の上側の内面が前記ノズル222の螺合部223の外面と螺合している。これによって、ノズル222が、装着される反応容器111またはその収容液との接触を防止することができる。該キャップ120の外面は螺刻されており、前記反応容器111の前記開口部の内面と螺合することによって該反応容器111が前記ノズル222に装着される。該ノズル222と連結し該ノズル222とともに回転可能に設けられたシリンダ(図示せず)は、シリンダ状部材221の内部に設けられ、該シリンダ状部材221にベアリング(図示せず)を介して回転可能に支持されている。前記ノズル222の流体吸引吐出を行うために、前記シリンダ内には、ノズル222内の圧力を調整するプランジャ(図示せず)を上下動させるロッド224を有している。該ロッド224の上端には、該ロッド224の径よりも大きな径をもつ端部224aが設けられている。回転可能な前記シリンダ内に挿入されたロッド224は、前記ノズル222またはシリンダは回転不能に設けられている。
【0232】
このように、本実施の形態にあっては、前記螺合部223と前記キャップ120との間、および該キャップ120と前記反応容器111の前記開口部との間は、螺合によって連結されている。したがって、前記回転体としての前記ノズル222の回転によって、各螺合は締まる方向に螺刻されている必要がある。
【0233】
本実施例に係る反応容器111にあっては、前記反応室115は貯留室112の下方で、該貯留室112のよりも、回転軸線、すなわち、前記開口部の軸線に対して遠い位置に設けられている。したがって、前記貯留室112に前記ノズル222の吸引吐出によって分注チップによって分注された液は、該ノズル222をその軸線の周りに回転させることによって、遠心力によって前記反応室115に導入することができる。液が該反応室115に導入されると、該反応室115内にあった空気は前記導入用流路113を通って前記貯留室112内に排気され、前記反応室115が液で満たされた場合には、前記閉塞部113aを前記押圧部118cによって押圧して反応室115を密封することになる。
【0234】
図12に示すように、温度昇降体である導電性薄膜116,117、受光端部を含む受光光学系124および照射端部であるレンズ122等は、前記反応室115の大きな面積をもつ2つの円形の大壁面に設けられている。したがって、加熱または冷却を効率的かつ迅速に行うことができるとともに、十分な励起用光を照射し、また、十分な光量を得ることができる。また、光の照射と受光とを同一の壁面で行うようにしているので、装置規模をコンパクトに形成することができる。
【0235】
図13は、前記反応容器111を他の例に係る光情報測定部に適用したものである。
該光情報測定部は、図13(a)に示すように、その受光端部として光ファイバ128の先端部128aを、円筒状の反応室115の外側面に沿って所定間隔で配置し、各先端部128aの光軸は、前記反応室115の円筒の軸線から半径方向に向かう光を受光するように定める。該光ファイバ128によって導光された光は、受光部125に入力し、各光ファイバ128ごとに設定された所定のフィルタ127を透過させ、PMT126によって増幅し電気信号に変換されて解析される。
【0236】
また、図13(b)に示すように、前記前記閉塞部113aを押圧する押圧部118cが前記移動用プレート118に設けられている。前記蛍光物質を励起する励起用光を照射する照射端部に相当するレンズ122および励起用のトリガー光源123は、前記反応室115の大きな面積をもつ2つの壁面を挟むように設けられている。この移動用プレート118およびレンズ122は、図示しない開閉機構によって前記反応室115に対して接離可能に設けられている。
【0237】
図14は、第12の実施例に係る反応容器131を示す図である。
図14(a)は、該反応容器131を示す正面図であり、該反応容器131は、開口部を有し液の貯留が可能な貯留室132と、該貯留室132と連通し、前記貯留室132よりも薄く形成された円柱状の反応室135と、前記貯留室132と前記反応室135との間を連通する導入用流路133および排気用流路139とを有する。導入用流路133は、前記貯留室132の底面と前記反応室135のやや上部とを接続するものであり、排気用流路139は、前記反応室135のやや下部から前記導入用流路133とを接続するものである。符号133a,133bは、押圧によって閉塞可能な部分を示すものであって、ここには例えば前記弾性弁体が設けられている。
【0238】
前記反応室135は、したがって、円形の2つの大面積の大底面と小面席の1つの側壁面とに囲まれていることになる。前記導入用流路133、排気用流路139、および反応室135は、それらを挟むように層状に形成され、その全体が透光性の反応部134に設けられている。
【0239】
前記光情報測定部は、図14(a)に示すように、その受光端部として、光ファイバ128の先端部128aを、円筒状の前記反応室135の外側面に沿って所定間隔で配置し、各先端部の光軸は、前記反応室135の円筒の軸線から半径方向に向かう光を受光するように定める、該光ファイバ128によって導光された光は、受光部125に入力し、各光ファイバ128ごとに設定された所定のフィルタ127を透過させ、PMT126によって増幅して電気信号に変換されて解析される。
【0240】
図14(b)に示すように、この例では、これらの前記導入用流路133、排気用流路139、および反応室135は、有底の平面状フレーム134aに形成され、フレーム135aの開口側には、可撓性の膜134bによって覆われている。また、該反応室135の一方の大底面側、すなわち前記膜134bに、前記温度昇降体としての所定の抵抗値をもつ2枚の長方形状で、前記反応室135を覆う大きさの所定抵抗値をもつ導電性薄膜136が接着、貼着、溶着または蒸着して設けられ、該導電性薄膜136の対向する2つの縁に前記接触部として電極膜136a,136bが設けられている。なお、図中、符号133aは、押圧によって前記導入用流路133を閉塞することができる閉塞部である。
【0241】
図14(b)に示すように、前記導電性薄膜136の外部には、前記電極膜136a,136bを各々接触可能な端子137a,137bが突出して設けられるとともに、これらの端子は、該反応容器131に対して接離可能に設けられた移動用プレート137に設けられている。これらの端子は、前記指示部としての情報処理装置や電源回路と電気的に接続している。また、該移動用プレート137には、前記閉塞部133a,133bを閉塞するために、該移動用プレート137に対してさらに移動可能な押圧部138a,138bを有している。該導電性薄膜136が設けられた側と反対側の前記反応室135の前記底面側には、前記光情報測定部の照射端部としてのレンズ122および励起用のトリガー光源123が設けられ、反応室135への励起用光の照射が行われる。
【0242】
なお、前記液導入装置250の回転体としてのノズル222については、図12で説明した通りなので説明を省略する。
【0243】
本実施の形態に係る反応容器131にあっては、前記反応室135は、前記貯留室132の下方で、該貯留室132よりも、回転体であるノズル222の回転軸線、すなわち、前記貯留室132の開口部の軸線に対して遠い位置に設けられている。したがって、前記貯留室132に前記ノズル222の吸引吐出によって分注チップによって分注された液は、該ノズル222をその軸線の周りに回転させることによって、遠心力によって前記導入用流路133を通って前記反応室135に導入することができる。液が反応室135に導入されると、該反応室135内にあった空気は、前記排気用流路139を通って前記貯留室132内に排気され、該反応室135が液で満たされた場合には、前記閉塞部133a,133bを前記押圧部138a,138bによって押圧して前記反応室135を密封することになる。
【0244】
次に、前記移動用プレート137を前記反応室135方向に移動させることによって、電源回路等と電気的に接続された端子137a,137bを前記導電性薄膜136の電極膜136a,136bと接触させて、前記温度昇降体としての導電性薄膜136を発熱させて、前記反応室135内の温度の昇降制御を行うことができる。
【0245】
次に反応が終了すると、前記光情報測定部の前記励起用のトリガー光源123から所定の波長をもつ光をレンズ122を用いて前記反応室135の全体に照射し、前記反応室135の外側面に所定間隔で配置された受光端部としての光ファイバの先端部128aから光を受光し、光ファイバ128二設定されたフィルタ127を介して目的とする波長の発光を受光し、前記PMT126によって増幅し電気信号に変換して解析を行う。
【0246】
図15は、本発明の実施例に係る反応測定処理システム10の全体を示す概念図である。
【0247】
該反応測定処理システム10は、前記液導入装置250と、種々の検体や試薬等に基づいて検体が含有した懸濁液を均質化、抽出、移送、薄層化等の測定準備を行う液処理領域251と、前記反応容器の反応室に密封された溶液についてリアルタイムPCRを実行するために光情報を得る反応測定領域252とを有している。
【0248】
図15または図16に示すように、前記液導入装置250は、回転体としての、回転可能な複数(この例では8連)のノズル222を有し、該ノズル222の先端よりやや上部に設けた螺合部223に種々の部材を装着して、種々の処理、例えば、液体の薄層化または毛細化、懸濁液の均質化、液体の分注、移送、夾雑物の除去、目的物質の抽出、攪拌、洗浄等を可能とする装置である。ここで、装置には、螺合、嵌合、嵌挿、収容等がある。
【0249】
該液導入装置250は、図15および図16に示すように、複数(この例では8連)の前記回転体としてのノズル222と、前記キャップ120によって覆われ、吸引吐出口が設けられた該ノズル222と、前記キャップ120を螺合により装着する前記ノズル222の下端よりやや上部に設けた螺合部223と、該ノズル222と連結したシリンダ222a内でプランジャ(図示せず)を摺動させるためのロッド224とを有する。さらに、該液導入装置250は、8連の各前記ノズル222およびシリンダ222aをその軸心について回転させるために同心に設けた各歯付プーリ253と、8連の該ノズル222およびシリンダ22aを回転させるためのモータ282と、該モータ282のモータ軸283と、8個の前記歯付プーリ253とモータ軸283とに掛け渡されたベルト284とを有する。符号285は前記ベルト284の張力調整用のローラである。ここで、図15においては、前記モータ282、モータ軸283、ベルト284、張力調整用ロータ285を省略して見やすくしている。また、図16においては、前記反応容器81等の装着は省略している。
【0250】
8本の前記ロッド224は、駆動板254の縁に設けた8個の各切欠き部に該ロッド224の径よりも大きな径をもって半径方向に突出している端部224aを掛けるようにして取り付け、該駆動板254は、ボール螺子288と螺合するナット部287と連結している。前記ロッド224は、前記シリンダ222aに設けられたばねによって常時下方向に付勢されている。そのため、前記ロッド224は、上方向に動く場合には前記ナット部287によって上げられるが、下方向に下がる場合には、該ナット部287によるのではなく前記ばね力によって下がる。該ボール螺子288は、断面コの字状の支持部材256に設けられたモータ255によって回転駆動され、これによって、前記駆動板254および8本の前記ロッド224が一斉に上下動する。
【0251】
図16において、符号223aは、装着した分注チップを除去するためのチップ除去板であり、該チップ除去板223aは、下方向に延びる支持部223bを有しボール螺子223dと螺合し、該ボール螺子223dは、モータ223eによって回転駆動される。したがって、該モータ223eの回転によって、該チップ除去板223aは、前記ノズル222に対して進退可能となる。該モータ223e、ボール螺子223d、したがって、チップ除去板223aは、筐体257内に設けたボール螺子機構によって構成された上下動機構によって上下動可能である。
【0252】
前記ボール螺子223fには、前記キャップ係合部247a,247bが設けられた係合ブロック247が螺合している。前記モータ223gの回転によって、前記チップ除去板223aに対して前記キャップ係合部247a,247bが接近しまたは離間することが可能である。
【0253】
なお、符号223cは圧力センサ接続用の流路である。
【0254】
該支持部材256は、前記筐体257内に設けたボール螺子機構によって構成された上下動機構によって、前記チップ除去板223aとは独立に上下動可能である。なお、モータ258は該ボール螺子を回転駆動するものである。該筐体257の下方には、図上左右方向に磁石289を動かして、前記ノズル222に装着した分注チップの外側からチップ内に磁場を及ぼしまたは除去するための磁石289移動用のモータ259、水平棒260、ロッド261、および磁石289からなる磁力手段を設けている。
【0255】
なお、該液導入装置250は、上側から吊り下げられるように設けられ、前記反応測定処理システム10の全域および他の必要領域を覆うように、図示しない直動機構を利用したX軸Y軸移動機構によって移動可能に設けられている。
【0256】
図15の液処理領域251は、検体が懸濁する懸濁液を収容する8連の検体収容ウェル262aを有するカートリッジ容器262と、5列×8行のウェルを有するマトリクス状容器265と、リアルタイムPCRを実行するために必要な各種試薬や物質または処理結果物を収容するための8個のカートリッジ容器270と、5列×8行の反応室52が配列された反応容器51'該反応容器51'の各反応室52を収容して支持する支持台と、8個の前記反応容器81およびキャップ87を保持する保持用ラック271とを有する。
【0257】
さらに、前記検体収容ウェル262aには各々その検体に関する情報を示すバーコード262bが付されている。該バーコード262bは、バーコードを読み取るバーコード読取部263が走査するように移動して読み取る。符号264は、該バーコード読取部263の移動機構を表す。
【0258】
前記マトリクス状容器265には、前記検体を含有する懸濁液を均質化処理した後に該液の吸引吐出によって夾雑物を除去するためのフィルタ内蔵チップ列266と、分注チップ列267と、前記検体を含有する懸濁液を回転によって均質化しかつ夾雑物を除去するためのフィルタ内蔵容器361(またはカラム連結容器)を配列した容器列と、PCRに必要な試薬を収容するウェル269とが保持されている。
【0259】
前記フィルタ内蔵チップ列266は、分注チップ列267に嵌合して使用されるものであり、フィルタが内蔵されたフィルタ室と、その内部にフィルタが内蔵され、該フィルタを通過するように液体の吸引吐出が可能である。
【0260】
本フィルタ内蔵容器361にあっては、前記ノズル222の下端部が装着可能な開口部の軸線が回転軸線となる。また、フィルタが内蔵されたフィルタ室が液体の貯留可能な貯留室よりも、軸線に対して遠くに位置し、さらに液体を最終的に収容試着脱自在に設けた収容室が該フィルタ室よりも軸線に対して遠くに位置する。したがって、前記ノズル222の回転によって、それに装着されている該フィルタ内蔵容器361が回転し、それによって、前記貯留室に収容された液は、回転によってフィルタ室を通って、収容室にまで到達する。前記フィルタ内蔵容器361は、前記貯留室、フィルタ室、および収容室を結ぶ線は、前記軸線との間で略鋭角をなす。
【0261】
また、図15に戻り、前記ノズル222に装着されたピペットチップによって、反応させようとする溶液を、前記液処理領域251の前記反応容器51'の各反応室52に8個ずつ一斉に分注する。前記反応容器51'においては、前記反応容器支持台上に載置することによって、各反応室52に設けられた導電性膜が導通して発熱状態にある。したがって、各反応液は、最終的なPCR反応をさせる前の前処理としてインキュベーションを行うことができる。
【0262】
前記反応測定領域252は、目的となる容器を前記反応室85(または、93,101a,115,135)内に導入して密封した8個の前記反応容器81(91,111,131)を温度制御および光学測定が可能なように保持するPCRユニット280に保持された前記反応容器81の反応室85を過熱または冷却するために、前記反応室85をその厚み方向に沿って、温度昇降体としての前記導電性薄膜86が設けられた側から該導電性薄膜86に接離可能に設けた移動用プレート278であって、前記接触部である前記電極膜86a,86bとの接触が可能な端子を有するとともに、前記閉塞部83aおよび閉塞部88aを押圧するために、該移動用プレート278に対して移動可能に設けた押圧部を有している。該導電性薄膜86が設けられた側と逆の側には、前記反応室85内において、標識物質として蛍光物質を用いた場合に該標識物質からの光情報を得るための励起用光の照射用光源であるトリガー光源123からの光を照射する照射端部としての光ファイバの先端部275とを有する。前記反応室85からの光を受光する受光端部276については、この例では、薄型の円筒状の前記反応室85の側面である小面積に複数の光ファイバ277の先端部279を複数配列して設け、各先端部279の光軸は、該反応室85の軸線を通るように設定し、該各光ファイバ(279)で受光し、該光ファイバ277を介して受光した光を所定のフィルタを透過させて、各々該当する波長について、電気信号に変換する光電子増倍管126を設けている。
【0263】
前記反応容器81は、その開口部82aが前記キャップ87で覆われた状態で、さらに前記ノズル222に装着され、図15に示す前記PCRユニット280のスリット280bに各々挿入され、前記液導入装置250の前記ノズル222に支えられた状態で、前記反応部84は、該PCRユニット280のスリット280bに差し込まれる。前記PCRユニット280の下方には、その反応部84の厚み方向(前記反応室85の円形面の法線方向)に沿って、その一方の壁面側、すなわち膜84dが設けられた壁面側は、前記導電性薄膜86の電極膜86a,86bに接触可能なように対応する位置に設けた2つの端子および前記閉塞部83a,88aを押圧可能なように前記閉塞部83a,88aに対して進退可能な押圧部を有し、前記反応部84に対して移動可能に設け、断熱効果を有する移動用プレート278を有する。また、他方の壁面側には、前記照射端部である光ファイバ274の先端部275が前記反応部84に対して移動可能に設けられている。該光ファイバ274はトリガー光源123と光学的に接続している。
【0264】
前記移動用プレート278、該移動用プレート278に対してさらに移動可能に設けた押圧部、および前記光ファイバの先端部275は、開閉機構281によって前記反応部84に対して一斉にまたは個々に移動可能に設けられている。該反応部84の前記前記膜84dが設けられた側面側にある前記移動用プレート278に設けられた押圧部は、縦板状の該移動用プレート278の板面の法線方向に突出して設けられるとともに、該移動用プレートに対して該押圧部のみの移動が可能である。また、前記PCRユニット280には、その外部に送風機280cを有する。該送風機280cは、前記8連の反応容器81が配列されている方向に沿って空気を送風することが可能である。例えば、前記温度制御体である導電性薄膜86と前記移動用プレート278に設けた端子との接触を止めて、断熱効果をもつ移動用プレート278と反応部84との間を離間した際に、前記8連の反応容器81が配列されている方向に沿って空気を送風して、前記反応室85の放熱を促進させる。これによって温度制御を効率良く行うことができる。
【0265】
なお、前記温度昇降体の導電性薄膜86の温度制御のための電流の大きさ、前記移動用プレート278の移動またはその位置、前記送風機280cによる送風のタイミング、強さ、押圧部の押圧のタイミング、時間等については、CPU、キーボード、スイッチ、マウス、通信装置等の入力装置、表示装置、またはCD、DVDドライバ、プリンタ等の出力装置を含む周辺機器等を有する図示しない前記情報処理装置を設け、前記入力装置からの信号の入力または該情報処理装置に導入したプログラム制御によって行う。
【0266】
また、前記反応測定領域252に設けられたPCRユニットまたは光情報測定部としては、前記反応室の目的物質の量を測定するために種々の蛍光物質で標識化した場合を想定したとしても、前述したように前記反応容器81に適した前述したようなものの他に、図12乃至図14で説明したようなPCRユニットまたは光情報測定部がある。
【0267】
例えば、図12(b)に示すように、該光情報測定部としては、8個の前記反応部114に照射するために照射端部としてのレンズ122と、励起用光を照射するためのトリガー光源123を有する場合がある。この例では、図12(b)に示すように、前記反応室115内における発光は、ハーフミラー121によって、所定の複数の照射位置と同一の複数の受光位置から受光し、受光光学系に入力させ、最終的にPMT(光電子増倍管)に所定のフィルタを透過させて入力させるようにする。この場合PCRユニットにおいては、その両側に移動用プレート118,119が設けられ一方の移動用プレート119には前記光情報測定のための中央部分119cを有している。また、移動用プレート118には、2つの端子118a,118bと1つの押圧部118cとを有し、移動用プレート119には、2つの端子119a,119bを有している。
【0268】
または、図13に示すように、前記光情報測定部としては、8個の前記反応容器111に照射するために照射端部としてのレンズ122と、前記励起用光を照射するためのトリガー光源123を有し、反応室115内における発光は、前記薄型円筒状の反応室115の小面積の側面に近接して設けた複数の光ファイバ128の先端部128aで受光し、受光部125において、各光ファイバ128ごとに設けた所定のフィルタ127を透過した光をPMT126によって電気信号に変換して解析を行う。その際前記各先端部128aの光軸は、前記円筒の軸線を通るように設定する。この場合の移動用プレート118は、1の押圧部118cと2つの端子118a,118bをもつ。
【0269】
さらには、図14に示すように、前記光情報測定部としては、8個の前記反応容器131に照射するための照射端部としてのレンズ122と、前記励起用光を照射するためのトリガー光源123とを有し、反応室135内における発光は、前記薄型円筒状の反応室135の小面積の側面に近接して設けた複数の光ファイバ128の先端部128aで受光する。この場合の移動用プレート138は、2の押圧部118cと2つの端子118a,118bとを有する。
【0270】
図17は、前記トリガー光源123と、前記受光部125とについて、具体例を示したものである。前記トリガー光源123は、8個の各反応部84の各照射端部にまで延びる光ファイバ274の束を支持する回転板303と、該光ファイバ274の束に対応する位置に穿設された孔に光学レンズ305が嵌め込まれた回転板304と、複数種類(この例では4種類)の波長をもつレーザ光を発する各レーザ光源(図示せず)からのレーザ光を導光する光ファイバ307が、前記光学レンズ305の走行経路に沿った円周上に等間隔に配列された支持板306と、前記回転板303および回転板304を連結した応対で回転可能に支持する一方、前記支持板306については回転不能となるように支持する軸308とを有している。該トリガー光源123によれば、複数種類の波長をもつレーザ光を生成する4種類の光源からの光を時間的に切り換えて、一斉に前記照射端部において、8個の各反応室85に一斉に光を照射することができる。該トリガー光源123は、前記光源選択部を有することになる。
【0271】
前記受光部125は、8個の前記反応室85の各受光端部にまで延びる8本の光ファイバ277を所定間隔で配列するように支持した支持板309と、該支持板309の前記各光ファイバ277の配列位置に対応する円周上で、前記光ファイバ277の径に対応する面積を持つ孔311が穿設された回転板310と、該回転板310と独立に回転可能に設けられ、複数種類(この例では4種類)の光学フィルタ313が配列された回転板312と、前記支持板309については回転不能に、前記回転板310および回転板312については独立に回転可能に支持する軸314とを有する。この受光部125は、受光位置選択部と光学フィルタ選択部とに相当する。
【0272】
本実施の形態に係る光情報測定部によれば、トリガー光源123は、前記回転板303と回転板304とを連結した状態で、所定角度ずつ回転することによって、4種類の光源を、一定時間おきに断続的に回転させることで8連の各反応容器の各反応室85に一斉に1種類ごと照射する。すると、各反応容器81の反応室85で励起された蛍光は、各反応室85の狭い面積の壁部にその受光端部276から前記受光部125に光ファイバ277を介して導光される。すると、回転板310が、前記1種類の励起光が照射されている間の蛍光の持続時間内に、前記回転板310を断続的に1周回転させることによって順次8連の反応容器81の各反応室からの光を回転板312に導き、さらに1の反応容器81からの蛍光を受光している間に、前記回転板312を1周回転させることによって、4種類の光学フィルタ313を順次通過させて、PMT126に光を導入させる。この動作を4種類の励起光について順次行う。
【0273】
図18は、他の実施の形態に係るトリガー光源333および受光部335を示すものである。
前記トリガー光源333は、8個の前記反応部84の照射端部としての光ファイバの先端部275にまで延びる8本の光ファイバ274を所定間隔に配列するように支持した支持板317と、該支持板317の前記各光ファイバ274の配列位置に対応する円周上で、前記光ファイバ274の径に対応する面積をもつ孔319が穿設された回転板318と、該回転板318と独立に回転可能に設けられ複数種類(この例では4種類)の光源からの光ファイバ321が所定間隔に配列された支持板320と、該支持板317については回転不能に、前記回転板318については回転可能に支持する軸322とを有する。該トリガー光源333は、前記光源照射位置選択部を有することになる。
【0274】
また、前記受光部335は、8個の前記反応室85の各受光端部276から延びる8本の光ファイバ277を束にして支持する支持板323と、該支持板323の前記各光ファイバ277の束に対応する位置および大きさを持つ複数(この例では4個)の穴を穿設して4種類の光学フィルタ325について回転可能に支持する軸326とを有している。したがって、該受光部335は、前記光学フィルタ選択部を有していることになる。
【0275】
本実施の形態に係る光情報測定部によれば、4種類の光源からの蛍光発光のための励起光を前記回転板318を断続的に1周回転させることによって、該回転板318に設けた孔319を通って8連の各反応容器81の各反応室85に励起光を光ファイバ274を通って導光する。すると、該励起光が照射された各反応室85において励起された蛍光は、光ファイバ277を介して受光部335に導光される。1の反応室85からの蛍光が持続する時間の間に、前記回転板324を順次回転させることによって、4種類の光学フィルタ325を順次通過させて光電子増倍管126に導入させる。
【0276】
再び、図15に戻り、前記反応測定領域252には、さらに、前記反応容器81を収容することによって、該反応容器81を収容して回転させる前記回転体に相当する8連の容器収容部344が設けられた液導入用回転収容装置300を有する。該液導入用回転収容装置300は、8連の容器収容部344が収容されている筐体301と、該筐体301の上部に穿設された、回転すべき反応容器81を前記容器収容部に収容するための孔部302および、反応容器81の反応部84等の突出部分を容易に収容させるためのスリット部343を有する。
【0277】
図19(a)は、前記筐体301内に設けられている8連の容器収容部344の平面図を示す。該容器収容部344には、凹部345が設けられ、収容されるべき前記反応容器81の反応部84が挿入される部分である。
【0278】
図19(b)は、概念的に表した前記反応容器81を収容した前記容器収容部344の正面断面図を示す。図19(c)は、前記液導入用回転収容装置300の筐体301およびそこに設けられている容器収容部344の断面側面図を示す。
【0279】
該容器収容部344は、前記反応容器81を収容した状態で、回転させるものである。容器収容部344の回転軸線は、収容された容器を貫くように設けられている。本実施の形態によれば、前記液導入装置250の他に該液導入用回転収容装置300を設けているので、効率良く処理を行うことができる。
【0280】
続いて、以上説明した反応測定処理システム10を用いた処理の流れについて、図15および処理の流れを概念的に示した図20に基づいて説明する。
【0281】
ここでは、所定の検体に含まれるDNA量を測定するために、リアルタイムPCR法を用いて測定する場合について説明する。リアルタイムPCRは、核酸プローブを用いた核酸の濃度を測定する方法である。その方法は、例えば、蛍光色素で標識化された核酸プローブが、目的核酸にハイブリダイズした際に、蛍光色素が結合した部分の塩基の種類および塩基配列に依存した程度で、蛍光色素の発光が減少するという現象、または、核酸プローブを目的核酸から除去することによって発光強度が増大するという現象(発光消光現象)を利用したり、または二本鎖DNAに挿入されることで蛍光を発する試薬を反応系に加え、増幅に伴う蛍光を検出する方法を利用し、その蛍光強度を検出することで定量を行う方法(インターカレータ法)を用いる。
【0282】
前記反応測定処理システム10の前記カートリッジ容器62には、予め8個の患者等から得た皮膚等の生体組織が懸濁する懸濁液からなる検体が収容されている。また、ウェル69、カートリッジ容器70には、例えば、PCRに必要な試薬、DNAポリメラーゼ、反応バッファ液、蛍光試薬、プライマー、その他の試薬等が予め収容されている。前記液導入装置250の前記ノズル222を、図示しない昇降機構によって、図示しないチップラックに保持された8本の分注チップに対して押し下げることによって8本の分注チップを一斉に嵌合によって装着して、前記カートリッジ容器262に収容されている前記検体について一斉に吸引吐出を繰り返すことによって、前記懸濁液に含有する固形物である生体組織をその細胞レベルにまで破砕または均質化する。次に、該液導入装置50を移動して、該分注チップ内に該懸濁液を吸引した状態で、8本の前記フィルタ内蔵容器361が収容されている位置、すなわち、マトリクス状容器265の図上の左から3列目の位置にまで移動し、該分注チップに収容されている懸濁液を、8本の該フィルタ内蔵容器361の各貯留室内に吐出する。
【0283】
前記貯留室の開口部に前記ノズル222の下端部を挿入させて装着する。この状態で、該フィルタ内蔵容器361を、前記マトリクス状容器265の上方にまで持ち上げ、8連の前記ノズル222を一斉に回転させることによって各フィルタ内蔵容器361をノズル222と共に一斉に回転させる。すると、該フィルタ内蔵容器361の前記貯留室に収容された均質化された前記懸濁液は、回転による遠心力によって、前記貯留室から前記フィルタ室内にあるフィルタを通過して収容室にまで移動する。このフィルタによって、前記夾雑物が捕獲され、夾雑物のない目的DNAを含有する溶液が前記収容室内に得られる。該フィルタ内蔵容器361の前記フィルタ室から前記収容室を取り外し、分注チップを装着して、該溶液を吸引し、該目的DNAを含有する溶液は、例えば、マトリクス状容器265のウェル269の1に各列ごとに収容しておく。次に、処理目的に応じた、必要な試薬、例えば、検体か蛍光物質で標識化したプローブ、ライゲーション反応用試薬等が収容されたカートリッジ容器270の所定ウェル270aから試薬を吸引して、前記ウェル269に吐出して必要な試薬と混合した溶液を生成する。その際、必要であれば、例えば前記蛍光物質で標識化するためのプローブを目的DNAと結合させるためのインキュベーションを行うために、装着した分注チップで前記ウェル269内の溶液を吸引して前記反応容器51'の所定の反応室52に吐出して収容し、図示しない指示部からの信号によって設定された温度に前記反応室52を被覆した導電性薄膜に電流を流すことで発熱させることで維持する。
【0284】
次に、前記液導入装置250のノズルヘッドを移動させて図示しないチップラックにまで8連の前記ノズル222を移動し、該ノズル222の昇降機構を操作して、該チップラックに保持されている8本の未使用の分注チップ350にノズル222を挿入して嵌合させて装着する。次に、該分注チップ350を前記8個のウェル269にまで移動し、該ウェル269内に収容された各前記溶液360を、未使用の8連の分注チップ350内に一斉に吸引する。そして、図20(a)に概念的に示すように、前記保持用ラック271に保持されている8個の前記反応容器351にまで移送され、その各貯留室352内に前記溶液360を吐出する。吐出後、8個の該分注チップ350は、前記チップ除去板223aによって該液導入装置250の前記ノズル222から除去されて廃棄される。
【0285】
次に、該液導入装置250は、8個のキャップ120が収容されている保持用ラック271の位置にまで移動し、8個の該キャップ120内に前記ノズル222を一斉に挿入し、該ノズル222を回転させることで、8個のキャップ120を前記各螺合部223において装着する。
【0286】
次に、図20(b)に示すように、該液導入装置250のノズルヘッドを該保持用ラック271の前記反応容器351が保持されている位置にまで移動し、該ノズル222に装着された該キャップ120を該溶液360が収容された各反応容器351の前記開口部352aおよび貯留室352内に挿入し、前記ノズル222を一斉に回転させることによって、前記反応容器351をキャップ120に螺合によって装着させる。次に、該反応容器351を前記保持用ラック271の上方に引き上げた後、前記キャップ120および前記開口部352aでの螺合のための回転と同じ回転方向で該ノズル222、したがって、該ノズル222に装着された前記反応容器351を一斉に高速回転する。なお、該反応容器351は、前記保持用ラック271に収容された状態では、その反応室355は、該保持用ラック271に設けたスリット状の空間に各々挿入した状態で保持されているので、ノズル222の回転中に、該反応容器351が回転することはない。
【0287】
すると、図20(c)に示すように、前記各貯留室352内に収容されていた前記溶液360は、導入用流路353を通って前記反応室355に遠心力で移動し該反応室355内に導入される。その際前記反応室355にあった空気は排気用流路358を通って貯留室352に排気される。
【0288】
前記溶液が前記反応室355に導入された反応容器351は、前記キャップ120をした状態で、PCRユニット280にまで前記液導入装置250によって移送され、該PCRユニット280の前記孔280aとスリット280bの部分で支持されるように保持される。
【0289】
図20(d)(e)に示すように、前記移動用プレートを、前記開閉機構281により、前記反応室355に接近させ、該移動用プレートに対して移動可能に設けられた前記押圧部を、該当する各閉鎖部353a、358aに大使、前記開閉機構281により接近させて押し当て前記閉鎖部を変形させて、前記反応室355内を一斉に密封状態とする。その際前記移動用プレートの接近側の面は、前記反応部354を形成するフレーム354aの開口側に設けた可撓性の膜354bの外側に接着、貼着、溶着または蒸着された前記温度昇降体としての導電性薄膜356側である。
【0290】
次に、該移動用プレートに設けられている電源回路等と電気的に接続された端子を前記反応部354の電極膜に対し前記開閉機構281により一斉に移動させて接触させる。これによって、該導電性薄膜356に前記指示部または電磁気供給部である情報処理装置や電源回路からの電気的信号である所定電流を流し、発熱させる。前記電流の大きさを加減することによって、PCR法に基づき温度制御を行う。
【0291】
その際、本実施の形態では、前記温度昇降体である導電性薄膜356が直接各反応室355に設けられているので、温度変化に対して忠実な応答性と高い効率をもつPCR用容器を提供することができることになる。
【0292】
このPCRの増幅工程中において、例えば、図17に示すように、該各反応室355内で用いた標識物質である蛍光物質を励起する励起用光を前記トリガー光源123において、前記回転板304で選択した波長の光源からの光を、光ファイバ274を通って各照射端部であるレンズ122において、前記各反応室355中に一斉に照射する。その際、前記受光部125では、8個の反応室355について、各受光位置にある受光端部276で受光した発光を前記回転板310によって順次選択し、該回転板310の断続的な回転において1の受光端部276からの受光を選択する時間内において、前記回転板312を1周、順次断続的に回転させて、該当する光学フィルタ313が選択された場合に前記PMT126に入力した光についてのデータを得る。以上の動作を4種類の全ての光の波長について、全反応室355から受光した光を電気信号に変えて測定する。これによって、リアルタイムで、蛍光物質の発光強度の様子を測定して、その対象となるDNA量を測定することができる。
【0293】
また、前記移動用プレートを前記反応室355から離間させて、前記反応室355を冷却する場合には、前記送風機280cにより一斉に各反応容器351に冷風を浴びせることによって効率的に反応室355から放熱させることができる。
【0294】
本実施の形態によれば、検体を含有する懸濁液を均質化し、均質化した懸濁液から目的のDNAを含有する溶液を抽出し、該DNAに各種試薬を混合した溶液を薄層化し、薄層化した溶液について正確で応答性の高い温度制御を行いながら光情報を得るまでの作業を、コンパクトな装置で効率良く一貫して自動的に行うことができる。
【0295】
以上の説明では、導電性薄膜として、図1(f)に示すような酸化アルミニウム箔をアルミニウム薄膜に被覆した物を用いているが、該場合に限られることなく、例えば、酸化スズ等の種々の導電性薄膜を用いることができる。液導入機構として、前記液導入装置250について、回転体としてのノズル222に反応容器を装着することによって前記貯留室に収容された液を反応室に導入するようにしたが、これに限られることなく、液導入機構として、前記液導入用回転収容装置300の前記容器収容部344内に、前記反応容器351を前記液導入装置250のノズル222に装着させ、該反応容器351を前記液導入用回転収容装置300の各容器収容部344内に収容して、回転させることよって行うようにしても良い。特に、前記反応容器351内に収容する溶液を生成するについては、該液導入用回転収容装置300を用いることで前記液導入装置250の動きが簡単化される。
【0296】
前記反応容器として、前記チップ状反応容器101を前記液導入装置250のノズル222に前記キャップ102を介して装着することによって、回転体としてではなく、該ノズル222の吸引吐出機能を用いて反応室としての前記隙間部101aに液を導入するようにしても良い。
【0297】
この場合には、前記隙間部101aに導入された液は、該隙間部101aを密閉して反応後、前記キャップ係合部247a,247bを前記チップ除去板223aに対してやや上方に移動させることによって前記孔部102fを開放することによって、前記ノズル222と前記隙間部101aとを連通させ、密封状態を解除して、前記ノズル222に対して前記細径部106を通って吐出することによって生産物を回収することができる。
【0298】
以上の実施の形態は、本発明をより良く理解させるために具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、前記光情報測定装置については、前述したように光を時間的に切り換えて選択するのではなく、ハーフミラー、ミラー、光学フィルタ等の光学系を用いて光を分配するようにしても良い。
【0299】
さらに、各種の機構についても上述のものに限られず、例えば、ノズルの回転機構としては、ベルト機構の代わりに歯車機構を用いることも可能である。また、例えば、本発明者によってなされた国際公開番号WO02/063300で開示された回転機構を用いることも可能である。
【0300】
前記反応容器の形状は以上説明したものに限られず、貯留室部分が円筒状でなくても、角柱状、球状であっても良い。また、前記キャップを介在させてノズルに装着する例を説明したが、該キャップを介在させずに、直接ノズルに装着するようにしても良い。前記液導入装置250のノズルの回転機構や吸引吐出機構、ノズルの数や各種容器の個数についても以上の説明に限定されるものではない。ノズルや容器の個数は1個の場合または8個以外の個数であっても良い。また、前記フィルタは懸濁液中の夾雑物を除去するために用いたが、目的物質を捕獲するために用いても良い。
回転支持軸については、図8に示すような貯留室82の開口部82aの軸線に沿って設ける場合のみならず、該開口部82aの軸線と平行に設けるようにしても良い。この回転支持軸は、容器の一部であるので、この場合の容器の回転支持軸の周りの回転も容器の自転に相当する。
【0301】
また、以上の説明では、図17の光情報測定部を用いて説明したが、図18の光情報測定部を用いても良い。また、導電性薄膜は、前記反応室の片側に設けるようにしたが両側に設けるようにしても良い。さらに、冷却部として、送風機の代わりに冷媒を流路を通して流すようにしたものを用いても良い。さらに、以上の説明では、主として液体の薄層化についての実施例を挙げたが、液体の毛細化を行うこともできる。
【0302】
また、以上の各反応容器、温度昇降体、貯留室、反応室、流路、反応部、回転支持軸、導電性薄膜、膜、フレーム、電極膜、接触部、壁、分注チップ、光測定部、キャップ、各種容器、試薬、ノズル、加熱冷却部等の部品、液導入機構、各種機構は、適当に変形しながら任意に組み合わせることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0303】
本発明に係る反応容器、および反応制御装置に関する。本発明は、例えば、主としてDNA、RNA、mRNA、rRNA、tRNA、プラスミド等の生体物質、特に遺伝物質に関する処埋、検査、解析が要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、薬品分野、衛生、保健、疾病、遺伝等の医療分野、生化学もしくは生物学等の埋学分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、PCR、リアルタイムPCR等の種々のDNAを扱う解析や検査に用いることができる。
【符号の説明】
【0304】
10 反応測定処理システム
11,21,31,41,51,61,71,81,91,101,111,131,351 反応容器
12,22,32,42,52,62,72,85,93,101a,115,135,335 反応室
16,26,36,46,56,66,76,86,100,105b、116,136,356 導電性薄膜(温度昇降体)
15,25,35,45,55,65,75,105c 壁
16a,16b,26a,26b,36a,36b,56a,56b,66a,66b,76a,761,762,763,86a,86b,100a,100b,105b,116a,116b,117a,117b,136a,136b 電極膜(接触部)
18a,18b,28a,28b,37a,37b,48a,48b,58a,68a,68b,771,772,773,774,118a,118b,119a,119b,137a,137b 端子
27c,58b,79,109,110,249a,249b 端子ブロック(端子)
37a,37b プレート状端子(端子)
48a,48b,58a,58b 膜状端子(端子)
18,57,84d,97,114b,134b 膜(膜状部材)
87,102,120 キャップ
123 トリガー光源
125 受光部
126 PMT(光電子倍増管)
222 ノズル(回転体)
250 液導入装置(液導入機構)
251 液処理領域
252 反応測定領域
300 液導入用回転収容装置(液導入機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容可能な1または複数の反応室と、
前記各反応室を囲む壁とを有し、
前記各反応室の壁の全体または一部は、外部からの信号に応じてその温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成された反応容器。
【請求項2】
前記壁は、その内壁面が反応室内に面し、その外壁面が反応室外にあって、その内外壁面間が一体的に形成された請求の範囲第1項に記載の反応容器。
【請求項3】
前記温度昇降体は所定電気抵抗をもつ導電性部材を有し、前記信号は電磁気的信号である請求の範囲第1項または請求の範囲第2項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項4】
前記反応容器は、複数の前記反応室が、所定間隔で平面状に配列して設けられた請求の範囲第1項乃至請求の範囲第3項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項5】
前記反応容器には外部に設けた電磁気供給部の端子と接触することによって電気的信号を受ける接触部が設けられた請求の範囲第1項乃至請求の範囲第4項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項6】
前記導電性部材は、前記反応室の壁を形成し、または、前記壁を被覆し、該壁に内蔵され、若しくは該壁に付着した請求の範囲第3項乃至請求の範囲第5項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項7】
前記壁または/および温度昇降体の全体または一部は、透光性または半透光性をもつ請求の範囲第1項乃至請求の範囲第6項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項8】
前記反応室を囲む壁は複数の壁面を有し、該壁面の内の少なくとも1は軟質材の膜状部材で形成された請求の範囲第1項乃至請求の範囲第7項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項9】
前記膜状部材には、前記温度昇降体として所定電気抵抗値をもつ導電性部材が被覆され、内蔵されまたは付着した請求の範囲第8項に記載の反応容器。
【請求項10】
前記反応室と連通し、開口部を有し液体を貯留可能な貯留室をさらに有し、該反応室は、該貯留室よりも薄くまたは細く形成された請求の範囲第1項乃至請求の範囲第9項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項11】
前記反応室の前記壁は、溝または孔を有する平板状のフレームを有し、膜状部材または薄板が、該フレームの片面側または両面側を覆うように設けた請求の範囲第1項乃至請求の範囲第10項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項12】
前記反応容器の開口部に、着脱自在に接続可能なキャップを有する請求の範囲第1項乃至請求の範囲第11項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項13】
前記反応容器は、外部に設けた液導入機構と接続可能な接続部を有し、該接続部を前記液導入機構に接続することによって前記反応室内に液を導入可能である請求の範囲第1項乃至請求の範囲第11項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項14】
前記液導入機構は、回転可能な回転体を有し、前記反応容器は、前記接続部において該回転体に装着可能であって、該反応容器は該回転体に装着されて該回転体とともに回転可能である請求の範囲第13項に記載の反応容器。
【請求項15】
前記反応容器の少なくとも一部に変形可能な軟質部材を設け、前記反応室は、該軟質部材を変形することによって密閉可能である請求の範囲第1項乃至請求の範囲第14項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項16】
前記回転体は気体の吸引吐出が可能なノズルであって、該ノズルは、その軸方向にまたはそれに平行な回転軸線を有し、前記接続部は、前記貯留室または反応室の開口部である請求の範囲第14項に記載の反応容器。
【請求項17】
前記反応室と外部とを連通する流路を有し、前記液導入機構は、ノズルおよび該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出部を有するものであり、前記接続部は、前記反応室または該反応室と連通する貯留室の開口部であって、該開口部は前記ノズルによって接続可能である請求の範囲第13項に記載の反応容器。
【請求項18】
前記反応室は、太径部、および該太径部よりも細い細径部とからなるピペットチップ内に、該ピペットチップの内面との間にスペーサを介在させて収容したコアの外面と該ピペットチップの内面との間に形成された隙間であり、
前記反応室と外部とを連通する流路は、前記細径部であり、
前記太径部の開口部は、前記ノズルに接続可能であり、
前記ピペットチップの壁または/及び前記コアの全体または一部に前記温度昇降体が設けられた請求の範囲第17項に記載の反応容器。
【請求項19】
前記コアの外面には、予め定めた位置に、予め定めた種々の生体物質が、予め定めた関係で前記位置と対応付けて配列された請求の範囲第18項に記載の反応容器。
【請求項20】
前記ノズルまたは前記貯留室と前記反応室との間、および、前記反応室と外部との間を閉塞することによって前記反応室が密閉可能である請求の範囲第15項乃至請求の範囲第19項のいずれかに記載の反応容器。
【請求項21】
1または2以上の反応容器と、
前記反応容器に対して外部から温度の上昇または下降を指示する信号を発生する指示部とを有し、
前記反応容器は、液体を収容可能な1または複数の反応室と、前記各反応室を囲む壁とを有し、
前記壁の全体または一部は、前記指示部からの信号により温度の上昇または下降が可能な温度昇降体によって形成された反応制御装置。
【請求項22】
前記反応容器の前記壁は、その内壁面が反応室内にあり、その外壁面が反応室外にあって、その内外壁面間が一体的に形成された請求の範囲第21項に記載の反応制御装置。
【請求項23】
前記温度昇降体は所定電気抵抗をもつ導電性部材を有し、前記指示部は、前記温度昇降体に電磁気的信号を与える電磁気供給部を有する請求の範囲第21項または請求の範囲第22項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項24】
前記反応容器は、複数の前記反応室が、所定間隔で平面状に配列して設けられた請求の範囲第21項乃至請求の範囲第23項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項25】
前記電磁気供給部は、前記反応室の壁と接触し、若しくは近接し、または、前記反応室の壁に対して接離可能に設けた1または複数の端子を有する請求の範囲第23項に記載の反応制御装置。
【請求項26】
前記反応室を冷却するために、前記指示部からの信号に応じて前記反応室に向かって空気を送風する送風機または該反応室に接触しまたは近接する経路を通り、信号に応じて冷媒が循環する冷媒循環路をさらに設けた請求の範囲第21項乃至請求の範囲第25項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項27】
前記導電性部材は、前記反応室の壁を形成し、または、前記壁の壁面を被覆し、該壁に内蔵され、若しくは該壁に付着した請求の範囲第23項に記載の反応制御装置。
【請求項28】
前記壁または/および温度昇降体の全体または一部は、透光性または半透光性をもつ請求の範囲第21項乃至請求の範囲第27項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項29】
前記反応室を囲む壁は複数の壁面を有し、該壁面の内の少なくとも1は軟質材の膜状部材で形成された請求の範囲第21項乃至請求の範囲第28項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項30】
該膜状部材には、前記温度昇降体として電気抵抗性のある導電性薄膜が被覆されまたは内蔵された請求の範囲第29項に記載の反応制御装置。
【請求項31】
前記反応容器は、前記反応室と連通し、開口部を有し液体を貯留可能な貯留室をさらに有し、該反応室は、該貯留室よりも薄くまたは細く形成された請求の範囲第21項乃至請求の範囲第30項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項32】
前記反応容器の開口部に、着脱自在に接続可能なキャップを有する請求の範囲第21項乃至請求の範囲第31項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項33】
前記反応容器と接続することによって前記反応室に液を導入可能な液導入機構をさらに有し、前記反応容器は、該液導入機構と接続する接続部を有する請求の範囲第21項乃至請求の範囲第32項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項34】
前記液導入機構は、回転可能な回転体と、該回転体を回転駆動する回転駆動部を有し、前記反応容器の前記接続部において、該反応容器は該回転体に装着されて該回転体とともに回転可能である請求の範囲第33項に記載の反応制御装置。
【請求項35】
前記反応室の壁の少なくとも一部に変形可能な軟質部材を設け、反応容器の外部に、該軟質部材の所定部分を押圧することによって前記反応室を密閉する押圧部を設けた請求の範囲第21項乃至請求の範囲第34項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項36】
前記回転体は気体の吸引吐出が可能なノズルであって、該ノズルは、その軸方向にまたはそれに平行な回転軸線を有し、前記接続部は、前記貯留室または反応室の開口部である請求の範囲第34項に記載の反応制御装置。
【請求項37】
前記反応室は、太径部、および該太径部よりも細い細径部とからなるピペットチップ内に、該ピペットチップの内面との間にスペーサを介在させて収容したコアの外面と該ピペットチップの内面との間に形成された隙間であり、
前記反応室と外部とを連通する流路は、前記細径部であり、
前記太径部の開口部は、前記ノズルに接続可能である請求の範囲第36項に記載の反応制御装置。
【請求項38】
前記コアの外面には、予め定めた位置に、予め定めた種々の生体物質が、予め定めた関係で前記位置と対応付けて配列された請求の範囲第37項に記載の反応制御装置。
【請求項39】
前記ノズルまたは前記貯留室と前記反応室との間、および、前記反応室と外部との間を流体的に閉塞する密閉手段を有する請求の範囲第21項に記載の反応制御装置。
【請求項40】
1または2以上の前記反応室内の光情報を得る光情報測定部を有する請求の範囲第21項乃至請求の範囲第39項のいずれかに記載の反応制御装置。
【請求項41】
前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、前記照射端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内、少なくとも1の最大面積をもつ大壁面に接触または近接して設け、前記受光端部は、最大壁面を除いた少なくとも1の前記壁面に接触または近接して、または接離可能に設けた請求の範囲第40項に記載の反応制御装置。
【請求項42】
前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、前記照射端部および受光端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内の1の壁面に接触しまたは近接して、または接離可能に設けた請求の範囲第40項に記載の反応制御装置。
【請求項43】
前記光情報測定部は、前記反応室に光を照射する1または2以上の照射端部と、前記反応室からの光を受光する1または2以上の受光端部とを有し、
前記光情報測定部の前記照射端部は、前記反応室を囲む複数の壁面の内の1の壁面であって、前記加熱冷却体である導電性膜が被覆されまたは内蔵された部分に接触しまたは近接し、または接離可能に設けた請求の範囲第40項に記載の反応制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−250803(P2011−250803A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184311(P2011−184311)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2006−539310(P2006−539310)の分割
【原出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(502338292)ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】