説明

反応容器およびその取扱方法

本発明による自動分析装置用のキュベット(10)は、少なくとも二個の収容部(20)と、それぞれ対として構成される収容部(20)を接続する一個の分離壁(22)と、収容部(20)の外端部に備わり、キュベット(10)を湾曲形状にガイドするように構成したブラケット(24)とを含む。本発明に係るキュベット(10)の取扱方法においては、キュベット(10)をブラケット(24)側からインキュベータ(30)まで搬送し、円弧状に曲げる。その後、キュベット(10)をインキュベータ(30)の開口部(34)内に装填し、分析が完了し、キュベット(10)が開口部(34)から除去されるまで、自らの弾性復元力により開口部(34)内に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に使用する新型の反応容器、すなわち、キュベットと、該キュベットを用いるインキュベーション方法に関する。より具体的には、本発明は、独立請求項の前段に記載したキュベットおよびインキュベーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、使い捨て式のキュベットや、再利用可能なキュベットは、個別的な、または一組のキュベットとして自動分析装置に使用されている。キュベットとは、分析すべき試料や、検査に使用する可能性のあるその他の物質を分注する容器である。再利用可能なキュベットは、一連の分析の合間に洗浄されるが、使い捨て式キュベットは、その使用寿命にわたって単一の試料のみを収納するように構成されている。検査の合間の洗浄は、洗剤の属性や、除去すべき物質の潜在的な危険性のため、手間のかかる作業である。従って、特に多数の検査を行う場合には、使用後に廃棄処理される使い捨て式キュベットがより望ましい。使い捨て式キュベットであれば、少なくとも使用時において清浄性が担保されている。
【0003】
チェーン状に連続させた一組のキュベットとして製造される使い捨て式キュベットは、既知である。この種のキュベットは、二軸周りで螺旋状に曲げることができ、分析装置における円形状の回転部を包囲しながら移動させることが可能である。同様に、コラム状に配列されたキュベットも既知であり、そのコラムは、キュベットに固有の突部間に歯付ベルト等の搬送部材を係合させて移動させることが可能である。周知の通り、個別的なキュベットまたは一組のキュベットの検査装置への装填は、キュベットの外部に形成されたピンカップリング等の接続部によって行われる。その際、可撓分離壁を含む検査装置の収納手段が、キュベットを所定位置に保持する。
【0004】
しかし、従来技術は幾つかの欠点を有する。先ず、既知のキュベットは、通常、一種類の検査装置専用とされており、仕様の異なる分析装置やインキュベータに適合できる構成とはされていない。既知のキュベットおよびインキュベータの組み合わせは、複数の操作手段や精密機構を含んでいるため、構造および操作においてそれほど堅牢ではない。更に上記の組み合わせは、通常は検査項目基準で構成されており、一回の検査シーケンスにおいて特定の検査項目の分析のみ、典型的には光学的分析のみが行われる。これにより、患者または試料に固有の分析結果が判明するまで、無用な遅延を生じさせている。同様に、多数回の操作により、試料を収めるキュベットが反復的な接触に晒されることとなり、表面の摩耗につながっていた。過度の摩耗により、透明な容器の光学的特性が劣化する場合もある。摩耗や傷つきは、特に容器の洗浄に際して顕著であるが、これは再利用可能なキュベットの場合に固有の問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術における上述した問題点の少なくとも一部を解消するように改良したキュベットと、その取扱方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るキュベットは、分離壁によって接続されている二個の収容部と、最外側の収容部に配置され、キュベットを支持すると共に、押し込んだときに弾性を発現する少なくとも一個のブラケットとを含む。キュベットの収容部間に配置されている分離壁は、キュベットの垂直軸周りでの弾性的な曲げを可能にする。本発明に係るキュベットは、装置関連の独立請求項の後段に記載した事項を特徴とする。
【0007】
本発明に係るキュベットの取扱方法において、キュベットはブラケットによりインキュベータに搬送され、湾曲状に曲げられた後、インキュベータの開口部内に装填され、自らの弾性復元力によって開口部に保持する。この後、分析すべき試料は、キュベットにおける収容部の試料領域に分注される。試料は、キュベットがインキュベータに装填されている状態で分析される。キュベットは、最終的にインキュベータの開口部から除去される。本発明に係る取扱方法は、方法関連の独立請求項の後段に記載した事項を特徴とする。
【0008】
本発明によれば、大きな利点を得ることが可能である。本発明に係るキュベットは、ブラケットと垂直軸に沿う弾性により、自動分析装置において有利に使用することができる。適切な曲げ特性によって、キュベットをインキュベータまで搬送し、傷が付きやすい光学面を損傷させることなく、インキュベータに装填することができる。同様に、ブラケットは、キュベットを収納するためのインキュベータの開口部の壁部に対し、キュベットをその全長にわたり持続的な接触状態とするよう、キュベットを正確な円弧状に湾曲させる機能を発揮する。ブラケットによって、キュベットを収納するインキュベータの開口部内への装填およびセンタリングも容易となる。
【0009】
また、本発明に係る取扱方法は、キュベットの装填・排出動作が一方向への一動作のみで実行できるため、堅牢で信頼性が高い。キュベットの垂直軸周りでの曲げ特性により、形状の複雑な接続部や精密な機構が何れも不要となる。同様の理由により、一種類のキュベットを仕様の異なるインキュベータに使用することができるため、使用者にとって大幅なコスト節約につながる。上述した利点に加え、本発明に係るキュベットの収容部を互いに分離する分離壁と、十分な長さを有するブラケットとによって、検査工程中、キュベット内の温度分布を均等に維持することが可能である。すなわち、試料領域相互間での熱伝導によって、検査の正確さおよび信頼性を損なわれることがない。
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】合計10個の収容部を有するキュベットの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のキュベットの側面図である。
【図3】図1のキュベットの平面図である。
【図4】インキュベータと、その円弧状開口部に適合させたキュベットを示す斜視図である。
【図5】図4のインキュベータにおける装填ガイドを示す斜視図である。
【図6】他の実施形態に係るキュベットにおける、単一の突部を有するブラケットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、キュベット10は整列配置される収容部20を含む。ここに、キュベット10とは、試料を収容し、かつ、少なくとも分析の間に試料を保管するための少なくとも一個の収容部20を有する試料収容部材を意味する。収容部20は、分析すべき試料のための試料領域28が壁部によって内部に限定されている管状の容器である。一実施形態によれば、収容部20は、アールの施された四角形状の横断面を備え、一般的には試料領域28における開口部の側面が、試料領域28の深さよりも相当短く形成されている。試料領域28は、他の形状を有していてもよい。ここに、収容部20における試料領域28の最長側の方向、すなわち、深さ方向を垂直軸と称する。これに関連し、水平軸は、デカルト座標系において垂直軸に対して直交する軸と定義される。
【0013】
本発明の一実施形態に従えば、キュベット10は、合計10個の収容部20を有し、これら収容部20は分離壁22によって相互に分離されている。分離壁22は、二個の収容部20の間に設けられる地峡状の接続部である。図1および図2に示すように、分離壁22は順次に整列した収容部20の狭幅側面のほぼ中央に備えられ、その際、分離壁22はキュベット10の上端部から収容部20の側面部中央まで延びている。すなわち、分離壁22は収容部20を、その全長にわたって接続するわけではなく、上半分に沿ってのみ接続している。分離壁22は、原則的に接続素子であり、一個の収容部から他の収容部に熱を伝導するものではなく、むしろ収容部20を相互に熱的にさせる分離するものである。従って、収容部20間に伝導される熱は可能な限り最小に維持され、これにより分析精度を向上させることが可能である。
【0014】
分離壁22の重要な特徴の一つは、その弾性である。図3に示すように、分離壁22は収容部20の壁と比較して、特に収容部20の垂直方向の長さと比較して、薄肉に構成されている。分離壁22の側面と、分離壁22を構成する弾性材料により、キュベット10はその垂直軸周りで、すなわち、図3における紙面と直交する軸の周りで曲げることが可能である。ここに、弾性材料とは、意図される変形に対応可能な十分な弾性を発現する材料を意味する。キュベット10、特に分離壁22の材料は、その構造が曲げられることを想定して選択される。曲げられることにより分離壁22は弾性変形を生じ、その弾性によりキュベット10は曲げに抵抗する特性を示すため、初期形状に復元しようとする。以下に説明する理由により、部材は曲げ歪みに晒されている間も弾性を示す必要があるため、分離壁22が十分な弾性を有することは必要不可欠である。少なくとも収容部20に関し、弾性材料は弾性の他にも適切な光学特性を備えている必要がある。プラスチック材料、特に例えばアクリルは、十分な弾性および適切な明るさを備える材料である。代案として、キュベット10は二個以上の材料から製造してもよい。この場合、ブラケット24および分離壁22等の、曲げ特性を必要とする部位は、本質的に弾性を備えるポリウレタン等の材料から形成することが可能であり、光学特性を必要とする収容部20等の部材は、良好な光学特性を備えているアクリル等の材料から形成することが可能である。更に材料の選択に関し、有利な光学特性を示す材料を優先的に選択することが可能である。例えば、使用上は十分な弾性を示すが、曲げられた後に完全には初期形状に復元しない材料から構成したキュベット10の場合、使用後のキュベット10における分離壁22は部分的に塑性変形を生じている。すなわち、使用後のキュベット10は若干曲がった状態を呈するため、既に使用済みであることが明らかであり、再利用が防止される。
【0015】
図1〜3に示すように、最外側の収容部20は、ブラケット24を備える。本発明の一実施形態によれば、ブラケット24は二個の突部から構成され、これら突部はキュベット10の垂直軸方向においてキュベット10より短く、壁厚に関しては薄肉脆弱である。ブラケット24の突部は、最外側における収容部20の外縁上部から、互いに接近するように湾曲しながら外向きに突出している。収容部20の外縁とは、分離壁が設けられていない最外側の収容部20の一側縁を意味する。これに関連し、外向き方向とは、分離壁22から収容部20の外縁を指向する水平方向を意味する。
【0016】
分離壁22と同様、ブラケット24も弾性材料から構成され、これにより、ブラケット24も、その最長側周りでの曲げに弾性的に対応する。ブラケット24の曲げ特性は、キュベット10の配列方向において最大である。従って、ブラケット24の突部は収容部20に対する圧縮を持続させるものである。ブラケット24の弾性は必要不可欠であり、これは、以下に説明する理由により、部材が圧縮状態でも弾性を示す必要があるためである。同様に重要なのは、内側に圧縮されたブラケット24が、曲げによって圧縮状態にある収容部20と接触することなく、固定部および収容部20が相互に隔てられていることである。これにより、収容部20の外縁と固定部との間に熱伝導が生じない。仮に、固定部とキュベット10の最外側の収容部20との間に熱伝導が生じた場合、当該収容部20は、他の収容部20よりも多量の熱を受けることになってしまう。そのような場合、不均等な温度分布がキュベット10内に発生し、測定精度を損なうこととなる。
【0017】
図1および図2から明らかなように、キュベット10の収容部20には、光学分析に適したスクリーン26を備えることができる。本発明に係る一実施形態に従えば、スクリーン26は、収容部20の下端部に設けられる透明部であり、分析のために適切な光学特性を備えている。スクリーン26は、分析光線が確実に収容部20に入射し、分析装置の機械的な部位によって生じる若干の位置決め誤差を許容するに十分な大きさを備えている必要がある。これは、測定を更に複雑にしてしまわないためである。これにより、試料を収容部20の試料領域28内に納めた状態で光学的検査に基づいて分析を行うことが可能であり、操作回数や試料の移送回数を最小限に抑えることができる。スクリーン26の過度の摩耗および傷付きを回避するため、傷の付きやすい表面を収容部20の残部よりもわずかに深く形成することが可能である。この凹部構成により、スクリーンを、傷が付く可能性のある多数回の接触から保護する。これにより、例えば、梱包段階で生じる摩耗を、スクリーン26ではなく、収容部20の側面部に生じさせることが可能である。
【0018】
図4に示すように、キュベット10は、特に自動インキュベータ30の使用に適している。望ましい一実施形態によれば、インキュベータ30は加熱ディスク32を含み、その外周部には、キュベット10を収納するための開口部34が設けられている。ディスク32の中心部には、ベアリングと、回転駆動手段(図示せず)が配置されている。この回転駆動手段によって、ディスク32は所望の角度だけ所望の方向に回転させることが可能である。回転駆動手段は、例えば、サーボモータで構成することができる。ただし、サーボモータは、極めて高い位置決め精度を有する反面で、相当に高価である。これに対してディスク32を、費用効率が高く、十分な精度を有するステップモータの軸上に直結する場合には、インキュベータ30の動力伝達部に十分な精度を持たせることが可能である。これにより、伝達部は必要最小限の可動部位のみを備え、遊びの原因となり得る部位を最小化することが可能である。更にインキュベータ30は、ディスク32との関連において、装填トラック38を含む。この装填トラック38に沿ってキュベット10を搬送し、ディスク32の開口部34内に装填するものである。装填トラック38は、最も単純な実施形態では、U字形断面の通路であり、その水平方向端部はキュベットの下端部とほぼ同様の広さを示す。装填トラック38の垂直方向端部は、キュベット10と比較して原則的に低く構成される。従って、キュベット10のブラケット24が装填トラック38の垂直方向の上端部に設置され、その上端部に沿って搬送される構成とされている。その際、収容部20の下端部は、装填トラック38の底部から隔てられている。収容部20と装填トラック38との間に空隙が存在するため、収容部20の下端部が、装填トラック38の底部に摩擦されず、従って、傷付きを防止することが可能である。
【0019】
ディスク32の装填トラック38側には装填ガイド40が取付けられ、キュベット10は、この装填ガイド40を介してディスク32の開口部34内に装填される。装填はプレス36を使用することにより行われ、プレス36の下端部はキュベット10を装填ガイド40内に押込むのに適した形状に形成されている。キュベット10は、装填ガイド40に押込むことによって開口部34内に適合させ、装填可能な形態とすることが可能である。開口部34の湾曲形状は、ディスク32外周部の湾曲形状に対応している。キュベット10は、その弾性により、仕様の異なるディスク32や、異なる曲率半径の開口部34に使用することができる。図5から明らかなように、装填ガイド40は、これを通過するキュベット10が開口部34内に配置可能な湾曲形状に変形されるように形成されている。装填ガイド40におけるキュベット10のガイド面42は、キュベット10の装填方向から見て凸形状を有する。これにより、キュベット10を該当箇所に当接させる際に、ディスク32の外周形状に対応する形に湾曲させるものである。装填ガイド40のガイド面42は平面的、すなわち、一定であってもよく、または水平方向に変化するように形成してもよい。これにより、ガイド面42は上端部が平面的であり、下向きに漸次凸形状を示す構成となる。これにより、キュベット10は、漸進的にガイド面42に対応・適合するように湾曲される。他方、収納面42は均等に湾曲しているため、キュベット10を即座に所望の形状に湾曲させることができる。更に装填ガイド40はブラケット24をガイドするための側縁部44を備え、ブラケット24は側縁部44の内側に当接する。従って、キュベット10は、ブラケット24を通してのみ装填ガイド40に密着する。これにより、曲げによる摩耗および裂傷はもっぱらブラケット24のみに生じる。すなわち、キュベット10の脆弱な表面部、例えばスクリーン26およびその周辺領域は、浸食を回避することができる。更に装填ガイドの側縁部44には、ガイド部46が備えられ、これによりキュベット10のブラケット24を、側縁部44の内側に確実に当接させる。キュベット10が装填ガイド40の下端部に押圧されると、ブラケット24が押し込まれ、分離壁22を湾曲させる。これにより、キュベット10は、装填ガイド40のガイド面42に対して緊密に曲げられ、ディスク32の開口部34内に同様の緊密度で装填可能となる。ブラケット24により、ディスク32が完全に正しい位置に位置決めされていない場合でも、キュベット10を自動的に開口部34内に装填し、センタリングすることが可能である。キュベット10は、上述した特性を確保する限り、異なる構成とすることが可能である。例えば、図6に示すキュベット10は、想定し得る一実施形態だが、これは上述した特性が得られることを前提としている。同様に、キュベット10は直線形状を有していてもよく、必ずしも湾曲形状を帯びるように構成する必要はない。その場合、キュベット10は付属するブラケットの弾性特性のみによって、対応する直線形状の開口部34内に保持されるように構成する必要がある。
【0020】
プレス36は十分なストロークを有しているため、キュベット10の上端部を開口部34内に押込む際、キュベット10の上端部を所望の高さに位置させることができる。これにより、分析装置に適合するように設定可能なプレス36の押込み深度が、垂直方向の配列を規定することとなる。上述した通り、キュベット10を開口部34内に装填する際、ブラケット24が最も摩耗を被る一方、それ以外の表面は摩耗を被ることがない。キュベット10は、インキュベータ30の開口部34内に装填されるため、分析すべき流体等の物質を、試料領域28に確実に分注することができる。上述の通り、キュベット10は、仕様の異なるディスク32や、曲率半径の異なる開口部34を有するインキュベータに使用することが可能である。すなわち、一定の大きさを有するキュベット10を、仕様の異なる分析装置に使用することが可能であり、キュベットの種類が限定されるために、大幅なコスト削減が可能となる。
【0021】
可能な限り有利な分析条件を維持するため、ディスク32を加熱し、この熱を開口部34の側面部を介して収容部20、更には試料領域28に伝導させる。分離壁22によって収容部20は相互に隔てられており、隣接している収容部20間において、余熱による温度分布のバラツキを引き起こすことがない。収容部間の均等な温度分布は、十分に突出したブラケット24が、キュベット10における外端部の収容部20の外側を開口部34の加熱面から分離させることにより、確実に実現することが可能である。
【0022】
分析装置は、検査に際してキュベット10を開口部34から除去する必要がないように、インキュベータ30の周囲に配置される。例えば光学検査は、収容部20のスクリーン26を通して直接実施することができる。従って、装填トラック38から、インキュベータ30の開口部34内に装填されたキュベット10の収容部20は、ディスク32の位置を変えることにより、物質を複数の操作手段から受け取ることが可能である。この場合の分析工程は、試薬を試薬ディスペンサにより試薬保管部から採取し、収容部20の試料領域28に分注することにより実行することができる。試薬の分注においては、インキュベータ30のディスク32を正しい角度位置に回転移動させることによって、目的とする収容部20に試薬を分注可能とする必要がある。この構成の基本的な考えは、キュベット10内で試料が撹拌され、キュベット10の位置がインキュベータのディスク32を回転させることで変更される点にある。これにより、操作回数および指示回数を可能な限り少なくすることが可能となる。試料自体も、物質を試料保管部から採取する試料ディスペンサにより、同様の方法で分注される。試薬および試料は、ディスク32をミキサの近傍まで回転させ、ミキサを作動させることにより混合することができる。上述した通り、収容部20の内容物が光学的に分析可能であり、例えば操作手段を有し、試料を自らの検査領域まで吸引する分析装置において、基準値との電位差を比較することによっても分析が可能である。検査工程の区分け、プログラミングおよび操作手段は既知である。
【0023】
使用される全ての収容部20の検査が完了した後、キュベット10を開口部34から排出することができる。その際、キュベット10の装填に使用したプレス36が、キュベット10を開口部34から別箇の廃棄物容器またはインキュベータ30の廃棄用開口部50まで押出す。代案として、プレス36によって新しいキュベット10を、装填ガイド40を介して開口部34内に装填することができる。これにより、使用済みキュベット10は、装填された新しいキュベット10によって、別箇の廃棄物容器またはインキュベータ30の廃棄用開口部50まで押出される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動インキュベータ(30)用のキュベット(10)であって、二個以上の収容部(20)と、これら二個以上の収容部(20)を接続するための、収容部(20)の総数よりも一個少ない数の分離壁(22)と、ブラケット(24)とを有するキュベット(10)において、
前記ブラケット(24)が最外側の前記収容部(20)に備えられ、
該ブラケット(24)がキュベット(10)を円弧状にガイドすることを特徴とするキュベット。
【請求項2】
請求項1に記載のキュベット(10)において、前記ブラケット(24)は、押込みに際して弾性的に可撓であることを特徴とするキュベット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のキュベット(10)において、前記分離壁(22)により、前記キュベット(10)の垂直軸周りでの弾性曲げを許容することを特徴とするキュベット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のキュベット(10)において、前記分離壁(22)が、整列した収容部(20)をキュベット(10)の側面部の半分以下の長さにわたり互いに接続して、温度分布をより均等化することを特徴とするキュベット。
【請求項5】
前記請求項1〜4の何れか一項に記載のキュベット(10)において、柔軟な突部を含む前記ブラケット(24)が、外端部における前記収容部(20)の上端部の外周において、外側及び相互に対して曲がり、従って、前記ブラケット(24)が配向方向において弾性的に構成され、垂直方向へのねじりに対し堅固であることを特徴とするキュベット。
【請求項6】
前記請求項1〜5の何れか一項に記載のキュベット(10)において、該キュベット(10)が、光学的特性及び弾性特性に優れた材料から構成されていることを特徴とするキュベット。
【請求項7】
前記請求項1〜6の何れか一項に記載のキュベット(10)において、該キュベット(10)が、二種の材料から構成されていることを特徴とするキュベット。
【請求項8】
請求項7に記載のキュベット(10)において、前記二種の材料が互いに異なるポリマーであり、その第一の材料は光学的特性に優れ、第二の材料は弾性特性に優れたものであることを特徴とするキュベット。
【請求項9】
請求項8に記載のキュベット(10)において、前記収容部(20)が前記第一の材料から構成され、前記分離壁(22)及び前記ブラケット(24)の少なくとも一方が前記第二の材料から構成されていることを特徴とするキュベット。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のキュベット(10)において、前記第一の材料がアクリルであることを特徴とするキュベット。
【請求項11】
請求項8,9又は10に記載のキュベット(10)において、前記第二の材料がポリウレタンであることを特徴とするキュベット。
【請求項12】
キュベットの取扱方法であって、
該キュベット(10)を、該キュベット(10)のブラケット(24)側からインキュベータ(30)まで搬送するステップと、
前記キュベット(10)を円弧状に湾曲させるステップと、
前記キュベット(10)を前記インキュベータ(30)の開口部(34)内に装填し、該キュベット10を自らの弾性復元力により前記開口部(34)内に保持するステップと、
分析の完了後に、前記開口部(34)から前記キュベット(10)を除去するステップとを特徴とする取扱方法。
【請求項13】
請求項12に記載のキュベットの方法において、前記開口部(34)内に新しいキュベット(10)を装填することによって使用済みキュベット(10)を押出し、かつ、前記開口部(34)から排出することを特徴とする取扱方法。
【請求項14】
請求項12に記載のキュベットの方法において、プレス(36)により、前記使用済みキュベット(10)を前記開口部(34)から排出することを特徴とする取扱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−522240(P2011−522240A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511044(P2011−511044)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050450
【国際公開番号】WO2009/144380
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(501286093)サーモ フィッシャー サイエンティフィック オイ (13)
【Fターム(参考)】