説明

反応容器の運転停止方法

【課題】反応容器内の金属カルボニルを効果的に除去すること。
【解決手段】スラリーが収容された反応容器30内に、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを含む合成ガスを供給することにより炭化水素化合物を合成した後、反応容器30の運転停止を行う方法であって、反応容器30内への合成ガスの供給を停止する停止工程と、停止工程の後、反応容器30からスラリーを排出するスラリー排出工程と、スラリー排出工程の後、反応容器30内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給し、反応容器30内の気体を排出する蒸気供給工程と、蒸気供給工程の際、反応容器30から排出される気体中の一酸化炭素ガスの量を検出する一酸化炭素ガス検出工程と、を有し、蒸気供給工程は、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときに蒸気の供給を停止する反応容器の運転停止方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器の運転停止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、天然ガスから液体燃料を合成するための方法の一つとして、天然ガスを改質して一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分とする合成ガスを生成し、この合成ガスを原料ガスとしてフィッシャー・トロプシュ合成反応(以下、「FT合成反応」という。)により触媒を用いて炭化水素を合成し、さらにこの炭化水素を水素化・精製することで、ナフサ(粗ガソリン)、灯油、軽油、ワックス等の液体燃料製品を製造するGTL(Gas To Liquids:液体燃料合成)技術が開発されている。
このGTL技術に用いられる炭化水素合成反応装置では、媒体液(例えば、液体の炭化水素など)中に固体の触媒粒子(例えば、コバルト触媒など)を懸濁させてなるスラリーが収容された反応容器の内部で、合成ガス中の一酸化炭素ガスと水素ガスとをFT合成反応させることで炭化水素を合成する。
【0003】
ところで前記炭化水素合成反応装置では、合成ガス中に一酸化炭素が含まれていることから、反応容器内に金属カルボニル(例えば鉄カルボニルやニッケルカルボニル)が発生し易かった。この金属カルボニルは、反応容器を運転停止するときに、反応容器内から除去することが望まれている。
なお、金属カルボニルを除去する触媒として、例えば下記特許文献1に示すようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0281203号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、触媒を用いて反応容器内の金属カルボニルを除去するためには、大量の触媒が必要であり、実用的でなかった。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、反応容器内の金属カルボニルを効果的に除去することができる反応容器の運転停止方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本願の請求項1に係る発明は、スラリーが収容された反応容器内に、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを含む合成ガスを供給することにより炭化水素化合物を合成した後、前記反応容器の運転停止を行う反応容器の運転停止方法であって、前記反応容器内への前記合成ガスの供給を停止する停止工程と、前記停止工程の後、前記反応容器からスラリーを排出するスラリー排出工程と、前記スラリー排出工程の後、前記反応容器内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給し、前記反応容器内の気体を排出する蒸気供給工程と、前記蒸気供給工程の際、前記反応容器から排出される気体中の一酸化炭素ガスの量を検出する一酸化炭素ガス検出工程と、を有し、前記蒸気供給工程は、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときに前記蒸気の供給を停止することを特徴とする。
なお前記分解温度は、60℃以上200℃以下であってもよい。また前記基準値は、50volppmであってもよい。
【0008】
この発明によれば、蒸気供給工程の際、反応容器内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給するので、反応容器内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに分解することができる。
またこのとき、反応容器内の気体を排出するので、金属カルボニルの分解により発生した一酸化炭素ガスも反応容器から排出し、反応容器内を蒸気によりパージすることができる。これにより、金属カルボニルが分解された後、分解された一酸化炭素ガスによって再度、金属カルボニルが生成されるのを抑制することができる。
【0009】
ここで前述のように、反応容器から排出される気体中の一酸化炭素ガスは、反応容器内の金属カルボニルの分解により生じることから、金属カルボニルの残量が多いほど増加し、金属カルボニルの残量が少ないほど減少することとなる。つまり、反応容器から排出される一酸化炭素ガスの量と、反応容器内の金属カルボニルの残量とは、相関関係を有する。
そして、このような相関関係があることから、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量が連続して下降し続けることは、反応容器内の金属カルボニルの残量が連続して減少し続けていることを示す。したがって、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときには、反応容器内の金属カルボニルの残量が確実に低減されていることとなる。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、前記スラリー排出工程の後、かつ前記蒸気供給工程の前に、前記反応容器内に不活性ガスを充満させる不活性ガス充満工程を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、前記蒸気供給工程の後に、前記反応容器内に空気を供給し、前記反応容器内の気体を排出する空気供給工程と、前記空気供給工程の際、前記反応容器から排出される気体中の酸素ガスの量を検出する酸素ガス検出工程と、を有し、前記空気供給工程は、前記酸素ガスの検出量に基づいて空気の供給を停止することを特徴とする。
なお前記空気供給工程は、酸素ガスの検出量が、前記気体中の含有比率として20vol%以上になったときに空気の供給を停止してもよい。
【0012】
この発明では、空気供給工程の際、反応容器から排出される酸素ガスの検出量に基づいて、反応容器内の酸素ガスの量を推定することができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、反応容器内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに分解することが可能で、かつ金属カルボニルが分解された後、分解された一酸化炭素ガスによって再度、金属カルボニルが生成されるのを抑制することができるので、反応容器内の金属カルボニルを効果的に除去することができる。
また、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときに蒸気の供給を停止するので、反応容器内の金属カルボニルの残量が確実に低減されたときに蒸気の供給を停止することができる。
さらにこのように、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量に基づいて蒸気の供給を停止することで、金属カルボニルが十分に除去された後、反応容器内に蒸気を供給し続けずにその供給を停止することが可能になり、反応容器の運転停止操作を円滑に行うことができる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、スラリー排出工程の後、かつ蒸気供給工程の前に、不活性ガス充満工程を行うので、蒸気供給工程の際、反応容器内に不活性ガスを充満させておくことができる。これにより、蒸気供給工程の際、反応容器内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに効果的に分解することができる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、空気供給工程の際、酸素ガス検出工程を行うことにより、反応容器内の酸素ガスの量を推定することができるので、例えば、反応容器内において人間が作業できる程度の量の酸素ガスがあるか否かを判断することができる。これにより、例えば、空気供給工程後、反応容器内において人間が作業するような場合であっても、反応容器の運転停止操作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る反応容器の運転停止方法を適用可能な液体燃料合成システムの全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る反応容器の運転停止方法を適用可能な液体燃料合成システムの一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(液体燃料合成システム)
図1に示すように、液体燃料合成システム(炭化水素合成反応システム)1は、天然ガス等の炭化水素原料を液体燃料に転換するGTLプロセスを実行するプラント設備である。この液体燃料合成システム1は、合成ガス生成ユニット3と、FT合成ユニット(炭化水素合成反応装置)5と、アップグレーディングユニット7とから構成される。合成ガス生成ユニット3は、炭化水素原料である天然ガスを改質して一酸化炭素ガスと水素ガスを含む合成ガスを製造する。FT合成ユニット5は、製造された合成ガスからFT合成反応により液体の炭化水素化合物を生成する。アップグレーディングユニット7は、FT合成反応により合成された液体の炭化水素化合物を水素化・精製して液体燃料その他の製品(ナフサ、灯油、軽油、ワックス等)を製造する。以下、これら各ユニットの構成要素について説明する。
【0019】
まず、合成ガス生成ユニット3について説明する。
合成ガス生成ユニット3は、例えば、脱硫反応器10と、改質器12と、排熱ボイラー14と、気液分離器16および18と、脱炭酸装置20と、水素分離装置26とを主に備える。脱硫反応器10は、水素化脱硫装置等で構成されて原料である天然ガスから硫黄成分を除去する。改質器12は、脱硫反応器10から供給された天然ガスを改質して、一酸化炭素ガス(CO)と水素ガス(H)とを主成分として含む合成ガスを製造する。排熱ボイラー14は、改質器12にて生成した合成ガスの排熱を回収して高圧スチームを発生する。気液分離器16は、排熱ボイラー14において合成ガスとの熱交換により加熱された水を気体(高圧スチーム)と液体とに分離する。気液分離器18は、排熱ボイラー14にて冷却された合成ガスから凝縮分を除去し気体分を脱炭酸装置20に供給する。脱炭酸装置20は、吸収塔(第2吸収塔)22と、再生塔24と、を有する。吸収塔22では、気液分離器18から供給された合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収液によって吸収される。再生塔24では、炭酸ガスを吸収した吸収液が炭酸ガスを放散し、吸収剤が再生される。水素分離装置26は、脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスから、当該合成ガスに含まれる水素ガスの一部を分離する。ただし、上記脱炭酸装置20は場合によっては設けないこともある。
【0020】
改質器12では、例えば、下記の化学反応式(1)、(2)で表される水蒸気・炭酸ガス改質法を用い、二酸化炭素と水蒸気によって天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。なお、この改質器12における改質法は、上記の水蒸気・炭酸ガス改質法に限定されない。例えば、水蒸気改質法、酸素を用いた部分酸化改質法(POX)、部分酸化改質法と水蒸気改質法の組合せである自己熱改質法(ATR)、炭酸ガス改質法などを利用することもできる。
【0021】
CH+HO→CO+3H ・・・(1)
CH+CO→2CO+2H ・・・(2)
【0022】
水素分離装置26は、脱炭酸装置20又は気液分離器18と気泡塔型反応器30とを接続する主配管から分岐した分岐ライン上に設けられる。この水素分離装置26は、例えば、圧力差を利用して水素の吸着と脱着を行う水素PSA(Pressure Swing Adsorption:圧力変動吸着)装置などで構成できる。この水素PSA装置は、並列配置された複数の吸着塔(図示せず。)内に吸着剤(ゼオライト系吸着剤、活性炭、アルミナ、シリカゲル等)を有している。各吸着塔で水素の加圧、吸着、脱着(減圧)、パージの各工程を順番に繰り返すことで、合成ガスから分離した純度の高い水素ガス(例えば99.999%程度)を、連続して供給することができる。
【0023】
水素分離装置26における水素ガス分離方法は、上記の水素PSA装置による圧力変動吸着法に限定されない。例えば、水素吸蔵合金吸着法、膜分離法、或いはこれらの組合せなどを用いてもよい。
【0024】
水素吸蔵合金法は、例えば、冷却/加熱されることで水素を吸着/放出する性質を有する水素吸蔵合金(TiFe、LaNi、TiFe0.7〜0.9Mn0.3〜0.1、又はTiMn1.5など)を用いて、水素ガスを分離する手法である。水素吸蔵合金法では、例えば水素吸蔵合金が収容された複数の吸着塔において、水素吸蔵合金の冷却による水素の吸着と、水素吸蔵合金の加熱による水素の放出とが交互に繰り返される。これにより、合成ガス中の水素ガスを分離・回収することができる。
【0025】
膜分離法は、芳香族ポリイミド等の高分子素材の膜を用いて、混合ガスから膜透過性に優れた水素ガスを分離する手法である。この膜分離法は、分離対称の相変化を必要としないため、運転に必要なエネルギーが小さくて済み、ランニングコストが小さい。また、膜分離装置の構造が単純でコンパクトなため、設備コストが低く設備の所要面積も小さくて済む。さらに、分離膜には駆動装置がなく、安定運転範囲が広いため、保守管理が容易であるという利点がある。
【0026】
次に、FT合成ユニット5について説明する。
FT合成ユニット5は、例えば、気泡塔型反応器(反応容器)30と、気液分離器34と、分離器36と、気液分離器38と、第1精留塔40と、を主に備える。気泡塔型反応器30は、上記合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガス、即ち、一酸化炭素ガスと水素ガスとからFT合成反応により液体炭化水素化合物を合成する。気液分離器34は、気泡塔型反応器30内に配設された伝熱管32内を通過して加熱された水を、水蒸気(中圧スチーム)と液体とに分離する。分離器36は、気泡塔型反応器30の中央部に接続され、触媒と液体炭化水素化合物を分離する。気液分離器38は、気泡塔型反応器30の塔頂に接続され、未反応合成ガス及び気体炭化水素化合物を冷却する。第1精留塔40は、気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物を各留分に分留する。
【0027】
このうち、気泡塔型反応器30は、合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成する反応器の一例であり、FT合成反応により合成ガスから液体の炭化水素化合物を合成するFT合成用反応器として機能する。この気泡塔型反応器30は、例えば、塔型の容器内部に主に触媒粒子と媒体油(媒体液、液体の炭化水素)とからなるスラリーが貯留された気泡塔型スラリー床式反応器で構成される。この気泡塔型反応器30は、FT合成反応により合成ガスから気体又は液体の炭化水素化合物を合成する。詳細には、この気泡塔型反応器30では、原料ガスである合成ガスは、気泡塔型反応器30の底部の分散板から気泡となって供給され、媒体油中に触媒粒子が懸濁されたスラリー内を通過する。そして、懸濁状態の中で下記化学反応式(3)に示すように、合成ガスに含まれる水素ガスと一酸化炭素ガスとが反応して炭化水素化合物が合成される。
【0028】
【化1】

【0029】
なお、このFT合成反応は発熱反応であるため、気泡塔型反応器30は内部に伝熱管32が配設された熱交換器型になっている。気泡塔型反応器30には、冷媒として例えば水(BFW:Boiler Feed Water)が供給され、上記FT合成反応の反応熱を、スラリーと水との熱交換により中圧スチームとして回収できるようになっている。
【0030】
次に、アップグレーディングユニット7について説明する。アップグレーディングユニット7は、例えば、ワックス留分水素化分解反応器50と、中間留分水素化精製反応器52と、ナフサ留分水素化精製反応器54と、気液分離器56,58,60と、第2精留塔70と、ナフサ・スタビライザー72とを備える。ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底に接続されている。中間留分水素化精製反応器52は、第1精留塔40の中央部に接続されている。ナフサ留分水素化精製反応器54は、第1精留塔40の塔頂に接続されている。気液分離器56,58,60は、これら水素化反応器50,52,54のそれぞれに対応して設けられている。第2精留塔70は、気液分離器56,58から供給された液体炭化水素化合物を分留する。ナフサ・スタビライザー72は、気液分離器60から供給された、及び第2精留塔70から分留されたナフサ留分の液体炭化水素化合物を精留する。その結果、ナフサ・スタビライザー72は、ブタン及びブタンより軽質の成分をオフガスとして排出し、炭素数5以上の成分を製品のナフサとして回収する。
【0031】
次に、以上のような構成の液体燃料合成システム1により、天然ガスから液体燃料を合成する工程(GTLプロセス)について説明する。
【0032】
液体燃料合成システム1には、天然ガス田又は天然ガスプラントなどの外部の天然ガス供給源(図示せず。)から、炭化水素原料としての天然ガス(主成分がCH)が供給される。上記合成ガス生成ユニット3は、この天然ガスを改質して合成ガス(一酸化炭素ガスと水素ガスを主成分とする混合ガス)を製造する。
【0033】
具体的には、まず、上記天然ガスは、水素分離装置26によって分離された水素ガスとともに脱硫反応器10に導入される。脱硫反応器10では、導入された水素ガスと水素化脱硫触媒により、天然ガスに含まれる硫黄分が硫化水素に転換される。更に、脱硫反応器10では、生成した硫化水素が例えばZnO等の脱硫剤により吸着除去される。このようにして天然ガスを予め脱硫しておくことにより、改質器12及び気泡塔型反応器30等で用いられる触媒の活性が硫黄により低下することを防止できる。
【0034】
このようにして脱硫された天然ガス(二酸化炭素を含んでもよい。)は、二酸化炭素供給源(図示せず。)から供給される二酸化炭素(CO)ガスと、排熱ボイラー14で発生した水蒸気とが混合された上で、改質器12に供給される。改質器12では、例えば、上述した水蒸気・炭酸ガス改質法により、二酸化炭素と水蒸気とにより天然ガスが改質され、一酸化炭素ガスと水素ガスとを主成分とする高温の合成ガスが製造される。このとき、改質器12には、例えば、改質器12が備えるバーナー用の燃料ガスと空気(エア)とが供給されている。そして、当該バーナーにおける燃料ガスの燃焼熱により、吸熱反応である上記水蒸気・炭酸ガス改質反応に必要な反応熱がまかなわれている。
【0035】
このようにして改質器12で製造された高温の合成ガス(例えば、900℃、2.0MPaG)は、排熱ボイラー14に供給され、排熱ボイラー14内を通過する水との熱交換により冷却(例えば400℃)される。そして、合成ガスの排熱が水により回収される。このとき、排熱ボイラー14において合成ガスにより加熱された水は気液分離器16に供給される。そして、この合成ガスにより加熱された水は、気液分離器16において高圧スチーム(例えば3.4〜10.0MPaG)と、水とに分離される。分離された高圧スチームは、改質器12または他の外部装置に供給され、分離された水は排熱ボイラー14に戻される。
【0036】
一方、排熱ボイラー14において冷却された合成ガスは、凝縮した液体分が気液分離器18において分離・除去された後、脱炭酸装置20の吸収塔22、又は気泡塔型反応器30に供給される。吸収塔22では、吸収塔22の内部に貯留されている吸収液によって、合成ガスに含まれる炭酸ガスが吸収され、当該合成ガスから炭酸ガスが除去される。吸収塔22内で炭酸ガスを吸収した吸収液は、吸収塔22から排出され、再生塔24に導入される。再生塔24に導入された吸収液は、例えばスチームで加熱されてストリッピング処理され、炭酸ガスを放散する。放散された炭酸ガスは、再生塔24から排出されて改質器12に導入され、上記改質反応に再利用される。
【0037】
このようにして、合成ガス生成ユニット3で製造された合成ガスは、上記FT合成ユニット5の気泡塔型反応器30に供給される。このとき、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスの組成比は、FT合成反応に適した組成比(例えば、H:CO=2:1(モル比))に調整されている。なお、気泡塔型反応器30に供給される合成ガスは、脱炭酸装置20と気泡塔型反応器30とを接続する配管に設けられた圧縮器(図示せず。)により、FT合成反応に適した圧力(例えば3.6MPaG程度)まで昇圧される。
【0038】
また、上記脱炭酸装置20により炭酸ガスが分離された合成ガスの一部は、水素分離装置26にも供給される。水素分離装置26では、上記のように圧力差を利用した吸着、脱着(水素PSA)により、合成ガスに含まれる水素ガスが分離される。当該分離された水素は、ガスホルダー(図示せず。)等から圧縮機(図示せず。)を介して、液体燃料合成システム1内において水素を利用して所定反応を行う各種の水素利用反応装置(例えば、脱硫反応器10、ワックス留分水素化分解反応器50、中間留分水素化精製反応器52、ナフサ留分水素化精製反応器54など)に連続して供給される。
【0039】
次いで、上記FT合成ユニット5は、上記合成ガス生成ユニット3によって製造された合成ガスから、FT合成反応により、液体炭化水素化合物を合成する。
【0040】
具体的には、上記脱炭酸装置20において炭酸ガスが分離された合成ガスは、気泡塔型反応器30に導入され、気泡塔型反応器30内に貯留された触媒を含むスラリー内を通過する。この際、気泡塔型反応器30内では、上述したFT合成反応により、当該合成ガスに含まれる一酸化炭素と水素ガスとが反応して、炭化水素化合物が生成する。さらに、このFT合成反応時には、気泡塔型反応器30の伝熱管32内を通過する水によって、FT合成反応の反応熱が回収され、反応熱によって加熱された水が気化して水蒸気となる。この水蒸気は気液分離器34に供給されて凝縮した水と気体分に分離され、水は伝熱管32に戻されて、気体分は中圧スチーム(例えば1.0〜2.5MPaG)として外部装置に供給される。
【0041】
このようにして、気泡塔型反応器30で合成された液体炭化水素化合物は、気泡塔型反応器30の中央部から触媒粒子を含んだスラリーとして排出されて、分離器36に導入される。分離器36では、導入されたスラリーが触媒(固形分)と、液体炭化水素化合物を含んだ液体分とに分離される。分離された触媒の一部は気泡塔型反応器30に戻され、液体分は第1精留塔40に導入される。気泡塔型反応器30の塔頂からは、FT合成反応において反応しなかった合成ガスと、FT合成反応により生成した気体炭化水素化合物と、を含む気体副生成物が排出される。気泡塔型反応器30から排出された気体副生成物は、気液分離器38に導入される。気液分離器38では、導入された気体副生成物が冷却され、凝縮した液体炭化水素化合物と、ガス分とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、気液分離器38から排出され、第1精留塔40に導入される。分離されたガス分は、気液分離器38から排出され、その一部が気泡塔型反応器30に再導入される。気泡塔型反応器30では、再導入されたガス分に含まれる未反応の合成ガス(COとH)がFT合成反応に再利用される。また、気液分離器38から排出されたガス分の一部は、オフガスとして燃料に使用されたり、このガス分からLPG(液化石油ガス)相当の燃料が回収されたりする。
【0042】
第1精留塔40では、上記のようにして気泡塔型反応器30から分離器36、気液分離器38を介して供給された液体炭化水素化合物(炭素数は多様)が、ナフサ留分(沸点が約150℃より低い)と、中間留分(沸点が約150〜350℃)と、ワックス留分(沸点が約350℃を超える)とに分留される。この第1精留塔40の塔底から排出されるワックス留分の液体炭化水素化合物(主としてC21以上)は、ワックス留分水素化分解反応器50に導入される。第1精留塔40の中央部から排出される灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(主としてC11〜C20)は、中間留分水素化精製反応器52に導入される。第1精留塔40の塔頂から排出されるナフサ留分の液体炭化水素化合物(主としてC〜C10)は、ナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0043】
ワックス留分水素化分解反応器50は、第1精留塔40の塔底から排出された炭素数の多いワックス留分の液体炭化水素化合物(概ねC21以上)を、上記水素分離装置26から供給された水素ガスを利用して水素化分解して、炭素数を20以下に低減する。この水素化分解反応では、炭素数の多い炭化水素化合物のC−C結合が切断される。これにより、炭素数の多い炭化水素化合物が炭素数の少ない炭化水素化合物へと転換される。また、ワックス留分水素化分解反応器50においては、水素化分解反応と並行して、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を水素化異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)を生成する反応も進行する。これにより、ワックス留分水素化分解生成物の、燃料油基材として要求される低温流動性が向上する。さらに、ワックス留分水素化分解反応器50においては、原料であるワックス留分に含まれるアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素反応及びオレフィンの水素化反応も進行する。水素化分解されワックス留分水素化分解反応器50から排出された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器56に導入され、気体と液体とに分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、中間留分水素化精製反応器52及びナフサ留分水素化精製反応器54に導入される。
【0044】
中間留分水素化精製反応器52では、第1精留塔40の中央部から排出された炭素数が中程度である灯油・軽油に相当する中間留分の液体炭化水素化合物(概ねC11〜C20)が水素化精製される。中間留分水素化精製反応器52では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この水素化精製反応においては、上記液体炭化水素化合物中に含まれるオレフィンが水素化されて飽和炭化水素化合物を生成するとともに、上記液体炭化水素化合物中に含まれるアルコール等の含酸素化合物が水素化脱酸素され飽和炭化水素化合物と水とに転換される。更に、この水素化精製反応においては、直鎖状飽和炭化水素化合物(ノルマルパラフィン)を異性化して分岐状飽和炭化水素化合物(イソパラフィン)に転換する水素化異性化反応が進行し、生成油の燃料油として要求される低温流動性を向上させる。水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器58で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、第2精留塔70に導入され、気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。
【0045】
ナフサ留分水素化精製反応器54では、第1精留塔40の上部から排出された炭素数が少ないナフサ留分の液体炭化水素化合物(概ねC10以下)が、水素化精製される。ナフサ留分水素化精製反応器54では、水素分離装置26からワックス留分水素化分解反応器50を介して供給された水素ガスが、水素化精製に用いられる。この結果、水素化精製された液体炭化水素化合物を含む生成物は、気液分離器60で気体と液体に分離される。分離された液体炭化水素化合物は、ナフサ・スタビライザー72に導入され、分離された気体分(水素ガスを含む。)は、上記水素化反応に再利用される。このナフサ留分の水素化精製においては、主としてオレフィンの水素化及びアルコール等の含酸素化合物の水素化脱酸素が進行する。
【0046】
第2精留塔70では、上記のようにしてワックス留分水素化分解反応器50及び中間留分水素化精製反応器52から供給された液体炭化水素化合物をC10以下の炭化水素化合物(沸点が約150℃より低い)と、灯油(沸点が約150〜250℃)と、軽油(沸点が約250〜350℃)と、ワックス留分水素化分解反応器50からの未分解ワックス分(沸点約350℃を超える)とに分留する。第2精留塔70の塔底からは未分解のワックス留分が得られ、これはワックス留分水素化分解反応器50の上流にリサイクルされる。第2精留塔70の中央部からは灯油及び軽油が排出される。一方、第2精留塔70の塔頂からは、C10以下の気体炭化水素化合物が排出されて、ナフサ・スタビライザー72に導入される。
【0047】
さらに、ナフサ・スタビライザー72では、上記ナフサ留分水素化精製反応器54から供給された、及び第2精留塔70において分留されたC10以下の炭化水素化合物が蒸留され、製品としてのナフサ(C〜C10)が得られる。これにより、ナフサ・スタビライザー72の塔底からは、高純度のナフサが排出される。一方、ナフサ・スタビライザー72の塔頂からは、製品対象外である炭素数が所定数以下(C以下)の炭化水素化合物を主成分とするオフガスが排出される。このオフガスは、燃料ガスとして使用されたり、このオフガスからLPG相当の燃料が回収されたりする。
【0048】
(反応容器の運転停止方法)
ここでFT合成ユニット5には、気泡塔型反応器30の底部に蒸気および空気をそれぞれ供給する蒸気供給部82および空気供給部84と、気泡塔型反応器30から排出される気体中における一酸化炭素ガスおよび酸素ガスの各濃度を測定する濃度測定部86と、が備えられている。
【0049】
蒸気供給部82は、気泡塔型反応器30内に金属カルボニルの分解温度以上、本実施形態では例えば60℃以上200℃以下程度の蒸気を供給する。なお蒸気には、例えばFT合成ユニット5内における他の構成要素から発生したスチームを利用することが可能である。
濃度測定部86は、気泡塔型反応器30の塔頂に接続された排出配管88内を流通する気体を測定対象とし、この気体中の一酸化炭素ガスおよび酸素ガスの各濃度を測定する。なお排出配管88は、気泡塔型反応器30の塔頂と前記気液分離器38とを接続している。
【0050】
そして本実施形態では、これらの蒸気供給部82、空気供給部84および濃度測定部86を用い、気泡塔型反応器30内においてFT合成反応により炭化水素化合物を生成した後、気泡塔型反応器30の運転を停止する。以下、この気泡塔型反応器30の運転停止方法(反応容器の運転停止方法)について説明する。
【0051】
はじめに、気泡塔型反応器30内への合成ガスの供給を停止する停止工程を行う。これにより、気泡塔型反応器30内でのFT合成反応、およびこの反応による炭化水素化合物の合成が停止される。
その後、気泡塔型反応器30からスラリーを排出するスラリー排出工程を行う。このとき例えば、気泡塔型反応器30の底部に設けられた図示しないスラリー排出口からスラリーを排出する。
【0052】
次いで、気泡塔型反応器30内に不活性ガスを充満させる不活性ガス充満工程を行う。このとき例えば、図示しないガス供給部を用いて気泡塔型反応器30の底部から不活性ガスを供給するとともに、前記排出配管88を通して気泡塔型反応器30内の気体を排出し、不活性ガスにより気泡塔型反応器30内をパージする。なお不活性ガスとしては、例えば窒素ガスや希ガス等を採用することができる。
【0053】
そして本実施形態では、スラリー排出工程および不活性ガス充満工程の後、気泡塔型反応器30内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給し、気泡塔型反応器30内の気体を排出する蒸気供給工程を行う。このとき、前記蒸気供給部82を用いて気泡塔型反応器30にその底部から蒸気を供給するとともに、前記排出配管88を通して気泡塔型反応器30内の気体を排出する。
【0054】
ここで蒸気供給工程では、気泡塔型反応器30内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給するので、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに分解することができる。
さらにこのとき、気泡塔型反応器30内の気体を排出するので、金属カルボニルの分解により発生した一酸化炭素ガスも気泡塔型反応器30から排出し、気泡塔型反応器30内を蒸気によりパージすることができる。これにより、金属カルボニルが分解された後、分解された一酸化炭素ガスによって再度、金属カルボニルが生成されるのを抑制することができる。
【0055】
また蒸気供給工程の際、気泡塔型反応器30から排出される気体中の一酸化炭素ガスの量を検出する一酸化炭素ガス検出工程を行う。そして、一酸化炭素ガス検出工程を行うことにより検出された一酸化炭素ガスの検出量に基づいて蒸気の供給を停止する。本実施形態では、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値、例えば50volppm以下になったときに蒸気の供給を停止する。なおこのとき、前記濃度測定部86を用いて排気配管88を流通する気体について一酸化炭素ガスの量を測定する。
【0056】
ここで、気泡塔型反応器30から排出される気体中の一酸化炭素ガスは、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの分解により生じることから、この一酸化炭素ガスは、金属カルボニルの残量が多いほど増加し、金属カルボニルの残量が少ないほど減少することとなる。つまり、気泡塔型反応器30から排出される一酸化炭素ガスの量と、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量とは、相関関係を有する。
したがって、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガス検出工程を行い、気泡塔型反応器30から排出される気体中の一酸化炭素ガスの量を検出することにより、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量を推定することができる。
【0057】
すなわち、前述のような相関関係があることから、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量が連続して下降し続けることは、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量が連続して減少し続けていることを示す。したがって、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときには、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量が確実に低減されていることとなる。
【0058】
なお、気泡塔型反応器30から排出される一酸化炭素ガスの量と、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量と、の相関関係は、例えば、当該気泡塔型反応器30の運転停止方法を実施する前に、予め検証試験を実施しておくこと等により把握することが可能である。この検証試験としては、例えば、運転停止方法を実施する際の条件と同等の条件とした上で、気泡塔型反応器30から排出される一酸化炭素ガスの量と、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量と、を各別に測定するといった方法を採用することが可能である。
【0059】
蒸気の供給を停止して蒸気供給工程を終えた後、気泡塔型反応器30内に空気を供給し、気泡塔型反応器30内の気体を排出する空気供給工程を行う。このとき、前記空気供給部84を用いて気泡塔型反応器30にその底部から空気を供給するとともに、前記排出配管88を通して気泡塔型反応器30内の気体を排出する。
【0060】
またこの空気供給工程の際、気泡塔型反応器30から排出される気体中の酸素ガスの量を検出する酸素ガス検出工程を行う。そして、酸素ガス検出工程により検出された酸素ガスの検出量に基づいて、例えば、気泡塔型反応器30から排出される気体中の含有比率として20vol%以上になったときに空気の供給を停止する。なおこのとき、前記濃度測定部86を用いて排気配管88を流通する気体について酸素ガスの量を測定する。
ここで空気供給工程では、気泡塔型反応器30から排出される酸素ガスの検出量に基づいて、気泡塔型反応器30内の酸素ガスの量を推定することができる。
【0061】
以上で気泡塔型反応器30の運転停止作業が終了する。
この後、例えばオペレータが気泡塔型反応器30内で、定期補修などの作業を行う。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る気泡塔型反応器30の運転停止方法によれば、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに分解することが可能で、かつ金属カルボニルが分解された後、分解された一酸化炭素ガスによって再度、金属カルボニルが生成されるのを抑制することができるので、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルを効果的に除去することができる。
【0063】
また、スラリー排出工程の後、かつ蒸気供給工程の前に、不活性ガス充満工程を行うので、蒸気供給工程の際、気泡塔型反応器30内に不活性ガスを充満させておくことができる。これにより、蒸気供給工程の際、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルを、金属酸化物と一酸化炭素ガスとに効果的に分解することができる。
【0064】
また、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときに蒸気の供給を停止するので、気泡塔型反応器30内の金属カルボニルの残量が確実に低減されたときに蒸気の供給を停止することができる。
さらにこのように、蒸気供給工程の際、一酸化炭素ガスの検出量に基づいて蒸気の供給を停止することで、金属カルボニルが十分に除去された後、気泡塔型反応器30内に蒸気を供給し続けずにその供給を停止することが可能になり、気泡塔型反応器30の運転停止操作を円滑に行うことができる。
【0065】
また空気供給工程の際、酸素ガス検出工程を行うことにより、気泡塔型反応器30内の酸素ガスの量を推定することができるので、例えば、気泡塔型反応器30内において人間が作業できる程度の量の酸素ガスがあるか否かを判断することができる。これにより、例えば、空気供給工程後、気泡塔型反応器30内において人間が作業するような場合であっても、気泡塔型反応器30の運転停止操作を円滑に行うことができる。
【0066】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、酸素ガス検出工程、空気供給工程および不活性ガス充満工程はなくてもよい。
【0067】
また本発明の適用は、前記液体燃料合成システム1における気泡塔型反応器30を運転停止するときに限られない。本発明は、スラリーが収容された反応容器内に、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを含む合成ガスを供給することにより炭化水素化合物を合成した後、反応容器の運転停止を行うときに、適用することが可能である。
【0068】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
30 気泡塔型反応器(反応容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーが収容された反応容器内に、一酸化炭素ガスおよび水素ガスを含む合成ガスを供給することにより炭化水素化合物を合成した後、前記反応容器の運転停止を行う反応容器の運転停止方法であって、
前記反応容器内への前記合成ガスの供給を停止する停止工程と、
前記停止工程の後、前記反応容器からスラリーを排出するスラリー排出工程と、
前記スラリー排出工程の後、前記反応容器内に金属カルボニルの分解温度以上の蒸気を供給し、前記反応容器内の気体を排出する蒸気供給工程と、
前記蒸気供給工程の際、前記反応容器から排出される気体中の一酸化炭素ガスの量を検出する一酸化炭素ガス検出工程と、を有し、
前記蒸気供給工程は、一酸化炭素ガスの検出量が、連続して下降し続けて予め決められた基準値以下になったときに前記蒸気の供給を停止することを特徴とする反応容器の運転停止方法。
【請求項2】
請求項1記載の反応容器の運転停止方法であって、
前記スラリー排出工程の後、かつ前記蒸気供給工程の前に、前記反応容器内に不活性ガスを充満させる不活性ガス充満工程を有することを特徴とする反応容器の運転停止方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反応容器の運転停止方法であって、
前記蒸気供給工程の後に、前記反応容器内に空気を供給し、前記反応容器内の気体を排出する空気供給工程と、
前記空気供給工程の際、前記反応容器から排出される気体中の酸素ガスの量を検出する酸素ガス検出工程と、を有し、
前記空気供給工程は、前記酸素ガスの検出量に基づいて空気の供給を停止することを特徴とする反応容器の運転停止方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−207142(P2012−207142A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74245(P2011−74245)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(504117958)独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (101)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【出願人】(591090736)石油資源開発株式会社 (70)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】