説明

反応容器キット及び反応容器処理装置

【課題】種々の測定を自動化するのに適する反応容器キットを提供する。
【解決手段】反応容器キットは、平板状の板状基板9の同じ側に試薬収容部14及び不揮発性液体収容部16が凹部として形成された反応容器10と、分注プローブの先端に装着して液の吸入・吐出を行なうための分注チップ70a,70bを備えている。分注チップ70a,70bは反応容器10を構成する基板9の端部に可動部材を介して取り付けられた保持部材42に脱着可能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学反応を初め、現場において各種自動解析、例えば遺伝子解析の研究や臨床を行なうのに適する反応容器キットと、それを用いて人間を初めとする動物や植物のゲノムDNAの多型、例えばSNP(一塩基多型)などを検出するための反応容器処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遺伝子多型を利用して病気の罹りやすさなどを予測する方法又は装置として、下記のようなものが提案されている。
患者が敗血症に罹りやすいか否か及び/又は敗血症に急速に進行しやすいか否かを決定するために、患者から核酸サンプルを採取し、該サンプル中におけるパターン2対立遺伝子、又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子を検出し、パターン2対立遺伝子又はパターン2対立遺伝子と連鎖不平衡であるマーカー遺伝子が検出されれば該患者が敗血症に罹りやすいと判定する(特許文献1参照。)。
【0003】
ヒトのflt−1遺伝子中の1又はそれ以上の単一ヌクレオチド多型性の診断のために、ヒトの核酸の1又はそれ以上の位置:1953、3453、3888(各々EMBL受理番号X51602中の位置に従う)、519、786、1422、1470(各々EMBL受理番号D64016中の位置に従う)、454(配列番号3に従う)及び696(配列番号5に従う)の配列を決定し、flt−1遺伝子中の多型性を参照することにより、そのヒトの体質を決定する(特許文献2参照。)。
【0004】
SNP部位の塩基を判別する、いわゆるタイピングについては多くの手法が報告されている。そのうちの代表的なものは次の方法である。
比較的に少量の核酸を用いて数十万箇所に及ぶSNP部位についてタイピングを行なうために、少なくとも一つの一塩基多型部位を含む複数の塩基配列を、核酸及び複数対のプライマーを用いて同時に増幅し、増幅した複数の塩基配列を用いて、当該塩基配列に含まれる一塩基多型部位の塩基をタイピング工程により判別する。そのタイピング工程として、インベーダ法又はタックマンPCR法を用いる(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特表2002−533096号公報
【特許文献2】特開2001−709366号公報
【特許文献3】特開2002−300894号公報
【特許文献4】特許第3452717号公報
【非特許文献1】Hsu T. M., Law S. M, Duan S, Neri B. P., Kwok P. Y., "Genotyping single-nucleotide polymorphisms by the invader assay with dual-color fluorescence polarization detection", Clin. Chem., 2001 Aug;47(8):1373-7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
化学反応や遺伝子解析などの分析を行うための反応容器を反応処理装置に装着し、その反応容器上でサンプルに試薬を分注して反応を行わせる際、分注プローブで試薬を分注するが、分注プローブの先端部にはディスポーザブル(使い捨て可能)な分注チップを装着して試薬の吸引と吐出を行う。その際、反応容器をディスポーザブルなものとすると、分注プローブに装着する分注チップもディスポーザブルなものとしてその反応容器とともに交換するようにするのが一般的である。その際、分注チップは分析を行おうとする反応容器の数だけは少なくともセットしておかなければならない。もし分注チップの数が少なかったり、セットするのを忘れたりすると、ディスポーザブルなはずの分注チップが複数のサンプルで繰り返し使用される事態が生じて分析精度が低下する。特に、PCR工程に含まれている場合はコンタミニネーションが増幅されて検査結果に与える影響が大きくなる。
【0006】
そこで、反応容器の数だけの分注チップは必ず反応容器処理装置内に持ち込まれるようにしておくのが望ましい。
本発明の第1の目的は、化学反応の測定や遺伝子多型検出を自動化するのに適する反応容器キットを提供することである。
【0007】
本発明の第2の目的は、本発明の反応容器キットを用いて化学反応測定や遺伝子多型検出を自動化する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の反応容器キットは、平板状の基板の一面にサンプルに反応を起こさせるための反応部が少なくとも1つ形成された反応容器と、分注機構の分注プローブに装着されて前記反応容器の反応部にサンプル及び/又は試薬を分注するための分注チップと、前記分注チップを脱着可能に保持する保持部材と、前記保持部材に保持された前記分注チップが前記反応容器の基板の平板面に沿って配置された状態の反応容器と分注チップの組を包装する包装部材とを備えている。なお、「サンプル及び/又は試薬」の語は「サンプル及び試薬」と「サンプル又は試薬」の両方を含む意味で使用している。
【0009】
反応容器と分注チップが包装された状態において、分注チップを保持した保持部材は反応容器と一体化されていてもよく、別体であってもよい。
保持部材と反応容器が一体化されている場合は、その保持部材は保持した分注チップが反応容器の基板の平板面に対し沿った状態と立ち上がった状態との間で変位できるように可動部材を介して反応容器に取り付けられていることが好ましい。
【0010】
保持部材が反応容器に取り付けられている場合、その取付け位置は特に限定されるものではないが、1つの形態は、保持部材が反応容器の先端部に取り付けられたものである。その場合、包装された状態では分注チップが反応容器側にくるように保持部材が折り曲げられる。
【0011】
保持部材が反応容器に取り付けられている取付け位置の他の形態は、保持部材が反応容器の中間部に取り付けられたものである。その場合、包装された状態では、分注チップが折り曲げられる側の基板の平板面で盛り上がりの小さい側にくるように折り曲げられる。
【0012】
使用後の分注チップは再び保持部材に保持して反応容器とともに破棄するのが好ましい。その際、分注チップの先端部に付着したサンプルや試薬を他のものに付着したり飛び散ったりすることがないように、保持部材が分注チップを保持したときに少なくとも分注チップの先端部を覆う収納部を備え、その収納部の内部に液を吸収する吸収材を備えていることが好ましい。このような吸収材として、例えばろ紙などを挙げることができる。
反応容器を包装部材から取り出し、折り曲げられた保持部材を伸ばして分注チップが反応容器の基板の平板面に対し立ち上がった状態とする作業を容易にするために、基板又は保持部材の先端側に把持部が形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の反応容器キットにおける反応容器には、同じ基板に凹部として形成され、反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容しフィルムで封止された不揮発性液体収容部をさらに備えていてもよい。
また、反応容器は同じ基板に凹部として形成され、サンプルの反応に使用される試薬を収容しフィルムで封止された少なくとも1つの試薬収容部をさらに備えてサンプルの反応用試薬キットを構成していてもよい。
【0014】
フィルムで封止された試薬や不揮発性液体は、本発明の反応容器処理装置内において、分注プローブの先端に装着した分注チップを、そのフィルムを貫通して挿入することにより、又はそのフィルムを剥がした後に分注チップを挿入することにより、その分注チップに吸入し、反応部などの他の場所に移送することができる。
【0015】
この反応容器は、化学反応、生化学反応を初め、種々の反応の測定に用いられるものである。この反応容器を反応用試薬キットとした場合の1つの用途として、遺伝子多型検出を挙げることができる。遺伝子多型検出用の反応容器とした場合の第1の形態は、生体サンプルとして遺伝子増幅反応がなされたものをこの反応容器に注入して遺伝子多型を検出する反応容器である。その第1の形態の反応容器は、試薬収容部として複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容したタイピング試薬収容部を含み、反応部として前記複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を含んで遺伝子多型診断用試薬キットを構成しているものである。
【0016】
遺伝子多型検出用の反応容器とした場合の第2の形態は、上記の第1の形態の反応用試薬キットに、試薬収容部として複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容した遺伝子増幅試薬収容部をさらに含み、反応部として遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部をさらに含んだものである。
このような場合、反応容器キットに含まれる反応容器と分注チップの組として反応容器1つに対して分注チップを2つ備えておれば、一方を遺伝子増幅反応前の増幅反応液を扱うように使用し、他方は遺伝子増幅反応終了後の増幅反応終了液を扱うように使用することができる。
包装部材内には反応容器と分注チップの組が複数組収容されて包装されているようにしてもよい。
【0017】
本発明による多型検出の対象は特に限定されないが、例えばcDNA、ヒトを含む様々な生物の遺伝子、ウイルス及び細菌を含む様々な微生物の遺伝子などが挙げられる。したがって、これら核酸の配列をもつものを核酸増幅のための鋳型核酸とすることができる。また、これら多型検出の対象となる遺伝子としては、DNAの遺伝子であるかRNAの遺伝子であるかを問わない。
これらの遺伝子を含むサンプルも特に限定されない。すなわち、生体試料、生体由来試料、抽出核酸試料などに対して多型検出を行なうことができる。ここで、生体試料や生体由来試料は、核酸の抽出操作を行なわず、核酸包含体(例えば細胞、真菌、細菌、ウイルスなど、核酸を内部に含有する膜構造体)を維持した形態の試料である。生体試料の例としては、臓器、組織、体液、排泄物などが挙げられる。体液には、血液試料、髄液、唾液、乳などが含まれる。血液試料には、全血、血漿、血清などが含まれる。排泄物には、尿、便などが含まれる。生体由来試料は、生体試料から回収した核酸包含体である。核酸包含体の回収方法は特に限定されないが、遠心・超遠心操作、ポリエチレングリコールなどの共沈剤、吸着担体などを用いた方法が挙げられる。抽出核酸試料は、核酸の抽出操作を行なった試料であり、抽出後さらに核酸を精製した試料であってもよい。抽出方法としては、酵素、界面活性剤、カオトロピック剤などを用いた方法が挙げられる。精製方法としては、フェノール/クロロホルム、イオン交換樹脂、ガラスフィルター、ガラスビーズ、磁気ビーズ、タンパク凝集作用を有する試薬などを用いた方法が挙げられる。
本発明で検出できる多型は、特に限定されず、SNP及び複数ヌクレオチドからなる配列にわたる多型の両方を含む。本発明においては、多型にはさらに変異も含む。具体的には、本発明で検出できる多型の例としては、SNP、挿入多型、欠失多型、反復配列多型などが挙げられる。
ここで、多型部位とプライマーの関係を示すと、1つの多型部位を増幅するためにはその多型部位をはさんで結合する一対のプライマーが必要になる。対象となる生体サンプルには複数種類の多型部位が存在するので、それらの多型部位が互いに離れた位置に存在する場合には多型部位の種類の数の2倍の種類のプライマーが必要になる。しかし、2つの多型部位が接近している場合には、それらの多型部位それぞれをはさんでプライマーを結合させて増幅することも、またそれらの2つの多型部位の間にはプライマーを結合させず、2つの多型部位の配列の両側にのみプライマーを結合させて増幅することもできる。したがって、必要なプライマーの種類は必ずしも多型部位の種類の数の2倍になるわけではない。本発明における「複数の多型部位それぞれをはさんで結合する複数のプライマー」とは一対のプライマーが1つの多型部位をはさんで結合する場合だけでなく、2又はそれ以上の多型部位をはさんで結合する場合も含めて、複数の多型部位を増幅するのに必要な種類のプライマーという意味で使用している。
遺伝子増幅試薬の一例はPCR反応試薬である。
【0018】
SNPのタイピングには増幅工程に入る段階でゲノムDNAの調整が必須であり、そこに手間とコストがかかる。核酸を増幅するPCR法だけに着目すれば、前処理なしで血液などのサンプルから直接PCR反応を行なわせる方法も提案されている。そこでは、サンプル中の目的とする遺伝子を増幅する核酸合成法において、遺伝子を含むサンプル中の遺伝子包含体、すなわち生体由来試料、もしくは遺伝子を含むサンプルそのもの、すなわち生体試料を遺伝子増幅反応液に添加して、添加後の該反応液のpHが8.5−9.5(25℃)で遺伝子を含むサンプル中の目的とする遺伝子を増幅する(特許文献4参照。)。
【0019】
既に構築されているタイピングシステムは、タイピングしようとする複数のSNP領域をPCR法で増幅するために、最初に採取する核酸量は少なくてすむが、PCR法で増幅する前に予め生体サンプルから核酸を抽出しておくという前処理が必要である。そのためにその前処理に時間と手間がかかる。
【0020】
直接PCR法とタイピング方法を結びつけたときに、タイピングを目的とする複数のSNP部位について同時に増幅を行なうような自動化システムはこれまで構築されていなかった。
タイピング工程はインベーダ法やタックマンPCR法を使用することができる。その場合、タイピング試薬はインベーダ試薬又はタックマンPCR試薬である。
【0021】
図15は本発明の反応容器を遺伝子多型診断用試薬キットとして使用して遺伝子多型を検出する際の検出方法を概略的に示したものである。ここでは、増幅工程にはPCR法、タイピング工程にはインベーダ法を使用するものとして説明する。
PCR工程では血液などの生体サンプル2にPCR反応試薬4を添加するか、逆にPCR反応試薬4に生体サンプル2を添加する。
【0022】
PCR反応試薬4は予め調整されたものであり、測定しようとするSNP部位のための複数のプライマーを含み、それにpHを調整するためのpH緩衝液、4種類のデオキシリボヌクレオチド類、熱安定性合成酵素、及びMgCl2、KCl等の塩類などの必要な試薬が添加されている。その他に、界面活性剤や蛋白などの物質を必要に応じて添加することができる。本発明で用いることのある増幅工程のPCR法は、目的とする複数のSNP部位を同時に増幅させるものである。生体サンプルは核酸抽出操作を施しているものであってもよく、核酸抽出操作を施していないものであってもよい。ここで、核酸抽出操作を施していない生体サンプルとは、上述した生体試料、生体由来試料、及び、加熱処理又は凍結処理などの操作によって核酸包含体の膜構造を破壊した状態の生体試料若しくは生体由来試料を含む。核酸抽出操作を施していない生体サンプルから直接PCR法によりそれらのSNP部位を含む複数のゲノムDNAを増幅させる場合には、それらのSNP部位のための複数のプライマーを含む遺伝子増幅反応試薬を生体サンプルに作用させ、サンプル2と混合したときに25℃でのpHが8.5−9.5となる条件下でPCR反応を起こさせる。
【0023】
pH緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸の組合せのほか、種々のpH緩衝液を使用することができる。pH調整された緩衝液は、PCR反応試薬の中で10mMから100mMの間の濃度で使用するのが好ましい。
プライマーはPCR反応によるDNA合成の開始点として働くオリゴヌクレオチドをいう。プライマーは合成したものであってもよく、生物界から単離したものであってもよい。
【0024】
合成酵素はプライマー付加によるDNA合成用の酵素であり、化学合成系も含む。適切な合成酵素としては、E.coliのDNAポリメラーゼI、E.coliのDNAポリメラーゼのクレノーフラグメント、T4DNAポリメラーゼ、TaqDNAポリメラーゼ、T.litoralis DNAポリメラーゼ、TthDNAポリメラーゼ、PfuDNAポリメラーゼ、Hot Start Taq ポリメラーゼ、KOD DNAポリメラーゼ、EX TaqDNAポリメラーゼ、逆転写酵素などがあるが、これらに限定されるものではない。「熱安定性」は、高温下、好ましくは65−95℃でもその活性を保持する化合物の性質を意味する。
【0025】
PCR工程では、生体サンプル2とPCR反応試薬4との混合液を所定の温度サイクルに従ってPCR反応を行なわせる。PCR温度サイクルは、変性、プライマー付着(アニーリング)及びプライマー伸長の3工程を含み、そのサイクルを繰り返すことによりDNAを増幅させる。各工程の一例は、変性工程が94℃で1分間、プライマー付着工程が55℃で1分間、プライマー伸長が72℃で1分間である。生体サンプルは核酸抽出操作を施したものであってもよいが、ここでは核酸抽出操作を施していないものを使用する。核酸抽出操作を施していない生体サンプルであっても、PCR温度サイクルの高温下で核酸が血球や細胞から遊離し、PCR反応に必要な試薬が核酸に接触して反応が進む。
【0026】
PCR反応終了後、タイピング試薬としてインベーダ試薬6が添加される。インベーダ試薬6には蛍光を発するフレット(FRET)プローブ及びクリベース(Cleavase:構造特異的DNA分解酵素)が含まれている。フレットプローブはゲノムDNAと全く無関係な配列をもつ蛍光標識オリゴであり、SNPの種類によらず配列は共通であることが多い。
【0027】
次に、インベーダ試薬6が添加された反応液を複数のプローブ配置部8に添加して反応をさせる。各プローブ配置部8には、複数のSNP部位のそれぞれに対応してインベーダプローブとレポータープローブが個別に保持されており、反応液がインベーダプローブと反応し、そのレポータープローブに対応するSNPが存在すれば蛍光を発する。
【0028】
インベーダ法については、特許文献3の段落[0032]から[0034]に詳しく記載されている。
各レポータープローブはそれに対応したSNPの塩基に応じて2種類のものを用意すれば、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかを判別することができる。
【0029】
タイピング工程で使用するインベーダ法は、アレル特異的オリゴとタイピング対象のSNPを含むDNAとをハイブリダイゼーションすることによりSNP部位をタイピングする方法であり、タイピング対象のSNPを含むDNAと、タイピング対象のSNPのそれぞれのアレルに特異的な2種類のレポータープローブ及び1種類のインベーダプローブと、DNAの構造を認識して切断するという特殊なエンドヌクレアーゼ活性を有する酵素とを用いる方法である(特許文献3参照。)。
【0030】
反応部のうち少なくとも不揮発性液体が分注されるものはその不揮発性液体を保持できる凹部となっていることが好ましい。
【0031】
同じ基板に凹部として形成され、サンプルを注入するためのサンプル注入部をさらに備えていてもよい。
少なくとも反応部は、使用前は剥離可能なシール材で被われていることが好ましい。
タイピング試薬はインベーダ試薬又はタックマンPCR試薬である。
【0032】
第2の目的を達成するための本発明の反応容器処理装置は、本発明の反応容器キットの反応容器を装着する反応容器装着部と、本発明の反応容器キットの分注チップが先端部に装着された分注プローブによる吸引及び吐出を行うための機構を備えて液の移送と分注を行なう分注部と、その分注部の分注動作を制御する制御部とを備えたものである。このような反応容器処理装置の好ましい形態の一例は、図1に示されるように、先端に分注チップ70a,70bを装着する2つの分注プローブ28a,28bを備えた分注部112と、分注部112の分注動作を制御する制御部118とを備えているものである。ここに示した反応容器処理装置は、例えば遺伝子増幅反応などの反応処理を反応容器で行なう場合に、反応処理前の液と反応処理終了後の液との間のコンタミネーションを防止するために、反応処理前の液を扱う分注プローブ28aと、反応処理終了後の液を扱う分注プローブ28bを備えたものである。このような反応容器処理装置では、2つの分注チップ70a,70bを備えた反応容器キットを用いる。しかし、本発明の反応容器処理装置としては、分注プローブを1つだけ備えたものであってもよい。この場合は、分注チップを1つだけ備えた反応容器キットを用いればよい。
【0033】
この反応容器処理装置の好ましい形態では、本発明の反応容器キットの反応容器を、その基板の平板面が水平方向になり、分注チップが垂直方向になる状態で装着する反応容器装着部と、分注プローブによる吸引及び吐出のための機構を備えて液を移送して分注する分注部と、分注部の分注動作を少なくとも制御する制御部とを備え、さらに制御部は、反応容器の保持部材に保持されている分注チップの基端側が上になっている状態で、分注プローブを分注チップに向かって下降させて分注チップに差し込み、上昇させることによりその分注チップを反応容器から脱着させて分注プローブの先端に装着する操作も制御するものである。
この反応容器処理装置は反応部の温度を制御する反応温度制御部110,120をさらに備え、制御部116は反応温度制御部の温度制御も行なうようにすることができる。
【0034】
この反応容器処理装置を遺伝子多型検出装置として使用する場合には、その第1の形態は、反応容器としてタイピング試薬を収容したタイピング試薬収容部をさらに備え、反応部として複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を備えた遺伝子多型診断用反応容器を使用する。そして、図1に示されるように、反応温度制御部としてプローブ配置部の温度をサンプルとタイピング試薬との反応液をプローブと反応させる温度に制御するタイピング反応温度制御部110を備え、この反応容器処理装置は各プローブ配置部に励起光を照射して蛍光を検出する蛍光検出部64をさらに備える。制御部118はタイピング反応温度制御部110の温度制御及び蛍光検出部64の検出動作も制御するものとなる。
タイピング反応としてインベーダ反応を使用する場合は、タイピング反応温度制御部110はインベーダ反応のための温度調節部となる。
【0035】
この反応容器処理装置を遺伝子多型検出装置として使用する第2の形態は、反応容器として複数の多型部位それぞれをはさんで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容した遺伝子増幅試薬収容部をさらに備え、反応部として遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部をさらに備えた遺伝子多型診断用反応容器を使用する。そして、図1に示されるように、反応温度制御部として増幅反応部の温度をサンプルと遺伝子増幅試薬との反応液内でDNAを増幅させる遺伝子増幅のための温度に制御する増幅反応温度制御部120をさらに備え、制御部118は増幅反応温度制御部120の温度制御も行なうものとなる。
【0036】
遺伝子増幅反応としてPCR反応を使用する場合は、増幅反応温度制御部120はPCR反応のための温度サイクル用の温度調節部となる。
制御部118を外部から操作したり検査結果を表示したりするために、制御部118にパーソナルコンピュータ(PC)122を接続してもよい。
【0037】
分注プローブの一例は、先端に使い捨て可能なチップを脱着可能に装着したものである。反応容器の液体収容部がフィルムで封止されていて、そのフィルムで封止された状態で反応容器処理装置に装着される場合には、そのチップにより反応容器のフィルムを貫通して液の吸入を行なうものとなる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の反応容器キットは、反応容器と分注チップを備えているので、反応容器の数だけの分注チップは必ず反応容器処理装置に取り込まれ、分注チップが不足することに伴うコンタミネーションの恐れはなくなる。
ところで、分注チップは分注を行う試薬などの吸入量よりも大きな容量をもつものとするのが一般的であるため、その長さは長くなる。したがって、長い分注チップが、反応容器の反応部が形成されている面を上にしたときに、分注チップの基端側が上になるように保持部材に保持された状態であると、反応容器キットが大きくなり、反応容器キットを収納するのに大きな領域が必要となって、消耗品である反応容器キットの運送コストや保管場所が大きくなるという問題が生じる。
【0039】
そこで、本発明の反応容器キットでは、保持部材に保持された分注チップを反応容器の基板の平板面に沿って配置された状態で包装部材により反応容器と分注チップをともに包装するようにしたので、反応容器キット自体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0040】
本発明の反応容器キットにおいて、保持した分注チップが反応容器の基板の平板面に対し沿った状態と立ち上がった状態との間で変位できるように可動部材を介して保持部材が反応容器に取り付けられているようにすれば、反応容器を包装部材から取り出し、処理装置に装着して分注チップが反応容器の基板の平板面に対して立ち上がった状態とするのが容易になる。この操作は手動で行なうことも自動的に行なうこともできる。この反応容器キットでは、使用時に反応容器処理装置内で分注チップが反応容器の基板の平板面に垂直に立ち上がっているようにして、分注プローブを分注チップに対して上から降下させて分注チップに差し込むことで、分注プローブの先端部に分注チップを装着することができる。
【0041】
保持部材が反応容器に取り付けられている場合、保持部材が反応容器の先端部に取り付けられ、包装された状態では分注チップが反応容器側にくるように折り曲げられているようにすれば、包装された状態での反応容器キットの大きさをコンパクトにすることができる。
【0042】
また、保持部材が反応容器の中間部に取り付けられている場合においても、包装された状態では分注チップが折り曲げられる側の基板の平板面で盛り上がりの小さい側にくるように折り曲げられているようにすれば、包装された状態での反応容器キットの厚みを小さくすることができる。
【0043】
反応容器の保持部材が分注チップを保持したときに少なくとも分注チップの先端部を覆う収納部を備えて、その内部に液を吸収する吸収材を備えているようにすれば、使用済みの分注チップに残った液が飛び散ったり他の部材に付着したりするのを防止することができ、コンタミネーションを避けることができる。
基板又は保持部材の先端側に把持部が形成されていれば、分注チップを立ち上げるための手動操作が容易になる。
【0044】
反応部が設けられている同じ基板に反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容するようにすれば、反応部で反応液の表面を不揮発性液体で被うことにより、反応液が反応部で加熱されても反応液が蒸発してしまう事態をさけることができる。
さらに試薬収容部も備えたものは、サンプルの反応用試薬キットとなって、試薬を別途配置する煩わしさがなくなる。
【0045】
この反応容器を遺伝子多型診断用試薬キットとして使用する第1の形態は、タイピング試薬収容部、不揮発性液体収容部及びプローブ配置部を一体的に備えているので、複数の多型部位が増幅されたDNAサンプルについてそれらの多型部位を同時にタイピングすることができ、多型のタイピングを簡単な工程で短時間に行なうことができる。
【0046】
また、この反応容器を遺伝子多型診断用試薬キットとして使用する第2の形態は、さらに遺伝子増幅試薬収容部と増幅反応部まで一体的に備えているので、生体サンプルから目的とする複数の多型部位を同時に増幅させた後に、それらの多型部位を同時にタイピングすることができ、多型のタイピングを簡単な工程で短時間に行なうことができる。
【0047】
反応部が凹部となっていて不揮発性液体を保持できるようになっておれば、反応部での反応液の蒸発をより効果的に防ぐことができる。
反応部を剥離可能なシール材で被っておけば、使用前はシール材で被っておき、使用時にシール材を剥離することにより、使用前に埃や汚れの付着を防止することができる。
【0048】
増幅反応部を備えている反応容器においては、増幅反応部の液分注用ポートを分注プローブに装着された分注チップの先端形状に対応した開口形状にして分注チップの先端に密着できる弾性素材で構成しておけば、増幅反応部への混合液の注入動作、及び増幅反応部からの反応液の回収を容易に行なうことができるようになる。
【0049】
本発明の反応容器キットにおいて、2つの分注チップを備え、一方は遺伝子増幅反応前の増幅反応液を扱うものであって、他方は遺伝子増幅反応終了後の増幅反応終了液を扱うものであるようにすれば、遺伝子増幅反応前の増幅反応液と遺伝子増幅反応終了後の増幅反応終了液とが分注チップを介して混合されることがなくなるので、コンタミネーションの発生を防止することができる。
【0050】
本発明の反応容器処理装置では、分注プローブにより液の移送を行なうので、簡単な機構で分注動作を行なうことができる。
反応容器処理装置が、反応容器装着部に反応容器が、分注チップがそれぞれの基端部が上になっている状態で装着され、分注プローブを分注チップに向かって下降させてその先端部に分注チップを装着するものとすれば、分注チップを装着するための機構が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
反応液よりも比重の低い不揮発性液体としては、ミネラルオイル(鉱油)、植物油、動物油、シリコーンオイル又はジフェニルエーテルなどを用いることができる。ミネラルオイルはペトロラタムから蒸留により得られる液体の炭化水素混合物であり、流動パラフィン、流動ペトロラタム、ホワイト油などとも呼ばれ、低比重の軽油も含む。動物油としてはタラの肝油、オヒョウ油、ニシン油、オレンジラフィー油又はサメの肝油などを用いることができる。また、植物油としてはカノーラ油、扁桃油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ピーナツ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油などを用いることができる。
【0052】
最初に反応容器キットの実施例を説明する。以下に説明する反応容器キットは、図1に示すように、液の移送や分注を行なうための分注プローブを2つ備えた反応容器処理装置に対して用いるために、2つの分注チップを備えたものである。なお、本発明の反応容器キットはこの実施例のものに限定されず、分注チップを1つだけ備えたものであってもよい。
【0053】
図2は反応容器キットの第1の実施例である。(A)は反応容器処理装置に装着時の正面図、(B)は平面図、(C)は未使用時の包装された状態での正面図である。
この反応容器キットは、平板状の板状基板9の同じ側に試薬収容部14及び不揮発性液体収容部16が凹部として形成された反応容器10を備えている。不揮発性液体としてはミネラルオイルを使用し、以後、不揮発性液体収容部をミネラルオイル収容部と称す。基板9の同じ側にはさらに、反応部18も形成されている。試薬収容部14とミネラルオイル収容部16はフィルム20で封止されており、試薬とミネラルオイルを分注プローブで吸入して他の場所に移送する際には、そのフィルム20を取り除いて分注プローブで吸入するか、又はそのフィルム20を分注プローブで貫通可能なものとしておいて分注プローブを貫通させて分注プローブで吸入する。そのようなフィルム20は、例えばアルミニウム箔、アルミニウムとPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどの樹脂フィルムとの積層膜などであり、容易に剥がれないように融着や接着により貼りつけられている。
【0054】
反応容器10の表面は、フィルム20上から、試薬収容部14、ミネラルオイル収容部16及び反応部18を被う大きさの剥離可能なシール材22で被われている。このシール材22もアルミニウム箔、アルミニウムと樹脂との積層膜などであるが、貼りつけ強度はフィルム20よりは弱く、融着や粘着剤などにより剥離可能な程度に貼りつけられている。
【0055】
この反応容器の具体的な用途の一例は、PCR反応によりDNAを増幅させたサンプル反応液を注入し、インベーダ反応によりSNPを検出する遺伝子多型診断用試薬キットとなったものである。図2を参照して、その遺伝子多型診断用試薬キットとしての実施例を詳細に説明する。
【0056】
平板状の基板9の同じ側にサンプル注入部12、タイピング試薬収容部14、及びミネラルオイル収容部16が凹部として形成されている。基板9の同じ側にはさらに、反応部として複数のプローブ配置部18も形成されている。
【0057】
サンプル注入部12はPCR反応によりDNAを増幅させた生体サンプル反応液が注入されるものであるが、使用前の状態ではまだサンプルが注入されない空の状態で提供される。タイピング試薬収容部14は複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を10〜300μL収容しており、ミネラルオイル収容部16は反応液の蒸発を防ぐためのミネラルオイルを20〜300μL収容しており、これらのタイピング試薬収容部14とミネラルオイル収容部16は分注プローブで貫通可能なフィルム20で封止されている。
【0058】
各プローブ配置部18は複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持しており、ミネラルオイル収容部16からのミネラルオイルが分注されたときにそのミネラルオイルを保持できる凹部となっている。各プローブ配置部18の凹部の大きさは、例えば直径が100μm〜2mm、深さが50μm〜1.5mmの円形である。
【0059】
基板9の表面は、フィルム20上から、サンプル注入部12、タイピング試薬収容部14、ミネラルオイル収容部16及びプローブ配置部18を被う大きさの剥離可能なシール材22で被われている。
【0060】
基板9は底面側から蛍光を測定するために、低自蛍光性(それ自身からの蛍光発生が少ない性質のこと)で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートなどの素材で形成されている。基板10の厚さは0.3〜4mm、好ましくは1〜2mmである。低自蛍光性の観点から基板10の厚さは薄い方が好ましい。
【0061】
この反応容器キットは、分注プローブの先端に装着して液の吸入・吐出を行なうための分注チップ70a,70bを備えている。分注チップ70a,70bは平板状の保持部材42に脱着可能に保持されている。保持部材42には、分注チップ70a,70bを脱着可能に保持するために、分注チップ70a,70b断面の最大径よりも小さい径をもつ円形の開口部42a,42bが形成されており、分注チップ70a,70bは開口部42a,42bに差し込まれている。
【0062】
保持部材42は反応容器10の先端部に取り付けられている。保持部材42は、保持した分注チップ70a,70bが反応容器10の基板9の平板面に対し沿った状態と立ち上がった状態との間で変位できるように可動部材(図示は省略)を介して反応容器10の基板9に取り付けられている。
【0063】
基板9と保持部材42の間の可動部材は、基板9と保持部材42とともに同一の樹脂によって一体成型し、この可動部材部分の肉厚を薄くして屈曲可能にしたものでもよく、又は組み立てられたヒンジであってもよい。
【0064】
この反応容器キットは、使用前の包装された状態では、図2(C)に示されるように、保持部材42に保持された分注チップ70a,70bが反応容器10側にくるように折り曲げられ、分注チップ42a,42bが反応容器10の基板9の平板面に沿って配置された状態で、反応容器10と分注チップ42a,42bがともに包装部材74内に収納されて包装されている。このような状態にすることで、反応容器キットの厚みを薄くすることができるので、反応容器キットの収納や搬送に好都合になる。
包装部材74は樹脂製又は樹脂にアルミニウムを被覆したフイルム製である。
【0065】
この反応容器キットは、使用時は、図2(A)に示されるように、包装部材74から取り出され、保持部材42が反応容器10の基板9の平板面に平行な方向になり、保持部材42に保持されている分注チップ70a,70bが基板9の平板面に垂直な方向になるように、保持部材42を延ばす。この状態で反応容器10が反応容器処理装置に装着されることにより、分注プローブ28aを上から下降させて分注チップ70aに差し込み、上に引き上げることで分注チップ70aが保持部材42の開口部42aから引き抜かれて分注プローブ28aの先端部に装着される。同様に、分注プローブ28bを上から下降させて分注チップ70bに差し込み、上に引き上げることで分注チップ70bが開口部42bから引き抜かれて分注プローブ28bの先端部に装着される。
分注チップ70a及び70bの先端は、反応容器10の試薬保持部のフィルムを突き破ることができるように細くなっている。
【0066】
保持部材42は分注チップ70a,70bを保持しているときに少なくとも分注チップ70a,70bの先端部を覆う収納部43a,43bを備えている。収納部43a,43b内には、使用済み分注チップ70a,70bに付着した液を吸収するために、ろ紙などの吸収材44a,44bが設けられている。これにより、分注チップ70a又は70bを使用後に収納部43a,43b内に戻すことで、分注チップ70a,70bに付着した廃液を吸収材44a,44bに吸収することができる。使用ずみの分注チップ70a,70bは収納部43a,43bに戻された状態で廃棄することにより、廃液の液こぼれを防止することができ、コンタミネーションを避けることができる。
【0067】
図2に示した反応容器キットは、保持部材42が反応容器10の端部に設けられているが、保持部材42は反応容器10の端部とは異なる位置に設けられていてもよい。図3では、基板9の中間部に保持部材42を嵌め込むことができる開口部9aが設けられており、保持部材42周縁部の一部が開口部9aの一部に折曲げ可能に取り付けられている。保持部材42は、分注チップ70a,70bが折り曲げられる側の基板の平板面で盛り上がりの小さい側、この例ではプローブ配置部18の裏面側、にくるように折り曲げられる。
【0068】
使用前の包装された状態では、図3(C)に示されるように、分注チップ70a,70bがプローブ配置部18の裏面側で基板の平板面に対して平行な方向になるように折り曲げられて包装されている。
この反応容器キットにおいても、保持部材42が可動部材を介して基板9に取り付けられており、使用時には図3(A)に示すように、分注チップ70a,70bが基板9の平板面に対して垂直な方向になるように立ち上げられて反応容器処理装置に装着される。
【0069】
図3に示した反応容器キットの反応容器10の端部に、複数の隆起形状からなる把持部10aが形成されていてもよい。把持部10aが形成されていることで、分注チップ70a,70bを立ち上げる際の手動操作が容易になる。
図2に示されている反応容器においても、保持部材42の端部にこのような把持部10aを設けてもよい。
【0070】
また、本発明の反応容器キットとしては、反応容器10と保持部材が一体になっていないものであってもよい。例えば図4(A)に示すように、包装部材74に収納された状態では、分注チップ70a,70bが反応容器10の基板の平板面に平行な方向に保持された状態で、包装部材74に反応容器10と分注チップ70a,70bが同封されているものである。この場合も、分注チップ70a,70bは、分注チップ70a,70bの先端部を少なくとも覆う収納部71a,71bを備えた保持部材72に保持された状態で包装部材74に封入されているのが好ましい。そして、収納部71a,71b内には、分注チップ70a,70bに付着した液を吸収する吸収材73a,73bが設けられているのが好ましい。
【0071】
保持部材72は、図4(B)に示されるように、反応容器10を扱う反応容器処理装置に設置できるようになっており、操作者が保持部材72を反応容器処理装置の所定の箇所に設置する。使用済みの分注チップ70a,70bは反応容器処理装置内で自動的に保持部材72に戻されて廃棄することができる。その際、使用済みの分注チップ70a,70bに付着した廃液の液こぼれを防止することができる。
【0072】
次に、図2の実施例の反応容器の使用方法を示すが、他の実施例の反応容器についても同様である。
反応容器キットのチップ保持部材42は、反応容器10が処理装置に装着される前は図2(C)の状態に包装されている。反応容器10が包装部材74から取り出された後、図5に示されるように、シール材22が剥がされる。タイピング試薬収容部14とミネラルオイル収容部16を封止しているフィルム20は剥がされないでそのまま残っている。
【0073】
サンプル注入部12に外部でPCR反応によりDNAが増幅されたサンプル反応液24がピペット26などにより2〜20μL注入される。その後、反応容器キットが、操作者の手によって、又は自動的に、分注チップ70a,70bの基端部が上になるようにチップ保持部材42が引き延ばされ、分注チップ70a,70bが反応容器10の基板の平板面に垂直に立ち上がった状態となる(図2(A)の状態)。
反応容器処理装置において、分注チップ70aが分注プローブ28aの先端部に装着され、分注チップ70bが分注プローブ28bの先端部に装着される。
【0074】
図6に示されるように、分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aがフィルム20を貫通してタイピング試薬収容部14に挿入されてタイピング試薬が吸入され、タイピング試薬はその分注プローブ28aによりサンプル注入部12に移送される。サンプル注入部12では分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aによる吸入と吐出が繰り返されることにより、サンプル反応液とタイピング試薬が混合される。
【0075】
その後、サンプル反応液とタイピング試薬との反応液が分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bにより各プローブ配置部18へ分注される。各プローブ配置部18には分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bによりミネラルオイル収容部16からミネラルオイルが分注される。プローブ配置部18へのミネラルオイルの分注は、プローブ配置部18への反応液の分注前であってもよい。各プローブ配置部18ではミネラルオイルが0.5〜10μLずつ分注されて、そのミネラルオイルが反応液の表面を被い、検出装置のタイピング反応温度制御部での加熱を伴なうタイピング反応時間中の反応液の蒸発を防止する。
各プローブ配置部18では反応液がプローブと反応して所定のSNPがあればそのプローブから蛍光が発せられる。蛍光は基板9の裏面側から励起光を照射することにより検出する。
【0076】
図7は反応容器キットのさらに他の実施例である。(A)は使用時の正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のX−X線位置での拡大断面図、(D)は使用前の包装された状態の正面図である。
この反応容器は核酸抽出操作を施していない生体サンプルをサンプルとして注入し、PCR反応によるDNAの増幅と、インベーダ反応によるSNP検出を共に行なうものである。ただし、核酸抽出操作を施していない生体サンプルを注入してもよい。
【0077】
この反応容器の平板状の基板76の同じ側に、図2の実施例と同じサンプル注入部12、タイピング試薬収容部14、ミネラルオイル収容部16、及び複数のプローブ配置部18が形成されている。この反応容器では、さらに遺伝子増幅試薬収容部30、PCR終了液注入部31、及び増幅反応部32が基板76の同じ側に形成されている。
【0078】
この実施例の反応容器キットでも、図2の反応容器キットと同様に、分注チップ70a,70bを脱着可能に保持した保持部材42を備えている。そして、図2の反応容器キットと同様、保持部材42は基板76の端部に可動部材(図示は省略)を介して取り付けられている。使用前は図7(D)に示されるように、分注チップ70a,70bが基板76の平板面に平行な方向になるように折りたたまれており、使用時は図7(A)に示すように、分注チップ70a,70bが基板76の基板の平板面に垂直な方向になるように立ち上げられる。
【0079】
遺伝子増幅試薬収容部30も基板76に凹部として形成され、複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容している。遺伝子増幅試薬収容部30はタイピング試薬収容部14及びミネラルオイル収容部16とともに、分注プローブで貫通可能なフィルム20で封止されている。遺伝子増幅試薬収容部30にはPCR反応試薬が2〜300μL収容されている。タイピング試薬収容部14には図2の実施例と同様に、タイピング試薬が10〜300μL収容されており、ミネラルオイル収容部16には20〜300μLのミネラルオイルが収容されている。
【0080】
PCR終了液注入部31は増幅反応部32でPCR反応を終了した反応液とタイピング試薬とを混合するためのもので、基板76に凹部として形成され、使用前の状態では空の状態で提供される。
増幅反応部32はPCR反応試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせるものである。
【0081】
増幅反応部32の部分の断面を拡大して図9に示す。図9は図7(B)のY−Y線位置での断面図である。図9に示されるように、増幅反応部32の液分注用ポート34a,34bは分注プローブ28a,28bの先端形状に対応した形状の開口36a,36bをもち、分注プローブ28aと28bの先端部に装着された分注チップ70a,70bの先端に密着できるようにPDMS(ポリジメチルシロキサン)やシリコーンゴムなどの弾性素材で構成されている。
【0082】
増幅反応部32は熱伝導率をよくするためにその部分の基板76の下面側が、図7(C)、図9に示されるように肉厚が薄くなっている。その部分の肉厚は、例えば0.2〜0.3mmである。
サンプル注入部12は、この実施例では核酸抽出操作を施していない生体サンプルが注入されるが、使用前の状態ではまだサンプルが注入されない空の状態で提供される。
【0083】
図2の実施例と同じく、タイピング試薬収容部14は複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容しており、ミネラルオイル収容部16は反応液の蒸発を防ぐためのミネラルオイルを収容している。
各プローブ配置部18も図2の実施例と同じく、複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持しており、ミネラルオイル収容部16からのミネラルオイルが分注されたときにそのミネラルオイルを保持できる凹部となっている。
【0084】
基板76の表面は、フィルム20上から、サンプル注入部12、PCR終了液注入部31、タイピング試薬収容部14、ミネラルオイル収容部16、遺伝子増幅試薬収容部30、増幅反応部32及びプローブ配置部18を被う大きさの剥離可能なシール材22で被われている。フィルム20とシール材22の材質及びその貼りつけ方法は図2の実施例と同じである。
基板76も底面側から蛍光を測定するために、低自蛍光性で光透過性の樹脂、例えばポリカーボネートなどの素材で形成されている。基板76の厚さは1〜2mmである。
【0085】
さらに他の実施例の反応容器キットとして、分注チップ70a,70bの保持部材42が基板76の中間部に取り付けられているものを図8に示す。プローブ配置部18と増幅反応部32の間に保持部材42を嵌め込むことができる開口部76aが形成され、保持部材42が開口部76aの内側に可動部材(図示は省略)を介して折曲げ可能に取り付けられている。使用前の包装された状態では、図8(C)に示されるように、分注チップ70a,70bがプローブ配置部18の裏面側で基板76の平板面に対して水平な方向になるように折りたたまれて包装部材74内に収納され、使用時は図8(A)に示されるように、分注チップ70a,70bが基板76の平板面に対して垂直な方向になるように立ち上げられる。
【0086】
図7に示した反応容器キットの使用方法を示す。
図10に示されるように、使用時にシール材22が剥がされる。タイピング試薬収容部14、ミネラルオイル収容部16及び遺伝子増幅試薬収容部30を封止しているフィルム20は剥がされないでそのまま残っている。
サンプル注入部12にサンプル25がピペット26などにより0.5〜2μL注入される。図2の実施例では、注入されるサンプルは外部でPCR反応によりDNAが増幅されたサンプル反応液であるが、この実施例で注入されるサンプルは核酸抽出操作を施していない生体サンプル、例えば血液である。サンプルは核酸抽出操作を施した生体サンプルであってもよい。サンプル注入後、この反応容器が検出装置に装着される。反応容器が検出装置に装着された状態では手動で又は自動的に分注チップ70a,70bが基板76の平板面に対して垂直な方向になるように立ち上げられる。
【0087】
反応容器処理装において、図11に示されるように、分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aがフィルム20を貫通して遺伝子増幅試薬収容部30に挿入されてPCR反応試薬が吸入され、サンプル注入部12に5〜20μL移送される。サンプル注入部12では分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aによる吸入と吐出が繰り返されることにより、サンプル反応液とPCR反応試薬が混合されてPCR反応液となる。
【0088】
次に、図9(A)に示されるように、そのPCR反応液が分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aにより増幅反応部32へ注入される。このとき、増幅反応部32での反応中にPCR反応液38が蒸発するのを防ぐために、PCR反応液38の両端がミネラルオイル40で閉じられた状態とする。また、注入されたPCR反応液38が増幅部の遺伝子増幅反応温度制御領域にのみ配置される状態となることが好ましく、そのような状態になるように制御装置により分注装置でのPCR反応液38とミネラルオイル40の分注量が制御される。
【0089】
増幅反応部32にPCR反応液38をこのような状態に分注する1つの方法として、分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aが増幅反応部32の一方のポート34aに挿入されてそのPCR反応液38が注入され、続いてポート34a,34bに分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aによりミネラルオイル40が注入される。
【0090】
増幅反応部32にPCR反応液38を分注する他の方法は、分注プローブ28aの先端部に装着された分注チップ70aによりミネラルオイル40、PCR反応液38、ミネラルオイル40の順に吸引し、分注チップ70a内では上層にミネラルオイル39、中間層にPCR反応液38、下層にミネラルオイルの3層になる状態にする。その後、増幅反応部32へ3層の液をそのまま注入する。
【0091】
PCR反応終了後、PCR反応終了液38aがポート34a又は34aから分注プローブ28bの先端に装着された分注チップ70bにより回収される。このとき、ミネラルオイル40/PCR反応終了液38a/ミネラルオイル40の3層のまま、又はミネラルオイル40/PCR反応終了液38aの2層で回収される。ここで、回収を容易にするために、図9(B)に示されるように、増幅反応部32の一方のポート34aからミネラルオイル40が注入されてもよい。反応終了後のPCR反応終了液38aは他方のポート34bに押しやられる。そこで、分注チップ70bがポート34bに挿入され、PCR反応終了液38aが分注チップ70bに吸入される。PCR反応終了液38aの回収に際しては、分注チップ70bにはミネラルオイル40/PCR反応終了液38a/ミネラルオイル40の3層を吸入してもよく、又はミネラルオイル40/PCR反応終了液38aの2層を吸入してもよい。ポート34a,34bはその開口36a,36bの形状が分注チップ70a,70bの形状に合わせて形成され、かつ弾性素材で形成されているので、分注チップ70a,70bがポート34a,34bに密着して液漏れを防ぎ、PCR反応液の注入と回収の操作が容易である。
ここで、ポート34aから注入する液体はミネラルオイル40に限らず、他の液体であってもよく、好ましくは比重が反応液と同じか反応液よりも低い液体である。
【0092】
分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bにより増幅反応部32から回収された反応終了後のPCR反応終了液38aはPCR終了液注入部31に移送されて注入される。
ポート34a,34bはその開口36a,36bの形状が分注プローブ28a,28bの先端部に装着された分注チップ70a,70bの形状に合わせて形成され、かつ弾性素材で形成されているので、分注プローブ28a,28bの先端部に装着された分注チップ70a,70bがポート34a,34bに密着して液漏れを防ぎ、PCR反応液の注入と回収の操作が容易である。
【0093】
次に、分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bがフィルム20を貫通してタイピング試薬収容部14に挿入されてタイピング試薬が吸入され、タイピング試薬はその分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bによりPCR終了液注入部31に移送されて注入される。PCR終了液注入部31では分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bによる吸入と吐出が繰り返されることにより、PCR反応液とタイピング試薬が混合される。
【0094】
その後、PCR反応液とタイピング試薬との反応液が分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bにより各プローブ配置部18へ0.5〜4μL分注される。各プローブ配置部18には分注プローブ28bの先端部に装着された分注チップ70bによりミネラルオイル収容部16からミネラルオイルが分注される。プローブ配置部18へのミネラルオイルの分注は、プローブ配置部18への反応液の分注前であってもよい。各プローブ配置部18ではミネラルオイルが反応液の表面を被い、検出装置のタイピング反応温度制御部での加熱を伴なうタイピング反応時間中の反応液の蒸発を防止する。
各プローブ配置部18では反応液がプローブと反応して所定のSNPがあればそのプローブから蛍光が発せられる。蛍光は基板10の裏面側から励起光を照射することにより検出する。
【0095】
以下、各反応試薬の組成を示して、本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
PCR反応試薬は既知のものであり、例えば特許文献3の段落[0046]に記載されているような、プライマー、DNAポリメラーゼ及びTaqStart (CLONTECH Laboratories社製)を含む反応試薬を使用することができる。また、PCR反応試薬にはAmpDirect(島津製作所製)が混入されていてもよい。プライマーは、例えば、特許文献3の表1に記載されているSNP ID1〜20、配列番号を1〜40などを使用することができる。
【0096】
タイピング試薬としてインベーダ試薬を使用する。そのインベーダ試薬としては、インベーダーアッセイキット(Third Wave Technology社製)を使用する。例えば、シグナルバッファー、フレットプローブ、構造特異的DNA分解酵素及びアレル特異的プローブを特許文献3の段落[0046]に記載されているような濃度に調製されたものである。
【0097】
図12(A)は図7を参照して説明した反応容器キットを用いて、生体サンプルのSNPを検出するための簡易型反応容器処理装置の一実施例を示したものである。この実施例の反応容器処理装置は、遺伝子増幅反応前の増幅反応液を扱う分注プローブ28aと、遺伝子増幅反応終了後の増幅反応終了液を扱う分注プローブ28bを備えている。分注プローブ28aの先端部には分注チップ70aが装着され、分注プローブ28bの先端部には分注チップ70bが装着される。
【0098】
装置内に上下に一対のヒートブロック60と62が配置されて反応容器装着部を構成しており、本発明の反応容器41にサンプルが注入されたものが5枚平行に下側ヒートブロック60上に並べて設置される。これらのヒートブロック60,62は、矢印で示されるY方向に移動することができる。
上側のヒートブロック62には分注プローブ28a,28bによる液の移送や吸入、吐出の際に蓋が開くように開閉可能な窓が設けられている。
【0099】
下側のヒートブロック60は増幅反応部32の温度を所定の温度サイクルになるように制御する増幅反応温度制御部と、プローブ配置部18の温度をDNAとプローブとを反応させる温度に制御するタイピング反応温度制御部とを備えている。増幅反応温度制御部の温度は、例えば94℃、55℃及び72℃の3段階にその順に変化させられ、そのサイクルが繰り返されるように設定されている。タイピング反応温度制御部の温度は、例えば63℃に設定されている。
【0100】
図13に示されるように、タイピング反応温度制御部を構成する上側のヒートブロック62はプローブ配置部に対応する位置にのみ開口150をもち、下側のヒートブロック60でタイピング反応温度制御部を構成する部分もプローブ配置部に対応する位置にのみ開口152をもっている。ヒートブロック62上にはタイピング反応温度制御部カバー154が被せられており、そのカバー154にもヒートブロック62の開口150の位置にのみ開口156が開けられている。開口150,156を介してノズル28で反応容器41のプローブ配置部へ反応液を分注する。
反応容器41として図2の実施例のように増幅反応部を備えていないものを使用する場合には、増幅反応部の温度を制御する増幅反応温度制御部は不要である。
【0101】
ヒータブロック60の下部には蛍光検出を行なう蛍光検出部64が配置されており、蛍光検出部64は反応容器41の下面側からヒータブロック60の開口152を介してプローブ配置部に励起光を照射し、反応容器41の下面側でヒータブロック60の開口152を介してプローブ配置部からの蛍光を検出する。蛍光検出部64は図10の矢印X方向に移動してブローブ配置部18からの蛍光を検出する。反応容器装着部によるプローブ配置部18のY方向移動と、蛍光検出部64のX方向移動により各ブローブでの蛍光検出を行なう。
【0102】
図12(A)に戻って説明すると、分注プローブ28a,28bによる液の移送や吸入、吐出を行なうために、分注部として送液アーム66が設けられており、送液アーム66は2つの分注プローブ28a,28bを備えている。分注プローブ28a,28bはその先端に使い捨て可能な分注チップ70a,70bが脱着可能に装着される。
【0103】
ヒートブロック60,62、蛍光検出部64及び送液アーム66の動作を制御するために、それらの近くに制御部118が配置されている。制御部118はCPUを備えて、動作のためのプログラムを保持している。制御部118は分注チップ70aを分注プローブ28aの先端部に、分注チップ70bを分注プローブ28bの先端部に装着する動作、ヒートブロック60,62により実現されるタイピング反応部110や増幅部120の温度制御、蛍光検出部64の検出動作、及び分注部112の送液アーム66の分注動作を制御する。
【0104】
反応容器41として図2の反応容器のように遺伝子増幅反応部を備えていないものを使用する場合には、遺伝子増幅反応部の温度を制御する増幅部は必要ではなく、制御部118も増幅部の温度制御のための機能を備える必要がない。
【0105】
なお、この実施例の反応容器処理装置は2つの分注プローブ28a,28bが1つの送液アーム66に取り付けられているが、図12(B)に示されるように、2つの送液アーム66−1,66−2を設け、2つの分注プローブ28a,28bが別々の送液アーム66−1,66−2に取り付けられていてもよい。
【0106】
図14は検出器64を詳細に示したものである。検出器64は励起光源として473nmのレーザ光を発するレーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)92を備え、そのレーザ光を反応容器41のプローブ配置部の底面に集光して照射する一対のレンズ94,96を備えている。レンズ94はレーザダイオード92からのレーザ光を集光して平行光にするものであり、レンズ96は平行にされたレーザ光を反応容器41の底面に収束させて照射する対物レンズである。対物レンズ96はまた、反応容器41から発生する蛍光を集光するレンズとしても作用する。一対のレンズ94,96の間にはダイクロイックミラー98が設けられており、ダイクロイックミラー98は励起光を透過させ、蛍光を反射させるように波長特性が設定されている。ダイクロイックミラー98の反射光(蛍光)の光路上にはさらにダイクロイックミラー100が配置されている。ダイクロイックミラー100は525nmの光を反射し605nmの光を透過するように波長特性が設定されている。ダイクロイックミラー100による反射光の光路上には525nmの蛍光を検出するようにレンズ102と光検出器104が配置され、ダイクロイックミラー100による透過光の光路上には605nmの蛍光を検出するようにレンズ106と光検出器108が配置されている。この2つの検出器104,108による2種類の蛍光検出により、各プローブ配置位置に固定されたインベーダプローブに対応したSNPの有無と、そのSNPがホモ接合体であるかヘテロ接合体であるかが検知される。標識蛍光体としては、例えばFAM、ROX、VIC、TAMRA、Redmond Redなどを使用することができる。
【0107】
図14の検出器64は1光源による励起光で励起し、2波長の蛍光を測定するように構成されているが、検出器64としては2波長の蛍光測定のために異なる励起波長で励起できるように2光源を使用するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は種々の化学反応の測定のほか、例えば遺伝子解析の研究や臨床分野において、種々の自動分析に利用することができ、例えば、人間を初めとして、動物や植物のゲノムDNAの多型、特にSNPなどを検出することができ、さらにその結果を用いて病気罹患率の診断や、投与薬剤の種類と効果及び副作用との関係などの診断のほか、動物や植物の品種判定、感染症診断(感染菌の型判定)などを行なうのにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明を概略的に示すブロック図である。
【図2】反応容器キットの第1の実施例を示す図であり、(A)は処理装置に装着する時の正面図、(B)は平面図、(C)は使用前の包装された状態の正面断面図である。
【図3】反応容器キットの第2の実施例を示す図であり、(A)は使用時の正面図、(B)は平面図、(C)は使用前の包装された状態の正面断面図である。
【図4】反応容器キットの第3の実施例を示す図であり、(A)は使用前の包装された状態の正面断面図、(B)は使用時の正面図である。
【図5】図2の実施例の反応容器キットを使用したSNP検出方法の工程の前半部を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図6】同実施例の反応容器キットを使用したSNP検出方法の工程の後半部を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図7】反応容器キットの第4の実施例を示す図であり、(A)は使用時の正面図、(B)は平面図、(C)は(B)のX−X線位置での拡大断面図、(D)は使用前の包装された状態の正面断面図である。
【図8】反応容器の第5の実施例を示す図であり、(A)は処理装置に装着時の正面図、(B)は平面図、(C)は使用前の包装された状態の正面断面図である。
【図9】図7の実施例での増幅反応部を図7(B)のY−Y線位置での拡大断面図として示す図であり、(A)は反応液が注入された状態、(B)は反応液を回収するため状態である。
【図10】図7の実施例の反応容器を使用したSNP検出方法の工程の前半部を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図11】同実施例の反応容器を使用したSNP検出方法の工程の後半部を示す図であり、(A)は正面図、(B)は平面図である。
【図12】本発明の反応容器を試薬キットとして用い、生体サンプルのSNPを検出するための簡易型反応容器処理装置の実施例を示す概略斜視図であり、(A)は送液アームが1つの場合、(B)は送液アームが2つの場合である。
【図13】同実施例におけるタイピング反応温度制御部を示す断面図である。
【図14】同実施例における検出器を示す概略構成図である。
【図15】本発明が関係することのあるSNP検出方法を概略的に示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0110】
2 サンプル
4 PCR反応試薬
6 インベーダ試薬
8 プローブ配置部
9 基板
10 反応容器
12 サンプル注入部
14 タイピング試薬収容部
16 ミネラルオイル収容部
18 プローブ配置部
20 フィルム
22 シール材
28a,28b 分注プローブ
30 遺伝子増幅試薬収容部
31 PCR終了液注入部
32 増幅反応部
34a,34b 増幅反応部のポート
36a,36b ポートの開口
42,72 保持部材
43a,43b 収納部
44a,44b 吸収材
60,62 ヒートブロック
64 検出器
66a,66b 送液アーム
70a,70b 分注チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基板の一面にサンプルに反応を起こさせるための反応部が少なくとも1つ形成された反応容器と、
分注機構の分注プローブに装着されて前記反応容器の反応部にサンプル及び/又は試薬を分注するための分注チップと、
前記分注チップを脱着可能に保持する保持部材と、
前記保持部材に保持された前記分注チップが前記反応容器の基板の平板面に沿って配置された状態の反応容器と分注チップの組を包装する包装部材と、を備えている反応容器キット。
【請求項2】
前記保持部材は、保持した分注チップが反応容器の基板の平板面に対し沿った状態と立ち上がった状態との間で変位できるように可動部材を介して反応容器に取り付けられている請求項1に記載の反応容器キット。
【請求項3】
前記保持部材は反応容器の先端部に取り付けられ、包装された状態では分注チップが反応容器側にくるように折り曲げられている請求項2に記載の反応容器キット。
【請求項4】
前記保持部材は反応容器の中間部に取り付けられ、包装された状態では分注チップが折り曲げられる側の基板の平板面で盛り上がりの小さい側にくるように折り曲げられている請求項2に記載の反応容器キット。
【請求項5】
前記保持部材は、前記分注チップを保持したときに少なくとも分注チップの先端部を覆う収納部を備えており、その収納部の内部に液を吸収する吸収材を備えている請求項1から4のいずれかに記載の反応容器キット。
【請求項6】
前記基板又は保持部材の先端側には把持部が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の反応容器キット。
【請求項7】
前記反応容器は、前記基板に凹部として形成され、反応液よりも比重の低い不揮発性液体を収容しフィルムで封止された不揮発性液体収容部を備えている請求項1から6のいずれかに記載の反応容器キット。
【請求項8】
前記反応容器は、前記基板に凹部として形成され、前記サンプルの反応に使用される試薬を収容しフィルムで封止された少なくとも1つの試薬収容部をさらに備えてサンプルの反応用試薬キットを構成している請求項7に記載の反応容器キット。
【請求項9】
前記試薬収容部として複数の多型部位に対応して調製されたタイピング試薬を収容したタイピング試薬収容部を含み、
前記反応部として前記複数の多型部位のそれぞれに対応して蛍光を発するプローブを個別に保持した複数のプローブ配置部を含み、
遺伝子多型診断用試薬キットを構成している請求項8に記載の反応容器キット。
【請求項10】
前記試薬収容部として複数の多型部位それぞれを挟んで結合する複数のプライマーを含む遺伝子増幅試薬を収容した遺伝子増幅試薬収容部をさらに含み、
前記反応部として前記遺伝子増幅試薬とサンプルとの混合液に対して遺伝子増幅反応を行なわせる増幅反応部をさらに含んでいる請求項9に記載の反応容器キット。
【請求項11】
前記反応容器と分注チップの組には反応容器1つに対して分注チップを2つ備えている請求項1から10に記載の反応容器キット。
【請求項12】
前記包装部材内には前記反応容器と分注チップの組が複数組収容されて包装されている請求項1から11に記載の反応容器キット。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の反応容器キットの反応容器を装着する反応容器装着部と、前記反応容器キットの分注チップが先端部に装着された分注プローブによる吸引及び吐出のための機構を備えて液を移送して分注する分注部と、
前記分注部の分注動作を少なくとも制御する制御部と、を備えた反応容器処理装置。
【請求項14】
請求項2から12のいずれかに記載の反応容器キットの反応容器をその基板の平板面が水平方向になり、反応容器に保持された分注チップが垂直方向になる状態で装着する反応容器装着部と、分注プローブによる吸引及び吐出のための機構を備えて液を移送して分注する分注部と、前記分注部の分注動作を少なくとも制御する制御部と、を備えた反応容器処理装置であって、
前記制御部は、前記分注プローブを前記分注チップに向かって下降させて分注チップに差し込み、上昇させることによりその分注チップを前記保持部材から脱着させて分注プローブの先端に装着する操作も制御する反応容器処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−178328(P2007−178328A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378525(P2005−378525)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】