説明

反応容器ホルダ及び自動分析装置

【課題】光学測定を妨げることなく反応容器内の検体や試薬の保温性能の向上が可能な反応容器ホルダ及び自動分析装置を提供すること。
【解決手段】複数の反応容器を保持する反応容器ホルダ6を恒温液によって所定温度に保温する恒温槽9を備えた反応容器ホルダ及び自動分析装置。反応容器ホルダ6は、反応容器を保持する保持部6cに測光窓6eが形成され、保持部6cの測光窓6e下部部分が恒温液LT中に浸漬される。自動分析装置は、反応容器ホルダ6を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器ホルダ及び自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、検体と試薬とを反応させ、反応液を光学的に測定することによって検体の成分を分析する自動分析装置は、反応容器内の検体と試薬を一定温度の下で反応させるため恒温液を収容した恒温槽を備えたものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】実開昭57−142346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された恒温槽は、反応容器の下部を底部から下方へ突出させて光学測定に利用すると共に、収容した恒温液によって反応容器の上部を保温している。このため、反応容器は、容器下部の検体や試薬中に対流が発生せず、容器下部が温まり難いことから検体や試薬を所定温度に保温する点で問題があった。この場合、恒温槽は、恒温液によって反応容器の下部まで保温しようとすると、反応容器の光学測定が妨げられてしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光学測定を妨げることなく反応容器内の検体や試薬の保温性能の向上が可能な反応容器ホルダ及び自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の反応容器ホルダは、複数の反応容器を保持する反応容器ホルダを恒温液によって所定温度に保温する恒温槽を備えた反応容器ホルダであって、前記反応容器を保持する保持部に測光窓が形成され、当該保持部の前記測光窓下部部分が前記恒温液中に浸漬されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の反応容器ホルダは、上記の発明において、前記反応容器ホルダは、前記恒温液中に浸漬される前記測光窓下部部分に前記恒温液の熱を吸収する吸熱部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の反応容器ホルダは、上記の発明において、前記恒温槽は、所定温度に加温された恒温液を供給する供給管と、前記反応容器ホルダを保温して温度の低下した恒温液を排出する排出管が底部に接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、検体と試薬とを反応容器内で反応させ、反応液を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、前記の反応容器ホルダを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、反応容器を保持する保持部に測光窓が形成され、保持部の測光窓下部部分が恒温液中に浸漬されているので、反応容器ホルダ及び自動分析装置は、恒温液から保持部を介して伝導する熱によって反応容器が下部から温められ、光学測定を妨げることなく反応容器内の検体や試薬の保温性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の分析装置の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置のキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。
【0012】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、キュベットホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13及び撹拌装置20が設けられている。
【0013】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0014】
検体分注機構5は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応容器7に分注する。
【0015】
キュベットホイール6は、複数の反応容器を保持して回転する反応容器ホルダであり、図1に矢印で示す方向に回転される。キュベットホイール6は、恒温槽9を備え、恒温槽9内の恒温液によって所定温度(37℃)に保温される。
【0016】
キュベットホイール6は、熱伝導性に優れたアルミニウム等から成型され、図2に示すように、モータ8(図2参照)によって回転軸6aを中心として回転される回転板6bの外周に複数の反応容器7を保持する保持部6cが配置されている。保持部6cは、複数の反応容器7を個々に保持する凹部6dが周方向に沿って等間隔で複数設けられ、各凹部6dの半径方向両側に測定光が通過する測光窓6eが形成されている。キュベットホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。キュベットホイール6の外周近傍には、図1に示すように、測光装置10、洗浄装置11及び撹拌装置20が配置されている。
【0017】
反応容器7は、容量が数μL〜数十μLと微量なキュベットであり、測光装置10の光源から出射された分析光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。
【0018】
恒温槽9は、図2に示すように、予め設定した所定温度に制御された水又は水に近い熱容量を有するエチレングリコール溶液等からなる恒温液LTを貯留している。恒温槽9は、供給管9aと排出管9bが底部に接続されている。供給管9aは、所定温度に加温された恒温液LTを恒温槽9に供給する。排出管9bは、保持部6cを保温して温度の低下した恒温液LTを排出する。恒温槽9は、測光窓6e下部の保持部6cが恒温液LT中に浸漬されている。これにより、恒温槽9は、恒温液LTから保持部6cを介して伝導する熱によって反応容器7に保持された検体や試薬を所定温度(37℃)に保温している。
【0019】
測光装置10は、図1に示すように、キュベットホイール6の外周近傍に配置され、反応容器7に保持された液体を分析する分析光を出射する光源と、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器とを有している。測光装置10は、前記光源と受光器がキュベットホイール6の測光窓6eを挟んで半径方向に対向する位置に光源と受光器が配置されている。
【0020】
洗浄装置11は、反応容器7から液体や洗浄液を排出する排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7から測光後の液体を排出した後、洗浄液を分注する。洗浄装置11は、洗浄液の分注と排出の動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7の内部を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0021】
試薬分注機構12は、キュベットホイール6に保持された複数の反応容器7に試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応容器7に分注する。
【0022】
試薬テーブル13は、検体テーブル3及びキュベットホイール6とは異なる駆動手段によって図1に矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が貼付されている。
【0023】
ここで、試薬テーブル13の外周には、図1に示すように、試薬容器14に貼付した前記情報記録媒体に記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。
【0024】
制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光装置10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び撹拌装置20等と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体の記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する機能を備えている。
【0025】
分析部17は、制御部16を介して測光装置10に接続され、受光器が受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容,分析結果或いは警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0026】
撹拌装置20は、反応容器7に保持された液体を撹拌する装置であり、撹拌棒によって直接液体を撹拌するものや音波によって非接触で液体を撹拌するものがある。
【0027】
以上のように構成される自動分析装置1は、回転するキュベットホイール6によって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器7に試薬分注機構12が試薬容器14から試薬を順次分注する。試薬が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって周方向に沿って搬送され、検体分注機構5によって検体テーブル3に保持された複数の検体容器4から検体が順次分注される。
【0028】
そして、検体が分注された反応容器7は、キュベットホイール6によって撹拌装置20へ搬送され、分注された試薬と検体が順次撹拌されて反応する。このようにして検体と試薬が反応した反応液を保持した反応容器7は、キュベットホイール6が再び回転したときに測光装置10を通過し、光源から出射された分析光の光束BL(図4参照)が透過する。このとき、反応液を透過した光束BLは、受光部で側光され、制御部16によって成分濃度等が分析される。そして、分析が終了した反応容器7は、洗浄装置11によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。自動分析装置1は、このような一連の動作を制御部16の制御の下に自動で実行する。
【0029】
このとき、キュベットホイール6は、保持部6cの測光窓6e下部部分が恒温液LT中に浸漬されている。このため、反応容器7は、恒温液LTから保持部6cを介して伝導する熱によって保持した検体や試薬が下部から温められる。この結果、反応容器7は、保持した検体や試薬内に上下方向に全体に亘る対流が発生して全体的に温められ、検体と試薬との反応が適切に促進される。
【0030】
また、保持部6cは、測光窓6e下部部分だけが恒温液LT中に浸漬され、測光窓6eは恒温液LTの上方に位置する。このため、反応容器7は、検体と試薬が反応した反応液の測光が恒温液LTに妨げられることはなく、光学測定には何ら問題はない。
【0031】
更に、恒温槽9は、供給管9aと排出管9bを底部に接続している。このため、恒温槽9は、所定温度に加温された恒温液LTを底部から供給すると、温度の低下した内部の恒温液LTに対して加温された恒温液LTが上昇し、温度の低下した内部の恒温液LTは下降する。このため、恒温槽9は、加温された恒温液LTを底部から供給することによって、内部の恒温液LTの対流が促進されて温度変化が抑えられると共に、温度の低下した恒温液LTが排出管9bから恒温液LTの流れに沿って容易に排出することができる。
【0032】
ここで、キュベットホイール6は、図3に示すように、恒温液LT中に浸漬される測光窓6e下部部分に恒温液LTの熱を吸収する複数の吸熱フィン6fを周方向に沿って設け、恒温槽9に保持部6cとの隙間を小さくする内側壁9cと外側壁9dを設けてもよい。内側壁9cと外側壁9dは、キュベットホルダ6の測光窓6eと対向する位置に測光用の開口9eが設けられている。このように構成すると、恒温液LTは、外気温度からの影響を抑えることができると共に、キュベットホイール6は、吸熱フィン6fによって恒温液LTから保持部6cに伝導する熱の伝導性が増し、反応容器7に保持された検体や試薬の保温性能がより向上する。
【0033】
なお、キュベットホイール6は、保持部6cの測光窓6e下部部分が恒温液LT中に浸漬されていればよい。このため、キュベットホイール6は、図4に示すように、反応容器7を個々に保持する凹部6dを保持部6cの底面近傍まで伸ばしてもよい。
【0034】
また、自動分析装置1は、試薬テーブルが一つの場合について説明したが、複数有していてもよいし、複数の自動分析装置1を集約した自動分析装置ユニットとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置であって、本発明のキュベットホイールを直径上で切断した断面図である。
【図3】本発明のキュベットホイールの変形例を示す断面図である。
【図4】保持部に形成され、反応容器を個々に保持する凹部の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 キュベットホイール
6a 回転軸
6c 保持部
6e 測光窓
6f 吸熱フィン
7 反応容器
8 モータ
9 恒温槽
9a 供給管
9b 排出管
10 測光装置
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 撹拌装置
LT 恒温液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応容器を保持する反応容器ホルダを恒温液によって所定温度に保温する恒温槽を備えた反応容器ホルダであって、
前記反応容器を保持する保持部に測光窓が形成され、当該保持部の前記測光窓下部部分が前記恒温液中に浸漬されることを特徴とする反応容器ホルダ。
【請求項2】
前記反応容器ホルダは、前記恒温液中に浸漬される前記測光窓下部部分に前記恒温液の熱を吸収する吸熱部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反応容器ホルダ。
【請求項3】
前記恒温槽は、所定温度に加温された恒温液を供給する供給管と、前記反応容器ホルダを保温して温度の低下した恒温液を排出する排出管が底部に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の反応容器ホルダ。
【請求項4】
検体と試薬とを反応容器内で反応させ、反応液を光学的に測定することによって前記検体の成分を分析する自動分析装置であって、請求項1〜3のいずれか一つに記載の反応容器ホルダを備えたことを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156611(P2010−156611A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335120(P2008−335120)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(510005889)ベックマン・コールター・インコーポレーテッド (174)
【Fターム(参考)】