説明

反応容器及び分析装置

【課題】微小化しても分注や洗浄等に伴う液体の導入が容易な反応容器及び反応容器から液体の導入と導出が容易な分析装置を提供すること。
【解決手段】音波によって攪拌される液体を保持する反応容器及び分析装置。反応容器7は、液体の導排出口となる2つの開口8cと、2つの開口を有すると共に、開口間に液体を保持し、液体を攪拌する音波を開口間へ照射する音波発生手段が側面或いは側面近傍に配置された保持部材8とを備える。2つの開口8cは、対向配置される。保持部材8は、鉛直方向に配置され、鉛直方向下方に配置される一方の開口8cは、鉛直方向上方に配置される他方の開口8cに比べて面積が小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応容器及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、外部に設けた音波発生手段が発生する音波を利用して反応容器に保持した液体を攪拌している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3168886号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分析装置で使用する反応容器は、キュベットと呼ばれる四角柱形状の容器であり、上部に開口を有している。このような、反応容器は、被検者の負担軽減の見地等から前記液体の量が数μL〜数十μLの微量になると、これに伴ってサイズを微小にする必要がある。このとき、反応容器は、サイズが微小化すると、分析用の測光領域を確保するため、検体,試薬,洗浄液等を含む液体を導入する開口の面積が相対的に小さくなる。このため、微小化した反応容器は、液体の分注等によって開口に液体を滴下すると、液体が表面張力によって開口に張り付き、液体の容器内部への導入が難しくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、微小化しても分注や洗浄等に伴う液体の導入が容易な反応容器及び反応容器から液体の導入が容易な分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る反応容器は、音波によって攪拌される液体を保持する反応容器であって、前記液体の導排出口となる2つの開口と、前記2つの開口を有すると共に、当該開口間に液体を保持し、前記液体を攪拌する音波を当該開口間へ照射する音波発生手段が側面或いは側面近傍に配置された保持部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る反応容器は、上記の発明において、前記2つの開口は、対向配置されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材は、鉛直方向に配置され、鉛直方向下方に配置される前記一方の開口は、鉛直方向上方に配置される前記他方の開口に比べて面積が小さいことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材は、前記液体の表面張力の鉛直成分の大きさが、保持した液体に作用する重力以上となる接触角を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材は、前記開口から毛管圧によって前記液体が導入されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材は、導入した開口とは異なる開口から前記液体を排出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材は、保持した液体を透過する光の光路長を規定する少なくとも2つの互いに平行な側壁を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る反応容器は、上記の発明において、前記保持部材の内面は、当該保持部材の他の部分よりも前記液体との親和性が高いことを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に係る反応容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、当接手段によって前記保持部材に対して離接可能に設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に係る反応容器は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項11に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、前記反応容器を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、前記反応液を光学的に分析することを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に係る分析装置は、上記の発明において、さらに、前記保持部材に保持された液体を排出する排出手段を備え、前記複数の反応容器間で前記排出手段を共用することを特徴とする。
【0018】
また、請求項13に係る分析装置は、上記の発明において、前記排出手段は、前記保持部材に保持された液体を流体圧によって排出する圧力印加手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の反応容器は、保持部材が、液体の導排出口となる2つの開口を有するので、液体を容易に導入することができるという効果を奏する。また、本発明の分析装置は、前記反応容器を使用しているので、液体の導入が容易であり、導入した液体は流体圧によって排出するので、液体の導入が容易なうえ、キャリーオーバーの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施の形態1)
以下、本発明の反応容器及び分析装置にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。図2は、実施の形態1の反応容器を反応ホイールの一部及び攪拌装置の概略構成図と共に示す斜視図である。図3は、試薬分注機構によって反応ホイールに設けた凹部の親和性領域上に分注される試薬を示す側面図である。
【0021】
自動分析装置1は、図1に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、測光部10、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13及び挿入機構23が設けられ、駆動装置20を備えている。
【0022】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0023】
検体分注機構5は、反応ホイール6に形成した凹部6aの中央に検体を分注する手段であり、図1に示すように、検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次凹部6aに分注する。
【0024】
反応ホイール6は、図1に示すように、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される凹部6aが複数設けられている。反応ホイール6は、各凹部6aに半径方向両側に光が透過する開口6b(図2参照)が形成されている。凹部6aは、底面の表面中央に検体や試薬等の液体に対する親和性処理を施し、他の部分に非親和性処理を施すことによって親和性領域Ra(図3)が形成されている。各凹部6aには、検体を試薬と反応させる反応容器7が挿入機構23によって着脱自在に挿入される。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に凹部6aの1個分回転する。反応ホイール6の近傍には、測光部10及び洗浄装置11が設けられている。
【0025】
反応容器7は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、図2に示すように、保持部材8と表面弾性波素子9を有している。
【0026】
保持部材8は、測光部10から出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する透明素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。保持部材8は、図2に示すように、側壁8aと側壁8bの長手方向両端に対向配置される開口8cを有し、開口8c間に液体を保持する四角筒形状の保持部材である。側壁8a,8bは、それぞれが互いに平行な一組の壁である。保持部材8は、側壁8aを反応ホイール6の半径方向に向けて、側壁8bを反応ホイール6の周方向に向けて、凹部6aに配置される。
【0027】
このとき、保持部材8は、凹部6aに分注された液体が毛管圧によって内部へ導入されるように、下部側に配置される開口8cの面積が0.1〜20mm2に成形され、必要に応じて内面には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。開口8cは、面積が20mm2よりも大きいと、十分な毛管圧が生じない、また、面積が0.1mm2よりも小さいと、保持した液体が排出し難くなるうえ、排出に時間が掛って好ましくない。このため、開口8cの面積は、より好ましくは、1〜15mm2、最も好ましくは、3〜10mm2である。保持部材8は、側壁8aの下部側が分析光を透過させる窓8d(図2参照)として利用される。
【0028】
一方、保持部材8は、保持した液体から作用する表面張力Tの鉛直成分の大きさ(=T・cosθ・L)が、この液体に作用する重力(=ρ・g・H・S)以上となる接触角を有するものを用いる。ここで、保持部材8と保持した液体との接触角をθ、液体と保持部材8との気液界面における周方向に沿った長さをL、液体の密度をρ、重力加速度をg、保持部材8に保持された液体の鉛直方向の長さをH、保持部材8に保持された液体の水平方向における断面積をS、とする。保持部材8は、このような接触角θを有していれば、表面張力が重力以上となるので、液体を保持することができる。
【0029】
表面弾性波素子9は、音波(弾性波)によって液体を攪拌すると共に、毛管圧によって導入した液体を攪拌する音波発生手段である。表面弾性波素子9は、エポキシ樹脂等の音響整合層を介して図2に示すように保持部材8の側壁8aに取り付けられる。表面弾性波素子9は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等からなる圧電基板9a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子9bとアンテナ9cが形成されている。表面弾性波素子9は、分析光学系12の発光部12aから出射された分析光が入射或いは出射する側壁8aを避けて、これらに隣り合う側壁8bに取り付ける。
【0030】
測光部10は、図1に示すように、凹部6aを挟んで半径方向に対向する位置に設けられる測光手段であり、反応容器7に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)を出射する光源10aと、液体を透過した分析光を分光して受光する受光器10bを有している。
【0031】
一方、洗浄装置11は、反応容器7の移動手段と、液体の排出手段と、洗浄液の分注手段とを有している。洗浄装置11は、測光終了後の反応容器7を液体廃棄位置へ移動させて測光後の液体を排出手段が吐出する加圧空気によって排出し、この反応容器7を保持していた反応ホイール6の凹部6aに洗浄液を分注する。洗浄液の分注量は、測光時に反応容器7が保持していた液体よりも僅かに多い量とする。洗浄装置11は、液体を排出した反応容器7を、洗浄液を分注した凹部6aに戻し、毛管圧によって洗浄液を反応容器7へ導入する。洗浄装置11は、この動作を複数回繰り返すことにより、反応容器7と凹部6aの底面を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0032】
試薬分注機構12は、反応ホイール6に形成した凹部6aに試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次凹部6aに分注する。
【0033】
試薬テーブル13は、図1に示すように、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0034】
ここで、試薬テーブル13の外周には、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する読取装置15が設置されている。制御部16は、検体テーブル3、検体分注機構5、反応ホイール6、受光器10b、洗浄装置11、試薬分注機構12、試薬テーブル13、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び駆動装置20と接続され、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を停止するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0035】
分析部17は、制御部16を介して受光器10bに接続され、受光器10bが受光した光量に基づく反応容器7内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0036】
駆動装置20は、表面弾性波素子9を駆動するもので、図2に示すように、表面弾性波素子9に電力を送電する送電体21を有している。
【0037】
送電体21は、RF送信アンテナ21a、駆動回路21b及びコントローラ21cを有している。送電体21は、数MHz〜数百MHz程度の高周波交流電源から供給される電力をRF送信アンテナ21aから電波として表面弾性波素子9に発信する。RF送信アンテナ21aは、反応ホイール6の凹部6a内面に取り付けられている。このため、駆動装置20は、例えば、コントローラ21cに制御されたスイッチを切り替えることにより、供給される電力を複数のRF送信アンテナ21aの中から特定のRF送信アンテナ21aに出力するように切り替える。駆動回路21bは、コントローラ21cからの制御信号に基づいて発振周波数を変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号をRF送信アンテナ21aへ出力する。コントローラ21cは、駆動回路21bの作動を制御し、例えば、表面弾性波素子9が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、コントローラ21cは、内蔵したタイマに従って駆動回路21bが発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0038】
挿入機構23は、反応ホイール6の凹部6aに配置された反応容器7を把持するもので、図1に示すように、上下動、かつ、水平方向に回動自在なアーム23aに反応容器7を把持するチャックが設けられている。挿入機構23は、検体や試薬を分注する際に凹部6aに配置された反応容器7を把持して一時的に退避位置に移動させ、分注後、移動させた反応容器7を元の凹部6aに戻す。
【0039】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応ホイール6の回転によって周方向に沿って移動してくる反応容器7を試薬分注位置の手前で退避位置に順次移動させる。次に、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、各凹部6aの中央に、試薬分注機構12のノズル12aが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬Rを順次分注する(図3参照)。これにより、試薬Rは、図3に示すように、凹部6aの親和性領域Ra上に滴下される。このとき、凹部6aは、底面の表面中央が親和性領域Raであるため、滴下された試薬は、親和性領域Raで半球状の液滴を形成して、親和性領域Raに保持される。
【0040】
試薬を分注した後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応ホイール6を回転させ、試薬が分注された凹部6aを検体分注機構5の近傍へ移動する。次に、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、検体分注機構5を駆動させ、所定の検体容器4から凹部6aに検体を分注する。これにより、親和性領域Ra上の試薬Rと分注された検体は、擬似的に半球状の液体Lとなって親和性領域Raに保持される(図4参照)。
【0041】
このようにして試薬と検体を分注した後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応ホイール6を回転して液体Lを保持した凹部6aを挿入機構23の近傍へ移動する。次に、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、挿入機構23によって退避位置に移動した反応容器7を把持して凹部6aへ移動させ、試薬と検体が分注された凹部6aに上方から反応容器7を挿入して底面上に載置する。このとき、反応容器7は、凹部6aへ挿入することにより、図4に示すように、下部の開口8cが擬似半球状の液体Lの上部に当接する。すると、反応容器7は、開口8cの面積が小さく、内部に液体に対する親和性処理が施されているため、図5のように、毛管圧によって液体Lが開口8cから保持部材8の内部に容易に導入される。
【0042】
自動分析装置1は、挿入機構23によって凹部6aに反応容器7を挿入して底面上に載置した後、制御部16による制御の下、駆動装置20によって表面弾性波素子9を駆動する。これにより、反応容器7は、表面弾性波素子9の振動子9bが発する表面弾性波が保持した液体中へ漏れ出し、漏れ出した音波によって液体Lが攪拌される。この結果、液体Lは、試薬と検体が反応して反応液Lrとなる。
【0043】
自動分析装置1は、このようにして液体Lを攪拌して反応液Lrとした後、制御部16による制御の下、反応ホイール6を回転して反応液を保持した反応容器7を移動させる。これにより、反応容器7は、測光部10を通過する際、図6に示すように、光源10aから出射される光束BLによって保持した反応液Lrが測光される。
【0044】
測光終了後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、洗浄装置11を駆動して、測光終了後の反応容器7を液体廃棄位置へ移動させた後、測光後の反応液を排出し、この反応容器7を保持していた反応ホイール6の凹部6aに洗浄液を分注する。その後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応液を排出した反応容器7を洗浄装置11によって洗浄液を分注した凹部6aに戻し、反応容器7に洗浄液を毛管圧によって導入する。自動分析装置1は、制御部16による制御の下、洗浄装置11にこの動作を複数回繰り返させることにより、凹部6aの底面及び反応容器7を洗浄する。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0045】
ここで、保持部材8は、毛管圧によって液体を内部へ導入し、導入した液体を表面張力によって保持するので、開口8cの面積が小さい。このため、反応容器7は、測光後の反応液Lrを排出する場合は、流体圧、例えば、加圧空気の圧力を利用して排出する。即ち、図7に示すように、加圧空気Apを吐出する加圧ノズルNaを開口8cの真上に配置する。そして、反応容器7は、図8に示すように、加圧ノズルNaから吐出する加圧空気Apによって測光後の反応液Lrを保持部材8から下方へ排出する。このようにすると、反応容器7は、反応液Lrを速やかに排出することができるうえ、加圧ノズルNaを内部へ挿入しないので、微小化しても従来の大きさのノズルを加圧ノズルNaとして使用することができる。
【0046】
以上のように、実施の形態1の反応容器7は、保持部材8の一方の開口8cから毛管圧によって液体を導入するので、微小化しても分注や洗浄等に伴う液体の導入が容易である。また、自動分析装置1は、反応容器7を使用しているので、液体の導入が容易であり、導入した液体は流体圧によって排出するので、液体の導入と導出が容易なうえ、キャリーオーバーの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0047】
なお、反応液Lrの排出には、加圧ノズルの代わりに吸引ノズルを用いてもよい。吸引ノズルを保持部材8の下方又は上方近傍に近づけて吸引することにより、反応容器7から反応液Lrを速やかに排出することができる。また、廃液は、直ぐに吸引されるため、自動分析装置1内部でのコンタミを防止することができる。
【0048】
また、反応容器7は、保持部材8が両端に開口8cを有している。このため、反応容器7は、図9に示すように、流体圧を利用して保持部材8の内部に洗浄液Lcを流下させることができ、底壁を有する従来の反応容器で発生していた底部の四隅部分における洗浄不良を解消してキャリーオーバーをなくすことができるうえ、保持部材8の内部を簡単に洗浄することができる。このとき、反応容器7は、攪拌用の表面弾性波素子9を駆動すると、漏れ出した音波が洗浄液Lcを攪拌するため、洗浄効果が向上する。
【0049】
一方、実施の形態1の反応容器は、図10に示す反応容器7のように、保持部材8の互いに対向する一組の平行な側壁8bの両方に表面弾性波素子9を取り付けると、液体の攪拌効率を向上させることができる。
【0050】
ここで、実施の形態1の反応容器は、保持部材の両端に、対向配置される開口を有し、前記開口間に液体を保持するものであれば、例えば、図11及び図12に示す反応容器7のように、一組の平行な側壁8bに代えて、上方に向かって拡がる一組の傾斜壁8eとし、傾斜壁8eのそれぞれに表面弾性波素子9を取り付けた保持部材8Aを用いてもよい。この場合、保持部材8Aは、反応ホイール6の凹部6aに分注された液体が毛管圧によって内部へ導入されるように下部の開口8cの面積を上部の開口8fよりも小さい0.1〜20mm2程度に成形し、内面には検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。ここで、以下に説明する各保持部材は、特に言及しなくとも内面に検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されている。
【0051】
このとき、反応容器7は、図13に示すように、保持部材8Aの下部の開口8c内周に、上方に向かって内方へ狭くなるように面取り加工を施した傾斜部Pを形成してもよい。このようにすると、保持部材8Aは、傾斜部Pによってパッシブバルブが形成され、保持した液体の凹形状のメニスカスが急峻になり、傾斜部Pよりも反応容器7内側に留まらせる力を強くすることができる。
【0052】
また、実施の形態1の反応容器は、図14に示す反応容器7のように、側壁8a及び傾斜壁8eの上部に上壁8gを設け、上壁8gの中央に開口8hを形成した保持部材8Bを用いてもよい。また、図15に示す反応容器7のように、傾斜壁8eを上方に向かって狭まるように成形すると共に、側壁8a及び傾斜壁8eの下部に半径方向内側に突出するフランジ8iを設け、フランジ8iの中央に下部の開口8cを形成した保持部材8Cを用いてもよい。
【0053】
一方、実施の形態1の自動分析装置1は、図16に示すように、反応ホイール6の凹部6a内面に設けたコンタクトピン21dによって駆動装置20から表面弾性波素子9に電力を供給するようにしてもよい。このとき、表面弾性波素子9は、図17に示すように、圧電基板9a上に形成するアンテナ9cに代えてコンタクトピン21dと接触するコンタクトパッド9dを形成する。また、表面弾性波素子9は、振動子9bを構成する櫛型電極の複数の櫛歯を互いに同心円状に配置すると共に、複数の櫛歯の中心C(焦点)が鉛直下方となるように複数の櫛歯が下方に向かって短くなるように形成する。
【0054】
(実施の形態2)
次に、本発明の反応容器及び分析装置にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の反応容器は、反応ホイール6の凹部6a底面上に載置したのに対し、実施の形態2の反応容器は、図13に示す保持部材を用い、反応ホイール6の凹部6aに底面から離して挿着される。図18は、実施の形態2の反応容器を反応ホイールの一部及び攪拌装置の概略構成と共に示す斜視図である。ここで、自動分析装置1は、凹部の形状が凹部6aと異なることを除き、実施の形態1と同じであるので、同一の構成部分には同一の符号を用いて説明している。
【0055】
反応ホイール6は、反応容器7の保持部材8Aを挿着する凹部6cの下部に、周方向に対向する側壁の下方が底壁に向かって広がる凹部6dが連設されている。反応ホイール6は、凹部6cの形状が保持部材8A下部と対応する形状に成形されている。このため、反応ホイール6は、下部の開口8cが凹部6cの底面から離れた状態で保持部材8Aが凹部6cに挿着される。
【0056】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応ホイール6の回転によって周方向に沿って移動してくる反応容器7の保持部材8Aに、試薬分注機構12のノズル12aが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬Rを順次分注する(図19参照)。このとき、分注直後の試薬Rは、図20に示すように、保持部材8A上部の開口8fを塞いでしまう。しかし、保持部材8Aは、内面に検体や試薬等の液体に対する親和性処理が施されているので、開口8fを塞いだ試薬Rは、毛管圧によって内部へ導入される(図21参照)。
【0057】
試薬を分注した後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、反応ホイール6を回転させ、試薬が分注された凹部6aを検体分注機構5の近傍へ移動する。次に、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、検体分注機構5を駆動させ、所定の検体容器4から凹部6aに検体を分注する。すると、分注された検体は、一時的に開口8fを塞いでしまうが、試薬Rの場合と同様に、親和性処理を施した内面に導かれて毛管圧によって内部へ導入され、試薬Rと合体する。
【0058】
その後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、駆動装置20によって表面弾性波素子9を駆動する。これにより、反応容器7は、表面弾性波素子9の振動子9bが表面弾性波(音波)を発生し、図21に示すように、表面弾性波(音波)Waが側壁8eを通って液体中へ漏れ出す。反応容器7は、このようにして液体中に漏れ出した音波Waによって、試薬と検体が合体した液体が攪拌される。この結果、試薬と検体が合体した液体は、試薬と検体が反応して反応液Lr(図21参照)となる。
【0059】
このとき、反応容器7は、保持部材8A下部の開口8cが凹部6cの底面から離れた状態で反応ホイール6に挿着される。このため、保持部材8Aは、試薬と検体が合体した液体が側壁8aと傾斜壁8eの内面に接するだけである。このため、反応容器7は、保持部材8Aが保持した液体の壁面との接触面積が底面を有する反応容器に比べて低減されて壁面との摩擦が減少するので、攪拌効率が向上する。
【0060】
自動分析装置1は、このようにして液体Lを攪拌して反応液Lrとした後、制御部16による制御の下、反応ホイール6を回転して反応液を保持した反応容器7を移動させる。これにより、反応容器7は、測光部10を通過する際、図22に示すように、光源10aから出射される光束BLによって保持した反応液Lrが測光される。
【0061】
測光終了後、自動分析装置1は、制御部16による制御の下、洗浄装置11を駆動して、測光終了後の反応容器7を液体廃棄位置へ移動させた後、測光後の反応液を排出し、この反応容器7を凹部6aに戻した後、洗浄液を分注して反応容器7を洗浄する。このとき、洗浄液の分注と、液体廃棄位置への移動は、少なくとも1回は行う。このようにして洗浄された反応容器7は、再度、新たな検体の分析に使用される。また、反応容器7は、導入した液体を導出する際は、実施の形態1と同様に、流体圧を利用して導出する。
【0062】
以上のように、実施の形態2の反応容器7は、保持部材8Aを用い、保持部材8Aの一方の開口8fに分注した液体を毛管圧によって内部へ導入するので、微小化しても分注や洗浄等に伴う液体の導入が容易である。また、自動分析装置1は、反応容器7を使用しているので、液体の導入が容易であり、導入した液体は流体圧によって排出するので、液体の導入と導出が容易なうえ、キャリーオーバーの発生を抑制することができる。
【0063】
(実施の形態3)
次に、本発明の反応容器及び分析装置にかかる実施の形態3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1,2の反応容器は、側面に配置する表面弾性波素子が取り付けられていたが、実施の形態3の反応容器は、側面に配置した表面弾性波素子が離接するように構成されている。図23は、実施の形態3の自動分析装置の構成を反応容器及び反応テーブルを断面にして示すブロック図である。図24は、図23の自動分析装置で用いる反応テーブルの一部を表面弾性波素子及びその駆動装置と共に示す平面図である。
【0064】
自動分析装置30は、図23に示すように、検体分注部31、試薬分注部32、反応テーブル33、表面弾性波素子36、測光部38、制御部39及び攪拌部40を備えている。
【0065】
検体分注部31は、図23に示すように、検体格納部31aに収容された検体を検体ノズル31bによって反応容器35に分注する。試薬分注部32は、試薬格納部32aに収容された試薬を試薬ノズル32bによって反応容器35に分注する。検体分注部31及び試薬分注部32は、駆動手段によってそれぞれ個別に駆動され、反応テーブル33の外周上方を表面に沿って2次元方向に移動する。
【0066】
反応テーブル33は、図23及び図24に示すように、駆動モータ34によって回転され、外周には周方向に沿って配置される凹状に成形したホルダ33aが複数設けられている。ホルダ33aには、反応容器35が着脱自在に収容される。また、反応テーブル33は、側壁33b外面の中央に開口からなる当接窓33cが形成されると共に、側壁33bに隣り合う側壁33dの下部に測光窓33eが形成されている。このとき、ホルダ33aは、測光窓33eを形成する側壁33dが半径方向に対して45°傾斜するように形成されている。
【0067】
ここで、ホルダ33aは、図24に示すように、反応テーブル33の外周に周方向に沿って複数設けられているが、図26〜図28においては、構造を明示する便宜上、ホルダ33aを1つだけ示している。また、図23に示すように、表面弾性波素子36と測光部38は、反応テーブル33の直径方向に対向する位置に配置されているが、図24においては、表面弾性波素子36と測光部38との配置を分かり易く、かつ、簡単に示すため、表面弾性波素子36を測光部38の近傍に配置して描いている。
【0068】
反応容器35は、開口35a,35b間に数nL〜数十μLの微量な液体を保持する四角筒形状の部材である実施の形態1の保持部材8A(図13参照)が使用され、近傍に配置される表面弾性波素子36を有している。
【0069】
表面弾性波素子36は、音波(表面弾性波)によって反応容器35に保持された液体を攪拌する手段であり、図24〜図26に示すように、圧電基板36a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子36bが形成され、攪拌部40の駆動回路42(図23参照)から供給される電力によって駆動される。また、表面弾性波素子36は、図23に示すように、モータ41によって矢印方向に駆動されるアーム41aと連結され、側壁33bに形成された当接窓33cを介して反応容器35の側壁35cに離接する。このとき、表面弾性波素子36は、ホルダ33aに保持される反応容器35の側壁35cに対向させて傾斜配置されており、上部近傍に配置された液分注部37の液格納部37aに保持した音響整合液がノズル37bから滴下される。
【0070】
測光部38は、図23に示すように、ホルダ33aを挟んで反応テーブル33の半径方向に対向配置され、反応容器35に保持された液体を分析する分析光(340〜800nm)の光束(図24参照)を出射する光源38aと、液体を透過してくる光束を分光して受光する受光器38bを有している。ここで、測光部38における測光が終了した反応容器35は、洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0071】
制御部39は、図23に示すように、検体分注部31、試薬分注部32、駆動モータ34、液分注部37、測光部38及び攪拌部40と接続され、例えば、メモリとタイマを内蔵し、分析結果を記憶するマイクロコンピュータ等が使用される。制御部39は、自動分析装置30の各部の作動を制御し、受光器38bから出力される透過光の情報に基づいて検体の成分濃度等を分析する。また、制御部39は、検査項目等を入力する操作を行うキーボードやマウス等の入力部や、分析内容や警報等を表示するディスプレイパネル等を備えている。
【0072】
ここで、制御部39は、攪拌部40を制御する場合には、例えば、表面弾性波素子36が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を制御する。また、制御部39は、内蔵したタイマに従って駆動回路42が発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0073】
攪拌部40は、制御部39による制御の下に表面弾性波素子36を駆動して反応容器35に保持される液体を攪拌する部分であり、図23に示すように、モータ41と駆動回路42を有している。
【0074】
モータ41は、制御部39による制御の下にアーム41aを駆動し、表面弾性波素子36を図23に示す矢印方向に移動させ、攪拌時にホルダ33aの当接窓33cを介して反応容器35の側壁35cに当接させる(図27参照)。
【0075】
駆動回路42は、制御部39からの制御信号に基づいて発振周波数をプログラマブルに変更可能な発振回路を有しており、数十MHz〜数百MHz程度の高周波の発振信号を増幅し、駆動信号として表面弾性波素子36に出力する他、制御部39からの制御信号に基づいて駆動信号の駆動周波数を段階的に切り替える。
【0076】
以上のように構成される自動分析装置30は、以下のようにして反応容器35に分注される検体を分析する。先ず、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、反応テーブル33を回転させ、分注対象の反応容器35を保持したホルダ33aを試薬分注位置に停止させる。次に、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、試薬分注部32が試薬ノズル32bによって反応容器35の上方から開口35aに第1試薬を分注する。このように、実施の形態3の反応容器35は、液体の分注を上方から行っても、実施の形態2の場合と同じように、毛管圧によって内部へ導入される。
【0077】
次いで、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、反応テーブル33を回転させ、第1試薬が分注された反応容器35を測光部38へ移動させる。これにより、反応容器35は、光源38aから出射された分析光がホルダ33a下部の測光窓33eから照射され、第1試薬を透過した光束が受光器38bによって測光される。受光器38bは、受光した光束に関する光情報を制御部39へ出力する。この光情報に基づき、制御部39は、第1試薬の吸光度を算出し、記憶する。
【0078】
このようにして第1試薬に関するブランク測光が終了した後、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、駆動モータ34を駆動して反応テーブル33を回転させ、第1試薬が分注された反応容器35を検体分注部31へ移動させる。次に、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、検体ノズル31bから検体を反応容器35に分注する。
【0079】
次いで、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、駆動回路42によって振動子36bを駆動し、発生する音波(表面弾性波)によって第1試薬と検体とを攪拌して反応させる。その後、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、駆動モータ34を駆動して反応テーブル33を回転させ、反応容器35を測光部38へ移動させる。これにより、反応容器35は、第1試薬と検体が反応した反応液が測光される。制御部39は、受光器38bが測光した光情報に基づき、第1試薬と検体が反応した反応液の吸光度を算出し、記憶する。
【0080】
次に、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、駆動モータ34を駆動して反応テーブル33を回転させ、第1試薬と検体の反応液を保持した反応容器35を試薬分注部32へ移動させる。その後、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、試薬ノズル32bから第2試薬を反応容器35に分注する。次いで、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、モータ41を駆動してアーム41aを繰り出すと共に、駆動回路42によって振動子36bを駆動し、発生する音波(表面弾性波)によって第1試薬と検体の反応液と第2試薬とを攪拌して反応させる。
【0081】
その後、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、モータ41を駆動して繰り出したアーム41aを引き込むと共に、駆動モータ34を駆動して反応テーブル33を回転させ、反応容器35を測光部38へ移動させる。これにより、反応容器35は、第1試薬と検体の反応液と第2試薬とが反応した反応液が測光される。制御部39は、受光器38bが測光した光情報に基づき、第1試薬と検体の反応液と第2試薬とが反応した反応液の吸光度を算出し、先に測定してある第1試薬の吸光度及び第1試薬と検体の混合液の吸光度をもとに検体の成分濃度等を算出する。そして、測光部38における測光が終了した反応容器35は、洗浄装置に移送されて反応液が排出され、洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。このとき、反応容器35は、反応液を排出する際は、実施の形態1と同様に、流体圧を利用して排出する。
【0082】
ここで、自動分析装置30は、表面弾性波素子36による液体の攪拌に際し、制御部39の制御の下、図26に示すように、液分注部37のノズル37bによって表面弾性波素子36に音響整合液Lmを滴下する。このとき、ホルダ33aは、液体Lを保持した反応容器35が挿着されている。次に、自動分析装置30は、制御部39の制御の下、モータ41によってアーム41aを繰り出し、図27に示すように、当接窓33cを介して表面弾性波素子36を反応容器35の側壁35cに当接させる。これにより、表面弾性波素子36と側壁35cとの間に音響整合液Lmの薄い膜が配置されるので、表面弾性波素子36が発生する音波(表面弾性波)が、反応容器35の側壁35c介して保持した液体L中に漏れ出し、漏れ出した音波Waによって液体Lが攪拌される。
【0083】
このように、実施の形態3の反応容器35は、一方の開口35aに分注した液体を毛管圧によって内部へ導入するので、微小化しても分注や洗浄等に伴う液体の導入が容易である。また、自動分析装置30は、反応容器35を使用しているので、液体の導入が容易であり、導入した液体は流体圧によって排出するので、液体の導入と導出が容易なうえ、キャリーオーバーの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【0084】
ここで、音響整合液Lmは、粘性が低いと、流れ易い。このため、ホルダ33aは、図28に示すように、当接窓33c側の下部に表面弾性波素子36に滴下した音響整合液Lmを受けるスカート部33fを設けておくとよい。
【0085】
(実施の形態4)
次に、本発明の反応容器にかかる実施の形態4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1〜3の反応容器は、開口が対向されていたが、実施の形態4の反応容器は、液体の導排出口となる2つの開口がU字形状の両端に配置されている。図29は、実施の形態4の反応容器を示す斜視図である。図30は、図29の反応容器を、この反応容器を保持するホルダと共に示す斜視図である。図31は、図29に示す反応容器で使用する表面弾性波素子の正面図である。
【0086】
反応容器50は、図29に示すように、保持部材51と表面弾性波素子52を有している。
【0087】
保持部材51は、U字形状の管材の両端に液体の導排出口となる開口51a,51bを有し、開口51a,51b間のU字形状の部分に液体を保持する。開口51a,51bは、面積が0.1〜20mm2に成形されている。保持部材51は、図30に示すホルダ53を介して反応テーブルに形成した複数の凹部に挿着される。ホルダ53は、扁平な円筒を半割にした半割円筒体形状の部材であり、保持部材51を収容して一定温度に保持する収容部53aを有している。ホルダ53は、上方から蓋体54が被着される。蓋体54は、ホルダ53に収容した保持部材51の凹部51cに嵌め込まれる凸部54aと、凸部54aを保持すると共に、液体の分注に使用しない開口、例えば、開口51bを覆う蓋板54bとを有している。これにより、蓋体54は、ホルダ53に被着することにより、保持部材51に保持した液体を一定温度に保持している。
【0088】
表面弾性波素子52は、開口51a近傍の円弧状に湾曲した側面に音響整合層を介して取り付けられ、図31に示すように、表面弾性波素子9と同様に圧電基板52a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子52bと受信アンテナ52cが形成されている。表面弾性波素子52は、ホルダ53の外部に設けた送信アンテナから高周波無線によって振動子52bを駆動する電力が供給される。前記送信アンテナは、挿着した保持部材51に取り付けた表面弾性波素子52と対向する位置に設けられているが、この位置であればホルダ53内部に設けてもよい。
【0089】
このように、反応容器50は、保持部材51が液体の導排出口となる開口51a,51bを有しているので、液体の導入が容易であり、排出する際は前記実施の形態のように加圧ノズルや吸引ノズルを用いることにより、容易に液体を排出することができる。また、反応容器50は、液体を測光する際は、図29に点線で示すように光束BLを湾曲した側面から照射するが、表面弾性波素子52を取り付けた湾曲した側面と隣り合う平面から照射してもよい。
【0090】
ここで、反応容器50は、図32に示すように、表面弾性波素子52を保持部材51の凹部51c上面に取り付けてもよい。この場合、図33に示すように、表面弾性波素子52は、蓋体54が有する凸部54aの外部に設けた送信アンテナ55から高周波無線によって振動子52bを駆動する電力が供給される。送信アンテナ55は、配線56及びスイッチ回路57を介して信号発生器58と接続されている。表面弾性波素子52は、制御回路59からの制御信号に複数の反応容器50の特定の反応容器50の表面弾性波素子52が選択されて駆動される。
【0091】
なお、表面弾性波素子52は、図34に示すように、受信アンテナ52cに代えて電極パッド52dを設け、電極パッド52dを介して電源からの電力を供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を示す概略構成図である。
【図2】実施の形態1の反応容器を反応ホイールの一部及び攪拌装置の概略構成図と共に示す斜視図である。
【図3】試薬分注機構によって反応ホイールに設けた凹部の親和性領域上に分注される試薬を示す側面図である。
【図4】凹部底面の親和性領域上に半球状に保持された液体と凹部に挿入される反応容器とを示す断面図である。
【図5】凹部への反応容器の挿入に伴い、表面張力によって保持部材の開口から内部に導入される液体を示す断面図である。
【図6】反応容器の保持部材に保持された液体を光源から出射される光束によって測光する様子を示す断面図である。
【図7】反応容器の保持部材に保持された反応液を、加圧ノズルを用いて排出する場合の保持部材と加圧ノズルの配置を示す断面図である。
【図8】加圧ノズルから吐出する加圧空気によって保持部材が保持した反応液を排出した状態を示す断面図である。
【図9】反応液を排出した保持部材の内部を流下する洗浄液によって洗浄する様子を示す断面図である。
【図10】実施の形態1の反応容器で使用する保持部材の第1の変形例を示す断面図である。
【図11】実施の形態1の反応容器で使用する保持部材の第2の変形例を示す斜視図である。
【図12】図11に示す反応容器の断面図である。
【図13】図11に示す反応容器の他の変形例を示す断面図である。
【図14】実施の形態1の反応容器で使用する保持部材の第3の変形例を示す断面図である。
【図15】実施の形態1の反応容器で使用する保持部材の第4の変形例を示す断面図である。
【図16】表面弾性波素子に接触子によって電力を供給する変形例を、攪拌装置の概略構成図と共に示す反応ホイールの凹部の断面図である。
【図17】図16に示す反応容器で使用する表面弾性波素子の他の例を示す正面図である。
【図18】実施の形態2の反応容器を反応ホイールの一部及び攪拌装置の概略構成と共に示す斜視図である。
【図19】実施の形態2に係る反応容器の保持部材に試薬を分注する様子を示す断面図である。
【図20】図19の保持部材に試薬を分注した初期状態を示す断面図である。
【図21】保持部材に分注した試薬と検体が攪拌される様子を示す断面図である。
【図22】試薬と検体を攪拌して反応した反応液を測光する様子を示す断面図である。
【図23】実施の形態3の自動分析装置の構成を反応容器及び反応テーブルを断面にして示すブロック図である。
【図24】図23の自動分析装置で用いる反応テーブルの一部を表面弾性波素子及びその駆動装置と共に示す平面図である。
【図25】図23の自動分析装置を構成する反応テーブルのホルダ、反応容器及び表面弾性波素子の配置を示す斜視図である。
【図26】図23の自動分析装置を構成する反応テーブルのホルダ、反応容器及び表面弾性波素子の配置並びに表面弾性波素子に滴下される音響整合液を示す断面図である。
【図27】ホルダに形成した当接窓を介して表面弾性波素子を反応容器の側壁に当接させた状態を示す図26に対応した断面図である。
【図28】ホルダの変形例を示す図26に対応した断面図である。
【図29】実施の形態4の反応容器を示す斜視図である。
【図30】図29の反応容器を、この反応容器を保持するホルダと共に示す斜視図である。
【図31】図29に示す反応容器で使用する表面弾性波素子の正面図である。
【図32】実施の形態4の反応容器の変形例を示す斜視図である。
【図33】図32に示す反応容器において、振動子を駆動する電力を無線によって表面弾性波素子に供給する概略構成を示す図である。
【図34】実施の形態4の反応容器で使用する表面弾性波素子の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 自動分析装置
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 検体分注機構
6 反応ホイール
7 反応容器
8,8A,8B 保持部材
8C 保持部材
8c 開口
9 表面弾性波素子
10 測光部
10a 光源
10b 受光器
11 洗浄装置
12 試薬分注機構
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 駆動装置
21 送電体
30 自動分析装置
31 検体分注部
32 試薬分注部
33 反応テーブル
34 駆動モータ
33a ホルダ
33c 当接窓
33e 測光窓
35 反応容器
36 表面弾性波素子
37 液分注部
38 測光部
38a 光源
38b 受光器
39 制御部
40 攪拌部
41 モータ
42 駆動回路
50 反応容器
51 保持部材
51a,51b 開口
52 表面弾性波素子
53 ホルダ
54 蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音波によって攪拌される液体を保持する反応容器であって、
前記液体の導排出口となる2つの開口と、
前記2つの開口を有すると共に、当該開口間に液体を保持し、前記液体を攪拌する音波を当該開口間へ照射する音波発生手段が側面或いは側面近傍に配置された保持部材と、
を備えることを特徴とする反応容器。
【請求項2】
前記2つの開口は、対向配置されることを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項3】
前記保持部材は、鉛直方向に配置され、
鉛直方向下方に配置される前記一方の開口は、鉛直方向上方に配置される前記他方の開口に比べて面積が小さいことを特徴とする請求項2に記載の反応容器。
【請求項4】
前記保持部材は、前記液体の表面張力の鉛直成分の大きさが、保持した液体に作用する重力以上となる接触角を有することを特徴とする請求項3に記載の反応容器。
【請求項5】
前記保持部材は、前記開口から毛管圧によって前記液体が導入されることを特徴とする請求項2に記載の反応容器。
【請求項6】
前記保持部材は、導入した開口とは異なる開口から前記液体を排出することを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項7】
前記保持部材は、保持した液体を透過する光の光路長を規定する少なくとも2つの互いに平行な側壁を有することを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項8】
前記保持部材の内面は、当該保持部材の他の部分よりも前記液体との親和性が高いことを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項9】
前記音波発生手段は、当接手段によって前記保持部材に対して離接可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項10】
前記音波発生手段は、表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の反応容器。
【請求項11】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記反応液を分析する分析装置であって、請求項1〜10のいずれか一つに記載の反応容器を用いて前記複数の異なる液体を攪拌して反応させ、前記反応液を光学的に分析することを特徴とする分析装置。
【請求項12】
さらに、前記保持部材に保持された液体を排出する排出手段を備え、
前記複数の反応容器間で前記排出手段を共用することを特徴とする請求項11に記載の分析装置。
【請求項13】
前記排出手段は、前記保持部材に保持された液体を流体圧によって排出する圧力印加手段であることを特徴とする請求項12に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2007−178408(P2007−178408A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380449(P2005−380449)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】